説明

燃料タンク構造

【課題】燃料タンク本体と一体でその内部に設けられた樹脂製の側壁を有するキャニスタにおける活性炭の微粉化を抑制可能な燃料タンク構造を得る。
【解決手段】燃料タンク本体14は樹脂製とされ、その内部にはタンクアッパ14Uと一体でキャニスタ32が設けられる。キャニスタ32の底板部材36は側壁34Sよりも低膨潤性とされ、さらに、側壁34Sの外側に外壁部材46が形成される。燃料タンク本体14内の燃料が側壁34Sに直接的に接触しなくなるので、側壁34Sの膨潤を抑制できる。活性炭52が充填されたキャニスタ32内部に隙間が生じることも抑制でき、活性炭52が不用意に移動しなくなるので、移動に起因する微粉化も抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料タンク構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等に搭載される燃料タンク構造では、燃料タンク本体内で発生した蒸発燃料を活性炭で吸着すべくキャニスタが設けられる。たとえば特許文献1には、合成樹脂製の燃料タンクにおいて、燃料蒸気を吸着する物質を収容するようになっている室を、タンクの壁を一体に形成された少なくとも1つの壁部分を有するようにした構造のものが記載されている。
【0003】
ところで、特許文献1に記載のような樹脂製の室(キャニスタの側壁)を燃料タンク本体の内部に配置すると、燃料の接触によって側壁が膨潤して、キャニスタの容積が増加する。そしてこれにより、キャニスタ内に充填された活性炭が移動しやすくなるため、活性炭の微粉化を招くおそれがある。
【特許文献1】特開平11−240344号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記事実を考慮し、燃料タンク本体と一体でその内部に設けられた樹脂製の側壁を有するキャニスタにおける活性炭の微粉化を抑制可能な燃料タンク構造を得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明では、樹脂製とされ燃料を収容可能な燃料タンク本体と、内部に充填された活性炭によって蒸発燃料を吸着可能で、少なくとも側壁が前記燃料タンク本体と一体で成形されて燃料タンク本体内に設けられたキャニスタと、前記キャニスタの前記側壁の外側に設けられ、側壁への燃料の接触を抑制する外壁部材と、を有することを特徴とする。
【0006】
この燃料タンク構造では、燃料タンク本体の内部に設けられたキャニスタの側壁は、燃料タンク本体と一体で成形されている。そして、キャニスタ内部に充填された活性炭によって蒸発燃料を吸着することができる。
【0007】
キャニスタの側壁の外側には外壁部材が設けられおり、実質的に側壁部分が二重(あるいは三重以上でもよい)になっている。この外壁部材により、側壁への燃料の接触が抑制されるので、側壁の膨潤も抑制される。その結果、キャニスタの容積増加も抑えられるので、活性炭の移動による微粉化を抑制できる。
【0008】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の発明において、前記キャニスタよりも低膨潤性の材料で構成され、キャニスタの底部を閉塞する底板部材、を有することを特徴とする。
【0009】
キャニスタの底部を閉塞する底板部材を、キャニスタを構成する材料よりも低膨潤性の材料で構成したことで、キャニスタの底板部分に燃料が接触した場合の膨潤を抑制できる。そしてこれにより、キャニスタの容積増加も抑えて、活性炭の移動による微粉化をさらに抑制することが可能になる。
【0010】
請求項3に記載の発明では、請求項2に記載の発明において、前記底板部材が前記外壁部材に溶着により密着されて、前記側壁を底板部材と外壁部材とで包囲していることを特徴とする。
【0011】
このように、底板部材を外壁部材に溶着して密着させ、これらによりキャニスタの側壁を包囲することで、側壁への燃料の接触をより確実に抑制できるようになる。
【0012】
請求項4の記載の発明では、請求項3に記載の発明において、前記底板部材と前記外壁部材との溶着部位が、前記燃料タンク本体の満タン液位よりも上方とされていることを特徴とする。
【0013】
このように、底板部材と外壁部材との溶着部位を燃料タンク本体の満タン液位よりも上にすることで、外壁部材が燃料液面よりも上に位置し燃料に浸漬しないようになるので、外壁部材の膨潤を抑制可能となる。また、外壁部材の膨潤を抑制することで、溶着部位で生じる外壁部材と底板部材との歪を抑制できる。
