説明

熱硬化性プラスチックの成形方法と熱硬化性プラスチックの成形装置

【課題】設備コストを低減することができる熱硬化性プラスチックの成形方法を提供する。
【解決手段】熱硬化性プラスチックの成形方法は、(1)未溶融の熱硬化性のプラスチック材料90を材料供給ブロック10のポット15内に供給し、ポット15内でプラスチック材料90を溶融する工程と、(2)ポット15に連なる材料供給口16を閉塞する工程と、(3)キャビティ45を有する可動型40を材料供給ブロック10に押圧することにより、ポット15内で溶融した溶融プラスチック91を圧縮し材料供給ブロック10の充填通路18から押し出して可動型40のキャビティ45に充填し、キャビティ45に充填された溶融プラスチック91を加熱し硬化させる工程と、(4)可動型40を材料供給ブロック10から離反させて、キャビティ45で硬化させたプラスチック製品を取り出す工程と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、熱硬化性プラスチックの成形方法と、この成形方法の実施に直接使用する熱硬化性プラスチックの成形装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱硬化性プラスチックを射出成形する場合、成形材料の無駄を減らし、材料歩留まりを向上させることができることから、ランナレス成形金型を用いたランナレス成形を採用することがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3696071号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ランナレス成形は、材料を溶融し、その溶融した材料を硬化させないように予熱しながらランナレス成形金型に供給するための材料供給装置(一般的にはスクリュー式供給装置)が必要であり、また、この材料供給装置での予熱温度の管理(温度制御)も必要であるため、設備が複雑となり、設備投資も大きくなる。
【0005】
そこで、この発明は、制御が容易で、設備コストを低減することができる熱硬化性プラスチックの成形方法と、この成形方法の実施に直接使用する熱硬化性プラスチックの成形装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る熱硬化性プラスチックの成形方法では、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
請求項1に係る発明は、
未溶融の熱硬化性のプラスチック材料を材料供給部のポット内に供給し、前記ポット内で前記プラスチック材料を溶融する工程と、
前記ポットに連なる材料供給口を閉塞する工程と、
キャビティを有する可動型を前記材料供給部に押圧することにより、前記ポット内で溶融したプラスチック材料を圧縮し前記材料供給部の充填通路から押し出して前記可動型の前記キャビティに充填し、前記キャビティに充填されたプラスチック材料を加熱し硬化させる工程と、
前記可動型を前記材料供給部から離反させて、前記キャビティで硬化させたプラスチック製品を取り出す工程と、
を備えることを特徴とする熱硬化性プラスチックの成形方法である。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の発明において、
前記ポットには複数サイクル分の前記プラスチック材料が収容可能であり、
前記可動型のストローク量が所定値に達した場合には、当該サイクルの終了前に、前記材料供給口を開き、該材料供給口から前記材料供給部の前記ポットに未溶融の前記プラスチック材料を供給する工程、
を備えることを特徴とする。
【0008】
また、この発明に係る熱硬化性プラスチックの成形装置では、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
請求項3に係る発明は、
上下方向に相対移動可能でその間に材料溜まり部となるポットを形成する上側ボディおよび下側ボディを有し、前記上側ボディには前記ポットに未溶融の熱硬化性のプラスチック材料を供給可能にする材料供給口が設けられ、前記下側ボディには前記ポット内で溶融された前記プラスチック材料を導出する充填通路が設けられた材料供給部と、
前記材料供給部の前記材料供給口を閉塞可能にする閉塞手段と、
前記材料供給部の前記ポットに供給された未溶融の前記プラスチック材料を溶融可能な温度に前記材料供給部を加熱する予熱手段と、
