説明

熱間圧延H形鋼の製造方法、及びユニバーサルエッジャミルの竪ロール

【課題】多数のロールを使用することなく製品疵や寸法不良の発生を抑制しながら熱間圧延H形鋼を製造する。
【解決手段】H形鋼のウェブ高さ調整を行うユニバーサルエッジャミルを用いて熱間圧延H形鋼を製造する際に、前記ユニバーサルエッジャミルの竪ロールとして、両端にR部を介した多段テーパー加工を施された竪ロールを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユニバーサルエッジャミルを用いた熱間圧延H形鋼の製造方法、及びユニバーサルエッジャミルの竪ロールに関し、具体的には、多数のロールを使用することなく製品疵や寸法不良の発生を抑制しながら熱間圧延H形鋼を製造する方法、及びユニバーサルエッジャミルの竪ロールに関する。
【背景技術】
【0002】
図5は、H形鋼の圧延に用いる粗ユニバーサルミル1を示す説明図であり、図6は、H形鋼の圧延に用いる2重式ロールのエッジャミル2を示す説明図であり、図7、8は、いずれも、H形鋼の圧延に用いる仕上げユニバーサルミル3−1、3−2を示す説明図である。
【0003】
従来、H形鋼の熱間圧延は、2重式孔型ロール粗圧延機(図示しない)で鋳片をドックボーン形の粗形材とした後、図5に示す粗ユニバーサルミル1と、図2に示す2重式ロールのエッジャミル2とにより構成されるミル群と、図7または図8に示す仕上げユニバーサルミル3−1又は3−2とを用いて行われる。なお、図7は、上下の水平ロールが幅固定ロールである場合を示し、図8は上下の水平ロールが幅可変ロールである場合を示す。
【0004】
すなわち、前記ミル群により複数パスの往復圧延による中間圧延が行われ、次いで、仕上げユニバーサルミルにより1パス圧延でH形鋼に仕上げられる.
ここで、図6に示すエッジャミル2による粗圧延では、上水平ロール4aと下水平ロール4bとにより、被圧延材5のフランジ幅やウェブ面中心位置などの各部寸法の精度が確保される。
【0005】
図9は、中間圧延を終了した被圧延材5のウェブ面に芯ズレが生じた状況を示す説明図である。
しかし、粗ユニバーサルミル1における粗圧延において被圧延材のフランジ幅拡がりの不均一や噛み込み姿勢の不良、あるいは上下の水平ロールの不整合等に起因して、図9に示す量{(b1−b2)/2}のウェブ面5aの芯ズレが生じた場合、2重式ロールのエッジャミル2では矯正し切れないことがある。
【0006】
ユニバーサルエッジャミルを使用して粗圧延段階でのH形鋼の寸法精度を有効に向上させる圧延方法が特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−158003号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1により開示された圧延方法は、確かに有用であるものの、品質安定化のためにユニバーサルエッジャミルの竪ロールの幅を制限する必要があるので、被圧延材の圧延サイズ毎に竪ロール段取り時間が必要となるとともにロール保有数の増加も避けられないため、圧延H形鋼の製造コストの上昇は避けられず、実操業ではあまり有効とはいえない。
【0009】
本発明者は、従来の技術が有する上記課題に鑑み、ユニバーサルエッジャミルの竪ロール幅として、最小フランジ幅製品にとって問題のない幅であり、且つその幅の竪ロールを使用して最大フランジ幅製品の圧延が可能であることが望ましいと考え、実際にユニバーサルエッジャミルの竪ロール幅として最大フランジ幅350mmに対して大変小さな幅156mmの竪ロールを使用した圧延を行い、製品フランジ幅に依らず竪ロールを共通化することによるロール段取り時間の削減およびロール保有数増加の最小化を図った。実際の圧延では、ユニバーサルエッジャミルでフランジ厚み圧下は行わず、フランジ先端を拘束した状態での製品ウェブ高さ調整のみを行った。
【0010】
図10は、本発明らが行った圧延試験により得られた製品6の外観を示す説明図である。結果として、製品6のウェブ面中心位置の矯正効果を確認することができたものの、製品6のフランジ6bの外面には、図10に示すような製品疵7が発生してしまった。
【0011】
