説明

燃料、それらの製造方法および燃料における使用のための添加物

a)70〜99重量%のディーゼル燃料であって、0〜50容積%のバイオディーゼル混合燃料を含む前記ディーゼル燃料と;b)0.5〜30重量%の水と;c)0.01〜5重量%のアルキルアミンエトキシレートであって、アルキルアミンエトキシレートの少なくとも25重量%がC10〜C14アルキルアミンエトキシレートであり、アルキルアミンエトキシレートの少なくとも25重量%がC16〜C18アルキルアミンエトキシレートであるアルキルアミンエトキシレートと;d)0.03〜1重量%の生成物であって、分子量9000〜2600のポリイソブチレン無水コハク酸を1〜2モルの第三級アルカノールアミンと反応させることによって得られる生成物とを含む油中水エマルジョン。このエマルジョンは安定であり、バイオディーゼル混合燃料として有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エマルジョン燃料、それらの製造方法、燃料における使用のための添加物および燃料での添加物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼル燃料は、10〜22個の炭素数の様々なパラフィン系、ナフテン系および芳香族炭化水素の混合物である。ディーゼル燃料はまた、硫黄、窒素および酸素を含有する少量の有機化合物を含有する。高速道路を使用する輸送車、使用しない輸送車のエンジンから、裸火ボイラー、およびタービン燃料の異なる用途に適合するように調整された様々なグレードのディーゼルがある。従来型ディーゼルはそれ故親油性であり、非極性である。
【0003】
従来型ディーゼル中水エマルジョン燃料は、数年間にわたり市販燃料として認められてきた。国家標準は、2000年に仏国でおよび2001年に伊国で策定された、Coordinating European Council For The Development Of Performance Test For Fuels,Lubricants and Other Fluids(「CEC」)は、それらについてワークショップ標準;CWA 15145:2004を出している。
【0004】
European Emulsion Fuels Manufacturers Association(「EEFMA」)は、約13重量%の水を含有する従来型ディーゼル中水エマルジョン燃料が、NOxの約25%、粒子状物質の60%、煤煙の80%、および5%以下のCOの排出削減を有することを示す多くの研究の結果をまとめる情報を公表している。
【0005】
バイオディーゼルもまた公知である。バイオディーゼルは脂肪酸アルキルエステルである。脂肪酸官能性は、ステアリン酸、オレイン酸、およびリノール酸などのC18脂肪酸の混合物を典型的には含む。その他の脂肪酸がまた存在してもよい。エステル官能性は通常コストの観点からメチルであるが、エチル、イソ−プロピルおよびブチルなどのその他のエステルが使用されてきた。脂肪酸アルキルエステルは、単独でまたはそれぞれ20および50容積%のバイオ燃料を含有するB20およびB50などの燃料を与えるために従来型ディーゼルとブレンドされて、燃料として使用されてもよい。脂肪酸メチルエステルは時としてFAMEと言われる。脂肪酸エチルエステルは時としてFAEEと言われる。
【0006】
脂肪酸エステルは、親水性−COORヘッドと親油性アルキルテールとを有し極性である。したがって、脂肪酸エステルは、油/水界面にかなりの影響を及ぼすであろう。
【0007】
(ココ脂肪酸に由来するものなどの)脂肪アミンエトキシレートおよび従来型ディーゼル中水エマルジョンにおいて良好なエマルジョン安定性を与えるポリイソブチレンスクシネートなどの界面活性剤は、バイオディーゼルを含有する燃料では同様にうまく機能しない。
【0008】
