説明

熱電変換装置

【課題】熱電素子の故障を早期に検出することができるとともに異常処置の対応が可能な熱電変換装置を実現する。
【解決手段】熱電素子モジュール30には、熱電素子12、13の電源入力側に接続される電源入力端子24a、熱電素子12、13の電源出力側に接続される電源出力端子24a、および電源入力端子24aと電源出力端子24bとの中間位置に、その中間位置における電位を検出するための中間端子24cが設けられ、電源入力端子24aと電源出力端子24b間に電源を印加したときに、各端子24a、24b、24cからの電位によって求められた各々の端子24a、24b、24c間の電圧に基づいて熱電素子モジュール30を制御する制御装置40を有する。これにより、熱電素子の故障を早期に検出することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、N型熱電素子、P型熱電素子からなる直列回路に直流電流を流通させることで吸熱、放熱が得られる熱電変換装置に関するものであり、特に、直列接続される熱電素子の故障の監視に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の熱電変換装置として、例えば、特許文献1に示すように、N型熱電素子およびP型熱電素子をこの順序で複数組直列に接続して熱電素子群を構成し、この熱電素子群を吸熱電極部材および放熱電極部材で順次直列接続するとともに、上記熱電素子群の一方に突設して吸熱電極部材それぞれに吸熱熱交換部材を結合し、さらに熱電素子群の他方に突設して放熱電極部材それぞれに放熱熱交換部材を結合し、それぞれ吸熱熱交換部分および放熱熱交換部分を構成している。
【0003】
そして、この熱交換部分をそれぞれ構成する各熱交換部材は、熱電素子群の並ぶ方向に沿って折曲される第1の折曲片および熱電素子の並ぶ方向とほぼ直角曲げられる第2の折曲片を備え、隣接する第2の折曲片の相互は電気的に絶縁して固定することにより、吸熱熱交換部分と放熱熱交換部分とを区画する壁を有するように構成している。
【0004】
これにより、吸熱電極部材および放熱電極部材からの熱を効率的に取り出して熱交換効率が良好となるとともに、区画壁が形成されることで吸熱部と放熱部との分離が容易にできる構造を備えている。
【特許文献1】特許第3166228号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1のような装置では、全ての熱電素子が吸熱電極部材もしくは放熱電極部材を介して電気的に直列接続されている。そのため、互いに隣り合う熱電素子、電極部材、および熱交換部材は、それぞれが電気的に絶縁された状態で配設されている。
【0006】
しかも、このような装置では、故障モードの一つとして、熱電素子が異常発熱して周囲の部品を溶かすなどの故障が知られている。この原因として熱電素子自体の冷却、発熱によって生ずる膨張・収縮の熱応力で素子自体にマイクロクラックが発生し、これが進行すると熱電素子が割れて完全に導通しなくなる場合と完全に割れる前に接触抵抗により異常発熱する場合がある。
【0007】
特に、熱電素子が異常発熱するときには、熱電素子に接合される電極部材、熱交換部材においても異常発熱が生ずることで周囲のケース部材が熱に溶かされて悪臭を発生する問題がある。
【0008】
これを解消するために異常発熱を検出する温度センサを全ての熱交換部材に取り付ける必要があって現実的ではなく、取り付け個数を少なくするための取り付け場所の絞込みを容易に特定できない問題もある。
【0009】
そこで、本発明の目的は、上記点を鑑みたものであり、熱電素子の故障を早期に検出することができるとともに異常処置の対応が可能な熱電変換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1ないし請求項8に記載の技術的手段を採用する。すなわち、請求項1に記載の発明では、P型とN型とからなる一対の熱電素子(12、13)を複数対配列し、全ての熱電素子(12、13)が電気的に直列接続される熱電素子モジュール(30)を備える熱電変換装置において、
熱電素子モジュール(30)には、熱電素子(12、13)の電源入力側に接続される電源入力端子(24a)、熱電素子(12、13)の電源出力側に接続される電源出力端子(24a)、および電源入力端子(24a)と電源出力端子(24b)との間の少なくとも一つもしくは二つ以上の所定位置における電位を検出するための中間端子(24c)が設けられ、電源入力端子(24a)と電源出力端子(24b)間に電源を印加したときに、各端子(24a、24b、24c)からの電位によって求められた各々の端子(24a、24b、24c)間の電圧に基づいて熱電素子モジュール(30)を制御する制御手段(40)を有することを特徴としている。
【0011】
この発明によれば、各々の端子(24a、24b、24c)間の電圧を監視することで、例えば、熱電素子(12、13)に異常が発生すれば、各々の端子(24a、24b、24c)間の電圧のバランスが崩れることで熱電素子(12、13)の故障を検出することが可能である。これにより、複雑な構成としなくても熱電素子(12、13)の故障を早期に検出することができる。
【0012】
また、各々の端子(24a、24b、24c)間の抵抗値は、素子自体の特性のバラツキ、風速分布、温度分布などによってバラツキが大きくなるため、中間端子(24c)を二つ以上の複数個設けることで、各々の端子(24a、24b、24c)間の電圧のバラツキを小さくすることができる。これにより、各々の端子(24a、24b、24c)間の電圧の精度を高めることができる。
【0013】
請求項2に記載の発明では、P型とN型とからなる一対の熱電素子(12、13)を複数対配列し、全ての熱電素子(12、13)が電気的に直列接続される熱電素子モジュール(30)を複数個有し、かつ複数の熱電素子モジュール(30)を電気的に直列接続する熱電変換装置において、
直列接続された複数の熱電素子モジュール(30)には、一方端の熱電素子モジュール(30)の電源入力側に接続される電源入力端子(24a)、他方端の熱電素子モジュール(30)の電源出力側に接続される電源出力端子(24b)、および電源入力端子(24a)と電源出力端子(24b)との間の少なくとも一つもしくは二つ以上の所定位置における電位を検出するための中間端子(24c)が設けられ、
電源入力端子(24a)と電源出力端子(24b)間に電源を印加したときに、各端子(24a、24b、24c)からの電位によって求められた各々の端子(24a、24b、24c)間の電圧に基づいて熱電素子モジュール(30)を制御する制御手段(40)を有することを特徴としている。
【0014】
