説明

熱糊塗布装置、および熱糊塗布装置の制御および監視方法

溶解装置と、該溶解装置に接続されたコンポーネントとして1つまたは複数の加熱可能な搬送ホースならびに1つまたは複数の加熱可能な塗布弁とを備える熱糊塗布装置において、前記コンポーネントは機械により読み出し可能および有利には機械により書き込み可能なデータ担体を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱糊塗布装置、および熱糊塗布装置の制御および監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱糊は溶解接着剤またはホットメルトとしても知られており、種々異なる分野の産業で、材料または製品を相互に接着するために使用される。
【0003】
従来技術に属する熱糊塗布装置(図1参照)は、一般的に溶解装置100、1つまたは複数の加熱可能な搬送ホ―ス、および1つまたは複数の加熱可能な塗布弁300を有する。
【0004】
溶解装置100は次のコンポーネントを有する:
・加熱可能なタンク100。このタンクには、熱糊が固体の凝集状態で粒状物として、またはブロックで供給される。このタンクは、熱糊の備蓄と液化のために用いられる。1つまたは複数の加熱ゾーンを有するヒータ111によって、タンクは熱糊が液化するまで加熱される。運転温度を維持するために、加熱ゾーンの数に応じて1つまたは複数の温度センサ112により実際温度が制御のために検出される。
・ポンプ120。このポンプは溶解した熱糊を接続された負荷に搬送する。
・過圧弁130。この過圧弁は作動圧が過剰のときに負荷側の圧力を軽減し、熱糊をタンク110に戻す。
・フィルタ140。このフィルタは、塗布弁を詰らせる危険性のある大きさの粒子が負荷側に達するのを阻止する。
・分配器150。この分配器は複数の油圧接続部を有し、この油圧接続部には加熱可能な搬送ホースを熱糊の供給のために接続することができる。
・複数ゾーンの温度制御および監視部171と操作および表示装置172とを備える電子制御部170。複数ゾーンの温度制御および監視部は、タンク加熱ゾーンが目標温度に達し、これを維持するようにし、複数の外部接続部を有し、接続された加熱可能な搬送ホースおよび加熱可能な塗布弁が目標温度に達し、これを維持するようにし、それを監視する。
【0005】
加熱可能な搬送ホース200は、塗布弁300に液状熱糊を供給するために用いる。搬送ホース200はヒータ210により加熱され、溶解装置100から供給された熱糊を液状に維持する。運転温度を維持するために、温度センサ112によって実際温度が検出され、制御のため制御部170に通知される。
【0006】
加熱可能な塗布弁300は、電気式または電子油圧式に操作される閉鎖機構とノズルを有し、接着すべき製品に塗布される熱糊部分20を調量および位置決めする。塗布弁300はヒータ310により加熱され、溶解装置100から加熱可能な搬送ホース200を介して供給された熱糊を十分に液状にする。そして熱糊を、適用に応じて所要の粘度と温度でノズルを介して塗布することができる。運転温度を維持するために、温度センサ320によって実際温度が検出され、制御のため制御部170に通知される。
【0007】
適用に応じて溶解装置100には、加熱出力および制御特性が可変である加熱可能な搬送ホース200および加熱可能な塗布弁を所要の数だけ接続することができる。熱糊塗布装置の構成は、最初の設置後にも、接着される製品が異なる場合、熱糊が変更される場合、またはコンポーネントの1つが故障して交換部品を接続するときに、その特性が故障したコンポーネントとは異なる場合にはしばしば変更することができる。
【0008】
熱糊塗布装置の加熱時間と、個々の加熱回路における目標値からの運転温度の制御偏差は、この種の装置の生産性および運転安全性を調整するための重要な適用パラメータである。制御特性を最適化するためには複数ゾーンの温度制御および監視部171が、例えばデッドタイムおよび増幅係数等の制御パラメータの他に、接続されたすべてのコンポーネントの加熱出力および最大温度等の別の技術的データを得ることが必要である。
【0009】
複数ゾーン温度制御および監視部171を、接続された種々異なるコンポーネントに対する制御パラメータが手動で入力できるように構成することは公知である。
【0010】
しかし制御パラメータを手動で入力することは、コンポーネント、熱糊、または接着すべき製品を頻繁に交換する際には面倒であり、エラーの原因となる。
【0011】
