説明

燃料ガス処理装置

【課題】燃料ガスをエンジンオイルの動的なエリアに放出して、燃料ガスを送るためのポンプを必要とせずに、燃料ガスをエンジンオイル中に溶け込ませることができる燃料ガス処理装置を提供する。
【解決手段】燃料タンク内で発生する燃料ガスを、燃料ガス取込管161を介して燃料ガス取込管161の開口部173からエンジンEのクランクケース内に導き、クランクケース内のエンジンオイル中に蓄えて、エンジンEの運転時に、燃料ガスをエンジンオイル中からパージ通路163を介して吸気管に導く燃料ガス処理装置160において、クランクケースの下部に形成され、エンジンオイルを貯留するオイルパンと、一端がオイルパンに連通するオイル吸入口136aを形成し、他端がオイルポンプ125に連通するオイル吸入通路136と、を有し、燃料ガス取込管161の開口部173が、オイル吸入口136aに対向するように配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の燃料ガス処理装置に関し、特に、自動二輪車の燃料ガス処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の燃料ガス処理装置としては、燃料タンク内で蒸発した燃料ガスが大気中に放出されるのを防ぐため、この燃料ガスをエンジンに導いて処理するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この燃料ガス処理装置では、燃料ガスを導出する蒸発燃料処理配管の先端部が、オイルパンを貫通して、オイルパン内のエンジンオイル中に配置されることによって、先端部に形成される開口部から燃料ガスをエンジンオイル中に放出して、燃料ガスをエンジンオイルに溶け込ませている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−061305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1に記載の燃料ガス処理装置では、蒸発燃料処理配管の開口部を単にオイルパン内のエンジンオイル中に配置して、燃料ガスをエンジンオイル中に放出する構成であるため、燃料ガスの放出先が、エンジンオイルの動きが比較的安定した静的なエリアの場合、燃料ガスがエンジンオイル中に溶け込みにくくなる可能性があり、燃料ガスを強制的に送るポンプなどが必要となり、部品点数が増えて、システムが複雑になってしまっていた。
【0005】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、燃料ガスをエンジンオイルの動的なエリアに放出して、燃料ガスを送るためのポンプを必要とせずに、燃料ガスをエンジンオイル中に溶け込ませることができる燃料ガス処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、燃料タンク内で発生する燃料ガスを、燃料ガス取込管を介して燃料ガス取込管の開口部からエンジンのクランクケース内に導き、クランクケース内のエンジンオイル中に蓄えて、エンジンの運転時に、燃料ガスをエンジンオイル中からパージ通路を介して吸気管に導く燃料ガス処理装置において、クランクケースの下部に形成され、エンジンオイルを貯留するオイルパンと、一端がオイルパンに連通するオイル吸入口を形成し、他端がクランク軸の回転に伴って駆動されるオイルポンプに連通するオイル吸入通路と、を有し、燃料ガス取込管の開口部が、オイル吸入口に対向するように配置されることを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の構成に加えて、オイル吸入口は、燃料ガス取込管の開口部よりも上方に配置されることを特徴とする。
【0008】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に記載の構成に加えて、燃料ガス取込管の開口部とオイル吸入口との間にオイルストレーナが配置されることを特徴とする。
【0009】
