説明

熱膨張性組成物

A)(i)ポリシロキサン鎖又は前記鎖のための前駆体を含む樹脂、(ii)必要な場合には有機樹脂、及び、(iii)エポキシ基、アミン基、メルカプタン基、カルボン酸基、アクリロイル基、イソシアナート基、アルコキシシリル基及び無水物基からなる群から選択される少なくとも1つのタイプの官能基を含む結合剤(この場合、前記官能基は、ポリシロキサン鎖又は前記鎖のための前駆体を含む前記樹脂におけるペンダント基及び/又は末端基として、並びに/或いは、前記有機樹脂におけるペンダント基及び/又は末端基として存在し、但し、前記結合剤がアルコキシシリル基を前記官能基の唯一のタイプとして含有する場合、これらのアルコキシシリル基は前記有機樹脂に存在する)と、B)前記官能基と反応し得るか、又は、前記官能基との間における反応を触媒し得る化合物と、C)発泡剤及びチャー形成添加剤とを含む熱膨張性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱膨張性組成物、構造物を保護するためのその使用、及び、前記組成物により被覆される基体に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの材料例えば鋼鉄は、火災においてその強度を急速に失い、機能しなくなる。火災の結果、「高層」オフィスビルの構造的倒壊、石油施設及びガス施設又は他の社会基盤施設の構造的崩壊、並びに、プロセス容器又は配管の破裂は、事故の激化、財産に対する損害、及び、さらに人命の損失という意味において壊滅的となり得る。
【0003】
熱膨張性被覆材は、火災の影響を遅らせるために多くの構造物において使用される。熱膨張性被覆材は、そのような被覆材を適用した基体の温度上昇速度を遅らせる。従って、熱膨張性被覆材は、構造物が火災の熱のために機能しなくなるまでの時間を増大させる。この増し時間で、消防士が火災を消火することができるか、又は、構造物が機能しなくなる前に少なくとも冷却用の水をかけることができるより大きな可能性を得る。
【0004】
熱膨張性被覆材は一般には、ある形態の樹脂性結合剤、例えば、架橋された高温高分子例えばエポキシ樹脂又はビニルトルエン/スチレンアクリル酸高分子、を含有する。樹脂性結合剤により、そのような硬い被覆が形成される。エポキシ樹脂が結合剤に存在する場合、結合剤はまた、火災においてチャーに変換される炭素源を提供する。
【0005】
添加剤物質、典型的にはリンは、通常被覆用組成物に含まれ、(二酸化炭素又は他の副生成物ではなく)チャー(炭化物:char)への炭素質構成成分の変換を高める。加えて、被覆材は「発泡剤(spumific)」と呼ばれる添加物を含有し、火災においてガスを放ち、これにより、チャーを泡に膨らませる。メラミン、メラミンピロホスファート及びアンモニウムポリホスファートは、一般に使用される発泡剤である。
【0006】
これらの被覆材の効力は、従来の断熱材として働く厚い多孔性チャーの泡の、熱の作用に起因する形成に関連づけられる。多くの場合において、このチャーの泡は大きい構造的強度を有しておらず、表面剥離又は侵食によって容易に破壊される。チャーの泡の構造的強度を増大させるために、繊維又はガラス強化材を熱膨張性被覆用組成物に加えることができる。無機繊維及び有機繊維の両方の使用、並びに、ガラス強化材の使用が開示されている。例えば、欧州特許第0568354号を参照のこと。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】欧州特許第0568354号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、繊維の使用を不要にし得る、硬い泡層を生じさせる熱膨張性組成物を提供することである。この目的は、ケイ素含有樹脂を前記組成物中、好ましくは有機樹脂と組合せた組成物中に存在させることによって達成される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、下記のA)、B)及びC)を含む熱膨張性組成物に関する:
A)下記の(i)、(ii)及び(iii)を含む結合剤:
(i)ポリシロキサン鎖又は前記鎖の前駆体を含む樹脂、
(ii)必要に応じて、有機樹脂、及び
(iii)エポキシ基、アミン基、メルカプタン基、カルボン酸基、アクリロイル基、イソシアナート基、アルコキシシリル基及び無水物基からなる群から選択される少なくとも1つのタイプの官能基(この場合、前記官能基は、ポリシロキサン鎖又は前記鎖のための前駆体を含む前記樹脂におけるペンダント基及び/又は末端基として、並びに/或いは、前記有機樹脂におけるペンダント基及び/又は末端基として存在し、但し、前記結合剤がアルコキシシリル基を前記官能基の唯一のタイプとして含有する場合、これらのアルコキシシリル基は前記有機樹脂に存在する);
B)前記官能基と反応し得るか、又は、前記官能基との間における反応を触媒し得る化合物;並びに
C)発泡剤、及びチャー形成添加剤。
【発明を実施するための形態】
【0010】
火災において、結合剤は熱分解され、その結果、ケイ素含有チャーの断熱性泡層がもたらされる。理論にとらわれることを望まないが、ケイ素がチャーに存在することにより、チャーの硬度が増大し、また、断熱特性を得るためのより多くの残留物によってチャーの性能も増大することが考えられる。
【0011】
さらに、本発明による組成物は、熱膨張性被覆材として、また、トップコートとして、また、保護被覆材として作用することができる。従って、本発明による組成物を適用するときには、基体を、例えば、侵食から保護するための別個の保護層を不必要とし得る。また、その保護特性及び良好な審美的外観のために、外観を改善するするための、及び/又は、熱膨張層を大気屋外暴露の影響から保護するための別個のトップコートもまた必要ない。
【0012】
用語「ポリシロキサン」は、線状構造、分岐構造、ラダー構造及び/又はケージ構造を含み、かつ、有機側鎖基が炭素又はヘテロ原子の連結を介してケイ素原子に結合するSi−O骨格を有する高分子であって、ケイ素原子の少なくとも一部が、1個、2個又は3個の酸素原子に結合する高分子として定義される。
【0013】
ケイ素原子の少なくとも一部が、1個、2個又は3個の酸素原子に結合するが、ケイ素原子のすべてではないが、ケイ素原子の一部が4個の酸素原子に結合することが可能である。ポリシロキサンは好ましくはまた、ケイ素原子に結合する加水分解可能な基例えば、アルコキシ基、アセトキシ基、エノキシ基、オキシム基及びアミン基を含有する。
【0014】
ポリシロキサンの上記定義に従えば、本発明による組成物中に存在するポリシロキサン鎖を含む樹脂は下記の(i)又は(ii)のどちらかである:
(i)上記で定義されるようなポリシロキサン、従って、Si−O骨格を有するポリシロキサン、又は、
