説明

燃料カートリッジ

【課題】 携帯電話、ノート型パソコン、PDA、デジタルカメラ及び電子手帳などの携帯用電子機器の電源として用いられる小型の燃料電池用に好適な燃料カートリッジを提供する。
【解決手段】 燃料電池本体に連結自在となる燃料カートリッジAには、液体燃料を収容する燃料収容容器10と、燃料流出部11と、液体燃料の後端部に、該液体燃料を封止すると共に、液体燃料の消費に伴い移動する追従体12とを備え、かつ、該追従体12には、流動性がなく、液体燃料に対して不溶性となる追従補助部材13が挿入されると共に、該追従補助部材13の上端部に少なくとも1以上の突起部13bが形成されていることを特徴とする燃料カートリッジ。
【効果】 液体燃料の内容量を大容量とし、カートリッジ径が太い燃料カートリッジとしても、液体燃料の追従が不完全となったり、液体燃料と分離することがなく、燃料電池本体に直接液体燃料を安定的に供給できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料カートリッジに関し、更に詳しくは、携帯電話、ノート型パソコン、PDA、デジタルカメラ及び電子手帳などの携帯用電子機器の電源として用いられる小型の燃料電池用に好適な燃料カートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、燃料電池は、空気電極層、電解質層及び燃料電極層が積層された燃料電池セルと、燃料電極層に還元剤としての燃料を供給するための燃料供給部と、空気電極層に酸化剤としての空気を供給するための空気供給部とからなり、燃料と空気中の酸素とによって燃料電池セル内で電気化学反応を生じさせ、外部に電力を得るようにした電池であり種々の形式のものが開発されている。
【0003】
近年、環境問題や省エネルギーに対する意識の高まりにより、クリーンなエネルギー源としての燃料電池を、各種用途に用いることが検討されており、特に、メタノールと水を含む液体燃料を直接供給するだけで発電できる燃料電池が注目されてきている(例えば、特許文献1及び2参照)。
これらの中でも、液体燃料の供給に毛管力を利用した各液体燃料電池等が知られている(例えば、特許文献3〜7参照)。
これらの各特許文献に記載される液体燃料電池は、燃料タンクから液体燃料を毛管力で燃料極に供給するため、液体燃料を圧送するためのポンプを必要としないなど小型化に際してメリットがある。
【0004】
しかしながら、このような単に燃料貯蔵槽に設けられた、多孔体及び/又は繊維束体の毛管力だけを利用した液体燃料電池は、構成上は小型化に適するものの、燃料極に燃料が直接液体状態で供給されるため小型携帯機器に搭載し、電池部の前後左右や上下が絶えず変わる使用環境下では、長時間の使用期間中に燃料の追従が不完全となり、燃料供給遮断などの弊害が発生し、電解質層への燃料供給を一定にすることを阻害する原因となっている。
【0005】
また、これら欠点の解決策の一つとして、例えば、液体燃料を毛管力によりセル内に導入した後、液体燃料を燃料気化層にて気化して、使用する燃料電池システム(例えば、特許文献8参照)が知られているが、基本的な問題点である燃料の追従性不足は改善されていないという課題を有し、また、この構造の燃料電池は液体を気化させた後に燃料として用いるシステムのため、小型化が困難となるなどの課題がある。
更に、流出口を有する容器本体に、容器本体に設けた燃料に対して前記流出口側と反対側で接するように設けられた鉱油類、シリコン油類などの高粘性液体を有する燃料容器(例えば、特許文献9参照)が知られているが、液体燃料の内容量を大容量とし、カートリッジ径が太くなった場合等に、燃料容器が前後左右や上下が絶えず変わる使用環境下、特に横置き配置では、長時間の使用期間中に燃料の追従が不完全となったり、高粘性液体が倒れ、燃料と分離して、燃料がこぼれ出すなどという課題がある。
【0006】
このように従来の燃料カートリッジでは、燃料極に直接液体燃料を供給する際に、燃料の供給が不安定で動作中の出力値に変動が生じたり、安定な特性を維持したまま携帯機器への搭載が可能な程度の小型化は困難であるのが現状である。
【特許文献1】特開平5−258760号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献2】特開平5−307970号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献3】特開昭59−66066号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献4】特開平6−188008号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献5】特開2003−229158号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献6】特開2003−299946号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献7】特開2003−340273号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献8】特開2001−102069号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献9】特開2004−281340号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来の燃料カートリッジにおける課題及び現状に鑑み、これを解消するためになされたものであり、燃料電池本体に直接液体燃料を安定的に供給すると共に、保管時に液体燃料の損失がない燃料カートリッジを提供することを目的し、特に、液体燃料の内容量を大容量とし、カートリッジ径が太くなっても、燃料電池本体に直接液体燃料を安定的に供給すると共に、保管時に液体燃料の損失がない燃料カートリッジを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記従来の課題等について、鋭意検討した結果、燃料電池本体に連結自在となる燃料カートリッジにおいて、液体燃料を収容する燃料収容容器と、燃料流出部と、液体燃料の後端部に、特定物性の追従体と特定構造となる追従補助部材とを備えることにより、上記目的の燃料カートリッジが得られることに成功し、本発明を完成するに至ったのである。
