説明

燃料ガス精製装置、発電システム及び燃料合成システム

【課題】バイオマス由来の燃料ガスを高純度に精製し得る燃料ガス精製装置を提供する。また、該燃料ガス精製装置を有する発電システム、及び燃料合成システムを提供する。
【解決手段】バイオマスを熱分解して生成された熱分解ガスが導入されるガス精製容器11と、熱分解ガスが流通するようにガス精製容器11内に設けられた多孔質体12と、多孔質体12に溶融炭酸塩17を供給して多孔質体12に溶融炭酸塩17を保持させる炭酸塩供給手段13とを備え、ガス精製容器11は、多孔質体12を流通した熱分解ガスが溶融炭酸塩17との反応により精製されたものである燃料ガスを外部へ排出するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料ガス精製装置、発電システム及び燃料合成システムに関し、特に、可燃性ガスに含まれる未燃分、灰分、不純物等を除去、精製し、精製して得られた燃料ガスを利用する場合に適用して有用なものである。
【背景技術】
【0002】
近年、バイオマスをエネルギーとして利用することが注目されている。バイオマスのエネルギーの利用方法としては、バイオマスを直接燃焼させて熱・電気エネルギーを得る方法、または熱分解によって燃料ガスを得る方法等が知られている。
【0003】
図4は、従来技術に係るバイオマスから燃料ガスを精製する燃料ガス精製装置を備える発電システムの概略構成図である。
【0004】
図示するように、炭化機1は、供給されたバイオマスを加熱して可燃性ガスの一例である熱分解ガスと炭化物とを生成し、これらを火炉2内に供給する。火炉2は、下部のガス化・燃焼部と、上部のガス改質部とから構成されている。下部のガス化・燃焼部では、炭化機1から供給された炭化物が別途供給された空気又は酸素により部分燃焼されることにより高温ガスが発生し、該高温ガスは上部のガス改質部へと導かれる。上部のガス改質部では、炭化機1から供給された熱分解ガスが、高温ガスによる高温場で改質されて、灰分・不純物を含む粗ガスが製造される。そして、粗ガスは、燃料ガス精製装置10により脱硫・脱塵され、一酸化炭素や水素を主成分とする燃料ガスが精製される。
【0005】
このようにして製造された燃料ガスは、例えばガスタービンや燃料電池等から構成される発電手段20に供給され、発電手段20は、この燃料ガスを用いて発電する。他にも、燃料ガスは、合成液体燃料の原料としても用いられる。なお、発電手段20で生じた廃熱は、炭化機1に送られてバイオマスを加熱する熱源として利用されている。
【0006】
なお、上記従来技術と同種の技術を開示する刊行物として次の特許文献1が存在する。
【0007】
ここで、従来の燃料ガス精製装置10は、粗ガス中の灰分、タール、不純物を除去するために、脱塵装置、COS変換装置、脱硫装置、ガス冷却装置、ガス洗浄装置等から構成されている。このため、ガス精製を行うための設備構成が複雑化し、設備の運用性を高めることが困難で、コストが高くなっていた。
【0008】
また、火炉2のガス化・燃焼部で炭化物を燃焼するために、空気や窒素を外部から火炉2に供給しているので、燃料ガス(粗ガス)がこれらの空気や窒素等で希釈され、燃料ガスの単位体積あたりのカロリーが低下してしまう。
【0009】
このような問題は、バイオマス由来の熱分解ガスに限らず、可燃性ガスから不純物等を除去する場合についても同様に存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−2042号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、かかる事情に鑑み、可燃性ガスを高純度に精製し得る燃料ガス精製装置を提供することを目的とする。また、可燃性ガスを高純度に精製し得る燃料ガス精製装置を有する発電システム、及び燃料合成システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するための本発明の第1の態様は、可燃性ガスが導入されるガス精製容器と、前記可燃性ガスが流通するように前記ガス精製容器内に設けられた多孔質体と、前記多孔質体に炭酸塩を供給して該多孔質体に炭酸塩を保持させる炭酸塩供給手段とを備え、前記ガス精製容器は、前記多孔質体を流通した可燃性ガスが前記溶融炭酸塩との反応により精製されたものである燃料ガスを外部へ排出するように構成されていることを特徴とする燃料ガス精製装置にある。