キャビティを有し、前記材料供給部の下方に配置されて上下方向に移動可能に設置され、上方移動により前記材料供給部に当接したときに前記材料供給部の前記充填通路と前記キャビティとが連なり、さらなる上方移動により、前記ポット内で溶融された前記プラスチック材料が前記キャビティに充填される可動型と、
前記可動型の前記キャビティに充填された前記プラスチック材料を硬化可能な温度に前記可動型を加熱する加熱手段と、
を備えることを特徴とする熱硬化性プラスチックの成形装置である。
【0009】
請求項4に係る発明は、請求項3に記載の発明において、前記ポットは、複数サイクル分の前記プラスチック材料が収容可能な容量を有し、前記可動型のストローク量が所定値に達したことを検出するストローク量検出手段を備えることを特徴とする。
【0010】
請求項5に係る発明は、請求項3または請求項4に記載の発明において、前記材料供給部と前記可動型の少なくともいずれか一方には、他方との当接部に断熱部材が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明によれば、材料供給部のポットに未溶融のプラスチック材料を供給し、このポット内でプラスチック材料を溶融させるので、工程および制御を簡略化することができ、生産性が向上する。また、工程および制御の簡略化により、設備コストの低減を図ることができる。
請求項2に係る発明によれば、ポットへのプラスチック材料の補給タイミングの管理が容易になる。
【0012】
請求項3に係る発明によれば、請求項1に係る熱硬化性プラスチックの成形方法を容易に実施することができる。また、材料供給部のポットに直接、未溶融のプラスチック材料を供給し、このポット内でプラスチック材料を溶融させることができるので、成形工程および制御を簡略化することができ、生産性が向上する。また、この成形装置のコストダウンを図ることができる。
さらに、材料供給部と可動型とを分離し、上側に配置された材料供給部にはキャビティがなく、下側に配置された可動型にのみキャビティが設けられているので、金型(可動型)の段取り換えが容易にでき、生産性が向上する。さらに、キャビティを有する可動型だけを変更することで成形品の仕様変更に対応することができるので、汎用性に富み、多機種少量生産に応えることができる。
【0013】
請求項4に係る発明によれば、ポットへのプラスチック材料の補給タイミングの管理が容易になる。
請求項5に係る発明によれば、可動型から材料供給部への熱伝達を抑制することができるので、材料供給部のポット内のプラスチック材料への可動型の熱的な影響を低減あるいは防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明に係る熱硬化性プラスチックの成形装置の実施形態における断面図であり、型開き状態を示す図である。
【図2】材料供給口を封止した状態を示す前記成形装置の断面図である。
【図3】型締めをした状態を示す前記成形装置の断面図である。
【図4】製品取り出しの状態を示す前記成形装置の断面図である。
【図5】実施形態における成形サイクルを示すタイムスケジュールである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明に係る熱硬化性プラスチックの成形方法と熱硬化性プラスチックの成形装置の実施形態を図1から図5の図面を参照して説明する。
図1に示すように、熱硬化性プラスチックの成形装置1は、上側に配置された金属製の材料供給ブロック(材料供給部)10と、材料供給ブロック10の下方に配置された金属製の可動型40と、可動型40を昇降する昇降台60と、材料供給ブロック10の上方に配置された閉塞装置70と、材料供給ブロック10に未溶融のプラスチック材料90を供給するためのホッパー80と、を主要構成として備えている。
【0016】
材料供給ブロック10は、移動不能に設置された固定盤11と、この固定盤11の下面に固定された上側ボディ12と、この上側ボディ12の下方に配置された下側ボディ13と、予熱装置14と、を備えている。
上側ボディ12はその下部に突出部12aを備え、下側ボディ13はその上部に凹部13aを備えており、上側ボディ12の突出部12aが下側ボディ13の凹部13aに上下方向移動可能に嵌り込んでいる。そして、突出部12aと凹部13aとの間にポット15が形成されており、ここが材料溜まり部となっている。下側ボディ13は上側ボディ12に支持装置(図示略)を介して昇降可能に支持されており、下側ボディ13の上昇によりポット15の容量が縮小する。図1に示すように、下側ボディ13が最下点に位置しているときのポット15の容量(最大容量)は、所定サイクル分(この実施形態では3サイクル分)の成形に必要なプラスチック材料90の量よりも大きく設定されている。。