請求項4に係る発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の構成に加えて、オイルストレーナを覆ってクランクケースに取り付けられるオイルストレーナ蓋部を備え、燃料ガス取込管は、オイルストレーナ蓋部に形成される接続管と、接続管に接続される燃料ガス取込チューブと、を備えることを特徴とする。
【0010】
請求項5に係る発明は、請求項4に記載の構成に加えて、オイルストレーナ蓋部の接続管の上端部が、エンジンオイルの最高オイルレベルよりも上方に配置されることを特徴とする。
【0011】
請求項6に係る発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の構成に加えて、燃料ガス取込管の開口部は、ピボット軸の後方、且つクランク軸線の前方に配置されることを特徴とする。
【0012】
請求項7に係る発明は、請求項1〜6のいずれか1項に記載の構成に加えて、クランクケースと一体に形成されて無段変速機が収容される伝動ケースを備え、オイルストレーナ蓋部の接続管及び燃料ガス取込チューブは、伝動ケースを閉塞する伝動ケースカバーの外周壁に沿って設けられることを特徴とする。
【0013】
請求項8に係る発明は、請求項1〜7のいずれか1項に記載の構成に加えて、燃料ガス取込管は、エンジンを挟んでマフラーの反対側に配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明によれば、燃料ガス取込管の開口部が、オイル吸入通路のオイル吸入口に対向するように配置されるため、燃料ガスがオイル吸入口に向けて放出される。このため、エンジンオイルの動的なエリアであるオイルポンプに吸入されるエンジンオイルの流路中に燃料ガスを導くことができるので、燃料ガスを送るためのポンプを必要とせずに、オイルポンプの負圧及び流れるエンジンオイルによって燃料ガスを攪拌しながらエンジンオイル中に溶け込ませることができ、燃料ガスを効率よく吸収することができる。
【0015】
請求項2の発明によれば、オイル吸入口が、燃料ガス取込管の開口部よりも上方に配置されるため、燃料ガスをオイル吸入口にスムーズに導くことができる。
【0016】
請求項3の発明によれば、燃料ガス取込管の開口部とオイル吸入口との間にオイルストレーナが配置されるため、エンジンオイル及び燃料ガス中の両方の塵埃がオイル吸入口に吸入されるのを防止することができる。また、オイルストレーナにより燃料ガスが細かくされるので、燃料ガスをエンジンオイル中に溶け込みやすくすることができる。
【0017】
請求項4の発明によれば、燃料ガス取込管が、オイルストレーナ蓋部に形成される接続管と、接続管に接続される燃料ガス取込チューブと、を備えるため、燃料ガス処理装置を非搭載とする車両の場合、オイルストレーナ蓋部を接続管のないものに交換するだけでよく、クランクケース側の設計変更を低減することができる。さらに、オイルストレーナ蓋部に燃料ガス取込チューブを接続する接続管が一体に形成されるため、部品点数を削減することができる。
【0018】
請求項5の発明によれば、オイルストレーナ蓋部の接続管の上端部が、エンジンオイルの最高オイルレベルよりも上方に配置されるため、燃料ガス取込チューブの接続管への脱着作業時に、エンジンオイルが外部にこぼれにくくなり、作業性を向上することができる。
【0019】
請求項6の発明によれば、燃料ガス取込管の開口部が、ピボット軸の後方、且つクランク軸線の前方に配置されるため、エンジンの揺動中心に近い位置でエンジンオイルの油面が変化しにくい位置に開口部が設けられ、燃料ガスを効率よく吸収することができる。
【0020】
請求項7の発明によれば、オイルストレーナ蓋部の接続管及び燃料ガス取込チューブは、伝動ケースを閉塞する伝動ケースカバーの外周壁に沿って設けられるため、接続管及び燃料ガス取込チューブを、伝動ケースカバーで保持できると共に、伝動ケースカバーの周囲のスペースに効率よく配索することができる。
【0021】
請求項8の発明によれば、燃料ガス取込管が、エンジンを挟んでマフラーの反対側に配置されるため、燃料ガス取込管とマフラーとの干渉を防止することができ、燃料ガス取込管を保護することができる。さらに、燃料ガス取込管の脱着作業及び配索作業を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る燃料ガス処理装置の一実施形態が搭載された自動二輪車を説明する左側面図である。
