説明

熱硬化性樹脂、及びそれを含む熱硬化性組成物、並びにそれらから得られる成形体、硬化体

【課題】優れた誘電率と優れた耐熱性を兼ね備えた熱硬化性樹脂、及びそれを含む熱硬化性組成物、並びにそれらから得られる成形体、硬化体を提供すること。

【解決手段】下記一般式(I)で示されるジヒドロベンゾオキサジン環構造を有する熱硬化性樹脂。
【化1】


〔一般式(I)において、R1〜R8は、それぞれ水素及び炭素数1〜10の有機基からなる群から選択される基である。〕

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた誘電率と優れた耐熱性を兼ね備えた熱硬化性樹脂、及びそれを含む熱硬化性組成物、並びにそれらから得られる成形体、硬化体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ジヒドロベンゾオキサジン環が開環重合反応し、問題となるような揮発分の発生を伴わずに熱硬化するジヒドロベンゾオキサジン化合物(以下、ジヒドロベンゾオキサジン化合物と記載する場合がある。)が研究されてきた。
【0003】
また、近年電子機器類の高速大容量が進んでおり、それらを構成する材料としてますます高耐熱性、低誘電特性が求められている。
【0004】
このような優れた誘電率を有する熱硬化性樹脂の原料材料として、下記式(1)で表されるベンゾオキサジン化合物等が知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【0005】
【化1】

【0006】
また、(ジヒドロ)ベンゾオキサジン樹脂、エポキシ樹脂及び触媒を熱硬化させてからなる樹脂硬化物が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−8842号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】小西化学工業株式会社ホームページ[平成20年9月5日検索]、インターネット<URL:http://www.konishi-chem.co.jp/technology/oxazin.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、非特許文献1に開示されている、Bis-Sベンゾオキサジン樹脂及びBis-Aベンゾオキサジン樹脂は、誘電率が4.4である。
【0010】
また、特許文献1に開示されている、ベンゾオキサジン樹脂及びエポキシ樹脂の組合せによって得られた樹脂硬化物は、耐熱性が368℃以上、誘電率が3.50である。
【0011】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、優れた誘電率と優れた耐熱性を兼ね備えた熱硬化性樹脂、及びそれを含む熱硬化性組成物、並びにそれらから得られる成形体、硬化体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、前記課題を解決するために、鋭意検討した結果、新規な構造を有するジヒドロベンゾオキサジン化合物からなる熱硬化性樹脂が、前記目的を達成し得ることの知見を得た。本発明はかかる知見に基づくものである。
すなわち本発明は以下の通りである。
[1]
下記一般式(I)で示されるジヒドロベンゾオキサジン環構造を有する熱硬化性樹脂。
【化2】

〔一般式(I)において、R1〜R8は、それぞれ水素及び炭素数1〜10の有機基からなる群から選択される基である。〕
[2]
R1及びR3の何れか1つが水素であり、並びにR5及びR7の何れか1つが、水素である、[1]に記載の熱硬化性樹脂。
[3]
R1〜R8のすべてが水素である、[1]に記載の熱硬化性樹脂。
[4]
R1〜R4の何れか1つが炭素数1〜10の有機基であり、及びR5〜R8の何れか1つが炭素数1〜10の有機基であり、残りの基は全て水素である、[1]に記載の熱硬化性樹脂。
[5]
[1]〜[4]の何れか一項に記載の熱硬化性樹脂を1〜99質量%含む、熱硬化性組成物。[6]
[1]〜[4]の何れか一項に記載の熱硬化性樹脂又は[5]に記載の熱硬化性組成物より得られる成形体。
[7]
[1]〜[4]の何れか一項に記載の熱硬化性樹脂、[5]に記載の熱硬化性組成物、又は[6]に記載の成形体を硬化させて得られる硬化体。
[8]
下記一般式(I)で示されるジヒドロベンゾオキサジン環構造を有する化合物。
【化3】