(ii)1つ又はそれ以上のペンダントポリシロキサン鎖を有する有機骨格を有する樹脂、すなわち、有機側鎖基が炭素又はヘテロ原子の連結を介してケイ素原子に結合するSi−O骨格を有する鎖を有する樹脂(但し、ケイ素原子の少なくとも一部が、1個、2個又は3個の酸素原子に結合する)。前記鎖は、線状構造、分岐構造、ラダー構造及び/又はケージ構造を含む。
【0015】
ポリシロキサン鎖を含む樹脂は好ましくは、数平均分子量Mnを200〜約6,000の範囲に有し、好ましくは500〜4,000の範囲に有する。
【0016】
ポリシロキサン鎖のための前駆体は、1つ又はそれ以上のケイ素原子を有する単量体シロキサンであって、ケイ素原子の少なくとも1つが、(i)1個、2個又は3個の酸素原子に、すなわち、4個未満の酸素原子に結合し、かつ、(ii)少なくとも1つの有機側鎖基にSi−C結合によって結合する単量体シロキサンとして定義され、但し、前記前駆体は、ポリシロキサン鎖を層の乾燥中に形成するために加水分解及び縮合反応によって重合することができる。ただし、前記前駆体が2つ以上のケイ素原子を含有する場合、すべてのケイ素原子ではないが、いくつかのケイ素原子が、ケイ素原子に結合する4つの酸素原子を有し得ることには留意しなければならない。
【0017】
上記で示されたリストから選択される官能基で、アルコキシシラン基以外の官能基を含有しないポリシロキサン前駆体の例として、ビニルトリメトキシシラン、ビニルジメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、イソオクチルトリメトキシシラン、イソオクチルトリメトキシシラン、イソオクチルトリエトキシシラン、ヘキサデシルトリエトキシシラン、(オクタデシル)メチルジメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、(シクロヘキシル)メチルジメトキシシラン及びジシクロペンチルジメトキシシランが挙げられる。
【0018】
上記で示されたリストから選択される官能基で、アルコキシシラン基以外の官能基を含有するポリシロキサン前駆体の例として、ビニルトリアセトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピル−トリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピル−メチルジトリメトキシシラン、N−シクロヘキシル−3−アミノプロピル−トリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−シクロヘキシルアミノメチルメチルジエトキシシラン、N−フェニルアミノメチルトリメトキシシラン、N−シクロヘキシルアミノメチルトリエトキシシラン、N−トリメトキシシリルメチル−O−メチル−カルバマート、N−ジメトキシ(メチル)シリルメチル−O−メチル−カルバマート、3−メタクリルオキシ−プロピルトリメトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルトリアセトキシシラン、メタクリルオキシメチル−トリメトキシシラン、(メタクリルオキシメチル)メチルジメトキシシラン、(メタクリルオキシ−メチル)メチルジエトキシシラン、3−イソシアナートプロピルトリメトキシシラン、(イソシアナートメチル)メチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシ−プロピルトリエトキシシラン及び3−(トリエトキシシリル)プロピルコハク酸無水物が挙げられる。
【0019】
ポリシロキサン鎖を含む樹脂は上記で定義されるようなポリシロキサンであり得、前記官能基は有機側鎖に存在する。代替において、前記樹脂は、1つ又はそれ以上のペンダントポリシロキサン鎖を有する有機骨格を有する。さらなる実施形態において、前記樹脂は、アルコキシシリル基以外の前記官能基のどれも含有せず、しかし、代わりに、前記官能基を含有する有機樹脂とブレンド混合される。後者の実施形態のポリシロキサン鎖のための前駆体が、上記のリストから選択される官能基で、アルコキシシラン基以外の官能基を含有しない上記で述べられた前駆体である。それ以外の実施形態については、上記で述べられた前駆体のすべてを、ポリシロキサンが含有すべき官能基に依存して使用することができる。
【0020】
用語「有機樹脂」は、ヘテロ原子を含有してもよいが、高分子又は低分子のシリコーン構造、シロキサン構造又はシリケート構造を含有しない有機性の樹脂を示す。しかしながら、有機樹脂はアルコキシシリル官能基を含有してもよい。
【0021】
本発明は、下記においてさらに説明される4つの主要実施形態A〜Dを包含する。
【0022】
主要実施形態A
この実施形態において、ポリシロキサン鎖を含む樹脂は、上記で定義されるようなポリシロキサンであり、ポリシロキサンにおける有機側鎖基は前記官能基を含み、かつ、前記樹脂は有機樹脂と予備反応されているか、又は、有機樹脂とブレンド混合されているかのどちらかである。この組成物はさらに、官能基と反応し得るか、又は、官能基との間における反応を触媒し得る化合物を含有する。この化合物はさらに、「硬化剤」として示される。
【0023】
選択されたタイプの官能基の少なくとも1つを含有する、この実施形態において使用される好適なポリシロキサンの例が、下記で述べられるポリシロキサンである:
【化1】

【0024】
2つ以上のタイプの官能基がポリシロキサンに存在する場合、硬化剤はこれらのタイプの官能基の少なくとも2つと反応し得ることが好ましい。硬化剤は、前記官能基と反応し得るポリシロキサンであってもよい。
【0025】
好ましいタイプの硬化剤は、特にポリシロキサンがエポキシ官能基を含有する場合には、アミン系の硬化剤である。好適なアミン系硬化剤の例は、アミノシラン、ポリアミド、高分子のマンニッヒ塩基、アミン官能性のポリプロピレンオキシド又はポリエチレンオキシド、及び、アミン基を含有するポリシロキサンである。
【0026】
好ましいタイプのアミン系硬化剤はアミノシランであり、より好ましくは、ケイ素に結合する少なくとも2つのアルコキシ基を含有するアミノアルキルシランである。好適なアミノアルキルシランの例として、第一級アミン例えば、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン及び3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、第一級第二級アミン例えば、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、第二級アミン例えば、N−メチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、ポリグリコールエーテル修飾アミノシラン、及び、トリアミノ官能性プロピルトリメトキシシランである。2個又は3個のケイ素原子を有する類似するアミノシランもまた使用し得る。
