説明

熱線遮蔽材および貼合せ構造体

【課題】可視光透過性及び日射反射率が高く、耐久性及び耐候性に優れ、更に紫外線による経時的な変色を低減した熱線遮蔽材の提供。
【解決手段】少なくとも1種の金属粒子を含有する金属粒子含有層と、紫外線吸収層とを有する熱線遮蔽材であって、前記金属粒子が、略六角形状乃至略円盤形状の金属平板粒子を60個数%以上有し、前記金属平板粒子の主平面が、前記金属粒子含有層の一方の表面に対して平均して0°〜±30°の範囲で面配向していることを特徴とする熱線遮蔽材である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可視光透過性及び日射反射率が高く、耐久性及び耐候性に優れ、紫外線による経時的な変色を低減した熱線遮蔽材および該熱線遮蔽材を用いた貼合せ構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、二酸化炭素削減のための省エネルギー施策の一つとして、自動車や建物の窓に対する熱線遮蔽性付与材料が開発されている。熱線遮蔽性(日射熱取得率)の観点からは、吸収した光の室内への再放射(吸収した日射エネルギーの約1/3量)がある熱線吸収型より、再放射がない熱線反射型が望ましく、様々な提案がなされている。
【0003】
例えば、金属Ag薄膜は、その反射率の高さから、熱線反射材として一般に使用されているが、可視光や熱線だけでなく電波も反射してしまうため、可視光透過性及び電波透過性が低いことが問題となっていた。可視光透過性を上げるために、Ag及びZnO多層膜を利用したLow−Eガラス(例えば旭硝子株式会社製)は、広く建物に採用されているが、Low−Eガラスは、ガラス表面に金属Ag薄膜が形成されているため、電波透過性が低いという課題があった。
【0004】
前記課題を解決するため、例えば、電波透過性を付与した島状Ag粒子付きガラスが提案されている。蒸着により製膜したAg薄膜をアニールすることにより、粒状Agを形成したガラスが提案されている(特許文献1参照)。しかし、この提案では、アニールにより粒状Agを形成しているため、粒子サイズ、形状、面積率などを制御することが難しく、熱線の反射波長、帯域等の制御、可視光透過率の向上などが難しく、その結果、赤外光の中で太陽光エネルギーが高い短波長側の赤外線を十分に遮蔽できないという問題があった。
【0005】
また、赤外線遮蔽フィルタとして、Ag平板粒子を用いたフィルタが提案されている(特許文献2〜6参照)。しかし、これらの提案は、いずれもプラズマディスプレイパネル(PDP)に用いることを意図したものであり、かかるAg平板粒子は、その配列制御がなされていないことから、主に赤外域の波長光赤外線吸収体として機能し、積極的に熱線を反射する材料として機能するものではなかった。したがって、かかるAg平板粒子からなる赤外線遮蔽フィルタを直射日光の遮熱に使用すると、この赤外線吸収フィルタ自体が暖まることになり、その熱で室温が上昇してしまうために、赤外線遮蔽材としての機能は不十分であった。また、前記赤外線遮蔽フィルタを窓ガラスに貼り付けた場合、太陽光線が当たる場所と当たらない場所で温度上昇が異なるためにフィルタの膨張率の違いを生じる影響でガラスが割れる、いわゆる熱割れという現象が起こるという問題があった。
また、従来耐久性が高いものと思われていた銀粒子を採用し、略六角形状乃至略円盤形状のナノ粒子の分散体とした場合において、太陽光の紫外線で遮蔽材が変色するという問題を新たに見出した。この現象は、形状やナノ粒子化により、銀粒子が不安定化したためと推定された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3454422号公報
【特許文献2】特開2007−108536号公報
【特許文献3】特開2007−178915号公報
【特許文献4】特開2007−138249号公報
【特許文献5】特開2007−138250号公報
【特許文献6】特開2007−154292号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、可視光透過性及び日射反射率が高く、耐久性及び耐候性に優れ、更に紫外線による経時的な変色を低減した熱線遮蔽材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記目的を解決すべく、鋭意検討した結果、少なくとも1種の金属粒子を含有する金属粒子含有層と、少なくとも1種の紫外線吸収剤を含有する紫外線吸収層とを有する熱線遮蔽材であって、前記金属粒子が、略六角形状乃至略円盤形状の金属平板粒子を60個数%以上有し、前記金属平板粒子の主平面が、前記金属粒子含有層の一方の表面に対して平均して0°〜±30°の範囲で面配向していることにより、可視光透過性及び日射反射率が高く、耐久性及び耐候性に優れ、更に紫外線による経時的な変色を低減することができる材料構成を見出し、本発明の完成に至った。
【0009】
本発明は、本発明者らによる前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 少なくとも1種の金属粒子を含有する金属粒子含有層と、少なくとも1種の紫外線吸収剤を含有する紫外線吸収層とを有する熱線遮蔽材であって、
前記金属粒子が、略六角形状乃至略円盤形状の金属平板粒子を60個数%以上有し、
前記金属平板粒子の主平面が、前記金属粒子含有層の一方の表面に対して平均して0°〜±30°の範囲で面配向していることを特徴とする熱線遮蔽材である。
<2> 粘着層を有し、紫外線吸収層が前記粘着層である前記<1>に記載の熱線遮蔽材である。
<3> 粘着層を有し、紫外線吸収層が前記粘着層と前記金属粒子含有層との間の層である前記<1>に記載の熱線遮蔽材である。
<4> 紫外線透過率が、5%以下であることを特徴とする前記<1>から<3>のいずれかに記載の熱線遮蔽材である。
<5> 金属平板粒子の粒度分布における変動係数が、30%以下である前記<1>から<4>のいずれかに記載の熱線遮蔽材である。
<6> 金属平板粒子の平均粒子径が70nm〜500nmであり、
金属平板粒子のアスペクト比(平均粒子径/平均粒子厚み)が8〜40である前記<1>から<5>のいずれかに記載の熱線遮蔽材である。
<7> 金属平板粒子が、少なくとも銀を含む前記<1>から<6>のいずれかに記載の熱線遮蔽材である。
<8> 熱線遮蔽材の可視光線透過率が、70%以上である前記<1>から<7>のいずれかに記載の熱線遮蔽材である。
<9> 紫外線吸収剤が、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、及びトリアジン系紫外線吸収剤の少なくともいずれかである前記<1>から<8>のいずれかに記載の熱線遮蔽材である。
<10> 少なくとも1種の金属酸化物粒子を含有する金属酸化物粒子含有層を更に有する前記<1>から<9>のいずれかに記載の熱線遮蔽材である。
<11> 金属酸化物粒子が、錫ドープ酸化インジウム粒子である前記<10>に記載の熱線遮蔽材である。
<12> 前記<1>から<11>のいずれかに記載の熱線遮蔽材と、ガラス及びプラスチックのいずれかとを貼り合わせてなることを特徴とする貼合せ構造体である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、可視光透過性及び日射反射率が高く、耐久性及び耐候性に優れ、更に紫外線による経時的な変色を低減した熱線遮蔽材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の熱線遮蔽材の一例を示す概略図である。
【図2】図2は、本発明の熱線遮蔽材の他の一例を示す概略図である。
【図3】図3は、本発明の熱線遮蔽材の他の一例を示す概略図である。
【図4A】図4Aは、本発明の熱線遮蔽材に含まれる平板粒子の形状の一例を示した概略斜視図であって、略円盤形状の平板粒子を示す。
【図4B】図4Bは、本発明の熱線遮蔽材に含まれる平板粒子の形状の一例を示した概略斜視図であって、略六角形状の平板粒子を示す。
【図5A】図5Aは、本発明の熱線遮蔽材において、金属平板粒子を含む金属粒子含有層の存在状態を示した概略断面図である。
【図5B】図5Bは、本発明の熱線遮蔽材において、金属平板粒子を含む金属粒子含有層の存在状態を示した概略断面図であって、基材の平面と平板粒子の平面とのなす角度(θ)を説明する図を示す。
【図5C】図5Cは、本発明の熱線遮蔽材において、金属平板粒子を含む金属粒子含有層の存在状態を示した概略断面図であって、金属粒子含有層の熱線遮蔽材の深さ方向における存在領域を示す図である。
【図6】図6は、実施例1の熱線遮蔽材における耐候性試験前後の透過スペクトルを示すグラフである。
【図7】図7は、比較例1の熱線遮蔽材における耐候性試験前後の透過スペクトルを示すグラフである。
