説明

熱硬化性樹脂組成物

【課題】
低温・短時間硬化性と耐熱性とを併せ持つ電気絶縁用熱硬化性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、(A)重合性置換基を2個以上有するポリマー成分と(B)重合性置換基を1個以上有する化合物とを(C)リビング重合試剤(もしくは(C)リビング重合試剤と、(D)有機過酸化物及び/または有機アゾ化合物)により硬化する。上記(C)成分としては、ホウ素化合物が好ましい。また、上記(D)成分としては、有機過酸化物が好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リビング重合試剤を用いた熱硬化性樹脂組成物に係り、特に、モータ,トランス等の電気機器の電気絶縁,固着に好適な熱硬化性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
モータなどの回転機,トランスなどの静止機等の電気機器コイルは、電気絶縁,動作時の放熱,電気振動によって発生する唸り音の吸収,構成材料の固着等を目的として、熱硬化性樹脂組成物で処理されている。このような機能を発揮することができる熱硬化性樹脂材料として、不飽和ポリエステル樹脂,エポキシ樹脂などが主に用いられている。なかでも不飽和ポリエステル樹脂は、硬化性,空乾性,固着性,電気絶縁性,経済性などのバランスに優れ、広く用いられている。
【0003】
近年の電気機器は省エネルギー化および低コスト化に対応するため、より優れた生産性が求められている。従って、回転機コイルの樹脂による固着など、電気機器における樹脂を用いた処理工程においては、低温・短時間硬化が求められており、低温・短時間処理に対応できる電気機器用熱硬化性樹脂組成物が要求されるようになってきた。
【0004】
しかしながら、過酸化物など従来の重合開始剤を用いて低温・短時間で硬化した不飽和ポリエステル樹脂は、反応が不十分などの理由により硬化樹脂の空乾性および硬化物物性が低下することが知られている。
【0005】
一方、近年新たなラジカル重合法として、リビング重合法が開発され、単分散に近い分子量を持つ熱可塑性ポリマー,規則性を持つ熱可塑性ポリマー,機能性の官能基を持つ制御された熱可塑性ポリマー類を製造する方法として報告されている(特許文献1参照)。
【0006】
リビング重合法を熱硬化性樹脂に用いた例として、特許文献2が有り、リビング重合により調製したポリマー鎖を、白金などの遷移金属錯体を触媒とした炭素−炭素二重結合とヒドロシリル基との結合反応により硬化している。
【0007】
また、特許文献3では、リビング重合により調整した結晶性添加剤と硬化促進剤とを組み合わせ、不飽和ポリエステルワニスに用いることにより低温硬化を達成している。
【0008】
しかしながら、特許文献2ではポリマー成分の合成に、特許文献3では添加剤の合成にリビング重合試剤を用いており、樹脂組成物の架橋、硬化反応にはリビング重合を用いていない。
【0009】
特許文献4では、(A)単官能および多官能(メタ)アクリレート系単量体、(B)1分子中に少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシル基を含有する酸性基含有(メタ)アクリレート系単量体、および(C)トリアルキルホウ素またはその酸化物からなる歯科用接着性組成物が報告されている。
【0010】
【特許文献1】米国特許第4581429号明細書
【特許文献2】特開2000−72953号公報
【特許文献3】特開2000−44636号公報
【特許文献4】特公平7−64699号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、低温・短時間での硬化と、耐熱性とを併せもつ熱硬化性樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記目的を達成しようと鋭意研究を重ねた結果、リビング重合試剤により硬化を行うことにより、省エネに寄与する環境性に優れた、低温・短時間硬化性と耐熱性とを併せ持つ熱硬化性樹脂組成物が得られることを見いだし、本発明を完成したものである。
【0013】
すなわち、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、(A)重合性置換基を2個以上有するポリマー成分と(B)重合性置換基を1個以上有する化合物とを、(C)リビング重合試剤により硬化することを特徴としている。
【0014】
また、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、(A)重合性置換基を2個以上有するポリマー成分と(B)重合性置換基を1個以上有する化合物とを、(C)リビング重合試剤と、(D)有機過酸化物及び/または有機アゾ化合物により硬化することを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、低温・短時間での硬化と耐熱性とを併せもつ熱硬化性樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本組成物を構成する各成分について説明する。
