説明

熱硬化性ポリウレタン樹脂組成物

【課題】耐熱性、電気特性、機械物性、寸法安定性に優れる硬化物が得られ、硬化前の保存安定性も優れる熱硬化性樹脂組成物を提供。
【解決手段】式(1)及び/又は式(2)の構造を有するポリウレタン樹脂と、エポキシ樹脂と、硬化剤とを含有し、該硬化剤がフェノール類とトリアジン類とアルデヒド類との縮合物(c1)、トリアジン類とアルデヒド類との縮合物(c2)、フェノール類とアルデヒド類との縮合物、フェノール類、トリアジン類の混合物からなり、該縮合物(c1)及び該縮合物(c2)の中に、2種類の特定の構造単位が特定のモル比で含まれているトリアジン変性ノボラック型フェノール樹脂である熱硬化性ポリウレタン樹脂組成物。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃性、耐熱性、電気特性、および柔軟性に優れる硬化物が得られ、また、硬化前の保存安定性も優れ、各種耐熱性コーティング材料や電気絶縁材料、例えばプリント配線基板の層間絶縁材料、ビルドアップ材料、半導体の絶縁材料、耐熱性接着剤等の分野に好ましく用いることができる熱硬化性ポリウレタン樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
耐熱性コーティング材料、電気絶縁材料、例えばプリント配線基板の層間絶縁材料、ビルドアップ材料、半導体の絶縁材料、耐熱性接着剤等の電気電子産業分野に用いられる樹脂組成物の硬化物の耐熱性、低誘電率や低誘電正接などの電気特性、柔軟性に加え、硬化前の樹脂組成物の保存安定性等の向上が要望されている。特にコンピューター等の電子機器では、信号の高速化や高周波数化に伴いプリント基板の信号の伝達遅延やクロストークの発生等の伝達特性が問題となっている。また、プリント基板に使用される樹脂組成物については得られる硬化物の誘電率の低い材料が求められている。
【0003】
耐熱性に優れる硬化物が得られる樹脂組成物としては、例えば、エポキシ樹脂を含有する樹脂組成物が多く用いられている。該樹脂組成物としては、例えば、重量平均分子量35,000未満のエポキシ樹脂、多官能フェノール樹脂、重量平均分子量35,000以上の高分子量エポキシ樹脂、硬化促進剤、還元剤及び尿素化合物を配合してなるエポキシ樹脂組成物が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、該エポキシ樹脂組成物を用いて得られる硬化物でも耐熱性、電気特性、寸法安定性が満足できるものではない。
【0004】
また、他の樹脂組成物として、例えば、ポリイミド樹脂を含有する樹脂組成物も多く用いられている。該樹脂組成物としては、例えば、カルボキシル基と数平均分子量300〜6,000の線状炭化水素構造とを有するポリイミド樹脂と、エポキシ樹脂とを含有する熱硬化性ポリイミド樹脂組成物が知られている(例えば、特許文献2参照。)。しかしながら、該特許文献2に記載された熱硬化性ポリイミド樹脂組成物の硬化物でも耐熱性も十分ではなく、寸法安定性にも劣る。
【0005】
【特許文献1】特開平5−295090号公報
【特許文献2】特開2003−292575号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、耐熱性、電気特性、および柔軟性に優れる硬化物が得られ、また、硬化前の保存安定性も優れる熱硬化性ポリウレタン樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、下記の知見を見出した。
(1)フェノール系化合物の構造残基と、フェノール性水酸基およびイソシアネート基の反応にて生成されるウレタン結合とを有するポリウレタン樹脂と、エポキシ樹脂とフェノール類とトリアジン類との結合比率が特定の割合であるフェノール系硬化剤とを含有する樹脂組成物の硬化物は、難燃性、耐熱性、電気特性、柔軟性に優れる。
【0008】
(2)前記樹脂組成物は保存安定性にも優れる。
本発明は上記の知見を基に完成したものである。
【0009】
即ち、本発明は、下記一般式(1)および/または下記一般式(2)で表される構造を有するポリウレタン樹脂(A)と、エポキシ樹脂(B)と、硬化剤(C)とを含有する熱硬化性ポリウレタン樹脂組成物であり、該硬化剤(C)がフェノール類とトリアジン類とアルデヒド類とからなるトリアジン変性ノボラック型フェノール樹脂であって、該ノボラック型フェノール樹脂が、フェノール類とトリアジン類とアルデヒド類との縮合物(c1)、トリアジン類とアルデヒド類との縮合物(c2)、フェノール類とアルデヒド類との縮合物(c3)、フェノール類(c4)及びトリアジン類(c5)の混合物からなり、且つ該縮合物(c1)及び該縮合物(c2)の中に、一般式(20)で表される構造単位Fと一般式(21)で表される構造単位Gが、モル比率で下記式(22)を満足する状態で含まれているフェノール樹脂であることを特徴とする熱硬化性ポリウレタン樹脂組成物を提供するものである。
(−D−NH−CH2−NH−) (20)
(−D−NH−CH2−E−) (21)
(式中、Dはトリアジン類の残基を示し、Eはフェノール類残基を示す)
G/F≧1.5 (22)
【0010】
【化1】

【0011】
【化2】

(式中、Xは1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有するフェノール系化合物から2個のフェノール性水酸基を除いた残基を示す。)
【0012】
また、本発明は前記熱硬化性ポリウレタン樹脂組成物を熱硬化してなることを特徴とする硬化物を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の熱硬化性ポリウレタン樹脂組成物は、難燃性、耐熱性、電気特性、および柔軟性に優れる硬化物を提供できる。また保存安定性も優れる熱硬化性ポリウレタン樹脂組成物である。従って、各種耐熱性コーティング材料や電気絶縁材料、例えばプリント配線基板の層間絶縁材料、ビルドアップ材料、半導体の絶縁材料、耐熱性接着剤等の分野に好ましく用いることができる。更に、接着フィルム、プリプレグ多層プリント配線基板及び樹脂付銅箔の分野にも好ましく用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明で用いるポリウレタン樹脂(A)は、下記一般式(1)および/または下記一般式(2)で表されるように、ポリウレタン結合としてイソシアネート基とフェノール性水酸基とが連結した構造を有する。ポリウレタン樹脂(A)としては、なかでも有機溶剤に溶解するポリウレタン樹脂が取り扱い易いことから好ましい。
【0015】
【化3】

【0016】
【化4】

(式中、Xは1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有するフェノール系化合物から2個のフェノール性水酸基を除いた残基を示す。)
【0017】
前記一般式(1)で表される構造を有するポリウレタン樹脂としては、例えば、下記一般式(3)で表される構造を有するポリウレタン樹脂等が挙げられる。
【0018】
【化5】

(上記式中RxおよびRxは同一でも異なっていても良く、ポリイソシアネート化合物から二つのイソシアネート基を除いた残基を示す。Xは1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有するフェノール系化合物から2個のフェノール性水酸基を除いた残基を示す。)
【0019】
また、前記一般式(2)で表される構造を有するポリウレタン樹脂としては、例えば、下記一般式(4)で表される構造を有するポリウレタン樹脂等が挙げられる。
【0020】
【化6】

(上記式中Rxはポリイソシアネート化合物から二つのイソシアネート基を除いた残基を示す。Xは1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有するフェノール系化合物から2個のフェノール性水酸基を除いた残基を示す。)
【0021】
前記一般式(3)及び一般式(4)中のRxやRxはそれぞれ同一でも良いし異なっていても良い。
【0022】
ここで、上記一般式(3)においてRxおよび/またはRxが後述する一般式(15)のRに該当すると、一般式(15)に一般式(1)が結合した構造を有した分岐状ポリウレタン樹脂となる。上記一般式(4)においてRxが後述する一般式(15)のR5に該当すると、一般式(15)に一般式(2)が結合した構造を有した分岐状ポリウレタン樹脂となる。
【0023】
前記一般式(1)〜一般式(4)中のXとしては、例えば、下記構造等が挙げられる。
【0024】
【化7】

(式中Rは、単結合あるいは2価の連結基であり、Rは同一でも異なっていても良く、水素原子または炭素原子数1〜18のアルキル基を示す。)
【0025】
【化8】

(式中Rは、直接結合あるいは2価の連結基であり、Rは同一でも異なっていても良く、水素原子または炭素原子数1〜18のアルキル基を示す。aとbとcとの合計は1以上である。)
【0026】
【化9】

(式中Rは、水素原子または炭素原子数1〜18のアルキル基または下記一般式(8)で示される構造を示す。)
【0027】
【化10】

【0028】
【化11】

【0029】
【化12】

【0030】
本発明で用いるポリウレタン樹脂(A)としては、一般式(1)及び(2)のXが、前記一般式(5)、(6)、(7)、および(9)の群から選ばれる一種以上の構造を有するポリウレタン樹脂が、耐熱性に優れる硬化物を提供できるため好ましく、中でも、一般式(5)および一般式(6)で表される構造がより好ましい。特に本発明で用いるポリウレタン樹脂が後述するように硬化物に柔軟性を付与する構造を有する、例えば、後述する一般式(13)等の構造を有するポリウレタン樹脂の場合、一般式(1)や一般式(2)中のXは、一般式(6)で示される構造を有することが好ましい。
【0031】
前記一般式(5)や一般式(6)で示される構造中のRとしては、例えば、直接結合;カルボニル基、スルホニル基、メチレン基、イソプロピリデン基、ヘキサフルオロイソプロピリデン基、オキソ基、ジメチルシリレン基、フルオレン−9−ジイル基、およびトリシクロ[5.2.1.02,8]デカン−ジイル基等の2価の連結基等が挙げられる。Rとしては、例えば、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、およびステアリル基等の炭素原子数1〜18のアルキル基等が挙げられる。また、一般式(7)で示される構造中のRとしての炭素原子数1〜18のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、およびステアリル基等が挙げられる。
【0032】
尚、本発明において、カルボニル基は下記構造式(1a)、スルホニル基は下記構造式(1b)、メチレン基は下記構造式(1c)、イソプロピリデン基は下記構造式(1d)、ヘキサフルオロイソプロピリデン基は下記構造式(1e)、オキソ基は下記構造式(1f)、ジメチルシリレン基は下記構造式(1g)、フルオレン−9−ジイル基は下記構造式(1h)、そしてトリシクロ[5.2.1.02,8]デカン−ジイル基は下記構造式(1i)で表される。これらは、ビフェノール、テトラメチルビフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ナフタレンジオール、およびジシクロペンタジエン変性ビスフェノール等の残基である。(なお、図中の*は結合部位を表す。)また、ポリフェノール化合物、例えば、フェノールノボラック樹脂やクレゾールノボラック樹脂、ナフトールとアルキルフェノールとホルムアルデヒド縮合物とから合成されるポリフェノール樹脂等から2つの水酸基を除いた構造残基等でもよい。
【0033】
【化13】

【0034】
前記一般式(5)中のRの中でも、直接結合、前記一般式(1b)、一般式(1c)、および一般式(1d)で示される構造が溶解性、相溶性に優れる熱硬化性ポリウレタン樹脂組成物が得られ、また、ポリウレタン樹脂(A)を得る際の合成もしやすいことから好ましい。また、前記Rの中でも、水素原子およびメチル基が好ましい。また、前記一般式(6)中のRの中でも前記一般式(1i)で示される構造が耐熱性に優れる熱硬化性ポリウレタン樹脂組成物が得られることから好ましい。尚、前記一般式(1i)で示される構造は以下、下記に示す一般式(11)として表す。
【0035】
【化14】

【0036】
本発明で用いるポリウレタン樹脂(A)は、前記一般式(1)で表される構造および/または一般式(2)で表される構造を有すれば良いが、中でも前記一般式(1)で表される構造および一般式(2)で表される構造を有するポリウレタン樹脂を使用すると、硬化性が良好な熱硬化性ポリウレタン樹脂組成物が得られることからより好ましい。ここで、前記一般式(1)で示される構造及び前記一般式(2)で示される構造中のXは同一でも良いし異なっていても良い。
【0037】
また、前記一般式(6)で表される構造を有するポリウレタン樹脂としては、例えば、以下の構造を有するポリウレタン樹脂が挙げられる。
【0038】
【化15】

【0039】
Rxは、同一であっても異なっていても良く、ポリイソシアネート化合物から二つのイソシアネート基を除いた残基を示す。aおよびbは、それぞれ1〜10の整数であり、おのおの括られた核単位は、ランダムにつながっている。
【0040】
そして1)aが1の場合は、一般式(2)の末端にポリフェノール構造が存在する形態となり、2)aが2の場合は、一般式(1)の分子主鎖中にポリフェノール構造が存在する形態となり、3)aが3以上の場合は、ポリウレタン樹脂の構造が分岐の形態となる。更にaが1、2および3以上の形態が分子内に同時に存在していても良い。
【0041】
ポリウレタン樹脂(A)として前記一般式(1)で表される構造と一般式(2)で表される構造とを有するポリウレタン樹脂の具体例としては、例えば、下記一般式(12)で表される構造を有するポリウレタン樹脂等を挙げることができる。
【0042】
【化16】