【0027】
他の好適な硬化剤がチオール官能性の硬化剤であり、例えば、ペンタエリトリトール(pentaerithitol)テトラキス(3−メルカプトプロピオナート)、エーテル結合によって有機骨格に結合されるチオール型硬化剤、チオール官能性シラン例えば、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メルカプトプロピルトリエトキシシラン、及び、塩基触媒例えば、DMP30(トリ−[ジメチルアミノメチル]フェノール)との併用で使用されるチオール官能性シリコーンオイルなどである。
【0028】
この主要実施形態によれば、有機樹脂がポリシロキサン又はその前駆体とブレンド混合又は予備反応される。本発明の組成物における使用のために好適な有機樹脂は、エポキシ官能性樹脂、(メタ)アクリラート樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、アルキド、炭化水素樹脂、クロロパラフィン、アルコキシシリル官能性有機樹脂及びホスファート化可塑剤である。
【0029】
好適なエポキシ官能性樹脂には、(i)エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、グリセロール、トリメチロールプロパン、ビスフェノール−A(アセトン及びフェノールの縮合生成物)、ビスフェノール−F(フェノール及びホルムアルデヒドの縮合生成物)、水素化ビスフェノール−A又は水素化ビスフェノール−Fのような多価アルコールに由来するポリグリシジルエーテル、(ii)エポキシ化合物(例えば、エピクロロヒドリン)と、脂肪族ポリカルボン酸又は芳香族ポリカルボン酸(例えば、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸又は二量体化リノール酸)との反応によって形成される、ポリカルボン酸のポリグリシジルエーテル、(iii)エポキシ化されたオレフィン性不飽和脂環式物質(例えばエポキシ脂環式エーテル及びエポキシ脂環式エステル)、(iv)オキシアルキレン基を含有するエポキシ樹脂、(v)エピハロヒドリン(例えばエピクロロヒドリン)を、アルデヒドと一価フェノール又は多価フェノールとの縮合生成物(例えばフェノールホルムアルデヒド縮合物)と反応することによって調製されるエポキシノボラック樹脂、及び、(vi)それらの混合物が挙げられる。エポキシ官能性樹脂は好ましくは、エポキシ当量重量を100g/eq〜5,000g/eqの範囲に有し、より好ましくは180g/eq〜1,000g/eqの範囲に有する。
【0030】
好適な(メタ)アクリラート樹脂には、末端のアクリラート基又はメタクリラート基を有する樹脂が挙げられる。好適な(メタ)アクリラート官能性樹脂の例として、ウレタンアクリラート、エポキシ樹脂に由来するアクリラートエステル、ポリエーテルアクリラート、ポリエステルアクリラート、メラミン樹脂アクリラート、ポリアミドアクリラート、ペンダントアクリル基を有するアクリル高分子、及び、シリコーンアクリラートが挙げられる。
【0031】
有機樹脂及びポリシロキサンは、ブレンド混合物として、この主要実施形態による組成物に存在してもよく、又は、有機樹脂及びポリシロキサンは予備反応させられていてもよい。ブレンド混合物として使用される場合、有機樹脂及びポリシロキサンは好ましくは、1:10〜10:1の重量比でブレンド混合され、より好ましくは1:5〜5:1の重量比でブレンド混合される。
【0032】
ポリシロキサン又はその前駆体は、様々な方法で例えば、(i)脱アルコール縮合、(ii)ポリシロキサン(前駆体)に存在する官能基の一部を、有機樹脂における適切な反応基と反応させること、又は、(iii)ヒドロシリル化で、有機樹脂と予備反応させることができる。脱アルコール反応を、有機樹脂及びポリシロキサン(前駆体)の混合物を触媒の存在下で加熱することによって行うことができる。反応温度は好ましくは50℃〜130℃の範囲であり、より好ましくは70℃〜110℃の範囲である。反応は好ましくは、ポリシロキサン(前駆体)の重縮合反応を防止するために実質的に無水の条件のもと、約1時間〜約15時間行われる。好適な触媒の例として、有機塩基(例えば、アミン)、酸(酸ホスファート)、金属例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、亜鉛、アルミニウム、チタン、コバルト、ゲルマニウム、スズ、鉛、アンチモン、ヒ素、セリウム、ホウ素、カドミウム及びマンガンのような金属の酸化物、それらの有機酸塩、ハロゲン化物又はアルコキシドが挙げられる。
【0033】
主要実施形態B
この実施形態において、ポリシロキサン鎖を含む樹脂は、上記で定義されるようなポリシロキサンであり、ポリシロキサンにおける有機側鎖基は前記官能基を含む。この実施形態による組成物はさらに、前記官能基のための硬化剤を含有する。
【0034】
この主要実施形態による組成物における硬化剤は好ましくは、(i)ポリシロキサン、及び、(ii)有機樹脂から選択される。硬化剤は、ポリシロキサン鎖を含む樹脂に存在する官能基のタイプの少なくとも1つと反応し得る官能基を含有しなければならない。2つ以上のタイプの官能基が前記樹脂に存在する場合、硬化剤はこれらのタイプの官能基の少なくとも2つと反応し得ることが好ましい。
【0035】
この実施形態によれば、ポリシロキサン鎖を含む樹脂と、硬化剤とがともに、ポリシロキサンであってもよい。好適なポリシロキサンとして主要実施形態Aにおいて言及される樹脂もまた、結合剤樹脂として、また、硬化剤としての両方で、この実施形態Bにおいて好適である。しかしながら、結合剤樹脂及び硬化剤に存在する官能基は相補的でなければならず、すなわち、互いに反応性でなければならない。
【0036】
この実施形態による組成物において硬化剤として好適に使用され得る有機樹脂は、エポキシ官能性樹脂、(メタ)アクリラート樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、アルキド、炭化水素樹脂、クロロパラフィン及びホスファート化可塑剤である。
【0037】
