説明

熱硬化性樹脂組成物

【課題】 金属への接着性を改善できるDAP系の樹脂組成物を開発する。
【解決手段】 ジアリルフタレート(DAP)とポリアミドを含有し、硬化した樹脂組成物であって、DAPとポリアミドの混合比率が、DAP100重量部に対してポリアミド0.01〜60重量部である硬化性樹脂組成物である。DAPにポリアミドを配合することにより、硬化物組成にアミド結合(極性)を導入して、金属に対する接着性を改善することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はジアリルフタレート(DAP)を主成分とする熱硬化性樹脂組成物に関して、耐熱性に優れ、かつ金属に対する接着性を改善できるものを提供する。
【背景技術】
【0002】
DAP樹脂は耐熱性、高温高湿下における電気絶縁性、寸法安定性、耐薬品性などに優れることから、航空機、自動車、船舶用の電気部品や電子部品の封止材料として使用されている。
しかしながら、DAP樹脂は鋼や銅などの金属に対する接着性に劣るという欠点があり、上記耐熱性などの特性を保持しながら、この接着性の欠点を改善したDAP樹脂の開発が要請されている。
【0003】
特許文献1には、DAP樹脂に無水マレイン酸(硬化剤)とクレゾールノボラック型エポキシ樹脂を所定割合で含有することにより、金属(特に銅)との接着性の改善を目的としたDAP系樹脂組成物が開示されている(請求項1、段落1〜2、4、37)。
【特許文献1】特開平7−126351号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1は、金属への接着性に優れたエポキシ樹脂の性質を活用したものであるが、本発明は、基本的にエポキシ樹脂とは異なる他種の樹脂を配合して、金属への接着性を改善できるDAP系の樹脂組成物を開発することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、DAPにポリアミドを所定の割合で配合することで、硬化物組成に極性を有するアミド結合を導入して金属への接着性を改善できること、さらには引張り剪断接着強度の低下を抑制できることを見い出して、本発明を完成した。
【0006】
即ち、本発明1は、ジアリルフタレート(DAP)とポリアミドを含有し、熱硬化した樹脂組成物であって、
DAPとポリアミドの混合比率が、DAP100重量部に対してポリアミド0.01〜60重量部であることを特徴とする熱硬化性樹脂組成物である。
【0007】
本発明2は、上記本発明1において、ポリアミドがアリル基末端ポリアミドであることを特徴とする熱硬化性樹脂組成物である。
【0008】
本発明3は、上記本発明1又は2において、ポリアミドがダイマー酸変性ポリアミドであることを特徴とする熱硬化性樹脂組成物である。
【0009】
本発明4は、上記本発明1〜3のいずれかにおいて、さらにエポキシ樹脂を含有することを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、熱硬化性樹脂であるDAPにポリアミドを配合することにより、DAPが本来持っている耐熱性を維持しつつ金属に対する接着性を改善することができる。
また、ポリアミドに起因する柔軟性の付与と凝集力の強さにより、引張り剪断接着強度の低下を最小限に抑制できるものと推定される。
さらには、上記ポリアミドにダイマー酸変性ポリアミドを使用すると、適度の柔軟性を付与して接着性の向上に寄与できる。
一方、ポリアミドにアリル基末端ポリアミドを使用すると、さらに金属への接着性を向上できる。当該アリル基末端ポリアミドにアミノ基を存在させて、本来的に接着性に優れたエポキシ樹脂をさらに反応させると、当該アリル基末端ポリアミドとの反応により、金属への接着性をより改善できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明はDAPにポリアミドを所定割合で配合して硬化したDAP系樹脂組成物である。
上記DAPとしてはDAPオリゴマーとDAPモノマーの混合物が好ましく、より好ましくはDAPオリゴマーリッチである。