(上記式中Rxはポリイソシアネート化合物から2つのイソシアネート基を除いた残基を示す。Xは1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有するフェノール系化合物から2個のフェノール性水酸基を除いた残基を示す。mは0〜100の整数である。)
【0043】
ポリウレタン樹脂(A)の中でも、前記一般式(3)及び一般式(4)で示されるポリウレタン樹脂で、RxおよびRxが2官能のジイソシアネート化合物から2つのイソシアネート基を除いた残基である場合は、前記一般式(12)で示される様な線状の構造を有するポリウレタン樹脂となる。また、RxおよびRxが3官能以上のポリイソシアネート化合物から2つのイソシアネート基を除いた残基である場合は、分岐状の構造を有するポリウレタン樹脂となる。
【0044】
前記一般式(2)中の末端の水酸基はフェノール性水酸基であり、このフェノール性水酸基は、多官能フェノール化合物の1個の水酸基がウレタン結合で樹脂骨格に連結した以外の残りのフェノール性水酸基である。一般式(2)で示される構造を得る際に用いる多価のフェノール性水酸基含有化合物は、2官能フェノール化合物が好ましいが、2官能フェノール化合物以外に3官能以上のポリフェノール化合物を使用あるいは併用し、末端に複数のフェノール性水酸基を残存させても良い。
【0045】
本発明で用いるウレタン樹脂(A)は、一般式(1)および/または一般式(2)で示される様に、フェノール性水酸基とイソシアネート基とからなるウレタン結合を有する。一般に、フェノール性水酸基とイソシアネート基とによるウレタン結合は、高温下で解離する為、フェノールやクレゾール等の低分子モノフェノール化合物などをイソシアネート基のブロック剤として使用することがある。しかしながらこうしたブロック剤は塗膜や成型物の硬化反応において解離し、揮発成分として気泡やボイドの発生原因となり、好ましいものではない。
【0046】
本発明では、2価以上のポリフェノール化合物を用いてフェノール性水酸基の導入を行うため、硬化時の高温状況下で樹脂から解離しても揮発せず系内に残存する。その為、ポリウレタン樹脂(A)は積極的にエポキシ樹脂(B)と架橋反応してより硬化する。また、イソシアネート基は、このフェノール性水酸基とエポキシ基との反応により生成するアルコール性水酸基とさらにウレタン化反応を行い、分子の新たな架橋構造を構築し、誘電特性に不利な水酸基をブロックすると考えられる。つまり、生成するウレタン結合が樹脂骨格と新たなネットワークを形成し、これにより良好な耐熱性あるいは機械物性を発現すると本発明者らは考えている。
【0047】
更に、本発明の熱硬化性ポリウレタン樹脂組成物は、フェノキシ樹脂(C)を含有している。本発明では、このフェノキシ樹脂(C)バインダー成分としてポリウレタン樹脂(A)とエポキシ樹脂(B)との反応により得られた架橋構造に組み込まれた硬化形態をとる。これにより良好な耐熱性と強靭な機械物性とを発現する。
【0048】
また、本発明で用いるポリウレタン樹脂(A)が、前記一般式(2)で表される構造を有するポリウレタン樹脂である場合、末端にフェノール性水酸基を有するが、この水酸基もエポキシ樹脂と反応して硬化に寄与する。
【0049】
本発明の熱硬化性ポリウレタン樹脂組成物に用いるポリウレタン樹脂(A)としては、更に下記一般式(13)で示される構造を有するポリウレタン樹脂を用いることにより、伸度が大きく、柔軟性に優れる硬化物が得られる。その為、例えば、ポリウレタン樹脂(A)の中でも、下記一般式(13)で示される構造を有するポリウレタン樹脂を含有する熱硬化性ポリウレタン樹脂組成物はフレキシブル基板用の絶縁層用の樹脂組成物として好ましく用いることができる。
【0050】
【化17】

(式中、Yは1分子中に少なくとも2個のアルコール性水酸基を有するポリオール化合物から2つの水酸基を除いた残基を示す。)
【0051】
前記一般式(13)中のYで示される少なくとも2個のアルコール性水酸基を有するポリオール化合物から2つの水酸基を除いた残基(残基構造)としては、例えば、1分子中に少なくとも2個のアルコール性水酸基を有するポリオレフィンポリオールから2つの水酸基を除いた残基、1分子中に少なくとも2個のアルコール性水酸基を有するポリエーテルポリオールから2つの水酸基を除いた残基、1分子中に少なくとも2個のアルコール性水酸基を有するポリカーボネートポリオールから2つの水酸基を除いた残基、1分子中に少なくとも2個のアルコール性水酸基を有するポリエステルポリオールから2つの水酸基を除いた残基および1分子中に少なくとも2個のアルコール性水酸基を有するポリシロキサンポリオールから2つの水酸基を除いた残基等を好ましく挙げることができる。さらにこれらの残基構造から選ばれる1種以上の残基構造及び/又は共重縮合体としてもよい。
【0052】
なお、前記一般式(13)中のYとしては、塗膜の柔軟性に加えて特に誘電特性等を向上させたい場合は、1分子中に少なくとも2個のアルコール性水酸基を有するポリオレフィンポリオールから2つの水酸基を除いた残基が好ましい。また、物性と耐加水分解性とを向上させたい場合は、1分子中に少なくとも2個のアルコール性水酸基を有するポリカーボネートポリオールから2つの水酸基を除いた残基が好ましい。
【0053】
前記一般式(13)中のYとしては、硬化物の伸度が大きく、且つ、柔軟性を保有させることができることから、数平均分子量が300〜5,000が好ましく、500〜3,000がより好ましい。また、一般式(13)中のYのガラス転移温度(Tg)としては0℃以下が好ましく、0〜−150℃がより好ましい。
【0054】
前記一般式(1)および/または一般式(2)、および一般式(13)で表される構造を有するポリウレタン樹脂としては、例えば、下記一般式(14)で表される構造を有するポリウレタン樹脂等が挙げられる。
【0055】
【化18】

〔上記式中RxとRxとは、同一であっても異なっていても良く、ポリイソシアネート化合物から二つのイソシアネート基を除いた残基構造を示す。Zは、1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有するフェノール系化合物から2個のフェノール性水酸基を除いた残基(X)または1分子中に少なくとも2個のアルコール性水酸基を有するポリオール化合物から2つの水酸基を除いた残基(Y)であるが、Cで示される繰り返しの単位において少なくとも一つは、Yの構造である。Cは、1から100の整数である。〕
【0056】
前記一般式(13)で表される構造を有するポリウレタン樹脂としては、前記一般式(1)および/または一般式(2)で表される構造および一般式(13)で表される構造を有すれば良いが、中でも前記一般式(1)で表される構造、一般式(2)で表される構造、および一般式(13)で表される構造をすべて有するポリウレタン樹脂が、耐熱性と硬化性とに優れる硬化物を提供できるため好ましい。ここで、前記一般式(1)で示される構造及び前記一般式(2)で示される構造中のXは同一でも良いし異なっていても良い。
【0057】
本発明で用いるポリウレタン樹脂(A)は下記一般式(15)で示される構造にて分岐しているポリウレタン樹脂が、他の樹脂成分との相溶性、溶剤溶解性の向上や得られる硬化塗膜の耐熱性が良好なことから好ましい。
【0058】
【化19】