【図2】図1に示すエンジンの周辺の左側面図である。
【図3】図2のA−A線断面図である。
【図4】図2のB−B線断面図である。
【図5】図3のC−C線断面図である。
【図6】本発明に係る燃料ガス処理装置の一実施形態の構成を説明する図である。
【図7】図2に示すオイルストレーナ蓋部の周辺の拡大左側面図である。
【図8】図4に示すオイル吸入通路の周辺の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る燃料ガス処理装置の一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとし、以下の説明において、前後、左右、上下は、操縦者から見た方向に従い、図面に車両の前方をFr、後方をRr、左側をL、右側をR、上方をU、下方をD、として示す。
【0024】
本実施形態の自動二輪車10は、スクータ型車両であり、図1に示すように、車体フレーム11を、前端に設けられるヘッドパイプ12と、ヘッドパイプ12から下方そして後方に延びるメインフレーム13と、メインフレーム13の後端部から上方そして後方に延びる左右一対のリヤフレーム14と、リヤフレーム14の前端部に取り付けられるピボットフレーム15と、から構成し、ピボットフレーム15にリンク部材16を介してスイング式のパワーユニットP(前部のエンジンEと後部の変速機Mを組み合わせた構造)が取り付けられる。
【0025】
また、自動二輪車10は、ヘッドパイプ12に操舵自在に支持されるフロントフォーク21と、フロントフォーク21の下端部に回転可能に支持される前輪WFと、フロントフォーク21の上端部に取り付けられる操舵用のハンドル22と、パワーユニットPの後端部に回転可能に支持される後輪WRと、パワーユニットPをリヤフレーム14に懸架するクッションユニット23と、エンジンEの上方に配置される収納ボックス24と、リヤフレーム14の後部に取り付けられる燃料タンク25と、収納ボックス24及び燃料タンク25の上方に配置されるシート26と、車体フレーム11を覆うボディカバー40と、を備える。
【0026】
なお、図1中の符号30はヘッドライト、31はフロントウィンカ、32はフロントフェンダ、33はテールライト、34はリヤフェンダ、35はエアクリーナ、36は排気管、37はマフラーである。
【0027】
ボディカバー40は、図1に示すように、ヘッドライト30の周辺を覆うヘッドライトカバー40aと、ヘッドパイプ12の前方を覆うフロントカバー40b及びフロントサイドカバー40cと、フロントサイドカバー40cに接続されてヘッドパイプ12の後方を覆うと共に運転者の足の前方を覆うレッグシールド40dと、レッグシールド40dの下端部に接続されて後方に延び、運転者の足を載せるためのステップフロア40eと、ステップフロア40eの外縁に接続されてメインフレーム13の側方及び下方を覆うアンダーカバー40fと、左右一対のリヤフレーム14の側方を覆うリヤカバー40gと、を備える。
【0028】
パワーユニットPは、図2に示すように、エンジンEのクランクケース41と、クランクケース41から後方に延設され、ベルト式の無段変速機M(図3参照)が内蔵されるギヤケース43と、ギヤケース43の前端下部に設けられ、リンク部材16にピボット軸17を介して連結されるユニットブラケット44と、を備える。なお、本実施形態では、ピボット軸17がパワーユニットP(エンジンE)の揺動中心となる。
【0029】
エンジンEは、クランクケース41の前端に取り付けられるシリンダブロック46と、シリンダブロック46の前端に取り付けられるシリンダヘッド47と、シリンダヘッド47の前端に取り付けられるシリンダヘッドカバー48と、を備える。また、シリンダヘッド47の上面には、インジェクタ51aを有する吸気管51を介してスロットルボディ52が取り付けられる。また、ギヤケース43の前部上面に、スタータモータ53が取り付けられる。エンジンEはシリンダ軸線54が略水平になるまで前傾されて配置されている。
【0030】
