熱転写受像シートおよびその製造方法
【課題】本発明は、基材シート上に、水系の塗工液を用いて機能性層を含む複数の層を同時に形成することにより高効率で製造可能であり、かつ、基材と機能性層との密着性に優れた熱転写受像シートを提供することを主目的とする。
【解決手段】本発明は、基材シートと、上記基材シート上に形成され、冷却ゲル化剤および機能性材料を含有する機能性層とを有する熱転写受像シートであって、
上記基材シートと上記機能性層との間に、上記基材シート上に直接形成され、冷却ゲル化剤および上記機能性材料を含有するスリップ層が形成されており、かつ、上記機能性層が上記スリップ層上に直接形成されていることを特徴とする、熱転写受像シートを提供することにより、上記課題を解決するものである。
【解決手段】本発明は、基材シートと、上記基材シート上に形成され、冷却ゲル化剤および機能性材料を含有する機能性層とを有する熱転写受像シートであって、
上記基材シートと上記機能性層との間に、上記基材シート上に直接形成され、冷却ゲル化剤および上記機能性材料を含有するスリップ層が形成されており、かつ、上記機能性層が上記スリップ層上に直接形成されていることを特徴とする、熱転写受像シートを提供することにより、上記課題を解決するものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、熱転写方式による印画に用いられる熱転写受像シートおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【０００２】
熱転写を利用した画像の形成方法として、記録材としての熱拡散型染料（昇華型染料）をプラスチックフィルム等の基材シート上に担持させた熱転写シートと、紙やプラスチックフィルム等の別の基材シート上に受容層を設けた熱転写受像シートとを互いに重ね合わせてフルカラー画像を形成する熱拡散型転写方式（昇華型熱転写方式）が知られている。この方法は、熱拡散型染料を色材としているためドット単位で濃度、階調を自由に調節でき、原稿通りのフルカラー画像を受像シート上に鮮明に表現することができるので、デジタルカメラ、ビデオ、コンピューター等のカラー画像形成に応用されている。その画像は、銀塩写真に匹敵する高品質なものである。
【０００３】
熱転写受像シートを得る方法として、例えばグラビアコート等により、基材シート上に多孔質層や受容層を順次形成する方法が知られている。しかしながら、この方法は各層を順次形成する方法であるため、工程数が多くなるといった問題があった。そのため、より少ない工程数で熱転写受像シートを得るため、同時に複数の層を形成する方法等が注目を浴びている。
【０００４】
例えば特許文献１においては、基材上に、断熱層や受像層等の複数の層を同時重層塗布することにより形成した熱転写受像シートが開示されている。具体的には、同時重層塗布の塗布方式としてスライドコート法を用いて、熱転写受像シートを得たことが記載されている（実施例：熱転写受像シート５の作製）。また、特許文献２においては、水性中間層と水性受容層を同時塗布することを特徴とする熱転写受像シートの製造方法が開示されており（請求項１）、さらに、特許文献３においては、水溶性樹脂を最表層に有するインクジェット記録媒体が開示されており（請求項１）、インク受容層用塗布液と塩基性溶液とを同時塗布することについて記載されている。
【０００５】
このように、複数の層を同時に形成することにより、熱転写受像シートを製造する方法は、製造効率や製造コスト等において非常に有利な面がある。しかしながら、その一方でこのような同時多層塗布方法は、塗布時に各層が混合しないように、各層を形成するために用いられる塗工液の粘度を一定の範囲内に調整する必要があるため、塗工液が基材上に濡れ拡がりにくく、均質な塗膜を形成することが困難であるという問題点があった。
この点、同様の多層塗布方法が工業的に用いられている銀塩写真フイルムの製造方法においては、上記のような問題を解消するために、基材に直接に接するように形成される塗膜を形成するために用いられる塗工液の粘度を著しく低くする方法が用いられることがあった（例えば、特許文献４〜６）。しかしながら、熱転写受像シートの製造においてこのような方法を転用すると、基材と塗膜との密着力が低下してしまうという問題点があった。
【０００６】
【特許文献１】特開２００６−８８６９１公報
【特許文献２】特開平６−１７１２４０号公報
【特許文献３】特開２００６−１０３０４０公報
【特許文献４】特開昭５４−１３５０号公報
【特許文献５】特開平１１−２４２３０５号公報
【特許文献６】特開昭５２−１１５２１４号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００７】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであり、基材シート上に、水系の塗工液を用いて機能性層を含む複数の層を同時に形成することにより高効率で製造可能であり、かつ、基材と機能性層との密着性に優れた熱転写受像シートを提供することを主目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【０００８】
上記課題を解決するために本発明は、基材シートと、上記基材シート上に形成され、冷却ゲル化剤および機能性材料を含有する機能性層とを有する熱転写受像シートであって、上記基材シートと上記機能性層との間に、上記基材シート上に直接形成され、冷却ゲル化剤および上記機能性材料を含有するスリップ層が形成されており、かつ、上記機能性層が上記スリップ層上に直接形成されていることを特徴とする、熱転写受像シートを提供する。
【０００９】
本発明によれば上記スリップ層に上記機能性層に含まれる機能性材料と同一の材料が含まれることにより、上記基材と上記機能性層との密着性を向上させることができる。また、本発明によれば上記機能性層と上記基材シートとの間にスリップ層が形成されていることから、例えば、本発明の熱転写受像シートを製造する際に、上記スリップ層を形成するスリップ層形成用塗工液の粘度を上記機能性層を形成する機能性層形成用塗工液の粘度よりも著しく低くし、かつ、基材上に上記スリップ層と上記機能性層とがこの順で積層されるようにスリップ層形成用塗工液の粘度を上記機能性層を形成する機能性層形成用塗工液を同時に塗布することにより、上記スリップ層形成用塗工液によって、上記基材シート上に上記機能性層形成用塗工液が濡れ拡がることを促すことができるため、上記基材シート上に均一な機能性層を形成することができる。
このようなことから、本発明によれば基材シート上に、水系の塗工液を用いて機能性層を含む複数の層を同時に形成することにより高効率で製造可能であり、かつ、基材と機能性層との密着性に優れた熱転写受像シートを提供することができる。
【００１０】
本発明においては、上記機能性層が、上記機能性材料として中空粒子を含有する多孔質層であり、かつ、上記多孔質層上に、染料染着性を有しかつ水系溶媒に分散・溶解可能な受容層形成用樹脂および冷却ゲル化剤を含有する受容層が形成されていてもよい。これにより、本発明の熱転写受像シートの印画感度を向上させることができるからである。
【００１１】
また本発明においては、上記機能性層が、上記機能性材料として樹脂材料を含有するクッション層であり、かつ、上記クッション層上に冷却ゲル化剤および中空粒子を含有する多孔質層が形成されており、さらに上記多孔質層上に染料染着性を有しかつ水系溶媒に分散・溶解可能な受容層形成用樹脂および冷却ゲル化剤を含有する受容層が形成されているものであってもよい。これにより本発明の熱転写受像シートの印画感度をさらに向上させることができるからである。
【００１２】
また本発明においては、上記機能性層が、上記機能性材料として染料染着性を有しかつ水系溶媒に分散・溶解可能な受容層形成用樹脂を含有する受容層であってもよい。
【００１３】
さらに本発明においては、上記スリップ層の厚みが、３μｍ〜３０μｍの範囲内であることが好ましい。スリップ層の厚みが上記範囲内であることにより、例えば、本発明の熱転写受像シートを同時多層塗布方法を用いて作製する際に、上記機能性層を上記基材シート上により均一に形成することが可能になるからである。
【００１４】
また本発明は、冷却ゲル化剤および機能性材料を含む水系の機能性層形成用塗工液と、冷却ゲル化剤および上記機能性材料を含み、粘度が１ｃｐ〜３０ｃｐの範囲内であって、かつ粘度が上記機能性層形成用塗工液よりも低い水系のスリップ層形成用塗工液とを用い、基材シート上に、スリップ層と機能性層とがこの順で積層され、かつ上記基材シート、上記スリップ層および上記機能性層とが互いに接するように、上記機能性層形成用塗工液および上記スリップ層形成用塗工液を上記基材シート上に同時塗布する同時多層塗布工程と、上記同時多層塗布工程において、基材シート上に形成された塗膜を冷却する、冷却処理工程とを有することを特徴とする熱転写受像シートの製造方法を提供する。
【００１５】
本発明によれば、上記スリップ層形成用塗工液の粘度が上記機能性層形成用塗工液の粘度よりも低く、かつ粘度が上記範囲内であることにより、上記同時多層塗布工程において、上記機能性層形成用塗工液を上記基材シート上に均一に塗布することが可能になる。また、本発明によれば、上記スリップ層形成用塗工液に上記機能性層形成用塗工液に用いられる機能性材料が含まれていることにより、本発明によって製造される熱転写受像シートを基材シートと機能性層との密着性に優れたものにできる。
【００１６】
本発明においては、上記機能性層形成用塗工液が、上記機能性材料として中空粒子を含有する水系の多孔質層形成用塗工液であり、かつ、上記同時多層塗布工程が、さらに染料染着性を有しかつ水系溶媒に分散・溶解可能な受容層形成用樹脂および冷却ゲル化剤を含有する水系の受容層形成用塗工液を用い、上記機能性層上に受容層も同時に形成するものであってもよい。これにより本発明によって製造される熱転写受像シートの印画感度を向上させることができるからである。
【００１７】
また本発明においては、上記機能性層形成用塗工液が、上記機能性材料としてスチレン・ブタジエンゴム（ＳＢＲ）を含有するクッション層形成用塗工液であり、かつ上記同時多層塗布工程が、さらに冷却ゲル化剤および中空粒子を含有する水系の多孔質層形成用塗工液と、染料染着性を有しかつ水系溶媒に分散・溶解可能な受容層形成用樹脂および冷却ゲル化剤を含有する水系の受容層形成用塗工液を用い、上記機能性層上に多孔質層および受容層がこの順で積層されるように同時に形成するものであってもよい。これにより本発明によって製造される熱転写受像シートの印加感度をさらに向上させることができるからである。
【００１８】
さらに本発明においては、上記機能性層形成用塗工液が、上記機能性材料として染料染着性を有しかつ水系溶媒に分散・溶解可能な受容層形成用樹脂を含有する水系の受容層形成用塗工液であってもよい。
【発明の効果】
【００１９】
本発明は、基材シート上に、水系の塗工液を用いて機能性層を含む複数の層を同時に形成することにより高効率で製造可能であり、かつ、基材と機能性層との密着性に優れた熱転写受像シートを提供することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【００２０】
以下、本発明の熱転写受像シートおよび熱転写受像シートの製造方法について順に説明する。
【００２１】
Ａ．熱転写受像シート
まず、本発明の熱転写受像シートについて説明する。上述したように本発明の熱転写受像シートは、基材シートと、上記基材シート上に形成され、冷却ゲル化剤および機能性材料を含有する機能性層とを有するものであって、上記基材シートと上記機能性層との間に、上記基材シート上に直接形成され、冷却ゲル化剤および上記機能性材料を含有するスリップ層が形成されており、かつ、上記機能性層が上記スリップ層上に直接形成されていることを特徴とするものである。
【００２２】
このような本発明の熱転写受像シートについて図を参照しながら説明する。図１は本発明の熱転写受像シートの一例を示す概略図である。図１に例示するように、本発明の熱転写受像シート１０は、基材シート１と、上記基材シート１上に形成され、冷却ゲル化剤および機能性材料を含有する機能性層３と、上記基材シート１と上記機能性層３との間に、上記基材シート１上に直接形成され、冷却ゲル化剤および上記機能性材料を含有するスリップ層２とを有するものである。
【００２３】
本発明によれば上記スリップ層に上記機能性層に含まれる機能性材料と同一の材料が含まれることにより、上記基材と上記機能性層との密着性を向上させることができる。また、本発明によれば上記機能性層と上記基材シートとの間にスリップ層が形成されていることから、例えば、本発明の熱転写受像シートを製造する際に、上記スリップ層を形成するスリップ層形成用塗工液の粘度を上記機能性層を形成する機能性層形成用塗工液の粘度よりも著しく低くし、かつ、基材上に上記スリップ層と上記機能性層とがこの順で積層されるようにスリップ層形成用塗工液の粘度を上記機能性層を形成する機能性層形成用塗工液を同時に塗布することにより、上記スリップ層形成用塗工液によって、上記基材シート上に上記機能性層形成用塗工液が濡れ拡がることを促すことができるため、上記基材シート上に均一な機能性層を形成することができる。
このようなことから、本発明によれば基材シート上に、水系の塗工液を用いて機能性層を含む複数の層を同時に形成することにより高効率で製造可能であり、かつ、基材と機能性層との密着性に優れた熱転写受像シートを提供することができる。
【００２４】
本発明の熱転写受像シートは、少なくとも基材シートと、スリップ層と、機能性層とを有するものであり必要に応じて、他の構成を有してもよいものである。
以下、本発明に用いられる各構成について詳細に説明する。
【００２５】
１．機能性層
まず、本発明に用いられる機能性層について説明する。本発明に用いられる機能性層は、後述するスリップ層上に直接形成されるものであり、少なくとも冷却ゲル化剤と機能性材料とを含有するものである。
【００２６】
本発明に用いられる機能性層は、熱転写受像シートに用いられる構成の一つであり、その具体的な構成は本発明に用いられる任意の構成との関係によって決定されるものである。例えば、本発明の熱転写受像シートは熱転写方式によって画像を印画するために用いられるものであることから、染料を受容する受容層が用いられることが必須である。このため、本発明に用いられる機能性層として受容層が用いられない場合は、必ず上記機能性層以外に受容層が用いられることになる。
このように本発明に用いられる機能性層は、他の構成の種類に応じて決定されるものであるが、本発明に用いられる機能性層としては、例えば、受容層、多孔質層、およびクッション層等を挙げることができる。
以下、これらの各層について順に説明する。
【００２７】
（１）受容層
まず、上記受容層について説明する。本発明に用いられる受容層は、上記機能性材料として、染料染着性を有しかつ水系溶媒に分散・溶解可能な受容層形成用樹脂が用いられたものである。すなわち、本発明に用いられる受容層は冷却ゲル化剤と上記受容層形成用樹脂を含有するものである。
【００２８】
ａ．受容層形成用樹脂
上記受容層形成用樹脂としては、染料染着性を有し、かつ水系溶媒に分散・溶解可能なものであれば特に限定されるものではない。
ここで、上記「水系溶媒」とは、水を主成分とする溶媒をいう。水系溶媒における水の割合は、通常６０質量％以上であり、好ましくは７０質量％以上であり、より好ましくは８０質量％以上である。上記水以外の溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、ｎ−プロパノール等のアルコール；エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン等のグリコール類；酢酸エチル、酢酸プロピル等のエステル類；アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類；Ｎ，Ｎ−ジメチルホルムアミド等のアミド類等を例示することができる。
【００２９】
また本発明に用いられる上記受容層形成用樹脂は、ガラス転移温度が２０℃以上であるものが好ましく、３０℃以上であるものがより好ましく、４０℃以上であるものがさらに好ましい。また、上記受容層形成用樹脂はガラス転移温度が１００℃以下であるものが好ましい。このような範囲のガラス転移温度を有する受容層形成用樹脂を用いることにより、特に耐熱性に優れた受容層を得ることができるからである。
【００３０】
このような受容層形成用樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ（メタ）アクリル酸系樹脂、セルロース誘導体系樹脂、または、ポリエーテル系樹脂等を挙げることができる。本発明においては、これらの樹脂のいずれであっても好適に用いることができるが、なかでもポリビニル系樹脂を用いることが好ましい。
【００３１】
本発明に好適に用いられる上記ポリビニル系樹脂としては、例えば、塩化ビニル／酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル／アクリル化合物共重合体、エチレン／塩化ビニル／アクリル酸エステル共重合体、エチレン／酢酸ビニル／塩化ビニル共重合体等を挙げることができる。
【００３２】
上記塩化ビニル／酢酸ビニル共重合体は、塩化ビニルと酢酸ビニルとからなる共重合体であれば特に限定されず、塩化ビニルおよび酢酸ビニルに加えてこれら必須単量体と共重合可能な単量体をも少量重合したものであってもよいが、塩化ビニル／酢酸ビニル２元共重合体であることが好ましい。
【００３３】
上記塩化ビニル／アクリル化合物共重合体は、塩化ビニルとアクリル化合物とからなる共重合体であれば特に限定されず、塩化ビニルおよびアクリル化合物に加えてこれら必須単量体と共重合可能な単量体をも少量共重合したものであってもよいが、塩化ビニル／アクリル化合物２元共重合体であることが好ましい。
なお、本明細書において、「アクリル化合物」とは、（メタ）アクリル酸および／またはそのアルキルエステルを意味する。
【００３４】
上記アクリル化合物としては、例えば、アクリル酸；アクリル酸カルシウム、アクリル酸亜鉛、アクリル酸マグネシウム、アクリル酸アルミニウム等のアクリル酸塩；メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、２−エチルヘキシルアクリレート、２−エトキシエチルアクリレート、２−ヒドロキシエチルアクリレート、ｎ−ステアリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート等のアクリル酸エステル；メタクリル酸；メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ｔ−ブチル、メタクリル酸トリデシル、メタクリル酸シクロヘキシル、ジメタクリル酸トリエチレングリコール、ジメタクリル酸１，３−ブチレン、トリメタクリル酸トリメチロールプロパン等のメタクリル酸エステル等を挙げることができる。
【００３５】
上記エチレン／塩化ビニル／アクリル酸エステル共重合体およびエチレン／酢酸ビニル／塩化ビニル共重合体（以下、各共重合体を総称して、「エチレン／塩化ビニル系共重合体」といもいう。）は、少なくとも、エチレン、塩化ビニルおよびアクリル酸エステルの３種、または、エチレン、酢酸ビニルおよび塩化ビニルの３種の単量体を重合して得られる共重合体であれば特に限定されず、これらの３種の単量体以外に少量の微量単量体をも共重合したものであっても良いが、エチレン／塩化ビニル／アクリル酸エステル３元共重合体またはエチレン／酢酸ビニル／塩化ビニル３元共重合体であることが好ましい。
【００３６】
上記エチレン／酢酸ビニル／塩化ビニル共重合体は、エチレン／酢酸ビニル共重合体（ＥＶＡ）と塩化ビニルとの共重合体であっても良く、該ＥＶＡ／塩化ビニル共重合体としては、ＥＶＡに塩化ビニルをグラフト共重合したものであっても良い。ＥＶＡは、該共重合体における酢酸ビニル単位の全部または一部が鹸化されたものをも含む。
【００３７】