(式中Rはジイソシアネート化合物からイソシアネート基を除いた残基構造を示す。)
【0059】
前記一般式(15)中のR5としては、例えば、芳香族系の残基構造、脂肪属系の残基構造、および脂環族系等の残基構造等が挙げられる。中でも、炭素原子数が4から13のものを好ましく使用することができる。Rの構造は、結晶化の防止や溶解性向上の面から2種以上の構造を併用したほうが好ましい。特に芳香族系の残基構造と脂肪族あるいは脂環族の残基構造との併用が好ましい。
【0060】
前記一般式(15)で示される構造にて分岐しているポリウレタン樹脂は、例えば、原料としてイソシアヌレート型ポリイソシアネート化合物を用いて合成することにより得られる。
【0061】
本発明で用いるポリウレタン樹脂(A)は、例えば、2個以上のフェノール性水酸基を有するポリフェノール化合物(a1)とポリイソシアネート化合物(a2)とを反応させることにより容易に得ることができる。具体的には、攪拌装置、温度計及びコンデンサーを付けたフラスコにポリフェノール化合物(a1)とポリイソシアネート化合物(a2)とを仕込み、攪拌を行いながら発熱に注意して昇温し、反応させる。50℃から250℃の範囲で昇温させることができるが、反応速度と副反応防止との面から70℃から180℃の温度で行うことが好ましい。また、ウレタン結合の解離を防ぐ為に70〜140℃で反応を行うことが更に好ましい。反応する際の時間としては、通常1〜20時間である。
【0062】
前記2個以上のフェノール性水酸基を有するポリフェノール化合物(a1)としては、例えば、ハイドロキノン、ビフェノール、テトラメチルビフェノール、エチリデンビスフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、シクロヘキシリデンビスフェノール(ビスフェノールZ)、ジメチルブチリデンビスフェノール、4,4’−(1−メチルエチリデン)ビス〔2,6−ジメチルフェノール〕、4,4’−(1−フェニルエチリデン)ビスフェノール、5,5’−(1−メチルエチリデン)ビス〔1,1’−ビフェニル−2−オール〕、ナフタレンジオール、ジシクロペンタジエン変性ビスフェノール、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−フォスファフェナンスレン−10−オキサイドとハイドロキノンとの反応生成物等が挙げられる。
【0063】
ポリフェノール化合物(a1)として、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂及びノニルフェノールノボラック樹脂等のアルキルフェノールのノボラック樹脂等の3官能以上のフェノール化合物も使用可能である。
【0064】
ポリフェノール化合物(a1)としては2個のフェノール性水酸基を含有するポリフェノール化合物、つまり2官能のポリフェノール化合物を使用することが好ましい。中でも、ビスフェノールA、ビスフェノールF、およびビスフェノールS等のビスフェノール系化合物がより好ましい。
【0065】
また、難燃性や耐熱性に優れる硬化物が得られることから、ポリウレタン樹脂(A)を得る際に、ナフタレンジオールや9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−フォスファフェナンスレン−10−オキサイドとハイドロキノンとの反応生成物を使用することが好ましい。
【0066】
尚、本発明の効果を損なわない範囲で一部、フェノールやクレゾール等の一官能性のフェノール化合物を併用しても良い。
【0067】
本発明で用いるポリイソシアネート化合物(a2)としては、例えば、芳香族ポリイソシアネート化合物、および脂肪族ポリイソシアネート化合物等が使用可能である。
【0068】
前記芳香族ポリイソシアネート化合物としては、例えば、p−フェニレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−キシレンジイソシアネート、m−キシレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3′−ジメチルジフェニル−4,4′−ジイソシアネート、3,3′−ジエチルジフェニル−4,4′−ジイソシアネート、m−キシレンジイソシアネート、p−キシレンジイソシアネート、1,3−ビス(α,α−ジメチルイソシアナートメチル)ベンゼン、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ジフェニレンエーテル−4,4′−ジイソシアネート、およびナフタレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物等が挙げられる。
【0069】
前記脂肪族ポリイソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、水素添加キシレンジイソシアネート、およびノルボヌレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0070】
また前記ポリイソシアネート化合物(a2)として、前記ポリイソシアネート化合物(a2)と各種ポリオール成分とをイソシアネート基過剰で予め反応させたイソシアネートプレポリマーを使用または併用することも可能である。
【0071】
本発明の熱硬化性ポリウレタン樹脂組成物に用いるポリウレタン樹脂(A)は、分岐構造をとることにより、溶剤溶解性や硬化剤等その他の樹脂成分との相溶性が向上するためより好ましい。かかる分岐の手法としては、ポリイソシアネート化合物(a2)として、例えば、前記ジイソシアネート化合物等のイソシアヌレート体であるイソシアヌレート環を有する3官能以上のポリイソシアネート化合物の単独、あるいはこうしたポリイソシアネート化合物と前記ジイソシアネート化合物との混合物を使用することが好ましい。
【0072】
前記イソシアヌレート環を有する3官能以上のポリイソシアネート化合物は、例えば、1種または2種以上のジイソシアネート化合物を第4級アンモニウム塩等のイソシアヌレート化触媒の存在下あるいは非存在下において、イソシアヌレート化することにより得られるものであって、3量体、5量体、および7量体等のイソシアヌレートの混合物からなるもの等が挙げられる。前記ポリイソシアネート化合物のイソシアヌレート体の具体例としては、イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート型ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート型ポリイソシアネート、水素添加キシレンジイソシアネートのイソシアヌレート型ポリイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネートのイソシアヌレート型ポリイソシアネート等脂肪族系ポリイソシアネート類やジフェニルメタンジイソシアネートのイソシアヌレート型ポリイソシアネート、トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート型ポリイソシアネート、キシレンジイソシアネートのイソシアヌレート型ポリイソシアネート、およびナフタレンジイソシアネートのイソシアヌレート型ポリイソシアネート等が挙げられる。
【0073】
ポリイソシアネート化合物(a2)として、ジイソシアネート化合物とイソシアヌレート環を有する3官能以上のジイソシアネート化合物と併用する場合、ジイソシアネート化合物としての芳香族ジイソシアネートと、前記イソシアヌレート環を有する3官能以上のジイソシアネート化合物としての脂肪族ジイソシアネートのイソシヌレート型ポリイソシアネートおよび/または脂環式ジイソシアネートのイソシヌレート型ポリイソシアネートとを含有する混合物を用いるのが好ましい。
【0074】
前記ポリイソシアネート化合物(a2)として脂肪族ジイソシアネート化合物を用いると、溶解性に優れる熱硬化性ポリウレタン樹脂組成物が得られ、且つ、電気特性が良好な硬化塗膜が得られることからより好ましい。
【0075】
更に、ポリイソシアネート化合物(a2)は、前記以外のポリイソシアネート化合物、例えば、前記ジイソシアネート化合物や前記ジイソシアネートのビュレット体、アダクト体、アロハネート体、あるいはポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(クルードMDI)等と併用しても良い。
【0076】
本発明で用いるポリイソシアネート化合物(a2)は、溶剤溶解性が良好な熱硬化性ポリウレタン樹脂組成物が得られることから、2種以上のポリイソシアネート化合物を併用することが好ましい。加えて耐熱性に優れる硬化塗膜が得られることから上述のイソシアヌレート体を併用することが好ましい。イソシアヌレート体を併用する場合は、全ポリイソシアネート化合物(a2)量の70重量%以下に設定することが樹脂の高分子量化やゲル化を防ぐ意味で好ましい。
【0077】
ポリフェノール化合物(a1)とポリイソシアネート化合物(a2)との反応に際しては、ポリイソシアネート化合物(a2)に対してポリフェノール化合物(a1)が反応する。末端をフェノール性水酸基として残存させる為には、ポリフェノール化合物(a1)中のフェノール性水酸基のモル数がポリイソシアネート化合物(a2)中のイソシアネート基のモル数より大きくなる条件で反応させることが好ましい。合成上の安定性や硬化物の各種性能を考慮すると、上記フェノール性水酸基のモル数とイソシアネート基のモル数との比〔(a1)中のフェノール性水酸基のモル数/(a2)中のイソシアネート基のモル数〕が1から10の範囲が好ましく、より好ましくは1.05から7の範囲である。
【0078】
得られるポリウレタン樹脂の安定性が良好となることから、反応はイソシアネート基がほぼ全て反応するまで行った方が好ましい。また、若干残存するイソシアネート基に対して、アルコールやフェノール化合物を添加し反応させても良い。
【0079】
ところで、前記一般式(13)で表される構造を更に有するポリウレタン樹脂は、例えば、前記2個以上のフェノール性水酸基を有するポリフェノール化合物(a1)と前記ポリイソシアネート化合物(a2)とポリオール化合物(a3)とを反応させる製造方法により容易に得ることができる。
【0080】
前記ポリオール化合物(a3)としては、例えば、ポリオレフィンポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオール、ポリシロキサンポリオール等が挙げられる。ポリオール化合物(a3)は単独あるいは2種以上を併用しても良い。また、ポリオール化合物(a3)としては、前記ポリオレフィンポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオール、およびポリシロキサンポリオール等の2種以上の共重縮合構造を有するポリオール類も使用しても良い。
【0081】
前記ポリオレフィンポリオールとしては、例えば、ポリオレフィン構造やポリジエン構造を有するポリオール化合物等が挙げられる。具体的には、例えば、ポリエチレン系ポリオール、ポリプロピレン系ポリオール、ポリブタジエンポリオール、水素添加ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール、および水素添加ポリイソプレンポリオール等が挙げられる。なかでもポリブタジエンポリオールおよび/または水素添加ポリブタジエンポリオールが好ましく、さらにそのなかでも水素添加ポリブタジエンポリオールがより好ましく、ポリオレフィンジオールが特に好ましい。また、前記ポリオレフィンポリオールの脂肪族構造部分の数平均分子量は300〜6,000の範囲が好ましい。
【0082】
前記ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリブチレングリコール等のアルキレンエーテルポリオールやこれらポリアルキレンポリオールの共重合体が挙げられる。また、単独で用いても2種類以上併用しても良い。
【0083】
前記ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、プロピレンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、メチルペンタンジオール、シクロヘキサンジメタノール等から得られるポリアルキレンカーボネートポリオールやビスフェノールAやビスフェノールF,S等のアルキレンオキサイド付加ジオール等から得られるポリカーボネートポリオールやこれらの共重合体等が挙げられる。
【0084】
前記ポリエステルポリオールとしては、例えば、アルキレンジオールと、多価カルボン酸とのエステル化物、多価カルボン酸のアルキルエステルとのエステル交換反応物、およびεカプロラクトン系ポリラクトンポリオール等のポリラクトンポリオール等が挙げられる。
【0085】
前記ポリシロキサンポリオールとしては、例えば、ジメチルポリシロキサンポリオールやメチルフェニルポリシロキサンポリオール等が挙げられる。
【0086】
本発明で用いるポリオール化合物(a3)としては、特に誘電特性等を向上させたい場合は、ポリオレフィンポリオールやポリシロキサンポリオールが好ましく、物性と耐加水分解性とを向上させたい場合は、ポリカーボネートポリオールが好ましい。
【0087】
本発明で用いるポリオール化合物(a3)としては、水酸基を1.5〜4個有するポリオール化合物が合成しやすいので好ましく、そのなかでも水酸基を2個有するポリオール化合物、つまりジオール化合物がより好ましい。
【0088】
前記ジオール化合物の中でも、ポリオレフィンジオール、ポリエーテルジオール、ポリカーボネートジオール、ポリエステルジオール、およびポリシロキサンジオールからなる群から選ばれる1種以上のポリオール化合物がより好ましい。
【0089】
また、前記ポリオール化合物(a3)としては、十分な伸度が得られ、且つ、強度も強い塗膜が得られることから、数平均分子量300〜5,000のポリオール化合物が好ましく、数平均分子量500〜3,000がより好ましい。
【0090】
ポリオール化合物(a3)のTgは、0℃以下であることが硬化物の伸度や柔軟性を高く設計できる点で好ましく、0〜−150℃がより好ましい。
【0091】
本発明で用いるポリウレタン樹脂(A)として前記一般式(13)で表される構造を更に有するポリウレタン樹脂を調製する際には、ポリイソシアネート化合物(a2)に対してポリフェノール化合物(a1)とポリオール化合物(a3)とがおのおの反応する。末端をフェノール性水酸基として残存させる為には、ポリフェノール化合物(a1)中のフェノール性水酸基のモル数(m(a1)モル)とポリオール化合物(a3)中のアルコール性水酸基のモル数(m(a3)モル)との合計モル量が、ポリイソシアネート化合物(a2)中のイソシアネート基のモル数(m(a2)モル)より大きくなる条件で反応させることが好ましい。合成上の安定性や硬化物の各種性能を考慮すると、{m(a1)+m(a3)}/m(a2)が1から10の範囲であり、より好ましくは1.1から7の範囲である。またm(a1)とm(a3)との合計の重量に対してm(a1)およびm(a3)はおのおの5重量%以上存在していることがより好ましく、10%以上存在していることがより好ましい。
【0092】
本発明で用いるウレタン樹脂(A)の製造方法において、有機溶剤を使用すると均一な反応を進行できるため好ましい。ここで有機溶剤は、系中にあらかじめ存在させてから反応を行っても、途中で導入してもよい。また、適切な反応速度を維持するためには、系中の有機溶剤の割合は、反応系の80重量%以下であるが好ましく、10〜70重量%であることがより好ましい。かかる有機溶剤としては、原料成分としてイソシアネート基を含有する化合物を使用するため、水酸基やアミノ基等の活性プロトンを有しない非プロトン性極性有機溶剤が好ましい。
【0093】
前記非プロトン性極性有機溶剤としては、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルフォキシド、スルホラン、およびγ−ブチロラクトンなどの極性有機溶媒を使用することができる。また、上記溶媒以外に、溶解可能であれば、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、および石油系溶剤等を使用しても良い。また、各種溶剤を混合して使用しても良い。
【0094】
かかるエーテル系溶剤としては、例えば、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル等のエチレングリコールジアルキルエーテル類;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジブチルエーテル等のポリエチレングリコールジアルキルエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のポリエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;
【0095】
プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル等のプロピレングリコールジアルキルエーテル類;ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジブチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールジブチルエーテル等のポリプロピレングリコールジアルキルエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のポリプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;低分子のエチレン−プロピレン共重合体等の共重合ポリエーテルグリコールのジアルキルエーテル類;共重合ポリエーテルグリコールのモノアセテートモノアルキルエーテル類;共重合ポリエーテルグリコールのアルキルエステル類;および共重合ポリエーテルグリコールのモノアルキルエステルモノアルキルエーテル類等が挙げられる。
【0096】
エステル系溶剤としては、例えば、酢酸エチルおよび酢酸ブチル等が挙げられる。ケトン系溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、およびシクロヘキサノン等が挙げられる。また、石油系溶剤としては、トルエン、キシレンやその他高沸点の芳香族溶剤等や、ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族および脂環族溶剤を使用することも可能である。
【0097】
本発明で用いるポリウレタン樹脂(A)の重量平均分子量は、溶剤溶解性が良好な熱硬化性ポリウレタン樹脂組成物が得られ、且つ、種々の物性に優れる硬化塗膜が得られることから、800〜50,000が好ましく、1,000〜20,000がより好ましい。
【0098】
尚、本発明で用いるポリウレタン樹脂(A)等の樹脂の重量平均分子量の測定は、ゲルパーミエーションクロマトグラフを用い、下記の条件でポリスチレン換算により求めた。
測定装置 ; 東ソー株式会社製 HLC−8220GPC
カラム ; 東ソー株式会社製ガードカラムSUPER HZ−H
+東ソー株式会社製 TSKgel SUPER HZm−mを4本
検出器 ; RI(示差屈折計)
データ処理:東ソー株式会社製 GPC−8020
測定条件: カラム温度 40℃
溶媒 テトラヒドロフラン
流速 0.35ml/min
標準 ;ポリスチレン
試料 ;樹脂固形分換算で0.2重量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(100ml)
【0099】
本発明で用いるポリウレタン樹脂(A)のフェノール性水酸基当量は、400〜50,000が好ましい。
【0100】
本発明で用いるエポキシ樹脂(B)は分子内に2個以上のエポキシ基を有していることが好ましい。こうしたエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;フェノールノボラックエポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型ノボラック等のノボラック型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエンと各種フェノール類と反応させて得られる各種ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂のエポキシ化物;2,2′,6,6′−テトラメチルビフェノールのエポキシ化物等のビフェニル型エポキシ樹脂;ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂;フルオレン骨格を有するエポキシ樹脂等の芳香族系エポキシ樹脂やこれら芳香族系エポキシ樹脂の水素添加物;ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル等の脂肪族エポキシ樹脂;3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス−(3,4−エポキヒシクロヘキシル)アジペート等の脂環式エポキシ樹脂;トリグリシジルイソシアヌレート等のごときヘテロ環含有エポキシ樹脂等が挙げられる。中でも、芳香族系エポキシ樹脂が、硬化塗膜の機会物性に優れる熱硬化性ポリイミド樹脂組成物が得られることから好ましく、中でもノボラック型エポキシ樹脂がより好ましい。
【0101】
また、本発明で用いるエポキシ樹脂(B)として、芳香族炭化水素における芳香環上の隣接する2つの置換位置において、炭素原子又は酸素原子を介して該芳香族炭化水素同士が結合した構造の芳香族多環構造部を有し、かつ、該芳香族多環骨格上の置換基としてグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂(B1)も好ましく用いることができる。
【0102】
即ち、このような剛直かつ対象な構造を、エポキシ樹脂構造中に導入することにより、エポキシ樹脂中のエポキシ基濃度を低くしながらも芳香族含有率が高まることから、耐湿性、誘電特性に優れるのみならず、優れた難燃効果を発現することができる。また、その構造の剛直性のため耐熱性も飛躍的に向上する。
【0103】
このような芳香族多環構造部は、具体的には、以下の構造1〜構造24のものが挙げられる。尚、下記構造式中の芳香環より引き出した線分は他の構造部との共有結合を示すものである。
【0104】
【化20】

【0105】
【化21】

【0106】
【化22】

【0107】
これらのなかでもとりわけ上記14〜24の構造に代表されるような芳香核上にメチル基を有する構造のもの、或いは上記5〜8の構造に代表されるような芳香族炭化水素がナフタレンであるものが、難燃効果が飛躍的に向上する点から好ましい。
【0108】
前記エポキシ樹脂(B1)は、前記芳香族多環構造部をその繰り返し単位として有するものであるが、エポキシ樹脂(B1)中には一部他の構造の芳香族構造を含んでいてもよいし、或いは、また、他の芳香族環を有するエポキシ樹脂と併用してもよい。但し、本発明の効果が顕著に発現される点から前記芳香族多環構造部をエポキシ樹脂成分中一定量以上含有することが望ましい。具体的には、前者の場合、エポキシ樹脂(B1)中の芳香族炭素原子数に対する前記芳香族多環構造部を構成する炭素原子数の割合が20%以上であり、また、後者の場合、本発明の熱硬化性ポリウレタン樹脂組成物中の全エポキシ樹脂成分中の芳香族炭素原子数に対する前記芳香族多環構造部を構成する炭素原子数の割合が20%以上である。
【0109】
また、エポキシ樹脂(B1)は、比較的高いエポキシ当量を有しながらも、耐湿性、誘電特性に優れる特徴を有している。耐湿性、誘電特、及び難燃性との性能バランスの点からエポキシ樹脂(B1)のエポキシ当量は240〜330g/eqの範囲が好ましい。
【0110】
前記エポキシ樹脂(B1)の中でも、下記一般式(16)で表されるエポキシ樹脂や下記一般式(17)で表されるエポキシ樹脂が好ましい。
【0111】
【化23】

〔一般式(16)中、Xは酸素原子、メチレン基、炭素原子数1〜4のアルキル基で置換されたメチレン基、フェニル基で置換されたメチレン基、ナフチル基で置換されたメチレン基、ビフェニル基で置換されたメチレン基、9−フルオレニル基で置換されたメチレン基、又は該フェニル基、該ナフチル基若しくは該ビフェニル基上に更にアルキル基が芳香核置換したメチレン基を表す。n及びmは、0〜3の整数を表し、pは平均繰り返し単位数で0〜10である。〕
【0112】
【化24】

〔一般式(17)中、Xは酸素原子、メチレン基、炭素原子数1〜4のアルキル基で置換されたメチレン基、フェニル基で置換されたメチレン基、ナフチル基で置換されたメチレン基、ビフェニル基で置換されたメチレン基、9−フルオレニル基で置換されたメチレン基、又は該フェニル基、該ナフチル基若しくは該ビフェニル基上に更にアルキル基が芳香核置換したメチレン基を表す。n及びmは、0〜5の整数を表し、pは平均繰り返し単位数で0〜10である。〕
【0113】
前記一般式(16)で表されるエポキシ樹脂の中でも、前記した通り、難燃性に優れる硬化物が得られる熱硬化性ポリウレタン樹脂組成物が得られることから芳香族多環骨格にメチル基を有するもの、即ち前記一般式(16)中がn及びmが1〜3の構造のものが好ましい。このようなエポキシ樹脂を構成する繰り返し単位は具体的には以下のものが挙げられる。
【0114】
【化25】