【0014】
請求項5に記載の発明では、樹脂製とされ燃料を収容可能な燃料タンク本体と、内部に充填された活性炭によって蒸発燃料を吸着可能で、少なくとも側壁が前記燃料タンク本体と一体で成形されて燃料タンク本体内に設けられたキャニスタと、前記キャニスタ内で、前記側壁どうしの間または側壁と内壁の間に掛け渡されて側壁の外側への変形を抑制する変形抑制部材と、を有することを特徴とする。
【0015】
この燃料タンク構造では、燃料タンク本体の内部に設けられたキャニスタの側壁は、燃料タンク本体と一体で成形されている。そして、キャニスタ内部に充填された活性炭によって蒸発燃料を吸着することができる。
【0016】
キャニスタ内には、側壁どうしの間または側壁と内壁の間に変形抑制部材が掛け渡されており、側壁の外側への変形を抑制している。したがって、側壁に燃料が接触して膨潤しようとした場合でも、この膨潤による外側への変形が変形抑制部材により抑制される。その結果、キャニスタの容積増加も抑えられるので、活性炭の移動による微粉化を抑制できる。
【0017】
請求項6に記載の発明では、請求項5に記載の発明において、前記変形抑制部材が、前記キャニスタ内を仕切る仕切壁であることを特徴とする。
【0018】
したがって、変形抑制部材によってキャニスタ内を仕切って、蒸発燃料の流路を所望の配置とすることができる。
【0019】
請求項7に記載の発明では、請求項6に記載の発明において、前記仕切壁に、この仕切壁の厚み方向での通気を可能にする通気孔が形成されていることを特徴とする。
【0020】
仕切壁に通気孔を形成することで、仕切壁の厚み方向で蒸発燃料を移動させることが可能になる。
【0021】
請求項8に記載の発明では、樹脂製とされ燃料を収容可能な燃料タンク本体と、少なくとも側壁が前記燃料タンク本体と一体で成形されて燃料タンク本体内に設けられたキャニスタと、弾性を有する袋状に形成され、内部に活性炭を凝縮して充填した状態で前記キャニスタ内に収容される袋状部材と、を有することを特徴とする。
【0022】
この燃料タンク構造では、燃料タンク本体の内部に設けられたキャニスタの側壁は、燃料タンク本体と一体で成形されている。そして、キャニスタ内には、弾性を有する袋状部材が収容容されており、この袋状部材の内部に、活性炭が凝縮して充填されている。この活性炭によって蒸発燃料を吸着することができる。
【0023】
活性炭は、袋状部材の弾性により、袋状部材の内部で凝縮された状態に維持されるので、キャニスタの側壁に燃料が接触して膨潤した場合でも、活性炭の移動が抑制される。これにより、活性炭の微粉化を抑制できる。
【発明の効果】
【0024】
本発明は上記構成としたので、燃料タンク本体と一体でその内部に設けられた樹脂製の側壁を有するキャニスタにおける活性炭の微粉化を抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
図1には、本発明の一実施形態の燃料タンク構造12が示されている。この燃料タンク構造12では、燃料タンク本体14を有しており、その内部に燃料が収容されるようになっている。燃料タンク本体14は、樹脂材料(本実施形態ではPE)によって、上下2分割の所定の形状に成形された燃料タンク構成体14A、14Bを接合することで構成されている。
【0026】
燃料タンク本体14には、上面が開放された箱状のリザーブカップ16が配置されており、このリザーブカップ16内に、燃料送出ポンプ18が備えられている。燃料送出ポンプ18の駆動により、燃料をエンジン等に供給することができる。さらに、リザーブカップ16内には、フロート22を備えた液位センサ20が設けられており、リザーブカップ16内の液位を検出できるようになっている。
【0027】
図3に詳細に示すように、燃料タンク本体14の上面を構成しているタンクアッパ14Uには、ブリーザポート24が貫通している。ブリーザポート24の上端にはブリーザ配管26の下端が接続されており、このブリーザ配管26の上端は、図示しないインレットパイプの上端近傍に接続されている。インレットパイプ上端の給油口に給油ガンを差し入れて燃料を給油すると、燃料タンク本体14内の気体がブリーザ配管26からインレットパイプの上端近傍に排出される。そして、給油された燃料の液位がブリーザポート24の下端に達すると、それ以降は燃料タンク本体14内の気体が排出されなくなるので、給油された燃料はインレットパイプ内を上昇して給油ガンに達する。したがって、ブリーザポート24の下端が、実質的に燃料タンク本体14内の満タン液位FLとなる。