デジタル制御器における自己最適化アルゴリズムは公知である。このアルゴリズムは、手動で、または周期的に、または制御の初期化時にスタートされ、テストプロシージャにより制御パラメータを自動的に検出する。しかしこのアルゴリズムは、加熱回路を接続する際に、目下の値からの制御パラメータの偏差が自動的に識別されるか、または新たな接続の際に最適化サイクルがそれぞれ手動でトリガされる場合にだけ上手くいく。加熱出力および運転温度に対する限界値を、この方法によって求めることはできない。このことはとりわけ、運転中に加熱回路に故障が発生する場合、または故障したコンポーネントが接続される場合にクリティカルである。なぜなら制御部は、警報をトリガせずに制御特性を新たに検出されたパラメータに適合するからである。このことは熱糊塗布の品質に不利に作用し、最大温度を越えると、安全上の重大な危険性を引き起こすことがある。さらにこのアルゴリズムは、接続されたコンポーネントに関するさらなる技術的データなしには、熱糊塗布装置の全体特性、例えばエネルギー消費または全体加熱時間を最適化するための手段を提供しない。
【0012】
したがって公知の熱糊塗布装置では電子制御部170が、固定的に調整された平均制御パラメータと加熱出力と運転温度に対する最大値によって、または手動でトリガされる自己最適化によって動作する。
【0013】
さらに公知の熱糊塗布装置では、温度センサが短絡とセンサ破損についてしか監視されない。なぜなら、データが固定的に制御部にファイルされている形式のものしか制御に使用されないからである。加熱の監視は行われない。なぜなら加熱パラメータの手動入力は面倒であり、例えば電流センサのようなセンサの付加的な組み込みはコストを上昇させるからである。しかし故障した加熱部の代用として別の特性を備えるものが使用される場合には問題となる。
【0014】
さらなる問題は、使用されるコンポーネントが全体では制限された1つの寿命しか有しておらず、1つだけのコンポーネントの故障が、熱糊塗布装置全体の故障を引き起こすことである。
【0015】
自動製造装置の使用性を向上させるための公知の方法は、このような装置のコンポーネントを予防的に保守することである。ここでは、統計的評価または実際の実験により得られた、障害なしでの予想運転持続期間でコンポーネントの予防的修理または予防的交換を行うことが前提である。予防的保守を実施するための前提は、個々のコンポーネントの目下の運転持続期間を記録すること、および目下の運転持続期間が得られることである。このためにはログブックに、個別のコンポーネントの運転持続期間が装置全体の運転持続期間と異なることとなるすべてのイベントを手動で記録しなければならず、このことは面倒であり、間違えの原因ともなる。したがって公知の熱糊塗布装置では、溶解装置100の運転持続期間だけが監視される。接続されたコンポーネントの運転持続期間の自動監視は行われない。
【0016】
とりわけ公知の熱糊塗布装置では、コンポーネントにおいて限界温度を超過したことを記録しない。そのためこの情報は診断に使用されない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
発明の基礎とする課題は、コンポーネントを交換した後でも、接着すべき製品の確実な接着を保証し、その運転確実性が高められた熱糊塗布方法および熱糊塗布装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
の課題は、請求項1の熱糊塗布装置および独立請求項の熱糊塗布方法によって解決される。本発明の方法および装置の有利な構成は従属請求項に記載されている。
【発明の効果】
【0019】
発明の熱糊塗布装置は、溶解装置と、これに接続されたコンポーネントとして、1つまたは複数の加熱可能な搬送ホースと、1つまたは複数の加熱可能な塗布弁とを有し、これらのコンポーネントは機械により読み取り可能であり、有利には機械により書き込み可能なデータ担体を有している。これによって制御パラメータを自動適合するために、複数ゾーン温度制御および監視部によって必要な技術データがコンポーネント自体に記憶される。この手段に基づき、1つまたは複数のコンポーネントの交換後に制御パラメータが、複数ゾーン温度制御および監視部によって自動適合される。これにより、熱糊塗布装置のすべてのコンポーネントが常に最適の温度で運転される。熱糊塗布装置の改善形態では、温度制御および監視部に接続された加熱回路の運転監視が行われる。制御部170は、接続されたすべてのコンポーネントの制御パラメータおよび技術データを使用するから、付加的なセンサ系なしで、コンポーネントの機能性について推定することができる。このようにして種々異なる形式の温度センサを短絡およびセンサ破損について監視することができ、キャリブレーションを自動的に調整することができる。また温度勾配を評価することによって、公称値が制御部にファイルされていれば、加熱回路の全制御の際に加熱フィラメントまたは加熱カートリッジの部分的短絡を識別することができ、熱損失が過剰である塗布弁が組み込まれたことを識別することができる。