【0017】
[(A)成分]
本発明に用いる(A)重合性置換基を2個以上有するポリマー成分は、分子量が1000以上の化合物であり、好ましくは分子量が1000〜5000である。また、エチレン性不飽和結合を有することが好ましい。エチレン性不飽和結合とは、重合性を有する炭素−炭素二重結合を意味する。
【0018】
(A)成分としては、不飽和ポリエステル樹脂,ウレタン(メタ)アクリレート樹脂及びポリエステル(メタ)アクリレート樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種であればよく、好ましくは、不飽和ポリエステル樹脂である。
【0019】
不飽和ポリエステル樹脂は、特に限定されるものではなく、例えば、二塩基酸と多価アルコール類とを縮合反応させることによって得ることができる。
【0020】
不飽和ポリエステル樹脂の原料として用いられる二塩基酸としては、例えば、マレイン酸,無水マレイン酸,フマル酸,イタコン酸,無水イタコン酸等のα,β−不飽和二塩基酸;フタル酸,無水フタル酸,ハロゲン化無水フタル酸,イソフタル酸,テレフタル酸,テトラヒドロフタル酸,テトラヒドロ無水フタル酸,ヘキサヒドロフタル酸,ヘキサヒドロイソフタル酸,ヘキサヒドロテレフタル酸,シクロペンタジエン−無水マレイン酸付加物,コハク酸,マロン酸,グルタル酸,アジピン酸,セバシン酸,1,10−デカンジカルボン酸,2,6−ナフタレンジカルボン酸,2,7−ナフタレンジカルボン酸,2,3−ナフタレンジカルボン酸,2,3−ナフタレンジカルボン酸無水物,4,4′−ビフェニルジカルボン酸、および、これらのジアルキルエステル等の飽和二塩基酸等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これら二塩基酸は、一種類のみを用いてもよいし、適宜、二種類以上を混合して用いてもよい。
【0021】
不飽和ポリエステル樹脂の原料として用いられる多価アルコール類としては、例えばエチレングリコール,ジエチレングリコール,ポリエチレングリコール等のエチレングリコール類、プロピレングリコール,ジプロピレングリコール,ポリプロピレングリコール等のプロピレングリコール類、2−メチル−1,3−プロパンジオール,1,3−ブタンジオール,ビスフェノールAとプロピレンオキシドまたはエチレンオキシドとの付加物、グリセリン,トリメチロールプロパン,1,3−プロパンジオール,1,2−シクロヘキサングリコール,1,3−シクロヘキサングリコール,1,4−シクロヘキサングリコール,パラキシレングリコール,ビシクロヘキシル−4,4′−ジオール,2,6−デカリングリコール,トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート等が挙げられるが、特に限定されるものではない。また、エタノールアミン等のアミノアルコール類を用いてもよい。これら多価アルコール類は、一種類のみを用いてもよいし、適宜、二種類以上を混合してもよい。また、必要によりエポキシ樹脂,ジイソシアナート,ジシクロペンタジエン等による変性を行ってもよい。
【0022】
また、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂は、特に限定されるものではなく、例えば、ポリイソシアネートとポリヒドロキシ化合物あるいは多価アルコール類とを反応させた後、さらに水酸基含有(メタ)アクリル化合物および必要に応じて水酸基含有アリルエーテル化合物を反応させることによって得ることができる。また、水酸基含有(メタ)アクリル化合物とポリヒドロキシ化合物あるいは多価アルコール類とを反応させた後、さらにポリイソシアネートを反応させてもよい。
【0023】
上記ウレタン(メタ)アクリレート樹脂の原料として用いられるポリイソシアネートとしては、具体的には、例えば、2,4−トリレンジイソシアネートおよびその異性体、ジフェニルメタンジイソシアネート,ヘキサメチレンジイソシアネート,キシリレンジイソシアネート,水添キシリレンジイソシアネート等があげられ、特に限定されるものではない。これらポリイソシアネートは、一種類のみを用いてもよいし、適宜、二種類以上を混合して用いてもよい。
【0024】
上記ウレタン(メタ)アクリレート樹脂の原料として用いられるポリヒドロキシ化合物としては、例えば、ポリエステルポリオール,ポリエーテルポリオール等が挙げられ、具体的には、グリセリン−エチレンオキシド付加物,グリセリン−プロピレンオキシド付加物,グリセリン−テトラヒドロフラン付加物,トリメチロールプロパン−エチレンオキシド付加物,ペンタエリスリトール−エチレンオキシド付加物,ジペンタエリスリトール−エチレンオキシド付加物等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これらポリヒドロキシ化合物は、一種類のみを用いてもよいし、適宜、二種類以上を混合して用いてもよい。
【0025】