【0013】
かかる第1の態様では、多孔質体は、多数の細孔を有するので大きな表面積を有しており、これらの細孔に溶融炭酸塩が保持されている。これにより、多孔質体を流通する熱分解ガスに対してより多くの溶融炭酸塩を接触させることが可能となっている。このため、熱分解ガスを、より多くの溶融炭酸塩と反応させることができ、熱分解ガスから不純物を十分に取り除くことができる。
【0014】
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載する燃料ガス精製装置において、前記ガス精製容器には、前記燃料ガスに含まれる低融点の溶融塩を除去するミストトラップが設けられていることを特徴とする燃料ガス精製装置にある。
【0015】
かかる第2の態様では、燃料ガスから低融点の溶融塩が除去され、さらに高純度に精製された燃料ガスを得ることができる。
【0016】
本発明の第3の態様は、第1又は第2の態様に記載する燃料ガス精製装置において、前記ガス精製容器は、その内部に貯留された溶融炭酸塩に前記可燃性ガスが導入されるように構成されていることを特徴とする燃料ガス精製装置にある。
【0017】
かかる第3の態様では、多孔質体で熱分解ガスを溶融炭酸塩に反応させるのに先立ち、ガス精製容器に貯留された溶融炭酸塩と熱分解ガスとが反応して不純物が除去される。これにより、熱分解ガスから不純物がより確実に除去され、高純度に精製された熱分解ガスが得られる。
【0018】
本発明の第4の態様は、第1〜第3の態様の何れか一つに記載する燃料ガス精製装置において、前記可燃性ガスは、バイオマスを熱分解することにより生じる熱分解ガスであり、前記バイオマスの熱分解時に生じた炭化物を燃焼する火炉を備え、前記ガス精製容器の内部に貯留された前記溶融炭酸塩は、前記火炉で燃焼された前記炭化物の熱で溶融されていることを特徴とするガス精製装置にある。
【0019】
かかる第4の態様は、ガス精製容器内の多孔質体に保持された炭酸塩は火炉の熱により溶融した状態が維持されるが、その熱源として火炉で燃焼した炭化物の熱を有効利用できる。
【0020】
本発明の第5の態様は、第4の態様に記載する燃料ガス精製装置において、前記ガス精製容器は前記火炉内に配設されていることを特徴とする燃料ガス精製装置にある。
【0021】
かかる第5の態様では、ガス精製容器は火炉内に配設されているので、火炉内で燃焼された炭化物の熱エネルギーが最も効率的にガス精製容器に与えられる。また、ガス精製容器が火炉内に配設されていることから、火炉外部にガス精製設備を設ける必要がないため、全体の省スペース化を図ることができる。
【0022】
本発明の第6の態様は、第1〜第5の何れか一つの態様に記載する燃料ガス精製装置と、前記燃料ガス精製装置からの燃料ガスを用いて発電する発電手段とを具備することを特徴とする発電システムにある。
【0023】
かかる第6の態様では、燃料ガス精製装置で精製された燃料ガスを用いて発電することができる。
【0024】
本発明の第7の態様は、第6の態様に記載する発電システムにおいて、前記発電手段は、前記燃料ガス精製装置からの燃料ガスが送られる燃料極を備えた高温型の燃料電池を備えることを特徴とする発電システムにある。
【0025】
かかる第7の態様では、高い運転温度を要する溶融炭酸塩形燃料電池や固体酸化物形燃料電池に燃料ガスを供給することができる。
【0026】
本発明の第8の態様は、第6の態様に記載する発電システムにおいて、前記発電手段は、前記燃料ガス精製装置からの燃料ガスにより作動するガスエンジンと、該ガスエンジンの作動により発動する発電機とを備えることを特徴とする発電システムにある。
【0027】
かかる第8の態様では、ガスエンジンを用いて発電することができる。
【0028】