【0028】
また、燃料タンク本体14内には、タンクアッパ14Uの近傍にカットオフバルブ28が備えられ、さらにベーパ配管30を介して、キャニスタ32が接続されている。カットオフバルブ28は通常は開弁しており、燃料タンク本体14内の蒸発燃料をキャニスタ32に送ることを可能としているが、たとえば車両旋回等による液面の変位によってカットオフバルブ28の位置まで液面が到達したような場合や車両転倒時等には閉弁し、燃料がキャニスタ32に進入することを防止する。
【0029】
図2にも詳細に示すように、キャニスタ32は、タンクアッパ14Uと一体的に成形されたキャニスタケース34を有している。本実施形態では特に、キャニスタケース34の側壁34Sを略四角筒状としている。側壁34Sの下面は開放されているが、この開放部分は、側壁34Sとは別体で形成された底板部材36によって閉塞されている。底板部材36は、燃料タンク本体14やキャニスタ32の側壁34Sを構成する材料よりも燃料膨潤性の低い材料(たとえば、PA/PE等、あるいは、PEにフッ素等でコーティングを施したもの)で構成されている。また、キャニスタ32の上壁34Uは、タンクアッパ14Uの一部によって構成されている。
【0030】
側壁34Sの内部には所定形状の隔壁34Dが複数設けられており、キャニスタ32の内部を複数の収容室38に仕切っている。ただし、それぞれの隔壁34Dは、上壁34U又は底板部材36には到達しない高さに設定されており、キャニスタ32内には、蒸発燃料が上下に移動しながら進む蒸発燃料流路が構成されている(蒸発燃料の流れを符号VFで示す)。そして、各収容室38に活性炭52が充填されると共に、必要に応じてフィルタ54が配置されている。
【0031】
なお、キャニスタ32内に活性炭52を充填するときは、底板部材36を取り付ける前で、且つ下側の燃料タンク構成体14Bを接合する前に、上側の燃料タンク構成体14Aを反転させておき、各収容室38に活性炭52を充填した後、底板部材36を取り付ければよい。そしてその後、燃料タンク構成体14A、14Bを接合すればよい。
【0032】
図3に示すように、キャニスタ32の底板部材36には、導入ポート40が設けられており、燃料タンク本体14内で発生した蒸発燃料がベーパ配管30を経てキャニスタ32内に導入される。また、キャニスタ32の上壁34Uには、パージポート42及びエアポート44が設けられている。エアポート44から導入されたエアによってキャニスタ32内の活性炭に吸着された蒸発燃料が脱離される。そして、脱離された蒸発燃料が、パージポート42からエンジンに送られる。
【0033】
図2及び図3に詳細に示すように、タンクアッパ14Uからは、側壁34Sのさらに外側を取り囲む形状の外壁部材46がタンクアッパ14Uと一体的に形成されており、側壁34Sと外壁部材46の間に空気層48が構成された二重壁になっている。また、底板部材36は、側壁34Sよりもさらに外側に延出された大きさとされており、この延出部分に、外壁部材46の下端が溶着されて密着される溶着部50が設定されている。したがって、側壁34Sは、外壁部材46及び底板部材36によって包囲されることとなり、燃料タンク本体14内の燃料が接触しないようになっている。
【0034】
このような構成とされた第一実施形態に係る燃料タンク構造12では、キャニスタ32の側壁34Sの外側に外壁部材46が設けられており、燃料タンク本体14内の燃料が、側壁34Sに直接的に接触しないようになっている。しかも、底板部材36と外壁部材46とが溶着部50によって溶着されているので、キャニスタ32の下側から燃料が側壁34Sに触れることもない。したがって、側壁34Sに対して燃料が触れることによる膨潤を抑制できる。
【0035】
また、底板部材36は、側壁34Sとは異なる材料で別体に形成されている。このため、底板部材36には燃料が直接的に接触しても、膨潤を抑制できる。
【0036】
そして、このようにキャニスタ32の膨潤を抑制することで、活性炭52が充填されたキャニスタ32内部に不用意な隙間が生じることも抑制できる。活性炭52が不用意に移動しなくなるので、移動に起因する微粉化も抑制できる。
【0037】