本発明は、多数のロールを使用することなく製品疵や寸法不良の発生を抑制しながら熱間圧延H形鋼を製造する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、ウェブ高さ調整を行うユニバーサルエッジャミルの竪ロールの形状を工夫すること、具体的には、両端にR部を介した多段テーパー加工を施された竪ロールを用いることによって、製品寸法に依らず共通のロールを使用しても製品疵や寸法不良等の品質不良を発生させることがないことを知見し、本発明を完成した。
【0013】
本発明は、H形鋼のウェブ高さ調整を行うユニバーサルエッジャミルを用いて熱間圧延H形鋼を製造する際に、ユニバーサルエッジャミルの竪ロールとして、両端にR部を介した多段テーパー加工を施された竪ロールを用いることを特徴とする熱間圧延H形鋼の製造方法である。
【0014】
また、本発明は、H形鋼のウェブ高さ調整を行うユニバーサルエッジャミルの竪ロールであって、両端にR部を介した多段テーパー加工を施されたことを特徴とするユニバーサルエッジャミルの竪ロールである。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、多数のロールを使用することなく製品疵や寸法不良の発生を抑制しながら熱間圧延H形鋼を製造することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、ユニバーサルエッジャミルの構成を示す説明図であり、上下の水平ロールが幅固定ロールである場合を示す。
【図2】図2は、ユニバーサルエッジャミルの構成を示す説明図であり、上下の水平ロールが幅可変ロールである場合を示す。
【図3】図3は、ユニバーサルエッジャミルの竪ロールを拡大して示す説明図であり、図3(a)は従来例を示し、図3(b)は本発明例を示す。
【図4】図4は、ユニバーサルエッジャミルにおけるウェブ高さ調整時のフランジ外面付近を拡大して示す説明図であり、図4(a)は従来例を示し、図4(b)は本発明例を示す。
【図5】図5は、H形鋼の圧延に用いる粗ユニバーサルミルを示す説明図である。
【図6】図6は、H形鋼の圧延に用いる2重式ロールのエッジャミルを示す説明図である。
【図7】図7は、H形鋼の圧延に用いる仕上げユニバーサルミルを示す説明図である。
【図8】図8は、H形鋼の圧延に用いる仕上げユニバーサルミルを示す説明図である。
【図9】図9は、中間圧延を終了した被圧延材のウェブ面に芯ズレが生じた状況を示す説明図である。
【図10】図10は、本発明らが行った圧延試験により得られた製品の外観を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態を、添付図面を参照しながら説明する。
図1、2は、ユニバーサルエッジャミル8−1、8−2の構成を示す説明図であり、図1は、上下の水平ロール9a、9bが幅固定ロールである場合を示し、図2は、上下の水平ロール9a、9bが幅可変ロールである場合を示す。また、図3は、ユニバーサルエッジャミル8−1、8−2の竪ロール10を拡大して示す説明図であり、図3(a)は従来例を示し、図3(b)は本発明例を示す。
【0018】
以降の説明では、図5に示すような粗ユニバーサルミル1を用いてウェブ厚およびフランジ厚の圧下を行い、図6に示すようなエッジャミルを用いてフランジ幅圧下を行うこととし、図1や図2に示すようなユニバーサルエッジャミル8−1、8−2では、積極的な厚み圧下および幅圧下は行わず、ウェブ中心偏りの矯正のためにフランジ先端を拘束した状態でウェブ高さの縮小のみ行う場合を例にとる。
【0019】
本発明における圧延ラインのミル配置は、図1又は2に示すユニバーサルエッジャミル8−1又は8−2が、図5に示す粗ユニバーサルミル1、及び図6に示すようなエッジャミル2により構成されるミル群と、図7又は図8に示すような仕上げユニバーサルミル3−1又は3−2との中間に、配置される。
【0020】
このようなミル配置による従来の圧延過程では、ユニバーサルエッジャミル8−1又は8−2でのウェブ高さ調整は、仕上げユニバーサルミル3−1又は3−2でのウェブ高さ調整と異なり、竪ロールがフランジ外面全体と接触しないため、ウェブ高さ縮小量が大きい時には、図10を参照しながら説明したようにウェブ高さ調整後の製品フランジ6bの外面にウェブ高さ調整痕7が残存し、製品疵の要因となる。
【0021】
そのため、本発明では、図3(b)に示すように、ユニバーサルエッジャミル8−1又は8−2の竪ロール10として、両端にR部11を介した多段テーパー加工を施された第1段目テーパー12及び第2段目テーパー13を有する竪ロール10を用いることによって、ウェブ高さ調整痕7の発生を抑制する。