この発明によれば、上述した請求項1では、一つの熱電素子モジュール(30)における熱電素子(12、13)の故障検出を図ったものであるが、複数の熱電素子モジュール(30)を使用する場合においても各々の端子(24a、24b、24c)間の電圧を監視することで熱電素子(12、13)の故障を早期に検出することができる。
【0015】
請求項3に記載の発明では、中間端子(24c)は、各々の端子(24a、24b、24c)間の電圧が略同等となる所定位置に設けられていることを特徴としている。この発明によれば、熱電素子モジュール(30)には、例えば、電源電圧、送風量、および周囲温度などの外部要因の変動がある。ところが、同一モジュールの中間位置に中間端子(24c)を設けることで、電源電圧、送風量、および周囲温度などの外部要因は、分割した二つのモジュールのそれぞれに等しく影響される。このため、これらの変動を相殺することができるため熱電素子(12、13)の故障を正確に判定することが可能である。
【0016】
請求項4に記載の発明では、制御手段(40)は、各々の端子(24a、24b、24c)間の電圧の差が所定値以上のときに熱電素子モジュール(30)への通電を停止させることを特徴としている。この発明によれば、より具体的には、熱交換部材の近傍のケース部材が熱により溶けて悪臭を発する前、もしくはケース部材が破損する前に熱電素子(12、13)への通電をいち早く停止させることができる。
【0017】
請求項5に記載の発明では、制御手段(40)は、熱電素子モジュール(30)をPWM制御によって駆動する熱電素子駆動手段(42)と各々の端子(24a、24b、24c)間の電圧を検出する電圧検出手段(440)とを設け、かつ熱電素子駆動手段(42)と電圧検出手段(440)とが時間的に同期して検出するように制御することを特徴としている。
【0018】
この発明によれば、熱電素子モジュール(30)は熱電素子駆動手段(42)によってパルス幅のONとOFFとの比率を変える制御で駆動している。従って、熱電素子モジュール(30)がONのときに、各々の端子(24a、24b、24c)間の電圧を監視することができる。
【0019】
請求項6に記載の発明では、制御手段(40)は、熱電素子駆動手段(42)が熱電素子モジュール(30)に電力供給を開始後、所定時間経過した後に、電圧検出手段(440)によって各々の端子(24a、24b、24c)間の電圧を検出することを特徴としている。この発明によれば、熱電素子モジュール(30)が駆動した後のほうが、熱電素子(12、13)の故障を早期にかつ的確に検出することができる。
【0020】
請求項7に記載の発明では、制御手段(40)は、熱電素子駆動手段(42)が定期的に所定時間作動するように制御することを特徴としている。この発明によれば、例えば、熱電素子駆動手段(42)の周波数が早くて、かつ電圧検出手段(440)で検出された電圧のA/D変換の処理が遅いときなど、電圧が安定する時間が短くてA/D変換のタイミングが間に合わないことがある。このときに、熱電素子駆動手段(42)を定期的に所定時間駆動させる制御によりA/D変換のタイミングを的確に合わせることができる。
【0021】
請求項8に記載の発明では、熱電素子モジュール(30)は、送風機(50)と組み合わせて車両に搭載される冷却装置、もしくは加熱装置の熱源として用いられ、
制御手段(40)は、各々の端子(24a、24b、24c)間の電圧の差が所定値以上のときに熱電素子モジュール(30)への通電を停止させるとともに、送風機(50)の運転を継続させることを特徴としている。
【0022】
この発明によれば、熱電素子(12、13)が故障したときに送風機(50)と熱電素子モジュール(30)とを停止させると、熱電素子(12、13)の近傍がオーバーシュートにより温度上昇するが、送風機(50)の運転が継続されていることでこの温度上昇を停止させることができる。
【0023】
また、車両用の冷却装置として、例えば、車両用シートの吹出孔から冷風を吹き出すシート空調装置では、熱電素子(12、13)が故障したときに、冷風の代わりに送風が吹き出されることになるが、送風機(50)を停止させるよりも蒸れ感が解消される。
【0024】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態における熱電変換装置を図1ないし図7に基づいて説明する。図1は本実施形態における熱電素子モジュール30の全体構成を示す模式図であり、図2は図1に示すA―A断面図である。図3は本発明の熱電変換装置をシート空調装置に適用したときにおける搭載形態を示す模式図である。
【0026】
また、図4は図1に示すB−B断面図であり、図5は制御装置40の制御処理を示すフローチャートである。図6は各々の端子間24a、24b、24cの電圧を求めるための説明図である。さらに、図7は送風量をパラメータとしたときの抵抗R1の抵抗変化と放熱側熱交換部温度との関係を示す特性図である。
【0027】
本実施形態の熱電変換装置は、車両に搭載される冷却装置もしくは加熱装置に適用させた熱電変換装置であり、例えば、図3に示すように、車両用のシート1の着座部1b内に熱電素子モジュール30を配設し、その熱電素子モジュール30により冷却された冷風をシート表面から吹き出すシート空調装置に適用させている。
【0028】
そのシート空調装置は、背当て部1aおよび着座部1bからなるシート1と、シート1の下部に形成された空間4に配設された加熱冷却装置5と、この加熱冷却装置5を制御する制御手段である制御装置40とを備えている。
【0029】
背当て部1aは内部に空間4と連通する第1ダクト3aが形成されており、その第1ダクト3aと連通する空気吹出孔2が複数個形成されている。また、着座部1bは内部に空間4と連通する第2ダクト3bが形成されており、その第2ダクト3bと連通する空気吹出孔2が複数個形成されている。
【0030】
加熱冷却装置5は送風機50と熱電素子モジュール30とから構成しており、送風機50はシート1内に車室内空気を導いて熱電素子モジュール30を介して空気吹出孔2に向けて送風する。
【0031】
熱電素子モジュール30は電力を熱に変換する周知のペルチェ素子であり、内部に熱電半導体に接続された電極部材16と外部に複数の放熱、吸熱熱交換部25bとから構成され、電流の流れる方向により送風機50で導かれた車室内空気を加熱および冷却するものである(詳しくは後述する)。
【0032】
そして、空間4はシート1外に連通する排気ダクト3cが形成されており、この排気ダクト3cは上述した第1ダクト3aおよび第2ダクト3bとの間に図示しない仕切り板により区画している。つまり、一方の熱交換部25bで加熱、冷却された空調風と、他方の熱交換部25bで加熱、冷却された排気とが混合することのないように形成している。
【0033】