図4には、本発明の第二実施形態の燃料タンク構造において、この燃料タンク構造を構成するキャニスタ62及びその近傍が示されている。なお、以下の各実施形態において、燃料タンク構造の全体的構成は第一実施形態と同一であるので図示を省略する。また、以下の各実施形態において、第一実施形態と同一の構成要素、部材等については同一符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0038】
第二実施形態では、燃料タンク本体14のタンクアッパ14Uから一体的に延出された第一実施形態に係る外壁部材46(図3参照)は設けられていない。また、第一実施形態の底板部材36に代えて、略カップ状(断面略U字状)の底壁部材64が用いられている。底壁部材64の底板部64Lは、第一実施形態の底板部材36と同様に、キャニスタケース34の底面を閉塞しており、本発明に係る底板部材となっている。そして、底板部64Lの周囲から筒状の外壁部64Gが立設されている。この外壁部64Gによって、側壁34Sとの間に空気層48が構成された二重壁になっている。
【0039】
第二実施形態に係る底壁部材64において、外壁部64Gの高さは、底板部64Lがキャニスタケース34の底面を閉塞した状態で、外壁部64Gの上端がタンクアッパ14Uの下面に接触する高さとされている。外壁部64Gの上端は溶着部50とされており、タンクアッパ14Uに溶着されて密着されている。したがって、側壁34Sは底壁部材64(底板部64L及び外壁部64G)によって完全に包囲されることととなり、燃料タンク本体14内の燃料が側壁34Sに直接的に接触しないようになっている。
【0040】
このような構成とされた第二実施形態においても、燃料タンク本体14内の燃料が側壁34Sに直接的に接触しないので、側壁34Sの膨潤を抑制できる。そして、これにより、活性炭52がキャニスタ32内で不用意に移動しなくなるので、移動に起因する微粉化も抑制できる。
【0041】
特に、第二実施形態では、底壁部材64を上記した略カップ状に形成しているため、溶着部50が満タン液位FLよりも上方に位置している。すなわち、燃料の満タン時に燃料中に浸漬される部分は、側壁34Sやタンクアッパ14Uよりも低膨潤性の材料で構成された底壁部材64が担っている。この結果、満タン時に燃料に浸漬する部分の膨潤を抑制することができるので、溶着部50の信頼性をより高めることができる。
【0042】
図5には、本発明の第三実施形態の燃料タンク構造において、この燃料タンク構造を構成するキャニスタ72及びその近傍が示されている。
【0043】
第三実施形態では、底壁部材74の形状を略カップ状(断面略U字状)としており、この底壁部材74は、第二実施形態と同様の底板部74L(本発明に係る底板部材となっている)を有しているが、底板部74Lの周囲から立設された外壁部74Gは、側壁34Sに接触しており、空気層48(図3及び図4参照)は構成されていない。また、外壁部74Gの高さは、側壁34Sの略中間部分に達する程度であり、第二実施形態の外壁部64Gよりも低くなっている。ただし、外壁部74Gの上端は満タン液位FLよりは上方に位置している。
【0044】
側壁34Sからは、高さ方向の略中間部分に、全周に渡って溶着リブ76が形成されている。溶着リブ76に、外壁部74Gの上端が溶着され密着されている。
【0045】
このような構成とされた第三実施形態においても、溶着部50を満タン液位FLよりも上方に設定しているので、満タン時であっても燃料は側壁34Sに直接的に触れない。これにより、側壁34Sの膨潤を抑制でき、活性炭52がキャニスタ32内で不用意に移動しなくなるので、移動に起因する微粉化も抑制できる。
【0046】
また、第二実施形態と同様に、溶着部50を満タン液位FLよりも上方に位置するようにしたことで、燃料の満タン時に底壁部材64が部分的に燃料中に浸漬される部分を側壁34Sやタンクアッパ14Uよりも低膨潤性の材料で構成している。このため、満タン時に燃料に浸漬する部分の膨潤を抑制し、溶着部50の信頼性をより高めることができる。
【0047】
図6には、本発明の第四実施形態の燃料タンク構造において、この燃料タンク構造を構成するキャニスタ82及びその近傍が示されている。
【0048】
第四実施形態では、キャニスタ82は、底壁部材84が側壁34Sの外側に張り出さない形状とされている。そして、キャニスタ82とは別体で、略カップ形状(断面略U字状)包囲部材86が、キャニスタ82を包囲している。包囲部材86の外壁部86Gの上端は、タンクアッパ14Uに溶着されて取り付けられる溶着部50とされており、取り付け状態で、包囲部材86の底板部86Lとキャニスタ82の底壁部材84との間に隙間が生じており、空気層48が構成されている。同様に、包囲部材86の外壁部86Gとキャニスタ82の側壁34Sの間にも隙間が生じており、空気層48が構成されている。