【0009】
すなわち、本発明は、次の(1)〜(11)に存する。
(1) 燃料電池本体に連結自在となる燃料カートリッジであって、該燃料カートリッジには、液体燃料を収容する燃料収容容器と、燃料流出部と、液体燃料の後端部に、該液体燃料を封止すると共に、液体燃料の消費に伴い移動する追従体とを備え、かつ、該追従体には、流動性がなく、液体燃料に対して不溶性となる追従補助部材が挿入されると共に、該追従補助部材の上端部に少なくとも1以上の突起部が形成されていることを特徴とする燃料カートリッジ。
(2) 追従体は、液体燃料に対して、不溶性若しくは難溶性の液体、及びその液体のゲル状物から選ばれる少なくとも1種からなり、かつ、液体燃料の比重に対して、追従体の比重が−10%〜200%である上記(1)記載の燃料カートリッジ。
(3) 不溶性若しくは難溶性の液体が、不揮発性若しくは難揮発性有機溶剤からなり、不溶性若しくは難溶性の液体のゲル状物が不揮発性若しくは難揮発性有機溶剤と増粘剤とを含有するものからなる上記(2)に記載の燃料カートリッジ。
(4) 不揮発性若しくは難揮発性有機溶剤がポリブテン、鉱油、シリコーンオイル、流動パラフィンから選ばれる少なくとも1種である上記(3)記載の燃料カートリッジ。
(5) 増粘剤がスチレン系熱可塑性エラストマー、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、リン酸エステルのカルシウム塩、微粒子シリカ、アセトアルコキシアルミニウムジアルキレートから選ばれる少なくとも1種である上記(3)記載の燃料カートリッジ。
(6) 追従補助部材が燃料収容容器の径方向での断面積の50%以上の断面積を有する上記(1)〜(5)の何れか一つに記載の燃料カートリッジ。
(7) 追従補助部材は、固形物、中空構造体又は多孔質体の何れかである上記(1)〜(6)の何れか一つに記載の燃料カートリッジ。
(8) 突起部の一部は、追従体から突出している上記(1)〜(7)の何れか一つに記載のである燃料カートリッジ。
(9) 液体燃料がメタノール液、エタノール液、ジメチルエーテル(DME)、ギ酸、ヒドラジン、アンモニア液、エチレングリコール、水素化ホウ素ナトリウム水溶液から選ばれる少なくとも1種である上記(1)〜(8)の何れか一つに記載のである燃料カートリッジ。
(10) 燃料収容容器は、少なくとも液体燃料と接触する壁面が液体燃料の表面自由エネルギーよりも低く調整されている上記(1)〜(9)の何れか一つに記載の燃料カートリッジ。
(11) 燃料電池本体は、燃料電極体の外表部に電解質層を構築し、該電解質層の外表部に空気電極層を構築することで形成される単位セルが複数連結されると共に、上記単位セルには燃料カートリッジに接続される燃料供給体が連結されて液体燃料が供給される構成となる上記(1)〜(10)の何れか一つに記載の燃料カートリッジ。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、液体燃料の内容量を大容量とし、カートリッジ径が太い燃料カートリッジとしても、液体燃料の追従が不完全となったり、追従体が倒れ、液体燃料と分離することがなく、燃料電池本体に直接液体燃料を安定的に供給できると共に、保管時に液体燃料の損失がない燃料カートリッジが提供される。
請求項2〜11の発明によれば、燃料電池本体に直接液体燃料を更に安定的に供給できると共に、保管時に液体燃料の損失が極めて少ない燃料カートリッジが得られることとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明の実施形態を図面を参照しながら詳しく説明する。
図1〜図2は、本発明の基本的な実施形態を示す燃料カートリッジAの基本形態(第1実施形態)を示すものである。
本第1実施形態の燃料カートリッジAは、燃料電池本体に連結自在となるものであり、液体燃料Fを収容するチューブ型の燃料収容容器10と、燃料流出部11と、液体燃料Fの後端部に、該液体燃料を封止すると共に、液体燃料の消費に伴い移動する追従体12とを有し、該追従体12には、流動性がなく、液体燃料Fに対して不溶性となる追従補助部材13が挿入されると共に、該追従補助部材13の上端部に少なくとも1以上の突起部13bが形成されたものである。
【0012】
上記チューブ型の燃料収容容器10としては、収容される液体燃料に対して保存安定性、耐久性、ガス不透過性(酸素ガス、窒素ガス等に対するガス不透過性)、更に、液体燃料の残量を視認できるように光線透過性があるものから構成されることが好ましい。
燃料収容容器10としては、例えば、光線透過性を要求されない場合であれば、アルミニウム、ステンレスなどの金属、合成樹脂、ガラスなどが挙げられるが、前記した液体燃料の残量の視認性、ガス不透過性、製造や組立時のコスト低減及び製造の容易性などから、好ましくは、上記各特性を有するポリプロピレン、ポリビニルアルコール、エチレン・ビニルアルコール共重合樹脂、ポリアクリルニトリル、ナイロン、セロハン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニルなどの単独もしくは2種以上の樹脂を含む単層構造、2層以上の多層構造からものが挙げられる。多層構造の場合は、少なくとも1層が、前記した性能(ガス透過度)を持つ樹脂で構成されていれば、残りの層は通常の樹脂でも実使用上問題はない。このような多層構造のチューブは、押出し成形、射出成形、共押出し成形などにより製造することができる。
上記チューブ型の燃料収容容器10の大きさとしては、後述するように、液体燃料の内容量を大容量とし、カートリッジ径が太い燃料カートリッジとしても、液体燃料の追従が不完全となったり、追従体が倒れ、液体燃料と分離することがなく、本発明の効果が発揮できるものであるので、内径5〜50mm、長さ30〜200mmとすることができ、更に内径を10〜50mmとすることができる。
【0013】