また、図3に示すように、パワーユニットPのケースは、車両前後方向に延ばされており、クランク軸61の周囲を囲い、クランク軸61を玉軸受62A,62Bを介して軸支するクランクケース左半体63及びクランクケース右半体64と、シリンダブロック46、シリンダヘッド47、及びシリンダヘッドカバー48と、クランクケース左半体63と一体に形成されて無段変速機Mが収容される伝動ケース65と、伝動ケース65を閉塞する伝動ケースカバー66と、伝動ケース65から後方に延ばされ減速ギヤ群67を収容する後ケース68と、を備える。
【0031】
クランク軸61は、軸方向中心に設けられバランスウェイトとなるクランクウェブ71,71と、クランクウェブ71,71間に設けられるクランクピン72と、を有する。そして、クランクピン72にはコンロッド73が回動自在に接続され、コンロッド73の先端にはピストンピン74を介してピストン75が揺動自在に取り付けられている。ピストン75は、シリンダブロック46のシリンダボア76に摺動自在に設けられ、シリンダボア76とシリンダヘッド47との間に燃焼室77を形成する。また、シリンダヘッド47には、燃焼室77を臨む位置にスパークプラグ78が取り付けられている。
【0032】
また、図5に示すように、シリンダヘッド47には、燃焼室77に臨む吸気ポート81及び排気ポート82が形成されている。吸気ポート81及び排気ポート82には、吸気バルブ83及び排気バルブ84がそれぞれ設けられており、吸気バルブ83及び排気バルブ84は動弁機構85により開閉される。
【0033】
また、図3及び図5に示すように、動弁機構85は、クランク軸61に取り付けられるカム駆動スプロケット86と、シリンダヘッド47に回動自在に取り付けられるカム軸87と、カム軸87に取り付けられるカム従動スプロケット88と、カム駆動スプロケット86及びカム従動スプロケット88間に巻き掛けられるカムチェーン89と、カム軸87に設けられる吸気カム91及び排気カム92と、吸気カム91及び排気カム92により駆動され、吸気バルブ83及び排気バルブ84をそれぞれ開閉駆動させる吸気ロッカアーム93及び排気ロッカアーム94と、を備える。
【0034】
また、シリンダヘッド47には、吸気ロッカアーム93を回動可能に支持する吸気アーム軸141、及び排気ロッカアーム94を回動可能に支持する排気アーム軸142が設けられている。また、吸気バルブ83には、ばね143及びリテーナ144が挿嵌され、排気バルブ84には、ばね145及びリテーナ146が挿嵌されている。ばね143,145は、吸気ロッカアーム93及び排気ロッカアーム94から力を受けていないときは、吸気ポート81及び排気ポート82が閉じられる側に吸気バルブ83及び排気バルブ84を付勢している。
【0035】
また、図3に示すように、クランク軸61の右側を構成する右クランク軸61Rにポンプ駆動ギヤ97が取り付けられる。また、ポンプ駆動ギヤ97の外方に交流発電機98が取り付けられ、交流発電機98の外方に冷却ファン99が取り付けられる。
【0036】
また、冷却ファン99の周囲を囲うようにクランクケース右半体64に筒状部材101が取り付けられる。また、筒状部材101にラジエータ102が取り付けられ、ラジエータ102を覆うように筒状部材101にラジエータカバー103が取り付けられる。
【0037】
無段変速機Mは、クランク軸61の左側を構成する左クランク軸61Lに取り付けられる駆動プーリ105と、クランク軸61の後方に設けられ、伝動ケース65に回転自在に支持されるカウンタ軸107と、カウンタ軸107に取り付けられる従動プーリ106と、駆動プーリ105と従動プーリ106との間に渡されるプーリベルト108と、を備える。
【0038】
駆動プーリ105は、固定半体111と、固定半体111に対向配置されクランク軸61の軸方向において固定半体111に相対移動可能に設けられる可動半体112と、を備える。従動プーリ106は、固定半体113と、固定半体113に対向配置されカウンタ軸107の軸方向において固定半体113に相対移動可能に設けられる可動半体114と、を備える。そして、無段変速機Mでは、クランク軸61の回転数により可動半体112,114が移動して、クランク軸61に対してカウンタ軸107の回転速度が変化する。
【0039】