【図8】図8は、実施例1の熱線遮蔽材における反射スペクトルを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0013】
(熱線遮蔽材)
本発明の熱線遮蔽材は、少なくとも1種の金属粒子を含有する金属粒子含有層と、少なくとも1種の紫外線吸収剤を含有する紫外線吸収層とを有してなり、必要に応じて、粘着層、基材、金属酸化物粒子含有層などのその他の層を有する。
前記熱線遮蔽材の層構成としては、図1に示すように、粘着層11を有し、紫外線吸収層12が粘着層11であって、基材14と、該基材上に金属粒子含有層13と、該金属粒子含有層上に粘着層11として機能する紫外線吸収層12とを有する態様が好適に挙げられる。また、図2及び図3に示すように、粘着層11を有し、紫外線吸収層12が粘着層11と金属粒子含有層13との間の層である態様が挙げられる。具体的には、図2に示すように、基材14と、該基材上に金属粒子含有層13、紫外線吸収層12及び粘着層11が積層された態様、図3に示すように、基材14として機能する紫外線吸収層12を有し、該紫外線吸収層12の一方の面上に粘着層11と、他方の面上に金属粒子含有層13とを有する態様などが好適に挙げられる。
【0014】
<金属粒子含有層>
前記金属粒子含有層は、少なくとも1種の金属粒子を含有する層であり、前記金属粒子が、略六角形状〜略円盤形状の金属平板粒子を60個数%以上有し、前記金属平板粒子の主平面が、前記金属粒子含有層の一方の表面に対して平均0°〜±30°の範囲で面配向していれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0015】
−金属粒子−
前記金属粒子としては、金属平板粒子を含むものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記金属粒子含有層において、金属粒子の存在形態としては、金属粒子含有層の一方の表面(熱線遮蔽材が基材を有する場合は、基材表面)に対して略水平に偏在することが好ましい。略水平に偏在する形態としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、基材が金属粒子含有層の表面に略接触する形態、金属粒子含有層の基材と接触している表面とは反対側の表面に金属粒子が略接触する形態、基材と金属粒子とが略接触する形態、基材と金属粒子とが熱線遮蔽材の深さ方向に一定の距離で配置されている形態などが挙げられる。
なお、前記金属粒子含有層の一方の表面とは、仮支持体としての基材と接する面であり、前記基材の表面と同様に、フラットな平面である。ここで、前記熱線遮蔽材は、前記仮支持体を有していてもよく、有していなくてもよい。
前記金属粒子の大きさとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、500nm以下の平均粒子径を有するものであってもよい。
前記金属粒子の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、熱線(近赤外線)の反射率が高い点から、銀、金、アルミニウム、銅、ロジウム、ニッケル、白金などが好ましい。
【0016】
−金属平板粒子−
前記金属平板粒子としては、2つの主平面からなる粒子(図4A及び図4B参照)であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、略六角形状、略円盤形状、略三角形状などが挙げられる。これらの中でも、可視光透過率が高い点で、略六角形状以上の多角形状〜略円盤形状であることがより好ましく、略六角形状、または略円盤形状であることが特に好ましい。
本明細書中、略円盤形状とは、後述する金属平板粒子の平均円相当径の10%以下の凹凸を無視したときに、平均円相当径の50%以上の長さを有する辺の個数が1個の金属平板粒子当たり0個である形状のことを言う。前記略円盤形状の金属平板粒子としては、透過型電子顕微鏡(TEM)で金属平板粒子を主平面の上方から観察した際に、角が無く、丸い形状であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
本明細書中、略六角形状とは、後述する金属平板粒子の平均円相当径の10%以下の凹凸を無視したときに、平均円相当径の20%以上の長さを有する辺の個数が1個の金属平板粒子当たり6個である形状のことを言う。なお、その他の多角形についても同様である。前記略六角形状の金属平板粒子としては、透過型電子顕微鏡(TEM)で金属平板粒子を主平面の上方から観察した際に、略六角形状であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、六角形状の角が鋭角のものでも、鈍っているものでもよいが、可視光域の吸収を軽減し得る点で、角が鈍っているものであることが好ましい。角の鈍りの程度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記金属平板粒子の材料としては、特に制限はなく、前記金属粒子と同じものを目的に応じて適宜選択することができる。前記金属平板粒子は、少なくとも銀を含むことが好ましい。
【0017】
前記金属粒子含有層に存在する金属粒子のうち、略六角形状乃至略円盤形状の金属平板粒子は、金属粒子の全個数に対して、60個数%以上であり、65個数%以上が好ましく、70個数%以上が更に好ましい。前記金属平板粒子の割合が、60個数%未満であると、可視光線透過率が低くなってしまうことがある。
【0018】
[面配向]
本発明の熱線遮蔽材において、金属平板粒子は、その主平面が金属粒子含有層の一方の表面(熱線遮蔽材が基材を有する場合は、基材表面)に対して、平均して0°〜±30°の範囲で面配向しており、平均して0°〜±20°の範囲で面配向していることが好ましい。
前記金属平板粒子の存在状態は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0019】
ここで、図5A〜図5Cは、本発明の熱線遮蔽材において、金属平板粒子を含む金属粒子含有層の存在状態を示した概略断面図である。図5Aは、金属粒子含有層2中における金属平板粒子3の存在状態の一例を示す。図5Bは、基材1の平面と金属平板粒子3の平面とのなす角度(±θ)を説明する図である。図5Cは、金属粒子含有層2の熱線遮蔽材の深さ方向における存在領域を示すものである。
図5Bにおいて、基材1の表面と、金属平板粒子3の主平面または主平面の延長線とのなす角度(±θ)は、前記の面配向における所定の範囲に対応する。即ち、面配向とは、熱線遮蔽材の断面を観察した際、図5Bに示す傾角(±θ)が小さい状態をいい、特に、図5Aは、基材1の表面と金属平板粒子3の主平面とが接している状態、即ち、θが0°である状態を示す。基材1の表面に対する金属平板粒子3の主平面の面配向の角度、即ち図5Bにおけるθが平均して±30°を超えると、熱線遮蔽材の所定の波長(例えば、可視光域長波長側から近赤外光領域)の反射率が低下してしまう。
【0020】
[面配向の評価]
前記金属粒子含有層の一方の表面(熱線遮蔽材が基材を有する場合は、基材表面)に対して金属平板粒子の主平面が面配向しているかどうかの評価としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、適当な断面切片を作製し、この切片における金属粒子含有層(熱線遮蔽材が基材を有する場合は、基材)及び金属平板粒子を観察して評価する方法であってもよい。具体的には、熱線遮蔽材を、ミクロトーム、集束イオンビーム(FIB)を用いて熱線遮蔽材の断面サンプルまたは断面切片サンプルを作製し、これを、各種顕微鏡(例えば、電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)等)を用いて観察して得た画像から評価する方法などが挙げられる。
【0021】
前記熱線遮蔽材において、金属平板粒子を被覆するバインダーが水で膨潤する場合は、液体窒素で凍結した状態の試料を、ミクロトームに装着されたダイヤモンドカッター切断することで、前記断面サンプルまたは断面切片サンプルを作製してもよい。また、熱線遮蔽材において金属平板粒子を被覆するバインダーが水で膨潤しない場合は、前記断面サンプルまたは断面切片サンプルを作製してもよい。
【0022】
前記の通り作製した断面サンプルまたは断面切片サンプルの観察としては、サンプルにおいて金属粒子含有層の一方の表面(熱線遮蔽材が基材を有する場合は、基材表面)に対して金属平板粒子の主平面が面配向しているかどうかを確認し得るものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、FE−SEM、TEM、光学顕微鏡などを用いた観察が挙げられる。前記断面サンプルの場合は、FE−SEMにより、前記断面切片サンプルの場合は、TEMにより観察を行ってもよい。FE−SEMで評価する場合は、金属平板粒子の形状と傾角(図5Bの±θ)が明瞭に判断できる空間分解能を有することが好ましい。