本発明の第9の態様は、第6の態様に記載する発電システムにおいて、前記発電手段は、前記燃料ガス精製装置からの燃料ガスを燃焼するタービン燃焼器と、該タービン燃焼器からの燃焼ガスの膨張により動力を得ることで発電機の駆動を行うガスタービンとを備えることを特徴とする発電システムにある。
【0029】
かかる第9の態様では、ガスタービンを用いて発電することができる。
【0030】
本発明の第10の態様は、第1〜第5の何れか一つの態様に記載する燃料ガス精製装置と、前記燃料ガス精製装置からの燃料ガスから液体燃料を合成する液体燃料合成装置と、前記液体燃料合成装置に供給される燃料ガスの水分の比率を調節し得るように前記炭化機又は前記ガス精製容器内に水を供給する水分供給手段とを具備することを特徴とする燃料合成システムにある。
【0031】
かかる第10の態様では、水分供給手段を調節することで、燃料ガスの一酸化炭素と水素との比率を、合成する液体燃料に適した比率とすることができる。これにより、所望の液体燃料を製造し得る。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、可燃性ガスを高純度に精製し得る燃料ガス精製装置が提供される。更に、該燃料ガス精製装置を有する発電システム、及び燃料合成システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】実施形態1に係る燃料ガス精製装置を備える発電システムの概略構成図である。
【図2】実施形態1に係る燃料ガス精製装置の概略構成図である。
【図3】実施形態2に係る燃料ガス精製装置を備える燃料合成システムの概略構成図である。
【図4】従来技術に係るバイオマスから燃料ガスを精製する燃料ガス精製装置を備える発電システムの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
〈実施形態1〉
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。なお、本実施形態の説明は例示であり、本発明は以下の説明に限定されない。
【0035】
図1は、実施形態1に係る燃料ガス精製装置を備える発電システムの概略構成図である。
【0036】
図示するように、実施形態1に係る発電システムは、バイオマスを熱分解する炭化機1と、炭化物を燃焼する火炉2と、可燃性ガスの一例である熱分解ガスを精製する燃料ガス精製装置10と、炭化機1から熱分解ガスを燃料ガス精製装置10に導入する導入管5と、炭化機1から炭化物を火炉2に導入する炭化物導入管7と、燃料ガス精製装置10で精製された燃料ガスを発電手段20に供給する燃料ガス供給管6と、燃料ガスを燃料として発電する発電手段20とを備えている。
【0037】
炭化機1には、木質系バイオマス、都市ゴミ等の廃棄物系バイオマスおよびこれらの混合バイオマス等が供給される。炭化機1は、バイオマスを蒸し焼きして熱分解し、熱分解ガスと炭化物とを生成する。熱分解ガスは、バイオマス中の揮発分から構成され、主に一酸化炭素、水素、水、炭化水素、タール等からなる。一方、炭化物は、炭素、炭等のいわゆるチャーである。
【0038】
火炉2は、内部が空洞になっており、下部のガス化・燃焼部2aと、上部の容器配置部2bとから構成されている。ガス化・燃焼部2aでは、炭化機1から炭化物導入管7を介して供給された炭化物が、ガス化・燃焼部2aに別途導入された空気又は酸素により燃焼されることにより高温ガスが発生し、該高温ガスは上部の容器配置部2bへと導かれる。なお、燃焼した炭化物のうち比較的融点の低い灰分は、火炉2底部から溶融スラグとして排出される。
【0039】
火炉2の容器配置部2bには、燃料ガス精製装置10を構成するガス精製容器11が配設されている。燃料ガス精製装置10は、熱分解ガスを燃料ガスに精製するものである。すなわち、ガス精製容器11は、炭化機1で生じた熱分解ガスが導入管5を介して供給され、この熱分解ガスを燃料ガスに精製して該燃料ガスを火炉2外部の発電手段20に供給している。
【0040】