本発明において、上記エチレン／塩化ビニル／アクリル酸エステル共重合体を構成する「アクリル酸エステル」は、アクリル酸エステルに加え、メタクリル酸エステルをも含む概念である。上記アクリル酸エステルとしては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、２−エチルヘキシルアクリレート、２−エトキシエチルアクリレート、２−ヒドロキシエチルアクリレート、ｎ−ステアリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート等を挙げることができ、上記メタクリル酸エステルとしては、例えばメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ｔ−ブチル、メタクリル酸トリデシル、メタクリル酸シクロヘキシル、ジメタクリル酸トリエチレングリコール、ジメタクリル酸−１，３−ブチレン、トリメタクリル酸トリメチロールプロパン等を挙げることができる。
【００３８】
なお、本発明においては、上記受容層形成用樹脂を１種のみを用いてもよく、単量体組成、平均分子量等が異なる２種以上を用いてもよい。
【００３９】
ｂ．冷却ゲル化剤
本発明に用いられる冷却ゲル化剤は、冷却されることによりゲル化する性質を有するものであり、本発明の熱転写受像シートを、基材シート上に、機能性層とスリップ層とを含む複数の層を同時に形成することにより高効率で製造することを可能にするものである。
【００４０】
このような冷却ゲル化剤としては、冷却ゲル化特性を備えるものであれば特に限定されるものではない。なかでも本発明に用いられる冷却ゲル化剤は、水に溶解した状態での１５℃における粘度が８０℃における粘度に対して、３倍以上、特に５倍以上、さらには１０倍以上であるものが好ましい。
【００４１】
本発明に用いられる冷却ゲル化剤としては、例えば、ゼラチン、ポリビニルアルコール、寒天、κ−カラギーナン、λ−カラギーナン、ι−カラギーナン、ペクチン等を挙げることができる。
【００４２】
ここで、上記ゼラチンは、上述したように三重へリックス構造を有するコラーゲンを変性させることによって得られるペプチド鎖からなるものであり、冷却されることにより部分的に上記三重へリックス構造を回復し、回復された三重へリックス構造を起点として三次元ネットワークを形成することにより、冷却ゲル化特性を示すものである。
【００４３】
上記κ−カラギーナン、λ−カラギーナン、および、ι−カラギーナンは、紅藻類海藻から抽出される分子量１０００００〜５０００００程度のガラクトース、３，６−アンヒドロガラクトースを主成分とする天然高分子化合物である。分子内に半エステル型の硫酸基を有することを特徴とするものであり、通常、ローカストビーンガムや、金属塩化合物等の増粘剤が併用されることにより、冷却ゲル化特性を示すものである。
【００４４】
上記ペクチンは、植物の細胞壁を構成する天然多糖類であり、イオン性の化合物と併用されることにより、冷却ゲル化特性を示すものである。
【００４５】
本発明においては、上記冷却ゲル化剤のいずれであっても好適に用いることができる。また、本発明においては、１種類の冷却ゲル化剤のみを用いてもよく、あるいは、２種類以上の冷却ゲル化剤を用いてもよい。
【００４６】
本発明の受容層における冷却ゲル化剤の含有量としては、本発明の熱転写受像シートを製造する際に、受容層に形成するために用いられる受容層形成用塗工液に所望の粘度特性を付与できる範囲内であれば特に限定されるものではない。なかでも本発明においては、冷却ゲル化剤が、受容層形成用樹脂に対して、重量換算で２〜５０の範囲内であることが好ましく、特に２〜３０の範囲内であることが好ましく、さらに２〜２０の範囲内であることが好ましい。冷却ゲル化剤の含有比が上記範囲よりも少ないと、例えば、本発明の熱転写受像シートの製造時に、受容層が隣接する他の層と混合してしまうおそれがあるからである。また、上記範囲よりも多いと、例えば、上記受容層形成用塗工液を上記基材シート上に塗布する際に、スジやムラなどが生じやすくなる場合があるからである。
【００４７】
ｃ．その他
上記以外に、本発明における受容層に添加することができる任意の化合物としては、例えば、離型剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、フィラー、顔料、帯電防止剤、可塑剤、熱溶融性物質等を挙げることができる。
上記離型剤としては、シリコーンオイル、リン酸エステル系化合物、フッ素系化合物等、公知のものが挙げられるが、特に、シリコーンオイルが好ましい。
上記シリコーンオイルとしては、エポキシ変性シリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル、フェニル変性シリコーンオイル、エポキシ・ポリエーテル変性シリコーンオイル、ビニル変性シリコーンオイル、ハイドロジェン変性シリコーンオイル等の変性シリコーンオイルが好ましい。上記離型剤は、上述の受容層形成用樹脂１００質量部に対して、０．５質量部〜３０質量部の範囲内となるように添加されることが好ましい。
【００４８】
ｄ．受容層
本発明に用いられる受容層の厚みは、上記受容層形成用樹脂の種類に応じて所望の印画感度を発現できる範囲内であれば特に限定されるものではないが、なかでも本発明においては、０．５μｍ〜２０μｍの範囲内であることが好ましく、特に１μｍ〜２０μｍの範囲内であることが好ましく、さらに１μｍ〜１５μｍの範囲内であることが好ましい。
【００４９】
（２）多孔質層
次に本発明に用いられる多孔質層について説明する。本発明に用いられる多孔質層は、上記機能性材料として中空粒子が用いられたものである。すなわち、本発明に用いられる多孔質層は少なくとも冷却ゲル化剤と中空粒子とを含有するものである。このような多孔質層は、本発明の熱転写受像シートを用いて画像を形成する際に、サーマルヘッドから受容層に加えられた熱が、基材シート等へ伝熱することによって損失されることを防止することができる。これにより本発明の熱転写受像シートの印画感度を向上させることができるため、本発明においては多孔質層が好適に用いられる。
なお、上記機能性層として当該多孔質層が用いられる場合は、多孔質層上に別途受容層が形成されることになる。
【００５０】
ａ．中空粒子
本発明に用いられる中空粒子は多孔質層に断熱性を付与する機能を有するものである。また、本発明に用いられる中空粒子は、多孔質層にクッション性を付与する機能を有するものでもある。
【００５１】
本発明に用いられる中空粒子としては、多孔質層に所望の断熱性を付与できるものであれば特に限定されるものではない。したがって、本発明に用いられる中空粒子は発泡粒子であってもよく、あるいは、非発泡粒子であってもよい。また、上記発泡粒子は、独立発泡粒子であってもよく、あるいは、連続発泡粒子であってもよい。さらに、本発明に用いられる中空粒子は、樹脂等から構成される有機系中空粒子であってもよく、ガラス等から構成される無機系中空粒子であってもよい。また、上記中空粒子は、架橋中空粒子であってもよい。
【００５２】
上記中空粒子を構成する樹脂としては、例えば、架橋スチレン−アクリル樹脂等のスチレン系樹脂、アクリロニトリル−アクリル樹脂等の（メタ）アクリル系樹脂、フェノール系樹脂、フッ素系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエーテル系樹脂等を挙げることができる。
【００５３】
上記中空粒子の平均粒径は、中空粒子を構成する樹脂の種類等に応じて、多孔質層に所望の断熱性およびクッション性を付与できる範囲であれば特に限定されるものではないが、通常、０．１μｍ〜１５μｍの範囲内であることが好ましく、特に０．１μｍ〜１０μｍの範囲内であることが好ましい。平均粒径が小さすぎると中空粒子の使用量が増えコストが高くなり、平均粒径が大きすぎると、平滑な多孔質層を形成することが困難になるからである。
【００５４】
本発明において、多孔質層に含まれる中空粒子の量としては、所望の断熱性およびクッション性を有する多孔質層を得ることができれば特に限定されるものではないが、例えば３０質量％〜９０質量％の範囲内であることが好ましく、なかでも５０質量％〜８０質量％の範囲内であることが好ましい。含有量が少なすぎると、多孔質層における空隙が少なくなり、充分な断熱性およびクッション性が得られない場合があり、含有量が多すぎると、接着性が劣るからである。
【００５５】
また本発明において、多孔質層中に含有される中空粒子と、後述する冷却ゲル化剤との割合は、所望の断熱性を有する多孔質層を形成することができれば特に限定されるものではない。なかでも、本発明においては、冷却ゲル化剤が、中空粒子層塗工液中の固形分１００に対して、重量換算で１０〜５０の範囲内であることが好ましく、特に１０〜４０の範囲内であることが好ましく、さらに１２〜４０の範囲内であることが好ましい。中空粒子と冷却ゲル化剤の含有比が上記範囲内であることにより、断熱性に優れた多孔質層を形成することができるからである。
【００５６】
ｂ．冷却ゲル化剤
上記多孔質層に用いられる冷却ゲル化剤については、上記「（１）受容層」の項において説明したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
【００５７】
ｃ．任意の化合物
本発明に用いられる多孔質層は、少なくとも上記冷却ゲル化剤および中空粒子を含有するものであるが、必要に応じて任意の化合物を含むものであってもよい。上記任意の化合物として多孔質層に含有させることができるものとしては、例えば、多孔質層形成用バインダー、ノニオン系シリコーン系等の界面活性剤、イソシアネート化合物等の硬化剤、濡れ剤、および、分散剤等を挙げることができる。
【００５８】
上記多孔質層形成用バインダーとしては、通常、水系樹脂が用いられる。このような水系樹脂としては、例えば、アクリル系ウレタン樹脂等のポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオイキサイド、ポリビニルピロリドン、プルラン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、デキストラン、デキストリン、ポリアクリル酸及びその塩、寒天、κ−カラギーナン、λ−カラギーナン、ι−カラギーナン、カゼイン、キサンテンガム、ローカストビーンガム、アルギン酸、アラビアゴム、特開平７−１９５８２６号公報及び同７−９７５７号公報に記載のポリアルキレノキサイド系共重合ポリマー、水溶性ポリビニルブチラール、あるいは、特開昭６２−２４５２６０号公報に記載のカルボキシル基やスルホン酸基を有するビニルモノマーの単独重合体や共重合体等を挙げることができる。また、上記樹脂の２種類以上を組み合わせて用いても良い。
【００５９】
ｄ．多孔質層
本発明に用いられる多孔質層は、本発明の熱転写受像シートを用いて画像を形成する際に、サーマルヘッドから受容層に加えられた熱が、基材シート等へ伝熱することによって損失されることを防止する断熱性を有するものである。ここで本発明に用いられる多孔質層が備える断熱性は、本発明の熱転写受像シートの用途等に応じて適宜調整することができるものである。
ここで、多孔質層の断熱性は、例えば、多孔質層の厚みを変更することにより任意の範囲に調整することができる。
【００６０】
また、上記多孔質層の断熱性は、多孔質層の空隙率によっても制御することができる。ここで、本発明に用いられる多孔質層の空隙率は、１５％〜８０％の範囲内であることが好ましい。
なお、上記空隙率は、（中空粒子の空隙率）×（多孔質層における中空粒子の含有率）で表される値を指すものとする。
【００６１】
本発明に用いられる多孔質層の厚みは１０μｍ〜１００μｍの範囲内であることが好ましく、１０μｍ〜５０μｍの範囲内であることがより好ましい。また、上記多孔質層の密度は、例えば０．１ｇ／ｃｍ３〜０．８ｇ／ｃｍ３の範囲内、なかでも０．２ｇ／ｃｍ３〜０．７ｇ／ｃｍ３の範囲内であることが好ましい。
【００６２】
本発明に用いられる多孔質層は、単一の層からなる構成を有するものであってもよく、あるいは、複数の層が積層された構成を有するものであってもよい。ここで、複数の層が積層された構成を有する多孔質層としては、同一組成の層が積層された構成を有するものであってもよく、あるいは、異なる組成の層が積層された構成を有するものであってもよい。なかでも本発明に用いられる多孔質層は、組成の異なる２層が積層された構成を有するものであることが好ましい。このような構成とすることにより、さらに機能的な多孔質層を得ることができるからである。
【００６３】
本発明に用いられる多孔質層が２層構造である場合の一例としては、上記多孔質層が、基材シート側から、中空粒子ａを含有する多孔質層Ａと、および上記中空粒子ａよりも中空率の小さな中空粒子ｂを含有する多孔質層Ｂとが積層された構成を有するものを挙げることができる。上記多孔質層としてこのような構成を有するものを用いることにより、印画時に、濃度ムラやハイライト部の白抜けを防止することができるという利点がある。
【００６４】
（３）クッション層
次に、本発明に用いられるクッション層について説明する。本発明に用いられるクッション層は、上記機能性材料として樹脂材料が用いられたものである。すなわち、本発明に用いられるクッション層は、冷却ゲル化剤と、樹脂材料を含有するものである。
【００６５】
ａ．樹脂材料
本発明に用いられる樹脂材料としては、所望のクッション性を示すクッション層を形成できるものであれば特に限定されるものではない。また、本発明においては所望のクッション性を達成するために上記樹脂材料を２種類以上用いてもよい。本発明に用いられる樹脂材料としては、例えば、中密度・低密度ポリエチレン、直鎖状ポリエチレン、ポリエチレンビニルアセテート共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体（ＥＭＡＡ）、エチレン・メチルメタクリレート共重合体（ＥＭＭＡ）、ポリプロピレン、アイオノマー、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体等を挙げることができる。
【００６６】
ｂ．冷却ゲル化剤
上記クッション層に用いられる冷却ゲル化剤については、上記「（１）受容層」の項において説明したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
【００６７】
ｃ．任意の化合物
上記クッション層には、上述した樹脂材料および冷却ゲル化剤以外に他の任意の化合物が含まれていてもよい。このような任意の化合物としては、例えば、ノニオン系シリコーン系等の界面活性剤、イソシアネート化合物等の硬化剤、濡れ剤、および分散剤等を挙げることができる。
【００６８】
ｄ．クッション層
本発明に用いられるクッション層の弾性としては、本発明の熱転写受像シートの用途等に応じて、適宜決定されるものであり特に限定されるものではない。また、本発明に用いられるクッション層の厚みとしては、上述した樹脂材料の種類等に応じて、所望のクッション性を達成することができるものであれば特に限定されるものではない。なかでも本発明に用いられるクッション層の厚みは、１μｍ〜２０μｍの範囲であることが好ましく、２μｍ〜１０μｍの範囲であることがより好ましく、３μｍ〜５μｍであることがさらに好ましい。クッション層の厚みが上記範囲よりも少ないと所望のクッション性を達成することができないからである。また、クッション層厚みが上記範囲よりも多いとカール発生やコスト高となる可能性があるためである。
【００６９】
２．スリップ層
次に、本発明に用いられるスリップ層について説明する。本発明に用いられるスリップ層は、後述する基材シート上に直接形成されるものであり、少なくとも冷却ゲル化剤と、上記機能性層に含まれる機能性材料とを含有するものである。
以下、本発明に用いられるスリップ層について詳細に説明する。
なお、スリップ層に用いられる冷却ゲル化剤については、上記「１．機能性層」の項において説明したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
【００７０】
上記スリップ層に用いられる機能性材料は、上述した機能性層に含まれる機能性材料と同一の材料である。したがって、上記スリップ層に含まれる機能性材料は、上記機能性層の種類よって適宜決定されることになる。ここで、機能性材料の詳細については上記「１．機能性層」の項において説明したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
【００７１】
上記スリップ層中における上記機能性材料の含有量としては、後述する基材シートと上記機能性層との密着性を所望の範囲内にできる程度であれば特に限定されるものではなく、機能性材料の種類に応じて適宜決定されるものである。しかしながら、本発明に用いられるスリップ層は本発明の熱転写受像シートを製造する工程において、上記機能性層を形成ために用いられる機能性層形成用塗工液が基材シート上に濡れ拡がることを促す機能を発現することができるものであるため、上記機能性材料の含有量は通常、上記機能性層におけるそれよりも低いものとなる。なかでも本発明においては、上記スリップ層中における機能性材料の含有量は、全固形分に対して、５質量％〜６０質量％の範囲内であることが好ましく、１５質量％〜５０質量％の範囲内であることがより好ましく、２５質量％〜４０質量％の範囲内であることがさらに好ましい。全固形分に対する含有量がこれより少ないと本発明の熱転写受像シートにおいて、機能性材料の添加効果が十分に得られず、機能性層と基材の密着性をあげる効果が不十分になる場合があるからである。逆に含有量がこれより多いと、冷却ゲル化剤、その他の添加剤の添加量が少なく、セット性の低減や、基材とスリップ層の密着不良が発生しやすくなる場合があるからである。
【００７２】
本発明に用いられるスリップ層の厚みは、本発明の熱転写受像シートを製造する際に、上記機能性層を形成ために用いられる機能性層形成用塗工液、が基材シート上に濡れ拡がることを促す機能を発現することができる範囲内であれば特に限定されるものではない。なかでも本発明におけるスリップ層の厚みは、０．１μｍ〜２μｍの範囲内であることが好ましい。スリップ層は他の層に比較して水の割合が大きくなるため、厚みが上記範囲よりも厚いと、スリップ層を形成する際に塗膜の乾燥適正が劣化する場合があるからである。逆にスリップ層がこれより薄いと、本発明におけるスリップ層の機能を十分に発現できなかったり、あるいは、均一なスリップ層を形成することが困難になる場合があるからである。
【００７３】
３．基材シート
次に、本発明に用いられる基材シートについて説明する。本発明に用いられる基材シートは、上述したスリップ層および機能性層を支持するものである。
以下、このような基材シートについて説明する。
【００７４】
本発明に用いられる基材シートとしては、本発明の熱転写受像シートを用いて画像を形成する際の印画温度等に応じて、所望の耐熱性を備えるものであれば特に限定されるものではないが、具体的には、レジンコート紙、樹脂製フィルム基材、および紙製基材等を挙げることができ、なかでもレジンコート紙が好ましい。
【００７５】
レジンコート紙は、通常、基紙の両面に基材樹脂層を積層してなるものである。上記基紙を構成する原紙としては、例えば、天然パルプ、合成パルプ、それらの混合物から抄紙されるパルプ紙等を挙げることができ、なかでも木材パルプを主成分とする紙を用いることが好ましい。また、上記原紙は、必要に応じて後述するカレンダー処理等の従来公知の処理を施したものであってもよい。
【００７６】
さらに、レジンコート紙は必要に応じて、塗布液の濡れ性アップを目的とした、従来公知のプライマ塗工処理や、物理化学的処理を単独で、もしくは合わせて、施しても良い。
従来公知のプライマ塗工処理としてはでんぷん、ガゼイン、ＰＶＡ、セルロース誘導体、ポリアミド、ゼラチン等の親水性樹脂を１種、もしくは、２種以上使用してなる塗工液を塗工することで処理可能である。物理化学的処理としては、コロナ放電処理、プラズマ処理、オゾンガス処理、フレーム処理、予熱処理、除塵埃処理、アルカリ処理などの処理があげられる。
【００７７】
上記基紙は、厚みが１０μｍ〜１０００μｍの範囲内であることが好ましく、５０μｍ〜３００μｍの範囲内であることがより好ましい。
【００７８】
上記基紙は、公知の方法によって作製することができるが、原紙に対してカレンダー処理したものが好ましい。原紙にカレンダー処理をした基紙を用いると、平滑度を向上することができ、得られる熱転写受像シートの光沢感を高めることができるからである。
【００７９】