【0023】
[平均粒子径(平均円相当径)及び平均粒子径(平均円相当径)の粒度分布]
前記金属平板粒子の平均粒子径(平均円相当径)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、70nm〜500nmが好ましく、100nm〜400nmがより好ましい。前記平均粒子径(平均円相当径)が、70nm未満であると、金属平板粒子の吸収の寄与が反射より大きくなるため十分な熱線反射能が得られなくなることがあり、500nmを超えると、ヘイズ(散乱)が大きくなり、基材の透明性が損なわれてしまうことがある。
ここで、前記平均粒子径(平均円相当径)とは、TEMで粒子を観察して得た像から任意に選んだ200個の平板粒子の主平面直径(最大長さ)の平均値を意味する。
前記金属粒子含有層中に平均粒子径(平均円相当径)が異なる2種以上の金属粒子を含有することができ、この場合、金属粒子の平均粒子径(平均円相当径)のピークが2つ以上、即ち2つの平均粒子径(平均円相当径)を有していてもよい。
【0024】
本発明の熱線遮蔽材において、金属平板粒子の粒度分布における変動係数としては、30%以下が好ましく、20%以下がより好ましい。前記変動係数が、30%を超えると、熱線遮蔽材における熱線の反射波長域がブロードになってしまうことがある。
ここで、前記金属平板粒子の粒度分布における変動係数は、例えば前記の通り得た平均値の算出に用いた200個の金属平板粒子の粒子径の分布範囲をプロットし、粒度分布の標準偏差を求め、前記の通り得た主平面直径(最大長さ)の平均値(平均粒子径(平均円相当径))で割った値(%)である。
【0025】
[アスペクト比]
前記金属平板粒子のアスペクト比としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、波長780nm〜1,800nmの赤外光領域での反射率が高くなる点から、8〜40が好ましく、10〜35がより好ましい。前記アスペクト比が、8未満であると、反射波長が780nmより小さくなり、40を超えると、反射波長が1,800nmより長くなり、十分な熱線反射能が得られないことがある。
前記アスペクト比は、金属平板粒子の平均粒子径(平均円相当径)を金属平板粒子の平均粒子厚みで除算した値を意味する。平均粒子厚みは、金属平板粒子の主平面間距離に相当し、例えば、図4A及び図4Bに示す通りであり、原子間力顕微鏡(AFM)により測定することができる。
前記AFMによる平均粒子厚みの測定方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ガラス基板に金属平板粒子を含有する粒子分散液を滴下し、乾燥させて、粒子1個の厚みを測定する方法などが挙げられる。
【0026】
[金属平板粒子の存在範囲]
本発明の熱線遮蔽材では、前記金属粒子含有層の厚さをdとしたときに前記略六角形状又は略円盤形状の金属平板粒子の80個数%以上が、前記金属粒子含有層の表面からd/2の範囲に存在していてもよく、d/3の範囲に存在していてもよく、前記略六角形状又は略円盤形状の金属平板粒子の60個数%以上が前記金属粒子含有層の一方の表面に露出していてもよい。金属平板粒子が金属粒子含有層の表面からd/2の範囲に存在するとは、金属平板粒子の少なくとも一部が金属粒子含有層の表面からd/2の範囲に含まれていることを意味する。また、金属平板粒子が前記金属粒子含有層の一方の表面に露出しているとは、金属平板粒子の一方の表面の一部が、金属粒子含有層の表面よりも突出していることを意味する。ここで、前記金属粒子含有層中の金属平板粒子存在分布は、例えば、熱線遮蔽材の断面試料をSEM観察した画像より測定することができる。
本発明の熱線遮蔽材において、図5Cに示すように、金属粒子含有層2における金属平板粒子3を構成する金属のプラズモン共鳴波長をλとし、金属粒子含有層2における媒質の屈折率をnとするとき、前記金属粒子含有層2が、熱線遮蔽材の水平面からの深さ方向において、0〜(λ/n)/4の範囲で存在することが好ましい。
【0027】
前記金属粒子含有層における金属平板粒子を構成する金属のプラズモン共鳴波長λは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、熱線反射性能を付与する点で、400nm〜2,500nmであることが好ましく、可視光透過率を付与する点から、700nm〜2,500nmであることがより好ましい。
前記金属粒子含有層における媒質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。本発明の熱線遮蔽材は、前記金属含有層が二酸化珪素、酸化アルミニウム等の無機物であってもよいが、ポリマーを含むことが好ましい。前記ポリマーとしては、例えば、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ゼラチンやセルロース等の天然高分子等の高分子などが挙げられる。その中でも、本発明では、前記ポリマーの主ポリマーがポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、(飽和)ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂であることが好ましく、ポリエステル樹脂およびポリウレタン樹脂であることが前記略六角形状又は略円盤形状の金属平板粒子の80個数%以上を前記金属粒子含有層の表面からd/2の範囲に存在させやすい観点からより好ましく、ポリエステル樹脂であることが本発明の熱線遮蔽材のこすり耐性をより改善する観点から特に好ましい。
また、本明細書中、前記金属含有層に含まれる前記ポリマーの主ポリマーとは、前記金属含有層に含まれるポリマーの50質量%以上を占めるポリマー成分のことを言う。
前記媒質の屈折率nは、1.4〜1.7であることが好ましい。
【0028】
[金属平板粒子の面積率]
前記熱線遮蔽材を上から見た時の基材の面積A(金属粒子含有層に対して垂直方向から見たときの前記金属粒子含有層の全投影面積A)に対する金属平板粒子の面積の合計値Bの割合である面積率〔(B/A)×100〕としては、15%以上が好ましく、20%以上がより好ましい。前記面積率が、15%未満であると、熱線の最大反射率が低下してしまい、遮熱効果が十分に得られないことがある。
ここで、前記面積率は、例えば熱線遮蔽材基材を上からSEM観察で得られた画像や、AFM(原子間力顕微鏡)観察で得られた画像を画像処理することにより測定することができる。
【0029】
[金属平板粒子の平均粒子間距離]
前記金属粒子含有層における水平方向に隣接する金属平板粒子の平均粒子間距離としては、可視光線透過率及び熱線の最大反射率の点から、金属平板粒子の平均粒子径の1/10以上が好ましく、0.1〜10がより好ましい。
前記金属平板粒子の水平方向の平均粒子間距離が、前記金属平板粒子の平均粒子径の1/10未満となると、熱線の最大反射率が低下してしまう。また、10以下であることが熱線反射率を高める観点から好ましい。また、水平方向の平均粒子間距離は、可視光線透過率の点で、不均一(ランダム)であることが好ましい。ランダムでない場合、即ち、均一であると、回折散乱によりモアレ縞が見えることがある。
【0030】
ここで、前記金属平板粒子の水平方向の平均粒子間距離とは、隣り合う2つの粒子の粒子間距離の平均値を意味する。また、前記平均粒子間距離がランダムであるとは、「100個以上の金属平板粒子が含まれるSEM画像を二値化した際の輝度値の2次元自己相関を取ったときに、原点以外に有意な極大点を持たない」ことを意味する。
【0031】
[金属粒子含有層の層構成]
本発明の熱線遮蔽材において、金属平板粒子は、図5A〜図5Cに示すように、金属平板粒子を含む金属粒子含有層の形態で配置される。
前記金属粒子含有層としては、図5A〜図5Cに示すように単層で構成されてもよく、複数の金属粒子含有層で構成されてもよい。複数の金属粒子含有層で構成される場合、遮熱性能を付与したい波長帯域に応じた遮蔽性能を付与することが可能となる。
ここで、前記金属粒子含有層の各層の厚みは、例えば、熱線遮蔽材の断面試料をSEM観察した画像より測定することができる。
【0032】
[金属平板粒子の合成方法]
前記金属平板粒子の合成方法としては、略六角形状乃至略円盤形状を合成し得るものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、化学還元法、光化学還元法、電気化学還元法等の液相法などが挙げられる。これらの中でも、形状とサイズ制御性の点で、化学還元法、光化学還元法などの液相法が特に好ましい。六角形乃至三角形状の金属平板粒子を合成後、例えば、硝酸、亜硫酸ナトリウム等の銀を溶解する溶解種によるエッチング処理、加熱によるエージング処理などを行うことにより、六角形乃至三角形状の金属平板粒子の角を鈍らせて、略六角形状乃至略円盤形状の金属平板粒子を得てもよい。