燃料流出部11としては、例えば、弁構造からなるものが挙げられ、本実施形態では逆止弁から構成されている。この逆止弁は、筆記具などにおいて用いられる部材と同様の構成であり、図2(a)〜(d)に示すように、気圧、温度変化等により燃料収容容器11内に直接収容される液体燃料Fに後述する燃料供給管周辺より浸入する空気などの異物を防ぐものであり、中央部がドーム状となるスリット部11aを有する円形状(又は楕円形状)の逆止弁体11bと、該逆止弁体11bを支持するストッパー部11c、11cを有する弁アダプター11dと、上記逆止弁体11bを保持する筒状の保持体11eとから構成されており、使用休止(未使用)時にも空気などの異物の浸入を防止する構造となっている。これは、空気などの浸入により液体燃料貯蔵槽となる収容容器10内の圧力増加などによる燃料漏れ、噴出しなどの事故を防止するためである。
これらの逆止弁体11bを含む逆止弁11の材質としては、収容される液体燃料に対して保存安定性、耐久性、ガス不透過性、燃料供給管に密着出来る弾性を有するものであれば、特に限定されず、ポリビニルアルコール、エチレン・ビニルアルコール共重合樹脂、ポリアクリルニトリル、ナイロン、セロハン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニルなどの合成樹脂、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、1,2−ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、二トリルゴム、ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、多硫化ゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴムなどのゴム、エラストマーが挙げられ、通常の射出成形や加硫成形などによって製造することができる。
【0014】
用いる液体燃料Fとしては、メタノールと水とからなるメタノール液が挙げられるが、後述する燃料電極体において燃料として供給された化合物から効率良く水素イオン(H)と電子(e)が得られるものであれば、液体燃料は特に限定されず、燃料電極体の構造などにもよるが、例えば、ジメチルエーテル(DME)、エタノール液、ギ酸、ヒドラジン、アンモニア液、エチレングリコール、水素化ホウ素ナトリウム水溶液などの液体燃料も用いることができる。
また、これらの液体燃料の濃度は、燃料電池の構造、特性等により種々の濃度の液体燃料を用いることができ、例えば、1〜100%濃度の液体燃料を用いることができる。
【0015】
追従体12は、燃料収容容器10に収容される液体燃料Fの後端面に接触し、該液体燃料Fを封止すると共に、燃料消費に伴い移動するものであり、燃料収容容器10内の液体燃料が漏出、蒸発してしまうことを防止すると共に、液体燃料への空気の侵入を防止するものである。
この追従体12としては、液体燃料Fに対し溶解、拡散しないことが要求される。液体燃料Fに対し溶解、拡散してしまうような場合、燃料貯蔵槽となる燃料収容容器10内の液体燃料が漏出、蒸発してしまい燃料貯蔵槽としての役割を果たせないばかりか、液体燃料Fによって追従体12を構成する物質が燃料電池本体の燃料極に浸入し、反応に悪影響が出ることが考えられる。これらの条件を勘案して、本発明に用いる追従体11の好ましい特性等が選択される。
【0016】
用いることができる追従体12としては、液体燃料Fに対して、不溶性若しくは難溶性の液体からなるもの、または、これらの液体のゲル状物からなり、かつ、液体燃料Fの比重に対して、追従体の比重が−10%〜200%であるものが好ましい。
不溶性若しくは難溶性の液体としては、例えば、ポリブテン、鉱油、ポリグリコール、ポリエステル、シリコーンオイル、流動パラフィンなどの不揮発性若しくは難揮発性有機溶剤から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
用いることができるポリブテンとしては、例えば、市販品のニッサンポリブテンN(日本油脂社製)、LV−7、LV−10、LV−25、LX−50、LV−100、HV−15、HV−35、HV−50、HV−100、HV−300、HV−1900、HV−3000(以上、日本石油化学社製)、35R(出光興産社製)などが挙げられ、鉱物油としては、例えば、市販品のダイアナプロセスオイルMC−W90、PS−430、PS−90(以上、出光興産社製)などが挙げられる。
シリコーンオイルとしては、KF−96 0.65〜30,000(以上、信越シリコーン社製)などが挙げられる。
これらの不揮発性若しくは難揮発性有機溶剤は、1種または2種以上を合わせて使用することができる。
【0017】
また、不溶性若しくは難溶性の液体のゲル状物は、上記不揮発性若しくは難揮発性有機溶剤と増粘剤とを含有するものから構成される。
用いる増粘剤は、上記不揮発性若しくは難揮発性有機溶剤に可溶若しくは膨潤するものであり、不溶性若しくは難溶性の液体をゲル状物にできるものであれば良く、例えば、スチレン系熱可塑性エラストマー、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、リン酸エステルのカルシウム塩、微粒子シリカ、アセトアルコキシアルミニウムジアルキレート、脂肪酸金属塩、変性クレーから選ばれる少なくとも1種を用いることができる。
【0018】
スチレン系熱可塑性エラストマー(SBC)は、ポリスチレンブロックとゴム中間ブロックとを有しポリスチレン部分が物理架橋(ドメイン)を形成して橋かけ点となる熱可塑性エラストマー(TPE)であり、ハードセグメントのポリスチレン(S)とソフトセグメントのポリブタジエン(B)、ポリイソプレン(I)、エチレン・ブチレン(EB)、エチレン・プロピレン(EP)、ビニル−ポリイソプレン(V−I)等との組み合わせにより、S−B−S、S−I−S、S−EB−S、(S−B)nX、S−EP−S、V−SI−Sなどのリニアタイプ、放射状タイプ、並びに、これらの水添を用いることができる。
用いることができる塩化ビニル系熱可塑性エラストマー(TPVC)は、ハードセグメントにPVC、NBR等を使用し、ソフトセグメントにPVCを使用したTPEであり、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)は、ハードセグメントにポリプロピレンンやポリエチレンなどのポリオレフィンを用い、ソフトセグメントにEPDMなどを使用したTPEである。
【0019】