【0115】
これらの構造のなかでも特に、E2〜E9に代表されるように芳香族多環構造部を構成するベンゼン環においてメチル基を3つ有する化合物が、工業的生産が容易であり、且つ、耐熱性及び難燃性の改善効果に著しく優れる点から好ましい。また、E2、E3の構造のものは、耐熱性に極めて優れる点から好ましく、E1、E2、E3、E4の構造のものは流動性が良好である他、E7、E8の構造のものは難燃性、誘電特性、耐湿性に極めて優れたものとなる点で好ましい。
【0116】
前記エポキシ樹脂(B1)の中でも好ましく用いることができる一般式(17)で表されるエポキシ樹脂はナフタレン骨格を有する。該一般式(17)で表されるエポキシ樹脂を構成する繰り返し単位は具体的には以下のものが挙げられる。
【0117】
【化26】

【0118】
上記一般式(16)又は一般式(17)で表されるエポキシ樹脂は、エポキシ樹脂中のエポキシ基当量が高くそのため硬化物の難燃効果が良好なものとなる。このようにエポキシ基当量が高い場合、通常、架橋密度の低下に伴い耐熱性が低下する。しかし、一般式(16)又は一般式(17)で表されるエポキシ樹脂の場合はエポキシ当量が比較的高くなるにも拘わらず、耐熱性の低下は全く認められず、むしろ極めて良好なる耐熱性を発現する。このような特徴がより顕著になる点からエポキシ当量240〜330g/eqとなる範囲であることが好ましい。
【0119】
また、一般式(16)及び一般式(17)中の繰り返し数の平均値を示すpの値は、前記の通り0〜10の範囲であるが、所望の特性によって任意に調製できる。例えば、組成物の流動性や硬化物の耐熱性を高めるためには、平均値pは0〜1が好ましく、組成物の軟化点を上げて作業性を優れたものとするには、平均値pは1〜5の範囲が好ましい。
【0120】
更に、一般式(16)及び一般式(17)で表されるエポキシ樹脂は、芳香核上にメチル基を導入することにより難燃効果が飛躍的に向上する。このような本来燃焼しやすいアルキル基を多く有するにも拘わらず、硬化物の難燃効果が飛躍的に向上する点は特筆すべき点である。
【0121】
前記エポキシ樹脂(B1)は、例えば、下記一般式(18)で表されるフェノール化合物や下記一般式(19)で表されるフェノール化合物を製造し、次いで、得られた該フェノール化合物をグリシジルエーテル化することによって製造できる。
【0122】
【化27】