上記基材樹脂層を形成するための樹脂としては、ネックインが小さく、ドローダウン性が良好な樹脂であることが好ましく、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン系樹脂、ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、アイオノマー樹脂、ナイロン、ポリウレタン等を挙げることができ、耐水性、強度、光沢等に優れたフィルムが得られる点で、ポリオレフィン樹脂が好ましい。
【００８０】
上記ポリオレフィン樹脂としては、例えば高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリペンテン等を挙げることができ、中でも高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレンが好ましく、特にポリプロピレンが好ましい。
【００８１】
上記基材樹脂層は、上記樹脂を１種もしくは２種以上混合して得られるフィルムまたはシートであっても良いし、上記樹脂に加え、顔料、充填剤等を加えて成膜したフィルムまたはシートであっても良い。また、上記樹脂は、改質剤等の添加剤を配合し、接着性を向上させたものであっても良い。上記改質剤としては、例えば、タフマー（三井化学社製）等のオレフィン系コポリマー等を挙げることができる。
【００８２】
上記レジンコート紙は、例えばドライラミネーション、ウェットラミネーション、エクストリュージョン等の公知の積層方法により作製することができる。上記各層は、層間密着力を向上させることを目的として、その表面に適宜プライマー処理やコロナ放電処理を施すことができる。
【００８３】
上記レジンコート紙の厚みは、全体で、例えば１０μｍ〜１０００μｍの範囲内、中でも５０μｍ〜３００μｍの範囲内であることが好ましい。
【００８４】
一方、本発明に用いられる樹脂製フィルム基材としては、例えば、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、セルロース誘導体、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ナイロン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、テトラフルオロエチレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル、ポリビニルフルオライド、テトラフルオロエチレン−エチレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド等を挙げることができる。なかでも本発明においては、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン樹脂を好適に用いることができる。
【００８５】
上記樹脂製フィルム基材の厚みとしては、例えば２０μｍ〜１００μｍの範囲内、中でも、２５μｍ〜６０μｍの範囲内、特に３０μｍ〜５０μｍの範囲内であることが好ましい。
【００８６】
本発明に用いられる紙製基材としては、例えば、コンデンサーペーパー、グラシン紙、硫酸紙、または、サイズ度の高い紙、合成紙（ポリオレフィン系、ポリスチレン系）、上質紙、アート紙、コート紙、キャストコート紙、壁紙、裏打用紙、合成樹脂又はエマルジョン含浸紙、合成ゴムラテックス含浸紙、合成樹脂内添紙、板紙、セルロース繊維紙等を挙げることができる。
【００８７】
上記紙製基材の厚みとしては、例えば８０μｍ〜２００μｍの範囲内、なかでも１００μｍ〜１８０μｍの範囲内、特に１２０μｍ〜１６０μｍの範囲内であることが好ましい。
【００８８】
４．熱転写受像シート
本発明の熱転写受像シートは、上記機能性層の種類に応じて種々の構成を有するものとなる。以下、本発明の熱転写受像シートの各態様について図を参照しながら説明する。
【００８９】
図２は、上記機能性層として受容層が用いられた態様の一例を示す概略図である。図２に例示するように、上記機能性層として受容層が用いられている場合、本発明の熱転写受像シート１０Ａは、基材シート１と、スリップ層２と、受容層４とを有する態様となる。
【００９０】
図３は、上記機能性層として多孔質層が用いられた態様の一例を示す概略図である。図３（ａ）に例示するように、上記機能性層として多孔質層が用いられている場合、本発明の熱転写受像シートＢは、少なくとも基材シート１と、スリップ層２と、多孔質層５と、上記多孔質層５上に形成された受容層４とを有する態様となる。
なお、上記機能性層として多孔質層が用いられた態様としては、図３（ａ）に例示する態様に限られるものではなく、例えば、図３（ｂ）に例示するように、上記多孔質層５と上記受容層４との間にクッション層６が形成されていてもよい。
【００９１】
図４は、上記機能性層としてクッション層が用いられた態様の一例を示す概略図である。図４（ａ）に例示するように、上記機能性層としてクッション層が用いられている場合、本発明の熱転写受像シート１０Ｃは、少なくとも基材シート１と、スリップ層２と、クッション層６と、上記クッション層６上に形成された受容層４とを有するものとなる。
なお、上記機能性層としてクッション層が用いられた態様としては、図４（ａ）に例示する態様に限られるものではなく、例えば、図４（ｂ）に例示するように、クッション層６と上記受容層４との間に多孔質層５が形成されていてもよい。
【００９２】
５．熱転写受像シートの製造方法
本発明の熱転写受像シートは、例えば、後述する「Ｂ．熱転写受像シートの製造方法」の項において説明する方法によって、製造することができる。
【００９３】
Ｂ．熱転写受像シートの製造方法
次に、本発明の熱転写受像シートの製造方法について説明する。本発明の熱転写受像シートの製造方法は、冷却ゲル化剤および機能性材料を含む水系の機能性層形成用塗工液と、冷却ゲル化剤および上記機能性材料を含み、粘度が１ｃｐ〜１５ｃｐの範囲内であって、かつ粘度が上記機能性層形成用塗工液よりも低い水系のスリップ層形成用塗工液とを用い、基材シート上に、スリップ層と機能性層とがこの順で積層され、かつ上記基材シート、上記スリップ層および上記機能性層とが互いに接するように、上記機能性層形成用塗工液および上記スリップ層形成用塗工液を上記基材シート上に同時塗布する同時多層塗布工程と、上記同時多層塗布工程において、基材シート上に形成された塗膜を冷却する、冷却処理工程と、を有することを特徴とするものである。
【００９４】
本発明によれば、上記スリップ層形成用塗工液の粘度が上記機能性層形成用塗工液の粘度よりも低く、かつ粘度が上記範囲内であることにより、上記同時多層塗布工程において、上記機能性層形成用塗工液を上記基材シート上に均一に塗布することが可能になる。また、本発明によれば、上記スリップ層形成用塗工液に上記機能性層形成用塗工液に用いられる機能性材料が含まれていることにより、本発明によって製造される熱転写受像シートを基材シートと機能性層との密着性に優れたものにできる。
【００９５】
本発明の熱転写受像シートの製造方法は、少なくとも上記同時多層塗布工程と、上記冷却処理工程とを有するものである。
以下、本発明に用いられる各工程について順に説明する。
【００９６】
１．同時多層塗布工程
まず、本発明に用いられる同時多層塗布工程について説明する。本工程は、冷却ゲル化剤および機能性材料を含む水系の機能性層形成用塗工液と、冷却ゲル化剤および上記機能性材料を含み、粘度が１ｃｐ〜１５ｃｐの範囲内であって、かつ粘度が上記機能性層形成用塗工液よりも低い水系のスリップ層形成用塗工液とを用い、基材シート上に、スリップ層と機能性層とがこの順で積層され、かつ上記基材シート、上記スリップ層および上記機能性層とが互いに接するように、上記機能性層形成用塗工液および上記スリップ層形成用塗工液を上記基材シート上に同時塗布する工程である。
【００９７】
（１）機能性層形成用塗工液
本工程に用いられる機能性層形成用塗工液は、少なくとも冷却ゲル化剤および機能性材料を含有し、水系溶媒が用いられたものである。また、本工程に用いられる機能性層形成用塗工液は、粘度が後述するスリップ層形成用塗工液の粘度よりも高いものである。
【００９８】
本工程に用いられる機能性層形成用塗工液の粘度としては、後述するスリップ層形成用塗工液の粘度よりも高ければ特に限定されるものではない。なかでも本工程に用いられる機能性層形成用塗工液の粘度は、後述するスリップ層形成用塗工液の粘度との差が０ｃｐ〜８０ｃｐの範囲内の範囲内であることが好ましく、５ｃｐ〜６０ｃｐの範囲内であることがより好ましく、１０ｃｐ〜４０ｃｐの範囲内であることがさらに好ましい。
【００９９】
具体的な機能性層形成用塗工液の粘度は、１ｃｐ〜１００ｃｐの範囲内であることが好ましく、１０ｃｐ〜８０ｃｐの範囲内であることがより好ましく、２０ｃｐ〜５０ｃｐの範囲内であることがさらに好ましい。
ここで、上記粘度は、エー・アンド・ディ社製 音叉式振動型粘度計 ＳＶ−１０を用いて４０℃における粘度を測定した値を意味するものとする。
【０１００】
本工程に用いられる機能性層形成用塗工液は、本発明によって製造する熱転写受像シートの種類に応じ、機能性材料を適宜選択して任意の組成を有する塗工液とすることができる。このような機能性層形成用塗工液としては、例えば、上記機能性材料として受容層形成用樹脂が用いられ、受容層を形成することが可能な水系の受容層形成用塗工液、上記機能性材料として中空粒子が用いられ、多孔質層を形成することが可能な水系の多孔質層形成用塗工液、さらに上記機能性材料として、樹脂材料が用いられ、クッション層を形成することが可能な水系のクッション層形成用塗工液等を挙げることができる。
以下、これらの塗工液について順に説明する。
【０１０１】
ａ．受容層形成用塗工液
本工程に用いられる受容層形成用塗工液は、少なくとも受容層形成用樹脂および冷却ゲル化剤を含有するものであり、水系溶媒が用いられたものである。
ここで、上記受容層形成用樹脂および冷却ゲル化剤については、上記「Ａ．熱転写受像シート」の項において説明したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
【０１０２】
本工程に用いられる受容層形成用塗工液は水系のものであることから、水系溶媒が用いられたものである。ここで、本工程に用いられる「水系溶媒」とは、水を主成分とする溶媒をいう。水系溶媒における水の割合は、通常５０質量％以上であり、好ましくは７０質量％以上であり、より好ましくは８０質量％以上である。本工程に用いられる上記水以外の溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、ｎ−プロパノール等のアルコール類；エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン等のグリコール類；酢酸エチル、酢酸プロピル等のエステル類；アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類；Ｎ，Ｎ−ジメチルホルムアミド等のアミド類等を挙げることができる。
【０１０３】
本工程に用いられる上記受容層形成用塗工液の粘度としては、本工程において基材シート上に同時に塗布されるスリップ層形成用塗工液等の他の塗工液と混合しない程度であれば特に限定されるものではない。なかでも本工程においては、４０℃において１ｍＰａ・ｓ〜４０ｍＰａ・ｓの範囲内であることが好ましく、特に５ｍＰａ・ｓ〜３０ｍＰａ・ｓの範囲内であることが好ましく、さらに７ｍＰａ・ｓ〜２５ｍＰａ・ｓの範囲内であることが好ましい。
【０１０４】
本工程に用いられる受容層形成用塗工液の固形分濃度としては、粘度を所望の程度にできる範囲内であれば特に限定されるものではないが、なかでも１０質量％〜５０質量％の範囲内、なかでも１０質量％〜４０質量％の範囲内であることが好ましい。固形分濃度が低すぎると、溶媒の大半が無駄になる可能性があり、固形分濃度が高すぎると塗工液の保存安定性が低下し、粘度が上昇する可能性があるからである。
【０１０５】
また、上記受容層形成用塗工液中に含まれる冷却ゲル化剤の含有量としては、上記受容層形成用塗工液に所望の粘度特性を付与できる範囲内であれば特に限定されるものではない。なかでも本工程においては、受容層形成用塗工液の固形分重量換算で５０質量％以下であることが好ましく、特に５質量％〜３５質量％の範囲内であることが好ましく、さらに５質量％〜２０質量％の範囲内であることが好ましい。冷却ゲル化剤の含有量が上記範囲よりも少ないと、例えば、本工程においてスリップ層と受容層とが基材シート上に塗布された際に両層が混合してしまうおそれがあるからである。また、上記範囲よりも多いと、例えば、本工程において上記受容層形成用塗工液を上記基材シート上に塗布する際に、スジやムラなどが生じやすくなる場合があるからである。
【０１０６】
上記受容層形成用樹脂および上記冷却ゲル化剤以外に、上記受容層形成用塗工液に添加することができる添加剤としては、例えば離型剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、フィラー、顔料、帯電防止剤、可塑剤、熱溶融性物質、および界面活性剤等を挙げることができる。このような添加剤については、上記「Ａ．熱転写受像シート」の項において説明したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
【０１０７】
ｂ．多孔質層形成用塗工液
本工程に用いられる多孔質層形成用塗工液は、少なくとも中空粒子および冷却ゲル化剤を含み、これらが水系溶媒に分散・溶解されたものである。
ここで、上記多孔質層形成用塗工液に用いられる中空粒子および冷却ゲル化剤については、上記「Ａ．熱転写受像シート」の項において説明したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。また、上記水系溶媒についても上記受容層形成用塗工液に用いられるものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
【０１０８】
本工程に用いられる多孔質層形成用塗工液の粘度としては、本工程において基材シート上に同時に塗布される他の塗工液と混合しない程度であれば特に限定されるものではない。なかでも本工程においては、４０℃において１ｍＰａ・ｓ〜５０ｍＰａ・ｓの範囲であることが好ましく、特に５ｍＰａ・ｓ〜４０ｍＰａ・ｓの範囲内であることが好ましい。
また、２０℃における粘度が０．５Ｐａ・ｓ〜１０Ｐａ・ｓの範囲であることが好ましく、特に１Ｐａ・ｓ〜７Ｐａ・ｓの範囲内であることが好ましい。
【０１０９】
なお、上記粘度は、例えばエー・アンド・ディ社製 音叉型振動式粘度計 ＳＶ−１０を用いて測定することができる。
【０１１０】
本工程に用いられる多孔質層形成用塗工液の固形分濃度としては、粘度を所望の程度にできる範囲内であれば特に限定されるものではないが、なかでも１０質量％〜５０質量％の範囲内、なかでも１０質量％〜４０質量％の範囲内であることが好ましい。固形分濃度が低すぎると、溶媒の大半が無駄になる可能性があり、固形分濃度が高すぎると、塗工液の保存安定性が低下し、粘度が上昇する可能性があるからである。
【０１１１】
上記多孔質層形成用塗工液中に含まれる冷却ゲル化剤の含有量としては、上記多孔質層形成用塗工液に所望の粘度特性を付与できる範囲内であれば特に限定されるものではない。なかでも本工程においては、多孔質層形成用塗工液の固形分重量換算で５０質量％以下であることが好ましく、特に５質量％〜３５質量％の範囲内であることが好ましく、さらに５質量％〜２０質量％の範囲内であることが好ましい。冷却ゲル化剤の含有量が上記範囲よりも少ないと、例えば、本工程において上記多孔質層と上記受容層とが基材シート上に塗布された際に、両層が混合してしまうおそれがあるからである。また、上記範囲よりも多いと、例えば、本工程において上記多孔質層形成用塗工液を上記基材シート上に塗布する際に、スジやムラなどが生じやすくなる場合があるからである。
【０１１２】
さらに、上記多孔質層形成用塗工液に含まれる中空粒子の固形分濃度としては、所望の断熱性およびクッション性を有する多孔質層を得ることができる範囲内であれば特に限定されるものではないが、例えば２０質量％〜９０質量％の範囲内、なかでも４０質量％〜８０質量％の範囲内であることが好ましい。含有量が少なすぎると、多孔質層における空隙が少なくなり、充分な断熱性およびクッション性が得られない場合があり、含有量が多すぎると接着性が劣る場合や、表面の平滑性が損なわれる場合があるからである。
【０１１３】
本工程に用いられる多孔質層形成用塗工液には、上記中空粒子および冷却ゲル化剤以外の他の添加剤が含まれていてもよい。このような他の添加剤としては、多孔質層形成用バインダー、ノニオン系シリコーン系等の界面活性剤、イソシアネート化合物等の硬化剤、濡れ剤、および、分散剤等を挙げることができる。
ここで、これらの添加剤については上記「Ａ．熱転写受像シート」の項において説明したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
【０１１４】
ｃ．クッション層形成用塗工液
本工程に用いられるクッション層形成用塗工液は、少なくとも樹脂材料および冷却ゲル化剤を含み、これらが水系溶媒に溶解・分散されたものである。
ここで、上記樹脂材料については上記「Ａ．熱転写受像シート」の項において説明したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。また、上記水系溶媒については、上記受容層形成用塗工液に用いられるものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
【０１１５】
本工程に用いられるクッション層形成用塗工液の粘度としては、本工程において基材シート上に同時に塗布される他の塗工液と混合しない程度であれば特に限定されるものではない。なかでも本工程においては、４０℃において１ｍＰａ・ｓ〜５０ｍＰａ・ｓの範囲であることが好ましく、特に５ｍＰａ・ｓ〜４０ｍＰａ・ｓの範囲内であることが好ましい。
また、２０℃における粘度が０．５Ｐａ・ｓ〜１０Ｐａ・ｓの範囲であることが好ましく、特に１Ｐａ・ｓ〜７Ｐａ・ｓの範囲内であることが好ましい。
【０１１６】
なお、上記粘度は、例えばエー・アンド・ディ社製 音叉型振動式粘度計 ＳＶ−１０を用いて測定することができる。
【０１１７】
本工程に用いられるクッション層形成用塗工液の固形分濃度としては、粘度を所望の程度にできる範囲内であれば特に限定されるものではないが、なかでも１０質量％〜５０質量％の範囲内、なかでも１０質量％〜４０質量％の範囲内であることが好ましい。固形分濃度が低すぎると、溶媒の大半が無駄になる可能性があり、固形分濃度が高すぎると、塗工液の保存安定性が低下し、粘度が上昇する可能性があるからである。
【０１１８】
上記クッション層形成用塗工液中に含まれる冷却ゲル化剤の含有量としては、上記多孔質層形成用塗工液に所望の粘度特性を付与できる範囲内であれば特に限定されるものではない。なかでも本工程においては、クッション層形成用塗工液の固形分重量換算で５０質量％以下であることが好ましく、特に５質量％〜３５質量％の範囲内であることが好ましく、さらに５質量％〜２０質量％の範囲内であることが好ましい。冷却ゲル化剤の含有量が上記範囲よりも少ないと、例えば、本工程において多孔質層とスリップ層とが基材シート上に塗布された際に、両層が混合してしまうおそれがあるからである。また、上記範囲よりも多いと、例えば、本工程において上記クッション層形成用塗工液を上記基材シート上に塗布する際に、スジやムラなどが生じやすくなる場合があるからである。
【０１１９】
さらに、上記クッション層形成用塗工液に含まれる樹脂材料の固形分濃度としては、所望のクッション性を有するクッション層を得ることができる範囲内であれば特に限定されるものではないが、例えば、クッション層形成用塗工液の固形分中、５０質量％〜９０質量％の範囲内であることが好ましく、６０質量％〜９０質量％の範囲内であることがより好ましく、７０質量％〜９０質量％の範囲内であることがさらに好ましい。
【０１２０】
本工程に用いられるクッション層形成用塗工液には、上記樹脂材料および冷却ゲル化剤以外の他の化合物が含まれていてもよい。このような他の化合物としては、ノニオン系シリコーン系等の界面活性剤、イソシアネート化合物等の硬化剤、濡れ剤、および分散剤等を挙げることができる。