好適なエポキシ官能性樹脂として、(i)エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、グリセロール、トリメチロールプロパン、ビスフェノール−A(アセトン及びフェノールの縮合生成物)、ビスフェノール−F(フェノール及びホルムアルデヒドの縮合生成物)、水素化ビスフェノール−A又は水素化ビスフェノール−Fのような多価アルコールに由来するポリグリシジルエーテル、(ii)エポキシ化合物(例えばエピクロロヒドリン)と、脂肪族ポリカルボン酸又は芳香族ポリカルボン酸(例えば、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸又は二量体化リノール酸)との反応によって形成される、ポリカルボン酸のポリグリシジルエーテル、(iii)エポキシ化されたオレフィン性不飽和脂環式物質(例えばエポキシ脂環式エーテル及びエポキシ脂環式エステル)、(iv)オキシアルキレン基を含有するエポキシ樹脂、(v)エピハロヒドリン(例えば、エピクロロヒドリン)を、アルデヒドと一価フェノール又は多価フェノールとの縮合生成物(例えば、フェノールホルムアルデヒド縮合物)と反応することによって調製されるエポキシノボラック樹脂、及び、(vi)それらの混合物が挙げられる。エポキシ官能性樹脂は好ましくは、エポキシ当量重量を100g/eq〜5,000g/eqの範囲に有し、より好ましくは180g/eq〜1,000g/eqの範囲に有する。
【0038】
好適な(メタ)アクリラート樹脂には、末端のアクリラート基又はメタクリラート基を有する樹脂が含まれる。好適な(メタ)アクリラート官能性樹脂の例として、ウレタンアクリラート、エポキシ樹脂に由来するアクリラートエステル、ポリエーテルアクリラート、ポリエステルアクリラート、メラミン樹脂アクリラート、ポリアミドアクリラート、ペンダントアクリル基を有するアクリル高分子、及び、シリコーンアクリラートが挙げられる。
【0039】
主要実施形態C
この実施形態において、ポリシロキサン鎖を含む樹脂は、1つ又はそれ以上のペンダントポリシロキサン鎖を有する有機骨格を有する;官能基が、有機骨格又はポリシロキサン鎖におけるペンダント基又は末端基として存在する。この組成物はさらに、前記官能基のための硬化剤を含有する。
【0040】
この実施形態のポリシロキサン鎖を含む樹脂は、有機樹脂例えばエポキシ官能性樹脂又は(メタ)アクリラート樹脂と、ポリシロキサン又はその前駆体との反応生成物である。
【0041】
好適なエポキシ官能性有機樹脂には、(i)エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、グリセロール、トリメチロールプロパン、ビスフェノール−A(アセトン及びフェノールの縮合生成物)、ビスフェノール−F(フェノール及びホルムアルデヒドの縮合生成物)、水素化ビスフェノール−A又は水素化ビスフェノール−Fのような多価アルコールに由来するポリグリシジルエーテル、(ii)エポキシ化合物(例えばエピクロロヒドリン)と、脂肪族ポリカルボン酸又は芳香族ポリカルボン酸(例えば、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸又は二量体化リノール酸)との反応によって形成される、ポリカルボン酸のポリグリシジルエーテル、(iii)エポキシ化されたオレフィン性不飽和脂環式物質(例えばエポキシ脂環式エーテル及びエポキシ脂環式エステル)、(iv)オキシアルキレン基を含有するエポキシ樹脂、(v)エピハロヒドリン(例えばエピクロロヒドリン)を、アルデヒドと一価フェノール又は多価フェノールとの縮合生成物(例えば、フェノールホルムアルデヒド縮合物)と反応することによって調製されるエポキシノボラック樹脂、及び、(vi)それらの混合物が挙げられる。エポキシ官能性有機樹脂は好ましくは、エポキシ当量重量を100g/eq〜5,000g/eqの範囲に有し、より好ましくは180g/eq〜1,000g/eqの範囲に有する。
【0042】
好適な(メタ)アクリラート樹脂には、末端のアクリラート基又はメタクリラート基を有する樹脂が挙げられる。好適な(メタ)アクリラート樹脂の例として、ウレタンアクリラート、エポキシ樹脂に由来するアクリラートエステル、ポリエーテルアクリラート、ポリエステルアクリラート、メラミン樹脂アクリラート、ポリアミドアクリラート、ペンダントアクリル基を有するアクリル高分子、及び、シリコーンアクリラートが挙げられる。
【0043】
この実施形態による組成物はまた、硬化剤を含有する。硬化剤は、ポリシロキサン鎖を含む樹脂に存在する官能基のタイプの少なくとも1つと反応し得る官能基を含有しなければならない。2つ以上のタイプの官能基が前記樹脂に存在する場合、硬化剤はこれらのタイプの官能基の少なくとも2つと反応し得ることが好ましい。硬化剤は、前記官能基と反応し得るポリシロキサンであってもよい。
【0044】
好ましいタイプの硬化剤は、特に結合剤樹脂がエポキシ官能基を含有するときには、アミン系の硬化剤である。好適なアミン系硬化剤の例は、アミノシラン、ポリアミド、高分子のマンニッヒ塩基、アミン官能性のポリプロピレンオキシド/ポリエチレンオキシド、及び、アミン基を含有するポリシロキサンである。
【0045】
好ましいタイプのアミン系硬化剤はアミノシラン系化合物であり、より好ましくは、ケイ素に結合する少なくとも2つのアルコキシ基を含有するアミノアルキルシランである。好適なアミノアルキルシランの例として、第一級アミン(例えば、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン及び3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン)、第一級アミン(例えば、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン)、第二級アミン(例えば、N−メチル−、又は、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、ポリグリコールエーテル修飾されたアミノシラン、及び、トリアミノ官能性プロピルトリメトキシシラン)である。2個又は3個のケイ素原子を有する類似するアミノシラン系化合物もまた使用することができる。
【0046】
他の好適な硬化剤はチオール官能性の硬化剤、例えば、ペンタエリトリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオナート)、エーテル結合によって有機骨格に結合されるチオール型硬化剤、チオール官能性シラン例えば、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メルカプトプロピルトリエトキシシラン、及び、塩基触媒例えば、DMP30(トリ−[ジメチルアミノメチル]フェノール)、との併用で使用されるチオール官能性シリコーンオイルである。
【0047】
さらなる有機樹脂を、ポリシロキサン鎖又はその前駆体を含む樹脂とブレンド混合してもよい。
【0048】
主要実施形態D
この主要実施形態によれば、アルコキシシリル基は別にして、官能基が、ポリシロキサン鎖又はその前駆体を含む樹脂に存在しない。その代わり、結合剤がさらに有機樹脂を含み、かつ、官能基が前記有機樹脂に存在する。この組成物はさらに、前記官能基のための硬化剤を含有する。
【0049】
この実施形態において、ポリシロキサン鎖を含む樹脂は好ましくは、ポリシロキサンである。