上記ウレタン(メタ)アクリレート樹脂の原料として用いられる多価アルコール類としては、具体的には、例えば、前述の多価アルコールが挙げられるが、特に限定されるものではない。これら多価アルコール類は、一種類のみを用いてもよいし、適宜、二種類以上を混合して用いてもよい。
【0026】
ウレタン(メタ)アクリレート樹脂の原料として用いられる水酸基含有(メタ)アクリル化合物としては、特に限定されるものではないが、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、具体的には、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート,2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート,3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート,ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート,トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸のジ(メタ)アクリレート,ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これら水酸基含有(メタ)アクリル化合物は、一種類のみを用いてもよいし、適宜、二種類以上を混合して用いてもよい。
【0027】
ウレタン(メタ)アクリレート樹脂の原料として必要に応じて用いられる水酸基含有アリルエーテル化合物としては、具体的には、例えば、エチレングリコールモノアリルエーテル,ジエチレングリコールモノアリルエーテル,ポリエチレングリコールモノアリルエーテル,プロピレングリコールモノアリルエーテル,1,2−ブチレングリコールモノアリルエーテル,1,3−ブチレングリコールモノアリルエーテル,トリメチロールプロパンジアリルエーテル,グリセリンジアリルエーテル,ペンタエリスリトールトリアリルエーテル等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これら水酸基含有アリルエーテル化合物は、一種類のみを用いてもよいし、適宜、二種類以上を混合して用いてもよい。
【0028】
また、ポリエステル(メタ)アクリレート樹脂は、特に限定されるものではなく、例えば、不飽和あるいは飽和ポリエステルの末端に(メタ)アクリル化合物を反応させることによって得ることができる。上記ポリエステルの原料としては、例えば上記不飽和ポリエステル樹脂の原料として例示した化合物と同様の化合物を用いることができる。
【0029】
ポリエステル(メタ)アクリレート樹脂の原料として用いられる(メタ)アクリル化合物としては、具体的には、例えば、不飽和グリシジル化合物,(メタ)アクリル酸等の不飽和一塩基酸およびそのグリシジルエステル類等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これら(メタ)アクリル化合物は一種類のみを用いてもよいし、適宜、二種類以上を混合して用いてもよい。
【0030】
これら合成樹脂、即ち、不飽和ポリエステル樹脂,ウレタン(メタ)アクリレート樹脂,ポリエステル(メタ)アクリレート樹脂等の樹脂を得る際の各原料の配合条件等は、それぞれ所望する樹脂の物性等に応じて適宜調整すればよく特に限定されるものではない。
【0031】
[(B)成分]
(B)重合性置換基を1個以上有する化合物としては、使用目的や用途等に応じて適宜選択すればよく、特に限定されるものではないが、例えば、スチレン,ビニルトルエン,ジビニルベンゼン,α−メチルスチレン,各種(メタ)アクリル酸エステル,酢酸ビニル,ビニルエステル,ジアリルフタレート等が挙げられる。これらを1種単独もしくは2種以上を混合して用いてもよい。
【0032】
上記ビニルエステルについては特に限定されるものではなく、例えば、エポキシ化合物と不飽和一塩基酸とをエステル化触媒を用いて反応させることによって得ることができるものであればよい。
【0033】
ビニルエステルの原料として用いられるエポキシ化合物としては、分子中に、少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物で、特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、ビスフェノールA等のビスフェノール類とエピハロヒドリンとの縮合反応により得られるエピビスタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂,4,4′−ビフェノール,水添ビスフェノールやグリコール類とエピハロヒドリンとの縮合反応により得られるグリシジルエーテル型エポキシ樹脂が挙げられる。これらエポキシ化合物は、一種類のみを用いてもよく、適宜二種類以上を混合して用いてもよい。
【0034】
ビニルエステルの原料として用いられる不飽和一塩基酸としては、特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、アクリル酸,メタアクリル酸,クロトン酸等が挙げられる。これら不飽和一塩基酸は、一種類のみを用いてもよく、適宜二種類以上を混合して用いてもよい。