発電手段20は、例えば、燃料ガス供給管6からの燃料ガスが送られる燃料極を備えた溶融炭酸塩形燃料電池(MCFC)から構成されている。MCFCは、一般に、燃料電池の中でも、高効率で、かつ一酸化炭素を燃料として利用可能なものである。
【0041】
なお、発電手段20としては、燃料ガス供給管6からの燃料ガスを用いて発電するものであれば特に限定されない。例えば、発電手段20は、燃料ガス供給管6からの燃料ガスにより作動するガスエンジンと、該ガスエンジンの作動により発動する発電機とから構成されていてもよい。他にも、発電手段20は、燃料ガス供給管6からの燃料ガスを燃焼するタービン燃焼器と、該タービン燃焼器からの燃焼ガスの膨張により動力を得ることで発電機の駆動を行うガスタービンとから構成されていてもよい。
【0042】
また、発電手段20と炭化機1とは、発電手段20で生じた廃熱が、熱交換器(図示せず)等を介して、バイオマスを加熱する炭化機1の熱源となるように構成されている。これにより、発電システム全体のエネルギーの効率を改善できる。また、火炉2と炭化機1とは、火炉2で生じた廃熱が、熱交換器(図示せず)等を介して、バイオマスを加熱する炭化機1の熱源となるように構成されている。これにより、更に発電システム全体のエネルギー効率を改善できる。
【0043】
ここで、本実施形態に係る燃料ガス精製装置10について詳細に説明する。図2は、実施形態1に係る燃料ガス精製装置の概略構成図である。
【0044】
図示するように、燃料ガス精製装置10は、ガス精製容器11と、ガス精製容器11内部に配設された多孔質体12と、多孔質体12に炭酸塩を供給する炭酸塩供給手段13とを備えている。
【0045】
ガス精製容器11は、その中央部に熱分解ガスが流通するように多孔質体12が配設されている。詳言すると、ガス精製容器11の下部、すなわち多孔質体12の下方には、導入管5が配設されており、ガス精製容器11の上部、すなわち多孔質体12の上方には、燃料ガス供給管6が配設されている。このような構成のガス精製容器11では、その下部に導入された熱分解ガスが多孔質体12を流通し、精製された後、燃料ガス供給管6を介して外部に排出されるようになっている。なお、本実施形態では、ガス精製容器11はその内部に溶融炭酸塩4を貯留しており、この溶融炭酸塩4に熱分解ガスが導入されるようになっているので、熱分解ガスは、溶融炭酸塩4を流通したのち、多孔質体12を流通するようになっている。
【0046】
また、ガス精製容器11には、多孔質体12に溶融炭酸塩17を供給する炭酸塩供給手段13が設けられている。具体的には、炭酸塩供給手段13は、炭酸塩を溶融した状態で貯留する炭酸塩容器14と、その溶融した炭酸塩(溶融炭酸塩17)をガス精製容器11に圧送するポンプ15と、溶融炭酸塩17を多孔質体12に噴霧するノズル16とから構成されている。ノズル16から噴霧された溶融炭酸塩17は、多孔質体12に保持される。
【0047】
なお、本実施形態では、炭酸塩供給手段13は、溶融した炭酸塩を多孔質体12に供給したが、固体の炭酸塩を多孔質体12に供給するようにしてもよい。
【0048】
多孔質体12は、細孔を多数有し、該細孔が熱分解ガスの流路となっている。この流路の表面には、炭酸塩供給手段13からの溶融炭酸塩17が保持されている。多孔質体12の材料としては、金属、金属酸化物などのセラミックス、及びカーボンなどを用いることができる。
【0049】
このような溶融炭酸塩17を保持する多孔質体12に熱分解ガスが流通すると、熱分解ガスは溶融炭酸塩17と反応し、次に詳言するように、燃料ガスに精製される。
【0050】
熱分解ガス中における代表的な不純物元素としては、硫黄(S)分、ハロゲン(F、Cl)分、窒素(N)が挙げられ、これらの元素から高温の還元雰囲気では、硫化水素(HS)、塩化水素(HCl)、フッ化水素(HF)、アンモニア(NH)等の代表的な不純物ガスが発生する。
【0051】
溶融炭酸塩17(ここではアルカリ金属炭酸塩、MCO、M=Li、Na、K)を用いた上記不純物の除去メカニズムを以下に説明する。
【0052】