【0049】
このような構成とされた第四実施形態においても、キャニスタ82の側壁34S及び底壁部材84に燃料が直接的に触れない。これにより、側壁34S及び底壁部材84の膨潤を防止でき、活性炭52がキャニスタ82内で不用意に移動しなくなるので、移動に起因する微粉化も抑制できる。
【0050】
なお、第四実施形態において、包囲部材86をキャニスタ82よりも低膨潤性の材料(たとえばPA/PE等、あるいは、PEにフッ素等でコーティングを施したもの)で構成してもよいが、キャニスタ82と同一の材料で構成した場合でも、側壁34Sや底壁部材84への燃料の直接的な接触を抑制することは可能である。
【0051】
図7には、本発明の第五実施形態の燃料タンク構造において、この燃料タンク構造を構成するキャニスタ92及びその近傍が示されている。
【0052】
第五実施形態のキャニスタ92は第四実施形態と同様のキャニスタ82と略同一の構成とされているが、包囲部材86に代えて、キャニスタ92の側壁34S及び底壁部材84の外側に、バリアコーティング94が施されている。このバリアコーティング94は、少なくともキャニスタ92を構成する材料(本実施形態ではPE)よりも燃料の透過性が低い材料(たとえばフッ素)をコーティングすることで構成されており、本発明に係る外壁部材となっている。
【0053】
したがって、第五実施形態においても、キャニスタ82の側壁34S及び底壁部材84の膨潤を防止でき、活性炭52がキャニスタ82内で不用意に移動しなくなるので、移動に起因する微粉化も抑制できる。
【0054】
図8には、本発明の第六実施形態の燃料タンク構造において、この燃料タンク構造を構成するキャニスタ102が示されている。また、図9には、キャニスタ102が底面側から見た状態で示されている。
【0055】
第六実施形態のキャニスタ102は、第四実施形態のキャニスタ82と同様に上壁34U(図8では図示省略、図6等参照)、側壁34S、隔壁34D及び底板部材36を有しているが、収容室38の少なくとも1つが、仕切壁104によって仕切られている。
【0056】
図9に詳細に示すように、仕切壁104は板状に形成されており、キャニスタ82の側壁34Sよりも高い剛性を有するようになっている。仕切壁104の両側部分には、端辺に向かって次第に板厚が厚くなる係合部106A、106Bが高さ方向に連続して形成されている。
【0057】
これに対し、キャニスタ82内には、仕切壁104に対応する位置の側壁34S及び隔壁34Dに、係合部106A、106Bが係合される被係合溝108A、108Bが形成される。係合部106A、106Bを被係合溝108A、108Bにそれぞれ係合させることで、被係合溝108A、108Bが形成された側壁34S及び隔壁34Dの相対的な変形が仕切壁104によって制限されることとなる。
【0058】
仕切壁104には、板厚方向に貫通する複数の通気孔110が形成されている。通気孔110は、仕切壁104の板厚方向の両側での気体(蒸発燃料や空気等)の移動を可能にしている。
【0059】
このような構成とされた第六実施形態では、側壁34Sに燃料が触れると、その部分では図9に二点鎖線で示すように側壁34Sが膨潤し、外側に変形(湾曲)することが想定される。ここで、隔壁34Dはキャニスタ82の内部に位置しているので燃料が触れることはなく、膨潤しない。そして、本実施形態では、側壁34Sと隔壁34Dとが仕切壁104によって連結されているので、側壁34Sの変形が抑制される。キャニスタ82内に隙間が生じることも抑制され、活性炭52がキャニスタ82内で不用意に移動しなくなるので、移動に起因する微粉化も抑制できる。
【0060】
また、仕切壁104には複数の通気孔110が形成されているので、キャニスタ82内での蒸発燃料や空気等も移動することができ、キャニスタ82の本来的な機能(蒸発燃料の吸着や脱離)に与える影響も小さくなる。
【0061】