【0017】
固定盤11と上側ボディ12には、ポット15に連なる材料供給口16が貫通して設けられており、材料供給口16は固定盤11の上面にて開口している。
下側ボディ13の下面には、その全面に、例えばベーク板等からなる断熱部材17が設けられており、下側ボディ13と断熱部材17には、ポット15に連通する小径の充填通路18が複数(この実施形態では3つ)貫通形成されている。この充填通路18の数は、この成形装置1が1サイクルで一度に成形することができる成形品(製品)の数と一致す
また、上側ボディ12と下側ボディ13は予熱装置14によって、ポット15に供給されたプラスチック材料90を溶融状態に保持することができる温度(例えば80〜90゜C)に制御可能となっている。以下、この温度を溶融保持温度と称す。
【0018】
閉塞装置70は、固定盤11の材料供給口16の真上に配置されている。閉塞装置70は、アクチュエータ71によって昇降するプランジャ72を備え、プランジャ72が下降したときに材料供給口16に進入し、上側ボディ12の材料供給口16をプランジャ72で閉塞するように構成されている。
ホッパー80は、固定盤11の材料供給口16の近傍に設置されており、未溶融状態(例えば粉状やペレット状)のプラスチック材料90を収容し、この未溶融状態のプラスチック材料90を材料供給口16を介してポット15に供給することができるように設置されている。
【0019】
可動型40は、昇降台60に載置されるベース41と、ベース41の上に設置された底部ブロック42と、底部ブロック42の上に設置された中間ブロック43と、中間ブロック43の上に配置され底部ブロック42に支持装置(図示略)を介して昇降可能に支持された浮遊ブロック44と、を備えている。
中間ブロック43には、材料供給ブロック10に設けられている充填通路18と同数のキャビティ45が上下に貫通して形成されている。各キャビティ45の上部は開口しているが、下部開口は底部ブロック42によって閉塞されている。
浮遊ブロック44には、キャビティ45と同数のスプル46が貫通形成されている。スプル46はキャビティ45と比較して極めて小径の管状をなしている。この実施形態では、キャビティ45とスプル46によって、製品を成形するための製品成形部が構成される。
【0020】
充填通路18とキャビティ45とスプル46は同一鉛直線上に配置されており、後述するように、可動型40を上昇させて型締めしたときに、浮遊ブロック44の上面が材料供給ブロック10の断熱部材17の下面に当接し、中間ブロック43の上面が浮遊ブロック44の下面に当接して、ポット15と充填通路18とスプル46とキャビティ45とが連通する。
【0021】
可動型40は加熱装置49によって、キャビティ45とスプル46に充填された溶融状態のプラスチック材料90を硬化させることができる温度(例えば150〜200゜C)に制御可能となっている。以下、この温度を硬化温度と称す。なお、加熱装置49は、可動型40と一体に構成しなくてもよく、予め加熱装置49で所定温度に加熱しておいた可動型40を、加熱装置49から取り外して昇降台60に載置するようにしてもよい。
【0022】
また、この成形装置1には、昇降台60のテーブル61が所定高さに上昇したときにオンとなるリミットスイッチ65が設置されている。ここで、リミットスイッチ65の設置高さは、最終サイクルにおいて可動型40がストローク(上昇)したときにオンするように設定されている。なお、ここで言う最終サイクルとは、サイクルの開始時にポット15に1サイクル分のプラスチック材料90が残っている状態で行うサイクルであり、この実施形態では3サイクル目となる。このリミットスイッチ65は、可動型40のストローク量が所定値に達したことを検出するストローク量検出手段と言うことができる。
【0023】
次に、この成形装置1を用いて実施する熱硬化性プラスチックの成形方法を説明する。
図1は、可動型40が最下点に下降し、閉塞装置70のプランジャ72が上方に退避している状態を示している。この状態では、材料供給ブロック10の材料供給口16が開いており、可動型40の浮遊ブロック44が材料供給ブロック10の断熱部材17から離間しているとともに、可動型40の中間ブロック43からも離間して位置している。
【0024】