DAPオリゴマーは上記DAPモノマーを重合したホモポリマー、当該DAPモノマーと他の反応性モノマーとのコーポリマーなどをいう。
ジアリルフタレート(DAP)樹脂は、出発原料であるフタル酸の種類により、無水フタル酸またはオルソフタル酸を用いたオルソタイプ、イソフタル酸を用いたイソタイプ、およびテレフタル酸を用いたパラタイプのものがあり、これらの1種または2種以上を併用することができ、或はさらに他の反応性モノマーを併用することも可能である。
【0012】
上記他の反応性モノマーとしては、スチレン類や(メタ)アクリル酸系エステル類などを単用又は併用できる。
上記スチレン類としてはスチレンを初め、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−クロルスチレンなどが挙げられる。
上記(メタ)アクリル酸系エステル類は、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジルなどのメタクリル酸エステル類、アクリル酸エチル、アクリル酸プロビル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ベンジルなどのアクリル酸エステル類などである。
尚、上記DAPモノマーやDAPオリゴマーにおいては、アリル基やビニル基などの不飽和基を有するものを使用できることはいうまでもない。
【0013】
本発明に用いられるポリアミドはカルボキシル基を有する化合物とポリアミンの縮合物からなる。
上記カルボキシル基を有する化合物としては、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸等のジカルボン酸、トール油脂肪酸、オレイン酸、ステアリン酸等のモノカルボン酸やこれらを重合して2量体化した重合脂肪酸(乾性もしくは半乾性油脂脂肪酸又はそのエステルの重合によって得られるもの)などが挙げられる。
上記重合脂肪酸は、多不飽和脂肪酸を含むC8〜C24の一塩基性脂肪酸又はそのエステルを重合したものが好ましく、その成分としては、一塩基性脂肪酸、二量化重合脂肪酸、三量化重合脂肪酸等を含んでいる。現在、重合脂肪酸として市販されているものは炭素数18の不飽和脂肪酸に基づくものが多く、このうち、炭素数18の一塩基酸0〜10重量%、炭素数36の二塩基酸60〜99重量%、炭素数54の三塩基酸以上の酸30重量%以下の組成を有するものが良好である。
さらに、酢酸、プロピオン酸、オクチル酸等のC18未満のモノカルボン酸も分子量調整に使用することができる。また、ジカルボン酸の代わりに、アミノ基にマイケル付加が可能なアクリル酸やメタクリル酸又はそのエステルも利用できる。この場合、酸又はエステルはポリアミンと縮合してアミド結合となり、一方のビニル基はアミノ基と付加反応を起こすため、鎖延長が可能となる。
【0014】
本発明に用いられるポリアミドの他方の原料であるポリアミンとしては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等の脂肪族アミンやイソフォロンジアミン、N−アミノエチルピペラジン、ノルボルネンジアミン等の脂環式ポリアミン、キシリレンジアミン、ジアミノフェニルメタン、フェニレンジアミン、トリアミノベンゼン、トリアミノフェノール、テトラアミノベンゼン等の芳香族系アミンなどが挙げられ、これらを単用又は併用できる。
また、分子量調整のため、1級アミノ基を有するモノアミンを一部置換してチェーンストッパーとして利用することもできる。モノアミンとしては、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、オレイルアミン等が挙げられ、これらを単用又は併用できる。
【0015】
本発明によるDAPの改質効果が得られる機構は必ずしも明らかではないが、次のように推定される。
即ち、本発明においては、DAPにポリアミドを配合し、硬化剤の存在下で熱硬化させて樹脂硬化物を製造するが、DAPのアリル基はビニル基のように反応性が高くないため、DAPのエステル結合とポリアミドのアミド結合の交換反応により、樹脂硬化物にアミド結合(極性)が導入され、金属との接着性、特に剥離接着強度が改善される。