少なくとも65モル%、より好ましくは少なくとも70モル%、その上より好ましくは少なくとも80モル%、さらにより好ましくは少なくとも85モル%のビニリデン含量を含有するポリイソブチレン無水コハク酸(「PIBSA」)を第三級アルカノールアミンと反応させることによって得られるポリイソブチレン無水コハク酸乳化剤と脂肪酸アミンエトキシレートとの混合物がバイオディーゼルを含有するエマルジョンを安定化できることが意外にも見いだされた。PIBSAは時として、Texas Petrochemicals LP製の高反応性ポリイソブチレンまたは「HR−PIB」として知られる。そのようなポリマーの製造は、米国特許第4,152,499号明細書および米国特許第7,037,999号明細書から公知である。それらは、たとえばBASFからGlissopal(登録商標)、Texas PetrochemicalsからTPC IsobutenesとしておよびULtravis(登録商標)として商業的に入手可能である。
【0009】
本発明によれば、
a)70〜99重量%のディーゼル燃料であって、0〜50容積%のバイオディーゼルを含むディーゼル燃料と;
b)0.5〜30重量%の水と;
c)0.01〜5重量%のアルキルアミンエトキシレートであって、アルキルアミンエトキシレートの少なくとも25重量%がC10〜C14アルキルアミンエトキシレートであり、アルキルアミンエトキシレートの少なくとも25重量%がC16〜C18アルキルアミンエトキシレートであるアルキルアミンエトキシレートと;
d)0.03〜1重量%の生成物であって、分子量900〜2600のポリイソブチレン無水コハク酸を、ポリイソブチレン無水コハク酸の1モル当たり1〜2モルの第三級アルカノールアミンと反応させて塩および/またはエステルを形成することによって得られる生成物と
を含む油中水エマルジョンが提供される。
【0010】
ディーゼル燃料は、5〜50容積%のバイオディーゼルを含むことができる。
【0011】
アルキルアミンエトキシレートは、ポリオキシエチレン牛脂アミンとポリオキシエチレンココアミンとの混合物を含むことができる。
【0012】
第三級アルカノールアミンは、ジエチルエタノールアミンであることができる。
【0013】
エマルジョンは、0.01〜0.1重量%硝酸アンモニウムをさらに含むことができる。
【0014】
エマルジョンは、硝酸2−エチルヘキシルなどのセタン価向上剤をさらに含むことができる。
【0015】
エマルジョンは、たとえば、エチレングリコール対水の比が1:3〜1:13の範囲にあるようにエチレングリコールをさらに含むことができる。
【0016】
本発明は、少なくとも25重量%C10〜C14アルキルアミンエトキシレートおよび少なくとも25重量%C16〜C18アルキルアミンエトキシレートを含むアルキルアミンエトキシレートと、分子量900〜2600のポリイソブチレン無水コハク酸を、ポリイソブチレン無水コハク酸の1モル当たり1〜2モルの第三級アルカノールアミンと反応させることによって得られる生成物との、ディーゼル燃料を含む油中水エマルジョンの安定化における使用をさらに提供する。
【0017】
本発明は、アルキルアミンエトキシレートの少なくとも25重量%がC10〜C14アルキルアミンエトキシレートであり、アルキルアミンエトキシレートの少なくとも25重量%がC16〜C18アルキルアミンエトキシレートである1〜500重量部アルキルアミンエトキシレートと;分子量900〜2600のポリイソブチレン無水コハク酸付加体を、ポリイソブチレン無水コハク酸の1モル当たり1〜2モルの第三級アルカノールアミンと反応させることによって得られる3〜100重量部の生成物とを含む組成物をなおさらに提供する。
【0018】
本発明に従って上記組成物は、70〜99重量部のディーゼル燃料と5〜30重量部の水とを含む油中水エマルジョンを安定化するために使用することができる。
【0019】
本発明は、
a)70〜99重量%のディーゼル燃料であって、0〜50容積%のバイオディーゼルを含む前記ディーゼル燃料と;
b)0.5〜30重量%の水と;