【0035】
(A)重合性置換基を2個以上有するポリマー成分と(B)重合性置換基を1個以上有する化合物の重量比率(A)/(B)は、80/20〜1/99であることが好ましく、より好ましくは、5/95〜60/40である。(A)成分の重量比率が、80より大きいと、粘度が高くなり、コイルなどに塗布し難くなり、取扱が困難となる。一方、1より小さいと、樹脂硬化物の硬化性が悪化し、耐熱性(熱重量減少)に劣る。
【0036】
[(C)成分]
本発明に用いる(C)リビング重合試剤としては、下式(1)で示されるホウ素化合物、下式(2)で示されるアルコキシアミン誘導体及び原子移動ラジカル重合試剤からなる群より選ばれる少なくとも一種であればよく、なかでも、酸素によりラジカルを発生することができるため、下式(1)で示されるホウ素化合物が好ましい。
【0037】
【化1】

【0038】
(式(1)中、Z1,Z2,Z3は、互いに独立にR1またはOR1(但し、Z1,Z2,Z3のうち少なくとも1つはR1)であり、R1は、水素,アルキル基,シクロアルキル基,アラルキル基またはアリール基である。)
【0039】
【化2】

【0040】
(式(2)中、R2は、水素またはアルキル基であり、R3,R4は互いに独立に、アルキル基,シクロアルキル基,アルキレン基である。Xはアルキル基,シクロアルキル基,アリール基またはアルコキシカルボニル基であり、Yはアルキル基,シクロアルキル基,アリール基,アルコキシ基またはアシルオキシ基である。)
【0041】
上記ホウ素化合物として、例えば、トリエチルホウ素,トリプロピルホウ素,トリイソプロピルホウ素,トリ−n−ブチルホウ素,トリ−n−アミルホウ素,トリ−n−ヘキシルホウ素,トリシクロヘキシルホウ素,9−ボラビシクロ[3.3.1]ノナン,イソピノカンフェニルホウ素等またはこれらの一部が酸化されたホウ素化合物酸化物等が挙げられる。また、これらホウ素化合物は、酸素によりラジカルを発生するため、反応は空気中で行う。
【0042】
上記アルコキシアミン誘導体は、特に限定されるものではなく、ラジカル発生試剤の存在下、N−オキシル類とエチレン性不飽和単量体から合成できる。
【0043】
上記反応に用いられるラジカル発生試剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、過酸化ベンゾイル,過酸化ラウロイル,ターシャリーブチルヒドロペルオキシド,クメンヒドロペルオキシド,ジターシャリーブチルペルオキシド等の過酸化物や、2,2′−アゾビス(イソブチロニトリル),1,1′−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル),4,4′−アゾビス(4−シアノ吉草酸),2,2′アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩等の有キアゾ化合物があげられる。
【0044】
上記反応に用いられるN−オキシル類としては特に限定されるものではなく、具体的に、例えば、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン,1−オキシル−2,2,6,6,−テトラメチルピペリジン−4−オール,4−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル等があげられるが、特に限定されるものではない。これらN−オキシル類は、一種類のみを用いてもよいし、適宜二種類以上を混合して用いてもよい。
【0045】
上記反応に用いられるエチレン性不飽和単量体としては特に限定されるものではなく、具体的に、例えば、スチレン,ビニルトルエン,ジビニルベンゼン,各種(メタ)アクリル酸エステル,ジアリルフタレート,酢酸ビニル等が挙げられる。これらを1種単独もしくは2種以上を混合して用いてもよい。
【0046】
上記の原子移動ラジカル重合試剤としては、有機ハロゲン化物、特に反応性が高い炭素−ハロゲン結合を有する有機ハロゲン化物(例えば、α位にハロゲンを有するカルボニル化合物や、ベンジル位にハロゲンを有する化合物)と遷移金属(例えば、1価の銅,2価のルテニウム,2価の鉄、または2価のニッケル等)および/または遷移金属錯体(例えば、1価の銅,2価のルテニウム,2価の鉄、または2価のニッケルと2,2′−ビピリジルおよびその誘導体,1,10−フェナントロリンおよびその誘導体,テトラメチルエチレンジアミン,ペンタメチルジエチレントリアミンなどのポリアミン配位子,トリフェニルホスフィンやトリブチルホスフィンなどのホスフィン配位子,一酸化炭素等からなる錯体等)があげられる。具体的には、2−臭化プロピオン酸メチル/臭化ニッケル(II)−トリフェニルホスフィン錯体系や、(1−ブロモエチル)ベンゼン/臭化銅(I)−2,2′−ビピリジル錯体系,1−ブロモエチル)ベンゼン/臭化シクロペンタジエニル鉄(II)−ジカルボニル錯体等があげられる。
【0047】