なお、仕切壁104の数は特に限定されず、複数設置してもよい。また、仕切壁104の設置位置も限定されない。ただし、膨潤が大きいと想定される側壁34Sの部位に設置することが好ましい。たとえば、キャニスタ82内で相対的に大容量の収容室38に設置すると、この収容室38を構成している側壁34Sの変形を効果的に抑制できる。さらに、仕切壁104の高さも、側壁34Sの変形を効果的に抑制できれば特に制限はない。加えて、本発明の変形抑制部材としては、キャニスタ82内を仕切る作用を有しないもの(たとえば、変形を抑制する作用のみを有する)ものであってもよいが、仕切壁とすれば、これを利用してキャニスタ82内の気体の流路を所望の形状や配置とすることも可能となる。
【0062】
図10(A)には、本発明の第六実施形態の変形例の燃料タンク構造において、この燃料タンク構造を構成するキャニスタ112が示されている。この変形例では、仕切壁114が、上下に分割された複数の仕切壁構成体116によって構成されている。
【0063】
図10(B)にも詳細に示すように、仕切壁構成体116のそれぞれは、両端に係合部106A、106Bを有する長尺状に形成されている。また、両端部からは、下方に向けて脚部120が突出されている。図10(A)から分かるように、仕切壁構成体116のそれぞれの係合部106A、106Bを被係合溝108A、108Bに係合させて複数の仕切壁構成体116を上下に重ねると、脚部120によって仕切壁構成体116の間に隙間122が生じる。この隙間122が、第六実施形態に係る通気孔110と同様に、仕切壁114の板厚方向での気体の移動を可能にしている。
【0064】
この変形例のように、仕切壁を、上下に分割した複数の仕切壁構成体116で構成してもよい。この構成では、仕切壁構成体116の数を増減させて、仕切壁114の高さを用意に所望の高さに調整できる。
【0065】
なお、本発明の変形抑制部材としては、上記第六実施形態の仕切壁104やその変形例の仕切壁114(仕切壁構成体116)に限定されない。たとえば、1又は複数本の棒状の部材を側壁34Sと隔壁34Dの間に掛け渡して変形抑制部材としてもよい。
【0066】
図11には、本発明の第七実施形態の燃料タンク構造において、この燃料タンク構造を構成するキャニスタ132が示されている。なお、図11(A)はキャニスタ132が底面側から見た状態で示されており、図11(B)はこのキャニスタ132のB−B断面図である。
【0067】
第七実施形態のキャニスタ132は、第四実施形態のキャニスタ82と同一構成とされているが、その内部では、活性炭52が袋状部材134に凝縮された充填された状態で収容されている。
【0068】
図12にも詳細に示すように、袋状部材134は、弾性を有する材料によって袋状に形成されており、開口部分136から内部に活性炭52を充填した後、開口部分136がクリップ138(あるいは紐など)で閉じられている。これにより、活性炭52は、袋状部材134の弾性による圧縮力が作用しつつ、外部にこぼれないように保持される。なお、袋状部材134の材質によっては、開口部分136に熱を加えて部分的に溶着し閉じるようにしてもよい。
【0069】
そして、このように活性炭52が充填された袋状部材134をキャニスタ132の収容室38に収容している。なお、収容室38に収容する前の状態では、図12に示すように活性炭52が充填された袋状部材134断面は略円形になっているが、袋状部材134は弾性を有しているので、収容状態では、図11(B)に示すように、収容室38の形状に合わせて断面四角形状となり、収容室38内に隙間なく収容させることができる。
【0070】
このような構成とされた第七実施形態は、側壁34Sに燃料が触れると、その部分では側壁34Sが膨潤し外側に変形することが想定される(第七実施形態として示した図9の二点鎖線参照)。ここで、活性炭52には、袋状部材134からの圧縮力が作用した状態でキャニスタ132内に収容されているので、側壁34Sが膨潤し変形しても、活性炭52の圧縮状態は維持される。これにより、活性炭52が不用意に移動しなくなるので、移動に起因する微粉化も抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の第一実施形態の燃料タンク構造の概略構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の第一実施形態の燃料タンク構造をキャニスタ及びその近傍で拡大して示す斜視図である。
【図3】本発明の第一実施形態の燃料タンク構造をキャニスタ及びその近傍で拡大して示す縦断面図である。
【図4】本発明の第二実施形態の燃料タンク構造をキャニスタ及びその近傍で拡大して示す縦断面図である。
【図5】本発明の第三実施形態の燃料タンク構造をキャニスタ及びその近傍で拡大して示す縦断面図である。