その一方、接着強度のうち、引張り剪断接着強度は概ね樹脂組成物の硬度に比例するが、本発明2に示すように、ポリアミドにアリル基末端ポリアミドを使用するとDAPと架橋反応することができ、硬化促進によってこの引張り剪断接着強度の低下を最小限に抑制できる。また、架橋反応によって樹脂の分子量が増大し、ガラス転移温度(Tg)も高く保持でき、耐熱性を向上できる。
本発明に用いられるアリル基末端ポリアミドについては、例えば、ポリアミドにアリルグリシジルエーテルを反応させることで、アリル基より反応性に勝るグリシジル基がポリアミドと優先的に反応して、末端にアリル基を有するポリアミドを得ることができる。
また、本発明3に示すように、ポリアミドにダイマー酸変性ポリアミドを使用すると、樹脂硬化物に適度の柔軟性を付与することにより、金属への接着性の向上に寄与することができる。
しかも、ポリアミド中にアミノ基を存在させることで、元来金属への接着性に優れるエポキシ樹脂とも反応することができ、さらに接着性を改善できる。
以上の通り、金属への接着性(引張り剪断及び剥離の接着強さ)を向上し、柔軟性を付与する見地から、本発明のポリアミドとしては、アリル基末端ダイマー酸変性ポリアミドがより好適である。
DAPとポリアミドの混合物を硬化する際に使用する硬化剤としては、過酸化ジ−tert−ブチル、ジクミルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酸化2,4−ジクロロベンゾイル、ジイソプロピルペルオキシカーボネート、tert−ブチルペルオキシベンゾエート等の過酸化物や、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物などが挙げられる。
【0016】
本発明では、DAPと上記ポリアミドの混合比率は、DAP100重量部に対してポリアミド0.01〜60重量部であり、好ましくは0.5〜20重量部である。ポリアミドの混合割合が0.01重量部より少ないと樹脂硬化物の金属に対する接着性が不充分であり、60重量部より多いとDAPの耐熱性や機械的強度などの特性が損なわれる。
上記DAPとポリアミドを配合した樹脂組成物を熱硬化する場合、従来のDAP系樹脂と同様に、樹脂に適した任意の硬化条件を適用でき、特段の制約はない。
硬化による成形方法についても、上記樹脂組成物を金型に注入して硬化させる注型法、当該組成物を加熱して流動状態にし、金型に入れて加熱硬化する射出成型法、当該組成物の溶液を繊維状シートに含浸させて乾燥し、必要に応じて加圧下で繊維状シート中で樹脂を硬化させる積層板成型法、当該組成物を金型中で加熱加圧して硬化させる圧縮成型法などの任意の成型法を採用でき、組成物に応じた成型法を選択すれば良い。
【実施例】
【0017】
以下、ポリアミドの合成例、DAPにポリアミドを配合して熱硬化する本発明の樹脂組成物の実施例、実施例で得られた樹脂硬化物の接着強度、Tgなどの各種評価試験例を順次説明する。合成例、実施例中の「部」、「%」は基本的に重量基準である。
尚、本発明は下記の合成例や実施例に拘束されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意の変形をなし得ることは勿論である。
【0018】
《ポリアミドの合成例》
下記の合成例1〜2はダイマー酸変性ポリアミドの例、合成例3はメタクリル酸変性ポリアミドの例である。合成例4〜6は上記合成例1〜3で得られたポリアミドにアリルグリシジルエーテルを反応させたアリル基末端ポリアミドの例である。
【0019】
(1)合成例1
攪拌機、温度計、窒素導入管、脱水管を備えた4ツ口フラスコにダイマー酸(ハリダイマー200、ハリマ化成(株)製)を290部、メタキシリレンジアミン(三菱ガス化学(株)製)136部を仕込み、窒素ガスを導入しながら200℃で4時間脱水縮合し、更に減圧下で2時間脱水して、アミン価137のポリアミド樹脂(PA1)を得た。
【0020】
(2)合成例2