(C)リビング重合試剤の配合量は、(A)成分と(B)成分の合計量100重量部に対して0.001〜10.0重量部であることが好ましく、0.01〜1重量部であることがより好ましい。
【0048】
(C)リビング重合試剤は、必要に応じて、相分離法や界面重合法等の周知のカプセル化法によりカプセルに内包された状態で用いることができる。
【0049】
[(D)成分]
上記(A)〜(C)成分に加えて、さらに、(D)成分を添加することで、さらに、耐熱性を向上することができる。
【0050】
(D)成分としては、有機過酸化物及び/または有機アゾ化合物を使用する。
【0051】
有機過酸化物としては、過酸化ベンゾイル,過酸化ラウロイル,過酸化安息香酸 ターシャリーブチル、過酸化安息香酸 ターシャリーアミル,ターシャリーアミル パーオキシネオデカノエート,ターシャリーブチル パーオキシネオデカノエート,ターシャリーアミル パーオキシイソブチレート,ジターシャリーブチルパーオキシド,ジクミルパーオキシド,クメンヒドロパーオキシド,1,1−ジ(ターシャリーブチルパーオキシ)シクロヘキサン,2,2−ジ(ターシャリーブチルパーオキシ)ブタン,ターシャリーブチルハイドロパーオキシドなどが挙げられるが、特に制限されるものではなく、これらを1種単独もしくは2種以上を混合してもよい。
【0052】
有機アゾ化合物としては、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル),2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル),1,1′−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル),2,2′−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド],ジメチル2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオネート)などが挙げられるが、特に制限されるものではなく、これらを1種単独もしくは2種以上を混合してもよい。
【0053】
(D)成分としては、有機過酸化物単独でも、有機アゾ化合物単独でも、両者を併用してもよいが、耐熱性を向上させる点で、有機過酸化物単独が好ましい。
【0054】
(D)有機過酸化物および/または有機アゾ化合物と、(C)リビング重合試剤とを併用することにより、更に低温・短時間硬化における耐熱性を向上することが可能となる。低温・短時間硬化における耐熱性は、(C)リビング重合試剤によるゲル化と、(D)有機過酸化物および/または有機アゾ化合物による二次硬化を行うことにより向上すると考えられる。よって、10時間半減期が硬化温度に対し−30℃から50℃の範囲にある有機過酸化物または有機アゾ化合物を用いるのが好ましく、−30℃から20℃の範囲が更に好ましい。10時間半減期が硬化温度に比べ30℃より低い場合は、耐熱性の向上が阻害され、50℃より高い場合は短時間における二次硬化剤としての作用が不十分である。
【0055】
(C)リビング重合試剤と併用する(D)有機過酸化物および/または有機アゾ化合物の配合量は、(A)成分と(B)成分の合計量100重量部に対して、好ましくは0.0002〜20重量部であり、より好ましくは0.002〜1.5重量部である。配合量が0.0002重量部未満では、二次硬化剤の作用が不十分である。一方、20重量部を越えると、耐熱性の向上が阻害され好ましくない。
【0056】
[その他任意成分]
本発明の熱硬化性樹脂組成物には、必要に応じて、その他任意成分として、硬化を促進させるため、硬化促進剤を添加してもよい。硬化促進剤としては、ナフテン酸又はオクチル酸の金属塩(コバルト,亜鉛,ジルコニウム,マンガン,カルシウム等の金属塩)があげられ、これらは一種類のみを用いてもよく、適宜二種類以上を混合してもよい。また、本発明の効果を損なうことの無い範囲で、重合禁止剤を配合することができる。重合禁止剤としては、ハイドロキノン,パラターシャリーブチルカテコール,ピロガロール等のキノン類が挙げられ、これらは一種類のみを用いてもよく、適宜二種類以上を混合してもよい。
【0057】
[本組成物の製造方法]
本発明の熱硬化性樹脂組成物の製造方法としては、まず、(A)重合性置換基を2個以上有するポリマー成分と(B)重合性置換基を1個以上有する化合物と、その他任意成分とを、室温(25℃)または加温して、均一に攪拌,混合する。加温する場合には、温度範囲としては、40〜80℃が好ましく、(A)と(B)の粘度や融点に依存する。また、攪拌,混合する際には、必要に応じて、攪拌機を使用してもよい。
【0058】
このようにして、(A)成分と(B)成分の混合物を作製した後、室温(25℃)で(C)成分(もしくは(C)成分と(D)成分)を添加し、均一に混合する。
【0059】
本組成物の硬化方法としては、本組成物を110〜140℃で、1〜3時間硬化させることが好ましい。硬化温度は、用途に応じて、適宜調整する。
【0060】