【0050】
この主要実施形態において使用され得る好適なポリシロキサンの例として、分子量が400を超える液状のメトキシ−、エトキシ−、及びシラノール−官能性ポリシロキサンであり、例えば、DC3037及びDC3074(ともに、Dow Corningから得られる)、又は、SY231、SY550及びMSE100(すべてがWackerから得られる)などである。
【0051】
この主要実施形態による組成物の結合剤に存在する有機樹脂は、エポキシ基、アミン基、メルカプタン基、カルボン酸基、アクリロイル基、イソシアナート基、アルコキシシリル基又は無水物基から選択される少なくとも1つの官能基を含有する。好ましくは、有機樹脂はエポキシ官能性樹脂又は(メタ)アクリラート樹脂である。
【0052】
好適なエポキシ官能性樹脂には、(i)エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、グリセロール、トリメチロールプロパン、ビスフェノール−A(アセトン及びフェノールの縮合生成物)、ビスフェノール−F(フェノール及びホルムアルデヒドの縮合生成物)、水素化ビスフェノール−A又は水素化ビスフェノール−Fのような多価アルコールに由来するポリグリシジルエーテル、(ii)エポキシ化合物(例えばエピクロロヒドリン)と、脂肪族ポリカルボン酸又は芳香族ポリカルボン酸(例えば、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸又は二量体化リノール酸)との反応によって形成される、ポリカルボン酸のポリグリシジルエーテル、(iii)エポキシ化されたオレフィン性不飽和脂環式物質(例えば、エポキシ脂環式エーテル及びエポキシ脂環式エステル)、(iv)オキシアルキレン基を含有するエポキシ樹脂、(v)エピハロヒドリン(例えばエピクロロヒドリン)を、アルデヒドと一価フェノール又は多価フェノールとの縮合生成物(例えばフェノールホルムアルデヒド縮合物)と反応することによって調製されるエポキシノボラック樹脂、及び、(vi)それらの混合物が挙げられる。エポキシ官能性樹脂は好ましくは、エポキシ当量重量を100g/eq〜5,000g/eqの範囲に有し、より好ましくは180g/eq〜1,000g/eqの範囲に有する。
【0053】
好適な(メタ)アクリラート樹脂には、末端のアクリラート基又はメタクリラート基を有する樹脂が挙げられる。好適な(メタ)アクリラート官能性樹脂の例として、ウレタンアクリラート、エポキシ樹脂に由来するアクリラートエステル、ポリエーテルアクリラート、ポリエステルアクリラート、メラミン樹脂アクリラート、ポリアミドアクリラート、ペンダントアクリル基を有するアクリル高分子、及び、シリコーンアクリラートが挙げられる。
【0054】
加えて、組成物は1つ又はそれ以上のさらなる有機樹脂を含有してもよく、この場合、有機樹脂は官能基を含有してもよく、又は含有しなくてもよい。
【0055】
この実施形態による組成物はまた、硬化剤を含有する。硬化剤は、有機樹脂に存在する官能基のタイプの少なくとも1つと反応し得る官能基を含有しなければならない。2つ以上のタイプの官能基が前記樹脂に存在する場合、硬化剤はこれらのタイプの官能基の少なくとも2つと反応し得ることが好ましい。
【0056】
好ましいタイプの硬化剤は、特に結合剤樹脂がエポキシ官能基を含有するときには、アミン系の硬化剤である。好適なアミン系硬化剤の例は、アミノシラン、ポリアミド、高分子のマンニッヒ塩基、アミン官能性のポリプロピレンオキシド/ポリエチレンオキシドである。
【0057】
好ましいタイプのアミン系硬化剤はアミノシラン系化合物であり、より好ましくは、ケイ素に結合する少なくとも2つのアルコキシ基を含有するアミノアルキルシランである。好適なアミノアルキルシランの例として、第一級アミン(例えば、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン及び3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン)、第一級第二級アミン(例えば、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン)、第二級アミン(例えば、N−メチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、ポリグリコールエーテル修飾されたアミノシラン、及び、トリアミノ官能性プロピルトリメトキシシラン)である。2個又は3個のケイ素原子を有する類似するアミノシラン系化合物もまた使用することができる。
【0058】
他の好適な硬化剤は、チオール官能性の硬化剤(例えば、ペンタエリトリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオナート))、エーテル結合によって有機骨格に結合されるチオール型硬化剤、チオール官能性シラン(例えば、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メルカプトプロピルトリエトキシシラン)及び、塩基触媒(例えば、DMP30(トリ−[ジメチルアミノメチル]フェノール))との併用で使用されるチオール官能性シリコーンオイルである。
【0059】
すべての実施形態に共通する特徴
本発明のすべての実施形態による組成物は1つ又はそれ以上の熱膨張性成分を含有する。1つの必須熱膨張性成分は発泡剤である。発泡剤は、発泡剤が火災の熱で分解する際に膨張ガスをもたらす。発泡剤は、樹脂性結合剤が軟らかくなる温度ではあるが、チャーが形成される温度よりも低い温度でガスを放つことが望ましい。このようにして、形成されるチャーは膨張され、より良好な断熱材である。発泡剤例えばメラミン、メラミンホルムアルデヒド、メチロール化メラミン、ヘキサメトキシメチルメラミン、メラミンモノホスファート、メラミンビホスファート、メラミンポリホスファート、メラミンピロホスファート、ウレア、ジメチルウレア、ジシアンジアミド、グアニルウレアホスファート、グリシン又はアミンホスファート、を使用することが可能である。前記の物質は、熱にさらされて分解するとき、窒素ガスを放出する。熱にさらされて二酸化炭素又は水蒸気を放出する化合物もまた使用することができる。加熱時に分解する際に水を遊離する発泡剤は、化合物例えばホウ酸及びホウ酸誘導体である。膨張性グラファイトもまた、これらの系のための発泡剤として使用し得る。
【0060】
発泡剤は好ましくは、組成物の総重量に基づいて1wt%〜20wt%の量で、より好ましくは1wt%〜10wt%の量で、最も好ましくは3wt%〜7wt%の量で本発明による組成物に存在する。
【0061】