【0033】
前記金属平板粒子の合成方法としては、前記の他、予めフィルム、ガラスなどの透明基材の表面に種晶を固定後、平板状に金属粒子(例えばAg)を結晶成長させてもよい。
【0034】
本発明の熱線遮蔽材において、金属平板粒子は、所望の特性を付与するために、更なる処理を施してもよい。前記更なる処理としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、高屈折率シェル層の形成、分散剤、酸化防止剤等の各種添加剤を添加することなどが挙げられる。
【0035】
−高屈折率シェル層の形成−
前記金属平板粒子は、可視光域透明性を更に高めるために、可視光域透明性が高い高屈折率材料で被覆されてもよい。
前記高屈折率材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、TiOx、BaTiO3、ZnO、SnO2、ZrO2、NbOxなどが挙げられる。
【0036】
前記被覆する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、Langmuir、2000年、16巻、p.2731−2735に報告されているようにテトラブトキシチタンを加水分解することにより銀の金属平板粒子の表面にTiOx層を形成する方法であってもよい。
【0037】
また、前記金属平板粒子に直接高屈折率金属酸化物層シェルを形成することが困難な場合は、前記の通り金属平板粒子を合成した後、適宜SiO2やポリマーのシェル層を形成し、更に、このシェル層上に前記金属酸化物層を形成してもよい。TiOxを高屈折率金属酸化物層の材料として用いる場合には、TiOxが光触媒活性を有することから、金属平板粒子を分散するマトリクスを劣化させてしまう懸念があるため、目的に応じて金属平板粒子にTiOx層を形成した後、適宜SiO2層を形成してもよい。
【0038】
−各種添加物の添加−
本発明の熱線遮蔽材において、金属平板粒子は、該金属平板粒子を構成する銀などの金属の酸化を防止するために、メルカプトテトラゾール、アスコルビン酸等の酸化防止剤を吸着していてもよい。また、酸化防止を目的として、Ni等の酸化犠牲層が金属平板粒子の表面に形成されていてもよい。また、酸素を遮断することを目的として、SiO2などの金属酸化物膜で被覆されていてもよい。
【0039】
前記金属平板粒子は、分散性付与を目的として、例えば、4級アンモニウム塩、アミン類等のN元素、S元素、及びP元素の少なくともいずれかを含む低分子量分散剤、高分子量分散剤などの分散剤を添加してもよい。
【0040】
<紫外線吸収層>
前記紫外線吸収層は、少なくとも1種の紫外線吸収剤を含有する層であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、粘着層であってもよく、また、前記粘着層と前記金属粒子含有層との間の層(例えば、基材、基材以外の中間層など)であってもよい。いずれの場合も、前記紫外線吸収層は、前記金属粒子含有層に対して、太陽光が照射される側に配置される。
前記紫外線吸収層が、接着層及び基材のいずれでもない、中間層を形成する場合、前記紫外線吸収層は、少なくとも1種の紫外線吸収剤を含有してなり、更に必要に応じて、バインダーなどのその他の成分を含む。
【0041】
−紫外線吸収剤−
前記紫外線吸収剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、サリチレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0042】
前記ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、2,4ドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノンなどが挙げられる。
【0043】
前記ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、2−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−メチル−6−tert−ブチルフェノール(チヌビン326)、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−ターシャリーブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−5−ジターシャリーブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾールなどが挙げられる。
【0044】
前記トリアジン系紫外線吸収剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、モノ(ヒドロキシフェニル)トリアジン化合物、ビス(ヒドロキシフェニル)トリアジン化合物、トリス(ヒドロキシフェニル)トリアジン化合物などが挙げられる。
前記モノ(ヒドロキシフェニル)トリアジン化合物としては、例えば、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−ドデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−トリデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−イソオクチルオキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジンなどが挙げられる。前記ビス(ヒドロキシフェニル)トリアジン化合物としては、例えば、2,4−ビス(2−ヒドロキシ−4−プロピルオキシフェニル)−6−(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2−ヒドロキシ−3−メチル−4−プロピルオキシフェニル)−6−(4−メチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2−ヒドロキシ−3−メチル−4−ヘキシルオキシフェニル)−6−(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス[2−ヒドロキシ−4−[3−(メトキシヘプタエトキシ)−2−ヒドロキシプロピルオキシ]フェニル]−1,3,5−トリアジンなどが挙げられる。前記トリス(ヒドロキシフェニル)トリアジン化合物としては、例えば、2,4−ビス(2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル)−6−(2,4−ジブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス[2−ヒドロキシ−4−(3−ブトキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)フェニル]−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス[2−ヒドロキシ−4−[1−(イソオクチルオキシカルボニル)エトキシ]フェニル]−6−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス[2−ヒドロキシ−4−[1−(イソオクチルオキシカルボニル)エトキシ]フェニル]−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス[2−ヒドロキシ−4−[1−(イソオクチルオキシカルボニル)エトキシ]フェニル]−6−[2,4−ビス[1−(イソオクチルオキシカルボニル)エトキシ]フェニル]−1,3,5−トリアジンなどが挙げられる。
【0045】
前記サリチレート系紫外線吸収剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フェニルサリチレート、p−tert−ブチルフェニルサリチレート、p−オクチルフェニルサリチレート、2−エチルヘキシルサリチレートなどが挙げられる。
【0046】
前記シアノアクリレート系紫外線吸収剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレートなどが挙げられる。
【0047】
−バインダー−
前記バインダーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、可視光透明性や日射透明性が高い方が好ましく、例えば、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコールなどが挙げられる。なお、バインダーが熱線を吸収すると、金属平板粒子による反射効果が弱まってしまうことから、熱線源と金属平板粒子との間に形成される紫外線吸収層としては、450nm〜1,500nmの領域に吸収を持たない材料を選択したり、該紫外線吸収層の厚みを薄くすることが好ましい。