後ケース68には、後輪WRを取り付けるための後輪車軸115が回転自在に支持されており、この後輪車軸115とカウンタ軸107との間には減速ギヤ群67が設けられている。そして、上記構成によって、クランク軸61の駆動力は、無段変速機M、減速ギヤ群67、及び後輪車軸115に伝達され、後輪WRが駆動される。
【0040】
また、図4に示すように、クランク軸61の下方には、オイルポンプ125を駆動するオイルポンプ軸126が配置されている。そして、クランク軸61に取り付けられるポンプ駆動ギヤ97とオイルポンプ軸126に取り付けられるポンプ従動ギヤ123が噛み合うことによって、クランク軸61の駆動力がオイルポンプ125に伝達される。
【0041】
また、図5に示すように、クランクケース41の下部には、エンジンオイルを貯留するオイルパン131が形成されている。また、オイルパン131の下端には、オイルパン131に連通しエンジンオイルをオイルポンプ125側に送るオイル導入通路132が形成されている。
【0042】
また、図4及び図8に示すように、オイル導入通路132の下流端には、オイルストレーナ135を収容するオイルストレーナ室133が形成されている。このオイルストレーナ室133は、オイルストレーナ135を覆ってクランクケース左半体63の外側面に取り付けられるオイルストレーナ蓋部134によって形成される。また、オイルストレーナ蓋部134は、2本のボルト134aによりクランクケース左半体63の外側面に締結されている。また、オイルストレーナ蓋部134の裏面には、オイルストレーナ蓋部134とクランクケース左半体63との間をシールするOリング134bが取り付けられている。
【0043】
オイルストレーナ135は、エンジンオイルをろ過する網状部材であり、オイルストレーナ蓋部134とクランクケース左半体63との間に配置されるコイルスプリング133aによりクランクケース41側に押圧され固定されている。
【0044】
また、クランクケース41の下部には、オイルストレーナ室133からエンジン内方に向かってオイル吸入通路136が形成されている。このオイル吸入通路136は、その上流端である左端がオイルストレーナ室133に連通するオイル吸入口136aを形成し、下流端である右端がオイルポンプ125に連通している。このため、オイル吸入口136aは、オイルストレーナ室133及びオイル導入通路132を介してオイルパン131に連通する。
【0045】
次に、本発明に係る燃料ガス処理装置の概要について説明する。
【0046】
燃料ガス処理装置160は、図6に示すように、燃料タンク25からオイルストレーナ蓋部134に延びる燃料ガス取込管161と、燃料ガス取込管161の途中に設けられる逆止弁162と、シリンダヘッド47から吸気管51に延びるパージ配管(パージ通路)163と、を有し、燃料タンク25内で発生する燃料ガスを、燃料ガス取込管161を介してクランクケース41内に導き、クランクケース41内のエンジンオイル中に蓄えて、エンジンEの運転時に、燃料ガスをエンジンオイル中からパージ配管163を介して吸気管51に導き、処理する装置である。
【0047】
燃料タンク25には、燃料ポンプ164が設けられている。燃料ポンプ164は、燃料パイプ165を介してインジェクタ51aに接続されており、燃料はインジェクタ51aから吸気ポート81に噴射される。
【0048】
燃料ガス取込管161は、図2及び図7に示すように、オイルストレーナ蓋部134に一体形成される接続管171と、上流端が燃料タンク25に接続され、下流端が接続管171に接続される燃料ガス取込チューブ172と、を備える。また、接続管171は、車両10の前方且つ上方に向けて延出されている。
【0049】
接続管171は、図8に示すように、オイルストレーナ室133に開口する開口部173を有し、この開口部173は、オイル吸入通路136のオイル吸入口136aに対向するように配置されている。また、オイル吸入口136aは、接続管171の開口部173よりも上方に配置されている。
【0050】
また、オイルストレーナ135は、接続管171の開口部173とオイル吸入通路136のオイル吸入口136aとの間に配置されている。
【0051】
また、図7に示すように、接続管171の上端部(燃料ガス取込チューブ172が接続される部分)は、エンジンオイルの最高オイルレベルL1よりも上方に配置されている。なお、図7中の符号L2は、エンジンオイルの最低オイルレベルである。