c)0.01〜5重量%のアルキルアミンエトキシレートであって、アルキルアミンエトキシレートの少なくとも25重量%がC10〜C14アルキルアミンエトキシレートであり、アルキルアミンエトキシレートの少なくとも25重量%がC16〜C18アルキルアミンエトキシレートであるアルキルアミンエトキシレートと;
d)0.03〜1重量%の生成物であって、分子量900〜2600のポリイソブチレン無水コハク酸を、ポリイソブチレン無水コハク酸の1モル当たり1〜2モルの第三級アルカノールアミンと反応させることによって得られる生成物と
をブレンドする工程を含むエマルジョンの製造方法をその上さらに提供する。
【0020】
燃料ベースは、5〜50容積%、たとえば5〜11容積%の脂肪酸メチルエステルなどのバイオディーゼルを一般に含有する。典型的にはバイオディーゼルは、EN14214および/またはASTM D6751に適合する。バイオディーゼルおよびディーゼルブレンドはEN590に適合することができる。
【0021】
燃料ベースは、燃料の80〜95重量%、たとえば85〜90重量%などの、70〜99重量%を占めてもよい。
【0022】
水、好ましくは脱イオン水は、燃料の5〜25重量%、たとえば12〜15重量%などの、0.5〜30重量%を占める。
【0023】
燃料は、0.1〜2重量%などの0.01〜5重量%、たとえば0.03〜3重量%のアルキルアミンエトキシレート界面活性剤をさらに含む。好ましくは燃料は、0.03〜1%のアルキルアミンエトキシレート界面活性剤を含む。アルキルアミンエトキシレート界面活性剤の少なくとも25重量%、たとえば少なくとも40重量%などの少なくとも35重量%は、C10〜C14アルキルアミンエトキシレート界面活性剤である。アルキルアミンエトキシレート界面活性剤の少なくとも25重量%、たとえば少なくとも40重量%などの少なくとも35重量%は、C16〜C18アルキルアミンエトキシレート界面活性剤である。このアミンは、モノアミンもしくはジアミンまたはそれらの混合物であることができる。典型的には各モルの官能性アミンは、3〜8モル好ましくは4〜6モルのエチレンオキシドと反応させられる。
【0024】
少なくとも25重量%のC10〜C14アルキルアミンエトキシレート界面活性剤とは、アルキルアミンエトキシレートの少なくとも25%がC10〜C14炭素原子を含有する炭化水素鎖を有することを意味する。必要量を構成するためのC10〜C14炭化水素鎖の混合物は、この定義の範囲に入る。
【0025】
少なくとも25重量%のC16〜C18アルキルアミンエトキシレート界面活性剤とは、アルキルアミンエトキシレートの少なくとも25%がC16〜C18炭素原子を含有する炭化水素鎖を有することを意味する。必要量を構成するためのC16〜C18炭化水素鎖の混合物は、この定義の範囲に入る。炭化水素鎖は、飽和もしくは不飽和またはそれらの混合物であってもよいが、用語アルキルはすべてについて用いられる。
【0026】
アルキルアミンエトキシレートは一般に、植物または動物源に由来する。たとえあったとしても、脂肪酸の商業的に入手可能な植物または動物源は、所望の鎖長分布をほとんど持たず、それ故それらの混合物が一般に使用されるであろう。一般にアルキル鎖は水素化にかけられないであろうが、それは水素化されてもよい。
【0027】
ココナツオイルは典型的には、大きい割合のカプリン酸、ラウリル酸およびミリスチン酸のエステルを含有する。パーム核油は典型的には、大量のラウリン酸およびミリスチン酸のエステルを含有する。単独で、または混合物でのどちらかで、これらの油は、C10〜C14アルキルアミンエトキシレート界面活性剤用の脂肪酸源を含むことができる。C10〜C14アルキルアミンエトキシレート含有界面活性剤の例は、Ethomeen(登録商標)C/15である。これは、アミン官能性の1モル当たり5モルのエチレンオキシドでエトキシル化されたモノアミンである。
【0028】