攪拌機、温度計、窒素導入管、脱水管を備えた4ツ口フラスコにダイマー酸(ハリダイマー200、ハリマ化成(株)製)を290部、ジエチレントリアミン(東ソー(株)製)103部を仕込み、窒素ガスを導入しながら200℃で4時間脱水縮合し、更に減圧下で2時間脱水して、アミン価298のポリアミド樹脂(PA2)を得た。
【0021】
(3)合成例3
攪拌機、温度計、窒素導入管、脱水管を備えた4ツ口フラスコにメタクリル酸(三菱レーヨン(株)製)を129部、メタキシリレンジアミン(三菱ガス化学(株)製)408部を仕込み、窒素ガスを導入しながら200℃で4時間脱水縮合し、更に減圧下で2時間脱水して、アミン価490のポリアミド樹脂(PA3)を得た。
【0022】
(4)合成例4
攪拌機、温度計、窒素導入管、脱水管を備えた4ツ口フラスコに、上記合成例1で得られたPA1を408部仕込み、窒素ガスを導入しながら80℃でアリルグリシジルエーテル(ダイソー(株)製)114部を2時間かけて滴下し、更に90℃で2時間反応させて、アリル基末端のポリアミド樹脂(PA1A)を得た。
【0023】
(5)合成例5
攪拌機、温度計、窒素導入管、脱水管を備えた4ツ口フラスコに、上記合成例2で得られたPA2を375部仕込み、窒素ガスを導入しながら80℃でアリルグリシジルエーテル(ダイソー(株)製)114部を2時間かけて滴下し、更に90℃で2時間反応させて、アリル基末端のポリアミド樹脂(PA2A)を得た。
【0024】
(6)合成例6
攪拌機、温度計、窒素導入管、脱水管を備えた4ツ口フラスコに、上記合成例3で得られたPA3を340部仕込み、窒素ガスを導入しながら80℃でアリルグリシジルエーテル(ダイソー(株)製)228部を2時間かけて滴下し、更に90℃で2時間反応させて、アリル基末端のポリアミド樹脂(PA3A)を得た。
【0025】
次いで、上記合成例1〜6で得られたポリアミド(PA1〜PA3、PA1A〜PA3A)をDAPに配合して、本発明のDAP系樹脂硬化物を製造した。
《DAP系樹脂硬化物の実施例》
下記の実施例1〜14のうち、実施例1〜4は前記合成例1〜2の各ダイマー酸変性ポリアミドを添加量を変えて使用した例、実施例5〜6は前記合成例3のメタクリル酸変性ポリアミドを添加量を変えて使用した例、実施例7〜12は前記合成例4〜6の各アリル基末端ポリアミドを添加量を変えて使用した例、実施例13〜14はこのアリル基末端ポリアミドとさらにエポキシ樹脂を使用した例である。
また、下記の比較例1はポリアミドを使用せず、DAPのみを硬化させたブランク例である。比較例2は本発明の適正範囲より過剰の添加量でポリアミドを使用した例(つまりDAP過小例)である。比較例3は金属に対する接着性を判断する標準例として、同接着性の良好なエポキシ樹脂と酸無水物を硬化させた例である。
尚、図1の下寄り部を除く上方から中央部の欄には、DAPとポリアミドの配合割合、配合するポリアミドや硬化剤の種類、硬化条件などをまとめた。
【0026】
(1)実施例1
DAPオリゴマー(ダイソーダップA、ダイソー(株)製)と、DAPモノマー(ダイソーダップモノマー、ダイソー(株)製)を1:1の重量比率で混合したDAP組成物を、前記合成例1で得られたポリアミド(PA1)と図1に記載の重量比率で配合し、その合計量に対してジクミルパーオキサイド3%を添加した後、100℃、120℃、140℃、160℃、180℃で各1時間づつ段階的に昇温する条件で硬化させて、DAP系樹脂硬化物を製造した。
【0027】
(2)実施例2〜14及び比較例1〜2
上記実施例1を基本として、図1に記載の重量比率でDAP混合物と前記合成例のポリアミドを配合し、或は配合しない以外は、実施例1と同様の条件で処理して、DAP系樹脂硬化物を製造した。
【0028】
(3)比較例3
ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル(DGEBAと略す)(jer828、ジャパンエポキシレジン(株)製)と、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸(TATHPAと略す)(jerキュアYH306、ジャパンエポキシレジン(株)製)を図1に示す重量比率で配合し、2−エチル4−メチルイミダゾール(2E4MZと略す)を硬化剤とし、80℃で3時間、120℃で6時間の条件で硬化させて、樹脂硬化物を製造した。