【0123】
【化28】

【0124】
前記一般式(18)で表されるフェノール化合物としては、例えば、以下の構造のものが挙げられる。
【0125】
【化29】

【0126】
前記一般式(19)で表されるフェノール化合物は、具体的には、以下の構造のものが挙げられる。
【0127】
【化30】

【0128】
上記した一般式(18)又は一般式(19)で表されるフェノール化合物は、前記エポキシ樹脂(B1)の中間体として極めて有用であるが、その剛直かつ対象な構造から種々の用途において適用でき、耐熱性及び難燃性の向上を図ることができる。具体的には、エポキシ樹脂硬化剤やビニルエステル樹脂の原料、半導体用フォトレジスト等の感光性材料の原料、ポリカーボネート樹脂やポリエステル樹脂やポリアリレート樹脂の原料などに用いることでことができる。
【0129】
上記した一般式(18)又は一般式(19)で表されるフェノール化合物は、水酸基に隣接する位置に水素原子を有するジヒドロキシベンゼン又は水酸基に隣接する位置に水素原子を有するジヒドロキシナフタレンと、カルボニル基含有化合物とを、酸触媒存在下に反応させることによって製造することができる。この場合、他の構造のフェノール化合物が副製するときは、再結晶等の生成手段により目的物を単離すればよい。
【0130】
前記水酸基に隣接する位置に水素原子を有するジヒドロキシベンゼンとしては、例えば、ハイドロキノン、モノメチルハイドロキノン、トリメチルハイドロキノン、トリメチルレゾルシン、トリメチルカテコールが挙げられる。前記水酸基に隣接する位置に水素原子を有するジヒドロキシナフタレンとしては、例えば、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシ−7−メチルナフタレン等が挙げられる。
【0131】
一方、これと反応させるカルボニル基含有化合物としては、種々のものが使用できる。このカルボニル基含有化合物の種類により得られる新規フェノール化合物に多様な構造を導入することができ、新規フェノール化合物に様々な性能を具備させることができる。
【0132】
具体的には、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、4−メチルベンズアルデヒド、3,4−ジメチルベンズアルデヒド、ビフェニルアルデヒド、ナフチルアルデヒド等のアルデヒド化合物、ベンゾフェノン、フルオレノン、インダノン等のケトン化合物が挙げられる。これらのなかでもエポキシ樹脂中間体として、難燃性を飛躍的に高めるにはベンズアルデヒド、4−メチルベンズアルデヒド、3,4−ジメチルベンズアルデヒド、ビフェニルアルデヒド、およびナフチルアルデヒドが好ましい。
【0133】
次に、反応触媒は酸触媒を用いる。ここで、前記新規フェノール化合物を純度良く製造するには、触媒として、塩酸、硫酸、パラトルエンスルホン酸、メタンスルホン酸などの強酸を用いることが好ましい。
【0134】
前記水酸基に隣接する位置に水素原子を有するジヒドロキシベンゼン又は前記水酸基に隣接する位置に水素原子を有するジヒドロキシナフタレンと、前記カルボニル基含有化合物との反応比率は、例えば、前者1モルに対し後者が0.1〜3.0モルとなる範囲であり、反応温度は50〜200℃の範囲である。
【0135】
この反応条件は、特に目的物の収率及び反応生成物中の純度が良好になる点から、前記水酸基に隣接する位置に水素原子を有するジヒドロキシベンゼン又は前記水酸基に隣接する位置に水素原子を有するジヒドロキシナフタレンと、前記カルボニル基含有化合物との反応比率が前者1モルに対し後者が0.4〜0.7モルとなる範囲であり、反応温度は100〜150℃の範囲であることが特に好ましい。
【0136】
反応は適当な有機溶媒、例えばトルエン、ベンゼン、エチレングリコール或いはこれらの混合溶媒に原料を溶解させて反応を行うことが好ましく、また、第2段の反応は脱水反応であるので生成水を除去しながら反応を行うことが望ましい。
【0137】
このようにして得られる一般式(18)で表されるフェノール化合物や一般式(19)で表されるフェノール化合物は、次いで、エピクロルヒドリン、エピブロムヒドリン、β−メチルエピクロルヒドリン等のエピハロヒドリン類の溶解混合物に水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物を添加し、または添加しながら20〜120℃で1〜10時間反応させることにより前記エポキシ樹脂(B1)の一例としてのエポキシ樹脂を得ることができる。
【0138】
エピハロヒドリン類の添加量は、原料の前記フェノール化合物中の水酸基1当量に対して、通常0.3〜20当量の範囲である。エピハロヒドリン類が2.5当量よりも少ない場合、エポキシ基と未反応水酸基との付加反応により生成する2級水酸基を含んだ高分子量物が得られる。一方、2.5当量よりも多い場合、低分子量体の含有量が高くなる。
【0139】
前記フェノール化合物とエピハロヒドリン類との反応において、アルカリ金属水酸化物はその水溶液を使用してもよい。その場合、該アルカリ金属水酸化物の水溶液を連続的に反応系内に添加すると共に減圧下、または常圧下連続的に水及びエピハロヒドリンを留出させ、更に分液し水は除去しエピハロヒドリン類は反応系内に連続的に戻す方法でもよい。
【0140】
前記エポキシ樹脂(B1)は、前記フェノール化合物とエピハロヒドリン類の溶解混合物にテトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩を触媒として添加し50〜150℃で1〜5時間反応させ、次いで得られた該フェノール樹脂のハロヒドリンエーテル化物にアルカリ金属水酸化物の固体または水溶液を加え、再び20〜120℃で1〜10時間反応させ脱ハロゲン化水素(閉環)させる方法によっても製造することができる。
【0141】
これらの反応においては反応を円滑に進行させるためにメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、ジオキサンなどのエーテル類、ジメチルスルホン、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒などを添加して反応を行うことが好ましい。溶媒を使用する場合のその使用量は、エピハロヒドリン類100質量部に対し通常5〜50質量部、好ましくは10〜30質量部である。また非プロトン性極性溶媒を用いる場合はエピハロヒドリン類100質量部に対し通常5〜100質量部、好ましくは10〜60質量部である。
【0142】
このようにしてエポキシ化反応を行った後は、反応物を水洗後または水洗無しに加熱減圧下、110〜250℃、圧力10mmHg以下でエピハロヒドリン類や他の添加溶媒などを除去して粗エポキシ樹脂が得られる。
【0143】
また、更に加水分解性ハロゲンの少ないエポキシ樹脂とするために、粗エポキシ樹脂を再びトルエン、メチルイソブチルケトンなどの溶剤に溶解し、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物の水溶液を加えて更に反応させて閉環を確実なものにすることもできる。この場合、アルカリ金属水酸化物の使用量は粗エポキシ樹脂中に残存する加水分解性塩素1モルに対して、通常0.5〜10モル、好ましくは1.2〜5.0モルである。この反応の反応温度は通常50〜120℃、反応時間は通常0.5〜3時間であることが好ましい。反応速度の向上を目的として、4級アンモニウム塩やクラウンエーテル等の相関移動触媒を存在させてもよい。相関移動触媒を使用する場合のその使用量は、粗エポキシ樹脂100質量部に対して0.1〜3.0質量部の範囲が好ましい。
【0144】
反応終了後、生成した塩を濾過、水洗などにより除去し、更に、加熱減圧下トルエン、メチルイソブチルケトンなどの溶剤を留去することにより前記エポキシ樹脂(B1)を得ることができる。
【0145】
前記ポリウレタン樹脂(A)とエポキシ樹脂(B)との配合量は、樹脂分の重量比として(A)/(B)が1/100から50/1の割合で使用することができ、さらに好ましくは、1/10から20/1である。
【0146】
本発明で用いる硬化剤(C)は、フェノール類とトリアジン類とアルデヒド類とからなるトリアジン変性ノボラック型フェノール樹脂であって、該ノボラック型フェノール樹脂が、フェノール類とトリアジン類とアルデヒド類との縮合物(c1)、トリアジン類とアルデヒド類との縮合物(c2)、フェノール類とアルデヒド類との縮合物(c3)、フェノール類(c4)及びトリアジン類(c5)の混合物からなり、且つ該縮合物(c1)及び該縮合物(c2)の中に、一般式(20)で表される構造単位Fと一般式(21)で表される構造単位Gが、モル比率で下記式(22)を満足する状態で含まれているフェノール樹脂である。
(−D−NH−CH2−NH−) (18)
(−D−NH−CH2−E−) (19)
(式中、Dはトリアジン類の残基を示し、Eはフェノール類残基を示す)
G/F≧1.5 (20)
【0147】
前記トリアジン変性ノボラック型フェノール樹脂を得るために用いるフェノール類としては、例えば、フェノール、あるいはクレゾール、キシレノール、エチルフェノール、ブチルフェノール、ノニルフェノール、オクチルフェノール等のアルキルフェノール類;ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、レゾルシン、カテコール等の多価フェノール類;ハロゲン化フェノール、フェニルフェノール、アミノフェノール等が挙げられる。またこれらのフェノール類は、その使用にあたって1種類のみに限定されるものではなく、2種以上の併用も可能である。
【0148】
前記トリアジン類としては、例えば、トリアジン環を含む化合物等が挙げられ、具体的には、例えば、メラミン、アセトグアナミン又はベンゾグアナミンが好ましい。これらのトリアジン環を含む化合物を使用するにあたっては、1種類のみに限定されるものではなく、2種以上を併用することも可能である。
【0149】
前記アルデヒド類は、特に限定されるものではないが、取扱いの容易さの点からホルムアルデヒドが好ましい。ホルムアルデヒドとしては、限定するものではないが、代表的な供給源としてホルマリン、パラホルムアルデヒド等が挙げられる。
【0150】
前記ノボラック型フェノール樹脂とは、メチロール基を実質的に含まないフェノール樹脂をいい、未反応アルデヒドを含まないことを特徴とするものである。
【0151】
前記ノボラック型フェノール樹脂は、メチロール基を実質的に含まず、未反応アルデヒドを含まないことによりエポキシ樹脂用硬化剤として使用した場合、エポキシ樹脂(B)との配合安定性が極めて良くなるという効果を有するものである。
【0152】
また前記ノボラック型フェノール樹脂に含まれる未反応一官能性フェノール単量体の量は特に制限されるものではないが、3重量%以下であることが好ましい。未反応一官能性フェノール単量体を3重量%以下にすることによりエポキシ樹脂(B)との配合安定性が向上し、硬化物の耐熱性、耐湿性が良くなるという効果がある。
【0153】
ここでいう未反応一官能性フェノール単量体とは、1分子中にエポキシ基と反応し得るフェノール性の水酸基を1つだけ含むフェノール単量体を意味する。
【0154】
また本発明のフェノール樹脂は、フェノール類とトリアジン類とアルデヒド類とからなるトリアジン類変性ノボラック型フェノール樹脂を含んでいるが、該ノボラック型フェノール樹脂のうち、フェノール類とトリアジン類とアルデヒド類との縮合物(c1)、トリアジン類とアルデヒド類との縮合物(c2)の中に、一般式(20)で表される構成単位Fと一般式(21)で表される構成単位Gとが、モル比率で下記式(22)を満足する状態で含まれていることを特徴とするものである。
(−D−NH−CH2−NH−) (1)
(−D−NH−CH2−E−) (2)
(式中、Dはトリアジン類の残基を示し、Eはフェノール類残基を示す)
G/F≧1.5 (3)
【0155】
このうちG/F≧3であることがより好ましい。B/A<1.5であると、エポキシ樹脂(B)との相溶性が悪くなり、耐熱性が低下する。
【0156】
前記構成単位Fと構成単位Gとのモル比率は、核磁気共鳴スペクトル(以下13C−NMRという)のチャートから求めることができる。すなわち測定溶媒としてジメチルスルフォキシド(以下DMSOという)や重アセトンを用い、基準物質としてテトラメチルシランを用い、常法の測定条件にしたがって測定すると、構成単位Gのピークは13C−NMRチャートの42.5〜45ppmに現れ、構成単位Fのピークは47〜48.5ppmに現れることがわかっており、両者のピーク積分値の比率を算出することにより構成単位Fと構成単位Gとのモル比率を求めることができる。
【0157】
また、本発明のトリアジン類変性ノボラック型フェノール樹脂は、縮合物(c1)及び縮合物(c2)中のトリアジン類のモル比率は、特に制限ないが、全トリアジン類の30%以上であることが耐熱性や耐湿性に優れる硬化物が得られる熱硬化性ポリウレタン樹脂組成物が得られることから好ましい。
【0158】
トリアジン類のモル比率は上記構成単位F及び構成単位Gと同様、13C−NMRのチャートから求めることができる。すなわちチャートの167.2〜167.4ppmに現れるシャープなピークは未反応のトリアジン類に帰属でき、そのピーク積分値をTmとし、163〜167.2ppmに現れるブロ−ドなピークはホルムアルデヒドと反応したトリアジン類に帰属でき、そのピーク積分値をTrとすると、前記縮合物(c1)及び縮合物(c2)中のトリアジン類の全トリアジン類中に占めるモル比率は下記式(22)で表わすことができる。
Tr
モル比率=────── (22)
Tr+Tm
このモル比率の値を以下「トリアジン類の反応率」という。
【0159】
本発明のトリアジン変性ノボラック型フェノール樹脂を得るための製造方法については特に限定されるものではなく、例えば特開平11−21419等に記載されている方法などが用いられる。
【0160】
すなわち、フェノール類とトリアジン類とアルデヒド類との混合物を、アルデヒド類が揮散しない条件下で該混合物を反応させる工程(i)及び系内の反応水を除去する工程(ii)を含み、第一段反応として工程(i)工程(ii)及び工程(iii)を順次実施し、次いで第2段反応として工程(ii)及び工程(iii)を第1段反応より高い温度下に順次実施し、第3段反応として工程(ii)及び工程(iii)を第2段反応より高い温度下に実施するという方法である。
【0161】
前記硬化剤(C)とエポキシ樹脂(C)とのとの混合割合は、特に限定されるものではないが、エポキシ基1当量に対してフェノール樹脂組成物のフェノール性水酸基当量が0.3〜2.0当量が好ましく、0.7〜1.4当量がより好ましい。
【0162】
本発明の熱硬化性ポリウレタン樹脂組成物には、フェノキシ樹脂(D)を加える事もできる。通常エポキシ基を有しておらず熱可塑性であるが、エポキシ基を有するものでも本発明で用いることができる。また、フェノキシ樹脂(D)はポリヒドロキシポリエーテル構造を有する樹脂とも言える。
【0163】
前記フェノキシ樹脂(D)は、ポリウレタン樹脂(A)やエポキシ樹脂(B)との相溶性が低下しにくく、均一な樹脂組成物となり易い為、耐熱性、電気特性、柔軟性に優れる硬化物が得られ、また、硬化前の保存安定性も優れる熱硬化性ポリウレタン樹脂組成物が得られることから重量平均分子量(Mw)が5,000〜200,000のフェノキシ樹脂が好ましく、重量平均分子量(Mw)は10,000〜10,0000がより好ましい。
【0164】
前記フェノキシ樹脂(D)は、例えば、以下の方法により製造することができる。
1.エピハロヒドリンと2官能フェノールとをアルカリ存在下で反応させて製造する方法(以下、第1法と略記する)。
2.2官能エポキシ樹脂と2官能フェノールとを触媒存在下で反応させて製造する方法(以下、第2法と略記する)。
【0165】
前記フェノキシ樹脂(D)は、前記第1法、第2法のどちらで得られるものでも構わないが、前記第2法で得られるフェノキシ樹脂(2官能エポキシ樹脂と2官能フェノール化合物とを反応させて得られたフェノキシ樹脂)は、2種以上の異なる性質の有する構造単位を繰り返して配置した骨格を有するフェノキシ樹脂を容易に製造することができることから好ましい。
【0166】
前記第1法及び第2法で用いる2官能フェノールとしては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビスフェノールフルオレン等のビスフェノール類;4,4’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビフェノール等のビフェノール類;カテコール、レゾルシン、ハイドロキノン等の単環2官能フェノール類;ビスフェノールアセトフェノン、ジヒドロキシビフェニルエーテル、ジヒドロキシビフェニルチオエーテル、1,4−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、1,1−ビ−2−ナフトール等が挙げられる。
【0167】
前記第1法及び第2法で用いる2官能フェノールは、アルキル基、アリール基、エーテル基、エステル基など悪影響のない置換基で置換されていてもよい。これらの2官能フェノールは複数種を併用して使用することも出来る。
【0168】
前記第1法で用いるエピハロヒドリンとしては、例えば、エピクロルヒドリンやエピブロモヒドリン等が挙げられる。エピハロヒドリンは複数種を併用して使用することも出来る。
【0169】
前記第2法で用いる2官能エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;4,4’−ビフェノールのジグリシジルエーテル、3,3’,5,5’−テトラメチル−4、4’−ビフェノールのジグリシジルエーテル等のビフェノール型エポキシ樹脂;カテコール、レゾルシン、ハイドロキノンなどの単環2官能フェノールのジグリシジルエーテル;ビスフェノールフルオレンのジグリシジルエーテル、ビスフェノールアセトフェノンのジグリシジルエーテル、ジヒドロキシビフェニルエーテル、ジヒドロキシビフェニルチオエーテルのジグリシジルエーテル等のエポキシ樹脂;シクロヘキサンジメタノール、1,6−ヘキサン、ネオペンチルグリコール等の2官能アルコールのジグリシジルエーテル等のエポキシ樹脂;フタル酸、イソフタル酸、テトラハイドロフタル酸、ヘキサハイドロフタル酸等の2価カルボン酸のジグリシジルエステル等のエポキシ樹脂;1,4−ジヒドロキシナフタレンのジグリシジルエーテル、1,5−ジヒドロキシナフタレンのジグリシジルエーテル、1,6−ジヒドロキシナフタレンのジグリシジルエーテル、2,6−ジヒドロキシナフタレンのジグリシジルエーテル、2,7−ジヒドロキシナフタレンのジグリシジルエーテル、1,1−ビ−2−ナフトールのジグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0170】
前記フェノキシ樹脂(D)としては、ビスフェノールS骨格またはナフタレン骨格を含有するフェノキシ樹脂が、ガラス転移点(Tg)が高くなり、その結果として耐熱性に優れる硬化物が得られる組成物となることから好ましく、ビスフェノールS骨格およびナフタレン骨格を含有するフェノキシ樹脂がより好ましい。ビスフェノールS骨格を含有するフェノキシ樹脂は、例えば、以下の方法で製造することができる。
【0171】
3.エピハロヒドリンとビスフェノールS骨格を有する2官能フェノールとをアルカリ存在下で反応させて製造する方法(以下、第1−1法と略記する)。
4.2官能エポキシ樹脂と2官能フェノールとを反応させる際に、2官能エポキシ樹脂と2官能フェノールのうち少なくとも一方がビスフェノールS骨格を有するような化合物を用いる条件にて反応させる方法(以下、第2−1法と略記する)。
【0172】
前記ビスフェノールS骨格を含有するフェノキシ樹脂は、前記第1−1法、第2−1法のどちらで得られるものでも構わないが、前記第2−1法で得られるフェノキシ樹脂は、2種以上の異なる性質の有する構造単位を繰り返して配置した骨格を有するフェノキシ樹脂を容易に製造することができることから好ましい。
【0173】
ビスフェノールS骨格を有する2官能エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等が挙げられる。ビスフェノールS骨格を有する2官能フェノールとしては、例えば、ビスフェノールS等が挙げられる。
【0174】
ナフタレン骨格を含有するフェノキシ樹脂は、例えば、以下の方法で製造することができる。
5.エピハロヒドリンとナフタレン骨格を有する2官能フェノールとをアルカリ存在下で反応させて製造する方法(以下、第1−2法と略記する)。