また、図中に示す符号7および8は温度センサであって、温度センサ7は空気吹出孔2から吹き出される空調風の吹出温度を検出し、温度センサ8は排気ダクト3cから排出される排気の排気温度を検出する。そして、これらの温度センサ7、8は検出した温度情報を制御装置40に入力するように構成している。
【0034】
熱電素子モジュール30は、図1、図2および図4に示すように、複数のP型、N型の熱電素子12、13を配列した熱電素子基板10と、隣接する熱電素子12、13とを電気的に直列接続する電極素子である電極部材16と、その電極部材16に伝熱可能に結合する熱交換素子である複数の熱交換部材25と、およびケース部材28などから構成される。
【0035】
熱電素子基板10は、複数のP型、N型からなる熱電素子12、13、これら熱電素子12、13を保持する保持板である第1保持板11、この第1保持板11の表面に防水膜を形成する防水フィルム部材14および電極素子である電極部材16から一体に構成している。
【0036】
具体的には、平板状の絶縁材料(例えば、ガラスエポキシ、PPS樹脂、LCP樹脂もしくはPET樹脂など)からなる第1保持板11に、P型熱電素子12とN型熱電素子13とを交互に略碁盤目状に複数対配列してなる熱電素子群を列設し、隣接する一対の熱電素子12、13の両端面に電極部材16を接合して一体に構成している。
【0037】
P型熱電素子12はBi−Te系化合物からなるP型半導体により構成され、N型熱電素子12はBi−Te系化合物からなるN型半導体により構成された極小部品である。なお、第1保持板11は、その板厚が熱電素子12、13の素子高さと略同等となるように形成している。
【0038】
そして、図4に示すように、左右上端に配設する熱電素子12、13には、電源入力端子24a、および電源出力端子24bが設けられ、それらの端子24a、24bには、図示しない直流電源の正側端子を電源入力端子24a側に接続し、負側端子を電源出力端子24b側に接続するようにしている。
【0039】
電極素子である電極部材16は、平板状の銅材などの導電性金属から形成され、熱電素子基板10に配列された熱電素子群のうち、隣接する一対のP型熱電素子12およびN型熱電素子13を電気的に直列接続する電極である。
【0040】
具体的には、図1に示すように、上方に配置される電極部材16は、隣接するN型熱電素子13からP型熱電素子12に向けて電流を流すための電極であり、下方に配置される電極部材16は、隣接するP型熱電素子12からN型熱電素子13に電流を流すための電極である。
【0041】
また、電極部材16の平面形状は、図4に示すように、すべて同一形状で統一されており、隣接する一対の熱電素子12、13の端面を覆う程度の矩形状に形成するとともに、熱電素子基板10に配列された熱電素子12、13の配列状態に対応する所定の位置に配設される。なお、電極部材16は、熱電素子12、13の端面に予めペーストハンダなどをスクリーン印刷で薄く均一に塗っておいてから半田を用いて接合する。
【0042】
これにより、全ての熱電素子12、13が電極部材16を介して電気的に直列接続されている。つまり、電源入力端子24aと電源出力端子24bとの間に電源を印加させると、図4に示す一点鎖線のように、左側の電源入力端子24aから熱電素子群に沿う方向に蛇行を繰り返して右側の電源出力端子24bに向けて電流が流れている。
【0043】
そこで、本実施形態では、電源入力端子24aに接続される熱電素子12と電源出力端子24bに接続される熱電素子13との間における略中間位置に配設される熱電素子12に中間端子24cを設けている。
【0044】
より具体的には、電源入力端子24aと電源出力端子24bと間に所定電圧を印加したときに、電源入力端子24aと中間端子24cとの間における電圧が中間端子24cと電源出力端子24bとの電圧と略同等となる中間位置に配設される熱電素子12に中間端子24cを設けている。
【0045】
そして、電源入力端子24a、電源出力端子24b、および中間端子24cは、それぞれの端子部における電位情報を後述する制御装置40に出力するために電気的に接続されている。つまり、中間端子24cを含めてこれら各端子24a、24b、24cは、電源入力部、中間部、電源出力部における電位を検出するための端子である。
【0046】
これにより、電源入力端子24aと中間端子24cとの間の電圧、中間端子24cと電源出力端子24bとの間の電圧を求めることができる(以下、詳しくは後述する)。
【0047】
ところで、上述した電極部材16は、防水フィルム部材14と一体に形成されており、この防水フィルム部材14を第1保持板11の一方面および他端面に配設することで、それぞれの電極部材16が隣接する一対の熱電素子12、13の端面に配設されるように形成している。
【0048】
防水フィルム部材14は、例えば、ポリイミドの熱可塑性、ポリイミドの熱硬化性からなる積層された薄膜のフィルム状に形成されたシートであって、その片面に銅箔からなる銅箔層を一体に形成し、その銅箔層をエッチング加工により、所定の配列位置に所定の形状で電極部材16を形成している。
【0049】
そして、第1保持板11の一端面および他端面の全表面に配設することで防水膜が形成される。さらに、防水フィルム部材14には、電極部材16が対向する位置、つまり、熱電素子12、13のそれぞれの端面に対応する位置に開口孔14aが形成している。開口孔14aは、熱電素子12、13の端面と略同形の大きさであって、この開口孔14aにおいて電極部材16と熱電素子12、13の端面とがこの部位で半田を用いて接合される。
【0050】
従って、防水フィルム部材14の開口孔14aが半田で封止されることで、熱電素子12、13と電極部材16との接合部に後述する熱交換部材25から結露水が浸水することはない。
【0051】
次に、熱交換素子である熱交換部材25は、銅材などの導電性金属からなる薄肉の板材を用いて、図2に示すように、断面が略U字状からなり底部に平面状の電極部25aを形成し、その電極部25aから外方に延出された平面にルーバー状の熱交換部25bを形成している。
【0052】
熱交換部25bは、電極部25aから伝熱される熱を吸熱、放熱するためのフィンであり、切り起こしなどの成形加工により電極部25aと一体に形成している。その平面状の電極部25aが熱電素子基板10に配列された電極部材16の配列状態に対応する所定の位置に配置されて電極部材16の一端面に半田を用いて接合される。
【0053】
また、図中に示す符号22は固定板であり、複数の熱交換部材25の他端側を保持するための保持部材である。これにより、互いに隣り合う熱交換部材25同士間に所定の空間を設けるとともに、隣り合う熱交換部材25同士が電気的に絶縁されている。
【0054】