【０１２１】
（２）スリップ層形成用塗工液
次に本工程に用いられるスリップ層形成用塗工液について説明する。本工程に用いられるスリップ層形成用塗工液は、水系溶媒が用いられ、冷却ゲル化剤および、上述した機能性層形成用塗工液に含まれる機能性材料を含み、粘度が１ｃｐ〜３０ｃｐの範囲内であって、かつ粘度が上記機能性層形成用塗工液よりも低いものである。
以下、このようなスリップ層形成用塗工液について説明する。
【０１２２】
なお、スリップ層形成用塗工液に用いられる冷却ゲル化剤および水系溶媒については、上記「（１）機能性層形成用塗工液」の項において説明したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
【０１２３】
本工程に用いられるスリップ形成用塗工液の粘度は、上記機能性層形成用塗工液よりも低く、かつ、１ｃｐ〜３０ｃｐの範囲内であれば特に限定されるものではない。なかでも本工程に用いられるスリップ層形成用塗工液の粘度は、４ｃｐ〜２６ｃｐの範囲内であることがより好ましく、８ｃｐ〜２２ｃｐの範囲内であることがさらに好ましい。
ここで、上記粘度は、エー・アンド・ディ社製 音叉式振動型粘度計 ＳＶ−１０を用いて４０℃における粘度を測定した値を意味するものとする。
【０１２４】
スリップ層形成用塗工液における機能性材料と、冷却ゲル化剤、その他の添加剤からなる全固形分の含有量は、概塗布液中の固形分濃度として１質量％〜２０質量％であることが好ましく、４質量％〜１５質量％であることがより好ましく、６質量％〜１２質量％であることがさらに好ましい。全固形分に対する含有量がこれより少ないと形成された受像紙において、スリップ層の塗布効果が十分に得られず、機能性層と基材の密着性をあげる効果が十分ではない。逆に含有量がこれより多いと、一般に粘度が必要以上に増大することとなり、スリップ層が基材シート表面に濡れ拡がることが困難となる。
【０１２５】
また、上記スリップ層形成用塗工液中に含まれる冷却ゲル化剤の含有量としては、上記スリップ層形成用塗工液に所望の粘度特性を付与できる範囲内であれば特に限定されるものではない。なかでも本工程においては、スリップ層形成用塗工液の固形分重量換算で４０質量％〜９５質量％の範囲内であることが好ましく、特に５０質量％〜８５質量％の範囲内であることが好ましく、さらに６０質量％〜７５質量％の範囲内であることが好ましい。
【０１２６】
なお、上記スリップ層形成用塗工液に用いられる機能性材料は、上述した機能性層形成用塗工液に用いられるもの同一の材料であるため、上記機能性材料の種類に応じて適宜決定されることになる。
【０１２７】
（３）基材シート
次に、本工程に用いられる基材シートについて説明する。本工程に用いられる基材シートは、本工程おいて形成される塗膜を支持する機能を有するものである。
ここで、本工程に用いられる基材シートについては、上記「Ａ．熱転写受像シート」の項において説明したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
【０１２８】
（４）同時多層塗布方法
次に、本工程において上記機能性層形成用塗工液と上記スリップ層形成用塗工液とを上記基材シート上に塗布する方法について説明する。本工程においては、基材シート上に、上記機能性層形成用塗工液と、上記スリップ層形成用塗工液とを同時に塗布する方法が用いられる。すなわち、本工程においてはスリップ層と機能性層とがこの順で積層され、かつ上記基材シート、上記スリップ層および上記機能性層とが互いに接するように、上記機能性層形成用塗工液および上記スリップ層形成用塗工液を上記基材シート上に同時塗布する方法が用いられる。
【０１２９】
本工程において上記基材シート上に、上記機能性層形成用塗工液と上記スリップ層形成用塗工液とを上述したような態様で塗布する方法としては、各層が交じり合うことなく、均一な厚みで塗布することができる方法であれば特に限定されるものではない。なかでも本工程においては、通常、各層を形成する塗工液を上下に重ねた状態のままスライドさせて塗布するスライドコート法が用いられる。
【０１３０】
ここで、スライドコート法とは、例えば、図５に示すように、熱転写受像シートの各層を構成する複数の塗工液１１〜１３を上下に重ねた状態のまま、バックロール１４に巻きつけた基材シート１５に塗布する方法である。塗工品質の観点から見ると、スライドコート法は、膜厚均一性に優れ、回転部がないため塗工液の飛散による品質不良が発生しにくく、摩擦部がないため塗布部での原反切れの発生によるロスが発生しにくいという利点を有する。また、塗工液のハンドリング性の観点から見ると、スライドコート法は、塗工液の濃度、粘度、組成が変化しにくく、反応性が高く経時的に変化する塗工液を用いることができ、さらに塗工液を使い切ることができることから無駄が生じにくく、また、高固形分塗工液を用いることができるため、溶媒使用量を削減することができるという利点を有する。
【０１３１】
本工程において上記基材シート上に上記機能性層形成用塗工液および上記スリップ層形成用塗工液を同時塗布する態様としては、上記機能性層形成用塗工液の種類や本発明によって製造する熱転写受像シートの種類等に応じて適宜決定されるものである。このような態様としては特に限定されるものではないが、なかでも本工程に用いられる具体的な態様としては、次のような例を挙げることができる。
【０１３２】
第１の例は、上記機能性層形成用塗工液が、上記機能性材料として中空粒子を含有する多孔質層形成用塗工液である例である。このような例においては、本工程は、さらに染料染着性を有しかつ水系溶媒に分散・溶解可能な受容層形成用樹脂および冷却ゲル化剤を含有する水系の受容層形成用塗工液を用い、上記機能性層上に受容層も同時に形成するものであってもよい。これにより本発明によって製造される熱転写受像シートの印画感度を向上させることができるからである。
【０１３３】
第２の例は、上記機能性層形成用塗工液が、上記機能性材料としてスチレン・ブタジエンゴム（ＳＢＲ）を含有するクッション層形成用塗工液である例である。このような例においては、本工程は、さらに冷却ゲル化剤および中空粒子を含有する水系の多孔質層形成用塗工液と、染料染着性を有しかつ水系溶媒に分散・溶解可能な受容層形成用樹脂および冷却ゲル化剤を含有する水系の受容層形成用塗工液を用い、上記機能性層上に多孔質層および受容層がこの順で積層されるように同時に形成するものであってもよい。これにより本発明によって製造される熱転写受像シートの印加感度をさらに向上させることができるからである。
【０１３４】
第３の例は、上記機能性層形成用塗工液が、上記機能性材料として染料染着性を有しかつ水系溶媒に分散・溶解可能な受容層形成用樹脂を含有する受容層形成用塗工液である例である。
【０１３５】
なお、本工程においては少なくとも上記機能性層形成用塗工液および上記スリップ層形成用塗工液が同時に塗布されることになるが、塗布時に両塗工液が互いに混合しないように、通常、隣接する塗工液間の表面張力の差が一定の範囲内となるように調整される。
【０１３６】
２．冷却処理工程
次に、本発明に用いられる冷却処理工程について説明する。本工程は、上記同時多層塗布工程において、基材シート上に形成された塗膜を冷却する工程である。
【０１３７】
本工程において基材シート上に形成された塗膜を冷却する方法としては、上記塗膜を所望の温度に冷却できる方法であれば特に限定されるものではない。このような方法としては、例えば、冷却された基材シート上に、上記塗膜を塗布する方法、上記基材シートを搬送するロールの表面を冷却し、基材シートを介して上記塗膜を冷却する方法、上記塗膜に冷風を吹き付ける方法、上記塗膜が形成された基材シートを所望の温度以下の室温に調整された冷却ゾーンを通過させる方法等を挙げることができる。なかでも本工程においては冷却された基材シート上に、上記塗膜を塗布する方法を用いることが好ましい。このような方法によれば上記基材シート上に上記塗膜が塗布された直後に、当該塗膜を強制冷却することができるため、上記塗膜を構成する複数の層が混合することを防止できるからである。
【０１３８】
本工程において、上記塗膜を冷却する温度としては、上記塗膜を構成する各層の粘度を、各層が互いに混合しない程度に向上させることができる範囲であれば特に限定されるものではない。また、本工程における冷却温度は、上述した冷却ゲル化剤の種類にも依存するものである。なかでも本工程においては、冷却温度は０℃〜３０℃の範囲であることが好ましく、特に０℃〜２５℃の範囲内であることが好ましく、さらに３℃〜２０℃の範囲内であることが好ましい。
【０１３９】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【０１４０】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
【０１４１】
１．実施例１
基材シート１としてＲＣペーパー（ＳＴＦ−１５０、三菱製紙社製）を用意し、下記組成のスリップ層形成用塗工液Ａおよび多孔質層形成用塗工液および受容層形成用塗工液を、上記基材シートにこの順で積層されるように、スライド塗布機により同時重層塗布した。なお、各層のウエット膜厚は、スリップ層形成用塗工液Ａ２０μｍ、多孔質層形成用塗工液１００μｍ、および受容層形成用塗工液４０μｍとした。また、乾燥後の膜厚はそれぞれ１μｍ、３０μｍ、および１０μｍであった。
【０１４２】
（スリップ層形成層用塗工液Ａ）
・中空粒子（ＨＰ−９１、ロームアンドハース社製） １００重量部
・ゼラチン（ＲＲ、新田ゼラチン社製） ５０重量部
・純水 ８５０重量部
【０１４３】
（多孔質層形成層用塗工液）
・中空粒子（ＨＰ−９１、ロームアンドハース社製） ４５０重量部
・ゼラチン（ＲＲ、新田ゼラチン社製） ５０重量部
・界面活性剤（サーフィノール４４０、日信化学工業社製） １．５０重量部
・純水 ５００重量部
【０１４４】
（受容層形成用塗工液）
・塩化ビニル系樹脂 ３２０重量部
（アクリル酸エチル／塩化ビニル＝１０／９０共重合樹脂、分子量９万、Ｔｇ１００℃）
・ゼラチン（ＲＲ、新田ゼラチン社製） ５０重量部
・シリコーン系離型剤（ＫＦ６１５Ａ、信越化学工業社製） １０重量部
・界面活性剤（サーフィノール４４０、日信化学工業社製） ３重量部
・純水 ６００重量部
【０１４５】
その後、５℃に調整した冷却ゾーンにおいて６０秒強制冷却した後、さらに５０℃において５分乾燥することによって、熱転写受像シートを作製した。
【０１４６】
同時重層塗布の際に、塗布液間の混ざりやはじきは発生せず、各層の厚みが均一な熱転写受像シートが得られた。テープ剥離テストの密着性も良好であった。以下の方法により評価した印画特性も良好であった。
【０１４７】
（印画特性の評価方法）
上記熱転写受像シートと熱転写シート（キャノン社製、Ｃｐ７２０用）とを用いて、イエロー、マゼンタ、シアンの順に諧調パターンを印画後、保護層を転写し、印画物を得た。
印画条件を下に示す。
【０１４８】
（印画条件）
発熱体平均抵抗値：５２８５（Ω）
主走査方向印字密度：３００ｄｐｉ
副走査方向印字密度：３００ｄｐｉ
印加電圧：２２（Ｖ）
１ライン周囲：２（ｍｓｅｃ．／ｌｉｎｅ）
印字開始温度：２７（℃）
印加パルス（諧調制御方法）：１ライン周期中に、１ライン周期を２５６に等分割したパルス長をもつ分割パルスの数を０から２５５個まで可変できるマルチパルス方式のテストプリンターを用い、各分割パルスのＤｕｔｙ比を９０％に固定し、ライン周期当りのパルス数を、０から２５５個を１８ステップに分割した。これにより、１８階調に異なるエネルギーを与えることができる。
【０１４９】
（染料染着性の評価）
上記印刷物について、目視にて確認評価した。
【０１５０】
２．実施例２
実施例１における、スリップ層形成用塗工液Ａおよび多孔質層形成用塗工液および、受容層形成用塗工液、並びに、下記クッション層形成用塗工液を使用した。基材シートとしてＲＣペーパー（ＳＴＦ−１５０、三菱製紙社製）を用意し、スリップ層形成用塗工液、多孔質層形成用塗工液、クッション層形成用塗工液および受容層形成用塗工液が、上記基材シートにこの順で積層されるように、スライド塗布機により同時重層塗布した。なお、各層のウエット膜厚は、スリップ層形成用塗工液Ａ２０μｍ、多孔質層形成用塗工液１００μｍ、クッション層形成用塗工液、２０μｍ、および受容層形成用塗工液４０μｍとした。また、乾燥後の膜厚はそれぞれ１μｍ、３０μｍ、５μｍ、および１０μｍであった。
【０１５１】
（クッション層形成用塗工液）
・クッション材（ＳＢＲ：ＪＳＲ０６０９、ＪＳＲ社製） １００重量部
・ゼラチン（ＲＲ、新田ゼラチン社製） ５０重量部
・界面活性剤（サーフィノール４４０、日信化学工業社製） ０重量部
・純水 ８５０重量部
【０１５２】
その結果、同時重層塗布の際に、塗布液間の混ざりやはじきは発生せず、各層の厚みが均一な熱転写受像シートが得られた。テープ剥離テストの密着性も良好であった。実施例１と同様の方法によって評価した印画特性も良好であった。
【０１５３】
３．実施例３
実施例２における、スリップ層形成用塗工液Ａ、クッション層用塗工液、受容層形成用塗工液を使用した。基材シートとしてＲＣペーパー（ＳＴＦ−１５０、三菱製紙社製）を用意し、基材シートにスリップ層形成用塗工液Ａ、クッション層形成用塗工液および受容層形成用塗工液が、上記基材シートにこの順で積層されるように、スライド塗布機により同時重層塗布した。その後、７℃に調整した冷却ゾーンにおいて６０秒強制冷却した後、さたに５０℃において５分乾燥することによって、熱転写受像シートを作製した。
【０１５４】
その結果、同時重層塗布の際に、塗布液間の混ざりやはじきは発生せず、各層の厚みが均一な熱転写受像シートが得られた。テープ剥離テストの密着性も良好であった。実施例１と同様の方法によって評価した印画特性も良好であった。
【０１５５】
４．実施例４
実施例１における、スリップ層形成用塗布液Ａおよびクッション層用塗工液および多孔質層形成用塗工液および、受容層形成用塗工液を使用した。基材シートとしてＲＣペーパー（ＳＴＦ−１５０、三菱製紙社製）を用意し、スリップ層形成用塗布液Ａ、クッション層形成用塗工液、多孔質層形成用塗工液、および受容層形成用塗工液が、上記基材シートにこの順で積層されるように、スライド塗布機により同時重層塗布した。その後、７℃に調整した冷却ゾーンにおいて６０秒強制冷却した後、さらに５０℃において５分乾燥することによって、熱転写受像シートを作製した。
【０１５６】
同時重層塗布の際に、塗布液間の混ざりやはじきは発生せず、各層の厚みが均一な熱転写受像シートが得られた。テープ剥離テストの密着性も良好であった。実施例１と同様の方法によって評価した印画特性も良好であった。
【０１５７】
５．実施例５
実施例１における、スリップ層形成用塗布液Ａおよび、受容層形成用塗工液を使用した。基材シートとしてＲＣペーパー（ＳＴＦ−１５０、三菱製紙社製）を用意し、スリップ層形成用塗工液および受容層形成用塗工液が、上記基材シートにこの順で積層されるように、スライド塗布機により同時重層塗布した。その後、７℃に調整した冷却ゾーンにおいて６０秒強制冷却した後、さらに５０℃において５分乾燥することによって、熱転写受像シートを作製した。
【０１５８】
同時重層塗布の際に、塗布液間の混ざりやはじきは発生せず、各層の厚みが均一な熱転写受像シートが得られた。テープ剥離テストの密着性も良好であった。実施例１と同様の方法によって評価した印画特性も良好であった。
【０１５９】
６．比較例１
実施例１においてスリップ層形成用塗布液Ａを以下のスリップ層形成用塗布液Ｂに変えた以外は同様にして、熱転写受像シートを作製した。
【０１６０】
（スリップ層形成層用塗工液Ｂ）
・中空粒子（ＨＰ−９１、ロームアンドハース社製） ０重量部
・ゼラチン（ＲＲ、新田ゼラチン社製） ５０重量部
・純水 ９５０重量部
【０１６１】
同時重層塗布の際に、塗布液間の混ざりやはじきは発生せず、各層の厚みが均一な熱転写受像シートが得られた。しかしながら、テープ剥離テストにおいては、密着不良が発生した。印画特性は可能であった。
【０１６２】
７．比較例２
実施例１においてスリップ層を形成しない以外は同様にして、熱転写受像シートを作製した。その結果、同時重層塗布の際にはじきが発生し、均一塗布は困難であった。印画は困難であった。
【図面の簡単な説明】
【０１６３】
【図１】本発明の熱転写受像シートの一例を示す概略図である。
【図２】本発明の熱転写受像シートの他の例を示す概略図である。
【図３】本発明の熱転写受像シートの他の例を示す概略図である。
【図４】本発明の熱転写受像シートの他の例を示す概略図である。
【図５】スライドコート法を説明する説明図である。
【符号の説明】
【０１６４】
１，１５ … 基材シート
２ … スリップ層
３ … 機能性層
４ … 受容層
５ … 多孔質層
６ … クッション層
１０，１０Ａ，１０Ｂ，１０Ｃ … 熱転写受像シート
１１，１２，１３ … 塗工液
１４ … バックロール
【技術分野】
【０００１】
本発明は、熱転写方式による印画に用いられる熱転写受像シートおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【０００２】
熱転写を利用した画像の形成方法として、記録材としての熱拡散型染料（昇華型染料）をプラスチックフィルム等の基材シート上に担持させた熱転写シートと、紙やプラスチックフィルム等の別の基材シート上に受容層を設けた熱転写受像シートとを互いに重ね合わせてフルカラー画像を形成する熱拡散型転写方式（昇華型熱転写方式）が知られている。この方法は、熱拡散型染料を色材としているためドット単位で濃度、階調を自由に調節でき、原稿通りのフルカラー画像を受像シート上に鮮明に表現することができるので、デジタルカメラ、ビデオ、コンピューター等のカラー画像形成に応用されている。その画像は、銀塩写真に匹敵する高品質なものである。
【０００３】
熱転写受像シートを得る方法として、例えばグラビアコート等により、基材シート上に多孔質層や受容層を順次形成する方法が知られている。しかしながら、この方法は各層を順次形成する方法であるため、工程数が多くなるといった問題があった。そのため、より少ない工程数で熱転写受像シートを得るため、同時に複数の層を形成する方法等が注目を浴びている。
【０００４】
例えば特許文献１においては、基材上に、断熱層や受像層等の複数の層を同時重層塗布することにより形成した熱転写受像シートが開示されている。具体的には、同時重層塗布の塗布方式としてスライドコート法を用いて、熱転写受像シートを得たことが記載されている（実施例：熱転写受像シート５の作製）。また、特許文献２においては、水性中間層と水性受容層を同時塗布することを特徴とする熱転写受像シートの製造方法が開示されており（請求項１）、さらに、特許文献３においては、水溶性樹脂を最表層に有するインクジェット記録媒体が開示されており（請求項１）、インク受容層用塗布液と塩基性溶液とを同時塗布することについて記載されている。
【０００５】
このように、複数の層を同時に形成することにより、熱転写受像シートを製造する方法は、製造効率や製造コスト等において非常に有利な面がある。しかしながら、その一方でこのような同時多層塗布方法は、塗布時に各層が混合しないように、各層を形成するために用いられる塗工液の粘度を一定の範囲内に調整する必要があるため、塗工液が基材上に濡れ拡がりにくく、均質な塗膜を形成することが困難であるという問題点があった。
この点、同様の多層塗布方法が工業的に用いられている銀塩写真フイルムの製造方法においては、上記のような問題を解消するために、基材に直接に接するように形成される塗膜を形成するために用いられる塗工液の粘度を著しく低くする方法が用いられることがあった（例えば、特許文献４〜６）。しかしながら、熱転写受像シートの製造においてこのような方法を転用すると、基材と塗膜との密着力が低下してしまうという問題点があった。
【０００６】
【特許文献１】特開２００６−８８６９１公報
【特許文献２】特開平６−１７１２４０号公報
【特許文献３】特開２００６−１０３０４０公報
【特許文献４】特開昭５４−１３５０号公報
【特許文献５】特開平１１−２４２３０５号公報