6.2官能エポキシ樹脂と2官能フェノールとを反応させる際に、2官能エポキシ樹脂と2官能フェノールのうち少なくとも一方がナフタレン骨格を有するような化合物を用いる条件にて反応させる方法(以下、第2−2法と略記する)。
【0175】
前記ナフタレン骨格を含有するフェノキシ樹脂は、前記第1−2法、第2−2法のどちらで得られるものでも構わないが、前記第2−2法で得られるフェノキシ樹脂は、2種以上の異なる性質の有する構造単位を繰り返して配置した骨格を有するフェノキシ樹脂を容易に製造することができることから好ましい。
【0176】
ナフタレン骨格を有する2官能フェノールとしては、例えば、1,4−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、1,1−ビ−2−ナフトール等が挙げられる。
【0177】
前記ナフタレン骨格を有する2官能エポキシ樹脂としては、例えば、1,4−ジヒドロキシナフタレンのジグリシジルエーテル、1,5−ジヒドロキシナフタレンのジグリシジルエーテル、1,6−ジヒドロキシナフタレンのジグリシジルエーテル、2,6−ジヒドロキシナフタレンのジグリシジルエーテル、2,7−ジヒドロキシナフタレンのジグリシジルエーテル、1,1−ビ−2−ナフトールのジグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0178】
ビスフェノールS骨格およびナフタレン骨格を含有するフェノキシ樹脂は、例えば、以下の方法で製造することができる。
7.エピハロヒドリンとビスフェノールS骨格を含有する2官能フェノールとナフタレン骨格を含有する2官能フェノールとをアルカリ存在下で反応させて製造する方法(以下、第1−3法と略記する)。
8.2官能エポキシ樹脂と2官能フェノールとを反応させる際に、得られるフェノキシ樹脂がビスフェノールS骨格及びナフタレン骨格とを含有するように2官能エポキシ樹脂と2官能フェノールとを選択使用する(以下、第2−3法と略記する)。
【0179】
前記ビスフェノールS骨格及びナフタレン骨格を含有するフェノキシ樹脂は、前記第1−3法、第2−3法のどちらで得られるものでも構わないが、前記第2−3法で得られるフェノキシ樹脂は、2種以上の異なる性質の有する構造単位を繰り返して配置した骨格を有するフェノキシ樹脂を容易に製造することができることから好ましい。
【0180】
前記フェノキシ樹脂(D)としては、ビスフェノール骨格またはナフタレン骨格並びにビフェニル骨格を含有するフェノキシ樹脂がガラス転移点(Tg)が高くなり、その結果として耐熱性に優れる硬化物が得られる組成物となることから好ましく、ビスフェノール骨格、ナフタレン骨格及びビフェニル骨格を含有するフェノキシ樹脂がより好ましい。
【0181】
ビスフェノールS骨格及びビフェニル骨格を含有するフェノキシ樹脂は例えば、以下の方法で製造することができる。
【0182】
9.エピハロヒドリンとビフェニル骨格を含有する2官能フェノールとビスフェノールS骨格を含有する2官能フェノールとをアルカリ存在下で反応させて製造する方法(以下、第1−4法と略記する)。
10.2官能エポキシ樹脂と2官能フェノールとを反応させる際に、得られるフェノキシ樹脂がビスフェノールS骨格及びビフェニル骨格とを含有するように2官能エポキシ樹脂と2官能フェノールとを選択使用する(以下、第2−4法と略記する)。
【0183】
本発明で用いるビスフェノールS骨格及びビフェニル骨格を含有するフェノキシ樹脂は、前記第1−4法、第2−4法のどちらで得られるものでも構わないが、前記第2−3法で得られるフェノキシ樹脂は、2種以上の異なる性質の有する構造単位を繰り返して配置した骨格を有するフェノキシ樹脂を容易に製造することができることから好ましい。
【0184】
第1−4法や第2−4法で用いるビフェニル骨格を含有する2官能フェノールとしては、例えば、4,4’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビフェノール等のビフェノール類等が挙げられる。また、第2−3法で用いるビフェノール骨格を含有する2官能エポキシ樹脂としては、例えば、4,4’−ビフェノールのジグリシジルエーテル、3,3’,5,5’−テトラメチル−4、4’−ビフェノールのジグリシジルエーテル等のビフェノール型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0185】
ナフタレン骨格及びビフェニル骨格を含有するフェノキシ樹脂は、例えば、以下の、以下の方法で製造することができる。
【0186】
11.エピハロヒドリンとビフェニル骨格を含有する2官能フェノールとナフタレン骨格を有する2官能フェノールとをアルカリ存在下で反応させて製造する方法(以下、第1−5法と略記する)。
12.2官能エポキシ樹脂と2官能フェノールとを反応させる際に、得られるフェノキシ樹脂がビフェニル骨格及びナフタレン骨格とを含有するように2官能エポキシ樹脂と2官能フェノールとを選択使用する方法(以下、第2−5法と略記する)。
【0187】
前記ナフタレン骨格及びビフェニル骨格を含有するフェノキシ樹脂は、前記第1−4法、第2−4法のどちらで得られるものでも構わないが、前記第2−4法で得られるフェノキシ樹脂は、2種以上の異なる性質の有する構造単位を繰り返して配置した骨格を有するフェノキシ樹脂を容易に製造することができることから好ましい。
【0188】
ビスフェノールS骨格、ナフタレン骨格及びビフェニル骨格を含有するフェノキシ樹脂は、例えば、以下の方法で製造することができる。
13.エピハロヒドリンとビスフェノールSとナフタレン骨格を有する2官能フェノールとビフェニル骨格を有する2官能フェノールとをアルカリ存在下で反応させて製造する方法(以下、第1−6法と略記する)。
14.2官能エポキシ樹脂と2官能フェノールとを反応させる際に、得られるフェノキシ樹脂がビスフェノールS骨格、ナフタレン骨格及びビフェニル骨格とを含有するように2官能エポキシ樹脂と2官能フェノールとを選択使用する方法(以下、第2−6法と略記する)。
【0189】
前記ビスフェノールS骨格、ナフタレン骨格及びビフェノール骨格を含有するフェノキシ樹脂は、前記第1−6法、第2−6法のどちらで得られるものでも構わないが、前記第2−6法で得られるフェノキシ樹脂は、2種以上の異なる性質の有する構造単位を繰り返して配置した骨格を有するフェノキシ樹脂を容易に製造することができることから好ましい。
【0190】
また、前記第2法、第2−1法〜第2−6法におけるフェノキシ樹脂の合成条件としては、二官能エポキシ樹脂と二官能フェノ−ルの配合当量比は、エポキシ基/フェノ−ル性水酸基=1:0.9〜1.1であることが、得られるフェノキシ樹脂が直鎖状に高分子量化し、副反応による架橋が起こりにくく、溶媒に溶解しやすいフェノキシ樹脂が得られることから好ましく、1:0.95〜1:1.05が更に好ましい。
【0191】
前記前記第2法、第2−1法〜第2−6法におけるフェノキシ樹脂の重合反応温度は、通常窒素雰囲気下で触媒が分解しない程度の温度範囲で行う。反応温度は高分子量化反応が良好に進み、且つ、副反応が起こりにくいことから60〜200℃が好ましく、100〜170℃がより好ましく、120〜160℃が更に好ましい。また、アセトンやメチルエチルケトンのような低沸点溶剤を使用する場合には、オートクレーブを使用して高圧下で反応を行うことで反応温度を確保することも出来る。
【0192】
前記フェノキシ樹脂(D)として、ナフタレン骨格とビフェニル骨格を含有するフェノキシ樹脂を用いる場合、2官能エポキシ樹脂と2官能フェノール化合物とを、該2官能エポキシ樹脂と2官能フェノール化合物の少なくとも1種がナフタレン骨格を含有するような組合せで反応させて得られたものが好ましい。ここで用いる2官能エポキシ樹脂としては、中でも、3,3’,5,5’−テトラメチルビフェノール骨格を含むエポキシ樹脂で、2官能フェノール化合物としてはナフタレン骨格を含むフェノール化合物がより好ましい。
【0193】
前記フェノキシ樹脂(D)の中でも、該フェノキシ樹脂中の水酸基の水素原子がアシル基で置換された構造を有するフェノキシ樹脂(D1)を用いることにより低誘電率、低誘電正接という優れた電気特性を有する硬化物が得られる熱硬化性ポリウレタン樹脂組成物が得られる。フェノキシ樹脂中の水酸基の水素原子がアシル基で置換された構造を有するフェノキシ樹脂(D1)は、例えば、フェノキシ樹脂(D)の中でも水酸基を含有し、且つ、該水酸基がエステル化していないフェノキシ樹脂(d1)をエステル化することにより得ることができる。エステル化は直接エステル化するだけでなくエステル交換等の方法を用いても良い。
【0194】
前記エステル化に用いる酸成分としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、ペンタン酸、オクタン酸、カプリル酸、ラウリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、安息香酸、t−ブチル安息香酸、ヘキサヒドロ安息香酸、フェノキシ酢酸、アクリル酸、メタクリル酸等の有機酸;有機酸の酸無水物;有機酸のハロゲン化物;有機酸のエステル化物等を用いることが出来る。
【0195】
前記有機酸の酸無水物としては、例えば、無水酢酸、安息香酸無水物、フェノキシ酢酸無水物、エステル化物としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル等が挙げられる。
【0196】
前記有機酸のハロゲン化物としては、例えば、酢酸クロライド、安息香酸クロライド、フェノキシ酢酸クロライド等が挙げられる。
【0197】
前記エステル化に用いる化合物としては酢酸クロライド、安息香酸クロライド、フェノキシ酢酸クロライド等の有機酸のハロゲン化物や無水酢酸、安息香酸無水物、フェノキシ酢酸無水物などの酸ハロゲン化物や有機酸の酸無水物が好ましく、エステル化の後水洗が不要で、電材用途で嫌われるハロゲンの混入を避ける意味で無水酢酸や安息香酸無水物などの酸無水物が更に好ましい。
【0198】
フェノキシ樹脂(d1)が有する水酸基のエステル化に使用する前記有機酸;有機酸の酸無水物;有機酸のハロゲン化物;有機酸のエステル化物等の酸成分とフェノキシ樹脂とを反応させる際の仕込み割合は、目的のエステル化比率と同様の仕込比率でも良いし、反応性が低い場合には水酸基に対し過剰に前記酸成分を仕込み、目的のエステル化率まで反応させた後、未反応の酸成分を除去しても良い。
【0199】
酸成分により直接エステル化する場合、例えばパラトルエンスルホン酸、リン酸等の酸触媒;テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、ジブチル錫オキサイド、ジオクチル錫オキサイド、塩化亜鉛等の金属触媒等の種々のエステル化触媒を用い脱水しながら行うことが出来る。通常、窒素雰囲気下で100〜250℃で行うのが好ましく、より好ましくは130〜230℃である。
【0200】
エステル化に酸ハロゲン化物や酸無水物を使用する場合、生じた酸を除去するには、塩基性化合物を使用し中和後に塩を濾過する方法、塩基性化合物を使用し中和後水洗する方法、中和せずに水洗する方法、蒸留や吸着などで除去する方法のいずれの方法を用いても良く、併用しても構わない。合成溶剤よりも低沸点の酸を除く場合には、蒸留し除くことが好ましい。
【0201】
フェノキシ樹脂(d1)をエステル交換によりエステル化する場合は、通常窒素雰囲気下で、例えばジブチル錫オキシドやジオクチル錫オキシド、スタノキサン触媒、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、酢酸鉛、酢酸亜鉛、三酸化アンチモン等の有機金属触媒や塩酸、硫酸、リン酸、スルホン酸等の酸触媒、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム等の塩基性触媒など公知のエステル化触媒を用いて脱アルコールしながら行うことが望ましい。
【0202】
また、フェノキシ樹脂(d1)の合成と水酸基をエステル化とを同時に行っても良い、つまり前記製法2において、2官能エポキシ樹脂に予め酸無水物や酸クロライドなどで活性エステル化したフェノール化合物を反応させ、フェノキシ化と同時にエステル化する方法を用いても全く問題ない。
【0203】
本発明の熱硬化性ポリウレタン樹脂組成物においてフェノキシ樹脂(D)の配合量は、ポリウレタン樹脂(A)とエポキシ樹脂(B)との合計〔(A)+(B)〕に対して重量比で〔(A)+(B)〕/(D)=5/95〜95/5が好ましい。より好ましくは〔(A)+(B)〕/(D)=10/90〜90/10であり、更に好ましくは〔(A)+(B)〕/(D)=15/85〜85/15である。
【0204】
本発明の熱硬化性ポリウレタン樹脂組成物には、更に、前記ポリウレタン樹脂(A)が有するフェノール性水酸基と反応する化合物を添加することができる。具体的には、例えば、イソシアネート化合物、シリケート、およびアルコキシシラン化合物等が挙げられる。
【0205】
前記イソシアネート化合物としては、例えば、芳香族系のイソシアネート化合物、脂肪族系のイソシアネート化合物および脂環族系のイソシアネート化合物等が使用できる。好ましくは、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物が好ましい。また、ブロックイソシアネート化合物も使用可能である。
【0206】
更に本発明の熱硬化性ポリウレタン樹脂組成物にはポリエステル、ポリイミド樹脂、フェノキシ樹脂、PPS樹脂、PPE樹脂、ポリアリレーン樹脂等のバインダー樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、アルコキシシラン系硬化剤、多塩基酸無水物、シアネート化合物等の硬化剤あるいは反応性化合物やメラミン、ジシアンジアミド、グアナミンやその誘導体、イミダゾール類、アミン類、水酸基を1個有するフェノール類、有機フォスフィン類、ホスホニュウム塩類、4級アンモニュウム塩類、光カチオン触媒等の硬化触媒や硬化促進剤、さらにフィラー、その他添加剤等添加することも可能である。
【0207】
また、上記硬化促進剤として、ウレタン化触媒の併用が好ましい。かかるウレタン化触媒としては、例えば、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン‐7(以下DBU)やその有機塩化合物、トリエチレンジアミン、ジブチルチンジアセテート、ジブチルチンジラウレート等のジアルキル錫のアルキルエステル類、ビスマスのカルボキシレート等挙げられる。
【0208】
本発明の熱硬化性ポリウレタン樹脂組成物の調製法には、特に限定はないが各種成分を機械的に混合しても、熱溶融により混合しても、溶剤に希釈してから混合しても良い。
【0209】
また、本発明の熱硬化性ポリウレタン樹脂組成物は、更に必要に応じて、種々の充填材、有機顔料、無機顔料、体質顔料、防錆剤等を添加することができる。これらは単独でも2種以上を併用してもよい。
【0210】
前記充填材としては、例えば、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、酸化けい素酸粉、微粒状酸化けい素、シリカ、タルク、クレー、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルムニウム、雲母等が挙げられる。
【0211】
前記有機顔料としては、アゾ顔料;フタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・グリーンの如き銅フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料等が挙げられる。
【0212】
前記無機顔料としては、例えば、黄鉛、ジンククロメート、モリブデート・オレンジの如きクロム酸塩;紺青の如きフェロシアン化物、酸化チタン、亜鉛華、ベンガラ、酸化鉄;炭化クロムグリーンの如き金属酸化物、カドミウムイエロー、カドミウムレッド;硫化水銀の如き金属硫化物、セレン化物;硫酸鉛の如き硫酸塩;群青の如き珪酸塩;炭酸塩、コバルト・バイオレッド;マンガン紫の如き燐酸塩;アルミニウム粉、亜鉛末、真鍮粉、マグネシウム粉、鉄粉、銅粉、ニッケル粉の如き金属粉;カーボンブラック等が挙げられる。
【0213】
また、その他の着色、防錆、体質顔料のいずれも使用することができる。これらは単独でも2種以上を併用してもよい。
【0214】
本発明の熱硬化性ポリウレタン樹脂組成物は、有機系、無機−金属系のフィルム状基材やガラスクロス、ポリアラミドクロス等の織物基材に通常、キャスト法、含浸、塗装等目的の方法で塗工施行される。硬化温度は80〜300℃で、硬化時間は20分間〜5時間である。
【0215】
本発明の熱硬化性ポリウレタン樹脂組成物を用いることにより接着フィルム、プリプレグ、多層プリント配線板、積層板等を製造することができる。
【0216】
前記接着フィルムは、例えば、支持ベースフィルムを支持体とし、その表面に所定の有機溶剤に本発明の熱硬化性ポリウレタン樹脂組成物を溶解した樹脂ワニスを塗布後、加熱及び/又は熱風吹き付けにより溶剤を乾燥させて薄膜となすことによりを作製することができる。
【0217】
支持ベースフィルムとしては、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、さらには離型紙や銅箔、アルミニウム箔の如き金属箔などが挙げられる。なお、支持ベースフィルムにはマッド処理、コロナ処理の他、離型処理を施してあってもよい。
【0218】
有機溶剤としては、通常溶剤、例えばアセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル類、セロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類、カルビトール、ブチルカルビトール等のカルビトール類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素の他、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなど、単独又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0219】
具体的には、10〜200μm厚の支持ベースフィルムに、本発明の熱硬化性ポリウレタン樹脂組成物層の厚みがラミネートする内層回路板の導体厚以上で、10〜150μmの範囲であり、樹脂層の他の面に1〜40μm厚の支持フィルムの如き保護フィルムをさらに積層し、ロール状に巻きとって貯蔵される。
【0220】
前記プリプレグは、例えば、本発明の熱硬化性ポリウレタン樹脂組成物を繊維からなるシート状補強基材にホットメルト法又はソルベント法により塗工、含浸させ、加熱、半硬化させることにより作製することができる。繊維からなるシート状補強基材としては、ガラスクロスやアラミド繊維など、公知慣用のプリプレグ用繊維を使用できる。ホットメルト法では、無溶剤の樹脂を使用し、樹脂と剥離性の良い塗工紙に一旦コーティングしそれをラミネートしたり、ダイコーターにより直接塗工する方法などが知られている。また、ソルベント法は、接着フィルム同様、有機溶剤に本発明の熱硬化性ポリウレタン樹脂組成物を溶媒に溶解した樹脂ワニスにシート状補強基材を浸漬、含浸させ、その後乾燥させてプリプレグを得る方法である。
【0221】
前記多層プリント配線板は、例えば、本発明の熱硬化性ポリウレタン樹脂組成物の層硬化物の粗化された面にメッキ導体層が形成され、他面はパターン加工された内層回路基板に密着して積層されている多層プリント配線板が挙げられる。この本発明の熱硬化性ポリウレタン樹脂組成物を用いた多層プリント配線板の製造法について説明する。本発明の熱硬化性ポリウレタン樹脂組成物をパターン加工された内層回路基板に塗工し、有機溶剤を含有している場合には乾燥した後、加熱硬化させる。なお、内層回路基板としては、ガラスエポキシや金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等を使用することができ、回路表面は予め粗化処理されてあってもよい。乾燥条件は70〜130℃で5〜40分、加熱硬化の条件は130〜180℃で15〜90分の範囲であるのが好ましい。加熱硬化後、必要に応じて所定のスルーホール、ビアホール部等にドリル及び/又はレーザー、プラズマにより穴開けを行う。次いで、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、オゾン、過酸化水素/硫酸、硝酸等の酸化剤で粗化処理し、接着剤層表面に凸凹のアンカーが形成される。さらに、無電解及び/又は電解メッキにより導体層を形成するが、このとき導体層とは逆パターンのメッキレジストを形成し、無電解メッキのみで導体層を形成してもよい。このように導体層が形成された後、150〜180℃で20〜60分アニール処理することにより、残留している未反応のエポキシ樹脂が硬化し導体層のピール強度をさらに向上させることもできる。