なお、固定板22は、第1保持板11と同じように、平板状の絶縁材料(例えば、ガラスエポキシ、PPS樹脂、LCP樹脂、もしくはPET樹脂など)からなり、電極部25aの他端側が貫通するように図示しない固定穴が形成されている。
【0055】
ここで、電源入力端子24aから入力された直流電源は、図1に示すように、図中に示す左端のP型熱電素子12の上端に配設された電極部材16からP型熱電素子12に流れ、下側の電極部材16を介して右隣のN型熱電素子13に直列的に流れ、次に、このN型熱電素子13から上方の電極部材16を介して右隣のP型熱電素子12に直列的に流れるようになっている。
【0056】
このときに、NP接合部を構成する上方の電極部材16は、ペルチェ効果によって低温の状態となり、PN接合部を構成する下方の電極部材16は高温の状態となる。つまり、上方に配設された熱交換部25bは吸熱側である吸熱熱交換部を形成して低温の熱が伝熱されて冷却流体が接触され、下方に配設された熱交換部25bは放熱側である放熱熱交換部を形成して高温の熱が伝熱されて被冷却流体が接触される。
【0057】
つまり、熱電素子基板10を区画壁として、熱電素子基板10の両側にケース部材28を設けることで送風通路を形成し、その送風通路に空気を送風することで、熱交換部25bと空気とが熱交換され、上方の熱交換部25bで空気を冷却することができ、下方の熱交換部25bで空気を加熱することができる。なお、ケース部材28は適宜の樹脂、例えば、強化材入りのポリプロピレン(例えば、PBT−M20GF20)より一体に成形されている。
【0058】
なお、本実施形態では、直流電源の正側端子を電源入力端子24a側に接続し、負側端子を電源出力端子24b側に接続して、電源入力端子24aに直流電源を入力させたが、これに限らず、直流電源の正側端子を電源出力端子24b側に接続し、負側端子を端子24a側に接続して電源入力端子24aに直流電源を入力させて通電方向を逆にしても良い。
【0059】
ただし、このときには、上方の熱交換部25bが放熱熱交換部を形成し、下方の熱交換部25bが吸熱熱交換部を形成する。これにより、冷却、加熱装置5は加熱装置となる。
【0060】
ここで、以上の構成による熱電素子モジュール30は、故障モードの一つとして、熱電素子12、13が異常発熱して周囲の部品を溶かすなどの故障が知られている。これは、熱電素子12、13自体の冷却、発熱によって生ずる膨張・収縮の熱応力で素子自体にマイクロクラックが発生し、これが進行すると熱電素子12、13が割れて完全に導通しなくなる場合と完全に割れる前に接触抵抗により異常発熱する場合がある。
【0061】
特に、熱電素子12、13が異常発熱するときは、熱電素子12、13に接合される電極部材16および熱交換部材25においても異常発熱が伝熱されることで熱交換部材25の近傍のケース部材28が熱に溶かされて悪臭を発生する問題がある。
【0062】
そこで、本実施形態では、熱電素子12、13の異常発熱などの故障を早期に検出することができるとともに、その異常処置が簡素な構成で行えるようにしている。より具体的には、図3および図4に示すように、熱電素子モジュール30、送風機50を制御する制御手段である制御装置40を設けている。
【0063】
制御装置40は、マイクロコンピュータを主体として構成され、内蔵のROM(図示せず)には、予め設定された制御プログラムが設けられており、上記温度センサ7、8、車室内温度を検出する内気温センサ(図示せず)からの温度情報の他に、上述した各端子24a、24b、24cからの電位情報、および図示しない操作パネルからの操作情報に基づいて熱電素子モジュール30、送風機50を制御している。
【0064】
そして、通常の運転モードとして、冷風モード、温風モード、送風モードを備えている。冷風モードは送風機50で導かれた車室内空気を熱電素子モジュール30で冷却させて、その冷却された空調風を空気吹出孔2から吹き出すモードである。
【0065】
このときの制御は、電源入力端子24aに電源の正側端子を接続し、電源出力端子24bに電源の負側端子を接続してこれらの端子24a、24b間に所定電圧を印加して送風機50を作動させる。これにより、送風機50で導かれた車室内空気が熱電素子モジュール30により冷却されて空気吹出孔2から冷風が吹き出される。
【0066】
また、温風モードは送風機50で導かれた車室内空気を熱電素子モジュール30で加熱させて、その加熱された空調風を空気吹出孔2から吹き出すモードである。このときは、電源入力端子24aに電源の負側端子を接続し、電源出力端子24bに電源の正側端子を接続してこれらの端子24a、24b間に所定電圧を印加して送風機50を作動させる。
【0067】
これにより、送風機50で導かれた車室内空気が熱電素子モジュール30により加熱されて空気吹出孔2から温風が吹き出される。さらに、送風モードは送風機50で導かれた車室内空気を空気吹出孔2から吹き出すモードである。このときは、送風機50のみを作動させることで空気吹出孔2から車室内空気が吹き出される。
【0068】
ここで、端子24a、24b間に印加する所定電圧は制御装置40により制御されている。つまり、図示しない操作パネルに設けられた温度設定調節スイッチ(図示せず)の操作情報に基づいて電力量が可変できるように制御される。従って、例えば、操作情報に基づいてPWM制御により求めた電力量から端子24a、24b間に印加する所定電圧が決定される。
【0069】
そして、上記運転モードのときに、各端子24a、24b、24cからの電位情報に基づいて熱電素子モジュール30、送風機50を制御する異常処置制御手段を行っている。この異常処置制御手段は、具体的には、図5に示す制御処理のフローチャートであり、以下、これに基づいて説明する。
【0070】
冷却、加熱装置5の電源が投入されることで、異常処置制御手段の制御処理が開始され、ステップ410にて、初期化を行なう。ここでは、後述するステップ480のフラグ類も初期化される。そして、ステップ420にて、図示しない運転スイッチの操作情報を読み込む。そして、ステップ430にて、運転スイッチがONであるか否かを判定する。ここで、運転スイッチがOFFであればONとなるまで繰り返して判定する。
【0071】
ここで、ONであれば、ステップ440にて、各端子24a、24b、24cの電位情報v0、v1、v2を読み込む。なお、これを請求項では電圧検出手段と称する。そして、ステップ450にて、各端子24a、24b、24c間の電圧を算出する。
【0072】
より具体的には、図6に示すように、電源入力端子24aと中間端子24cとの間の電圧V1と、中間端子24cと電源出力端子24bとの電圧V2とを算出するものである。ここで、熱電素子12、13の抵抗値は一般的に、印加電圧、雰囲気温度、放熱量、その送風量により大きく変化することが知られている。