また、用いることができるポリアミド系熱可塑性エラストマー(TPAE)は、ナイロンをハードセグメントとし、これにポリエステル又はポリオール(PTMG又はPPG)をソフトセグメントとしたブロックコポリマー等であり、ポリエステル系熱可塑性エラストマー(TPEE)は、ハードセグメントに高融点で高結晶の芳香族ポリエステル、例えば、ポリブチレンテレフタレート(PBT)を、ソフトセグメントにはガラス転移温度が低い(例えば、−70℃以下の)非晶性ポリエーテル、例えば、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)を使用したマルチブロックポリマーや、ソフトセグメントに脂肪族ポリエステルを使用したタイプ等のTPEであり、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)は、分子内に部分架橋を有する不完全可塑タイプと、完全に線状の高分子体で完全熱可塑性タイプなどが挙げられ、ジイソシアネートと短鎖グリコールからなるポリマー鎖がハードセグメントとなり、ジイソシアネートとポリオールからなるポリマー鎖がソフトセグメントとなり、ジイソシアネート、長・短鎖ポリオールの種類、量によって多様なポリマーができ、カプロラクトン型、アジピン酸型、ポリテトラメチレングリコール型〔PTMG型(又はエーテル型)〕などを用いることができる。
微粒子シリカとしては、疎水性シリカ等(市販品としてはアエロジルR−974D、日本アエロジル社製)などを用いることができる。
これらの増粘剤は、1種または2種以上を合わせて使用することができる。
【0020】
これらの不揮発性若しくは難揮発性有機溶剤と増粘剤とを含有するゲル状物からなる追従体は、追従体全量に対して、不揮発性若しくは難揮発性有機溶剤を70〜99.8重量%(以下、単に「%」という)、好ましくは、85〜99.5%、更に好ましくは、87〜99.5%とし、増粘剤を、0.2〜30%、好ましくは、0.5〜15%、更に好ましくは、0.5〜10%とすることが望ましい。
【0021】
用いることができる追従体は、上述の如く、不溶性若しくは難溶性の液体からなるもの、または、これらの液体のゲル状物からなる、好ましくは、カートリッジ径を太くした場合においても、更なる追従性を向上せしめて、液体燃料を安定的に供給する点から液体のゲル状物からなるものが望ましく、かつ、燃料消費に伴い効率良く追従させる点から、液体燃料Fの比重に対して、追従体の比重が−10%〜200%であるものが好ましく、更に好ましくは、−50%〜50%とすることが望ましい。
本発明では、用いる液体燃料の種類及びその濃度により、追従体の比重が変動するものとなる。すなわち、用いる各液体燃料及びその濃度の比重は、下記表1に示すとおりである。
【表1】

【0022】
本発明において、例えば、液体燃料Fとして70%メタノール(比重0.872)を使用する場合は、不溶性若しくは難溶性の液体から追従体、または、これらの液体のゲル状物からなる追従体の比重は、0.785〜1.744とすることが好ましく、更に好ましくは、0.785〜1.308とすることが望ましく、また、液体燃料FとしてDME(比重0.661)を使用する場合は、追従体の比重は、0.595〜1.322とすることが好ましく、更に好ましくは、0.5915〜0.9915とすることが望ましい。
本発明において、燃料電池に用いる液体燃料はその比重が(大部分が1以下と)小さいため、用いる上記好ましい比重範囲となる追従体を作製するには、上記不溶性若しくは難溶性の液体の種類及びその使用量、並びに、増粘剤及びその使用量、及びその製法等を好適に組み合わせて、調製することができる。
【0023】
また、上記構成の追従体の使用量は、良好な追従性、落下時の耐衝撃性の点から、用いる液体燃料の使用量(重量比1)に対して、0.01〜0.5倍とすることが好ましく、更に好ましくは、0.1〜0.2倍とすることが望ましい。例えば、液体燃料として、70%メタノール液2mlを収容容器に充填する場合は、追従体の量は、0.2〜0.4mlとすることが好ましい。
【0024】
本発明に用いる追従補助部材13は、流動性がなく、液体燃料に対して不溶性であり、かつ、追従体12に挿入されるものであり、追従補助部材本体部13aと、本体部13aの上端部に形成された少なくとも1以上の突起部13bとを有するものである。
この追従補助部材13は、燃料の消費速度の速いものや、大容量の液体燃料を搭載する場合に、チューブ型等の燃料収容容器の径が太いものを用いた場合においても、追従体12の追従を追従切れを起こすことなく、良好に追従させるために備えるものである。
また、突起部13bは、燃料カートリッジが横倒(横置配置等)させても追従体(フォロワー)12が自重を支えることができずに倒れてしまうことを防止するために形成するものである。特に、液体燃料を消費した直後は追従体12が動きやすく、倒れやすい状態にあるのを突起部13bが追従体12に食い込むことにより追従体12を支えことができるので、追従体12の倒れ、この倒れに伴なう液体燃料との分離及びこの分離による液体燃料のこぼれ出しを防止することができると共に、充填する追従体12の量を少なくすることもできることとなる。
更に、突起部を有する追従補助部材13を追従体12に挿入することにより、チューブ容器10の断面積が大きくても、追従体12の断面積を小さくできる(追従体の充填量も少なくできる)ので、カートリッジを横倒(横置き配置)しても、結果として追従体12の倒れ、液体燃料のこぼれ出しを防止することができるものとなる。
【0025】
この追従補助部材13の材質としては、例えば、ポリプロピレン、エチレン・ビニルアルコール共重合樹脂、ポリアクリルニトリル、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、各種ゴムなどから構成されるものが挙げられ、好ましくは、これらの材質からなる固形物、または、その中空構造体、多孔質体などを用いることができる。
【0026】
この追従補助部材13の形状としては、本体部13aとして円柱状、四角柱状、三角柱状、球状若しくは燃料カートリッジ断面と相似形状などが挙げられ、その全体(本体部13a+突起部13b)の長さ(高さ)は、追従体12の全長に対して、30〜70%とすることが好ましい。