本組成物を例えばモーターコイル等に用いる場合には、この組成物を浸漬法,滴下含浸法等を用いて、モーターコイル等の電気機器に含浸させる。含浸方法については常法によるもので、特に制限は無い。また、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、繊維強化プラスチックのマトリックスや注型にも用いることができる。
【0061】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、例えば、モータ,トランス等の電気機器用コイルの電気絶縁および固着に用いることができる。
【0062】
以下に、本発明の熱硬化性樹脂組成物を用いて絶縁処理された電気機器用コイルについて、図を用いて説明する。図1は、本発明の熱硬化性樹脂組成物を用いて絶縁処理された電気機器用コイルを模式的に示す図である。図2は、電気機器の一例として回転電機の構成を模式的に示す図である。
【0063】
図1に示すように、鉄などの金属からなる磁心1に皮膜導線2を巻回しコイルを作製する。巻回しコイルに、浸漬法,滴下含浸法等を用いて本組成物を塗布する。その後、所定の温度,時間で本組成物を加熱硬化して硬化物3を形成し、本組成物を用いて絶縁処理された電気機器用コイル4を得る。
【0064】
図2に示すように、回転電機6は、円筒形状の固定子磁心7と、この固定子磁心7の内部で同軸に回転する回転子磁心8と、固定子磁心7あるいは回転子磁心8の何れか一方又は双方に軸方向に形成された複数のスロット9を用いて被覆導線が巻回された複数のコイルからなっている。固定子コイル10に、浸漬法,滴下含浸法等を用いて本組成物を塗布する。その後、所定の温度,時間で加熱硬化し本組成物で絶縁処理された固定子を得る。この固定子と回転子とを定法によって組み立て、本組成物を用いて絶縁処理された固定子コイル10を用いた回転電機6が得られる。
【0065】
〔実施例〕
次に、本発明を実施例によって説明する。
【実施例1】
【0066】
ビスフェノールA骨格を含み数平均分子量が3000である不飽和ポリエステル樹脂50重量部と、スチレン50重量部からなる不飽和ポリエステルワニスa100重量部に対し、トリエチルボラン0.2重量部を加え、空気の存在下、ビーカー内で攪拌,混合した後、120℃で2時間、恒温槽を用い硬化した。
【実施例2】
【0067】
実施例1と同様のサンプルを120℃で1時間、恒温槽を用い硬化した。
【実施例3】
【0068】
ビスフェノールA骨格を含み数平均分子量が3000である不飽和ポリエステル樹脂40重量部と、メタクリレート60重量部からなる不飽和ポリエステルワニスb100重量部に対し、イソピノカンフェニルホウ素0.35重量部を加え、空気の存在下、ビーカー内で攪拌,混合した後、130℃で1時間、恒温槽を用い硬化した。
【実施例4】
【0069】
不飽和ポリエステルワニスb100重量部に対し、2−臭化プロピオン酸メチル/臭化ニッケル(II)−トリフェニルホスフィン錯体0.5重量部を加え、空気の存在下、ビーカー内で攪拌,混合した後、120℃で1時間、恒温槽を用い硬化した。
【実施例5】
【0070】
不飽和ポリエステルワニスb100重量部に対し、ジエチルメトキシボラン0.35重量部を加え、空気の存在下、ビーカー内で攪拌,混合した後、120℃で0.5時間、恒温槽を用い硬化した。
【実施例6】
【0071】
不飽和ポリエステルワニスb100重量部に対し、ジエチルメトキシボラン0.35重量部および1,1−(ジターシャリーブチルペルオキシ)シクロヘキサンの50wt%溶液0.5重量部(1,1−(ジターシャリーブチルペルオキシ)シクロヘキサンとして0.25重量部)を加え、空気の存在下、ビーカー内で攪拌,混合した後、120℃で0.5時間、恒温槽を用い硬化した。
【実施例7】
【0072】
不飽和ポリエステルワニスb100重量部に対し、2−臭化プロピオン酸メチル/臭化ニッケル(II)−トリフェニルホスフィン錯体0.5重量部および2,2′−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)0.5重量部を加え、空気の存在下、ビーカー内で攪拌,混合した後、130℃で1時間、恒温槽を用い硬化した。
【実施例8】
【0073】
イソフタル酸骨格を含み数平均分子量が3000である不飽和ポリエステル樹脂60重量部,スチレン40重量部からなる不飽和ポリエステルワニスc、100重量部に対し、(1−ブロモエチル)ベンゼン/臭化銅(I)−2,2′−ビピリジル錯体0.35重量部を加え、空気の存在下、ビーカー内で攪拌,混合した後、120℃で2時間、恒温槽を用い硬化した。
【実施例9】
【0074】
ビスフェノールA骨格を含み数平均分子量が1500である不飽和ポリエステル樹脂50重量部,トリエチレングリコールジメタクリレート50重量部からなる不飽和ポリエステルワニスd100重量部に対し、イソピノカンフェニルホウ素0.35重量部および過安息香酸 ターシャリーブチル0.20部を加え、空気の存在下、ビーカー内で攪拌,混合した後、120℃で1時間、恒温槽を用い硬化した。
【実施例10】
【0075】