牛脂、キャノーラ、オリーブ、パーム、大豆およびヒマワリ油はそれぞれ、C16〜C18範囲の脂肪酸の良好な源である。C16〜C18アルキルアミンエトキシレート含有界面活性剤の例は、それぞれ牛脂および大豆ベースであるEthomeen(登録商標)T/15およびSV/15である。それぞれは、5モルのエチレンオキシドでエトキシル化されたモノアミンである。また別の例では、3モルのエチレンオキシドを有する牛脂ジアミンは、Ethoduomeen(登録商標)である。これらの製品は、Akzo Nobelによって生産されている。
【0029】
HuntsmanのEmpilan(登録商標)範囲から選択されるものなどのその他の好適なアルキルアミンエトキシレートを使用することができる。
【0030】
燃料は、PIBSA由来乳化剤をその上さらに含む。乳化剤がそれから製造されるPIBSAは、少なくとも70モル%のビニリデンを含有し、1,400〜2,000、とりわけ約1,300などの範囲900〜2,600の数平均分子量を有する。本発明の幾つかの実施形態においては、分子量900〜2,600のPIBSAは、2つ以上のPIBSAをブレンドすることによって得られる。たとえば分子量1,300のPIBSAは、950の分子量を有する65重量部の材料の混合物を、2,350の分子量を有する35重量部の材料とブレンドすることによって得ることができる。PIBSAは、1〜2モル当量の第三級アルカノールアミンまたは第三級アルカノールアミンの混合物とさらに反応させられる。第三級アルカノールアミンとしては、ジメチルエタノールアミンおよびジエチルエタノールアミンが挙げられる。PIBSAは主としてモノスクシネートの形態にある。PIBSAの30モル%未満、好ましくは20モル%未満がジスクシネートの形態にある。乳化剤は、0.03〜1重量%、たとえば0.1〜0.3重量%などの0.05〜0.5重量%の範囲の量で存在する。
【0031】
任意選択的にその他の成分が存在してもよい。
【0032】
たとえば水相は水溶性添加剤を含有してもよい。例は、エマルジョン安定剤として働く硝酸アンモニウムである。存在する硝酸アンモニウムは、0.01〜0.1重量%、好ましくは0.04〜0.08重量%の範囲で使用されてもよい。
【0033】
セタン価向上剤が使用されてもよい。セタン価向上剤の例は、硝酸2−エチルヘキシルなどのアルキル硝酸エステル、およびジ第三ブチルペルオキシドなどのアルキルペルオキシドである。存在する場合、好ましくは硝酸2−エチルヘキシルが使用される。典型的には2,000〜8,000ppmのセタン価向上剤が使用される。
【0034】
凍結防止化学薬品もまた使用することができる。典型的にはそれらは、水の凝固点を−15℃以下に抑えるために使用される。不凍剤の例は、エチレングリコールおよびプロピレングリコールである。典型的には存在する場合および燃料が暴露される周囲温度に依存して、グリコール対水の質量比は、範囲1:3〜1:13にある。
【0035】
添加物は、たとえば、脂肪族もしくは芳香族炭化水素などの炭化水素またはそれらの溶媒の混合物に溶解させることによって混ぜ合わせることができる。水、燃料ベースおよび添加物の混合物は、従来法で混合し、乳化させることができる。
【0036】
本発明は、添付の実施例を参照することにより例示される。特に明記しない限り百分率は重量百分率である。
【実施例】
【0037】
以下の技法を、エマルジョンを特徴付けるために用いた:
(1)個々の粒子のサイジング用の較正グラチクルでの400×倍率を用いるエマルジョンの光学顕微鏡検査を、より大きい液滴のサイズおよび個体数を主観的に評価するために所定の通り実施する。位相コントラストおよび偏光顕微鏡法は、多重エマルジョンおよび類似の現象の存在を決定するのに役立つことができる。撮像もまた、有用な便宜をはかるものである。顕微鏡法は、非希釈エマルジョンの視検を可能にするという利点を有する。しかしそれは滴を見るにすぎず、滴が大半を代表するものであることを確実にするように注意を払う必要がある。熟練顕微鏡法は、様々なエマルジョンを正確にサイズ分布順に識別し、ランク付けすることができる。顕微鏡法は、0.5μm未満の粒子をはっきりと解像することができない。エマルジョンをカテゴリーへランク付けするための比較システムが有用であり得る。
【0038】