本発明のすべての実施形態による組成物はさらに、チャー形成添加剤を熱膨張性成分として含み得る。しかしながら、発泡剤自身が既に、チャー形成添加剤として作用する場合(例えば、アンモニウムポリホスファートなど)、さらなるチャー形成添加剤は必要とし得ない。従って、本発明の成分C)はただ1つのだけの成分であってもよい。従って、この場合、本発明は、より少ない成分により達成することができる。好ましくは、そのようなただ1つだけの成分はアンモニウムポリホスファートである。
【0062】
チャー形成添加剤は、組成物が火にさらされるとき、チャーの形成を促進させる。ルイス酸が、この機能を果たすと考えられる。好ましくは、リン化合物例えば、各種リン酸アンモニウム、ホスホナトシラン、より好ましくはアンモニウムポリホスファート、又は、リン酸が使用される。他のチャー形成添加剤を、リン含有化合物の代わりに、又は、リン含有化合物に加えて使用することもまた可能である。アンモニウムポリホスファートは、必要な場合にはトリス−(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌラート(THEIC)と併せて使用することができる。THEICを使用する場合、THEIC対アンモニウムホスファートの比率は好ましくは10:1〜1:10であり、より好ましくは3:1〜1:3である。
【0063】
チャー形成添加剤は好ましくは、組成物の総重量に基づいて5wt%〜30wt%の量で本発明による組成物に存在し、より好ましくは10wt%〜25wt%の量で存在し、最も好ましくは1wt%〜20wt%の量で存在する。
【0064】
本発明のすべての実施形態による組成物に存在し得るさらなる熱膨張性成分は、さらなる炭素源、すなわち、任意の有機樹脂に対して付加的な炭素源である。好適なさらなる炭素源の例には、ペンタエリトリトール、ジペンタエリトリトール、ポリビニルアルコール、デンプン、セルロース粉末、炭化水素樹脂、クロロパラフィン及びホスファート化可塑剤である。クロロパラフィン以外の難燃剤もまた、配合において用いることができる(例えば、ホウ酸亜鉛など)。
【0065】
本発明のすべての実施形態による組成物は好ましくは10wt%〜80wt%の、より好ましくは15wt%〜65wt%の、最も好ましくは25wt%〜45wt%の結合剤を含有する。
【0066】
官能基と反応し得るか、又は、官能基との間における反応を触媒し得る化合物(すなわち、硬化剤)は、好ましくは、1wt%〜20wt%の量で、より好ましくは5wt%〜15wt%で、最も好ましくは7wt%〜12wt%で存在する。
【0067】
組成物は好ましくは1wt%〜70wt%の熱膨張性成分を含有し、より好ましくは1wt%〜60wt%の、最も好ましくは5wt%〜50wt%の熱膨張性成分を含有する。
【0068】
すべての重量百分率は、組成物全体の重量に基づく。
【0069】
本発明のすべての実施形態による組成物はまた、Si−OR縮合のための触媒として作用する化合物を含有し得る。一般に、組成物は、そのような触媒が存在しない場合でさえ、2時間〜20時間で不粘着性にまで周囲の温度及び湿度の条件のもとで硬化することができるが、触媒は、好ましくは、より速い硬化をもたらし得る。
【0070】
Si−OR縮合のための触媒の一例はアルコキシチタン化合物であり、例えば、チタンキレート化合物、例えば、チタンビス(アセチルアセトナート)ジアルコキシド例えばチタンビス(アセチルアセトナート)ジイソプロポキシド、チタンビス(アセトアセタート)ジアルコキシド例えば、チタンビス(エチル−アセトアセタート)ジイソプロポキシド、若しくは、アルカノールアミンチタナート例えばチタンビス(トリエタノールアミン)ジイソプロポキシド、又は、キレートでないアルコキシチタン化合物例えば、テトラ(イソプロピル)チタナート又はテトラブチルチタナートである。チタンに結合するアルコキシ基を含有するそのようなチタン化合物は単独では触媒として作用しないかもしれない。これは、チタンアルコキシド基が加水分解性であり、また、触媒がSi−O−Tiの結合によって硬化組成物に結合し得るからである。硬化組成物におけるそのようなチタン成分の存在は、一層より大きい熱安定性を与えることにおいて好都合であり得る。チタン化合物は、例えば、結合剤の0.1重量%〜5重量%で使用することができる。ジルコニウム又はアルミニウムの対応するアルコキシド化合物もまた、触媒として有用である。
【0071】
好適な触媒の別の一例が有機スズ化合物であり、例えば、ジアルキルスズジカルボキシラート、例えば、ジブチルスズジラウラート又はジブチルスズジアセタートである。そのような有機スズ触媒は、例えば、結合剤の重量に基づいて0.05重量%〜3重量%で使用することができる。
【0072】
他の効果的な触媒は、ビスマスの有機塩例えば、カルボキシナート、例えば、ビスマストリス(ネオデカノアート)である。他の金属例えば、亜鉛、アルミニウム、ジルコニウム、スズ、カルシウム、コバルト若しくはストロンチウムの有機塩及び/又はキレート、例えば、ジルコニウムアセチルアセトナート、酢酸亜鉛、亜鉛アセチルアセトナート、オクタン酸亜鉛、オクタン酸第一スズ、シュウ酸第一スズ、カルシウムアセチルアセトナート、酢酸カルシウム、2−エチルヘキサン酸カルシウム、コバルトナフテナート、カルシウムドデシルベンゼンスルホナート又は酢酸アルミニウムなど、1,8−ジ−アザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エンもまた、触媒として効果的であり得る。
【0073】
本発明の組成物はさらに、溶媒及び/又は顔料を含有し得る。好適な溶媒の例はジ−メチルベンゼン及びトリ−メチルベンゼンである。
【0074】
好適な顔料の例は、二酸化チタン(白色顔料)、有色顔料例えばカーボンブラック、1つ若しくはそれ以上の強化用顔料例えば、繊維例えばセラミック繊維やガラス繊維や炭素繊維、1つ若しくはそれ以上の耐食性顔料例えば、硅灰石、若しくは、クロム酸塩、モリブデン酸塩若しくはホスホン酸塩、並びに/又は、フィラー顔料例えば、重晶石、タルク若しくは炭酸カルシウムである。
【0075】
組成物はまた、1つ又はそれ以上の増粘剤例えば、微細粒子シリカ、ベントナイト粘土、水素化ヒマシ油又はポリアミドワックス、1つ又はそれ以上の可塑剤、顔料分散剤、安定剤、離型剤、表面改質剤、難燃剤、抗菌剤、防かび剤、低密度フィラー、吸熱性フィラー、チャー促進剤、溶融助剤、及び均展剤を含有し得る。
【0076】
繊維を組成物に存在させ得るが、それらの存在は、硬いチャーを得るために必要ではない。従って、本発明による組成物は繊維を含有しないことが好ましい。
【0077】
組成物がナノ粘土及びグラファイトの両方を含まないことがさらに好ましい。
【0078】