【0020】
保守状態を評価し、熱糊装置を診断するためには、制御部170が運転持続期間に関する情報、溶解装置100の限界温度超過についての情報、および接続された加熱可能な搬送ホース200と加熱可能な塗布弁300についての情報を有することが必要である。ここでは、これらの情報がホースまたは塗布弁自体にファイルされると有利である。これによりすでに使用されているコンポーネントの修理後および接続時に、これまでに達した運転持続期間と、設定された限界パラメータの超過が自動的に制御部170に通報される。運転中に制御部は、コンポーネントに含まれる運転時間カウンタと、限界パラメータに対するデータメモリを周期的に更新する。これにより運転持続期間とコンポーネントが達した限界パラメータを、コンポーネントが溶解装置100に接続されるときに制御部170により問い合わせることができる。またはコンポーネントが例えば修理のために溶解装置100から分離された後、外部から問い合わせることもできる。このためにデータ担体は有利には機械により書き込み可能でもある。
【0021】
熱糊装置を監視するためには、制御部170が上位の製造装置の制御部と、または外部の監視および診断装置とデータ交換できると有利である。これによりコンポーネントにあるデータ担体から得られた情報をさらなる処理のために使用することができる。さらに装置は通信のために、種々のフィールドバスシステム用またはインターネット用の接続部を有する。これにより、コンポーネントの故障の際に、例えば遠隔診断をインターネットを介して行うことができる。
【0022】
公知の熱糊塗布装置は、フィールドバスを介してデータを他の制御部と交換できる装置を有している。しかしこの情報内容は非常に制限されている。なぜなら接続されたコンポーネントのデータは使用されないからである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】従来技術の熱糊塗布装置を示す図である。
【図2】本発明の熱糊塗布装置の有利な実施例を示す図である。
【図3】本発明の熱糊塗布装置の有利な実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
制御部170は、溶解装置100の加熱回路、接続された加熱可能な搬送ホース200、ならびに接続された加熱可能な塗布弁300を制御および監視するための通常のコンポーネントの他に、有線接続された装置173(図2参照)または無線装置173(図3参照)を、接続されたコンポーネントにあるデータ担体との通信のために有する。搬送ホース200はそれぞれ1つまたは複数の機械により読み出し可能および有利には書き込み可能なデータ担体230を有し、塗布弁300はそれぞれ1つまた複数の機械により読み出し可能および有利には書き込み可能なデータ担体330、例えばマイクロプロセッサシステム、記憶装置、コーディングまたはRFIDを有する。RFIDは、有線または無線で、または光学的に、または他の適切な手段によってデータを装置173に伝送し、有利にはこの装置から受信することができる。データ担体には、コンポーネントの製造または修理の際に外部の書き込みおよび読み出しユニット400によって、形式固有の制御パラメータ、例えばデッドタイムおよび増幅係数、ならびにさらなる技術データ、例えば製造日付、平均寿命、加熱出力および最大温度が書き込まれる。コンポーネントが溶解装置100に接続されていれば、データ担体は初期化の際および/または周期的に、およびシステム構成の変更時に、それらのデータを装置173に通知する。これらのデータを制御部170は、接続されたコンポーネントおよびシステム全体を最適に制御し、監視するために使用する。装置173は、初期化の際および/または周期的に、およびシステム構成の変更時に、例えば最大目標パラメータおよび実際パラメータ、または経過した運転時間等のデータを接続されたコンポーネントのデータ担体に通知する。そしてこれらのデータを有利には診断および予防的保守のために使用することができる。
【0025】
さらに通信装置173は接続部175を有する。この接続部175は、フィールドバスを介して上位の制御部と、またはインターネットを介して外部の監視装置とデータ交換するためのものである。これにより、コンポーネントの故障の際に例えば警報信号を機械の司令所に通知し、遠隔診断をインターネットを介して行うことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶解装置と、該溶解装置に接続されたコンポーネントとして1つまたは複数の加熱可能な搬送ホースならびに1つまたは複数の加熱可能な塗布弁とを備える熱糊塗布装置において、