ビスフェノールA骨格を含み数平均分子量が1500である不飽和ポリエステル樹脂50重量部,トリエチレングリコールジメタクリレート50重量部からなる不飽和ポリエステルワニスd100重量部に対し、イソピノカンフェニルホウ素0.35重量部および過安息香酸 ターシャリーブチル0.20部,2,2′−アゾビス(イソブチロニトリル)0.20部を加え、空気の存在下、ビーカー内で攪拌,混合した後、120℃で1時間、恒温槽を用い硬化した。
【実施例11】
【0076】
ビスフェノールA骨格を含み数平均分子量が3000である不飽和ポリエステル樹脂40重量部,メタクリレート60重量部からなる不飽和ポリエステルワニスb100重量部に対し、非特許文献(Macromolecules.1996,29,5245−5254)から合成した下式(3)で示されるアルコキシアミン誘導体1.6重量部を加え、空気の存在下、ビーカー内で攪拌,混合した後、180℃で16時間、恒温槽を用い硬化した。得られた硬化物の5%重量減少温度は307℃であり、比較例3の5%重量減少温度と比べ高くなっており、耐熱性が向上した。
【0077】
【化3】

【0078】
〔比較例1〕
実施例1のトリエチルボランに変えて1,1−(ジターシャリーブチルペルオキシ)シクロヘキサンの50wt%溶液1.6重量部を用いた。
【0079】
〔比較例2〕
実施例2のトリエチルボランに変えて1,1−(ジターシャリーブチルペルオキシ)シクロヘキサンの50wt%溶液1.6重量部を用いた。
【0080】
〔比較例3〕
実施例3のイソピノカンフェニルホウ素に変えて1,1−(ジターシャリーブチルペルオキシ)シクロヘキサンの50wt%溶液1.6重量部を用いた。
【0081】
〔比較例4〕
実施例6の(1−ブロモエチル)ベンゼン/臭化銅(I)−2,2′−ビピリジル錯体に変えて1,1−(ジターシャリーブチルペルオキシ)シクロヘキサンの50wt%溶液1.6重量部を用いた。
【0082】
実施例及び比較例で得られた組成物は、以下のようにして評価し、結果を表1〜表5に示した。表1〜表5に示した特性は、25℃において測定した値である。
【0083】
実施例1〜6で得られた樹脂組成物の粘度について、B型回転粘度計((株)トキメック社製,商品名:B8L)で測定した。粘度は、25℃において0.2〜2Pa・sであった。
【0084】
得られた硬化物について、動的粘弾性測定(DMA)および熱重量分析(TGA)を行った。動的粘弾性測定は、動的粘弾性測定装置((株)島津製作所製,Tritec2000)を用い、空気気流下で30℃から250℃の範囲において、昇温速度2℃/minにて行った。得られた貯蔵弾性率及び損失弾性率からtanδを求め、そのピーク温度より熱,機械特性を評価した。熱重量分析は、示差熱熱重量同時測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製,TG/DTA6200)を用い、空気気流下で30℃から600℃の範囲において昇温速度10℃/minにて行い、5%重量減少温度より耐熱性を評価した。
【0085】
実施例1と比較例1,実施例3と比較例3,実施例6と比較例4、のDMAにおけるtanδのピーク温度(ガラス転移温度)および5%重量減少温度の比較を比較した。DMAにおけるtanδのピーク温度(ガラス転移温度)および5%重量減少温度ともに比較例の値より実施例の値が高くなっていることから、重合開始剤を過酸化物からリビング重合試剤に代えることにより耐熱性が向上することが示された。
【0086】
実施例2と比較例1とのDMAにおけるtanδのピーク温度(ガラス転移温度)および5%重量減少温度の比較から、硬化時間を半減してもトリエチルボランを用いることにより耐熱性が低下しないことが示された。
【0087】
実施例4と比較例3とのDMAにおけるtanδのピーク温度(ガラス転移温度)および5%重量減少温度の比較から、硬化温度を10℃低くしても2−臭化プロピオン酸メチル/臭化ニッケル(II)−トリフェニルホスフィン錯体を用いることにより耐熱性が低下しないことが示された。
【0088】
実施例6と比較例3とのDMAにおけるtanδのピーク温度(ガラス転移温度)および5%重量減少温度の比較から、低温・短時間硬化でもジエチルメトキシボランを用いることにより耐熱性が低下しないことが示された。
【0089】
実施例4と実施例5とのDMAにおけるtanδのピーク温度(ガラス転移温度)および5%重量減少温度の比較から、2−臭化プロピオン酸メチル/臭化ニッケル(II)−トリフェニルホスフィン錯体と2,2′−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)とを併用することにより短時間でも耐熱性が低下しないことが示された。
【0090】
実施例6と実施例7とのDMAにおけるtanδのピーク温度(ガラス転移温度)および5%重量減少温度の比較から、ジエチルメトキシボランと1,1−(ジターシャリーブチルペルオキシ)シクロヘキサンとを併用することにより耐熱性がさらに高くなることが示された。
【0091】