〔一般式(I)において、R1〜R8は、それぞれ水素及び炭素数1〜10の有機基からなる群から選択される基である。〕
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、優れた誘電率と優れた耐熱性を兼ね備えた熱硬化性樹脂、及びそれを含む熱硬化性組成物、並びにそれらから得られる成形体、硬化体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施例1で製造されたジヒドロベンゾオキサジン環構造を有する熱硬化性樹脂のプロトン核磁気共鳴スペクトル(H−NMRスペクトル)を示す。
【図2】実施例3で製造されたジヒドロベンゾオキサジン環構造を有する熱硬化性樹脂のプロトン核磁気共鳴スペクトル(H−NMRスペクトル)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0016】
[熱硬化性樹脂]
本発明の熱硬化性樹脂は、下記一般式(I)で示されるジヒドロベンゾオキサジン環構造を有するものである。
【0017】
【化4】

〔一般式(I)において、R1〜R8は、それぞれ水素及び炭素数1〜10の有機基からなる群から選択される基である。〕
【0018】
本発明の熱硬化性樹脂は、前記一般式(I)で示される新規なジヒドロベンゾオキサジン環構造を有するため、誘電率及び耐熱性に優れるものである。本発明の熱硬化性樹脂は、前記一般式(I)の分子構造中のジヒドロベンゾオキサジン環の開環重合反応により、硬化させることが可能である。
【0019】
前記一般式(I)における炭素数1〜10の有機基として、炭素数1から10の飽和又は不飽和の、直鎖又は分岐のアルキル、アルケニル及びアルキニル、炭素数3から10のシクロアルキル及び並びにフェニル、ナフチル等の置換又は無置換のアリール等から選択される基が挙げられ、具体例として、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、シクロへキシル、フェニル等から選択される基が挙げられる。
有機基として、メチル、t−ブチル、シクロへキシル、フェニルであることが好ましく、メチル、t−ブチルであることがより好ましい。
【0020】
炭素数1〜10の有機基は、フッ素、酸素及び/又は窒素を含んでもよく、斯かる有機基として、炭素数1から10の飽和又は不飽和の、直鎖又は分岐のアルキルオキシ、ジアルキルアミノ、アルキルオキシカルボニル、アルケニルオキシ、ジアルケニルアミノ、アルキニルオキシ、ジアルキニルアミノ、アルキルオキシアルキル、及びジアルキルアミノアルキル等から選択される基並びに有機基の水素がフッ素で置換された基が挙げられる。
有機基の具体例として、メチルオキシ、エチルオキシ、ヘキシルオキシ、デシルオキシ、メチルオキシカルボニル、エチルオキシカルボニル、プロピルオキシカルボニル、ジメチルアミノ及びジエチルアミノ等から選択される基が挙げられる。
フッ素で置換された有機基の具体例として、フルオロメチル、フルオロエチル等が挙げられる。
【0021】
一般式(I)において、R1及びR3の何れか1つが水素であることが好ましく、R5及びR7の何れか1つが水素であることが好ましい。
一般式(I)において、R1〜R8の全てが水素であることが好ましい。
一般式(I)において、R1〜R4の何れか1つが炭素数1〜10の有機基であり、R5〜R8の何れか1つが炭素数1〜10の有機基であることも好適である。
この場合、R1〜R4の残りの基は、炭素数1〜10の有機基及び水素からなる群から選択される基であれば特に限定されるものではないが、水素であることが好ましい。
また、R5〜R8の残りの基は、炭素数1〜10の有機基及び水素からなる群から選択される基であれば特に限定されるものではないが、水素であることが好ましい。
一般式(I)中の有機基の数は、0〜4の整数であることが好ましい。R1〜R4の何れかが有機基であり、かつ、R5〜R8の何れかが有機基である場合に、有機基は異なっていてもよく、同じ基であってもよい。
【0022】
本発明の熱硬化性樹脂を構成する前記一般式(I)の化合物の合成方法は特に限定されるものではないが、例えば、単官能フェノール化合物、ジアミン化合物及びアルデヒド化合物を適当な溶媒中で加熱して反応させる合成方法が一例として挙げられる。
【0023】
前記一般式(I)の化合物の合成方法に用いられる単官能フェノール化合物の具体例として、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、o−エチルフェノール、m−エチルフェノール、p−エチルフェノール、o−イソプロピルフェノール、m−イソプロピルフェノール、p−イソプロピルフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−α−クミルフェノール、p−シクロヘキシルフェノール、o−メトキシフェノール、m−メトキシフェノール、p−メトキシフェノール、p−ヘキシルオキシフェノール、p−デシルオキシフェノール、p−ジメチルアミノフェノール、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、p−フェニルフェノール、p−イソプロペニルフェノール等が挙げられる。
【0024】
本発明においては、単官能フェノール化合物に加え、二官能フェノール化合物や三官能フェノール化合物等を使用することもできる。
二官能フェノール化合物、三官能フェノール化合物の具体例として、4,4’−ビフェノール、2,2’−ビフェノール、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、4,4’−[1,3−フェニレンビス(1−メチル−エチリデン)]ビスフェノール(三井化学製「ビスフェノールM」)等が挙げられる。
【0025】
単官能フェノール化合物とその他の二官能又は三官能フェノール化合物の比率は、単官能フェノール化合物のフェノール性水酸基が、フェノール化合物全体のフェノール性水酸基中で、50モル%以上となるような比率であることが好ましく、67モル%以上となる比率であることがより好ましく、75モル%以上となる比率であることがさらに好ましい。
【0026】
前記一般式(I)の化合物の合成方法に用いられるジアミン化合物として、下記構造で示される化合物であり、
【化5】