前記紫外線吸収層の厚みとしては、0.01μm〜1,000μmが好ましく、0.02μm〜500μmがより好ましい。前記厚みが、0.01μm未満であると、紫外線の吸収が足りなくなることがあり、1,000μmを超えると、可視光の透過率が下がることがある。
前記紫外線吸収層の含有量としては、用いる紫外線吸収層によって異なり、一概に規定することができないが、本発明の熱線遮蔽材において所望の紫外線透過率を与える含有量を適宜選択することが好ましい。
前記紫外線透過率としては、5%以下が好ましく、2%以下がより好ましい。前記紫外線透過率が、5%を超えると、太陽光の紫外線により前記金属平板粒子層の色味が変化することがある。
【0048】
<その他の層>
<<粘着層>>
本発明の熱線遮蔽材は、粘着層を有することが好ましい。前記粘着層は、前記紫外線吸収層の機能を有する粘着層であってもよく、前記紫外線吸収剤を含まない粘着層であってもよい。
前記粘着層の形成に利用可能な材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリビニルブチラール(PVB)樹脂、アクリル樹脂、スチレン/アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの材料からなる粘着層は、塗布により形成することができる。
さらに、前記粘着層には帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤などを添加してもよい。
前記粘着層の厚みとしては、0.1μm〜10μmが好ましい。
【0049】
<<基材>>
前記基材としては、光学的に透明な基材であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、可視光線透過率が70%以上のもの、好ましくは80%以上のもの、近赤外線域の透過率が高いものなどが挙げられる。
前記基材としては、その形状、構造、大きさ、材料などについては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記形状としては、例えば、平板状などが挙げられ、前記構造としては、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよく、前記大きさとしては、前記熱線遮蔽材の大きさなどに応じて適宜選択することができる。
前記基材の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ4−メチルペンテン−1、ポリブテン−1等のポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、ポリエーテルサルフォン系樹脂、ポリエチレンサルファイド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、セルロースアセテート等のセルロース系樹脂などからなるフィルム又はこれらの積層フィルムが挙げられる。これらの中で、特にポリエチレンテレフタレートフィルムが好適である。
この基材フィルムの厚みとしては、特に制限はなく、日射遮蔽フィルムの使用目的に応じて適宜選択することができ、通常は10μm〜500μm程度であり、12μm〜300μmが好ましく、16μm〜125μmがより好ましい。
【0050】
<<金属酸化物粒子含有層>>
本発明の熱線遮蔽材は、長波赤外線を吸収する層として、少なくとも1種の金属酸化物粒子を含有する金属酸化物粒子含有層をさらに有することが、熱線遮蔽と製造コストのバランスの観点から、好ましい。
前記金属酸化物粒子含有層は、少なくとも1種の金属酸化物粒子を含有する層であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記金属酸化物粒子の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、錫ドープ酸化インジウム(以下、「ITO」と略記する。)、錫ドープ酸化アンチモン(以下、「ATO」と略記する。)、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化インジウム、酸化錫、酸化アンチモン、ガラスセラミックスなどが挙げられる。これらの中でも、熱線吸収能力に優れ、銀平板粒子と組み合わせることにより幅広い熱線吸収能を有する熱線遮蔽材が製造できる点で、ITO、ATO、酸化亜鉛がより好ましく、1,200nm以上の赤外線を90%以上遮蔽し、可視光透過率が90%以上である点で、ITOが特に好ましい。
前記金属酸化物粒子の一次粒子の体積平均粒径としては、可視光透過率を低下させないため、0.1μm以下が好ましい。
前記金属酸化物粒子の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、球状、針状、板状などが挙げられる。
【0051】
前記金属酸化物粒子の前記金属酸化物粒子含有層における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1g/m2〜20g/m2が好ましく、0.5g/m2〜10g/m2がより好ましく、1.0g/m2〜4.0g/m2がより好ましい。
前記含有量が、0.1g/m2未満であると、肌に感じる日射量が上昇することがあり、20g/m2を超えると、可視光透過率が悪化することがある。一方、前記含有量が、1.0g/m2〜4.0g/m2であると、上記2点を回避できる点で有利である。
なお、前記金属酸化物粒子の前記金属酸化物粒子含有層における含有量は、例えば、前記熱線遮蔽層の超箔切片TEM像及び表面SEM像の観察から、一定面積における金属酸化物粒子の個数及び平均粒子径を測定し、該個数及び平均粒子径と、金属酸化物粒子の比重とに基づいて算出した質量(g)を、前記一定面積(m2)で除することにより算出することができる。また、前記金属酸化物粒子含有層の一定面積における金属酸化物微粒子をメタノールに溶出させ、蛍光X線測定により測定した金属酸化物微粒子の質量(g)を、前記一定面積(m2)で除することにより算出することもできる。
【0052】
<<ハードコート層>>
耐擦傷性を付加するために、機能性フィルムがハードコート性を有するハードコート層を含むことも好適である。
前記ハードコート層としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜その種類も形成方法も選択することができ、例えば、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、メラミン系樹脂、ウレタン系樹脂、アルキド系樹脂、フッ素系樹脂等の熱硬化型又は光硬化型樹脂などが挙げられる。前記ハードコート層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1μm〜50μmが好ましい。前記ハードコート層上に更に反射防止層及び/又は防眩層を形成すると、耐擦傷性に加え、反射防止性及び/又は防眩性を有する機能性フィルムが得られ好適である。また、前記ハードコート層に前記金属酸化物粒子を含有してもよい。
【0053】
<<保護層>>
本発明の熱線遮蔽材において、基材との密着性を向上させたり、機械強度的に保護するため、保護層を有することが好ましい。
前記保護層は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、バインダー、及び界面活性剤を含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
前記バインダーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記紫外線吸収層において例示したバインダーを用いることができる。
【0054】
[熱線遮蔽材の製造方法]
本発明の熱線遮蔽材の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、塗布方法により、前記基材の表面に前記金属粒子含有層、前記紫外線吸収層、更に必要に応じてその他の層を形成する方法が挙げられる。
【0055】
−金属粒子含有層の形成方法−
本発明の金属粒子含有層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記基材などの下層の表面上に、前記金属平板粒子を有する分散液を、ディップコーター、ダイコーター、スリットコーター、バーコーター、グラビアコーター等により塗布する方法、LB膜法、自己組織化法、スプレー塗布などの方法で面配向させる方法が挙げられる。
【0056】