【特許文献６】特開昭５２−１１５２１４号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００７】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであり、基材シート上に、水系の塗工液を用いて機能性層を含む複数の層を同時に形成することにより高効率で製造可能であり、かつ、基材と機能性層との密着性に優れた熱転写受像シートを提供することを主目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【０００８】
上記課題を解決するために本発明は、基材シートと、上記基材シート上に形成され、冷却ゲル化剤および機能性材料を含有する機能性層とを有する熱転写受像シートであって、上記基材シートと上記機能性層との間に、上記基材シート上に直接形成され、冷却ゲル化剤および上記機能性材料を含有するスリップ層が形成されており、かつ、上記機能性層が上記スリップ層上に直接形成されていることを特徴とする、熱転写受像シートを提供する。
【０００９】
本発明によれば上記スリップ層に上記機能性層に含まれる機能性材料と同一の材料が含まれることにより、上記基材と上記機能性層との密着性を向上させることができる。また、本発明によれば上記機能性層と上記基材シートとの間にスリップ層が形成されていることから、例えば、本発明の熱転写受像シートを製造する際に、上記スリップ層を形成するスリップ層形成用塗工液の粘度を上記機能性層を形成する機能性層形成用塗工液の粘度よりも著しく低くし、かつ、基材上に上記スリップ層と上記機能性層とがこの順で積層されるようにスリップ層形成用塗工液の粘度を上記機能性層を形成する機能性層形成用塗工液を同時に塗布することにより、上記スリップ層形成用塗工液によって、上記基材シート上に上記機能性層形成用塗工液が濡れ拡がることを促すことができるため、上記基材シート上に均一な機能性層を形成することができる。
このようなことから、本発明によれば基材シート上に、水系の塗工液を用いて機能性層を含む複数の層を同時に形成することにより高効率で製造可能であり、かつ、基材と機能性層との密着性に優れた熱転写受像シートを提供することができる。
【００１０】
本発明においては、上記機能性層が、上記機能性材料として中空粒子を含有する多孔質層であり、かつ、上記多孔質層上に、染料染着性を有しかつ水系溶媒に分散・溶解可能な受容層形成用樹脂および冷却ゲル化剤を含有する受容層が形成されていてもよい。これにより、本発明の熱転写受像シートの印画感度を向上させることができるからである。
【００１１】
また本発明においては、上記機能性層が、上記機能性材料として樹脂材料を含有するクッション層であり、かつ、上記クッション層上に冷却ゲル化剤および中空粒子を含有する多孔質層が形成されており、さらに上記多孔質層上に染料染着性を有しかつ水系溶媒に分散・溶解可能な受容層形成用樹脂および冷却ゲル化剤を含有する受容層が形成されているものであってもよい。これにより本発明の熱転写受像シートの印画感度をさらに向上させることができるからである。
【００１２】
また本発明においては、上記機能性層が、上記機能性材料として染料染着性を有しかつ水系溶媒に分散・溶解可能な受容層形成用樹脂を含有する受容層であってもよい。
【００１３】
さらに本発明においては、上記スリップ層の厚みが、３μｍ〜３０μｍの範囲内であることが好ましい。スリップ層の厚みが上記範囲内であることにより、例えば、本発明の熱転写受像シートを同時多層塗布方法を用いて作製する際に、上記機能性層を上記基材シート上により均一に形成することが可能になるからである。
【００１４】
また本発明は、冷却ゲル化剤および機能性材料を含む水系の機能性層形成用塗工液と、冷却ゲル化剤および上記機能性材料を含み、粘度が１ｃｐ〜３０ｃｐの範囲内であって、かつ粘度が上記機能性層形成用塗工液よりも低い水系のスリップ層形成用塗工液とを用い、基材シート上に、スリップ層と機能性層とがこの順で積層され、かつ上記基材シート、上記スリップ層および上記機能性層とが互いに接するように、上記機能性層形成用塗工液および上記スリップ層形成用塗工液を上記基材シート上に同時塗布する同時多層塗布工程と、上記同時多層塗布工程において、基材シート上に形成された塗膜を冷却する、冷却処理工程とを有することを特徴とする熱転写受像シートの製造方法を提供する。
【００１５】
本発明によれば、上記スリップ層形成用塗工液の粘度が上記機能性層形成用塗工液の粘度よりも低く、かつ粘度が上記範囲内であることにより、上記同時多層塗布工程において、上記機能性層形成用塗工液を上記基材シート上に均一に塗布することが可能になる。また、本発明によれば、上記スリップ層形成用塗工液に上記機能性層形成用塗工液に用いられる機能性材料が含まれていることにより、本発明によって製造される熱転写受像シートを基材シートと機能性層との密着性に優れたものにできる。
【００１６】
本発明においては、上記機能性層形成用塗工液が、上記機能性材料として中空粒子を含有する水系の多孔質層形成用塗工液であり、かつ、上記同時多層塗布工程が、さらに染料染着性を有しかつ水系溶媒に分散・溶解可能な受容層形成用樹脂および冷却ゲル化剤を含有する水系の受容層形成用塗工液を用い、上記機能性層上に受容層も同時に形成するものであってもよい。これにより本発明によって製造される熱転写受像シートの印画感度を向上させることができるからである。
【００１７】
また本発明においては、上記機能性層形成用塗工液が、上記機能性材料としてスチレン・ブタジエンゴム（ＳＢＲ）を含有するクッション層形成用塗工液であり、かつ上記同時多層塗布工程が、さらに冷却ゲル化剤および中空粒子を含有する水系の多孔質層形成用塗工液と、染料染着性を有しかつ水系溶媒に分散・溶解可能な受容層形成用樹脂および冷却ゲル化剤を含有する水系の受容層形成用塗工液を用い、上記機能性層上に多孔質層および受容層がこの順で積層されるように同時に形成するものであってもよい。これにより本発明によって製造される熱転写受像シートの印加感度をさらに向上させることができるからである。
【００１８】
さらに本発明においては、上記機能性層形成用塗工液が、上記機能性材料として染料染着性を有しかつ水系溶媒に分散・溶解可能な受容層形成用樹脂を含有する水系の受容層形成用塗工液であってもよい。
【発明の効果】
【００１９】
本発明は、基材シート上に、水系の塗工液を用いて機能性層を含む複数の層を同時に形成することにより高効率で製造可能であり、かつ、基材と機能性層との密着性に優れた熱転写受像シートを提供することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【００２０】
以下、本発明の熱転写受像シートおよび熱転写受像シートの製造方法について順に説明する。
【００２１】
Ａ．熱転写受像シート
まず、本発明の熱転写受像シートについて説明する。上述したように本発明の熱転写受像シートは、基材シートと、上記基材シート上に形成され、冷却ゲル化剤および機能性材料を含有する機能性層とを有するものであって、上記基材シートと上記機能性層との間に、上記基材シート上に直接形成され、冷却ゲル化剤および上記機能性材料を含有するスリップ層が形成されており、かつ、上記機能性層が上記スリップ層上に直接形成されていることを特徴とするものである。
【００２２】
このような本発明の熱転写受像シートについて図を参照しながら説明する。図１は本発明の熱転写受像シートの一例を示す概略図である。図１に例示するように、本発明の熱転写受像シート１０は、基材シート１と、上記基材シート１上に形成され、冷却ゲル化剤および機能性材料を含有する機能性層３と、上記基材シート１と上記機能性層３との間に、上記基材シート１上に直接形成され、冷却ゲル化剤および上記機能性材料を含有するスリップ層２とを有するものである。
【００２３】
本発明によれば上記スリップ層に上記機能性層に含まれる機能性材料と同一の材料が含まれることにより、上記基材と上記機能性層との密着性を向上させることができる。また、本発明によれば上記機能性層と上記基材シートとの間にスリップ層が形成されていることから、例えば、本発明の熱転写受像シートを製造する際に、上記スリップ層を形成するスリップ層形成用塗工液の粘度を上記機能性層を形成する機能性層形成用塗工液の粘度よりも著しく低くし、かつ、基材上に上記スリップ層と上記機能性層とがこの順で積層されるようにスリップ層形成用塗工液の粘度を上記機能性層を形成する機能性層形成用塗工液を同時に塗布することにより、上記スリップ層形成用塗工液によって、上記基材シート上に上記機能性層形成用塗工液が濡れ拡がることを促すことができるため、上記基材シート上に均一な機能性層を形成することができる。
このようなことから、本発明によれば基材シート上に、水系の塗工液を用いて機能性層を含む複数の層を同時に形成することにより高効率で製造可能であり、かつ、基材と機能性層との密着性に優れた熱転写受像シートを提供することができる。
【００２４】
本発明の熱転写受像シートは、少なくとも基材シートと、スリップ層と、機能性層とを有するものであり必要に応じて、他の構成を有してもよいものである。
以下、本発明に用いられる各構成について詳細に説明する。
【００２５】
１．機能性層
まず、本発明に用いられる機能性層について説明する。本発明に用いられる機能性層は、後述するスリップ層上に直接形成されるものであり、少なくとも冷却ゲル化剤と機能性材料とを含有するものである。
【００２６】
本発明に用いられる機能性層は、熱転写受像シートに用いられる構成の一つであり、その具体的な構成は本発明に用いられる任意の構成との関係によって決定されるものである。例えば、本発明の熱転写受像シートは熱転写方式によって画像を印画するために用いられるものであることから、染料を受容する受容層が用いられることが必須である。このため、本発明に用いられる機能性層として受容層が用いられない場合は、必ず上記機能性層以外に受容層が用いられることになる。
このように本発明に用いられる機能性層は、他の構成の種類に応じて決定されるものであるが、本発明に用いられる機能性層としては、例えば、受容層、多孔質層、およびクッション層等を挙げることができる。
以下、これらの各層について順に説明する。
【００２７】
（１）受容層
まず、上記受容層について説明する。本発明に用いられる受容層は、上記機能性材料として、染料染着性を有しかつ水系溶媒に分散・溶解可能な受容層形成用樹脂が用いられたものである。すなわち、本発明に用いられる受容層は冷却ゲル化剤と上記受容層形成用樹脂を含有するものである。
【００２８】
ａ．受容層形成用樹脂
上記受容層形成用樹脂としては、染料染着性を有し、かつ水系溶媒に分散・溶解可能なものであれば特に限定されるものではない。
ここで、上記「水系溶媒」とは、水を主成分とする溶媒をいう。水系溶媒における水の割合は、通常６０質量％以上であり、好ましくは７０質量％以上であり、より好ましくは８０質量％以上である。上記水以外の溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、ｎ−プロパノール等のアルコール；エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン等のグリコール類；酢酸エチル、酢酸プロピル等のエステル類；アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類；Ｎ，Ｎ−ジメチルホルムアミド等のアミド類等を例示することができる。
【００２９】
また本発明に用いられる上記受容層形成用樹脂は、ガラス転移温度が２０℃以上であるものが好ましく、３０℃以上であるものがより好ましく、４０℃以上であるものがさらに好ましい。また、上記受容層形成用樹脂はガラス転移温度が１００℃以下であるものが好ましい。このような範囲のガラス転移温度を有する受容層形成用樹脂を用いることにより、特に耐熱性に優れた受容層を得ることができるからである。
【００３０】
このような受容層形成用樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ（メタ）アクリル酸系樹脂、セルロース誘導体系樹脂、または、ポリエーテル系樹脂等を挙げることができる。本発明においては、これらの樹脂のいずれであっても好適に用いることができるが、なかでもポリビニル系樹脂を用いることが好ましい。
【００３１】
本発明に好適に用いられる上記ポリビニル系樹脂としては、例えば、塩化ビニル／酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル／アクリル化合物共重合体、エチレン／塩化ビニル／アクリル酸エステル共重合体、エチレン／酢酸ビニル／塩化ビニル共重合体等を挙げることができる。
【００３２】
上記塩化ビニル／酢酸ビニル共重合体は、塩化ビニルと酢酸ビニルとからなる共重合体であれば特に限定されず、塩化ビニルおよび酢酸ビニルに加えてこれら必須単量体と共重合可能な単量体をも少量重合したものであってもよいが、塩化ビニル／酢酸ビニル２元共重合体であることが好ましい。
【００３３】
上記塩化ビニル／アクリル化合物共重合体は、塩化ビニルとアクリル化合物とからなる共重合体であれば特に限定されず、塩化ビニルおよびアクリル化合物に加えてこれら必須単量体と共重合可能な単量体をも少量共重合したものであってもよいが、塩化ビニル／アクリル化合物２元共重合体であることが好ましい。
なお、本明細書において、「アクリル化合物」とは、（メタ）アクリル酸および／またはそのアルキルエステルを意味する。
【００３４】
上記アクリル化合物としては、例えば、アクリル酸；アクリル酸カルシウム、アクリル酸亜鉛、アクリル酸マグネシウム、アクリル酸アルミニウム等のアクリル酸塩；メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、２−エチルヘキシルアクリレート、２−エトキシエチルアクリレート、２−ヒドロキシエチルアクリレート、ｎ−ステアリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート等のアクリル酸エステル；メタクリル酸；メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ｔ−ブチル、メタクリル酸トリデシル、メタクリル酸シクロヘキシル、ジメタクリル酸トリエチレングリコール、ジメタクリル酸１，３−ブチレン、トリメタクリル酸トリメチロールプロパン等のメタクリル酸エステル等を挙げることができる。
【００３５】
上記エチレン／塩化ビニル／アクリル酸エステル共重合体およびエチレン／酢酸ビニル／塩化ビニル共重合体（以下、各共重合体を総称して、「エチレン／塩化ビニル系共重合体」といもいう。）は、少なくとも、エチレン、塩化ビニルおよびアクリル酸エステルの３種、または、エチレン、酢酸ビニルおよび塩化ビニルの３種の単量体を重合して得られる共重合体であれば特に限定されず、これらの３種の単量体以外に少量の微量単量体をも共重合したものであっても良いが、エチレン／塩化ビニル／アクリル酸エステル３元共重合体またはエチレン／酢酸ビニル／塩化ビニル３元共重合体であることが好ましい。
【００３６】
上記エチレン／酢酸ビニル／塩化ビニル共重合体は、エチレン／酢酸ビニル共重合体（ＥＶＡ）と塩化ビニルとの共重合体であっても良く、該ＥＶＡ／塩化ビニル共重合体としては、ＥＶＡに塩化ビニルをグラフト共重合したものであっても良い。ＥＶＡは、該共重合体における酢酸ビニル単位の全部または一部が鹸化されたものをも含む。
【００３７】
本発明において、上記エチレン／塩化ビニル／アクリル酸エステル共重合体を構成する「アクリル酸エステル」は、アクリル酸エステルに加え、メタクリル酸エステルをも含む概念である。上記アクリル酸エステルとしては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、２−エチルヘキシルアクリレート、２−エトキシエチルアクリレート、２−ヒドロキシエチルアクリレート、ｎ−ステアリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート等を挙げることができ、上記メタクリル酸エステルとしては、例えばメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ｔ−ブチル、メタクリル酸トリデシル、メタクリル酸シクロヘキシル、ジメタクリル酸トリエチレングリコール、ジメタクリル酸−１，３−ブチレン、トリメタクリル酸トリメチロールプロパン等を挙げることができる。
【００３８】
なお、本発明においては、上記受容層形成用樹脂を１種のみを用いてもよく、単量体組成、平均分子量等が異なる２種以上を用いてもよい。
【００３９】
ｂ．冷却ゲル化剤
本発明に用いられる冷却ゲル化剤は、冷却されることによりゲル化する性質を有するものであり、本発明の熱転写受像シートを、基材シート上に、機能性層とスリップ層とを含む複数の層を同時に形成することにより高効率で製造することを可能にするものである。
【００４０】
このような冷却ゲル化剤としては、冷却ゲル化特性を備えるものであれば特に限定されるものではない。なかでも本発明に用いられる冷却ゲル化剤は、水に溶解した状態での１５℃における粘度が８０℃における粘度に対して、３倍以上、特に５倍以上、さらには１０倍以上であるものが好ましい。
【００４１】
本発明に用いられる冷却ゲル化剤としては、例えば、ゼラチン、ポリビニルアルコール、寒天、κ−カラギーナン、λ−カラギーナン、ι−カラギーナン、ペクチン等を挙げることができる。
【００４２】
ここで、上記ゼラチンは、上述したように三重へリックス構造を有するコラーゲンを変性させることによって得られるペプチド鎖からなるものであり、冷却されることにより部分的に上記三重へリックス構造を回復し、回復された三重へリックス構造を起点として三次元ネットワークを形成することにより、冷却ゲル化特性を示すものである。
【００４３】
上記κ−カラギーナン、λ−カラギーナン、および、ι−カラギーナンは、紅藻類海藻から抽出される分子量１０００００〜５０００００程度のガラクトース、３，６−アンヒドロガラクトースを主成分とする天然高分子化合物である。分子内に半エステル型の硫酸基を有することを特徴とするものであり、通常、ローカストビーンガムや、金属塩化合物等の増粘剤が併用されることにより、冷却ゲル化特性を示すものである。
【００４４】
上記ペクチンは、植物の細胞壁を構成する天然多糖類であり、イオン性の化合物と併用されることにより、冷却ゲル化特性を示すものである。
【００４５】
本発明においては、上記冷却ゲル化剤のいずれであっても好適に用いることができる。また、本発明においては、１種類の冷却ゲル化剤のみを用いてもよく、あるいは、２種類以上の冷却ゲル化剤を用いてもよい。
【００４６】
本発明の受容層における冷却ゲル化剤の含有量としては、本発明の熱転写受像シートを製造する際に、受容層に形成するために用いられる受容層形成用塗工液に所望の粘度特性を付与できる範囲内であれば特に限定されるものではない。なかでも本発明においては、冷却ゲル化剤が、受容層形成用樹脂に対して、重量換算で２〜５０の範囲内であることが好ましく、特に２〜３０の範囲内であることが好ましく、さらに２〜２０の範囲内であることが好ましい。冷却ゲル化剤の含有比が上記範囲よりも少ないと、例えば、本発明の熱転写受像シートの製造時に、受容層が隣接する他の層と混合してしまうおそれがあるからである。また、上記範囲よりも多いと、例えば、上記受容層形成用塗工液を上記基材シート上に塗布する際に、スジやムラなどが生じやすくなる場合があるからである。
【００４７】
ｃ．その他
上記以外に、本発明における受容層に添加することができる任意の化合物としては、例えば、離型剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、フィラー、顔料、帯電防止剤、可塑剤、熱溶融性物質等を挙げることができる。
上記離型剤としては、シリコーンオイル、リン酸エステル系化合物、フッ素系化合物等、公知のものが挙げられるが、特に、シリコーンオイルが好ましい。
上記シリコーンオイルとしては、エポキシ変性シリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル、フェニル変性シリコーンオイル、エポキシ・ポリエーテル変性シリコーンオイル、ビニル変性シリコーンオイル、ハイドロジェン変性シリコーンオイル等の変性シリコーンオイルが好ましい。上記離型剤は、上述の受容層形成用樹脂１００質量部に対して、０．５質量部〜３０質量部の範囲内となるように添加されることが好ましい。