還元雰囲気下で生じたHSは、S2−として溶融炭酸塩17に取り込まれ、硫化アルカリ金属(MS)として、HCl、HFは、Cl、Fとして溶融炭酸塩17に取り込まれ、塩素分は塩化アルカリ金属(MCl)として、フッ素分はフッ化アルカリ金属(MF)として捕捉される。この結果、炭化機1で生じた熱分解ガスは多孔質体12において溶融炭酸塩17により精製され、一酸化炭素や水素を主成分とする燃料ガスになる。
【0053】
本発明の溶融炭酸塩17としては、炭酸リチウム(LiCO)、炭酸ナトリウム(NaCO)、炭酸カリウム(KCO)等の各種アルカリ金属炭酸塩を、単独又は複数混合したものを用いることができる。また、上記アルカリ金属炭酸塩の他に、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、セリウム(Ce)等の炭酸塩を溶融炭酸塩として用いることも可能である。
【0054】
なお、溶融炭酸塩17には、触媒が含まれていてもよい。触媒により熱分解ガスと溶融炭酸塩17との化学反応が促進され、熱分解ガスをより早く精製することができる。この触媒としては、金属、合金、金属酸化物、又はニッケルセラミックスを用いることができる。金属の例としては、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、鉄(Fe)、バナジウム(V)、タングステン(W)、チタン(Ti)、コバルト(Co)、錫(Sn)、マグネシウム(Mg)、ルテニウム(Ru)、パラジウム(Pd)、亜鉛(Zn)を挙げることができる。合金は、これらの金属の2種以上からなり、金属酸化物は、これらの金属がそれぞれ酸化したもの若しくはこれらの金属の2種以上が酸化したものである複合酸化物である。触媒は、粉体として溶融炭酸塩17に含まれていることが好ましい。
【0055】
以上に説明したように、本発明に係る燃料ガス精製装置10では、多孔質体12は、多数の細孔を有するので大きな表面積を有しており、これらの細孔に溶融炭酸塩17が保持されている。これにより、多孔質体12を流通する熱分解ガスに対してより多くの溶融炭酸塩17を接触させることが可能となっている。このため、燃料ガス精製装置10は、熱分解ガスを、より多くの溶融炭酸塩17と反応させることができ、熱分解ガスから不純物を十分に取り除くことができる。
【0056】
また、熱分解ガスと溶融炭酸塩17との反応が行われ続けると、多孔質体12では、硫黄アルカリ金属等が蓄積され、溶融炭酸塩17が減少してしまう。しかしながら、本発明の燃料ガス精製装置10では、炭酸塩供給手段13を設けたことで、多孔質体12に炭酸塩が保持された状態を維持することができ、これにより溶融炭酸塩17による熱分解ガスを燃料ガスに継続的に精製することができる。
【0057】
また、ガス精製容器11には、その内部に炭酸塩4が収容されている。前記したようにガス精製容器11は、火炉2内部に配設されているので(図1参照)、その炭酸塩4は、高温ガスの熱により加熱され、溶融している。以後、この溶融した炭酸塩4を溶融炭酸塩4という。
【0058】
ガス精製容器11の下部には、導入管5が配設されており、溶融炭酸塩4に炭化機1からの熱分解ガスが導入されている。このように導入管5を介して送られた熱分解ガスは、ガス精製容器11中の溶融炭酸塩4を流通する。このとき、熱分解ガスは溶融炭酸塩4との反応により、不純物が取り除かれる。なお、この反応は、前記したように、溶融炭酸塩17と熱分解ガスとの反応と同じである。
【0059】
このように、多孔質体12で熱分解ガスを溶融炭酸塩17に反応させるのに先立ち、ガス精製容器11に貯留された溶融炭酸塩4と熱分解ガスとを反応させることで、熱分解ガスから不純物がより確実に除去され、高純度に精製された熱分解ガスが得られる。
【0060】
なお、炭化機1から導入される熱分解ガスに含まれる未燃分や灰分40は、溶融炭酸塩4が液体であるため、ガス精製容器11内で集塵可能である。更に熱分解ガスに含まれるタールも同様に、溶融炭酸塩4と反応し、分解される。このタールや灰分等は、ガス精製容器11の下部に設けられた排出管18を介して外部に排出される。
【0061】