【0052】
また、図2及び図7に示すように、接続管171の開口部173は、パワーユニットPをリンク部材16に連結するピボット軸17の後方、且つクランク軸61のクランク軸線61aの前方に配置されている。
【0053】
また、図2に示すように、オイルストレーナ蓋部134の接続管171及び燃料ガス取込チューブ172は、パワーユニットPの伝動ケースカバー66の外周壁に沿って設けられている。さらに、図7に示すように、燃料ガス取込チューブ172は、伝動ケースカバー66を伝動ケース65に取り付けるためのボルト181により共締めされるクランプ182で保持されている。
【0054】
また、図1に示すように、マフラー37は、マフラーステー38によりパワーユニットPの右側面に取り付けられている。そして、図2に示すように、燃料ガス取込管161は、エンジンEを挟んでマフラー37の反対側(左側)に配置されている。
【0055】
以上説明したように、本実施形態の燃料ガス処理装置160によれば、接続管171の開口部173が、オイル吸入通路136のオイル吸入口136aに対向するように配置されるため、燃料ガスがオイル吸入口136aに向けて放出される。このため、エンジンオイルの動的なエリアであるオイルポンプ125に吸入されるエンジンオイルの流路中に燃料ガスを導くことができるので、燃料ガスを送るためのポンプを必要とせずに、オイルポンプ125の負圧及び流れるエンジンオイルによって燃料ガスを攪拌しながらエンジンオイル中に溶け込ませることができ、燃料ガスを効率よく吸収することができる。
【0056】
また、本実施形態の燃料ガス処理装置160によれば、オイル吸入通路136のオイル吸入口136aが、接続管171の開口部173よりも上方に配置されるため、燃料ガスをオイル吸入口136aにスムーズに導くことができる。
【0057】
また、本実施形態の燃料ガス処理装置160によれば、接続管171の開口部173とオイル吸入通路136のオイル吸入口136aとの間にオイルストレーナ135が配置されるため、エンジンオイル及び燃料ガス中の両方の塵埃がオイル吸入口136aに吸入されるのを防止することができる。また、網状のオイルストレーナ135により燃料ガスが細かくされるので、燃料ガスをエンジンオイル中に溶け込みやすくすることができる。
【0058】
また、本実施形態の燃料ガス処理装置160によれば、燃料ガス取込管161が、オイルストレーナ蓋部134に形成される接続管171と、接続管171に接続される燃料ガス取込チューブ172と、を備えるため、燃料ガス処理装置160を非搭載とする車両の場合、オイルストレーナ蓋部134を接続管171のないものに交換するだけでよく、クランクケース41側の設計変更を低減することができる。さらに、オイルストレーナ蓋部134に接続管171が一体に形成されるため、部品点数を削減することができる。
【0059】
また、本実施形態の燃料ガス処理装置160によれば、オイルストレーナ蓋部134の接続管171の上端部が、エンジンオイルの最高オイルレベルL1よりも上方に配置されるため、燃料ガス取込チューブ172の接続管171への脱着作業時に、エンジンオイルが外部にこぼれにくくなり、作業性を向上することができる。
【0060】
また、本実施形態の燃料ガス処理装置160によれば、接続管171の開口部173が、ピボット軸17の後方、且つクランク軸線61aの前方に配置されるため、エンジンE(パワーユニットP)の揺動中心に近い位置でエンジンオイルの油面が変化しにくい位置に開口部173が設けられ、燃料ガスを効率よく吸収することができる。
【0061】
また、本実施形態の燃料ガス処理装置160によれば、オイルストレーナ蓋部134の接続管171及び燃料ガス取込チューブ172は、伝動ケースカバー66の外周壁に沿って設けられるため、接続管171及び燃料ガス取込チューブ172を、伝動ケースカバー66で保持できると共に、伝動ケースカバー66の周囲のスペースに効率よく配索することができる。
【0062】