また、前記金属粒子含有層の形成方法は、前記金属平板粒子の基材表面への吸着性や面配向性を高めるために、静電的な相互作用を利用して面配向させる方法を含んでいてもよい。そのような方法としては、例えば、金属平板粒子の表面が負に帯電している場合(例えば、クエン酸等の負帯電性の媒質に分散した状態)は、基材の表面を正に帯電(例えば、アミノ基等で基材表面を修飾)させておき、静電的に面配向性を高めることにより、面配向させる方法などが挙げられる。また、金属平板粒子の表面が親水性である場合は、基材の表面をブロックコポリマー、μコンタクトスタンプ法などにより、親疎水の海島構造を形成しておき、親疎水性相互作用を利用して面配向性と金属平板粒子の粒子間距離とを制御してもよい。
【0057】
なお、面配向を促進するために、金属平板粒子を塗布後、カレンダーローラーやラミローラーなどの圧着ローラーを通すことにより促進させてもよい。
【0058】
−紫外線吸収層の形成方法−
前記紫外線吸収層の形成方法としては、少なくとも1種の前記紫外線吸収剤を含有するものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜公知の方法を選択することができる。前記紫外線吸収層が粘着層である場合は、後述する粘着層の形成方法において、少なくとも1種の前記紫外線吸収剤を含有させることにより、該紫外線吸収層を形成してもよく、前記紫外線吸収剤を含有する市販品の粘着層を用いてもよい。
また、前記紫外線吸収層が基材である場合は、前述の基材の材料中に少なくとも1種の前記紫外線吸収剤を含有させることにより、該紫外線吸収層を形成してもよく、前記紫外線吸収剤を含有する市販品の基材を用いてもよい。該市販品としては、例えば、テイジン(登録商標)テトロン(登録商標)フィルム、(帝人デュポンフィルム(株)製)等の紫外線吸収PETフィルムなどが挙げられる。
前記紫外線吸収層が、接着層及び基材のいずれでもない、中間層である場合、該紫外線吸収層は、塗布により形成することが好ましい。このときの塗布方法としては、特に限定はなく、公知の方法を用いることができ、例えば、前記紫外線吸収剤を含有する分散液を、ディップコーター、ダイコーター、スリットコーター、バーコーター、グラビアコーター等により塗布する方法などが挙げられる。
【0059】
−−粘着層の形成方法−−
前記粘着層は、塗布により形成することが好ましい。例えば、前記基材、前記金属粒子含有層、前記紫外線吸収層などの下層の表面上に積層することができる。このときの塗布方法としては、特に限定はなく、公知の方法を用いることができる。
【0060】
本発明の熱線遮蔽材の日射反射率としては、600nm〜2,000nmの範囲(好ましくは800nm〜1,800nm)で最大値を有することが、熱線反射率の効率を上げることができる点で好ましい。
本発明の熱線遮蔽材の可視光線透過率としては、60%以上が好ましく、70%以上がより好ましい。前記可視光線透過率が、60%未満であると、例えば、自動車用ガラスや建物用ガラスとして用いた時に、外部が見にくくなることがある。
本発明の熱線遮蔽材の紫外線透過率としては、5%以下が好ましく、2%以下がより好ましい。前記紫外線透過率が、5%を超えると、太陽光の紫外線により前記金属平板粒子層の色味が変化することがある。
本発明の熱線遮蔽材のヘイズは、20%以下であることが好ましい。前記ヘイズが20%を超えると、例えば、自動車用ガラスや建物用ガラスとして用いた時に外部が見にくくなるなど、安全上好ましくないことがある。
【0061】
(ドライラミネーションによる粘着剤層積層)
本発明の熱線遮蔽材フィルムを使って、既設窓ガラスの類に機能性付与する場合は、粘着剤を積層してガラスの室内側に貼り付ける。その際、反射層をなるべく太陽光側に向けた方が発熱を防ぐことになるので、銀ナノディスク粒子層の上に粘着剤層を積層し、その面から窓ガラスへ貼合するのが適切である。
銀ナノディスク層表面への粘着剤層積層に当っては、当該表面に直接粘着剤入りの塗布液を塗工することもできるが、粘着剤に含まれる各種添加剤、可塑剤や、使用溶剤などが、場合によっては銀ナノディスク層の配列を乱したり、銀ナノディスク自身を変質させたりすることがある。そうした弊害を最小限に留めるためには、粘着剤を予め離型フィルム上に塗工及び乾燥させたフィルムを作製しておいて、当該フィルムの粘着剤面と本発明フィルムの銀ナノディスク層表面とをラミネートすることにより、ドライな状態のままの積層をすることが有効である。
【0062】
(貼合せ構造体)
本発明の貼合せ構造体は、本発明の熱線遮蔽材と、ガラス及びプラスチックのいずれかとを貼り合わせてなる。
前記貼合せ構造体の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、上述のように製造した本発明の熱線遮蔽材を、自動車等の乗り物用ガラス乃至プラスチックや建材用ガラス乃至プラスチックに貼合せる方法などが挙げられる。
【0063】
[熱線遮蔽材及び貼合せ構造体の使用態様]
本発明の熱線遮蔽材は、熱線(近赤外線)を選択的に反射乃至吸収するために使用される態様であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよく、例えば、乗り物用フィルムや貼合せ構造体、建材用フィルムや貼合せ構造体、農業用フィルムなどが挙げられる。これらの中でも、省エネルギー効果の点で、乗り物用フィルムや貼合せ構造体、建材用フィルムや貼合せ構造体であることが好ましい。
なお、本発明において、熱線(近赤外線)とは、太陽光に約50%含まれる近赤外線(780nm〜1,800nm)を意味する。
【実施例】
【0064】
以下、本発明の実施例及び比較例を挙げて説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、比較例は、公知技術とは限らない。
以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0065】
(製造例1:銀平板粒子分散液B1の調製)
−銀平板粒子の合成−
−−平板核粒子の合成工程−−
2.5mMのクエン酸ナトリウム水溶液50mLに0.5g/Lのポリスチレンスルホン酸水溶液を2.5mL添加し、35℃まで加熱した。この溶液に10mMの水素化ほう素ナトリウム水溶液を3mL添加し、0.5mMの硝酸銀水溶液50mLを20mL/minで攪拌しながら添加した。この溶液を30分間攪拌し、種溶液を作製した。
−−平板粒子の第1成長工程−−
次に、前記種溶液250mLに10mMのアスコルビン酸水溶液を2mL添加し、35℃まで加熱した。この溶液に0.5mMの硝酸銀水溶液79.6mLを10mL/minで攪拌しながら添加した。
−−平板粒子の第2成長工程−−
さらに、前記溶液を30分間攪拌した後、0.35Mのヒドロキノンスルホン酸カリウム水溶液を71.1mL添加し、7質量%ゼラチン水溶液を200g添加した。この溶液に、0.25Mの亜硫酸ナトリウム水溶液107mLと0.47Mの硝酸銀水溶液107mLを混合してできた亜硫酸銀の白色沈殿物混合液を添加した。銀が十分に還元されるまで攪拌し、0.17MのNaOH水溶液72mLを添加した。このようにして銀平板粒子分散液Aを得た。
【0066】
得られた銀平板粒子分散液A中には、平均円相当径240nmの銀の六角平板粒子(以下、Ag六角平板粒子と称する)が生成していることを確認した。また、原子間力顕微鏡(NanocuteII、セイコーインスツル社製)で、六角平板粒子の厚みを測定したところ、平均8nmであり、アスペクト比が17.5の平板粒子が生成していることが分かった。結果を表1に示す。
【0067】
前記銀平板粒子分散液A 12mLに1NのNaOHを0.5mL添加し、イオン交換水18mL添加し、遠心分離器(コクサン社製H−200N、アンブルローターBN)で遠心分離を行い、Ag六角平板粒子を沈殿させた。遠心分離後の上澄み液を捨て、水を2mL添加し、沈殿したAg六角平板粒子を再分散させ、製造例1の銀平板粒子分散液B1を得た。
【0068】
(製造例2:銀平板粒子分散液B2の調製)
製造例1の銀平板粒子分散液B1において、前記種溶液の添加量を250mLから127.6mLに変え、2.5mMのクエン酸ナトリウム水溶液132.7mLを添加したこと、及び亜硫酸銀の白色沈殿物混合液を添加した後すぐに0.05MのNaOH水溶液72mLを添加したこと以外は、銀平板粒子分散液B1と同様にして銀平板粒子分散液B2を作製した。
【0069】
(製造例3:銀平板粒子分散液B3の調製)
製造例1の銀平板粒子分散液B1において、前記種溶液の添加量を250mLから80mLに変え、2.5mMのクエン酸ナトリウム水溶液132.7mL及びイオン交換水49.5mLを添加したこと以外は、銀平板粒子分散液B1と同様にして銀平板粒子分散液B3を作製した。
【0070】
(製造例4:銀平板粒子分散液B4の調製)
製造例3の銀平板粒子分散液B3において、前記種溶液の添加量を250mLから39mLに変えたこと以外は、銀平板粒子分散液B3と同様にして銀平板粒子分散液B4を作製した。
【0071】
(製造例5:銀平板粒子分散液B5の調製)