用いる追従補助部材13は、燃料の消費速度の速いものや、多量の液体燃料を搭載した場合に燃料収容容器の径を大型化した場合における良好な追従性の発揮等の点から、燃料収容容器10の径方向での断面積の50%以上の断面積を有するものが好ましく、更に好ましくは、80〜95%とすることが望ましい。また、追従補助部材13は、不溶性若しくは難溶性の液体又はその液体のゲル状物からなる追従体12中に挿入、または、その追従補助部材13の一部が不溶性若しくは難溶性の液体又はその液体のゲル状物からなる追従体12の下に出ている状態であってもよいものである。
【0027】
この追従補助部材13の突起部13aは、該突起部13aの少なくとも一部が追従体12に食い込むことにより、追従体12の倒れを防止できる構造であれば、特に限定されず、追従補助部材13の上端部に少なくとも1以上あることが必要である。この構造を有するものであれば、突起部13aを含めた追従補助部材13が追従体12内に挿入(埋没)される構造や、突起部13aの一部が追従体12から突出する構造、または、追従補助部材13の下端の一部が追従体12から露出する構造などであってもよいものである。
突起部13aの形状としては、上記特性を有するものであればよく、図1(a)に示すように、本体部13aより縮径となる円柱状の突起部13bが挙げられる。
【0028】
本実施形態では、図1(a)に示すように、追従補助部材13と燃料収容容器10との間(空隙)に不溶性若しくは難溶性の液体又はその液体のゲル状物からなる追従体12があり、その追従補助部材13の一部が不溶性若しくは難溶性の液体又はその液体のゲル状物からなる追従体12の下に出ている状態である。
また、本実施形態では、液体収容容器の内径が6.0mm、外形8.0mm、長さ100mm、液体燃料Fが70%メタノール液(比重0.872)、12aが不溶性若しくは難溶性の液体のゲル状物(比重1.0)、追従補助部材13がポリプロピレン製で、比重0.5であり、その本体部13aと突起部13bとの合計長さ(高さ)は、追従体の全長に対して、70%、本体部13aの断面積は、燃料収容容器10の径方向での断面積の80%となるものである。円柱状の突起部13bは、本体部13aよりも縮径(2/3)となるものである。
【0029】
追従補助部材13の突起部13aの他の形状等としては、例えば、図3〜図8の各(a)及び(b)の各突起部形状が挙げられる。
図3(a)及び(b)に示す突起部13bは、円柱状の本体部13a上に、上端面が円形状の平板面部を有する6個の棒状の突起部から構成されるものである。
図4(a)及び(b)に示す突起部13bは、円柱状の本体部13a上に、円筒状の突起部から構成されるものである。
図5(a)及び(b)に示す突起部13bは、円柱状の本体部13a上に、4個の四角柱状の突起部から構成されるものである。
図6(a)及び(b)に示す突起部13bは、円柱状の本体部13a上に、テーパー状に縮径する上端面が四角形となる突起部からなり、突起部の一部が追従体12から突出する構造からなるものである。
図7(a)及び(b)に示す突起部13bは、円柱状の本体部13a上に、本体部13aよりも縮径となる突起部が追従体から突出する長さに設けられた構造となるものである。
【0030】
このように構成される燃料カートリッジAは、図8及び図9に示すように、燃料電池本体Nに連結自在となり、使用に供されることとなる。
すなわち、燃料電池本体Bは、図8及び図9に示すように、微小炭素多孔体よりなる燃料電極体21の外表部に電解質層23を構築し、該電解質層23の外表部に空気電極層24を構築することで形成される単位セル(燃料電池セル)20,20と、燃料貯留体Aに接続される浸透構造を有する燃料供給体30と、該燃料供給体30の終端に設けられる使用済み燃料貯蔵槽40とを備え、上記各単位セル20、20は直列に連結されて燃料供給体30により燃料が順次供給される構造となっており、前記燃料カートリッジAは、交換可能なカートリッジ構造体となっており、燃料電池本体Bの支持体15に挿入される構造となっている。
この実施形態では、図1及び図2(a)に示すように液体燃料Fが直接貯蔵され、液体燃料Fを収容する燃料収容容器10の下部に燃料流出部となる逆止弁11に挿入される燃料供給体30により、液体燃料が供給されるものである。
【0031】
これらの燃料カートリッジAの燃料収容容器10、燃料流出部となる逆止弁11、燃料供給体30は、嵌合などによりそれぞれ接合される。このとき、それぞれの部材が液体燃料Fの表面自由エネルギーよりも高い場合、接合部の隙間に入り込みやすく液体燃料Fが漏洩する可能性が高まってしまう。そのため、これらの部材の少なくとも液体燃料Fと接触する壁面には、液体燃料の表面自由エネルギーよりも低く調整されていることが望ましい。この調整方法としては、燃料収容容器10などの液体燃料と接触する壁面に、シリコン系、ケイ素樹脂若しくはフッ素系の撥水剤を用いたコーティングによる、撥水膜形成処理を施すことにより行うことができる。
【0032】
単位セルとなる各燃料電池セル20は、図9(a)及び(b)に示すように、微小柱状の炭素多孔体よりなる燃料電極体21を有すると共に、その中央部に燃料供給体30を貫通する貫通部22を有し、上記燃料電極体21の外表部に電解質層23が構築され、該電解質層23の外表部に空気電極層24が構築される構造からなっている。なお、各燃料電池セル20の一つ当たり、理論上約1.2Vの起電力を生じる。
【0033】
この燃料電極体21を構成する微小柱状の炭素多孔体としては、微小な連通孔を有する多孔質構造体であれば良く、例えば、三次元網目構造若しくは点焼結構造よりなり、アモルファス炭素と炭素粉末とで構成される炭素複合成形体、等方性高密度炭素成形体、炭素繊維抄紙成形体、活性炭素成形体などが挙げられ、好ましくは、燃料電池の燃料極における反応制御が容易かつ反応効率の更なる向上の点で、アモルファス炭素と炭素粉末とからなる微細な連通孔を有する炭素複合成形体が望ましい。
【0034】
この多孔質構造からなる炭素複合体の作製に用いる炭素粉末としては、更なる反応効率の向上の点から、高配向性熱分解黒鉛(HOPG)、キッシュ黒鉛、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンナノチューブ、フラーレンより選ばれる少なくとも1種(単独または2種以上の組合せ)が好ましい。