また、本実施形態の燃料ガス処理装置160によれば、燃料ガス取込管161が、エンジンEを挟んでマフラー37の反対側に配置されるため、燃料ガス取込管161とマフラー37との干渉を防止することができ、燃料ガス取込管161を保護することができる。さらに、燃料ガス取込管161の脱着作業及び配索作業を容易に行うことができる。
【0063】
なお、本発明は上記実施形態に例示したものに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0064】
132 オイル導入通路
133 オイルストレーナ室
134 オイルストレーナ蓋部
135 オイルストレーナ
136 オイル吸入通路
136a オイル吸入口
161 燃料ガス取込管
171 接続管
172 燃料ガス取込チューブ
173 開口部
E エンジン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンク(25)内で発生する燃料ガスを、燃料ガス取込管(161)を介して前記燃料ガス取込管の開口部(173)からエンジン(E)のクランクケース(41)内に導き、前記クランクケース内のエンジンオイル中に蓄えて、前記エンジンの運転時に、前記燃料ガスを前記エンジンオイル中からパージ通路(163)を介して吸気管(51)に導く燃料ガス処理装置(160)において、
前記クランクケースの下部に形成され、前記エンジンオイルを貯留するオイルパン(131)と、
一端が前記オイルパンに連通するオイル吸入口(136a)を形成し、他端がクランク軸(61)の回転に伴って駆動されるオイルポンプ(125)に連通するオイル吸入通路(136)と、を有し、
前記燃料ガス取込管の前記開口部が、前記オイル吸入口に対向するように配置されることを特徴とする燃料ガス処理装置。
【請求項2】
前記オイル吸入口(136a)は、前記燃料ガス取込管(161)の前記開口部(173)よりも上方に配置されることを特徴とする請求項1に記載の燃料ガス処理装置。
【請求項3】
前記燃料ガス取込管(161)の前記開口部(173)と前記オイル吸入口(136a)との間にオイルストレーナ(135)が配置されることを特徴とする請求項1又は2に記載の燃料ガス処理装置。
【請求項4】
前記オイルストレーナ(135)を覆って前記クランクケース(41)に取り付けられるオイルストレーナ蓋部(134)を備え、
前記燃料ガス取込管(161)は、前記オイルストレーナ蓋部に形成される接続管(171)と、前記接続管に接続される燃料ガス取込チューブ(172)と、を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の燃料ガス処理装置。
【請求項5】
前記オイルストレーナ蓋部(134)の前記接続管(171)の上端部が、前記エンジンオイルの最高オイルレベル(L1)よりも上方に配置されることを特徴とする請求項4に記載の燃料ガス処理装置。
【請求項6】
前記燃料ガス取込管(161)の前記開口部(173)は、ピボット軸(17)の後方、且つクランク軸線(61a)の前方に配置されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の燃料ガス処理装置。
【請求項7】
前記クランクケース(41)と一体に形成されて無段変速機(M)が収容される伝動ケース(65)を備え、
前記オイルストレーナ蓋部(134)の前記接続管(171)及び前記燃料ガス取込チューブ(172)は、前記伝動ケースを閉塞する伝動ケースカバー(66)の外周壁に沿って設けられることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の燃料ガス処理装置。
【請求項8】
前記燃料ガス取込管(161)は、前記エンジン(E)を挟んでマフラー(37)の反対側に配置されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の燃料ガス処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−53588(P2013−53588A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−193123(P2011−193123)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】