製造例2の銀平板粒子分散液B2において、亜硫酸銀の白色沈殿物混合液を添加した後すぐに0.05MのNaOH水溶液72mLを添加する代わりに1MのNaOH水溶液72mLを添加したこと以外は、銀平板粒子分散液B2と同様にして銀平板粒子分散液B5を作製した。
【0072】
(製造例6:銀平板粒子分散液B6の調製)
製造例1の銀平板粒子分散液B1において、0.25Mの亜硫酸ナトリウム水溶液を0.5Mの亜硫酸ナトリウム水溶液に置き換えたこと以外は、銀平板粒子分散液B1と同様にして銀平板粒子分散液B6を作製した。
【0073】
(製造例7:銀平板粒子分散液B7の調製)
製造例1の銀平板粒子分散液B1において、0.25Mの亜硫酸ナトリウム水溶液を0.75Mの亜硫酸ナトリウム水溶液に置き換えたこと以外は、銀平板粒子分散液B1と同様にして銀平板粒子分散液B7を作製した。
【0074】
[金属粒子含有層用の塗布液1の調製]
下記に示す組成の金属粒子含有層用の塗布液1を調製した。
金属粒子含有層用の塗布液1の組成:
ポリエステルラテックス水分散液:ファインテックスES−650
(DIC社製、固形分濃度30質量%) 28.2質量部
界面活性剤A:ラピゾールA−90
(日本油脂(株)製、固形分1質量%) 12.5質量部
界面活性剤B:アロナクティーCL−95
(三洋化成工業(株)製、固形分1質量%) 15.5質量部
銀平板粒子分散液B1 200質量部
水 800質量部
【0075】
[紫外線吸収層用の塗布液2の調製]
下記に示す組成の紫外線吸収層用の塗布液2を調製した。
紫外線吸収層用の塗布液2の組成:
紫外線吸収剤:チヌビン326 10質量部
(チバ・ジャパン社製)
バインダー:10質量%ポリビニルアルコール溶液 10質量部
水 30質量部
これらを混合し、ボールミルを用いて体積平均粒径を0.6μmに調整した。
【0076】
[ハードコート層用の塗布液3の調製]
下記に示す組成のハードコート層用の塗布液3を調製した。
ハードコート層用の塗布液3の組成:
変性ポリビニルアルコールPVA203(クラレ社製) 10質量部
水 371質量部
メタノール 119質量部
ITO粒子(三菱マテリアル社製) 35質量部
【0077】
(実施例1)
PETフィルム(フジペット、富士フイルム(株)製、厚み:188μm)の表面上に、塗布液1を、ワイヤーバーを用いて、乾燥後の平均厚みが0.08μmになるように塗布した。その後、150℃で10分間加熱し、乾燥、固化し、金属粒子含有層を形成した。
次いで、形成した金属粒子含有層の上に、塗布液2を、ワイヤーバーを用いて、乾燥後の平均厚みが0.5μmになるように塗布した。その後、100℃で2分間加熱し、乾燥、固化し、紫外線吸収層を形成した。
次いで、形成した紫外線吸収層の裏面、即ち、PETフィルムの塗布液1を塗布していない面に、塗布液3を、ワイヤーバーを用いて、乾燥後の平均厚みが1.5μmになるように塗布した。
次いで、塗布液3を塗布した面に、UV硬化型樹脂A(JSR製、Z7410B、屈折率1.65)を層厚みが約9μmとなるように塗布して塗布層を設けた後、この塗布層を70℃で1分間乾燥させた。次に、乾燥した塗布層に対して高圧水銀灯を用いて紫外線を照射することにより樹脂を硬化させて、3μmのハードコート層を形成した。なお、塗布層に対する紫外線の照射量は、1,000mJ/cm2とした。
なお、前記平均厚みは、レーザー顕微鏡(VK−8510、キーエンス社製)を用いて塗布前と塗布後の差を厚みとして測定し、これら10点の厚みを平均することにより算出することができる。
【0078】
(接着層の貼合せ)
得られた熱線遮蔽フィルムの表面を洗浄した後、粘着層を貼り合わせた。粘着剤として、サンリッツ(株)社製PET−Wを用い、PET−Wの一方の剥離シートを剥がした面を、前記熱線遮蔽フィルムの紫外線吸収層表面と貼り合わせた。
以上により、実施例1の熱線遮蔽材を作製した。
【0079】
(貼合せ構造体の作製)
得られた熱線遮蔽材の剥離シートを剥がし、透明ガラス(厚み:3mm)と貼り合わせ、実施例1における熱線遮蔽材の貼合せ構造体を作製した。
なお、透明ガラスは、イソプロピルアルコールで汚れを拭き取って放置したものを使用し、貼り合わせ時、ゴムローラーを用いて25℃、湿度65%の条件下で、0.5kg/cm2の面圧で圧着した。
【0080】
次に、得られた金属粒子及び熱線遮蔽材について、以下のようにして諸特性を評価した。結果を表1及び2に示す。
【0081】
<<金属粒子の評価>>
−平板粒子の割合、平均粒子径(平均円相当径)、変動係数−
Ag平板粒子の形状均一性は、観察したSEM画像から任意に抽出した200個の粒子の形状を、略六角形状及び略円盤形状のいずれかの粒子をA、涙型などの不定形形状の粒子をBとして画像解析を行い、Aに該当する粒子個数の割合(個数%)を求めた。
また同様にAに該当する粒子100個の粒子径をデジタルノギスで測定し、その平均値を平均粒子径(平均円相当径)とし、粒径分布の標準偏差を平均粒子径(平均円相当径)で割った変動係数(%)を求めた。
【0082】
−平均粒子厚み−
得られた金属平板粒子を含む分散液を、ガラス基板上に滴下して乾燥し、金属平板粒子1個の厚みを、原子間力顕微鏡(AFM)(NanocuteII、セイコーインスツル社製)を用いて測定した。なお、AFMを用いた測定条件としては、自己検知型センサー、DFMモード、測定範囲は5μm、走査速度は180秒/1フレーム、データ点数は256×256とした。
【0083】
−アスペクト比−
得られた金属平板粒子の平均粒子径(平均円相当径)及び平均粒子厚みから、平均粒子径(平均円相当径)を平均粒子厚みで除算して、アスペクト比を算出した。
【0084】
−銀平板分散液の透過スペクトル−
得られた銀平板分散液の透過スペクトルは、水で希釈し、紫外可視近赤外分光機(日本分光株式会社製、V−670)を用いて評価した。
【0085】
<<熱線遮蔽材の評価>>
−粒子傾き角−
エポキシ樹脂で熱線遮蔽材を包埋処理した後、液体窒素で凍結した状態で剃刀で割断し、熱線遮蔽材の垂直方向断面試料を作製した。この垂直方向断面試料を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察して、100個の金属平板粒子について、基板の水平面に対する傾角(図5Bにおいて±θに相当)を平均値として算出した。
[評価基準]
○:傾角が±30°以下
×:傾角が±30°を超える
【0086】
−反射スペクトル及び透過スペクトル測定−
作製した各熱線遮蔽材の反射スペクトル及び透過スペクトルを、紫外可視近赤外分光機(日本分光株式会社製、V−670)を用いて測定した。反射スペクトル測定には、絶対反射率測定ユニット(ARV−474、日本分光株式会社製)を用い、入射光は45°偏光板を通し、無偏光とみなせる入射光とした。
【0087】
−可視光線透過率−
作製した各熱線遮蔽材について、380nm〜780nmまで測定した各波長の透過率を、各波長の分光視感度により補正した値を可視光線透過率とした。
【0088】
−紫外線線透過率−
作製した各熱線遮蔽材について、280nm〜380nmまで測定した各波長の透過率から、JIS5759記載の方法に基づき、紫外線透過率を求め、判定を行った。
【0089】
−遮熱性能評価−
作製した各熱線遮蔽材について、350nm〜2,100nmまで測定した各波長の透過率から、JIS5759記載の方法に基づき、日射反射率を求め、判定を行った。遮熱性能の評価としては、反射率が高いことが好ましい。
[評価基準]
◎:反射率20%以上
○:反射率17%以上20%未満
△:反射率13%以上17%未満
×:反射率13%未満
【0090】
−黄変度−
カーボンアーク式サンシャインウェザーメーター(放射照度255W/m2、湿度50%、温度63℃)で200時間耐候性試験を行い、試験前後のスペクトル変化から、JIS K7105記載の方法に基づき、黄変度を求めた。黄変度の評価としては、値が小さいほど好ましい。
[評価基準]
◎:黄変度0.5未満
○:黄変度0.5以上1未満
△:黄変度1以上2未満
×:黄変度2以上
【0091】
(実施例2)
実施例1において、塗布液2のチヌビン326の添加量を10質量部から1質量部に変えたこと以外は、実施例1と同様にして実施例2の熱線遮蔽材及びその貼合せ構造体を作製した。
【0092】
(実施例3)
実施例1において、塗布液2のチヌビン326の添加量を10質量部から0.5質量部に変えたこと以外は、実施例1と同様にして実施例3の熱線遮蔽材及びその貼合せ構造体を作製した。
【0093】
(実施例4)
実施例1において、塗布液1の銀平板分散液B1を銀平板分散物B2に代えたこと以外は、実施例1と同様にして実施例4の熱線遮蔽材及びその貼合せ構造体を作製した。
【0094】
(実施例5)
実施例1において、塗布液1の銀平板分散液B1の添加量を200質量部から100質量部に変え、銀平板分散物B3を100質量部さらに添加したこと、及び塗布液3を塗らなかったこと以外は、実施例1と同様にして実施例5の熱線遮蔽材及びその貼合せ構造体を作製した。