また、この燃料電極体21の外表部には、白金−ルテニウム(Pt−Ru)触媒、イリジウム−ルテニウム(Ir−Ru)触媒、白金−スズ(Pt−Sn)触媒などが当該金属イオンや金属錯体などの金属微粒子前駆体を含んだ溶液を含浸や浸漬処理後還元処理する方法や金属微粒子の電析法などにより形成されている。
【0035】
電解質層23としては、プロトン伝導性又は水酸化物イオン伝導性を有するイオン交換膜、例えば、ナフィオン(Nafion、Du pont社製)を初めとするフッ素系イオン交換膜が挙げられる他、耐熱性、メタノールクロスオーバーの抑制が良好なもの、例えば、無機化合物をプロトン伝導材料とし、ポリマーを膜材料としたコンポジット(複合)膜、具体的には、無機化合物としてゼオライトを用い、ポリマーとしてスチレン−ブタジエン系ラバーからなる複合膜、炭化水素系グラフト膜などが挙げられる。
また、空気電極層24としては、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)等を上述の金属微粒子前駆体を含んだ溶液等を用いた方法で担持させた多孔質構造からなる炭素多孔体が挙げられる。
【0036】
前記燃料供給体30は、燃料貯留体Aの逆止弁11内に挿入され、該液体燃料を各単位セル20に供給できる浸透構造を有するものであれば特に限定されず、例えば、フェルト、スポンジ、または、樹脂粒子焼結体、樹脂繊維焼結体などの焼結体等から構成される毛管力を有する多孔体や、天然繊維、獣毛繊維、ポリアセタール系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリフェニレン系樹脂などの1種又は2種以上の組合せからなる繊維束体からなるものが挙げられ、これらの多孔体、繊維束体の気孔率等は各単位セル20への供給量に応じて適宜設定されるものである。
【0037】
使用済み燃料貯蔵槽40は、燃料供給体30の終端に配置されるものである。この時、使用済み燃料貯蔵槽40を燃料供給体30の終端に直接接触させて使用済み燃料を直接吸蔵体等により吸蔵させても問題ないが、燃料供給体30と接触する接続部に中綿や多孔体、または繊維束体などを中継芯として設け、使用済み燃料排出路としてもよい。
また、燃料供給体30により供給される液体燃料は、燃料電池セル20で反応に供されるものであり、燃料供給量は、燃料消費量に連動しているため、未反応で電池の外に排出される液体燃料は殆どなく、従来の液体燃料電池のように、燃料出口側の処理系を必要としないが、運転状況により供給過剰時に至った際には、反応に使用されない液体燃料が貯蔵槽40に蓄えられ阻害反応を防ぐことができる構造となっている。
なお、50は、燃料カートリッジAと使用済み燃料貯蔵槽40を連結すると共に、燃料貯蔵槽10から各単位セル20、20の個々に燃料供給体30を介して直接液体燃料を確実に供給するメッシュ構造などからなる部材である。
【0038】
このように構成される燃料カートリッジAを用いた燃料電池は、燃料貯留体Aから燃料供給部となる逆止弁11に挿入された燃料供給体30又は浸透構造を持つ燃料電極体21に供給され、いずれかの浸透構造により、液体燃料を燃料電池セル20、20内に導入するものである。
本発明では、燃料電池本体に連結自在となる燃料カートリッジAには、液体燃料Fを収容する燃料収容容器10と、燃料流出部11と、液体燃料Fの後端部に、該液体燃料Fを封止すると共に、液体燃料Fの消費に伴い移動する追従体12とを有し、該追従体12には、流動性がなく、液体燃料Fに対して不溶性となる追従補助部材13が挿入されると共に、該追従補助部材13の上端部に少なくとも1以上の突起部13aが形成されたものであるので、燃料の消費速度の速いものや、チューブ型等の燃料収容容器の径が大きいものを用いた場合にも、燃料電池の発電による燃料消費に伴ない、追従補助部材13が挿入された追従体12が追従切れを起こすことなく移動することによって液体燃料の体積減少に対応することとなり、しかも、燃料電池の稼動による燃料貯留体(液体燃料)が加温されても追従体が移動することで、体積膨張にも対応することができ、かつ、突起部13bにより追従体12中に食い込むことができるので、追従体12を支えることができるため、追従体12の倒れ、この倒れに伴なう液体燃料との分離及びこの分離による液体燃料のこぼれ出しを防止することができると共に、充填する追従体12の量を少なくすることもできることとなる。
更に、突起部を有する追従補助部材13を追従体12に挿入することにより、チューブ容器10の断面積が大きくても、追従体12の充填量も少なくできるので、カートリッジを横倒(横置き配置)しても、結果として追従体12の倒れ、液体燃料のこぼれ出しを防止することができるものとなる。
【0039】
また、上記形態では、少なくとも、燃料電極体21及び/又は燃料電極体21に接する燃料供給体30に毛管力が存在し、この毛管力により、燃料貯蔵槽10から各単位セル20、20の個々に直接液体燃料が逆流や途絶を起こすことなく、安定的かつ継続的に燃料を供給することができるものとなる。より好ましくは、燃料電極体21及び/又は燃料電極体21に接する燃料供給体30の毛管力<使用済み燃料貯蔵槽40の毛管力と設定することにより、燃料貯蔵槽10、各単位セル20、20から使用済み燃料貯蔵槽までの夫々に直接液体燃料が逆流や途絶を起こすことなく、安定的かつ継続的に燃料の流れを作ることができるものとなる。
更に、この燃料電池では、ポンプやブロワ、燃料気化器、凝縮器等の補器を特に用いることなく、液体燃料を気化せずそのまま円滑に供給することが出来る構造となるため、燃料電池の小型化を図ることが可能となる。
従って、この形態の燃料電池では、燃料電池全体のカートリッジ化が可能となり、携帯電話やノート型パソコンなどの携帯用電子機器、電子カメラの電源として用いられることができる小型の燃料電池が提供されることとなる。
なお、上記形態では、燃料電池セル20を二つ使用した形態を示したが、燃料電池の使用用途により燃料電池セル20の連結(直列又は並列)する数を増加させて所要の起電力等とすることができる。
【0040】
図10及び図11は、燃料電池本体への接続の他の形態を示すものである。以下の形態において、前記第1実施形態の燃料電池本体と同様の構成及び効果を発揮するものについては、図1と同一符号を付してその説明を省略する。