前記コンポーネントは、機械により読み出し可能および有利には機械により書き込み可能なデータ担体を有することを特徴とする熱糊塗布装置。
【請求項2】
請求項1記載の熱糊塗布装置であって、
前記機械により読み出し可能および/または機械により書き込み可能なデータ担体は、マイクロプロセッサシステムを有する熱糊塗布装置。
【請求項3】
請求項1記載の熱糊塗布装置であって、
前記機械により読み出し可能および/または機械により書き込み可能なデータ担体は、1つまたは複数の半導体メモリを有する熱糊塗布装置。
【請求項4】
請求項1記載の熱糊塗布装置であって、
前記機械により読み出し可能および/または機械により書き込み可能なデータ担体は、磁気的に読み出し可能および/または書き込み可能なメモリまたは符合担体を有する熱糊塗布装置。
【請求項5】
請求項1記載の熱糊塗布装置であって、
前記機械により読み出し可能および/または機械により書き込み可能なデータ担体は、光学的に読み出し可能および/または書き込み可能なメモリ、またはバーコード、2Dコード、または3Dコードを備える符合担体を有する熱糊塗布装置。
【請求項6】
請求項1記載の熱糊塗布装置であって、
溶解装置の加熱回路および接続されたコンポーネントの制御および監視のために用いられる制御部が、前記コンポーネントにあるデータ担体との通信のための通信装置を有する熱糊塗布装置。
【請求項7】
請求項6記載の熱糊塗布装置であって、
前記制御部の通信装置と、接続されたコンポーネントにあるデ―タ担体との間の通信は、有線接続で溶解装置の接続ソケットを介して、または無線で電磁的、磁気的、音響的、または光学的に行われる熱糊塗布装置。
【請求項8】
請求項6または7記載の熱糊塗布装置であって、
前記通信装置は接続部を有し、該接続部はフィールドバスを介して上位の制御部と、またはインターネットを介して外部の監視装置とデータ交換することができる熱糊塗布装置。
【請求項9】
溶解装置と、該溶解装置に接続された加熱可能な搬送ホースおよび加熱可能な塗布弁とを備える熱糊塗布装置の制御および監視のための方法であって、
前記溶解装置は制御部をし、
前記搬送ホースおよび塗布弁はそれぞれ機械により読み出しおよび/または機械により書き込み可能なデータ担体を有している形式の方法において、
前記制御部は、初期化の際および/または周期的に、およびシステム構成の変更時に、有線接続で、または無線で前記接続されたコンポーネントにあるデータ担体と通信することを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項9記載の方法であって、
前記制御部は、接続されたコンポーネントからデータを受信し、該データを前記溶解装置の加熱回路の制御および監視を最適化するために使用する方法。
【請求項11】
請求項9または10記載の方法であって、
前記制御部は、データを前記接続されたコンポーネントに伝送し、該データは該コンポーネントの診断および保守の最適化のために使用される方法。
【請求項12】
請求項9から11までのいずれか一項記載の方法であって、
前記制御部はフィールドバスを介して上位の制御部と、またはインターネットを介して外部の監視装置とデータを交換し、該データは熱糊塗布装置の監視を静的可視、エラーの場合に遠隔診断を可能にするために使用される方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−501324(P2010−501324A)
【公表日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−524927(P2009−524927)
【出願日】平成19年8月7日(2007.8.7)
【国際出願番号】PCT/EP2007/006956
【国際公開番号】WO2008/022708
【国際公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(509037950)バウマー エイチエイチエス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1)
【氏名又は名称原語表記】Baumer hhs GmbH
【住所又は居所原語表記】Adolf−Dembach−Strasse 7, D−47829 Krefeld, Germany
【Fターム(参考)】