組成物はまた、粒子サイズが約1ミクロン以下、好ましくは約3nm〜500nmである非晶質シリカの微細な粒子を含有し得る。これらの粒子により、熱膨張性被覆材の密度を低下させ得る。好適な微細シリカ粒子の例には、フレームシリカ(flame silica)、アークシリカ(arc silica)、沈降シリカ及び他のコロイドシリカが含まれる。好ましくは、微細シリカ粒子はフュームドシリカの粒子である。より好ましくは、フュームドシリカは、表面処理されたシリカであり、例えば、ジメチルジクロロシラン又はヘキサメチルジシラザンで処理されたシリカである。一層より好ましくは、非晶質シリカ粒子は、ポリジメチルシロキサンオイルで処理されたフュームドシリカ粒子である。
【0079】
本発明による組成物は好ましくは0.1wt%〜10wt%の非晶質シリカ粒子を含有し、より好ましくは0.5wt%〜5wt%の非晶質シリカ粒子を含有する。シリカ粒子は好ましくは、約20m/g〜500m/gの表面積を有する。
【0080】
本発明の組成物は一般には周囲温度、例えば、−5℃〜40℃で硬化し、従って、温度が低いときには熱硬化させることが実際的でない大きい構造物に適用するために好適である。本発明の組成物は、そうすることが所望される場合、例えば、40℃又は50℃から、100℃又は130℃に至るまでの高い温度で硬化させることができる。ケイ素に結合するアルコキシ基の加水分解は水分の存在に依存する:ほとんどすべての気候において、空気中の水分が十分であり、しかし、周囲温度よりも低い(sub-ambient)温度で硬化させるとき、又は、非常に低い湿度(砂漠)の場所で硬化させるときには、制御された量の水分を組成物に加えることが必要となる場合がある。そのような水は好ましくは、ケイ素に結合するアルコキシ基を含有するいずれの化合物とも別個に包装される。
【0081】
本発明のすべての実施形態による組成物は好ましくは、組成物の総重量に基づいて少なくとも50重量%(wt%)の、より好ましくは少なくとも80wt%の、最も好ましくは少なくとも85wt%の固形物含有量を有する。固形物含有量は、硬化したときに放出されるであろう溶媒を除いて配合物における溶媒の理論的計算に基づく。
【0082】
塗料に存在するような組成物の揮発性有機物含有量(VOC)は、好ましくは(すなわち、硬化前には)1リットルの組成物あたり250g/lを超えず、最も好ましくは100g/l未満の溶媒である。
【0083】
上記の値は、完全な組成物の値を示す。従って、組成物が2パック型組成物の形態を有する場合、上記の値は、2つのパックが混合された後での組成物の固形物含有量及びVOCを示す。
【0084】
本発明のすべての実施形態による組成物は様々な基体に適用し得る。金属基体に適用されること、より具体的にはスチール基体に適用されることが特に好適である。チャーの強度のために、熱膨張剤はまた、構造物を、ジェット火炎から、すなわち、高温の、大きい熱流束の、高速度の炎から保護することができる。従って、本発明による組成物のいくつかはまた、耐ジェット火炎帯域において適用し得る。
【0085】
組成物は、熱膨張性組成物を適用するための従来の方法によって、例えば、噴霧又はこて塗布などによって適用することができる。
【0086】
本発明は、下記の実施例を参照して説明される。これらは、本発明を例示するために意図され、しかし、その範囲をいかなる様式においても限定するものとして解釈してはならない。
【実施例】
【0087】
a)試験した被覆材
下記の対照樹脂系を調べた:
i)対照1−ビスフェノールA液状エポキシ(DER331)+ポリアミドアミン硬化剤(INCA380)
ii)対照2−トリメチロールプロパントリアクリラート(Sartomer351)+ポリアミドアミン硬化剤(INCA830)
【0088】
すべての原料の詳細が付表1に示される。
【0089】
ビスフェノールA系は、市販の炭化水素系熱膨張性被覆材において使用される樹脂のより代表的なものであり、そのようなものとして、繊維の存在及び非存在の両方で試験した。
【0090】
被覆材を、PVC40%、100%の樹脂化学量組成(stoichiometry)、アンモニウムポリホスファート:ペンタエリトリトール:メラニンの比率を4:1:1(重量比)で、被覆する際に配合した。塗料は100%の固形分であり、すなわち、溶媒が導入されなかった。顔料着色を、高速度分散装置を使用して樹脂に混ぜ入れ、顔料を2つのパック(樹脂及びエポキシ剤)に適切に分けた。
【0091】
繊維を被覆材に加えたさらなる1組の被覆材もまた試験した。3つの繊維;0.8wt%の炭素繊維、0.8wt%の岩石繊維、0.8wt%のケイ酸マグネシウム繊維、のブレンド混合物を加えた。
【0092】
名目上同等な被覆材を、本発明の様々な実施形態を包含するために意図される範囲のシロキサン結合剤に基づいて作製した。
実施形態A:官能性ポリシロキサン(HP2000)+有機樹脂(Sartomer361)+硬化剤(DER331)。
実施形態Bi:官能性ポリシロキサン(HP2000)+有機硬化剤(DER331)。
実施形態Bii:官能性ポリシロキサン(HP2000)+エポキシ官能性ポリシロキサン(Silikopon EF)。
実施形態C:ペンダントシロキサン基を有する有機樹脂(Silikopon EF)+アミン系硬化剤(Inca380)。
実施形態D:アルコキシシラン官能性を有するシロキサン(3074中間体)+官能性有機樹脂(Eponex1510)+硬化剤(アミノシランSilquest A−1100)+触媒(Fascat4200)。
【0093】
これらの樹脂を、繊維の存在及び非存在により、また、実施形態Bi及び実施形態Cについては50%繊維負荷の存在及び非存在により評価した。
【0094】
被覆材配合物を付表2に示す。
【0095】
b)実施された試験
被覆材を、(BS476に従う)炭化水素加熱曲線のもとで稼動する1.5mの炉で試験した。破損時間(被覆されたスチールパネルの裏面が400℃に達するとき)を記録した。
【0096】
被覆材を12×12インチのスチールプレートに4mmの厚さでエアーレススプレーによって適用した。強化用メッシュを使用しなかった。5つの熱電対をそれぞれのスチールプレートの裏に取り付け、平均の熱電対読取りを採用した。
【0097】
試験において、被覆プレートを垂直に装着する。従って、炉試験では、チャーの接着特性/粘着特性の評価がもたらされる。不良な接着/粘着が認められるとき、膨張した被覆がパネルから分離し得る。粘着性が、チャーの強度に関連づけられると考えられる。
【0098】
加えて、チャーの強度を、2つの方法で、すなわち、a)指先硬度(finger hardness)試験を使用して、また、b)市販の力ゲージを使用して測定した。両方の試験において、チャーを、室温にまで冷えた後で測定する。両方の試験では、チャーの耐圧縮性を測定する。第1の試験では、チャーの硬度を指によって評価した。すなわち、硬度が、0(不良)から5(良好)までの尺度で評価される。第2の試験のために、力ゲージは、0.25mm/秒でチャー内に押し込まれるMecmesin AFG100ゲージである。浸入する深さの関数としての力を測定する。様々なチャーの強度の比較を可能にするために、チャーの80%圧縮を達成するために要求される力を比較した。