【００４８】
ｄ．受容層
本発明に用いられる受容層の厚みは、上記受容層形成用樹脂の種類に応じて所望の印画感度を発現できる範囲内であれば特に限定されるものではないが、なかでも本発明においては、０．５μｍ〜２０μｍの範囲内であることが好ましく、特に１μｍ〜２０μｍの範囲内であることが好ましく、さらに１μｍ〜１５μｍの範囲内であることが好ましい。
【００４９】
（２）多孔質層
次に本発明に用いられる多孔質層について説明する。本発明に用いられる多孔質層は、上記機能性材料として中空粒子が用いられたものである。すなわち、本発明に用いられる多孔質層は少なくとも冷却ゲル化剤と中空粒子とを含有するものである。このような多孔質層は、本発明の熱転写受像シートを用いて画像を形成する際に、サーマルヘッドから受容層に加えられた熱が、基材シート等へ伝熱することによって損失されることを防止することができる。これにより本発明の熱転写受像シートの印画感度を向上させることができるため、本発明においては多孔質層が好適に用いられる。
なお、上記機能性層として当該多孔質層が用いられる場合は、多孔質層上に別途受容層が形成されることになる。
【００５０】
ａ．中空粒子
本発明に用いられる中空粒子は多孔質層に断熱性を付与する機能を有するものである。また、本発明に用いられる中空粒子は、多孔質層にクッション性を付与する機能を有するものでもある。
【００５１】
本発明に用いられる中空粒子としては、多孔質層に所望の断熱性を付与できるものであれば特に限定されるものではない。したがって、本発明に用いられる中空粒子は発泡粒子であってもよく、あるいは、非発泡粒子であってもよい。また、上記発泡粒子は、独立発泡粒子であってもよく、あるいは、連続発泡粒子であってもよい。さらに、本発明に用いられる中空粒子は、樹脂等から構成される有機系中空粒子であってもよく、ガラス等から構成される無機系中空粒子であってもよい。また、上記中空粒子は、架橋中空粒子であってもよい。
【００５２】
上記中空粒子を構成する樹脂としては、例えば、架橋スチレン−アクリル樹脂等のスチレン系樹脂、アクリロニトリル−アクリル樹脂等の（メタ）アクリル系樹脂、フェノール系樹脂、フッ素系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエーテル系樹脂等を挙げることができる。
【００５３】
上記中空粒子の平均粒径は、中空粒子を構成する樹脂の種類等に応じて、多孔質層に所望の断熱性およびクッション性を付与できる範囲であれば特に限定されるものではないが、通常、０．１μｍ〜１５μｍの範囲内であることが好ましく、特に０．１μｍ〜１０μｍの範囲内であることが好ましい。平均粒径が小さすぎると中空粒子の使用量が増えコストが高くなり、平均粒径が大きすぎると、平滑な多孔質層を形成することが困難になるからである。
【００５４】
本発明において、多孔質層に含まれる中空粒子の量としては、所望の断熱性およびクッション性を有する多孔質層を得ることができれば特に限定されるものではないが、例えば３０質量％〜９０質量％の範囲内であることが好ましく、なかでも５０質量％〜８０質量％の範囲内であることが好ましい。含有量が少なすぎると、多孔質層における空隙が少なくなり、充分な断熱性およびクッション性が得られない場合があり、含有量が多すぎると、接着性が劣るからである。
【００５５】
また本発明において、多孔質層中に含有される中空粒子と、後述する冷却ゲル化剤との割合は、所望の断熱性を有する多孔質層を形成することができれば特に限定されるものではない。なかでも、本発明においては、冷却ゲル化剤が、中空粒子層塗工液中の固形分１００に対して、重量換算で１０〜５０の範囲内であることが好ましく、特に１０〜４０の範囲内であることが好ましく、さらに１２〜４０の範囲内であることが好ましい。中空粒子と冷却ゲル化剤の含有比が上記範囲内であることにより、断熱性に優れた多孔質層を形成することができるからである。
【００５６】
ｂ．冷却ゲル化剤
上記多孔質層に用いられる冷却ゲル化剤については、上記「（１）受容層」の項において説明したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
【００５７】
ｃ．任意の化合物
本発明に用いられる多孔質層は、少なくとも上記冷却ゲル化剤および中空粒子を含有するものであるが、必要に応じて任意の化合物を含むものであってもよい。上記任意の化合物として多孔質層に含有させることができるものとしては、例えば、多孔質層形成用バインダー、ノニオン系シリコーン系等の界面活性剤、イソシアネート化合物等の硬化剤、濡れ剤、および、分散剤等を挙げることができる。
【００５８】
上記多孔質層形成用バインダーとしては、通常、水系樹脂が用いられる。このような水系樹脂としては、例えば、アクリル系ウレタン樹脂等のポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオイキサイド、ポリビニルピロリドン、プルラン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、デキストラン、デキストリン、ポリアクリル酸及びその塩、寒天、κ−カラギーナン、λ−カラギーナン、ι−カラギーナン、カゼイン、キサンテンガム、ローカストビーンガム、アルギン酸、アラビアゴム、特開平７−１９５８２６号公報及び同７−９７５７号公報に記載のポリアルキレノキサイド系共重合ポリマー、水溶性ポリビニルブチラール、あるいは、特開昭６２−２４５２６０号公報に記載のカルボキシル基やスルホン酸基を有するビニルモノマーの単独重合体や共重合体等を挙げることができる。また、上記樹脂の２種類以上を組み合わせて用いても良い。
【００５９】
ｄ．多孔質層
本発明に用いられる多孔質層は、本発明の熱転写受像シートを用いて画像を形成する際に、サーマルヘッドから受容層に加えられた熱が、基材シート等へ伝熱することによって損失されることを防止する断熱性を有するものである。ここで本発明に用いられる多孔質層が備える断熱性は、本発明の熱転写受像シートの用途等に応じて適宜調整することができるものである。
ここで、多孔質層の断熱性は、例えば、多孔質層の厚みを変更することにより任意の範囲に調整することができる。
【００６０】
また、上記多孔質層の断熱性は、多孔質層の空隙率によっても制御することができる。ここで、本発明に用いられる多孔質層の空隙率は、１５％〜８０％の範囲内であることが好ましい。
なお、上記空隙率は、（中空粒子の空隙率）×（多孔質層における中空粒子の含有率）で表される値を指すものとする。
【００６１】
本発明に用いられる多孔質層の厚みは１０μｍ〜１００μｍの範囲内であることが好ましく、１０μｍ〜５０μｍの範囲内であることがより好ましい。また、上記多孔質層の密度は、例えば０．１ｇ／ｃｍ３〜０．８ｇ／ｃｍ３の範囲内、なかでも０．２ｇ／ｃｍ３〜０．７ｇ／ｃｍ３の範囲内であることが好ましい。
【００６２】
本発明に用いられる多孔質層は、単一の層からなる構成を有するものであってもよく、あるいは、複数の層が積層された構成を有するものであってもよい。ここで、複数の層が積層された構成を有する多孔質層としては、同一組成の層が積層された構成を有するものであってもよく、あるいは、異なる組成の層が積層された構成を有するものであってもよい。なかでも本発明に用いられる多孔質層は、組成の異なる２層が積層された構成を有するものであることが好ましい。このような構成とすることにより、さらに機能的な多孔質層を得ることができるからである。
【００６３】
本発明に用いられる多孔質層が２層構造である場合の一例としては、上記多孔質層が、基材シート側から、中空粒子ａを含有する多孔質層Ａと、および上記中空粒子ａよりも中空率の小さな中空粒子ｂを含有する多孔質層Ｂとが積層された構成を有するものを挙げることができる。上記多孔質層としてこのような構成を有するものを用いることにより、印画時に、濃度ムラやハイライト部の白抜けを防止することができるという利点がある。
【００６４】
（３）クッション層
次に、本発明に用いられるクッション層について説明する。本発明に用いられるクッション層は、上記機能性材料として樹脂材料が用いられたものである。すなわち、本発明に用いられるクッション層は、冷却ゲル化剤と、樹脂材料を含有するものである。
【００６５】
ａ．樹脂材料
本発明に用いられる樹脂材料としては、所望のクッション性を示すクッション層を形成できるものであれば特に限定されるものではない。また、本発明においては所望のクッション性を達成するために上記樹脂材料を２種類以上用いてもよい。本発明に用いられる樹脂材料としては、例えば、中密度・低密度ポリエチレン、直鎖状ポリエチレン、ポリエチレンビニルアセテート共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体（ＥＭＡＡ）、エチレン・メチルメタクリレート共重合体（ＥＭＭＡ）、ポリプロピレン、アイオノマー、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体等を挙げることができる。
【００６６】
ｂ．冷却ゲル化剤
上記クッション層に用いられる冷却ゲル化剤については、上記「（１）受容層」の項において説明したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
【００６７】
ｃ．任意の化合物
上記クッション層には、上述した樹脂材料および冷却ゲル化剤以外に他の任意の化合物が含まれていてもよい。このような任意の化合物としては、例えば、ノニオン系シリコーン系等の界面活性剤、イソシアネート化合物等の硬化剤、濡れ剤、および分散剤等を挙げることができる。
【００６８】
ｄ．クッション層
本発明に用いられるクッション層の弾性としては、本発明の熱転写受像シートの用途等に応じて、適宜決定されるものであり特に限定されるものではない。また、本発明に用いられるクッション層の厚みとしては、上述した樹脂材料の種類等に応じて、所望のクッション性を達成することができるものであれば特に限定されるものではない。なかでも本発明に用いられるクッション層の厚みは、１μｍ〜２０μｍの範囲であることが好ましく、２μｍ〜１０μｍの範囲であることがより好ましく、３μｍ〜５μｍであることがさらに好ましい。クッション層の厚みが上記範囲よりも少ないと所望のクッション性を達成することができないからである。また、クッション層厚みが上記範囲よりも多いとカール発生やコスト高となる可能性があるためである。
【００６９】
２．スリップ層
次に、本発明に用いられるスリップ層について説明する。本発明に用いられるスリップ層は、後述する基材シート上に直接形成されるものであり、少なくとも冷却ゲル化剤と、上記機能性層に含まれる機能性材料とを含有するものである。
以下、本発明に用いられるスリップ層について詳細に説明する。
なお、スリップ層に用いられる冷却ゲル化剤については、上記「１．機能性層」の項において説明したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
【００７０】
上記スリップ層に用いられる機能性材料は、上述した機能性層に含まれる機能性材料と同一の材料である。したがって、上記スリップ層に含まれる機能性材料は、上記機能性層の種類よって適宜決定されることになる。ここで、機能性材料の詳細については上記「１．機能性層」の項において説明したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
【００７１】
上記スリップ層中における上記機能性材料の含有量としては、後述する基材シートと上記機能性層との密着性を所望の範囲内にできる程度であれば特に限定されるものではなく、機能性材料の種類に応じて適宜決定されるものである。しかしながら、本発明に用いられるスリップ層は本発明の熱転写受像シートを製造する工程において、上記機能性層を形成ために用いられる機能性層形成用塗工液が基材シート上に濡れ拡がることを促す機能を発現することができるものであるため、上記機能性材料の含有量は通常、上記機能性層におけるそれよりも低いものとなる。なかでも本発明においては、上記スリップ層中における機能性材料の含有量は、全固形分に対して、５質量％〜６０質量％の範囲内であることが好ましく、１５質量％〜５０質量％の範囲内であることがより好ましく、２５質量％〜４０質量％の範囲内であることがさらに好ましい。全固形分に対する含有量がこれより少ないと本発明の熱転写受像シートにおいて、機能性材料の添加効果が十分に得られず、機能性層と基材の密着性をあげる効果が不十分になる場合があるからである。逆に含有量がこれより多いと、冷却ゲル化剤、その他の添加剤の添加量が少なく、セット性の低減や、基材とスリップ層の密着不良が発生しやすくなる場合があるからである。
【００７２】
本発明に用いられるスリップ層の厚みは、本発明の熱転写受像シートを製造する際に、上記機能性層を形成ために用いられる機能性層形成用塗工液、が基材シート上に濡れ拡がることを促す機能を発現することができる範囲内であれば特に限定されるものではない。なかでも本発明におけるスリップ層の厚みは、０．１μｍ〜２μｍの範囲内であることが好ましい。スリップ層は他の層に比較して水の割合が大きくなるため、厚みが上記範囲よりも厚いと、スリップ層を形成する際に塗膜の乾燥適正が劣化する場合があるからである。逆にスリップ層がこれより薄いと、本発明におけるスリップ層の機能を十分に発現できなかったり、あるいは、均一なスリップ層を形成することが困難になる場合があるからである。
【００７３】
３．基材シート
次に、本発明に用いられる基材シートについて説明する。本発明に用いられる基材シートは、上述したスリップ層および機能性層を支持するものである。
以下、このような基材シートについて説明する。
【００７４】
本発明に用いられる基材シートとしては、本発明の熱転写受像シートを用いて画像を形成する際の印画温度等に応じて、所望の耐熱性を備えるものであれば特に限定されるものではないが、具体的には、レジンコート紙、樹脂製フィルム基材、および紙製基材等を挙げることができ、なかでもレジンコート紙が好ましい。
【００７５】
レジンコート紙は、通常、基紙の両面に基材樹脂層を積層してなるものである。上記基紙を構成する原紙としては、例えば、天然パルプ、合成パルプ、それらの混合物から抄紙されるパルプ紙等を挙げることができ、なかでも木材パルプを主成分とする紙を用いることが好ましい。また、上記原紙は、必要に応じて後述するカレンダー処理等の従来公知の処理を施したものであってもよい。
【００７６】
さらに、レジンコート紙は必要に応じて、塗布液の濡れ性アップを目的とした、従来公知のプライマ塗工処理や、物理化学的処理を単独で、もしくは合わせて、施しても良い。
従来公知のプライマ塗工処理としてはでんぷん、ガゼイン、ＰＶＡ、セルロース誘導体、ポリアミド、ゼラチン等の親水性樹脂を１種、もしくは、２種以上使用してなる塗工液を塗工することで処理可能である。物理化学的処理としては、コロナ放電処理、プラズマ処理、オゾンガス処理、フレーム処理、予熱処理、除塵埃処理、アルカリ処理などの処理があげられる。
【００７７】
上記基紙は、厚みが１０μｍ〜１０００μｍの範囲内であることが好ましく、５０μｍ〜３００μｍの範囲内であることがより好ましい。
【００７８】
上記基紙は、公知の方法によって作製することができるが、原紙に対してカレンダー処理したものが好ましい。原紙にカレンダー処理をした基紙を用いると、平滑度を向上することができ、得られる熱転写受像シートの光沢感を高めることができるからである。
【００７９】
上記基材樹脂層を形成するための樹脂としては、ネックインが小さく、ドローダウン性が良好な樹脂であることが好ましく、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン系樹脂、ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、アイオノマー樹脂、ナイロン、ポリウレタン等を挙げることができ、耐水性、強度、光沢等に優れたフィルムが得られる点で、ポリオレフィン樹脂が好ましい。
【００８０】
上記ポリオレフィン樹脂としては、例えば高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリペンテン等を挙げることができ、中でも高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレンが好ましく、特にポリプロピレンが好ましい。
【００８１】
上記基材樹脂層は、上記樹脂を１種もしくは２種以上混合して得られるフィルムまたはシートであっても良いし、上記樹脂に加え、顔料、充填剤等を加えて成膜したフィルムまたはシートであっても良い。また、上記樹脂は、改質剤等の添加剤を配合し、接着性を向上させたものであっても良い。上記改質剤としては、例えば、タフマー（三井化学社製）等のオレフィン系コポリマー等を挙げることができる。
【００８２】
上記レジンコート紙は、例えばドライラミネーション、ウェットラミネーション、エクストリュージョン等の公知の積層方法により作製することができる。上記各層は、層間密着力を向上させることを目的として、その表面に適宜プライマー処理やコロナ放電処理を施すことができる。
【００８３】
上記レジンコート紙の厚みは、全体で、例えば１０μｍ〜１０００μｍの範囲内、中でも５０μｍ〜３００μｍの範囲内であることが好ましい。
【００８４】
一方、本発明に用いられる樹脂製フィルム基材としては、例えば、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、セルロース誘導体、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ナイロン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、テトラフルオロエチレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル、ポリビニルフルオライド、テトラフルオロエチレン−エチレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド等を挙げることができる。なかでも本発明においては、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン樹脂を好適に用いることができる。
【００８５】
上記樹脂製フィルム基材の厚みとしては、例えば２０μｍ〜１００μｍの範囲内、中でも、２５μｍ〜６０μｍの範囲内、特に３０μｍ〜５０μｍの範囲内であることが好ましい。
【００８６】
本発明に用いられる紙製基材としては、例えば、コンデンサーペーパー、グラシン紙、硫酸紙、または、サイズ度の高い紙、合成紙（ポリオレフィン系、ポリスチレン系）、上質紙、アート紙、コート紙、キャストコート紙、壁紙、裏打用紙、合成樹脂又はエマルジョン含浸紙、合成ゴムラテックス含浸紙、合成樹脂内添紙、板紙、セルロース繊維紙等を挙げることができる。
【００８７】
上記紙製基材の厚みとしては、例えば８０μｍ〜２００μｍの範囲内、なかでも１００μｍ〜１８０μｍの範囲内、特に１２０μｍ〜１６０μｍの範囲内であることが好ましい。
【００８８】
４．熱転写受像シート
本発明の熱転写受像シートは、上記機能性層の種類に応じて種々の構成を有するものとなる。以下、本発明の熱転写受像シートの各態様について図を参照しながら説明する。
【００８９】
図２は、上記機能性層として受容層が用いられた態様の一例を示す概略図である。図２に例示するように、上記機能性層として受容層が用いられている場合、本発明の熱転写受像シート１０Ａは、基材シート１と、スリップ層２と、受容層４とを有する態様となる。
【００９０】
図３は、上記機能性層として多孔質層が用いられた態様の一例を示す概略図である。図３（ａ）に例示するように、上記機能性層として多孔質層が用いられている場合、本発明の熱転写受像シートＢは、少なくとも基材シート１と、スリップ層２と、多孔質層５と、上記多孔質層５上に形成された受容層４とを有する態様となる。
なお、上記機能性層として多孔質層が用いられた態様としては、図３（ａ）に例示する態様に限られるものではなく、例えば、図３（ｂ）に例示するように、上記多孔質層５と上記受容層４との間にクッション層６が形成されていてもよい。