また、ガス精製容器11には、ミストトラップ19が設けられている。ミストトラップ19は、多孔質体12と燃料ガス供給管6との間に配設されており、多孔質体12を流通して精製された燃料ガスに含まれる低融点の溶融塩を捕捉する。このような溶融塩としては、水酸化ナトリウム、塩化ナトリウム、及び塩化カリウム等が挙げられる。ミストトラップ19により、燃料ガスからこれらの溶融塩が除去され、さらに高純度に精製された燃料ガスが得られる。
【0062】
なお、特に図示しないが、燃料ガス精製装置10に、溶融炭酸塩4に水酸化ナトリウム(水酸化物)を供給する水酸化ナトリウム供給手段(水酸化物供給手段)を設けてもよい。溶融炭酸塩4に水酸化ナトリウムが供給されると、溶融炭酸塩4中の二酸化炭素が水酸化ナトリウムと反応して、炭酸ナトリウム(炭酸塩)が生成される。
【0063】
ちなみに、水酸化ナトリウムを供給することなく溶融炭酸塩4と熱分解ガスとの反応を続けると、ガス精製容器11では、硫黄アルカリ金属等が蓄積され、溶融炭酸塩4が減少するので、ガス精製容器11の溶融炭酸塩4を適宜取替える必要がある。例えば、排出管18を介して、ガス精製容器11内の溶融炭酸塩4や硫黄アルカリ金属等を外部へ排出すると共に、新たな炭酸塩をガス精製容器11に供給する必要がある。しかしながら、本発明の燃料ガス精製装置10では、水酸化ナトリウムを溶融炭酸塩4に適宜供給することで、溶融炭酸塩4で燃料ガスを精製しつつ、ガス精製容器11に炭酸塩を供給したのと同様の効果を得られる。さらに、溶融炭酸塩4又は燃料ガス(熱分解ガス)に含まれる二酸化炭素は水酸化ナトリウムに吸収されて炭酸ナトリウムとなるので、二酸化炭素の排出量を低減することができる。
【0064】
また、ガス精製容器11の溶融炭酸塩4を取替える際には、上記のように溶融炭酸塩4に水酸化物を供給して間接的に炭酸塩を供給する場合に限定されず、直接炭酸塩をガス精製容器11内に供給して溶融炭酸塩4としてもよい。なお、ここでいう炭酸塩は、水分や重曹を含んでいてもよい。
【0065】
また、水酸化物供給手段としては、水酸化ナトリウムを供給するものに限られず、水酸化リチウム、水酸化マグネシウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、又は水酸化セリウムを供給するものであってもよい。要するに、水酸化物供給手段は、溶融炭酸塩4中の二酸化炭素と反応して炭酸塩を生成しうる水酸化物をガス精製容器11内の溶融炭酸塩4に供給するように構成されていればよい。
【0066】
以上に説明した構成の燃料ガス精製装置10を備える発電システムでは、炭化機1によってバイオマスから熱分解ガスと炭化物とが生成され、炭化物は燃料ガス精製装置10内の炭酸塩を溶融させるため、又は溶融炭酸塩4、17が溶融した状態を維持するために燃焼される。一方、熱分解ガスは溶融炭酸塩4で不純物が除去され、多孔質体12の溶融炭酸塩17で精製されて燃料ガスとなり、発電手段20は、この高純度に精製された燃料ガスを用いて発電を行うことができる。
【0067】
このように多孔質体12に保持された溶融炭酸塩17とガス精製容器11に貯留された溶融炭酸塩4とで、熱分解ガスの精製が行われるので、熱分解ガスを、より多くの溶融炭酸塩17と反応させることができ、熱分解ガスから不純物を十分に取り除いて、高純度の燃料ガスを精製することができる。
【0068】
また、火炉2内に配設されたガス精製容器11内で、熱分解ガスの精製が行われるので、燃料ガスを精製する装置を火炉2外部に設ける必要がない。これにより、発電システムの省スペース化を図ることができる。また、従来技術のガス精製装置の如く複雑な構成の装置が不要となるため、設備の運用性を高めることができ、更に、このような装置が不要となる分、発電システムに係るコストを削減できる。
【0069】
なお、本実施形態では、ガス精製容器11は火炉2内に配設されていたが、必ずしも火炉2内に配設する必要はない。例えば、ガス精製容器11の全体又は一部を火炉2外部に配設し、火炉2で燃焼された炭化物の熱エネルギーを、熱交換器等を介して火炉2外部に配設されたガス精製容器11に供給してもよい。この場合でも、高カロリーの燃料ガスが精製され、この燃料ガスを用いて発電できる。