下記式(i)、(ii)で表される化合物、すなわち1−(4−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチル−1H−インデン−5−アミンや1−(4−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチル−1H−インデン−6−アミン等が挙げられる。ジアミン化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。
ジアミン化合物は、例えば、日本純良薬品株式会社から製品名「TMDA」として市販されている。
【化6】

【0027】
また、前記一般式(I)の化合物の合成方法に用いられるアルデヒド化合物として、ホルムアルデヒドが挙げられ、ホルムアルデヒドとしては、その重合体であるパラホルムアルデヒドや、水溶液の形であるホルマリン等の形態で使用することが可能である。
アルデヒド化合物として、パラホルムアルデヒドを使用するほうが反応の進行は穏やかである。アルデヒド化合物として、ホルムアルデヒドに加え、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド等を用いることができる。
【0028】
前記一般式(I)の化合物の合成方法に用いられる溶媒は、特に限定されるものではないが、原料のフェノール化合物やジアミン化合物の溶解性が良好なものが好ましい。
本発明における溶媒の具体例として、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒、クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン系溶媒、THF、ジオキサン等のエーテル系溶媒等が挙げられる。
【0029】
反応温度、反応時間についても特に限定されないが、通常、室温から150℃程度の温度で数十分から数時間反応させればよい。本発明においては、特に30〜140℃で、20分〜9時間反応させれば、本発明の熱硬化性樹脂としての機能を発現し得る化合物へと反応は進行するため好ましい。本発明においては、90〜140℃、2〜9時間において、反応を進行させることがより好ましい。
【0030】
本発明において、反応時に生成する水を系外に取り除くのも反応を進行させる有効な手法である。トルエン等の水と共沸する溶媒を用いることにより、反応時に生成する水を反応系外に取り除くことができる。
本発明において、反応後の溶液に、例えば多量のメタノール等の貧溶媒を加えることで一般式(I)の化合物を析出させることができる。析出した一般式(I)の化合物を分離、乾燥することも好適である。反応溶液を濃縮、固化させることによっても、一般式(I)の化合物が得られる。
【0031】
前記一般式(I)の化合物の合成方法において、前記一般式(I)の化合物を得ることのできる、単官能フェノール化合物、ジアミン化合物及びアルデヒド化合物の当量の理論値は2:1:2であるが、実際の反応時に各々の化合物の当量が上下20モル%の範囲で調整することもできる。
ジアミン化合物の当量を1とした場合、単官能フェノール化合物の当量は、0.8〜1.2の範囲内で、アルデヒド化合物の当量は1.0〜1.4の範囲内で反応を行うことが好適である。
【0032】
[熱硬化性組成物]
本発明の熱硬化性組成物は、前記熱硬化性樹脂を少なくとも含むものであり、熱硬化性樹脂を、熱硬化性組成物に対して、1〜99質量%含むことが好ましい。
熱硬化性組成物の熱硬化性樹脂以外の他の成分としては、他の熱硬化性樹脂が挙げられる。本発明において、熱硬化性樹脂(前記一般式(I)で示されるジヒドロベンゾオキサジン環構造を有する化合物)と、他の熱硬化性樹脂との配合比(前者/後者の重量比)は、好ましくは1/99〜99/1、より好ましくは5/95〜95/5である。
【0033】
本発明の熱硬化性組成物は、前記熱硬化性樹脂を主成分として含むものが好ましい。本発明の熱硬化性組成物において、主成分として前記熱硬化性樹脂を含み、且つ、副成分として、他の熱硬化性樹脂を含んでもよい。
本発明の熱硬化性組成物は、主成分として、熱硬化性樹脂を含む場合、熱硬化性樹脂組成物全体に対して、熱硬化性樹脂を50質量%以上含有することが好ましい。
【0034】
他の熱硬化性樹脂として、前記一般式(I)で示されるジヒドロベンゾオキサジン環構造を有する化合物以外の熱硬化性樹脂であれば特に限定されないが、他の熱硬化性樹脂の具体例として、エポキシ樹脂、熱硬化型変性ポリフェニレンエーテル樹脂、熱硬化型ポリイミド樹脂、ケイ素樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、アリル樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、アルキド樹脂、フラン樹脂、ポリウレタン樹脂、アニリン樹脂等が挙げられる。これらの中では、本発明の熱硬化性組成物から得られる成形体の耐熱性をより向上させ得る観点から、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、熱硬化型ポリイミド樹脂が好ましい。これらの他の熱硬化性樹脂は、単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。