(2)遠心分離。CEN WS15147:2004だけでなく仏国および伊国国家標準は、エマルジョンの50cm試料を目盛り管に入れ、4200rcf(相対遠心力)で5分間遠心分離する方法(MU 1548)を定めている。合格判定基準は、(a)遊離水なし;および(b)それぞれ8%および15%(質量)の最大水エマルジョンについて7%および9%(容積)の最大白色沈降物帯である。この試験は元々、将来エマルジョン安定性を予測するもの(促進老化試験)として考えられた。実際に、エマルジョン安定性を予測するための簡単な試験はまったくない。界面活性剤分子のゆっくり進む老化プロセス(分子の加水分解、酸化、分配および再分配など)は、液滴が凝集する、合体するおよび沈降するのを防ぐ界面活性剤の能力に悪影響を及ぼすであろう。遠心分離試験は沈降プロセスを加速することができるが、それは、界面活性剤の老化を予測するために用いることはできない。遠心分離試験は、5、15、25および35分の遠心分離後に形成した沈降物を測定することによってエマルジョンの頑健性を詳細に特徴付けるために改良された。
【0039】
(3)試料(通常100cm)を背の高い無色透明ガラスの平底密封管に入れ、かき混ぜなしに周囲温度(約20℃)で3ヶ月間まで暗所に放置することを伴う貯蔵安定性試験。定期的に(典型的には1、3、7日、2、3、4週間、2および3ヶ月後に)管を注意深く検査する。観察は、(a)「遊離」水の兆候;管のボトムに形成された液滴または層;(b)定規で測定され、管中の流体の全高さの%として表される、管のボトムに形成された「白色」沈降物帯の容積;(c)試料のトップに形成された「無色透明油」の容積について行う。これもまた%容積として表す。
【0040】
(4)レーザー回折による粒度分析。Coulter(商標)LS 13 320を用いて試料中の粒子によって散乱される光のパターンを測定することによって粒度分布を測定した。それは、偏光強度微分散乱(Polarization Intensity Differential Scattering)(PIDS)システムのための二次タングステン−ハロゲン光源の主照明源として750nm(または780nm)の波長の5mWレーザーダイオードを使用する。タングステン−ハロゲンランプからの光は、3つの波長(450nm、600nm、および900nm)を各波長で2つの直角に配向した偏光子を通して透過させるフィルタ一式を通して投射される。PIDSアセンブリは、0.04μm〜0.4μm範囲の粒子について一次サイズ情報を提供する。それはまた、粒度分布の解像度を0.8μmまで高める。組み合わせPIDSおよびレーザーアセンブリは、0.04ミクロン〜2000ミクロンのサイズ分布が観察されることを可能にする。
【0041】
これらの方法の巧妙な適用によって、界面活性剤および燃料組成物の変化のランク付けを可能にする、エマルジョンの安定性の優れた記述を得ることができる。
【0042】
実験室エマルジョンは、500cm規模で調製した。炭化水素燃料(ディーゼルかバイオディーゼル混合燃料かのどちらか)を1リットルの背の高い形のビーカーに計り取った(422.5g)。添加物界面活性剤をディーゼルに添加した(12.5g)。添加物は常に、ガラス棒を用いる穏やかな撹拌でディーゼルに容易に溶解した。乳化される水を別個のきれいなビーカーに正確に計り取った(65g)。3.1cmローターステーターミキサー付きSilverson(商標)Model L4RTAを、炭化水素相の下方、中ほど少し上のレベルまで下げた。ミキサーを、15m/秒の先端速度に相当する、9200rpmでスタートさせた。ストップウォッチを、水添加を開始するや否やスタートさせた。水を10秒にわたって添加し、混合を5分間続行した。
【0043】
エマルジョンを遠心分離前に2時間放冷し、粒度分析を実施した。粒度の変化を3ヶ月までの間監視した。貯蔵安定性試料を蓄えておき、沈降、遊離水およびきれいな油層の観察を3ヶ月間実施した。
【0044】
界面活性剤調合物BA1〜BA4を、表1に示される成分を混ぜ合わせることによって作った。量は重量%単位で示す。