【0099】
力ゲージ試験及び指先硬度試験をまた、詳細が付表2に見出されるアミン官能性シロキサンエポキシ樹脂系を含む難燃材、すなわち、公知でない熱膨張剤に対して行った。この難燃性被覆材はグラファイトのみを含み、発泡剤及びチャー形成添加剤の両方を含まない。難燃性被覆材はまた、樹脂に分散されるナノ粘土のさらなる成分を含有した。
【0100】
c)結果
炉試験の結果を表1にまとめる。
【0101】
繊維を伴う場合及び伴わない場合での本発明によるシロキサン被覆材は、対照に対して(400℃までの時間に関して)少なくとも同等の耐火成績をもたらし、また、いくつかの場合には、破損時間における著しい改善をもたらす。
【0102】
力ゲージによるチャー硬度の結果を表2に示す。チャーの80%圧縮の後における力が記録される。
【0103】
結果は、対照の被覆材は、繊維を含有するときでさえ、非常に低い強度を有することを示す。実際、繊維を含まない場合、対照1は、冷却時に完全に分離した。このことは、その不良な接着/粘着を例示する。難燃性被覆はまた、非常に柔らかであった。本発明のポリシロキサン被覆材は、繊維を全く含まない場合、及び、50%の負荷を有する場合、繊維含有対照及び難燃性被覆材よりもはるかに大きい強度を有する。従って、繊維含有量を本発明によるポリシロキサンにおいて低下させることは依然として、硬いチャーが形成されることを可能にすることもまた示されている。
【表1】

【0104】
ポリシロキサンへの繊維の添加はまた、対照被覆材及び難燃性被覆材と比較して、本発明のポリシロキサン被覆材のはるかに優れた強度を示す。
【0105】
大きい圧縮力が、低圧縮度のもとでさえ現れることが、力ゲージによるチャー硬度測定の期間中に明らかであった。このことは、ポリシロキサンのチャーがはるかにより硬い及び/又は強いというさらなる証拠である。
【表2】

【0106】
チャー硬度の「指先試験」評価を表3にまとめる。
【0107】
結果は、繊維を含まないシロキサン被覆材、及び、50%の繊維負荷を有するシロキサン被覆材が、繊維を含有する対照被覆材よりも強いことを再度示している。
【0108】
本発明のシロキサン被覆材から生じるチャーはまた、脆い層状構造を有した、対照被覆材の生じたチャーとは対照的に、より均一であった。
【表3】

【0109】
これらの実験は、本発明による被覆材が良好な防火をもたらし、かつ、繊維の非存在下において、公知の繊維含有熱膨張性被覆材よりも良好な接着強度及び粘着強度を有するチャーを生じさせ得ることを明瞭に明らかにする。良好なチャー強度を維持し得る被覆材例えば、繊維のより少ない負荷を有する本発明の被覆材はまた、被覆の審美的特徴及び(適用された塗料の効果的な混合比率を維持する)スプレー特性の両方に関して有益であり、これらは、大きい繊維負荷によって悪影響を受ける2つの性質である)。
【表4】

【表5】

対照2の繊維非含有配合物は、試験されなかったとして含まれないことに留意すること。
【表6】

【表7】

【表8】

【表9】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記のA)、B)及びC)を含む熱膨張性組成物:
A)下記の(i)、(ii)及び(iii)を含む結合剤:
(i)ポリシロキサン鎖又は前記鎖のための前駆体を含む樹脂、
(ii)必要に応じて、有機樹脂、及び
(iii)エポキシ基、アミン基、メルカプタン基、カルボン酸基、アクリロイル基、イソシアナート基、アルコキシシリル基及び無水物基からなる群から選択される少なくとも1つのタイプの官能基(この場合、前記官能基は、ポリシロキサン鎖又は前記鎖のための前駆体を含む前記樹脂におけるペンダント基及び/又は末端基として、並びに/或いは、前記有機樹脂におけるペンダント基及び/又は末端基として存在し、但し、前記結合剤がアルコキシシリル基を前記官能基の唯一のタイプとして含有する場合、これらのアルコキシシリル基は前記有機樹脂に存在する);
B)前記官能基と反応し得るか、又は、前記官能基との間における反応を触媒し得る化合物;並びに
C)発泡剤、及びチャー形成添加剤。
【請求項2】
前記結合剤が有機樹脂を含み、ポリシロキサン鎖を含む前記樹脂が、前記官能基を含有する有機側鎖基を有するポリシロキサンであり、かつ、ポリシロキサン鎖を含む前記樹脂が前記有機樹脂と予備反応又はブレンド混合されている、請求項1に記載の熱膨張性組成物。
【請求項3】
ポリシロキサン鎖を含む前記樹脂は、前記官能基を含有する有機側鎖基を有するポリシロキサンである、請求項1に記載の熱膨張性組成物。
【請求項4】
前記官能基と反応し得るか、又は、前記官能基との間における反応を触媒し得る前記化合物が、有機樹脂及びポリシロキサンから選択される、請求項3に記載の熱膨張性組成物。
【請求項5】
前記結合剤が前記有機樹脂を含み、かつ、前記官能基が前記有機樹脂に存在する、請求項1に記載の熱膨張性組成物。
【請求項6】
ポリシロキサン鎖を含む前記樹脂が、1つ又はそれ以上のペンダントポリシロキサン鎖を有する有機骨格を有し、かつ、前記官能基が、前記有機骨格又は前記ポリシロキサン鎖におけるペンダント基又は末端基として存在する、請求項1に記載の熱膨張性組成物。
【請求項7】
前記官能基はエポキシ官能基又はアクリラート官能基である、請求項1から6のいずれか一項に記載の熱膨張性組成物。
【請求項8】
前記官能基と反応し得るか、又は、前記官能基との間における反応を触媒し得る前記化合物が、アミン官能基を含む、請求項7に記載の熱膨張性組成物。
【請求項9】
前記発泡剤はまた、チャー形成添加剤である、請求項1から8のいずれか一項に記載の熱膨張性組成物。
【請求項10】
前記発泡剤はアンモニウムポリホスファートである、請求項9に記載の熱膨張性組成物。
【請求項11】
構造物を火災から保護するための、請求項1から10のいずれか一項に記載される組成物の使用。
【請求項12】
請求項1から10のいずれか一項に記載される組成物を基体の表面に適用し、その後、前記組成物を硬化して層を形成することによって形成される層を含む基体。

【公表番号】特表2012−508288(P2012−508288A)
【公表日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−535114(P2011−535114)
【出願日】平成21年11月6日(2009.11.6)
【国際出願番号】PCT/EP2009/064738
【国際公開番号】WO2010/054984
【国際公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(500286643)アクゾ ノーベル コーティングス インターナショナル ビー ヴィ (67)
【Fターム(参考)】