【0073】
しかし、電源入力端子24aと中間端子24cとの間の抵抗R1と中間端子24cと電源出力端子24bとの抵抗R2とは、同じ雰囲気中にあるため絶対値は変化してもその変化量はほぼ等しくなるため所定電圧V0=V1+V2であり、電圧V1≒電圧V2となる。つまり、この場合には、熱電素子12、13が正常である。
【0074】
ところで、例えば、電源入力端子24aと中間端子24cとの間の熱電素子12、13に異常発熱などの故障が起きると抵抗R1が変化することになる。すなわち、図7に示すように、熱電素子12、13が異常発熱すると発熱量と抵抗値R1とが比例する関係がある。これは、発明者らが実験で求めたものであって、送風量Vaをパラメータとして、熱交換部温度と抵抗R1の抵抗変化との関係を示す。なお、Va1<Va2<Va3である。
【0075】
従って、このときには、抵抗R1と抵抗R2との均衡が崩れることで算出される電圧V1と電圧V2とが均衡が崩れることになる。
【0076】
次に、ステップ460にて、熱電素子モジュール30が正常に作動しているか否かを判定する。ここで正常であれば、ステップ470にて、電圧V1と電圧V2との差(絶対値)が所定値X以上か否かを判定する。ここで、所定値Xは、熱電素子12、13単品のバラツキおよび一対の熱電素子12、13での温度バラツキなどの要素を考慮して決定する。
【0077】
次に、ステップ470にて、電圧V1と電圧V2との差(絶対値)が所定値X未満であれば異常がないと判定してステップ480にて、通常の制御を継続する。ここで、所定値X以上であれば、異常がありと判定し、まず、ステップ490にて、フラグをNGとして、ステップ500にて、端子24a、24b間の通電を停止させる。なお、送風機50の作動は継続させる。
【0078】
なお、ここでは、送風機50の作動を継続させるように制御させたが、所定時間のみ運転させて停止させるように制御しても良い。これにより、異常があったときに送風機50と熱電素子モジュール30とを停止させると、熱電素子12、13の近傍がオーバーシュートにより温度上昇するが、送風機50の運転が継続されていることでこの温度上昇を停止させることができる。
【0079】
また、ステップ470の判定手段は、誤判定を防止するために、1回目の判定で異常があれば、ステップ440に戻ってステップ470までの制御処理を数回繰り返した後に異常有りと判定するように制御する構成にしても良い。
【0080】
以上の制御により、各々の端子24a、24b、24c間の電圧のバランスが崩れることで熱電素子12、13の異常発熱の故障を検出することが可能である。従って、複雑な構成としなくても熱電素子12、13の故障を早期に検出することができる。
【0081】
なお、上述した抵抗R1、R2の変化は、故障モードとして、異常発熱の他に、フィルタの目詰まり、送風機50の故障による送風量の低減、吸い込み温度の変化、および電源電圧の変化などがあるが、各々の端子24a、24b、24c間の電圧を判定値として使用することで容易に簡素な構成で熱電素子12、13の故障を検出することができる。
【0082】
また、熱電素子12、13の故障を早期に検出することができることにより、熱交換部材25の近傍のケース部材28が熱により溶けて悪臭を発する前、もしくはケース部材28が破損する前に熱電素子12、13の故障を早期に停止させることができる。
【0083】
なお、熱電素子モジュール30をシート空調装置に用いたときの冷風モードで運転中に熱電素子12、13か故障したときには、送風機50の運転を継続するように制御することにより蒸れ感が解消される。
【0084】
以上の第1実施形態による熱電変換装置によれば、電源入力端子24a、電源出力端子24a、および電源入力端子24aと電源出力端子24bとの中間位置に電位を検出するための中間端子24cが設けられ、電源入力端子24aと電源出力端子24a間に電源を印加したときに、各端子24a、24b、24cからの電位情報によって求められた各々の端子24a、24b、24c間の電圧に基づいて熱電素子モジュール30を制御する制御装置40を有する。
【0085】
これよれば、各々の端子24a、24b、24c間の電圧を監視することで、例えば、異常が発生すれば、各々の端子24a、24b、24c間の電圧のバランスが崩れることで熱電素子12、13の故障を検出することが可能である。従って、複雑な構成としなくても熱電素子12、13の故障を早期に検出することができる。
【0086】
中間端子24cは、各々の端子24a、24b、24c間の電圧が略同等となる所定位置に設けられていることにより、熱電素子モジュール30には、例えば、電源電圧、送風量、および周囲温度などの外部要因の変動がある。
【0087】
ところが、同一モジュールの中間位置に中間端子24cを設けることで、電源電圧、送風量、および周囲温度などの外部要因は、分割した二つのモジュールのそれぞれに等しく影響される。このため、これらの変動を相殺することができるため熱電素子12、13の故障を正確に判定することが可能である。
【0088】
制御装置40は、各々の端子24a、24b、24c間の電圧の差(絶対値)が所定値以上のときに熱電素子モジュール30への通電を停止させることにより、熱交換部材25の近傍のケース部材28が熱により溶けて悪臭を発する前、もしくはケース部材28が破損する前に熱電素子12、13への通電を早期に停止させることができる。
【0089】
また、熱電素子モジュール30は、送風機50と組み合わせて車両に搭載される冷却装置、もしくは加熱装置の熱源として用いられ、制御装置40は、各々の端子24a、24b、24c間の電圧の差が所定値以上のときに熱電素子モジュール30への通電を停止させるとともに、送風機50の運転を継続させている。
【0090】
これによれば、熱電素子12、13が故障したときに送風機50と熱電素子モジュール30とを停止させると、熱電素子12、13の近傍がオーバーシュートにより温度上昇するが、送風機50の運転が継続されていることでこの温度上昇を停止させることができる。
【0091】
また、車両用の冷却装置として、例えば、車両用シートの吹出孔2から冷風を吹き出すシート空調装置では、熱電素子12、13が故障したときに、冷風の代わりに送風が吹き出されることになるが、送風機50を停止させるよりも蒸れ感が解消される。
【0092】
(第2実施形態)
以上の第1実施形態では、中間端子24cを電源入力端子24aと電源出力端子24bとの中間位置に設けたが、これに限らず、具体的には、図8に示すように、電源入力端子24aと電源出力端子24bとの間が、4等分に区画する位置に3つの中間端子24cを設けても良い。
【0093】