【0070】
更に、火炉2内部の空間とは隔てられたガス精製容器11内部で熱分解ガスが燃料ガスに精製されるため、燃料ガスは、炭化物の燃焼に用いられる空気や窒素などにより希釈されることはない。また前記したように、燃料ガスは不純物が取り除かれている。これらのことから、単位体積あたりのカロリーが従来よりも高い燃料ガスを燃料ガス供給管6から供給することができる。このように、本発明の燃料ガス精製装置10は、高カロリーの燃料ガスを精製するので、特に、高温型の燃料電池、例えば溶融炭酸塩形燃料電池(MCFC)や固体酸化物形燃料電池(SOFC)を発電手段として用いる発電システムに適用して有用である。
【0071】
〈実施形態2〉
実施形態1では、燃料ガス精製装置10により製造された燃料ガスを発電手段20に供給するよう構成した発電システムについて説明したが、本実施形態では、燃料ガスを原料として液体燃料を合成する燃料合成システムについて説明する。
【0072】
図3は、実施形態2に係る燃料ガス精製装置を備える燃料合成システムの概略構成図である。なお、実施形態1と同一のものには同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0073】
本実施形態と実施形態1との相違点は、燃料ガス供給管6から供給される燃料ガスを原料として液体燃料を合成する液体燃料合成装置30と、炭化機1に水分を供給する水分供給手段31とを具備する点にある。
【0074】
液体燃料合成装置30は、燃料ガスからメタノール、ジメチルエーテル、ガソリン、灯油、軽油等の炭化水素液体燃料を合成する装置である。この液体燃料は、一般に、水素と一酸化炭素を主成分とするガスを反応に適した温度、圧力とし、触媒の存在下で合成反応させることにより得られることが知られている。
【0075】
水分供給手段31は、炭化機1内部に水分を供給するように構成されている。炭化機1内部に水分を供給する量を調節することで、燃料ガス供給管6から液体燃料合成装置30に供給される燃料ガスの水分の比率を調節することが可能となっている。このようにして本実施形態の燃料合成システムで製造された燃料ガスは、燃料ガスを構成する一酸化炭素と水素との比率が所望の比率に設定されたものとなっている。
【0076】
どの種別の液体燃料を合成するかは、原料となる一酸化炭素と水素との比率により決まる。したがって、特定の液体燃料を合成する場合は、燃料ガスの一酸化炭素と水素との比率が、当該液体燃料に適した比率となるように、水分供給手段31を調節すればよい。このように、本実施形態の燃料合成システムは、所望する種別の液体燃料を製造し得る柔軟性を有している。
【0077】
なお、水分供給手段31は、炭化機1内部に水分を供給する場合に限定されず、例えばガス精製容器11内でもよいし、導入管5や燃料ガス供給管6に対して水分を供給してもよい。要するに、水分供給手段31は、液体燃料合成装置30に燃料ガスが供給される前に、燃料ガス(熱分解ガス)に水分を添加できる構成であればよい。
【0078】
また、火炉2と炭化機1とは、火炉2で生じた廃熱が、熱交換器(図示せず)等を介して、バイオマスを加熱する炭化機1の熱源となるように構成されている。これにより、更に燃料合成システム全体のエネルギー効率を改善できる。
【0079】
〈他の実施形態〉
実施形態1及び実施形態2では、バイオマス由来の熱分解ガスをガス精製の対象としたが、これに限定されず、本発明は、可燃成分を含む可燃性ガス全般に広く適用できる。このような可燃性ガスとしては、石炭がガス火炉でガス化されて生じる石炭ガス化ガスや、汚泥が微生物により分解されて生じる消化ガスや、LNGやLPGが気化して生じるボイルオフガスや、石油が精製されて副生するオフガスなどが挙げられる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
バイオマス等の可燃性ガスを燃焼して発電等を行う設備や液体燃料の原料として用いる設備を使用、製造、販売する産業分野で有効に利用し得る。
【符号の説明】
【0081】
1、1A 炭化機