実施例9,実施例10と比較例5とのDMAにおけるtanδのピーク温度(ガラス転移温度)および5%重量減少温度の比較から、イソピノカンフェニルホウ素と過安息香酸 ターシャリーブチル,2,2′−アゾビス(イソブチロニトリル)とを併用することにより耐熱性がさらに高くなることが示された。
【0092】
【表1】

【0093】
【表2】

【0094】
【表3】

【0095】
【表4】

【0096】
【表5】

【実施例12】
【0097】
巻芯に直径1mmのエナメル線を巻くことによりコイルを作製した。このコイルを、実施例6に示す熱硬化性樹脂組成物に含浸した後、120℃で0.5時間硬化を行い絶縁処理されたコイルを得た。得られたコイルは、比較例3に示す熱硬化性樹脂組成物に含浸した後、130℃で2.0時間硬化を行い絶縁処理されたコイルと同じ接着力を示した。
【実施例13】
【0098】
巻芯に直径1mmのエナメル線を巻くことにより作製されたコイルを含む固定子を、実施例6に示す熱硬化性樹脂組成物に含浸した後、120℃で0.5時間硬化を行うことによりコイルが固着処理された固定子を得た。この固定子を用い、定法に作製されたモータは、比較例3に示す熱硬化性樹脂組成物に含浸した後、130℃で2.0時間硬化を行い絶縁処理された固定子を用いたモータと同じ絶縁特性を示した。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】本発明の熱硬化性樹脂組成物を用いて絶縁処理された電気機器用コイルを模式的に示す図。
【図2】電気機器の一例を模式的に示す図。
【符号の説明】
【0100】
1 磁心
2 皮膜導線
3 硬化物
4 電気機器用コイル
6 回転電機
7 固定子磁心
8 回転子磁心
9 スロット
10 固定子コイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)重合性置換基を2個以上有するポリマー成分と(B)重合性置換基を1個以上有する化合物とを、(C)リビング重合試剤により硬化することを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(A)成分,(B)成分における重合性置換基が、エチレン性不飽和結合であることを特徴とする請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(A)成分が、不飽和ポリエステル樹脂であることを特徴とする請求項1または2に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記(A)成分と前記(B)成分の重量比率(A)/(B)が、80/20〜1/99であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記(C)成分が、ラジカル重合能を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
前記(C)成分が、式(1)で示されるホウ素化合物であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【化1】

(式(1)中、Z1,Z2,Z3は、互いに独立にR1またはOR1(但し、Z1,Z2,Z3のうち少なくとも1つはR1)、R1は、水素,アルキル基,シクロアルキル基,アラルキル基またはアリール基である。)
【請求項7】
前記(C)成分の配合量が、前記(A)成分と前記(B)成分の合計量100重量部に対して0.001〜10.0重量部であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
(A)重合性置換基を2個以上有するポリマー成分と(B)重合性置換基を1個以上有する化合物とを、(C)リビング重合試剤と、(D)有機過酸化物及び/または有機アゾ化合物により硬化することを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
前記(D)成分が、有機過酸化物であることを特徴とする請求項8に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項10】
25℃における粘度が、0.001〜100Pa・sであることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項11】
磁心と、前記磁心に巻き回された導線とを有し、請求項1乃至10のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物の硬化物で絶縁処理されてなることを特徴とする電気機器用コイル。
【請求項12】
請求項11に記載の電気機器用コイルを用いた電気機器。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−144109(P2010−144109A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−324895(P2008−324895)
【出願日】平成20年12月22日(2008.12.22)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】