この形態は、図10及び図11に示すように、逆止弁11に挿入される燃料供給管31を介して燃料供給体30に接続される点、突起部13bの形状を
した点などで、上記第1実施形態と相違するものである。
なお、図示しないが、燃料供給体30の先端(図10、図11の矢印方向)には、上記第1実施形態(図8)と同様に燃料電池セル20、20…に直列又は並列に接続される構造となっている。
【0041】
このような実施形態の燃料電池では、燃料貯蔵槽が交換可能で視認性を有する燃料カートリッジBが、液体燃料Fを収容する燃料収容容器10と、逆止弁を有する燃料流出部11と燃料消費に伴い移動する追従体12及び追従体12に挿入される突起部13bを有する追従補助部材13を備えることにより、上記第1実施形態と同様にカートリッジ構造体内部の液体燃料が視認可能であるので、燃料の使用状況を容易に視認でき、追従体12及追従補助部材13により、燃料の消費速度の速いものや、チューブ型等の燃料収容容器の径が大きいものを用いた場合にも、追従体12が追従切れを起こすことなく移動することによって液体燃料の体積減少に対応することとなり、しかも、燃料電池の稼動による液体燃料が加温されても追従体が移動することで、体積膨張にも対応することができ、かつ、突起部13bにより追従体12中に食い込むことができるので、追従体12を支えることができるため、追従体12の倒れ、これに伴なう液体燃料のこぼれ出しを防止することができ、これにより、保管時に液体燃料の損失がないものとなり、燃料供給体30の毛管力により、燃料収容容器10から各単位セルの個々に直接液体燃料が逆流や途絶を起こすことなく、安定的かつ継続的に燃料を供給することができるものとなる。
【0042】
本発明の燃料カートリッジAは、上記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で種々変更することができるものである。
例えば、燃料電池セル20は円柱状のものを用いたが、角柱状、板状の他の形状のものであってもよく、また、燃料供給体30との接続は直列接続のほか、並列接続であってもよい。
また、上記実施形態では、燃料流出部として図2(a)〜(d)に示す逆止弁11を用いたが、気圧、温度変化等により燃料収容容器10内に直接収容される液体燃料Fに燃料供給管31周辺より浸入する空気などの異物を防ぐものであり、燃料供給体30が挿入されて液体燃料を燃料供給体30に供給できる構造となるものであれば、特に限定されるものではない。
【0043】
更に、上記実施形態では、直接メタノール型の燃料電池として説明したが、燃料電池本体に連結自在となる燃料カートリッジには、液体燃料を収容する燃料収容容器と、燃料流出部と、液体燃料の後端部に、該液体燃料を封止すると共に、液体燃料の消費に伴い移動する追従体及び突起部を有する追従補助部材を備えたものであれば、本発明は上記直接メタノール型の燃料電池に限定されるものではなく、改質型を含む高分子改質膜型の燃料電池にも好適に適用することができるものであり、更に、大容量(例えば、100ml以上)の液体燃料を搭載する場合にチューブ型等の燃料収容容器の径を大きくした場合には、それに伴なって追従体の量、追従補助部材の大きさなどを増加させたり、大きくしたりして、追従体の追従を追従切れを起こすことなく、良好に追従させることができる。
更にまた、燃料電池本体として、微小炭素多孔体よりなる燃料電極体の外表部に電解質層を構築し、該電解質層の外表部に空気電極層を構築することで燃料電池本体を構成したが、燃料電池本体の構造は特に限定されず、例えば、電気導電性を有する炭素質多孔体を基材とし、該基材の表面に電極/電解質/電極の各層を形成した単位セル又は該単位セルを2以上連結した連結体を備え、上記基材に燃料供給体を介して液体燃料を浸透させる構成とすると共に、基材の外表面に形成される電極面を空気に曝す構造からなる燃料電池本体としてもよいものである。
【実施例】
【0044】
次に、本発明を実施例及び比較例により、更に詳述するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0045】
〔実施例1〜3及び比較例1〕
実施例1〜3は、下記に示す構成及び追従体、追従補助部材、液体燃料(70wt%メタノール液、比重0.87)2g充填の燃料カートリッジを夫々作製し、比較例1は、し、下記に示す構成及び追従体、液体燃料(70wt%メタノール液、比重0.87)2g充填の燃料カートリッジを作製し、各実施例及び比較例の燃料排出孔から0.2ml/分の速度で液体燃料を排出し、その排出性を下記評価方法により排出性及び追従体の安定性を評価した。
これらの結果を下記表2に示す。
【0046】
(燃料収容容器の構成:チューブ1)
チューブ1:長さ100mm、外径5.4mm、内径4.0mm、ポリプロピレン製押出チューブ
【0047】
燃料排出部(逆止弁、図2に準拠):長さ5mm、外径4mm、内径1mm、シリコーンゴム製
液体燃料:70wt%メタノール溶液(比重0.87)
(追従体Aの組成)
以下の配合組成となるゲル状追従体(比重0.90)を用いた。
鉱油:ダイアナプロセスオイル MC−W90(出光興産社製) 93重量部
疎水性シリカ:アエロジル R−974D 6重量部
(日本アエロジル社製、BET表面積200m/g)
シリコーン系界面活性剤:SILWET FZ−2171 1重量部
(日本ユニカー社製)
【0048】
(追従体Bの組成)
以下の配合組成となるゲル状追従体(比重1.0)を用いた。
シリコーンオイル:KF−96 30,000(信越シリコーン社製) 93重量部
疎水性シリカ:アエロジル R−974D 6重量部
(日本アエロジル社製、BET表面積200m/g)
シリコーン系界面活性剤:SILWET FZ−2171 1重量部
(日本ユニカー社製)
(追従体Cの組成)
以下の配合組成となるゲル状追従体(比重1.0)を用いた。
ポリブテン:ニッサンポリブテン015N(日本油脂社製、MW=580)94重量部
疎水性シリカ:アエロジル R−974D 5重量部
(日本アエロジル社製、BET表面積200m/g)
シリコーン系界面活性剤:SILWET FZ−2110 1重量部
(日本ユニカー社製)
追従補助部材(図1に準拠):
材質:ポリプロピレン製、本体部形状:円柱状、突起部形状:円柱状、本体部+突起部構造:全長7mm(追従体の全長に対して40%)、突起部長さ:3mm、比重:0.5、断面積は、燃料収容容器10の径方向での断面積の40%