【0022】
図3(a)に示すように、ユニバーサルエッジャミル8−1又は8−2の従来のロール10は、粗ユニバーサルミルおよびエッジャミルと同じ1段テーパー14を有しており、1段テーパー14は直線形状となっている。1段テーパー14の傾斜角度θは通常は5°程度である。
【0023】
これに対し、図3(b)に示す本発明で、ロール幅方向の任意の箇所11からテーパーを変更させて、第1段目テーパー12及び第2段目テーパー13からなる2段テーパー形状としている。
【0024】
テーパー決定の考え方について以下に説明する。
図4は、ユニバーサルエッジャミルにおけるウェブ高さ調整時のフランジ外面付近を拡大して示す説明図であり、図4(a)は従来例を示し、図4(b)は本発明例を示す。
【0025】
従来例での圧延では、図4(a)中のA部においてフランジ外面と竪ロールの接触境界点がロールテーパー有効域外となっている。このため、過度のウェブ高さ調整を実施すると、フランジ幅方向に極端なウェブ高さ調整力変曲点が発生し、これにより調整痕7が被圧延材に残存する。
【0026】
これに対し、本発明例の圧延では、図4(b)中のB部に示すようにフランジ外面と竪ロールの接触境界点をロールテーパー有効域内に設定することができるので、フランジ幅方向に極端なウェブ高さ調整力変曲点が発生させないようにして、調整痕7の発生を抑制することができる。
【0027】
調整痕7の発生を抑制するためのテーパー設定としては、1段目テーパー12(フランジ中央部に近い部分のテーパー)の傾斜角度は、フランジ先端の拘束状態保持のため5〜10°程度であることが望ましく、また2段目テーパー13(フランジ先端部に近い部分のテーパー)の傾斜角度は、フランジ外面と竪ロールの接触境界点がテーパー有効域内に設定されることを考慮して10〜20°程度であることが望ましい。
【0028】
また、1段目テーパー12と、2段目テーパー13との境界点11は、フランジ先端の拘束状態保持のため、竪ロール幅の中心からロール幅の4分の1以上離れた箇所であることが望ましい。
【0029】
従来例の竪ロールを有するユニバーサルエッジャミルを用いて被圧延材の圧下を行うと、7mm程度以上のウェブ高さ調整の際に調整痕7が発生していたが、本発明例の竪ロールを有するユニバーサルエッジャミルを用いて被圧延材の圧下を行うと、20mm程度のウェブ高さ調整を実施しても調整痕7は残存しなかった。
【0030】
以上の説明では、竪ロール10の両端にR部11を介した2段テーパー加工を施された場合を例にとったが、本発明は2段テーパー加工には限定されず、3段以上の多段テーパー加工を施された場合にも等しく適用される。
【符号の説明】
【0031】
1 粗ユニバーサルミル
2 2重式ロールのエッジャミル
3−1、3−2 仕上げユニバーサルミル
4a 上水平ロール
4b 下水平ロール
5 被圧延材
5a ウェブ面
6 製品
7 製品疵
8−1、8−2 ユニバーサルエッジャミル
9a、9b 水平ロール
10 竪ロール
11 R部
12 第1段目テーパー
13 第2段目テーパー
14 1段テーパー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
H形鋼のウェブ高さ調整を行うユニバーサルエッジャミルを用いて熱間圧延H形鋼を製造する際に、前記ユニバーサルエッジャミルの竪ロールとして、両端にR部を介した多段テーパー加工を施された竪ロールを用いることを特徴とする熱間圧延H形鋼の製造方法。
【請求項2】
H形鋼のウェブ高さ調整を行うユニバーサルエッジャミルの竪ロールであって、両端にR部を介した多段テーパー加工を施されたことを特徴とするユニバーサルエッジャミルの竪ロール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−200780(P2012−200780A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−69664(P2011−69664)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000002118)住友金属工業株式会社 (2,544)
【Fターム(参考)】