【0095】
(実施例6)
実施例1において、塗布液1の銀平板分散液B1を銀平板分散物B4に代えたこと以外は、実施例1と同様にして実施例6の熱線遮蔽材及びその貼合せ構造体を作製した。
【0096】
(実施例7)
実施例1において、塗布液1の銀平板分散液B1を銀平板分散物B5に代えたこと以外は、実施例1と同様にして実施例7の熱線遮蔽材及びその貼合せ構造体を作製した。
【0097】
(実施例8)
実施例1において、PETフィルムを紫外線吸収PETフィルム(テイジン(登録商標)テトロン(登録商標)フィルム、帝人デュポンフィルム(株)製)に代えたこと、塗布液2を塗布しなかったこと、塗布液3を金属粒子含有層の上に塗布したこと、及び粘着層であるPET−Wを紫外線吸収PETフィルムの塗布液1を塗布していない面に、張り合わせたこと以外は、実施例1と同様にして実施例8の熱線遮蔽材及びその貼合せ構造体を作製した。
【0098】
(実施例9)
実施例1において、粘着層としてPET−Wに代えて紫外線吸収剤入りPVBフィルムをラミネーターで張り合わせた以外は、実施例1と同様にして実施例9における熱線遮蔽材を作製した。
得られた熱線遮蔽材の粘着層面を透明ガラス(厚み:3mm)と貼り合わせ、真空状態で90℃、10分間かけて仮圧着し、次いでオートクレーブで130℃、30MPa、30分間かけて本圧着を行い、実施例9における熱線遮蔽材の貼合せ構造体を作製した。
【0099】
(実施例10)
実施例1において、塗布液1の銀平板分散液B1を銀平板分散物B6に代えたこと以外は、実施例1と同様にして実施例10の熱線遮蔽材及びその貼合せ構造体を作製した。
【0100】
(実施例11)
実施例1において、PETフィルムを紫外線吸収PETフィルム(テイジン(登録商標)テトロン(登録商標)フィルム、帝人デュポンフィルム(株)製)に代えたこと、塗布液2、塗布液3及びUV硬化型樹脂Aを塗布しなかったこと、及び粘着層であるPET−Wを紫外線吸収PETフィルムの塗布液1を塗布していない面に、張り合わせたこと以外は、実施例1と同様にして実施例11の熱線遮蔽材及びその貼合せ構造体を作製した。
【0101】
(実施例12)
実施例1において、塗布液2を塗布しなかったこと、粘着層としてPET−Wに代えて紫外線吸収剤入りPVBフィルムをラミネーターで張り合わせた以外は、実施例1と同様にして実施例12における熱線遮蔽材を作製した。
得られた熱線遮蔽材の粘着層面を透明ガラス(厚み:3mm)と貼り合わせ、真空状態で90℃、10分間かけて仮圧着し、次いでオートクレーブで130℃、30MPa、30分間かけて本圧着を行い、実施例12における熱線遮蔽材の貼合せ構造体を作製した。
(実施例13)
実施例1において、PETフィルム上にまず塗布液2を塗布、乾燥、固化して紫外線吸収層を形成し、次いで形成した紫外線吸収層の上に、塗布液1を塗布、乾燥、固化して金属粒子含有層を形成したこと、塗布液3及びUV硬化型樹脂Aを塗布しなかったこと、及び粘着層であるPET−Wを紫外線吸収PETフィルムの塗布液1を塗布していない面に張り合わせたこと以外は、実施例1と同様にして実施例13の熱線遮蔽材及びその貼合せ構造体を作製した。
(実施例14)
実施例1において、塗布液2、塗布液3、及びUV硬化型樹脂Aを塗布しなかったこと、粘着層としてPET−Wに代えて紫外線吸収剤入りPVBフィルムを、紫外線吸収PETフィルムの塗布液1を塗布していない面にラミネーターで張り合わせた以外は、実施例1と同様にして実施例14における熱線遮蔽材を作製した。
得られた熱線遮蔽材の粘着層面を透明ガラス(厚み:3mm)と貼り合わせ、真空状態で90℃、10分間かけて仮圧着し、次いでオートクレーブで130℃、30MPa、30分間かけて本圧着を行い、実施例14における熱線遮蔽材の貼合せ構造体を作製した。
【0102】
(比較例1)
実施例1において、塗布液2を塗布しなかったこと以外は、実施例1と同様にして比較例1の熱線遮蔽材及びその貼合せ構造体を作製した。
【0103】
(比較例2)
実施例1において、塗布液1にゼラチン100質量部をさらに添加したこと以外は、実施例1と同様にして比較例2の熱線遮蔽材及びその貼合せ構造体を作製した。
なお、ゼラチンの添加により、金属粒子の配列が乱れ、面配向性が悪化する(後述する表2参照)。
【0104】
(比較例3)
実施例1において、塗布液1の銀平板分散液B1を銀平板分散物B7に代えたこと以外は、実施例1と同様にして比較例3の熱線遮蔽材及びその貼合せ構造体を作製した。
【0105】
実施例2〜14及び比較例1〜3の金属粒子、及び熱線遮蔽材について、実施例1と同様にして、諸特性を評価した。結果を表1〜2に示す。また、実施例1の耐候性試験前後の透過スペクトルを図6に示し、比較例1の耐候性試験前後の透過スペクトルを図7に示し、実施例1の反射スペクトルを図8に示す。
【0106】
【表1】

【0107】
【表2】

【0108】
表2の結果から、本発明の熱線遮蔽材は、可視光透過性、遮熱性能(日射反射率)、耐久性、耐候性、及び黄変度の評価結果が全て良好であることが分かった。
一方、比較例1より、紫外線吸収層を含まない場合では耐候性試験前後の透過スペクトルが互いに異なることから、紫外線により前記金属平板粒子が変色していることが分かった。また、比較例2より、金属平板粒子の配列が悪いと遮蔽性能が劣ることが分かった。比較例3より、金属平板粒子比率が低く、粒子サイズ分布が大きいと遮蔽性能が劣ることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明の熱線遮蔽材は、可視光透過性及び日射反射率が高く、耐久性及び耐候性に優れ、紫外線による経時的な変色が低減されるので、例えば自動車、バス等の乗り物用フィルムや貼合せ構造体、建材用フィルムや貼合せ構造体などとして、熱線の透過を防止することの求められる種々の部材として好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0110】
1 基材
2 金属粒子含有層
3 金属平板粒子
10 熱線遮蔽材
11 粘着層
12 紫外線吸収層
13 金属粒子含有層
14 基材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の金属粒子を含有する金属粒子含有層と、少なくとも1種の紫外線吸収剤を含有する紫外線吸収層とを有する熱線遮蔽材であって、
前記金属粒子が、略六角形状乃至略円盤形状の金属平板粒子を60個数%以上有し、
前記金属平板粒子の主平面が、前記金属粒子含有層の一方の表面に対して平均して0°〜±30°の範囲で面配向していることを特徴とする熱線遮蔽材。
【請求項2】
粘着層を有し、紫外線吸収層が前記粘着層である請求項1に記載の熱線遮蔽材。
【請求項3】
粘着層を有し、紫外線吸収層が前記粘着層と前記金属粒子含有層の間の層である請求項1に記載の熱線遮蔽材。
【請求項4】
紫外線透過率が5%以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の熱線遮蔽材。
【請求項5】
金属平板粒子の粒度分布における変動係数が30%以下である請求項1から4のいずれかに記載の熱線遮蔽材。
【請求項6】
金属平板粒子の平均粒子径が70nm〜500nmであり、
金属平板粒子のアスペクト比(平均粒子径/平均粒子厚み)が8〜40である請求項1から5のいずれかに記載の熱線遮蔽材。
【請求項7】
金属平板粒子が、少なくとも銀を含む請求項1から6のいずれかに記載の熱線遮蔽材。
【請求項8】
熱線遮蔽材の可視光線透過率が、70%以上である請求項1から7のいずれかに記載の熱線遮蔽材。
【請求項9】
紫外線吸収剤が、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、及びトリアジン系紫外線吸収剤の少なくともいずれかである請求項1から8のいずれかに記載の熱線遮蔽材。
【請求項10】
少なくとも1種の金属酸化物粒子を含有する金属酸化物粒子含有層を更に有する請求項1から8のいずれかに記載の熱線遮蔽材。
【請求項11】
金属酸化物粒子が、錫ドープ酸化インジウム粒子である請求項10に記載の熱線遮蔽材。
【請求項12】
請求項1から11のいずれかに記載の熱線遮蔽材と、ガラス及びプラスチックのいずれかとを貼り合わせたことを特徴とする貼合せ構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−215825(P2012−215825A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−267108(P2011−267108)
【出願日】平成23年12月6日(2011.12.6)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】