【0049】
(排出性の評価方法)
排出性を下記評価基準により評価した。
評価基準:
○:充填した燃料すべてが排出できた。
△:燃料が80%以上排出できた。
×:燃料の排出量が50%以下であった。
【0050】
(追従体の安定性の評価方法)
各チューブを横置き配置し、温度50℃に加熱した条件で、高さ30cmから横向きに3回落下させ、下記評価基準で評価した。
評価基準:
○:追従体の変形なし。
△:追従体の変形あり。
×:追従体が脱落し、燃料が漏れた。
【0051】
【表2】

【0052】
上記表2の結果から明らかなように、本発明の範囲となる実施例1〜3は、本発明の範囲外となる比較例1に較べて、排出性及び追従体の安定性に優れていることが判明した。具体的には、実施例1〜3及び比較例1では、燃料消費に伴ない、追従体が移動し、燃料を完全に消費することができたが、安定性試験においては、比較例1のように突起部を有する追従補助部材がないものでは、追従体の安定性が劣ることが判明した。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】(a)本発明の第1実施形態の燃料カートリッジを縦断面態様で示す概略断面図、(b)はその平面図である。
【図2】(a)〜(d)は本発明の燃料流出部となる逆止弁を示すものであり、(a)は逆止弁の縦断面図、(b)は弁アダプタの縦断面図、(c)は逆止弁体の縦断面図、(d)は逆止弁体の平面図である。
【図3】(a)は追従補助部材の他の形態を示す部分縦断面図、(b)はその平面図である。
【図4】(a)は追従補助部材の他の形態を示す部分縦断面図、(b)はその平面図である。
【図5】(a)は追従補助部材の他の形態を示す部分縦断面図、(b)はその平面図である。
【図6】(a)は追従補助部材の他の形態を示す部分縦断面図、(b)はその平面図である。
【図7】(a)は追従補助部材の他の形態を示す部分縦断面図、(b)はその平面図である。
【図8】図1の燃料カートリッジを燃料電池本体に接続して燃料電池として使用した状態の一例を示す概略断面図である。
【図9】(a)及び(b)は燃料電池セルを説明する斜視図、縦断面図である。
【図10】本発明の第2実施形態の燃料カートリッジを燃料電池本体に取り付ける前の状態を縦断面態様で示す概略断面図である。
【図11】本発明の第2実施形態の燃料カートリッジを燃料電池本体に取り付けた状態を縦断面態様で示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0054】
A 燃料カートリッジ
F 液体燃料
10 燃料収容容器
11 燃料流出部
12 追従体
13 追従補助部材
13b 突起部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池本体に連結自在となる燃料カートリッジであって、該燃料カートリッジには、液体燃料を収容する燃料収容容器と、燃料流出部と、液体燃料の後端部に、該液体燃料を封止すると共に、液体燃料の消費に伴い移動する追従体とを備え、かつ、該追従体には、流動性がなく、液体燃料に対して不溶性となる追従補助部材が挿入されると共に、該追従補助部材の上端部に少なくとも1以上の突起部が形成されていることを特徴とする燃料カートリッジ。
【請求項2】
追従体は、液体燃料に対して、不溶性若しくは難溶性の液体、及びその液体のゲル状物から選ばれる少なくとも1種からなり、かつ、液体燃料の比重に対して、追従体の比重が−10%〜200%である請求項1記載の燃料カートリッジ。
【請求項3】
不溶性若しくは難溶性の液体が、不揮発性若しくは難揮発性有機溶剤からなり、不溶性若しくは難溶性の液体のゲル状物が不揮発性若しくは難揮発性有機溶剤と増粘剤とを含有するものからなる請求項2に記載の燃料カートリッジ。
【請求項4】
不揮発性若しくは難揮発性有機溶剤がポリブテン、鉱油、シリコーンオイル、流動パラフィンから選ばれる少なくとも1種である請求項3記載の燃料カートリッジ。
【請求項5】
増粘剤がスチレン系熱可塑性エラストマー、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、リン酸エステルのカルシウム塩、微粒子シリカ、アセトアルコキシアルミニウムジアルキレートから選ばれる少なくとも1種である請求項3記載の燃料カートリッジ。
【請求項6】
追従補助部材が燃料収容容器の径方向での断面積の50%以上の断面積を有する請求項1〜5の何れか一つに記載の燃料カートリッジ。
【請求項7】
追従補助部材は、固形物、中空構造体又は多孔質体の何れかである請求項1〜6の何れか一つに記載の燃料カートリッジ。
【請求項8】
突起部の一部は、追従体から突出している請求項1〜7の何れか一つに記載のである燃料カートリッジ。
【請求項9】
液体燃料がメタノール液、エタノール液、ジメチルエーテル(DME)、ギ酸、ヒドラジン、アンモニア液、エチレングリコール、水素化ホウ素ナトリウム水溶液から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜8の何れか一つに記載のである燃料カートリッジ。
【請求項10】
燃料収容容器は、少なくとも液体燃料と接触する壁面が液体燃料の表面自由エネルギーよりも低く調整されている請求項1〜9の何れか一つに記載の燃料カートリッジ。
【請求項11】
燃料電池本体は、燃料電極体の外表部に電解質層を構築し、該電解質層の外表部に空気電極層を構築することで形成される単位セルが複数連結されると共に、上記単位セルには燃料カートリッジに接続される燃料供給体が連結されて液体燃料が供給される構成となる請求項1〜10の何れか一つに記載の燃料カートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−216458(P2006−216458A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−29345(P2005−29345)
【出願日】平成17年2月4日(2005.2.4)
【出願人】(000005957)三菱鉛筆株式会社 (692)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】