【0045】
Isopar(登録商標)Mは、ExxonMobilから入手可能なイソパラフィン系炭化水素である。
【0046】
Ethoduomeen(登録商標)およびEthomeen(登録商標)はアミンエトキシレートである。それらはAkzo Nobelから入手可能である。本明細書において上に指摘されたように、C/15は、かなりの割合のC10〜C14アルキル単位を含有し、T/13、SV/15およびT/15は、かなりの割合のC16〜C18アルキル単位を含有する。
【0047】
PIBSAaは、分子量1000の高ビニリデンPIBSAとジエチルエタノールアミン「DEEA」との1:2モル比塩である。
【0048】
エマルジョンを、4つの添加物BA1、2、3、および4を使って調製した。すべての場合にエマルジョンの含水量は13重量%であった。添加物処理比率は2重量%および2.5重量%であった。ベース燃料は、商業直販店から入手されるUS#2ディーゼル従来型燃料であった。
【0049】
2%添加物についての結果を表2に示す。

【0050】
2.5%添加物についての結果を表3に示す。

【0051】
結果は、良好なエマルジョンがすべての場合に得られ、より大量の添加物がより良好な結果を与えることを示す。添加物BA3およびBA4がBA1およびBA2より良好な結果を与えた。
【0052】
BA3が良好な結果を与えたので、そのようなシステムにおける界面活性剤の割合を最適化するための試みを行った。
【0053】
表4に示される次の添加物組成物を作製した。

【0054】
再度エマルジョンを、2重量%および2.5重量%添加物を使って13重量%水およびUS#2ディーゼルを使って作った。
【0055】
結果を表5に示す。

【0056】
結果は、等質量の2つの重要な界面活性剤が界面活性剤添加物調合物中に存在する;すなわちBA7およびBA8を使用するときに最良の初期エマルジョンおよび最良の老化時エマルジョンが得られることを示す。
【0057】
添加物BA8を次に、界面活性剤の濃度および硝酸アンモニウムの量について最適化した。表6に示される添加物組成物を調製した。

【0058】
US#2ディーゼルおよび2%添加物を使って13重量%水エマルジョンの安定性を再び試験した。得られた結果を表7に示す。

【0059】
硝酸アンモニウムがエマルジョン安定性および品質に重要な影響を及ぼすことがこれらの結果から明らかである。
【0060】
最適化添加物BA8を次に、バイオディーゼル混合燃料B20(すなわち、20%バイオディーゼルを含有するディーゼル)を使っておよびUS#2炭化水素ディーゼルを使って試験した。再度13重量%水および2重量%添加物を使用した。結果を表8に示す。

【0061】
表8に示される結果は、バイオディーゼル混合燃料と従来型ディーゼルとの劇的な相違を示す。従来型ディーゼルでは3ヶ月貯蔵後でさえも沈降物がまったく形成しない、優れたエマルジョンが得られる。この添加物が20%バイオディーゼルを含有するディーゼルで使用されるとき、エマルジョンは不安定であり、従来型ディーゼルおよび試みたその他の添加物のいずれかで得られるものより悪い。
【0062】
研究を次に、C16〜C18アルキルアミンエトキシレートを添加物BA8に導入することの効果について行った。表9の添加物を調製した。

【0063】
再度2.5重量%添加物を使用する13重量%水エマルジョンを試験した。結果を表10に示す。

【0064】
再び従来型ディーゼルとバイオディーゼル混合燃料との相違は劇的である。添加物はすべて従来型ディーゼルでは優れたエマルジョンを与えたが、バイオディーゼル混合燃料ではすぐに崩壊した。
【0065】
PIBSA乳化剤を変えることの効果を見るための実験を次に行った。表11に示される添加物を調製した。

【0066】
PIBSAbはPIBSAaと類似の製品である。PIBSAb製品は、2350分子量の高ビニリデンPIBをベースとしており、それは無水マレイン酸と反応させられてモノコハク酸無水物を与え、それは水およびDEEAと反応させられて塩、エステルおよびスクシンイミドの混合物を形成する。
【0067】
再度2.5重量%添加物を使って13重量%水エマルジョンを調製し、試験した。結果を表12に示す。