【００９１】
図４は、上記機能性層としてクッション層が用いられた態様の一例を示す概略図である。図４（ａ）に例示するように、上記機能性層としてクッション層が用いられている場合、本発明の熱転写受像シート１０Ｃは、少なくとも基材シート１と、スリップ層２と、クッション層６と、上記クッション層６上に形成された受容層４とを有するものとなる。
なお、上記機能性層としてクッション層が用いられた態様としては、図４（ａ）に例示する態様に限られるものではなく、例えば、図４（ｂ）に例示するように、クッション層６と上記受容層４との間に多孔質層５が形成されていてもよい。
【００９２】
５．熱転写受像シートの製造方法
本発明の熱転写受像シートは、例えば、後述する「Ｂ．熱転写受像シートの製造方法」の項において説明する方法によって、製造することができる。
【００９３】
Ｂ．熱転写受像シートの製造方法
次に、本発明の熱転写受像シートの製造方法について説明する。本発明の熱転写受像シートの製造方法は、冷却ゲル化剤および機能性材料を含む水系の機能性層形成用塗工液と、冷却ゲル化剤および上記機能性材料を含み、粘度が１ｃｐ〜１５ｃｐの範囲内であって、かつ粘度が上記機能性層形成用塗工液よりも低い水系のスリップ層形成用塗工液とを用い、基材シート上に、スリップ層と機能性層とがこの順で積層され、かつ上記基材シート、上記スリップ層および上記機能性層とが互いに接するように、上記機能性層形成用塗工液および上記スリップ層形成用塗工液を上記基材シート上に同時塗布する同時多層塗布工程と、上記同時多層塗布工程において、基材シート上に形成された塗膜を冷却する、冷却処理工程と、を有することを特徴とするものである。
【００９４】
本発明によれば、上記スリップ層形成用塗工液の粘度が上記機能性層形成用塗工液の粘度よりも低く、かつ粘度が上記範囲内であることにより、上記同時多層塗布工程において、上記機能性層形成用塗工液を上記基材シート上に均一に塗布することが可能になる。また、本発明によれば、上記スリップ層形成用塗工液に上記機能性層形成用塗工液に用いられる機能性材料が含まれていることにより、本発明によって製造される熱転写受像シートを基材シートと機能性層との密着性に優れたものにできる。
【００９５】
本発明の熱転写受像シートの製造方法は、少なくとも上記同時多層塗布工程と、上記冷却処理工程とを有するものである。
以下、本発明に用いられる各工程について順に説明する。
【００９６】
１．同時多層塗布工程
まず、本発明に用いられる同時多層塗布工程について説明する。本工程は、冷却ゲル化剤および機能性材料を含む水系の機能性層形成用塗工液と、冷却ゲル化剤および上記機能性材料を含み、粘度が１ｃｐ〜１５ｃｐの範囲内であって、かつ粘度が上記機能性層形成用塗工液よりも低い水系のスリップ層形成用塗工液とを用い、基材シート上に、スリップ層と機能性層とがこの順で積層され、かつ上記基材シート、上記スリップ層および上記機能性層とが互いに接するように、上記機能性層形成用塗工液および上記スリップ層形成用塗工液を上記基材シート上に同時塗布する工程である。
【００９７】
（１）機能性層形成用塗工液
本工程に用いられる機能性層形成用塗工液は、少なくとも冷却ゲル化剤および機能性材料を含有し、水系溶媒が用いられたものである。また、本工程に用いられる機能性層形成用塗工液は、粘度が後述するスリップ層形成用塗工液の粘度よりも高いものである。
【００９８】
本工程に用いられる機能性層形成用塗工液の粘度としては、後述するスリップ層形成用塗工液の粘度よりも高ければ特に限定されるものではない。なかでも本工程に用いられる機能性層形成用塗工液の粘度は、後述するスリップ層形成用塗工液の粘度との差が０ｃｐ〜８０ｃｐの範囲内の範囲内であることが好ましく、５ｃｐ〜６０ｃｐの範囲内であることがより好ましく、１０ｃｐ〜４０ｃｐの範囲内であることがさらに好ましい。
【００９９】
具体的な機能性層形成用塗工液の粘度は、１ｃｐ〜１００ｃｐの範囲内であることが好ましく、１０ｃｐ〜８０ｃｐの範囲内であることがより好ましく、２０ｃｐ〜５０ｃｐの範囲内であることがさらに好ましい。
ここで、上記粘度は、エー・アンド・ディ社製 音叉式振動型粘度計 ＳＶ−１０を用いて４０℃における粘度を測定した値を意味するものとする。
【０１００】
本工程に用いられる機能性層形成用塗工液は、本発明によって製造する熱転写受像シートの種類に応じ、機能性材料を適宜選択して任意の組成を有する塗工液とすることができる。このような機能性層形成用塗工液としては、例えば、上記機能性材料として受容層形成用樹脂が用いられ、受容層を形成することが可能な水系の受容層形成用塗工液、上記機能性材料として中空粒子が用いられ、多孔質層を形成することが可能な水系の多孔質層形成用塗工液、さらに上記機能性材料として、樹脂材料が用いられ、クッション層を形成することが可能な水系のクッション層形成用塗工液等を挙げることができる。
以下、これらの塗工液について順に説明する。
【０１０１】
ａ．受容層形成用塗工液
本工程に用いられる受容層形成用塗工液は、少なくとも受容層形成用樹脂および冷却ゲル化剤を含有するものであり、水系溶媒が用いられたものである。
ここで、上記受容層形成用樹脂および冷却ゲル化剤については、上記「Ａ．熱転写受像シート」の項において説明したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
【０１０２】
本工程に用いられる受容層形成用塗工液は水系のものであることから、水系溶媒が用いられたものである。ここで、本工程に用いられる「水系溶媒」とは、水を主成分とする溶媒をいう。水系溶媒における水の割合は、通常５０質量％以上であり、好ましくは７０質量％以上であり、より好ましくは８０質量％以上である。本工程に用いられる上記水以外の溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、ｎ−プロパノール等のアルコール類；エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン等のグリコール類；酢酸エチル、酢酸プロピル等のエステル類；アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類；Ｎ，Ｎ−ジメチルホルムアミド等のアミド類等を挙げることができる。
【０１０３】
本工程に用いられる上記受容層形成用塗工液の粘度としては、本工程において基材シート上に同時に塗布されるスリップ層形成用塗工液等の他の塗工液と混合しない程度であれば特に限定されるものではない。なかでも本工程においては、４０℃において１ｍＰａ・ｓ〜４０ｍＰａ・ｓの範囲内であることが好ましく、特に５ｍＰａ・ｓ〜３０ｍＰａ・ｓの範囲内であることが好ましく、さらに７ｍＰａ・ｓ〜２５ｍＰａ・ｓの範囲内であることが好ましい。
【０１０４】
本工程に用いられる受容層形成用塗工液の固形分濃度としては、粘度を所望の程度にできる範囲内であれば特に限定されるものではないが、なかでも１０質量％〜５０質量％の範囲内、なかでも１０質量％〜４０質量％の範囲内であることが好ましい。固形分濃度が低すぎると、溶媒の大半が無駄になる可能性があり、固形分濃度が高すぎると塗工液の保存安定性が低下し、粘度が上昇する可能性があるからである。
【０１０５】
また、上記受容層形成用塗工液中に含まれる冷却ゲル化剤の含有量としては、上記受容層形成用塗工液に所望の粘度特性を付与できる範囲内であれば特に限定されるものではない。なかでも本工程においては、受容層形成用塗工液の固形分重量換算で５０質量％以下であることが好ましく、特に５質量％〜３５質量％の範囲内であることが好ましく、さらに５質量％〜２０質量％の範囲内であることが好ましい。冷却ゲル化剤の含有量が上記範囲よりも少ないと、例えば、本工程においてスリップ層と受容層とが基材シート上に塗布された際に両層が混合してしまうおそれがあるからである。また、上記範囲よりも多いと、例えば、本工程において上記受容層形成用塗工液を上記基材シート上に塗布する際に、スジやムラなどが生じやすくなる場合があるからである。
【０１０６】
上記受容層形成用樹脂および上記冷却ゲル化剤以外に、上記受容層形成用塗工液に添加することができる添加剤としては、例えば離型剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、フィラー、顔料、帯電防止剤、可塑剤、熱溶融性物質、および界面活性剤等を挙げることができる。このような添加剤については、上記「Ａ．熱転写受像シート」の項において説明したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
【０１０７】
ｂ．多孔質層形成用塗工液
本工程に用いられる多孔質層形成用塗工液は、少なくとも中空粒子および冷却ゲル化剤を含み、これらが水系溶媒に分散・溶解されたものである。
ここで、上記多孔質層形成用塗工液に用いられる中空粒子および冷却ゲル化剤については、上記「Ａ．熱転写受像シート」の項において説明したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。また、上記水系溶媒についても上記受容層形成用塗工液に用いられるものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
【０１０８】
本工程に用いられる多孔質層形成用塗工液の粘度としては、本工程において基材シート上に同時に塗布される他の塗工液と混合しない程度であれば特に限定されるものではない。なかでも本工程においては、４０℃において１ｍＰａ・ｓ〜５０ｍＰａ・ｓの範囲であることが好ましく、特に５ｍＰａ・ｓ〜４０ｍＰａ・ｓの範囲内であることが好ましい。
また、２０℃における粘度が０．５Ｐａ・ｓ〜１０Ｐａ・ｓの範囲であることが好ましく、特に１Ｐａ・ｓ〜７Ｐａ・ｓの範囲内であることが好ましい。
【０１０９】
なお、上記粘度は、例えばエー・アンド・ディ社製 音叉型振動式粘度計 ＳＶ−１０を用いて測定することができる。
【０１１０】
本工程に用いられる多孔質層形成用塗工液の固形分濃度としては、粘度を所望の程度にできる範囲内であれば特に限定されるものではないが、なかでも１０質量％〜５０質量％の範囲内、なかでも１０質量％〜４０質量％の範囲内であることが好ましい。固形分濃度が低すぎると、溶媒の大半が無駄になる可能性があり、固形分濃度が高すぎると、塗工液の保存安定性が低下し、粘度が上昇する可能性があるからである。
【０１１１】
上記多孔質層形成用塗工液中に含まれる冷却ゲル化剤の含有量としては、上記多孔質層形成用塗工液に所望の粘度特性を付与できる範囲内であれば特に限定されるものではない。なかでも本工程においては、多孔質層形成用塗工液の固形分重量換算で５０質量％以下であることが好ましく、特に５質量％〜３５質量％の範囲内であることが好ましく、さらに５質量％〜２０質量％の範囲内であることが好ましい。冷却ゲル化剤の含有量が上記範囲よりも少ないと、例えば、本工程において上記多孔質層と上記受容層とが基材シート上に塗布された際に、両層が混合してしまうおそれがあるからである。また、上記範囲よりも多いと、例えば、本工程において上記多孔質層形成用塗工液を上記基材シート上に塗布する際に、スジやムラなどが生じやすくなる場合があるからである。
【０１１２】
さらに、上記多孔質層形成用塗工液に含まれる中空粒子の固形分濃度としては、所望の断熱性およびクッション性を有する多孔質層を得ることができる範囲内であれば特に限定されるものではないが、例えば２０質量％〜９０質量％の範囲内、なかでも４０質量％〜８０質量％の範囲内であることが好ましい。含有量が少なすぎると、多孔質層における空隙が少なくなり、充分な断熱性およびクッション性が得られない場合があり、含有量が多すぎると接着性が劣る場合や、表面の平滑性が損なわれる場合があるからである。
【０１１３】
本工程に用いられる多孔質層形成用塗工液には、上記中空粒子および冷却ゲル化剤以外の他の添加剤が含まれていてもよい。このような他の添加剤としては、多孔質層形成用バインダー、ノニオン系シリコーン系等の界面活性剤、イソシアネート化合物等の硬化剤、濡れ剤、および、分散剤等を挙げることができる。
ここで、これらの添加剤については上記「Ａ．熱転写受像シート」の項において説明したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
【０１１４】
ｃ．クッション層形成用塗工液
本工程に用いられるクッション層形成用塗工液は、少なくとも樹脂材料および冷却ゲル化剤を含み、これらが水系溶媒に溶解・分散されたものである。
ここで、上記樹脂材料については上記「Ａ．熱転写受像シート」の項において説明したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。また、上記水系溶媒については、上記受容層形成用塗工液に用いられるものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
【０１１５】
本工程に用いられるクッション層形成用塗工液の粘度としては、本工程において基材シート上に同時に塗布される他の塗工液と混合しない程度であれば特に限定されるものではない。なかでも本工程においては、４０℃において１ｍＰａ・ｓ〜５０ｍＰａ・ｓの範囲であることが好ましく、特に５ｍＰａ・ｓ〜４０ｍＰａ・ｓの範囲内であることが好ましい。
また、２０℃における粘度が０．５Ｐａ・ｓ〜１０Ｐａ・ｓの範囲であることが好ましく、特に１Ｐａ・ｓ〜７Ｐａ・ｓの範囲内であることが好ましい。
【０１１６】
なお、上記粘度は、例えばエー・アンド・ディ社製 音叉型振動式粘度計 ＳＶ−１０を用いて測定することができる。
【０１１７】
本工程に用いられるクッション層形成用塗工液の固形分濃度としては、粘度を所望の程度にできる範囲内であれば特に限定されるものではないが、なかでも１０質量％〜５０質量％の範囲内、なかでも１０質量％〜４０質量％の範囲内であることが好ましい。固形分濃度が低すぎると、溶媒の大半が無駄になる可能性があり、固形分濃度が高すぎると、塗工液の保存安定性が低下し、粘度が上昇する可能性があるからである。
【０１１８】
上記クッション層形成用塗工液中に含まれる冷却ゲル化剤の含有量としては、上記多孔質層形成用塗工液に所望の粘度特性を付与できる範囲内であれば特に限定されるものではない。なかでも本工程においては、クッション層形成用塗工液の固形分重量換算で５０質量％以下であることが好ましく、特に５質量％〜３５質量％の範囲内であることが好ましく、さらに５質量％〜２０質量％の範囲内であることが好ましい。冷却ゲル化剤の含有量が上記範囲よりも少ないと、例えば、本工程において多孔質層とスリップ層とが基材シート上に塗布された際に、両層が混合してしまうおそれがあるからである。また、上記範囲よりも多いと、例えば、本工程において上記クッション層形成用塗工液を上記基材シート上に塗布する際に、スジやムラなどが生じやすくなる場合があるからである。
【０１１９】
さらに、上記クッション層形成用塗工液に含まれる樹脂材料の固形分濃度としては、所望のクッション性を有するクッション層を得ることができる範囲内であれば特に限定されるものではないが、例えば、クッション層形成用塗工液の固形分中、５０質量％〜９０質量％の範囲内であることが好ましく、６０質量％〜９０質量％の範囲内であることがより好ましく、７０質量％〜９０質量％の範囲内であることがさらに好ましい。
【０１２０】
本工程に用いられるクッション層形成用塗工液には、上記樹脂材料および冷却ゲル化剤以外の他の化合物が含まれていてもよい。このような他の化合物としては、ノニオン系シリコーン系等の界面活性剤、イソシアネート化合物等の硬化剤、濡れ剤、および分散剤等を挙げることができる。
【０１２１】
（２）スリップ層形成用塗工液
次に本工程に用いられるスリップ層形成用塗工液について説明する。本工程に用いられるスリップ層形成用塗工液は、水系溶媒が用いられ、冷却ゲル化剤および、上述した機能性層形成用塗工液に含まれる機能性材料を含み、粘度が１ｃｐ〜３０ｃｐの範囲内であって、かつ粘度が上記機能性層形成用塗工液よりも低いものである。
以下、このようなスリップ層形成用塗工液について説明する。
【０１２２】
なお、スリップ層形成用塗工液に用いられる冷却ゲル化剤および水系溶媒については、上記「（１）機能性層形成用塗工液」の項において説明したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
【０１２３】
本工程に用いられるスリップ形成用塗工液の粘度は、上記機能性層形成用塗工液よりも低く、かつ、１ｃｐ〜３０ｃｐの範囲内であれば特に限定されるものではない。なかでも本工程に用いられるスリップ層形成用塗工液の粘度は、４ｃｐ〜２６ｃｐの範囲内であることがより好ましく、８ｃｐ〜２２ｃｐの範囲内であることがさらに好ましい。
ここで、上記粘度は、エー・アンド・ディ社製 音叉式振動型粘度計 ＳＶ−１０を用いて４０℃における粘度を測定した値を意味するものとする。
【０１２４】
スリップ層形成用塗工液における機能性材料と、冷却ゲル化剤、その他の添加剤からなる全固形分の含有量は、概塗布液中の固形分濃度として１質量％〜２０質量％であることが好ましく、４質量％〜１５質量％であることがより好ましく、６質量％〜１２質量％であることがさらに好ましい。全固形分に対する含有量がこれより少ないと形成された受像紙において、スリップ層の塗布効果が十分に得られず、機能性層と基材の密着性をあげる効果が十分ではない。逆に含有量がこれより多いと、一般に粘度が必要以上に増大することとなり、スリップ層が基材シート表面に濡れ拡がることが困難となる。
【０１２５】
また、上記スリップ層形成用塗工液中に含まれる冷却ゲル化剤の含有量としては、上記スリップ層形成用塗工液に所望の粘度特性を付与できる範囲内であれば特に限定されるものではない。なかでも本工程においては、スリップ層形成用塗工液の固形分重量換算で４０質量％〜９５質量％の範囲内であることが好ましく、特に５０質量％〜８５質量％の範囲内であることが好ましく、さらに６０質量％〜７５質量％の範囲内であることが好ましい。
【０１２６】
なお、上記スリップ層形成用塗工液に用いられる機能性材料は、上述した機能性層形成用塗工液に用いられるもの同一の材料であるため、上記機能性材料の種類に応じて適宜決定されることになる。
【０１２７】
（３）基材シート
次に、本工程に用いられる基材シートについて説明する。本工程に用いられる基材シートは、本工程おいて形成される塗膜を支持する機能を有するものである。
ここで、本工程に用いられる基材シートについては、上記「Ａ．熱転写受像シート」の項において説明したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
【０１２８】
（４）同時多層塗布方法
次に、本工程において上記機能性層形成用塗工液と上記スリップ層形成用塗工液とを上記基材シート上に塗布する方法について説明する。本工程においては、基材シート上に、上記機能性層形成用塗工液と、上記スリップ層形成用塗工液とを同時に塗布する方法が用いられる。すなわち、本工程においてはスリップ層と機能性層とがこの順で積層され、かつ上記基材シート、上記スリップ層および上記機能性層とが互いに接するように、上記機能性層形成用塗工液および上記スリップ層形成用塗工液を上記基材シート上に同時塗布する方法が用いられる。
【０１２９】
本工程において上記基材シート上に、上記機能性層形成用塗工液と上記スリップ層形成用塗工液とを上述したような態様で塗布する方法としては、各層が交じり合うことなく、均一な厚みで塗布することができる方法であれば特に限定されるものではない。なかでも本工程においては、通常、各層を形成する塗工液を上下に重ねた状態のままスライドさせて塗布するスライドコート法が用いられる。
【０１３０】
ここで、スライドコート法とは、例えば、図５に示すように、熱転写受像シートの各層を構成する複数の塗工液１１〜１３を上下に重ねた状態のまま、バックロール１４に巻きつけた基材シート１５に塗布する方法である。塗工品質の観点から見ると、スライドコート法は、膜厚均一性に優れ、回転部がないため塗工液の飛散による品質不良が発生しにくく、摩擦部がないため塗布部での原反切れの発生によるロスが発生しにくいという利点を有する。また、塗工液のハンドリング性の観点から見ると、スライドコート法は、塗工液の濃度、粘度、組成が変化しにくく、反応性が高く経時的に変化する塗工液を用いることができ、さらに塗工液を使い切ることができることから無駄が生じにくく、また、高固形分塗工液を用いることができるため、溶媒使用量を削減することができるという利点を有する。