この場合には、熱電素子12、13が正常であれば、所定電圧V0=V1+V2+V3+V4であり、電圧V1≒電圧V2≒電圧V3≒電圧V4となる。これによれば、各々の端子24a、24b、24c間の抵抗値は、素子自体の特性のバラツキ、風速分布、温度分布などによってバラツキが大きくなるため、中間端子24cを3つ設けることで、各々の端子24a、24b、24c間の電圧のバラツキを小さくすることができる。これにより、各々の端子24a、24b、24c間の電圧の精度を高めることができる。
【0094】
(第3実施形態)
以上の実施形態では、本発明を一つの加熱冷却装置5を着座部1b内に配設して、背当て部1a側の空気吹出孔2に通ずる第1ダクト3aと着座部1b側の空気吹出孔2に通ずる第2ダクト3bとに加熱、冷却された空調風を吹き出すシート空調装置に適用させたが、これに限らず、加熱冷却装置5を着座部1bおよび背当て部1a内に複数配設して、それぞれの空気吹出孔2から空調風を吹き出すシート空調装置に適用させても良い。
【0095】
つまり、本実施形態では、複数の熱電素子モジュール30を用いたときのシート空調制御手段および異常処置制御手段であり、これを図9ないし図14に基づいて説明する。図9は複数の加熱冷却装置5をシート1に搭載したときの全体構成を示す模式図である。図10は制御装置40と複数の熱電素子モジュール30との電気回路を示す電気回路図であり、図11は制御装置40の制御処理を示すフローチャートである。
【0096】
また、図12は目標冷房能力と熱電素子モジュール30、送風機50のDuty比との関係を示す特性図である。図13は熱電素子駆動手段42のON/OFFタイミングと電圧検出手段のA/D変換のタイミングとを示すタイムチャートである。さらに、図14は変形例における熱電素子駆動手段42のON/OFFタイミングと電圧検出手段のA/D変換のタイミングとを示すタイムチャートである。
【0097】
本実施形態の熱電変換装置では、図9に示すように、背当て部1aおよび着座部1bからなるシート1と、着座部1bおよび背当て部1aの内部に形成されたそれぞれの空間4に配設する複数(例えば、二個)の加熱冷却装置5と、複数の加熱冷却装置5を制御する制御手段である制御装置40とを備えている。
【0098】
つまり、一つの制御装置40によって二つの熱電素子モジュール30および二つの送風機50を制御するように構成している。従って、二つの熱電素子モジュール30は、図10に示すように、一方の熱電素子モジュール30の電源入力側に接続される電源入力端子24aと、他方の熱電素子モジュール30の電源出力側に接続される電源出力端子24bと、電源入力端子24aと電源出力端子24bとの間に、二つ以上の所定位置における電位を検出するための中間端子24cとを設けて制御装置40に電気的に接続している。
【0099】
言い換えると、二つの熱電素子モジュール30を電気的に直列接続するとともに、二つの熱電素子モジュール30が正常であれば、所定電圧V0=V1+V2+V3+V4であって、電圧V1≒電圧V2≒電圧V3≒電圧V4となるように中間端子24cを設けている。
【0100】
そして、これらの各端子24a、24b、24cのうち、電源入力端子24aが制御装置40に設けられた後述する熱電素子駆動手段42に接続される。一方、二つの送風機50は制御装置40に設けられた後述する送風機駆動手段43にそれぞれが接続されている。
【0101】
本実施形態の制御装置40には、コンピューターによる演算回路41と、熱電素子モジュール30を駆動させるための熱電素子駆動手段42と、送風機50を駆動させるための送風機駆動手段43とが設けられている。そして、各端子24a、24b、24c、および各温度センサ7、8の出力端子7a、8aが演算回路41に接続されている。
【0102】
演算回路41は、図示しない操作パネルからの乗員が設定した設定温度などの設定情報に基づいて目標冷房能力を求めるとともに、図12に示す目標冷房能力と熱電素子モジュール30、送風機50のDuty比との関係から熱電素子モジュール30、送風機50の指示値であるDuty比を算出する。
【0103】
また、演算回路41は、各端子24a、24b、24c、7a、8aからの電位情報、温度情報をA/D変換させて入力する。熱電素子駆動手段42および送風機駆動手段43は、内部にFETや電流検出回路などを有するディバイスであり、演算回路41で算出した指示値に基づいて熱電素子モジュール30および送風機50をPWM制御によって駆動するDuty比を出力する。
【0104】
ここで、熱電素子駆動手段42は、電源入力端子24aと電源出力端子24bとの間に掛かる印加電圧をDuty比によって出力し、送風機駆動手段43は、回転数をDuty比によって出力している。
【0105】
そして、以上の構成による本実施形態の制御装置40は、各端子24a、24b、24cからの電位情報に基づいて熱電素子モジュール30、送風機50を制御する異常処置制御手段を行っている。この異常処置制御手段は、具体的には、図11に示すフローチャートであり、以下、これに基づいて説明する。
【0106】
冷却、加熱装置5の電源が投入されることで、異常処置制御手段の制御処理が開始され、ステップ410にて、初期化を行う。そして、ステップ421にて、図示しない操作パネルからの乗員が設定した設定情報を読み込む。ここで、車両に搭載された車両用空調装置に用いられる図示しない空調制御装置からの指示値を目標冷房能力として入力するように構成しても良い。
【0107】
そして、ステップ423にて、ペルチェDuty比およびファンDuty比を算出する。より具体的には、図12に示す目標冷房能力と熱電素子モジュール30、送風機50のDuty比との関係から熱電素子モジュール30、送風機50の指示値であるDuty比を算出する。これにより、熱電素子モジュール30への印加電圧および送風機50の回転数が決定する。
【0108】
そして、ステップ424にて、熱電素子駆動手段42および送風機駆動手段43によりDuty比を出力する。より具体的には、ペルチェDuty比として、例えば40Hz、ファンDuty比として、例えば200Hzを出力する。これにより、送風機50が所定の回転数で駆動するとともに、電源入力端子24aと電源出力端子24bとの間に印加電圧が印加されて熱電素子モジュール30が駆動する。
【0109】
そして、ステップ431にて、温度センサ7、8で検出された温度情報を監視する。ここでは、例えば、吸熱側の熱交換部25bから吹き出されるペルチェ温度が所定温度(例えば、15℃)以下であれば、腰部や臀部が冷え過ぎるのでステップ500aに移行して端子24a、24b間の通電を停止する。
【0110】