この状態において、材料供給ブロック10の上側ボディ12と下側ボディ13とを予熱装置14によって溶融保持温度に予熱し、可動型40を加熱装置49によって硬化温度に加熱する。
そして、ホッパー80に収容されている未溶融のプラスチック材料90を、所定量だけ材料供給ブロック10の材料供給口16からポット15に供給する。なお、この場合の所定量とは、この実施形態では3サイクル分の成形に必要なプラスチック材料90よりも若干多い程度とし、3サイクル分の成形が終了したときにポット15内にプラスチック材料90が残るように設定する。したがって、この材料供給時におけるプラスチック材料90の計量精度は低くてよく、計量には容積計量器(計量カップなど)を用いることができる。
ポット15に供給された未溶融のプラスチック材料90は、予熱温度に管理された上側ボディ12および下側ボディ13から熱を受け、ポット15内にて溶融して、溶融プラスチック91となる。
【0025】
そして、ポット15へのプラスチック材料90の供給終了後に、図2に示すように、閉塞装置70のプランジャ72を下降させて、上側ボディ12の材料供給口16を閉塞する。以下の説明では、このように可動型40が最下点に位置し、閉塞装置70のプランジャ72により材料供給口16が閉塞された状態を、型開き状態という。
次に、型締めするために、昇降台60のテーブル61を上昇させていく。
テーブル61が上昇すると、可動型40の全体が上昇し、まず、可動型40の浮遊ブロック44が材料供給ブロック10の断熱部材17に当接し、ここで、浮遊ブロック44の上昇が停止せしめられる。このとき、材料供給ブロック10の充填通路18と浮遊ブロック44のスプル46とが連通する。
【0026】
さらにテーブル61が上昇すると、中間ブロック43と底部ブロック42とベース41が一体となって上昇し、停止している浮遊ブロック44に接近していき、中間ブロック43の上面が浮遊ブロック44の下面に当接する。このとき、中間ブロック43のスプル46と底部ブロック42のキャビティ45とが連通し、その結果、材料供給ブロック10のポット15が可動型40のキャビティ45およびスプル46に連通する。
【0027】
さらにテーブル61が上昇すると、可動型40が材料供給ブロック10を押圧して、可動型40と材料供給ブロック10の下側ボディ13とが一体となって上昇する。その結果、材料供給ブロック10の上側ボディ12の突出部12aが、下側ボディ13の凹部13a内において相対的に前進し、ポット15内の溶融プラスチック91を圧縮していく。圧縮された溶融プラスチック91は、下側ボディ13および断熱部材17の充填通路18から押し出され、可動型40のスプル46およびキャビティ45に充填されていく。
すなわち、可動型40を材料供給ブロック10に押圧することにより、ポット15内で溶融した溶融プラスチック91を圧縮し、充填通路18から押し出してキャビティ45とスプル46に充填する。
【0028】
スプル46およびキャビティ45に溶融プラスチック91が完全に充填されると、テーブル61の上昇に伴って溶融プラスチック91の圧力が上昇していくため、昇降台60の押し上げ荷重が上昇していく。そして、昇降台60の押し上げ荷重が所定値に達したときにテーブル61の上昇を停止し、所定時間、この型締め位置に保持する。つまり、テーブル61の上昇停止タイミング(型締め位置)は昇降台60の押し上げ荷重により管理する。なお、図3は、最終サイクル(3サイクル目)における型締め状態を示している。
【0029】
この型締め状態において、キャビティ45とスプル46に充填された溶融プラスチック91は、硬化温度に管理された可動型40から熱を受けて硬化し、製品92となる。なお、型締め状態において材料供給ブロック10と可動型40とが当接するが、材料供給ブロック10の下側ボディ13の下面には断熱部材17が設けられているので、可動型40から材料供給ブロック10への熱伝導が防止され、ポット15内の溶融プラスチック91が硬化温度になることはない。
【0030】
次に、図4に示すように、昇降台60により可動型40を下降させて、可動型40を材料供給ブロック10から離反させて型開き状態に戻し、可動型40を昇降台60のテーブル61から取り外し、可動型40から製品92を取り出すとともに、別の可動型40をテーブル61の上にセットし(すなわち、可動型40の段取り換えを行い)、次のサイクルに備える。
【0031】
この実施形態では、ポット15に3サイクル分の溶融プラスチック91が収容されており、3サイクル目が終了するまではポット15に未溶融のプラスチック材料90を補充しない。