【0222】
本発明の熱硬化性ポリウレタン樹脂組成物を用いて得られた接着フィルムを用いて多層プリント配線板を製造するには、例えば、まず、パターン加工された内層回路基板に該接着フィルムをラミネートする。ラミネートは、保護フィルムが存在している場合には保護フィルムを除去後、接着剤の性能を有する本発明の熱硬化性ポリウレタン樹脂組成物の薄膜を加圧、加熱しながら貼り合わせる。ラミネート条件は、フィルム及び内層回路基板を必要によりプレヒートし、圧着温度が70〜130℃、圧着圧力が1〜11Kg/cmであって、減圧下で積層するのが好ましい。また、ラミネートはバッチ式であってもロールでの連続式であってもよい。ラミネート後、室温付近に冷却してから支持フィルムを剥離し、内層回路基板上に本発明の熱硬化性ポリウレタン樹脂組成物を転写した後、加熱硬化させる。また、離型処理の施された支持フィルムを使用した場合には、加熱硬化させた後に支持フィルムを剥離してもよい。その後、上記の方法同様、酸化剤により該フィルム表面を粗化、導体層をメッキにより形成して多層プリント配線板を製造することができる。
【0223】
一方、本発明の熱硬化性ポリウレタン樹脂組成物からなるプリプレグを用いて多層プリント配線板の製造するには、例えば、パターン加工された内層回路基板に該プリプレグを1枚あるいは必要により数枚重ね、離型フィルムを介して金属プレートを挟み加圧、加熱条件下、積層プレスする。圧力条件は5〜40Kgf/cm、温度条件は120〜180℃で20〜100分の範囲で成型するのが好ましい。また前記のラミネート方式によっても製造可能である。その後、上記の方法同様、酸化剤により該プリプレグ表面を粗化、導体層をメッキにより形成して多層プリント配線板を製造することができる。製造された多層プリント配線板は内層回路基板がパターン加工された内層回路を同方向に2層以上有する場合には該内層回路間に本発明の熱硬化性ポリウレタン樹脂組成物の硬化物である絶縁層を有していることになる。本発明で言うパターン加工された内層回路基板は多層プリント配線板に対する相対的な呼称である。例えば、基板両面に回路を形成しさらにその両回路表面に本発明の熱硬化性ポリウレタン樹脂組成物の硬化した薄膜を絶縁層として各々形成した後、さらにその両表面に各々回路を形成すると4層プリント配線板が形成できる。この場合の内層回路基板とは基板上に形成された両面に回路形成されたプリント配線板を言いう。さらに、この4層プリント配線板の両表面にさらに絶縁層を介して各々1層の回路を追加形成すれば6層プリント配線板ができる。この場合の内層回路基板とは前述の4層プリント配線板を言うことになる。
【0224】
本発明の熱硬化性ポリウレタン樹脂組成物を用いて得られる積層板としては、例えば、本発明の熱硬化性ポリウレタン樹脂組成物を両面銅張積層板の銅箔をエッチアウトした面もしくはアンクラッド板の少なくとも片方の面に塗工、加熱硬化して得られた積層板、前記接着フィルムを両面銅張積層板の銅箔をエッチアウトした面もしくはアンクラッド板の少なくとも片方の面に、加圧、加熱条件下でラミネートし、必要により支持ベースフィルムを剥離、加熱硬化して得られた積層板、前記プリプレグを両面銅張積層板の銅箔をエッチアウトした面もしくはアンクラッド板の少なくとも片方の面に、加圧、加熱条件下で積層して得られた積層板、プリプレグを加圧、加熱条件下で積層して得られた積層板等が挙げられる。以下に積層板の製造方法を述べる。
【0225】
本発明の熱硬化性ポリウレタン樹脂組成物を両面銅張積層板の銅箔をエッチアウトした面もしくはアンクラッド板の少なくとも片方の面に、塗工、加熱硬化させることにより積層板を得ることができる。上記アンクラッド板は、銅張積層板製造時に、銅箔の代わりに離型フィルム等を使用にする事により得られる。このようにして得られた積層板は、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、オゾン、過酸化水素/硫酸、硝酸等の酸化剤で粗化処理を行うことにより、積層板表面に凸凹のアンカーが形成され、さらに無電解及び/又は電解メッキにより、積層板表面に直接導体層を形成することができる。
【0226】
また、本発明の熱硬化性ポリウレタン樹脂組成物からなる接着フィルムを両面銅張積層板の銅箔をエッチアウトした面もしくはアンクラッド板の少なくとも片方の面に、ラミネート、加熱硬化させることにより積層板を得ることができる。このようにして得られた積層板は、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、オゾン、過酸化水素/硫酸、硝酸等の酸化剤で粗化処理を行うことにより、積層板表面に凸凹のアンカーが形成され、さらに無電解及び/又は電解メッキにより、積層板表面に直接導体層を形成することができる。
【0227】
また、本発明の熱硬化性ポリウレタン樹脂組成物からなるプリプレグを所定の枚数を重ねるか、または両面銅張積層板の銅箔をエッチアウトした面もしくはアンクラッド板の少なくとも片方の面に載せ、離型フィルムを介して金属プレートを挟み加圧、加熱条件下、積層プレスすることにより積層板を得ることができる。このようにして得られた積層板は、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、オゾン、過酸化水素/硫酸、硝酸等の酸化剤で粗化処理を行うことにより、積層板表面に凸凹のアンカーが形成され、さらに無電解及び/又は電解メッキにより、積層板表面に直接導体層を形成することができる。
【実施例】
【0228】
次に、本発明を実施例および比較例によりさらに具体的に説明する。以下において、部および「%」は特に断りのない限り、すべて「重量%」である。
【0229】
合成例1〔ポリウレタン樹脂(A)の製造〕
攪拌装置、温度計およびコンデンサーを付けたフラスコに、γ−ブチロラクトン 57gと、BPF(ビスフェノールF)80.8g(0.4モル)と、TDI(トリレンジイソシアネート)52.2g(0.3モル)とを仕込み、攪拌を行いながら発熱に注意して80℃に昇温し、この温度で5時間反応させた。反応後、γ−ブチロラクトンにて樹脂固形分濃度を60%に調整し、25℃での粘度が180Pa・sの無色透明なポリウレタン樹脂(A−1)の溶液を得た。
【0230】
得られたポリウレタン樹脂(A−1)の溶液をKBr板に塗装し、溶剤を揮発させた試料の赤外線吸収スペクトルを測定した結果、イソシアネート基の特性吸収である2270cm−1が完全に消滅していた。これによりイソシアネート基は、BPFの水酸基と共にウレタン結合を形成し、BPFの水酸基を除いた残基を骨格中に有し、且つ、末端がBPFの水酸基となっているポリウレタン樹脂が得られたと結論される。
【0231】
合成例2(同上)
攪拌装置、温度計およびコンデンサーを付けたフラスコに、γ−ブチロラクトン 200gと、TMBP(テトラメチルビフェノール) 121g(0.5モル)と、TDI 69.6g(0.4モル)とを仕込み、攪拌を行いながら発熱に注意して90℃に昇温し、この温度で7時間反応させた。反応後系内はクリアなオレンジ色の液体となり、ここに不揮発分が40%になるようにγ−ブチロラクトンで調整し、25℃での粘度が6.2Pa・sのポリウレタン樹脂(A−2)の溶液を得た。
【0232】
得られたポリウレタン樹脂(A−2)の溶液をKBr板に塗装し、溶剤を揮発させた試料の赤外線吸収スペクトルを測定した結果、イソシアネート基の特性吸収である2270cm−1が完全に消滅していた。これによりイソシアネート基は、TMBPの水酸基と共にウレタン結合を形成し、TMBPの水酸基を除いた残基を骨格中に有し、且つ、末端がTMBPの水酸基となっているポリウレタン樹脂が得られたと結論される。
【0233】
合成例3(同上)
攪拌装置、温度計及びコンデンサーをつけたフラスコに、γ−ブチロラクトン50.6gと、ソルベッソ150(芳香族炭化水素系溶剤)101.2gと、ノニルフェノールノボラック樹脂溶液(水酸基当量 288g/eq 不揮発分79.5%のミネラルスピリッツ溶液 4.26官能)85.9g(フェノール性水酸基量として0.298モル)と、ポリブタジエンジオール(分子量3550)124.3g(0.035モル)とを仕込んで、80℃に昇温、溶解させた。ついでMDI 17.5g(0.07モル)を1時間かけて分割で仕込んで80℃にて7時間反応を行った。反応後はクリアな濃い黄色の液体となり、不揮発分54%で粘度4Pa・sのポリウレタン樹脂の溶液(A−3)を得た。
【0234】
得られたポリウレタン樹脂(A−3)の溶液をKBr板に塗装し、溶剤成分を揮発させた試料の赤外吸収スペクトルを測定した結果、イソシアネート基の特性吸収である2270cm−1が完全に消滅していた。これによりイソシアネート基は、ノニルフェノールノボラック樹脂中のフェノール性水酸基と共にウレタン結合を形成し骨格中にノニルフェノールノボラック樹脂のフェノール性水酸基を有し、一部のフェノール性水酸基がウレタン結合で変性されたポリウレタン樹脂が得られたと結論される。
【0235】
合成例4〔硬化剤(C)の調製〕
フェノール94g、ベンゾグアナミン12gに41.5%ホルマリン45g、およびトリエチルアミン0.4gを加え、系のpHを8.2に調整し、発熱に注意しながら徐々に100℃まで昇温した。100℃にて5時間反応させた後、常圧下にて水を除去しながら120℃まで2時間かけて昇温した。次に還流下にて3時間反応させた後、常圧下にて水を除去しながら160℃まで2時間かけて昇温した。さらに還流下で3時間反応させた後、常圧下にて水を除去しながら180℃まで2時間かけて昇温した。次に減圧下にて未反応のフェノールを除去し、軟化点111℃のフェノール樹脂を得た。以下この樹脂を(C−1)と略記する。
【0236】
得られた樹脂中のフェノール類とトリアジン類との重量比率、未反応ホルムアルデヒド量、メチロール基の存在の有無、構成単位A、構成単位Bのモル比率、未反応フェノールモノマー量、及びトリアジン類反応率は次のように求めた。
【0237】
<フェノールとトリアジン類(ベンゾグアナミン)の重量比率>
上記記載の180℃、減圧下にて反応系外に除去した流出物中のフェノール含量をガスクロマトグラフィから算出し、仕込みのフェノールg数から引いて樹脂中のフェノール存在量とした。ベンゾグアナミンは仕込み量がそのまま樹脂中に含まれることとした。両者の比率を存在比とした。
【0238】
<ガスクロマトグラフィの条件>
カラム:30%セライト545カルナバワックス2m×3mmΦ
カラム温度:170℃
注入口温度:230℃
検出器:FID
キャリアガス:N2ガス 1.0kg/cm2
測定法:内部標準法
【0239】
<未反応ホルムアルデヒド量>
蒸留水50gに細かく粉砕した樹脂(C−1)5gを加え、室温で24時間保持した。pH計にセットし、1モル/L(0.1N)の塩酸水溶液を加えてpH=4.0に調整した。これにpH=4.0に調整した7%ヒドロキシルアミン水溶液50mlを加え、アルミ箔で密封して30分放置した。その後pH計にセットし、1Nの水酸化ナトリウム溶液でpH=4.0に中和するまで滴定した。次式により遊離(未反応)ホルムアルデヒド量を決定した。
【0240】
T×F×30
未反応(遊離)ホルムアルデヒド(%)=─────── ×100
S×1000
S:サンプル量(g)
F:1N水酸化ナトリウムのファクター
T:1N水酸化ナトリウムの滴下量(ml)
【0241】
<メチロール基の存在の有無>
13C−NMRを用いて樹脂組成物N1中に存在するメチロール基を測定した。
装置:日本電子(株)製 GSX270
プロトン:270MHZ
測定溶媒:DMSOあるいは重アセトン
基準物質:テトラメチルシラン
測定条件
パルス条件:45゜×10000times
パルス間隔:2秒
得られたチャートの60〜70ppmにピークが現れ、ノイズと明確に区別され得るピークを用いて判定した。ピークが認められた場合を「有」、認められない場合を「無」とした。
【0242】
<構成単位F、構成単位Gのモル比率>
メチロール基測定と同一条件で測定した13C−NMRチャートを用いて算出した。
【0243】
チャートの42.5〜45ppmに現れるピークの積分値をGp、47〜48.5ppmに現れるピークの積分値をFpとし、次式によりモル比率を求めた。
構成単位G/構成単位F=Gp/Fp
【0244】
<未反応フェノールモノマー量>
先に示したガスクロマトグラフィと同様の測定条件において流出物中のフェノールモノマー含量を測定した。
【0245】
<トリアジン類反応率>
上記メチロール基を測定したのと同一条件で測定した13C−NMRチャートを用いて算出した。チャートの167.2〜167.4ppmに現れるシャープなピークの積分値をTm、163〜167.2ppmに現れるブロードなピークのピーク積分値をTrとし、次式により反応率を求めた。
【0246】
Tr
反応率%=──────×100
Tr+Tm
このようにして求められた各成分量の結果は第1表にまとめて記した。
【0247】
合成例5(同上)
フェノール94g、メラミン18gに41.5%ホルマリン45g、およびトリエチルアミン0.4gを加え、系のpHを8.2に調整し、発熱に注意しながら徐々に100℃まで昇温した。100℃にて5時間反応させた後、常圧下にて水を除去しながら120℃まで2時間かけて昇温した。次に還流下にて3時間反応させた後、常圧下にて水を除去しながら140℃まで2時間かけて昇温した。還流下で3時間反応させた後、常圧下にて水を除去しながら160℃まで2時間かけて昇温した。さらに還流下で3時間反応させた後、常圧下にて水を除去しながら180℃まで2時間かけて昇温した。次に減圧下にて未反応のフェノールを除去し、軟化点128℃のフェノール樹脂を得た。フェノールとメラミンの重量比率、未反応ホルムアルデヒド量、メチロール基の存在の有無、構成単位F、構
成単位Gのモル比率、未反応フェノールモノマー量、及びトリアジン類反応率を、合成例4と同様に求め、結果を第1表にまとめて示した。以下、この樹脂を(C−2)と略記する。
【0248】
実施例1
第2表に示す配合にて本発明の熱硬化性ポリウレタン樹脂組成物1を調製した。得られた熱硬化性ポリウレタン樹脂組成物1の硬化塗膜の電気特性、耐熱性、寸法安定性、難燃性、相溶性、塗膜増膜性、機械物性及び熱硬化性ポリウレタン樹脂組成物1の寸法安定性を下記方法に従って評価した。その結果を第4表に示す。
【0249】
(1)電気特性の評価
電気特性は塗膜の誘電率(ε)と誘電損失(Tanδ)とを測定することにより評価した。熱硬化性ポリウレタン樹脂組成物1を硬化後の膜厚が80μmになるようにブリキ基板上に塗装し、70℃の乾燥機で20分間乾燥した後、200℃で1時間硬化させ冷却した後、剥離した硬化塗膜を切り出した測定用試料を、アジレントテクノロジー社製4291Bを用いて、周波数は100MHzの条件で、測定雰囲気の温度は23度の条件で誘電率(ε)と誘電損失(Tanδ)とを測定した。
【0250】
(2)耐熱性の評価及び寸法安定性の評価
耐熱性の評価は硬化塗膜のガラス転移点(Tg)の測定とハンダ浴浸漬法により行った。寸法安定性の評価は線膨張係数を測定することにより行った。
【0251】
(ガラス転移点(Tg)の測定と線膨張係数の測定)
<試験用試験片の作製>
熱硬化性ポリウレタン樹脂組成物1を硬化後の膜厚が50μmになるようにブリキ基板上に塗装し、70℃の乾燥機で20分間乾燥した後、200℃で1時間硬化させ冷却した後、剥離した硬化塗膜を幅5mm、長さ30mmに切り出し、測定用試料とした。
【0252】
<Tg測定方法>
セイコー電子(株)製熱分析システムTMA−SS6000を用いて、試料長10mm、昇温速度10℃/分、荷重30mNの条件でTMA(Thermal Mechanical Analysis)法により測定した。なお、Tgは、TMA測定での温度−寸法変化曲線からその変極点を求め、その温度をTgとした。Tgが高いほど耐熱性に優れることを表す。線膨張係数は温度域50〜60℃、及び110〜120℃での試料長の変位より求めた。線膨張係数が小さいほど寸法安定性に優れることを示す。
尚、第4表、第5表において温度域50〜60℃における線膨張係数の測定結果を「線膨張係数1」と、温度域110〜120℃における線膨張係数の測定結果を「線膨張係数2」と略記する。線膨張係数の単位はPPM(cm/cm/℃)×10である。
【0253】
(ハンダ浴浸漬法による耐熱性の評価)
<試験片の作成>
熱硬化性ポリウレタン樹脂組成物を硬化後の膜厚が50μmになるように銅箔がラミネートされたガラスエポキシ基板上に塗装し、70℃の乾燥機で30分間乾燥した後、170℃で1時間硬化させた後、室温まで冷却し、硬化塗膜を作成した。
【0254】
<耐熱性試験方法>
硬化塗膜を260℃のハンダ浴に30秒浸漬し、室温に冷却した。このハンダ浴の浸漬操作を合計3回行い、硬化塗膜の外観について以下の評価基準で評価した。
○:塗膜に外観以上は見られない。
△:塗膜にフクレ、はがれ等以上が若干見られる。
×:塗膜全体にフクレ、はがれ等異常が見られる。
【0255】
(3)難燃性の評価
ブリキ板に熱硬化性ポリウレタン樹脂組成物1を乾燥膜圧を80μmになるように塗装し、70℃の乾燥機で20分間乾燥させた後、200℃で1時間硬化させた。室温まで冷却した後に硬化塗膜を10×100mmの短冊状に切り、ブリキ板から剥離してテストピースとした。このテストピースをブンゼンバーナーの炎にて着火させ、炎から静かに離し、テストピースの着火炎が消えるかどうかの試験を行った。この操作を3回行い、下記の基準に従って評価した。尚、テストピースは長手方向に垂直にクランプに固定し、上部に火をつけ、評価を行った。
○:3回中すべて火が消えた。
△:3回中1〜2回火が消えた。
×:3回中3回燃え尽きた。
【0256】
(4)保存安定性(熱硬化性ポリウレタン樹脂組成物1の保存安定性)
熱硬化性ポリウレタン樹脂組成物1を密栓したガラスビンに保存し、40℃で1週間後の状態を観察した。目視にて下記基準に従って評価した。
○:凝集物、沈殿物がなく、且つ、高粘度化せずに流動性があるもの。
△:凝集物、沈殿物がなないもののテーリングまたは高粘度化が起こったもの。
×:ゲル化がおこったもの。
【0257】
(5)相溶性の評価
熱硬化性ポリウレタン樹脂組成物を調製した際の相溶状態と、調製後の熱硬化性ポリウレタン樹脂組成物1をガラス板に塗装し、120℃で乾燥した後の塗膜の状態を、下記の評価基準で評価した。
評価基準
○:熱硬化性ポリウレタン樹脂組成物の調製において攪拌により均一となり、塗膜面にも異物等が見られない。
△:熱硬化性ポリウレタン樹脂組成物の調製において攪拌により均一になりにくく、塗膜面にもやや異物等が見られる。
×:熱硬化性ポリウレタン樹脂組成物の調製において均一に溶解せず、塗膜面は、はじき、異物、不溶解物が確認できる。
【0258】
(6)塗膜造膜性の評価
熱硬化性ポリウレタン樹脂組成物10を乾燥後の膜厚が30μmになるようにブリキ板にアプリケーターにて塗布後、110℃で30分間乾燥させて得た試験片を、室温にて24時間放置し、塗膜外観を以下の評価基準で評価した。
評価基準
○:塗膜にクラック等の異常は見られない。
△:塗膜に若干クラックが見られる。
×:塗膜全面にクラックが発生した。
【0259】
(7)機械物性の評価
機械物性は塗膜の引張試験を行うことにより評価した。
<試験片の作製>
熱硬化性ポリウレタン樹脂組成物を硬化後の膜厚が50μmになるようにブリキ基板上に塗装した。次いで、この塗装板を70℃の乾燥機で20分間乾燥した後、200℃で1時間硬化させて硬化塗膜を作成した。室温まで冷却した後、硬化塗膜を所定の大きさに切り出し、基板から単離して測定用試料とした。
【0260】
<引張試験測定方法>
測定用試料を5枚作成し、下記の条件で引張試験を行い、破断強度と破断伸度を求めた。破断強度と破断伸度の値が高いほど機械物性に優れる塗膜であることを表す。
測定機器:東洋ボールドウィン社製テンシロン
サンプル形状:10mm×70mm
チャック間:20mm
引張速度:10mm/min
測定雰囲気:22℃、45%RH
【0261】
実施例2〜6及び比較例1〜5
第2表、第3表に示す配合で配合した以外は実施例1と同様にして熱硬化性ポリウレタン樹脂組成物2〜6及び比較対照用熱硬化性樹脂組成物1´〜5´を調製した。これを用いて実施例1と同様に各種評価を行い、その結果を第4表及び第5表に示す。
【0262】
【表1】