【0035】
他の熱硬化性樹脂の中でも、エポキシ樹脂が好ましい。
本発明において、エポキシ樹脂の具体例として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、臭素化エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、置換ビスフェノールA型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フェノールビフェニレン型エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂等のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート等の環式脂肪族エポキシ樹脂、アジピン酸ジグリシジルエステル型、フタル酸ジグリシジルエステル型等のグリシジルエステル型エポキシ樹脂、ジグリシジルアニリン型、アミノフェノール型、脂肪族アミン型、ヒダントイン型等のグリシジルアミン型エポキシ樹脂、ヒドロキシ安息香酸型エステル型、α―メチルスチルベン型等の液晶エポキシ樹脂、感光性、分解性等の機能を有するエポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート、チイラン変性エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0036】
本発明の熱硬化性組成物に、エポキシ樹脂に加え、さらに必要に応じて、脂肪族ポリアミン、脂環式ポリアミン、芳香族ポリアミン等のポリアミン系硬化剤、ポリアミノアミド、アミン−エポキシアダクト、マイケル付加ポリアミン、マンニッヒ反応物、尿素又はチオ尿素との反応物、ケチミン、シッフ塩基等の変性ポリアミン系硬化剤、イミダゾール類、2−フェニルイミダゾリン、三級アミン(DBU等)、トリフェニルホスフィン、ホスホニウム塩、有機酸ヒドラジン等の塩基性硬化剤、無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等の酸無水物系硬化剤、フェノールノボラック、キシリレンノボラック、ビフェニルノボラック、ジシクロペンタジエンフェノールノボラック等のポリフェノール型硬化剤等を配合することができる。また、このようなエポキシ樹脂との混合物である熱硬化性組成物とすることにより、本発明の熱硬化性組成物より得られる成形体の柔軟性を向上させることができる。
【0037】
本発明の熱硬化性組成物には、前記一般式(I)で示されるジヒドロベンゾオキサジン環構造を有する熱硬化性樹脂以外に、分子内に少なくとも1つのジヒドロベンゾオキサジン環を有する化合物を副成分として用いることも好ましい。この分子内に少なくとも1つのジヒドロベンゾオキサジン環を有する化合物は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。
【0038】
本発明の熱硬化性組成物は、必要に応じて、難燃剤、造核剤、酸化防止剤(老化防止剤)、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、難燃助剤、帯電防止剤、防曇剤、充填剤、軟化剤、可塑剤、着色剤、離型剤、シランカップリング剤等の各種添加剤を含有していてもよい。これらはそれぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。本発明の熱硬化性組成物を調製する際に、反応性あるいは非反応性の溶剤を使用することもできる。
【0039】
[成形体、硬化体]
本発明の成形体は、本発明の熱硬化性樹脂、又はそれを含む熱硬化性組成物により得られるものである。
本発明の成形体として、本発明の熱硬化性樹脂が硬化前にも成形性を有しているため、熱硬化性樹脂または熱硬化性組成物より得られる硬化前のものでもよく、硬化後のものであってもよい。
本発明の硬化体は、本発明の熱硬化性樹脂、熱硬化性組成物、成形体より得られるものである。
本発明の硬化体として、熱硬化性樹脂又は熱硬化性組成物を成形して成形体とした後に熱をかけて硬化させたものでも、熱硬化性樹脂又は熱硬化性組成物を成形と同時に硬化させたものでもよい。
成形体、硬化体の寸法や形状は特に制限されず、例えば、シート状(板状)、ブロック状等が挙げられ、さらに他の部位(例えば粘着層)を備えていてもよい。
【0040】
本発明において、硬化方法としては、従来公知の任意の硬化方法を用いることができ、一般には120〜260℃程度で数時間加熱すればよいが、よって、用いる熱硬化性化合物の種類に応じた適正な条件を選択することが好ましい。
【0041】
本発明において、硬化を行う際に、硬化促進剤を適宜添加してもよい。
硬化促進剤としては、ジヒドロベンゾオキサジン化合物を開環重合することのできる任意の硬化促進剤を使用できる。