図5は、この実施形態における成形サイクルを示すタイムスケジュールであり、この図を参照してポット15への未溶融のプラスチック材料90の補充タイミングについて説明する。
【0032】
前述したように、各サイクルにおいてテーブル61の上昇停止タイミング(型締め位置)は昇降台60の押し上げ荷重により管理している。そして、1サイクル毎にポット15内の溶融プラスチック91が減少していくので、型締め位置(可動型40あるいはテーブル61の位置)が1サイクル毎に上昇していく。しかしながら、1サイクル目と2サイクル目における型締め位置ではテーブル61がリミットスイッチ65の高さまで達していないので、プラスチック材料90の補充は行わない。
【0033】
そして、3サイクル目(最終サイクル)になると、可動型40(テーブル61)が型締め位置に達する直前に、テーブル61がリミットスイッチ65に接触し、リミットスイッチ65をオンさせる。
このようにリミットスイッチ65がオンした場合には、この3サイクル目の成形サイクルの終了前の型開き状態において、可動型40の段取り換え(製品取り出し)と並行して、閉塞装置70のプランジャ72を上昇させて材料供給口16を開き、ホッパー80から未溶融のプラスチック材料90をポット15に供給し、その後、プランジャ72を下降して材料供給口16を閉塞し、次の1サイクル目の成形サイクルに備える。
【0034】
以上説明したように、この実施形態における熱硬化性プラスチックの成形方法は、次の(1)〜(5)の工程を備えている。
(1)未溶融の熱硬化性のプラスチック材料90を材料供給ブロック10のポット15内に供給し、ポット15内でプラスチック材料90を溶融する工程。
(2)ポット15に連なる材料供給口16を閉塞する工程。
(3)キャビティ15を有する可動型40を材料供給ブロック10に押圧することにより、ポット15内で溶融した溶融プラスチック91を圧縮し材料供給ブロック10の充填通路18から押し出して可動型40のキャビティ45とスプル46に充填し、これらキャビティ45、スプル46に充填された溶融プラスチック91を加熱し硬化させる工程。
(4)可動型40を材料供給ブロック10から離反させて、前記キャビティ45、スプル46で硬化させたプラスチック製品92を取り出す工程。
(5)可動型40のストローク量が所定値に達した場合には、当該サイクルの終了前に、材料供給口16を開き、材料供給口16から材料供給ブロック10のポット15に未溶融のプラスチック材料90を供給する工程。
【0035】
上記(1)の工程を備えることにより、材料供給ブロック10のポット15に直接、未溶融のプラスチック材料90を供給し、このポット15内でプラスチック材料90を溶融させるので、工程および制御を簡略化することができ、生産性が向上する。また、工程および制御の簡略化により、設備コストの低減を図ることができる。
また、上記(5)の工程を備えることにより、ポット15へのプラスチック材料90の補給タイミングの管理が容易になる。
【0036】
また、この実施形態の成形装置1によれば、上記熱硬化性プラスチックの成形方法を容易に実施することができる。
また、材料供給ブロック10のポット15に直接、未溶融のプラスチック材料90を供給し、このポット15内でプラスチック材料90を溶融させることができるので、成形工程および制御を簡略化することができ、生産性が向上する。また、成形装置1のコストダウンを図ることができる。
さらに、材料供給ブロック10と可動型40とを分離し、上側に配置された材料供給ブロック10には製品を成形するためのキャビティがなく、下側に配置された可動型40にのみキャビティ45、スプル46が設けられているので、金型(可動型40)の段取り換えが容易にでき、生産性が向上する。さらに、キャビティ45、スプル46を有する可動型40だけを変更することで製品92の仕様変更に対応することができるので、汎用性に富み、多機種少量生産に応えることができる。
【0037】
また、可動型40のストローク量が所定値に達したことを検出するリミットスイッチ65によって、ポット15へのプラスチック材料90の補給タイミングを検知することができるので、材料供給の管理が容易になる。なお、リミットスイッチ65に代えて近接スイッチを用いてもよい。
【0038】