2 火炉
2a ガス化・燃焼部
2b 容器配置部
4 溶融炭酸塩(炭酸塩)
5 導入管
6 燃料ガス供給管
7 炭化物導入管
10 燃料ガス精製装置
11 ガス精製容器
12 多孔質体
13 炭酸塩供給手段
14 炭酸塩容器
15 ポンプ
16 ノズル
17 溶融炭酸塩
18 排出管
19 ミストトラップ
20 発電手段
30 液体燃料合成装置
31 水分供給手段
40 灰分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可燃性ガスが導入されるガス精製容器と、
前記可燃性ガスが流通するように前記ガス精製容器内に設けられた多孔質体と、
前記多孔質体に炭酸塩を供給して該多孔質体に炭酸塩を保持させる炭酸塩供給手段とを備え、
前記ガス精製容器は、前記多孔質体を流通した可燃性ガスが前記溶融炭酸塩との反応により精製されたものである燃料ガスを外部へ排出するように構成されている
ことを特徴とする燃料ガス精製装置。
【請求項2】
請求項1に記載する燃料ガス精製装置において、
前記ガス精製容器には、前記燃料ガスに含まれる低融点の溶融塩を除去するミストトラップが設けられている
ことを特徴とする燃料ガス精製装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載する燃料ガス精製装置において、
前記ガス精製容器は、その内部に貯留された溶融炭酸塩に前記可燃性ガスが導入されるように構成されている
ことを特徴とする燃料ガス精製装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れか一項に記載する燃料ガス精製装置において、
前記可燃性ガスは、バイオマスを熱分解することにより生じる熱分解ガスであり、
前記バイオマスの熱分解時に生じた炭化物を燃焼する火炉を備え、
前記ガス精製容器の内部に貯留された前記溶融炭酸塩は、前記火炉で燃焼された前記炭化物の熱で溶融されている
ことを特徴とするガス精製装置。
【請求項5】
請求項4に記載する燃料ガス精製装置において、
前記ガス精製容器は前記火炉内に配設されている
ことを特徴とする燃料ガス精製装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項5の何れか一項に記載する燃料ガス精製装置と、
前記燃料ガス精製装置からの燃料ガスを用いて発電する発電手段とを具備する
ことを特徴とする発電システム。
【請求項7】
請求項6に記載する発電システムにおいて、
前記発電手段は、前記燃料ガス精製装置からの燃料ガスが送られる燃料極を備えた高温型の燃料電池を備える
ことを特徴とする発電システム。
【請求項8】
請求項6に記載する発電システムにおいて、
前記発電手段は、前記燃料ガス精製装置からの燃料ガスにより作動するガスエンジンと、該ガスエンジンの作動により発動する発電機とを備える
ことを特徴とする発電システム。
【請求項9】
請求項6に記載する発電システムにおいて、
前記発電手段は、前記燃料ガス精製装置からの燃料ガスを燃焼するタービン燃焼器と、該タービン燃焼器からの燃焼ガスの膨張により動力を得ることで発電機の駆動を行うガスタービンとを備える
ことを特徴とする発電システム。
【請求項10】
請求項1〜請求項5の何れか一項に記載する燃料ガス精製装置と、
前記燃料ガス精製装置からの燃料ガスから液体燃料を合成する液体燃料合成装置と、
前記液体燃料合成装置に供給される燃料ガスの水分の比率を調節し得るように前記炭化機又は前記ガス精製容器内に水を供給する水分供給手段とを具備する
ことを特徴とする燃料合成システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−184972(P2010−184972A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−28796(P2009−28796)
【出願日】平成21年2月10日(2009.2.10)
【出願人】(000173809)財団法人電力中央研究所 (1,040)
【Fターム(参考)】