また、熱交換部25bから吹き出されるペルチェ温度が所定温度(例えば、70℃)以上であれば、何らかの理由(例えば、マイグレーションにより発生したトラッキング現象による発熱など)により熱電素子12、13が昇温しているためステップ500aに移行して端子24a、24b間の通電を停止する。ここで、15℃以上または70℃以下であれば、ステップ432に移行する。
【0111】
ステップ432にて、熱電素子駆動手段42に設けられた図示しない電流検出回路で検出された駆動電流を監視する。例えば、電流検出回路で検出された駆動電流が所定値(例えば、5A)以上であるか否かを判定する。ここで、所定値(例えば、5A)以上であれば、ステップ500aに移行して端子24a、24b間の通電を停止する。これにより、熱電素子モジュール30内部のショートまたは電線の噛み込みによるショートなどの故障を検出することができる。
【0112】
ここで、駆動電流が所定値(例えば、5A)以下であれば、ステップ440に移行する。ここで、各端子24a、24b、24cの電位情報をv0、v1、v2を読み込む。ここでは、各端子24a、24b、24cの電位情報をA/D変換させて読み込む。
【0113】
ところで、熱電素子駆動手段42によってペルチェDuty比を熱電素子モジュール30に出力しているため、図13に示すように、電源入力端子24aと電源出力端子24bとの間に印加する電圧はON/OFFのタイミングで出力している。従って、A/D変換は、電源入力端子24aにONが出力されているときに同期するタイミングによって電圧を検出すると良い。
【0114】
なお、図13に示すペルチェDuty比は50%のときであるためONを出力している時間が長いが、ペルチェDuty比がこれよりも短くなるようなDuty比で、かつ変換速度の遅いA/D変換を使用すると電圧が安定する時間が短くなることでA/D変換が間に合わない問題がある。
【0115】
この場合には、図14に示すように、ペルチェDuty比によらず、所定のON時間を定期的に発生させ、そのONのときにA/D変換を同期させるように構成しても良い。なお、これ以外に、ペルチェDuty比の最小値を所定値(例えば、10%)以上と予め設定させて短くなるペルチェDuty比を出力しないようにしても良い。なお、ステップ440の制御処理を請求項では電圧検出手段と称する。
【0116】
そして、ステップ450にて、各端子24a、24b、24c間の電圧を算出する。より具体的には、電源入力端子24aと中間端子24cとの間の電圧V1と、中間端子24cと中間端子24cとの間の電圧V2、電圧V3、中間端子24cと電源出力端子24bとの間の電圧V4と電源入力端子24aと電源出力端子24bとの間の電圧V0を算出する。
【0117】
次に、ステップ470aにて、(電圧V1+電圧V2)/電圧V0の絶対値が0.45〜0.55以内に入っているか否かを判定する。ここでは、二つの熱電素子モジュール30に掛かる電圧の比を比較している。ここで、等しいはずの電圧比が所定値以上大きいときには片方の熱電素子モジュール30の故障や片方の通風系に異常(例えば、図示しないフィルタの目詰まりやダクトの嵌合外れなど)があって送風がないと判定している。
【0118】
そして、このときにはステップ500aに移行して端子24a、24b間の通電を停止する。異常がなければ、ステップ470bにて、電圧V1/(電圧V1+電圧V2)の絶対値が0.45〜0.55以内に入っているか否かを判定する。ここでは、着座部1b側に設けた熱電素子モジュール30内部の故障を判定する手段である。
【0119】
ここで、電圧V1と電圧V2との電圧比は通常はほぼ等しいが、例えば、熱電素子12、13にマイクロクラックなどの故障が発生すると、この電圧比が所定値以上となる。これにより、着座部1b側の熱電素子モジュール30内部の故障を発見することができる。
【0120】
ここで、異常があればステップ500aに移行して端子24a、24b間の通電を停止する。異常がなければ、ステップ470cにて、電圧V3/(電圧V3+電圧V4)の絶対値が0.45〜0.55以内に入っているか否かを判定する。ここでは、背当て部1a側に設けた熱電素子モジュール30内部の故障を判定する手段である。ステップ470bと同じように、電圧V3と電圧V4との電圧比は通常はほぼ等しいが、例えば、熱電素子12、13にマイクロクラックなどの故障が発生すると、この電圧比が所定値以上となる。これにより、背当て部1a側の熱電素子モジュール30内部の故障を発見することができる。
【0121】
なお、ステップ500aでは、端子24a、24b間の通電を停止させるが、送風機50の作動は継続させる。また、このときにファンDuty比を100%として送風機50を最大回転数で駆動させても良い。これにより、異常があったときに送風機50と熱電素子モジュール30とを停止させると、熱電素子12、13の近傍がオーバーシュートにより温度上昇するが、送風機50の運転が継続されていることでこの温度上昇を停止させることができる。
【0122】
以上の制御処理により、各々の端子24a、24b、24c間の電圧のバランスが崩れることで熱電素子12、13の異常発熱の故障を検出することが可能である。従って、複雑な構成としなくても熱電素子12、13の故障を早期に検出することができる。
【0123】
さらに、以上の第3実施形態による熱電変換装置によれば、熱電素子モジュール30は熱電素子駆動手段42によってパルス幅のONとOFFとの比率を変える制御で駆動している。従って、熱電素子モジュール30がONのときに、各々の端子24a、24b、24c間の電圧を監視することができる。
【0124】
また、制御装置40は、熱電素子駆動手段42が熱電素子モジュール30に電力供給を開始後、所定時間経過した後に、電圧検出手段440によって各々の端子24a、24b、24c間の電圧を検出することにより、熱電素子モジュール30が駆動した後のほうが、熱電素子モジュール30および熱電素子12、13の故障を早期にかつ的確に検出することができる。
【0125】
制御装置40は、熱電素子駆動手段42が定期的に所定時間作動するように制御することにより、例えば、熱電素子駆動手段42の周波数が早くて、かつ電圧検出手段440で検出された電圧のA/D変換の処理が遅いときなど、電圧が安定する時間が短くてA/D変換のタイミングが間に合わないことがある。このときに、熱電素子駆動手段42を定期的に所定時間駆動させる制御によりA/D変換のタイミングを的確に合わせることができる
(他の実施形態)
以上の第1実施形態では電源入力端子24aと電源出力端子24bとの中間位置に一つの中間端子24cを設け、第2実施形態では電源入力端子24aと電源出力端子24bとの中間位置に三つの中間端子24cを設けたが、これに限らず、中間端子24cを2つ以上の複数個設けても良い。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】本発明の第1実施形態における熱電素子モジュール30の全体構成を示す模式図である。