また、材料供給ブロック10の下側ボディ13の下面に断熱部材17を設けているので、可動型40から材料供給ブロック10への熱伝達を抑制することができ、材料供給ブロック10のポット15内の溶融プラスチック91への可動型40の熱的な影響を低減あるいは防止することができる。これにより、ポット15内の溶融プラスチック91を硬化させないようにすることができる。なお、断熱部材17は、下側ボディ13に設ける代わりに、可動型40の浮遊ブロック44の上面に設けてもよく、あるいは下側ボディ13と浮遊ブロック44の両方に設けることも可能である。いずれの場合も前記効果を得ることができる。
【0039】
〔他の実施例〕
なお、この発明は前述した実施形態に限られるものではない。
例えば、前述した実施形態では、ポット15へのプラスチック材料90の補給を3サイクル毎としたが、ポット15の容量設定により、2サイクル毎や4サイクル毎、あるいはそれ以上とすることが可能である。
【符号の説明】
【0040】
1 熱硬化性プラスチックの成形装置
10 材料供給ブロック(材料供給部)
15 ポット
16 材料供給口
12 上側ボディ
13 下側ボディ
14 予熱装置(予熱手段)
17 断熱部材
18 充填通路
40 可動型
45 キャビティ
46 スプル
49 加熱装置(加熱手段)
65 リミットスイッチ(ストローク量検出手段)
70 閉塞手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
未溶融の熱硬化性のプラスチック材料を材料供給部のポット内に供給し、前記ポット内で前記プラスチック材料を溶融する工程と、
前記ポットに連なる材料供給口を閉塞する工程と、
キャビティを有する可動型を前記材料供給部に押圧することにより、前記ポット内で溶融したプラスチック材料を圧縮し前記材料供給部の充填通路から押し出して前記可動型の前記キャビティに充填し、前記キャビティに充填されたプラスチック材料を加熱し硬化させる工程と、
前記可動型を前記材料供給部から離反させて、前記キャビティで硬化させたプラスチック製品を取り出す工程と、
を備えることを特徴とする熱硬化性プラスチックの成形方法。
【請求項2】
前記ポットには複数サイクル分の前記プラスチック材料が収容可能であり、
前記可動型のストローク量が所定値に達した場合には、当該サイクルの終了前に、前記材料供給口を開き、該材料供給口から前記材料供給部の前記ポットに未溶融の前記プラスチック材料を供給する工程、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の熱硬化性プラスチックの成形方法。
【請求項3】
上下方向に相対移動可能でその間に材料溜まり部となるポットを形成する上側ボディおよび下側ボディを有し、前記上側ボディには前記ポットに未溶融の熱硬化性のプラスチック材料を供給可能にする材料供給口が設けられ、前記下側ボディには前記ポット内で溶融された前記プラスチック材料を導出する充填通路が設けられた材料供給部と、
前記材料供給部の前記材料供給口を閉塞可能にする閉塞手段と、
前記材料供給部の前記ポットに供給された未溶融の前記プラスチック材料を溶融可能な温度に前記材料供給部を加熱する予熱手段と、
キャビティを有し、前記材料供給部の下方に配置されて上下方向に移動可能に設置され、上方移動により前記材料供給部に当接したときに前記材料供給部の前記充填通路と前記キャビティとが連なり、さらなる上方移動により、前記ポット内で溶融された前記プラスチック材料が前記キャビティに充填される可動型と、
前記可動型の前記キャビティに充填された前記プラスチック材料を硬化可能な温度に前記可動型を加熱する加熱手段と、
を備えることを特徴とする熱硬化性プラスチックの成形装置。
【請求項4】
前記ポットは、複数サイクル分の前記プラスチック材料が収容可能な容量を有し、
前記可動型のストローク量が所定値に達したことを検出するストローク量検出手段を備えることを特徴とする請求項3に記載の熱硬化性プラスチックの成形装置。
【請求項5】
前記材料供給部と前記可動型の少なくともいずれか一方には、他方との当接部に断熱部材が設けられていることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の熱硬化性プラスチックの成形装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−200887(P2012−200887A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−64684(P2011−64684)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000144027)株式会社ミツバ (2,083)
【Fターム(参考)】