【図6】本発明の第四実施形態の燃料タンク構造をキャニスタ及びその近傍で拡大して示す縦断面図である。
【図7】本発明の第五実施形態の燃料タンク構造をキャニスタ及びその近傍で拡大して示す縦断面図である。
【図8】本発明の第六実施形態の燃料タンク構造を構成するキャニスタを拡大して示す斜視図である。
【図9】本発明の第六実施形態の燃料タンク構造を構成するキャニスタを拡大して示す底面図である。
【図10】(A)は本発明の第六実施形態の変形例の燃料タンク構造を構成するキャニスタを拡大して示す斜視図であり、(B)はこのキャニスタに用いられる仕切壁構成体を示す斜視図である。
【図11】(A)は本発明の第七実施形態の燃料タンク構造を構成するキャニスタを拡大して示す底面図であり、(B)は(A)のB−B線断面図である。
【図12】本発明の第七実施形態の燃料タンク構造を構成するキャニスタに収容される袋状部材を内部に活性炭が充填され且つキャニスタへの収容前の状態で示す断面図である。
【符号の説明】
【0072】
12 燃料タンク構造
14 燃料タンク本体
32 キャニスタ
34 キャニスタケース
34S 側壁
36 底板部材
46 外壁部材
48 空気層
50 溶着部
52 活性炭
62 キャニスタ
64 底壁部材
64G 外壁部(外壁部材)
64L 底板部(底板部材)
72 キャニスタ
74 底壁部材
74G 外壁部(外壁部材)
74L 底板部(底板部材)
76 溶着リブ
82 キャニスタ
84 底壁部材
86 包囲部材
86G 外壁部
86L 底板部
92 キャニスタ
94 バリアコーティング(外壁部材)
102 キャニスタ
104 仕切壁
110 通気孔
112 キャニスタ
132 キャニスタ
134 袋状部材
FL 満タン液位

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製とされ燃料を収容可能な燃料タンク本体と、
内部に充填された活性炭によって蒸発燃料を吸着可能で、少なくとも側壁が前記燃料タンク本体と一体で成形されて燃料タンク本体内に設けられたキャニスタと、
前記キャニスタの前記側壁の外側に設けられ、側壁への燃料の接触を抑制する外壁部材と、
を有することを特徴とする燃料タンク構造。
【請求項2】
前記キャニスタよりも低膨潤性の材料で構成され、キャニスタの底部を閉塞する底板部材、を有することを特徴とする請求項1に記載の燃料タンク構造。
【請求項3】
前記底板部材が前記外壁部材に溶着により密着されて、前記側壁を底板部材と外壁部材とで包囲していることを特徴とする請求項2に記載の燃料タンク構造。
【請求項4】
前記底板部材と前記外壁部材との溶着部位が、前記燃料タンク本体の満タン液位よりも上方とされていることを特徴とする請求項3に記載の燃料タンク構造。
【請求項5】
樹脂製とされ燃料を収容可能な燃料タンク本体と、
内部に充填された活性炭によって蒸発燃料を吸着可能で、少なくとも側壁が前記燃料タンク本体と一体で成形されて燃料タンク本体内に設けられたキャニスタと、
前記キャニスタ内で、前記側壁どうしの間または側壁と内壁の間に掛け渡されて側壁の外側への変形を抑制する変形抑制部材と、
を有することを特徴とする燃料タンク構造。
【請求項6】
前記変形抑制部材が、前記キャニスタ内を仕切る仕切壁であることを特徴とする請求項5に記載の燃料タンク構造。
【請求項7】
前記仕切壁に、この仕切壁の厚み方向での通気を可能にする通気孔が形成されていることを特徴とする請求項6に記載の燃料タンク構造。
【請求項8】
樹脂製とされ燃料を収容可能な燃料タンク本体と、
少なくとも側壁が前記燃料タンク本体と一体で成形されて燃料タンク本体内に設けられたキャニスタと、
弾性を有する袋状に形成され、内部に活性炭を凝縮して充填した状態で前記キャニスタ内に収容される袋状部材と、
を有することを特徴とする燃料タンク構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−83804(P2009−83804A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−259517(P2007−259517)
【出願日】平成19年10月3日(2007.10.3)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(502148037)株式会社エフティエス (34)
【Fターム(参考)】