【0029】
そこで、上記実施例1〜14及び比較例1〜3で得られた各樹脂硬化物について、金属に対する接着強度を中心に下記の各種性能評価試験に供した。
但し、比較例2については、得られた樹脂は軟らかく硬度不足であるため、下記の評価試験には供せなかった。
(1)引張り剪断接着強さ
JIS K 6850に準じて、5mm/分で引張り剪断接着強さを測定した。
(2)剥離接着強さ
JIS K 6854に準じて、100mm/分で剥離接着強さを測定した。
(3)ガラス転移温度(Tg)
動的粘弾性試験のtanδのピーク温度をTgとして評価した。
【0030】
図1の下寄り欄はその試験結果である。
先ず、金属に対する接着性に着目すると、ポリアミドを使用せずにDAPのみを硬化させた比較例1に比べて、ポリアミドをDAPに配合した実施例1〜14では、特に鋼、銅に対する剥離接着強度が大きく改善され、剪断接着強度についても良好に改善されていることが分かった。
金属に対する接着性の標準例となる比較例3(エポキシ樹脂と酸無水物の硬化物)に比べても、実施例1〜14の接着強度(銅)は概ね遜色がなく、特にアリル基末端ポリアミド、或はさらにエポキシ樹脂を配合した実施例7〜14では、剥離接着強度は良好に改善されていた。
【0031】
また、ポリアミドを本発明の適正範囲より過剰に配合した比較例2では、得られた樹脂の硬度は軟らかく、各種評価試験に供することができなかった。
【0032】
実施例1〜6はDAPとダイマー酸又はメタクリル酸変性ポリアミド(PA1〜PA3)の配合率を変化させた例であるが、当該ポリアミドの配合率が増すと、剥離接着強度は向上した。
これに対して、実施例7〜12はDAPとアリル基末端ポリアミド(PA1A〜PA3A)の配合率を変化させた例であるが、アリル基末端ポリアミドを使用すると、剥離接着強度を大きく改善しながら、DAPのみを使用した場合に比べて引張り剪断接着強度の低下を最小限に抑制できた。
【0033】
実施例13〜14は、DAPにアリル基末端ポリアミドを配合した実施例10に、さらにエポキシ樹脂を配合した例であるが、DAPのみの比較例1に比べて、引張り剪断接着強度と剥離接着強度は共に大きく改善され、実施例10に比べても特に引張り剪断接着強度は良好に改善されていることが分かる。
【0034】
ガラス転移温度(Tg)に着目すると、実施例1〜14は比較例3に比べてTgが高く、耐熱性に優れることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】実施例1〜14及び比較例1〜3について、DAPとポリアミドの配合割合、配合するポリアミドや硬化剤の種類、硬化条件、接着強度及びTgの試験結果をまとめた図表である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジアリルフタレート(DAP)とポリアミドを含有し、熱硬化した樹脂組成物であって、 DAPとポリアミドの混合比率が、DAP100重量部に対してポリアミド0.01〜60重量部であることを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
ポリアミドがアリル基末端ポリアミドであることを特徴とする請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
ポリアミドがダイマー酸変性ポリアミドであることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
さらにエポキシ樹脂を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2008−291086(P2008−291086A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−136715(P2007−136715)
【出願日】平成19年5月23日(2007.5.23)
【出願人】(000233860)ハリマ化成株式会社 (167)
【出願人】(591030499)大阪市 (64)
【Fターム(参考)】