【0263】
【表2】

【0264】
【表3】

【0265】
【表4】

【0266】
【表5】

【0267】
表の脚注
N680:クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ当量214 軟化点81℃
EP2050:固形ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量640
DBTL:ジブチルチンジラウレート
2E4MZ:2−エチル−4−メチル−イミダゾール
DBTA:ジブチルチンアセテート
CNR:オルソクレゾールノボラック型樹脂 融点 90℃ 水酸基当量=105
BPF:ビスフェノールF

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)および/または下記一般式(2)で表される構造を有するポリウレタン樹脂(A)と、エポキシ樹脂(B)と、硬化剤(C)とを含有する熱硬化性ポリウレタン樹脂組成物であり、該硬化剤(C)がフェノール類とトリアジン類とアルデヒド類とからなるトリアジン変性ノボラック型フェノール樹脂であって、該ノボラック型フェノール樹脂が、フェノール類とトリアジン類とアルデヒド類との縮合物(c1)、トリアジン類とアルデヒド類との縮合物(c2)、フェノール類とアルデヒド類との縮合物(c3)、フェノール類(c4)及びトリアジン類(c5)の混合物からなり、且つ該縮合物(c1)及び該縮合物(c2)の中に、一般式(20)で表される構造単位Fと一般式(21)で表される構造単位Gが、モル比率で下記式(22)を満足する状態で含まれているフェノール樹脂であることを特徴とする熱硬化性ポリウレタン樹脂組成物。
(−D−NH−CH2−NH−) (20)
(−D−NH−CH2−E−) (21)
(式中、Dはトリアジン類の残基を示し、Eはフェノール類残基を示す)
G/F≧1.5 (22)
【化1】

【化2】

(式中、Xは1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有するフェノール系化合物から2個のフェノール性水酸基を除いた残基を示す。)
【請求項2】
前記一般式(1)および/または一般式(2)中のXが一般式(5)、一般式(7)および一般式(9)で示される構造の群から選ばれる一種以上の構造である請求項1記載の熱硬化性ポリウレタン樹脂組成物。
【化3】

(式中Rは、直接結合あるいは2価の連結基であり、Rは同一でも異なっていても良く、水素原子または炭素原子数1〜18のアルキル基を示す。)
【化4】

(式中Rは、水素原子または炭素原子数1〜18のアルキル基または下記一般式(8)で示される構造を示す。)
【化5】

【化6】

【請求項3】
前記一般式(1)および/または一般式(2)中のXが一般式(6)で示される構造である請求項1記載の熱硬化性ポリウレタン樹脂組成物。
【化7】

(式中Rは、直接結合あるいは2価の連結基であり、Rは同一でも異なっていても良く、水素原子または炭素原子数1〜18のアルキル基を示す。aとbとcとの合計は1以上である。)
【請求項4】
前記一般式(6)中のRがメチレン基および/または下記一般式(11)で示される構造である請求項3記載の熱硬化性ポリウレタン樹脂組成物。
【化8】

【請求項5】
前記ポリウレタン樹脂(A)が下記構造(15)にて分岐している請求項1記載の熱硬化性ポリウレタン樹脂組成物。
【化9】

(式中R5はジイソシアネート化合物からイソシアネート基を除いた残基構造を示す。)
【請求項6】
前記ポリウレタン樹脂(A)が更に下記一般式(13)で示される構造を有するポリウレタン樹脂である請求項1記載の熱硬化性ポリウレタン樹脂組成物。
【化10】

(式中、Yは1分子中に少なくとも2個のアルコール性水酸基を有するポリオール化合物から2つの水酸基を除いた残基を示す。)
【請求項7】
前記一般式(13)で表される構造が、該構造中のYとして数平均分子量が300〜5,000であるポリオール化合物から2つの水酸基を除いた残基を有する構造である請求項6記載の熱硬化性ポリウレタン樹脂組成物。
【請求項8】
前記一般式(13)で表される構造が、該構造中のYとしてガラス転移温度が−150〜0℃である残基を有する構造である請求項6記載の熱硬化性ポリウレタン樹脂組成物。
【請求項9】
前記一般式(13)中のYが1分子中に少なくとも2個のアルコール性水酸基を有するポリオレフィンポリオールから2つの水酸基を除いた残基、1分子中に少なくとも2個のアルコール性水酸基を有するポリエーテルポリオールから2つの水酸基を除いた残基、1分子中に少なくとも2個のアルコール性水酸基を有するポリカーボネートポリオールから2つの水酸基を除いた残基、1分子中に少なくとも2個のアルコール性水酸基を有するポリエステルポリオールから2つの水酸基を除いた残基および1分子中に少なくとも2個のアルコール性水酸基を有するポリシロキサンポリオールから2つの水酸基を除いた残基からなる群から選ばれる1種以上の残基である請求項6記載の熱硬化性ポリウレタン樹脂組成物。
【請求項10】
前記エポキシ樹脂(B)がノボラック型エポキシ樹脂である請求項1記載の熱硬化性ポリウレタン樹脂組成物。
【請求項11】
前記縮合物(c1)及び縮合物(c2)中のトリアジン類のモル比率が、全トリアジン類の30%以上である請求項1記載の熱硬化性ポリウレタン樹脂組成物。
【請求項12】
トリアジン類が、メラミン、アセトグアナミン及びベンゾグアナミンからなる群から選ばれる1種又は2種以上である請求項1又は2記載の熱硬化性ポリウレタン樹脂組成物
【請求項13】
硬化触媒を含有する請求項1〜12のいずれか1項記載の熱硬化性ポリウレタン樹脂組成物。
【請求項14】
更に、ウレタン化触媒を含有する請求項1〜12のいずれか1項記載の熱硬化性ポリウレタン樹脂組成物。
【請求項15】
請求項1〜14いずれか1項記載の熱硬化性ポリウレタン樹脂組成物を熱硬化してなることを特徴とする硬化物。

【公開番号】特開2008−239865(P2008−239865A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−84443(P2007−84443)
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】