【0068】
有望なエマルジョンは、BA13、14および18で得られた。低レベル(またはなし)のPIBSAbは不十分なエマルジョンを与える。これは、良好なエマルジョンがPIBSAbの存在下に得られることを裏付ける。
【0069】
界面活性剤比を、異なる界面活性剤比を使った試行によってさらに最適化した。添加物を表13に示す。

【0070】
先の試験におけるように13重量%エマルジョンおよび2.5重量%添加物の安定性を測定した。結果を表14に示す。

【0071】
最良のエマルジョンはBA26で得られた。初期エマルジョンは良好であり、容易に形成され、水または有意の沈降は1ヶ月間にわたってまったく観察されなかった。しかし、この試行において試験された添加物がすべてバイオディーゼル混合燃料で満足できる結果を与えた。
【0072】
様々なディーゼルの安定化におけるB26の効果を次に測定した。結果を表15に示す。

【0073】
添加物が様々な従来型ディーゼルおよびバイオディーゼル混合エマルジョンを安定化したことが明らかである。
【0074】
異なる水およびエチレングリコール含有率のエマルジョンの安定化におけるBA26の効果を次に、表16に示されるように試験した。

【0075】
形成されたエマルジョンがエチレングリコールの存在下に、異なる水含有率で安定であることは明白であろう。
【0076】
表17は、本発明のさらなる組成物を示す:

【0077】
すべての百分率は質量による。
【0078】
EES6535SXは、分子量(M)950および2,350のポリイソブチルスクシネートの65:35質量比混合物を無水マレイン酸と、次にアルカノールアミンと反応させることによって得られる。得られた添加物は、安定なバイオディーゼル混合燃料エマルジョンを生成した。
【0079】
ディーゼルおよびバイオディーゼル中水エマルジョンを安定化することに加えて、本発明は、次の組成:
Solvesso 150ND(Exxon Mobil製) 29重量%
Ethomeen C/15 15重量%
Ethomeen T/15 15重量%
PIBSAa 22.5重量%
PIBSAb 12.5重量%
52%水性NHNO
を有する乳化剤BA27を使用する、IFO380、つまり380mm/秒の50℃での動粘度を有するIFOを使用する次の実験から理解できるように、船用ガスオイル(「MGO」)および残留燃料油(「RFO」)としても知られる船用燃料油(「MFO」)ならびに船用ディーゼル燃料(「MDF」)としても知られる中間燃料油(「IFO」)などのそれらの混合物などのその他の留出物含有燃料のエマルジョンを安定化するために用いることができる。
【0080】
IFO380のエマルジョンは、原料を60℃に予熱し、UltraTurrax T25を用いて2400rpmで3分間混合することによって調製した。すべての割合は重量による。

【0081】
エマルジョンを70℃でオーブン中に貯蔵した。試料を毎日、トップ、中間およびボトムから採取し、含水率(重量%)を、Karl Fischer法を用いて測定した。測定により試料が破壊されたので各実施例の幾つかの試料を調製した。得られた結果は次の通りであった:

【0082】
乳化剤なしではエマルジョンは不安定で不均一であるが、乳化剤があれば、それは安定で均一であることが分かるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)70〜99重量%のディーゼル燃料であって、0〜50容積%のバイオディーゼル混合燃料を含むディーゼル燃料と;
b)0.5〜30重量%の水と;
c)0.01〜5重量%のアルキルアミンエトキシレートであって、前記アルキルアミンエトキシレートの少なくとも25重量%がC10〜C14アルキルアミンエトキシレートであり、前記アルキルアミンエトキシレートの少なくとも25重量%がC16〜C18アルキルアミンエトキシレートであるアルキルアミンエトキシレートと;
d)0.03〜1重量%の生成物であって、分子量900〜2600のポリイソブチレン無水コハク酸を、ポリイソブチレン無水コハク酸の1モル当たり1〜2モルの第三級アルカノールアミンと反応させることによって得られる生成物と
を含むことを特徴とする油中水エマルジョン。
【請求項2】
請求項1に記載のエマルジョンにおいて、前記ディーゼル燃料が5〜50容積%のバイオディーゼル混合燃料を含むことを特徴とするエマルジョン。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のエマルジョンにおいて、前記アルキルアミンエトキシレートがポリオキシエチレン牛脂アミンとポリオキシエチレンココアミンとの混合物を含むことを特徴とするエマルジョン。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載のエマルジョンにおいて、前記第三級アルカノールアミンがジエチルエタノールアミンであることを特徴とするエマルジョン。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のエマルジョンにおいて、0.01〜0.1重量%の硝酸アンモニウムをさらに含むことを特徴とするエマルジョン。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載のエマルジョンにおいて、セタン価向上剤をさらに含むことを特徴とするエマルジョン。
【請求項7】
請求項6に記載のエマルジョンにおいて、前記セタン価向上剤が硝酸2−エチルヘキシルを含むことを特徴とするエマルジョン。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載のエマルジョンにおいて、エチレングリコールをさらに含むことを特徴とするエマルジョン。
【請求項9】
請求項8に記載のエマルジョンにおいて、エチレングリコール対水の比が1:3〜1:13の範囲にあることを特徴とするエマルジョン。
【請求項10】
少なくとも25重量%のC10〜C14アルキルアミンエトキシレートおよび少なくとも25重量%のC16〜C18アルキルアミンエトキシレートを含むアルキルアミンエトキシレートと、分子量900〜2600のポリイソブチレン無水コハク酸をポリイソブチレン無水コハク酸の1モル当たり1〜2モルの第三級アルカノールアミンと反応させることによって得られる生成物との、ディーゼル燃料を含む油中水エマルジョンの安定化における使用であることを特徴とする使用。
【請求項11】
アルキルアミンエトキシレートの少なくとも25重量%がC10〜C14アルキルアミンエトキシレートであり、前記アルキルアミンエトキシレートの少なくとも25重量%がC16〜C18アルキルアミンエトキシレートである1〜500重量部の前記アルキルアミンエトキシレートと;分子量900〜2600のポリイソブチレン無水コハク酸を、ポリイソブチレン無水コハク酸の1モル当たり1〜2モルの第三級アルカノールアミンと反応させることによって得られる3〜100重量部の生成物とを含むことを特徴とする組成物。
【請求項12】
油中水エマルジョンの安定化における請求項11に記載の組成物の使用において、70〜99重量部のディーゼル燃料と0.5〜30重量部の水とを含むことを特徴とする使用。
【請求項13】
a)70〜99重量%のディーゼル燃料であって、0〜50容積%のバイオディーゼル燃料を含むディーゼル燃料と;
b)0.5〜30重量%の水と;
c)0.01〜5重量%のアルキルアミンエトキシレートであって、前記アルキルアミンエトキシレートの少なくとも25重量%がC10〜C14アルキルアミンエトキシレートであり、前記アルキルアミンエトキシレートの少なくとも25重量%がC16〜C18アルキルアミンエトキシレートであるアルキルアミンエトキシレートと;
d)0.03〜1重量%の生成物であって、分子量900〜2600のポリイソブチレン無水コハク酸を、ポリイソブチレン無水コハク酸の1モル当たり1〜2モルの第三級アルカノールアミンと反応させることによって得られる生成物と
をブレンドする工程を含むことを特徴とするエマルジョンの製造方法。

【公表番号】特表2013−510205(P2013−510205A)
【公表日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−537369(P2012−537369)
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【国際出願番号】PCT/EP2010/066632
【国際公開番号】WO2011/054817
【国際公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(512117281)オルタナティヴ ペトロリアム テクノロジーズ ソシエテ アノニム (1)
【氏名又は名称原語表記】ALTERNATIVE PETROLEUM TECHNOLOGIES SA
【Fターム(参考)】