【図2】図1に示すA―A断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態における熱電素子モジュール30をシート空調装置に適用したときにおける搭載形態を示す模式図である。
【図4】図1に示すB−B断面図である。
【図5】本発明の第1実施形態における制御装置40の制御処理を示すフローチャートである。
【図6】本発明の第1実施形態における各々の端子間24a、24b、24cの電圧を求めるための説明図である。
【図7】送風量をパラメータとしたときの抵抗R1の抵抗変化と放熱側熱交換部温度との関係を示す特性図である
【図8】本発明の第2実施形態における各々の端子間24a、24b、24cの電圧を求めるための説明図である。
【図9】本発明の第3実施形態における複数の加熱冷却装置5をシート1に搭載したときの全体構成を示す模式図である。
【図10】本発明の第3実施形態における制御装置40と複数の熱電素子モジュール30との電気回路を示す電気回路図である。
【図11】本発明の第3実施形態における制御装置40の制御処理を示すフローチャートである。
【図12】目標冷房能力と熱電素子モジュール30、送風機50のDuty比との関係を示す特性図である。
【図13】本発明の第3実施形態における熱電素子駆動手段42のON/OFFタイミングと電圧検出手段のA/D変換のタイミングとを示すタイムチャートである。
【図14】本発明の第3実施形態の変形例における熱電素子駆動手段42のON/OFFタイミングと電圧検出手段のA/D変換のタイミングとを示すタイムチャートである。
【符号の説明】
【0127】
12…P型熱電素子、熱電素子
13…N型熱電素子、熱電素子
24a…電源入力端子
24b…電源出力端子
24c…中間端子
30…熱電素子モジュール
40…制御装置(制御手段)
42…熱電素子駆動手段
50…送風機
440…電圧検出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
P型とN型とからなる一対の熱電素子(12、13)を複数対配列し、全ての前記熱電素子(12、13)が電気的に直列接続される熱電素子モジュール(30)を備える熱電変換装置において、
前記熱電素子モジュール(30)には、前記熱電素子(12、13)の電源入力側に接続される電源入力端子(24a)、前記熱電素子(12、13)の電源出力側に接続される電源出力端子(24a)、および前記電源入力端子(24a)と前記電源出力端子(24b)との間の少なくとも一つもしくは二つ以上の所定位置における電位を検出するための中間端子(24c)が設けられ、
前記電源入力端子(24a)と前記電源出力端子(24b)間に電源を印加したときに、各端子(24a、24b、24c)からの電位によって求められた各々の端子(24a、24b、24c)間の電圧に基づいて前記熱電素子モジュール(30)を制御する制御手段(40)を有することを特徴とする熱電変換装置。
【請求項2】
P型とN型とからなる一対の熱電素子(12、13)を複数対配列し、全ての前記熱電素子(12、13)が電気的に直列接続される熱電素子モジュール(30)を複数個有し、かつ複数の前記熱電素子モジュール(30)を電気的に直列接続する熱電変換装置において、
直列接続された前記複数の熱電素子モジュール(30)には、一方端の前記熱電素子モジュール(30)の電源入力側に接続される電源入力端子(24a)、他方端の熱電素子モジュール(30)の電源出力側に接続される電源出力端子(24b)、および前記電源入力端子(24a)と前記電源出力端子(24b)との間の少なくとも一つもしくは二つ以上の所定位置における電位を検出するための中間端子(24c)が設けられ、
前記電源入力端子(24a)と前記電源出力端子(24b)間に電源を印加したときに、各端子(24a、24b、24c)からの電位によって求められた各々の端子(24a、24b、24c)間の電圧に基づいて前記熱電素子モジュール(30)を制御する制御手段(40)を有することを特徴とする熱電変換装置。
【請求項3】
前記中間端子(24c)は、前記各々の端子(24a、24b、24c)間の電圧が略同等となる所定位置に設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の熱電変換装置。
【請求項4】
前記制御手段(40)は、前記各々の端子(24a、24b、24c)間の電圧の差が所定値以上のときに前記熱電素子モジュール(30)への通電を停止させることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の熱電変換装置。
【請求項5】
前記制御手段(40)は、前記熱電素子モジュール(30)をPWM制御によって駆動する熱電素子駆動手段(42)と前記各々の端子(24a、24b、24c)間の電圧を検出する電圧検出手段(440)とを設け、かつ前記熱電素子駆動手段(42)と前記電圧検出手段(440)とが時間的に同期して検出するように制御することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の熱電変換装置。
【請求項6】
前記制御手段(40)は、前記熱電素子駆動手段(42)が前記熱電素子モジュール(30)に電力供給を開始後、所定時間経過した後に、前記電圧検出手段(440)によって前記各々の端子(24a、24b、24c)間の電圧を検出することを特徴とする請求項5に記載の熱電変換装置。
【請求項7】
前記制御手段(40)は、前記熱電素子駆動手段(42)が定期的に所定時間作動するように制御することを特徴とする請求項5または請求項6に記載の熱電変換装置。
【請求項8】
前記熱電素子モジュール(30)は、送風機(50)と組み合わせて車両に搭載される冷却装置、もしくは加熱装置の熱源として用いられ、
前記制御手段(40)は、前記各々の端子(24a、24b、24c)間の電圧の差が所定値以上のときに前記熱電素子モジュール(30)への通電を停止させるとともに、前記送風機(50)の運転を継続させることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載の熱電変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−150231(P2007−150231A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−102396(P2006−102396)
【出願日】平成18年4月3日(2006.4.3)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】