【０１３１】
本工程において上記基材シート上に上記機能性層形成用塗工液および上記スリップ層形成用塗工液を同時塗布する態様としては、上記機能性層形成用塗工液の種類や本発明によって製造する熱転写受像シートの種類等に応じて適宜決定されるものである。このような態様としては特に限定されるものではないが、なかでも本工程に用いられる具体的な態様としては、次のような例を挙げることができる。
【０１３２】
第１の例は、上記機能性層形成用塗工液が、上記機能性材料として中空粒子を含有する多孔質層形成用塗工液である例である。このような例においては、本工程は、さらに染料染着性を有しかつ水系溶媒に分散・溶解可能な受容層形成用樹脂および冷却ゲル化剤を含有する水系の受容層形成用塗工液を用い、上記機能性層上に受容層も同時に形成するものであってもよい。これにより本発明によって製造される熱転写受像シートの印画感度を向上させることができるからである。
【０１３３】
第２の例は、上記機能性層形成用塗工液が、上記機能性材料としてスチレン・ブタジエンゴム（ＳＢＲ）を含有するクッション層形成用塗工液である例である。このような例においては、本工程は、さらに冷却ゲル化剤および中空粒子を含有する水系の多孔質層形成用塗工液と、染料染着性を有しかつ水系溶媒に分散・溶解可能な受容層形成用樹脂および冷却ゲル化剤を含有する水系の受容層形成用塗工液を用い、上記機能性層上に多孔質層および受容層がこの順で積層されるように同時に形成するものであってもよい。これにより本発明によって製造される熱転写受像シートの印加感度をさらに向上させることができるからである。
【０１３４】
第３の例は、上記機能性層形成用塗工液が、上記機能性材料として染料染着性を有しかつ水系溶媒に分散・溶解可能な受容層形成用樹脂を含有する受容層形成用塗工液である例である。
【０１３５】
なお、本工程においては少なくとも上記機能性層形成用塗工液および上記スリップ層形成用塗工液が同時に塗布されることになるが、塗布時に両塗工液が互いに混合しないように、通常、隣接する塗工液間の表面張力の差が一定の範囲内となるように調整される。
【０１３６】
２．冷却処理工程
次に、本発明に用いられる冷却処理工程について説明する。本工程は、上記同時多層塗布工程において、基材シート上に形成された塗膜を冷却する工程である。
【０１３７】
本工程において基材シート上に形成された塗膜を冷却する方法としては、上記塗膜を所望の温度に冷却できる方法であれば特に限定されるものではない。このような方法としては、例えば、冷却された基材シート上に、上記塗膜を塗布する方法、上記基材シートを搬送するロールの表面を冷却し、基材シートを介して上記塗膜を冷却する方法、上記塗膜に冷風を吹き付ける方法、上記塗膜が形成された基材シートを所望の温度以下の室温に調整された冷却ゾーンを通過させる方法等を挙げることができる。なかでも本工程においては冷却された基材シート上に、上記塗膜を塗布する方法を用いることが好ましい。このような方法によれば上記基材シート上に上記塗膜が塗布された直後に、当該塗膜を強制冷却することができるため、上記塗膜を構成する複数の層が混合することを防止できるからである。
【０１３８】
本工程において、上記塗膜を冷却する温度としては、上記塗膜を構成する各層の粘度を、各層が互いに混合しない程度に向上させることができる範囲であれば特に限定されるものではない。また、本工程における冷却温度は、上述した冷却ゲル化剤の種類にも依存するものである。なかでも本工程においては、冷却温度は０℃〜３０℃の範囲であることが好ましく、特に０℃〜２５℃の範囲内であることが好ましく、さらに３℃〜２０℃の範囲内であることが好ましい。
【０１３９】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【０１４０】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
【０１４１】
１．実施例１
基材シート１としてＲＣペーパー（ＳＴＦ−１５０、三菱製紙社製）を用意し、下記組成のスリップ層形成用塗工液Ａおよび多孔質層形成用塗工液および受容層形成用塗工液を、上記基材シートにこの順で積層されるように、スライド塗布機により同時重層塗布した。なお、各層のウエット膜厚は、スリップ層形成用塗工液Ａ２０μｍ、多孔質層形成用塗工液１００μｍ、および受容層形成用塗工液４０μｍとした。また、乾燥後の膜厚はそれぞれ１μｍ、３０μｍ、および１０μｍであった。
【０１４２】
（スリップ層形成層用塗工液Ａ）
・中空粒子（ＨＰ−９１、ロームアンドハース社製） １００重量部
・ゼラチン（ＲＲ、新田ゼラチン社製） ５０重量部
・純水 ８５０重量部
【０１４３】
（多孔質層形成層用塗工液）
・中空粒子（ＨＰ−９１、ロームアンドハース社製） ４５０重量部
・ゼラチン（ＲＲ、新田ゼラチン社製） ５０重量部
・界面活性剤（サーフィノール４４０、日信化学工業社製） １．５０重量部
・純水 ５００重量部
【０１４４】
（受容層形成用塗工液）
・塩化ビニル系樹脂 ３２０重量部
（アクリル酸エチル／塩化ビニル＝１０／９０共重合樹脂、分子量９万、Ｔｇ１００℃）
・ゼラチン（ＲＲ、新田ゼラチン社製） ５０重量部
・シリコーン系離型剤（ＫＦ６１５Ａ、信越化学工業社製） １０重量部
・界面活性剤（サーフィノール４４０、日信化学工業社製） ３重量部
・純水 ６００重量部
【０１４５】
その後、５℃に調整した冷却ゾーンにおいて６０秒強制冷却した後、さらに５０℃において５分乾燥することによって、熱転写受像シートを作製した。
【０１４６】
同時重層塗布の際に、塗布液間の混ざりやはじきは発生せず、各層の厚みが均一な熱転写受像シートが得られた。テープ剥離テストの密着性も良好であった。以下の方法により評価した印画特性も良好であった。
【０１４７】
（印画特性の評価方法）
上記熱転写受像シートと熱転写シート（キャノン社製、Ｃｐ７２０用）とを用いて、イエロー、マゼンタ、シアンの順に諧調パターンを印画後、保護層を転写し、印画物を得た。
印画条件を下に示す。
【０１４８】
（印画条件）
発熱体平均抵抗値：５２８５（Ω）
主走査方向印字密度：３００ｄｐｉ
副走査方向印字密度：３００ｄｐｉ
印加電圧：２２（Ｖ）
１ライン周囲：２（ｍｓｅｃ．／ｌｉｎｅ）
印字開始温度：２７（℃）
印加パルス（諧調制御方法）：１ライン周期中に、１ライン周期を２５６に等分割したパルス長をもつ分割パルスの数を０から２５５個まで可変できるマルチパルス方式のテストプリンターを用い、各分割パルスのＤｕｔｙ比を９０％に固定し、ライン周期当りのパルス数を、０から２５５個を１８ステップに分割した。これにより、１８階調に異なるエネルギーを与えることができる。
【０１４９】
（染料染着性の評価）
上記印刷物について、目視にて確認評価した。
【０１５０】
２．実施例２
実施例１における、スリップ層形成用塗工液Ａおよび多孔質層形成用塗工液および、受容層形成用塗工液、並びに、下記クッション層形成用塗工液を使用した。基材シートとしてＲＣペーパー（ＳＴＦ−１５０、三菱製紙社製）を用意し、スリップ層形成用塗工液、多孔質層形成用塗工液、クッション層形成用塗工液および受容層形成用塗工液が、上記基材シートにこの順で積層されるように、スライド塗布機により同時重層塗布した。なお、各層のウエット膜厚は、スリップ層形成用塗工液Ａ２０μｍ、多孔質層形成用塗工液１００μｍ、クッション層形成用塗工液、２０μｍ、および受容層形成用塗工液４０μｍとした。また、乾燥後の膜厚はそれぞれ１μｍ、３０μｍ、５μｍ、および１０μｍであった。
【０１５１】
（クッション層形成用塗工液）
・クッション材（ＳＢＲ：ＪＳＲ０６０９、ＪＳＲ社製） １００重量部
・ゼラチン（ＲＲ、新田ゼラチン社製） ５０重量部
・界面活性剤（サーフィノール４４０、日信化学工業社製） ０重量部
・純水 ８５０重量部
【０１５２】
その結果、同時重層塗布の際に、塗布液間の混ざりやはじきは発生せず、各層の厚みが均一な熱転写受像シートが得られた。テープ剥離テストの密着性も良好であった。実施例１と同様の方法によって評価した印画特性も良好であった。
【０１５３】
３．実施例３
実施例２における、スリップ層形成用塗工液Ａ、クッション層用塗工液、受容層形成用塗工液を使用した。基材シートとしてＲＣペーパー（ＳＴＦ−１５０、三菱製紙社製）を用意し、基材シートにスリップ層形成用塗工液Ａ、クッション層形成用塗工液および受容層形成用塗工液が、上記基材シートにこの順で積層されるように、スライド塗布機により同時重層塗布した。その後、７℃に調整した冷却ゾーンにおいて６０秒強制冷却した後、さたに５０℃において５分乾燥することによって、熱転写受像シートを作製した。
【０１５４】
その結果、同時重層塗布の際に、塗布液間の混ざりやはじきは発生せず、各層の厚みが均一な熱転写受像シートが得られた。テープ剥離テストの密着性も良好であった。実施例１と同様の方法によって評価した印画特性も良好であった。
【０１５５】
４．実施例４
実施例１における、スリップ層形成用塗布液Ａおよびクッション層用塗工液および多孔質層形成用塗工液および、受容層形成用塗工液を使用した。基材シートとしてＲＣペーパー（ＳＴＦ−１５０、三菱製紙社製）を用意し、スリップ層形成用塗布液Ａ、クッション層形成用塗工液、多孔質層形成用塗工液、および受容層形成用塗工液が、上記基材シートにこの順で積層されるように、スライド塗布機により同時重層塗布した。その後、７℃に調整した冷却ゾーンにおいて６０秒強制冷却した後、さらに５０℃において５分乾燥することによって、熱転写受像シートを作製した。
【０１５６】
同時重層塗布の際に、塗布液間の混ざりやはじきは発生せず、各層の厚みが均一な熱転写受像シートが得られた。テープ剥離テストの密着性も良好であった。実施例１と同様の方法によって評価した印画特性も良好であった。
【０１５７】
５．実施例５
実施例１における、スリップ層形成用塗布液Ａおよび、受容層形成用塗工液を使用した。基材シートとしてＲＣペーパー（ＳＴＦ−１５０、三菱製紙社製）を用意し、スリップ層形成用塗工液および受容層形成用塗工液が、上記基材シートにこの順で積層されるように、スライド塗布機により同時重層塗布した。その後、７℃に調整した冷却ゾーンにおいて６０秒強制冷却した後、さらに５０℃において５分乾燥することによって、熱転写受像シートを作製した。
【０１５８】
同時重層塗布の際に、塗布液間の混ざりやはじきは発生せず、各層の厚みが均一な熱転写受像シートが得られた。テープ剥離テストの密着性も良好であった。実施例１と同様の方法によって評価した印画特性も良好であった。
【０１５９】
６．比較例１
実施例１においてスリップ層形成用塗布液Ａを以下のスリップ層形成用塗布液Ｂに変えた以外は同様にして、熱転写受像シートを作製した。
【０１６０】
（スリップ層形成層用塗工液Ｂ）
・中空粒子（ＨＰ−９１、ロームアンドハース社製） ０重量部
・ゼラチン（ＲＲ、新田ゼラチン社製） ５０重量部
・純水 ９５０重量部
【０１６１】
同時重層塗布の際に、塗布液間の混ざりやはじきは発生せず、各層の厚みが均一な熱転写受像シートが得られた。しかしながら、テープ剥離テストにおいては、密着不良が発生した。印画特性は可能であった。
【０１６２】
７．比較例２
実施例１においてスリップ層を形成しない以外は同様にして、熱転写受像シートを作製した。その結果、同時重層塗布の際にはじきが発生し、均一塗布は困難であった。印画は困難であった。
【図面の簡単な説明】
【０１６３】
【図１】本発明の熱転写受像シートの一例を示す概略図である。
【図２】本発明の熱転写受像シートの他の例を示す概略図である。
【図３】本発明の熱転写受像シートの他の例を示す概略図である。
【図４】本発明の熱転写受像シートの他の例を示す概略図である。
【図５】スライドコート法を説明する説明図である。
【符号の説明】
【０１６４】
１，１５ … 基材シート
２ … スリップ層
３ … 機能性層
４ … 受容層
５ … 多孔質層
６ … クッション層
１０，１０Ａ，１０Ｂ，１０Ｃ … 熱転写受像シート
１１，１２，１３ … 塗工液
１４ … バックロール
【特許請求の範囲】
【請求項１】
基材シートと、前記基材シート上に形成され、冷却ゲル化剤および機能性材料を含有する機能性層とを有する熱転写受像シートであって、
前記基材シートと前記機能性層との間に、前記基材シート上に直接形成され、冷却ゲル化剤および前記機能性材料を含有するスリップ層が形成されており、かつ、前記機能性層が前記スリップ層上に直接形成されていることを特徴とする、熱転写受像シート。
【請求項２】
前記機能性層が、前記機能性材料として中空粒子を含有する多孔質層であり、かつ、前記多孔質層上に、染料染着性を有しかつ水系溶媒に分散・溶解可能な受容層形成用樹脂および冷却ゲル化剤を含有する受容層が形成されていることを特徴とする、請求項１に記載の熱転写受像シート。
【請求項３】
前記機能性層が、前記機能性材料として樹脂材料を含有するクッション層であり、かつ、前記クッション層上に冷却ゲル化剤および中空粒子を含有する多孔質層が形成されており、さらに前記多孔質層上に染料染着性を有しかつ水系溶媒に分散・溶解可能な受容層形成用樹脂および冷却ゲル化剤を含有する受容層が形成されていることを特徴とする、請求項１に記載の熱転写受像シート。
【請求項４】
前記機能性層が、前記機能性材料として染料染着性を有しかつ水系溶媒に分散・溶解可能な受容層形成用樹脂を含有する受容層であることを特徴とする、請求項１に記載の熱転写受像シート。
【請求項５】
前記スリップ層の厚みが３μｍ〜３０μｍの範囲内であることを特徴とする、請求項１から請求項３までのいずれかの請求項に記載の熱転写受像シート。
【請求項６】
冷却ゲル化剤および機能性材料を含む水系の機能性層形成用塗工液と、冷却ゲル化剤および前記機能性材料を含み、粘度が１ｃｐ〜３０ｃｐの範囲内であって、かつ粘度が前記機能性層形成用塗工液よりも低い水系のスリップ層形成用塗工液とを用い、
基材シート上に、スリップ層と機能性層とがこの順で積層され、かつ前記基材シート、前記スリップ層および前記機能性層とが互いに接するように、前記機能性層形成用塗工液および前記スリップ層形成用塗工液を前記基材シート上に同時塗布する同時多層塗布工程と、
前記同時多層塗布工程において、基材シート上に形成された塗膜を冷却する、冷却処理工程と、を有することを特徴とする熱転写受像シートの製造方法。
【請求項７】
前記機能性層形成用塗工液が、前記機能性材料として中空粒子を含有する水系の多孔質層形成用塗工液であり、かつ、前記同時多層塗布工程が、さらに染料染着性を有しかつ水系溶媒に分散・溶解可能な受容層形成用樹脂および冷却ゲル化剤を含有する水系の受容層形成用塗工液を用い、前記機能性層上に受容層も同時に形成するものであることを特徴とする、請求項６に記載の熱転写受像シートの製造方法。
【請求項８】
前記機能性層形成用塗工液が、前記機能性材料として樹脂材料を含有するクッション層形成用塗工液であり、かつ前記同時多層塗布工程が、さらに冷却ゲル化剤および中空粒子を含有する水系の多孔質層形成用塗工液と、染料染着性を有しかつ水系溶媒に分散・溶解可能な受容層形成用樹脂および冷却ゲル化剤を含有する水系の受容層形成用塗工液と、を用い、前記機能性層上に多孔質層および受容層がこの順で積層されるように同時に形成するものであることを特徴とする、請求項６に記載の熱転写受像シートの製造方法。
【請求項９】
前記機能性層形成用塗工液が、前記機能性材料として染料染着性を有しかつ水系溶媒に分散・溶解可能な受容層形成用樹脂を含有する水系の受容層形成用塗工液であることを特徴とする、請求項１に記載の熱転写受像シート。
【請求項１】
基材シートと、前記基材シート上に形成され、冷却ゲル化剤および機能性材料を含有する機能性層とを有する熱転写受像シートであって、
前記基材シートと前記機能性層との間に、前記基材シート上に直接形成され、冷却ゲル化剤および前記機能性材料を含有するスリップ層が形成されており、かつ、前記機能性層が前記スリップ層上に直接形成されていることを特徴とする、熱転写受像シート。
【請求項２】
前記機能性層が、前記機能性材料として中空粒子を含有する多孔質層であり、かつ、前記多孔質層上に、染料染着性を有しかつ水系溶媒に分散・溶解可能な受容層形成用樹脂および冷却ゲル化剤を含有する受容層が形成されていることを特徴とする、請求項１に記載の熱転写受像シート。
【請求項３】
前記機能性層が、前記機能性材料として樹脂材料を含有するクッション層であり、かつ、前記クッション層上に冷却ゲル化剤および中空粒子を含有する多孔質層が形成されており、さらに前記多孔質層上に染料染着性を有しかつ水系溶媒に分散・溶解可能な受容層形成用樹脂および冷却ゲル化剤を含有する受容層が形成されていることを特徴とする、請求項１に記載の熱転写受像シート。
【請求項４】
前記機能性層が、前記機能性材料として染料染着性を有しかつ水系溶媒に分散・溶解可能な受容層形成用樹脂を含有する受容層であることを特徴とする、請求項１に記載の熱転写受像シート。
【請求項５】
前記スリップ層の厚みが３μｍ〜３０μｍの範囲内であることを特徴とする、請求項１から請求項３までのいずれかの請求項に記載の熱転写受像シート。
【請求項６】
冷却ゲル化剤および機能性材料を含む水系の機能性層形成用塗工液と、冷却ゲル化剤および前記機能性材料を含み、粘度が１ｃｐ〜３０ｃｐの範囲内であって、かつ粘度が前記機能性層形成用塗工液よりも低い水系のスリップ層形成用塗工液とを用い、
基材シート上に、スリップ層と機能性層とがこの順で積層され、かつ前記基材シート、前記スリップ層および前記機能性層とが互いに接するように、前記機能性層形成用塗工液および前記スリップ層形成用塗工液を前記基材シート上に同時塗布する同時多層塗布工程と、
前記同時多層塗布工程において、基材シート上に形成された塗膜を冷却する、冷却処理工程と、を有することを特徴とする熱転写受像シートの製造方法。
【請求項７】
前記機能性層形成用塗工液が、前記機能性材料として中空粒子を含有する水系の多孔質層形成用塗工液であり、かつ、前記同時多層塗布工程が、さらに染料染着性を有しかつ水系溶媒に分散・溶解可能な受容層形成用樹脂および冷却ゲル化剤を含有する水系の受容層形成用塗工液を用い、前記機能性層上に受容層も同時に形成するものであることを特徴とする、請求項６に記載の熱転写受像シートの製造方法。
【請求項８】
前記機能性層形成用塗工液が、前記機能性材料として樹脂材料を含有するクッション層形成用塗工液であり、かつ前記同時多層塗布工程が、さらに冷却ゲル化剤および中空粒子を含有する水系の多孔質層形成用塗工液と、染料染着性を有しかつ水系溶媒に分散・溶解可能な受容層形成用樹脂および冷却ゲル化剤を含有する水系の受容層形成用塗工液と、を用い、前記機能性層上に多孔質層および受容層がこの順で積層されるように同時に形成するものであることを特徴とする、請求項６に記載の熱転写受像シートの製造方法。
【請求項９】
前記機能性層形成用塗工液が、前記機能性材料として染料染着性を有しかつ水系溶媒に分散・溶解可能な受容層形成用樹脂を含有する水系の受容層形成用塗工液であることを特徴とする、請求項１に記載の熱転写受像シート。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【公開番号】特開２００９−１９６１８７（Ｐ２００９−１９６１８７Ａ）
【公開日】平成２１年９月３日（２００９．９．３）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００８−３９３２２（Ｐ２００８−３９３２２）
【出願日】平成２０年２月２０日（２００８．２．２０）
【出願人】（０００００２８９７）大日本印刷株式会社 (14,506)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２１年９月３日（２００９．９．３）
【国際特許分類】
【出願日】平成２０年２月２０日（２００８．２．２０）
【出願人】（０００００２８９７）大日本印刷株式会社 (14,506)
【Ｆターム（参考）】
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