その他の硬化促進剤の具体例としては、カテコール、ビスフェノールA等の多官能フェノール類、p−トルエンスルホン酸、p−フェノールスルホン酸等のスルホン酸類、安息香酸、サリチル酸、シュウ酸、アジピン酸等のカルボン酸類、コバルト(II)アセチルアセトネート、アルミニウム(III)アセチルアセトネート、ジルコニウム(IV)アセチルアセトネート等の金属錯体、酸化カルシウム、酸化コバルト、酸化マグネシウム、酸化鉄等の金属酸化物、水酸化カルシウム、イミダゾール及びその誘導体、ジアザビシクロウンデセン、ジアザビシクロノネン等の第三級アミン及びこれらの塩、トリフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン・ベンゾキノン誘導体、トリフェニルホスフィン・トリフェニルボロン塩、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート等のリン系化合物及びその誘導体が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0042】
硬化促進剤の添加量は特に限定されないが、熱硬化性樹脂に対して、添加量が過多となると、成形体の誘電率が上昇し悪化したり、機械的物性に悪影響を及ぼしたりする場合があるので、本発明の熱硬化性樹脂100質量部に対し硬化促進剤を好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下の割合で用いることが好ましい。
【0043】
本発明の成形体は、本発明の熱硬化性樹脂又は熱硬化性組成物の有する熱硬化性という性質に基づいて信頼性、難燃性、成形性、美観性等に優れる。
【0044】
本発明の成形体及び硬化体は、電子部品・機器及びその材料、特に優れた誘電率が要求されるプリプレグ、積層板、プリント基板、フレキシブルプリント基板、多層基板、封止剤、接着剤等の用途に好適に用いることができ、また、その他、航空機部材、自動車部材、建築部材等の用途にも使用することができる。本発明において、上記のプリプレグ、積層板、プリント基板、フレキシブルプリント基板、多層基板、封止剤、接着剤等は公知の方法によって製造することが可能である。
【実施例】
【0045】
以下に本発明における代表的な実施例を示すが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0046】
[実施例1]
[ジヒドロベンゾオキサジン化合物の製造]
トルエン10mL中に、フェノール(和光純薬製)1.88g(0.02mol)、1−(4−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチル−1H−インデン−5−アミンと1−(4−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチル−1H−インデン−6−アミンの混合物(日本純良薬品製「TMDA」)2.66g(0.01mol)、パラホルムアルデヒド(三菱ガス化学製、91.6%)1.38g(0.042mol)を投入し、還流下で5時間反応させた。反応後の溶液を体積で約10倍量のメタノールに投じて化合物を析出させた。その後、ろ別により化合物を分離し、メタノールで洗浄した。その後、減圧乾燥により、目的化合物を得た。また、得られた化合物は、H−NMRスペクトルにより同定を行った。結果を図1に示す。
【0047】
[実施例2]
[硬化体の製造]
実施例1で得られた化合物を熱プレス法によりシート状に成形し、140℃、160℃、180℃、200℃、240℃で各20分保持し、0.5mm厚のシート状の硬化体を得た。
【0048】
[実施例3]
[ジヒドロベンゾオキサジン化合物の製造] フェノールの代わりに、m−クレゾール(和光純薬製)2.16g(0.02mol)を用いた以外は、実施例1と同様にして目的化合物を合成した。得られた化合物は、H−NMRスペクトルにより同定を行った。結果を図2に示す。
【0049】
[実施例4]
[硬化体の製造]
実施例3で得られた化合物を実施例2と同様にして硬化体を得た。
【0050】
前述する実施例において適用した測定方法及び測定条件を示す。
[測定方法]
(1)プロトン核磁気共鳴スペクトル(H−NMRスペクトル)の測定 測定装置(日本電子社製、型番JNM−ECX)を用いて、H−NMR(400MHz)、重水素クロロホルム使用し、256回積算し、緩和時間を10秒とした条件下で測定を行った。
【0051】
(2)誘電率、誘電正接の測定
実施例2及び実施例4により得られた硬化体について、誘電率測定装置(AGILENT社製、商品名「RFインピーダンス/マテリアル アナライザ E4991A」)を用いて容量法により、23℃、100MHz及び1GHzにおける誘電率を測定した。
【0052】
(3)熱重量分析(耐熱分解性)5%重量減少温度(Td)の測定
耐熱性を測定するために、熱重量減少を測定した。実施例2及び実施例4により得られた硬化体を細かく裁断し、熱重量分析装置(島津製作所社製、型番DTG−60)を用いて、昇温速度を10℃/分とし、空気中で測定を行い、5%重量減少する温度を求めた。
5%重量減少する温度は、300℃以上確保できれば、実用上良好であると判断した。
【0053】
実施例2及び4の硬化体の測定結果を表1に示す。
【表1】

【0054】
以上のように、実施例2及び実施例4の硬化体は、誘電特性及び耐熱性両方に優れていることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の熱硬化性樹脂は、優れた誘電率と優れた耐熱性を兼ね備えるので、熱硬化性樹脂、及びそれを含む熱硬化性組成物、並びにそれらから得られる成形体、硬化体は、電子部品・機器及びその材料、特に優れた誘電率が要求されるプリプレグ、積層板、フレキシブルプリント基板、プリント基板、多層基板、封止剤、接着剤等、及び航空機部材、自動車部材、建築部材、等の用途に、産業上の利用可能性を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で示されるジヒドロベンゾオキサジン環構造を有する熱硬化性樹脂。
【化1】

〔一般式(I)において、R1〜R8は、それぞれ水素及び炭素数1〜10の有機基からなる群から選択される基である。〕
【請求項2】
R1及びR3の何れか1つが水素であり、並びにR5及びR7の何れか1つが、水素である、請求項1に記載の熱硬化性樹脂。
【請求項3】
R1〜R8のすべてが水素である、請求項1に記載の熱硬化性樹脂。
【請求項4】
R1〜R4の何れか1つが炭素数1〜10の有機基であり、及びR5〜R8の何れか1つが炭素数1〜10の有機基であり、残りの基は全て水素である、請求項1に記載の熱硬化性樹脂。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項に記載の熱硬化性樹脂を1〜99質量%含む、熱硬化性組成物。
【請求項6】
請求項1〜4の何れか一項に記載の熱硬化性樹脂又は請求項5に記載の熱硬化性組成物より得られる成形体。
【請求項7】
請求項1〜4の何れか一項に記載の熱硬化性樹脂、請求項5に記載の熱硬化性組成物、又は請求項6に記載の成形体を硬化させて得られる硬化体。
【請求項8】
下記一般式(I)で示されるジヒドロベンゾオキサジン環構造を有する化合物。
【化2】

〔一般式(I)において、R1〜R8は、それぞれ水素及び炭素数1〜10の有機基からなる群から選択される基である。〕

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−174155(P2010−174155A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−19115(P2009−19115)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】