説明

燃料バルブ

【課題】簡便な構成で、燃焼器具への燃料等の流量調節を精度良く行うこと。
【解決手段】円筒形状の流量調節部材11の円筒面に、その周方向に沿う液体燃料調節用及び空気調節用の二本のV溝12、12を形成する。そして、この円筒面に液体燃料輸送管9及び空気輸送管10のそれぞれの排出口側のOリング19を突き当てる。この流量調節部材11を軸周りに回転して、Oリング19がV溝12を跨るように位置した際に、燃料流路4、5を経由して各輸送管9、10の排出口とV溝12との間に流路が形成され、液体燃料L及び空気Aが流れる。両V溝12、12は、点火操作(プレヒート処理)、通常燃焼(強火〜弱火)、及び排気操作のそれぞれに対応して、その深さ及び幅、形成位置が決められており、液体燃料L及び空気Aの流量を同期して調節することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、アウトドア等で用いるバーナ等の燃焼器具に燃料を送り込むための燃料バルブに関する。
【背景技術】
【0002】
アウトドア等で用いられるバーナ等の燃焼器具は、一般に、燃料タンク(携帯用の燃料ボトル等)内に貯蔵した燃料を、流量調節機器を通して燃焼器具に送り込んで、バーナヘッド等で燃焼させるようになっている。この燃焼器具には、前記燃料タンクから気化した気化燃料を取り出して燃焼するタイプのものと、液体燃料を取り出して、これを燃焼器具に設けた気化器で気化させて燃焼するタイプのものがある。
【0003】
液体燃料及び気化燃料の流量制御には、ニードルバルブ、ボールバルブ、レギュレータバルブ等が一般的に用いられる。
【0004】
前記ニードルバルブは、下記特許文献1に示すように、弁箱内に、外周にねじが形成されて先端にテーパ部が形成されたニードル軸と、このニードル軸と同軸にオリフィスが形成された弁座とが設けられている。前記ニードル軸を軸周りに正・逆回転すると、その回転方向に対応して、前記ニードル軸が前記オリフィス内外に抜き挿しされる。このとき、ニードル軸のテーパ部とオリフィス内面との間の隙間の大きさ(弁開度)が変化し、燃料の流量調節がなされる。
【0005】
前記ボールバルブは、下記特許文献2に示すように、バルブに孔部を形成し、このバルブに設けたシャフト軸を操作して、前記孔部とガス通路の相対位置を変化させる。この孔部とガス通路の重なり度合いに対応して流路の広狭が変化し、燃料の流量調節がなされる。
【0006】
前記レギュレータバルブとして、下記特許文献3に示す、ダイヤフラムを用いたものがある。一次側(IN側)圧力に対して二次側(OUT側)圧力を変化させることにより、燃料の流量調節がなされる。
【0007】
流量調節された燃料は、燃焼器具に、燃料ホースを通して、又は、燃料バルブからの燃料供給口を直結して送られる。
【0008】
特に、燃焼器具の燃料として液体燃料を用い、この液体燃料の流量を調節することによって火力を調節する場合は、その流量の精度の高い制御が要求される。この液体燃料は、気化に伴ってその体積が200倍以上に膨張し、液体燃料の流量の変動がわずかであっても、大きな火力変動を生じるからである。
【0009】
この液体燃料は、上述したように気化器で気化されるが、燃焼器具の使用開始直後においてこの気化器が十分に温まっていない間は、その気化ができない。そこで、例えば、少量の液体燃料を、気化器近傍に設けたガラスウール等に浸み込ませて燃焼させ、この気化器を予熱する、所謂プレヒート処理が通常行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第4575043号公報
【特許文献2】特開2010−236686号公報
【特許文献3】特開平6−235466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述したニードルバルブ、ボールバルブ、レギュレータバルブには、安定的な流量制御の面において、いずれも問題がある。
【0012】
ニードルバルブは、ねじピッチを小さくすればするほど、回転角度に対するねじの進み量を小さくすることができ、流量の微調節が可能であるように思われる。しかしながら、このねじピッチを小さくするほど、ねじ山の摩耗等に対する耐久性が損なわれるため、実用上、小さくするには限度がある。このため、上述したように、流量の微調節が要求される液体燃料用として、ニードルバルブのみでその調節を行うのは困難である。
【0013】
そこで、液体燃料を燃料タンクから直接供給するタイプの燃焼器具では、(1)燃料タンクの燃料取り出し口でニードルバルブを用いて液体燃料の大まかな流量調節を行い、(2)この液体燃料を気化して気化燃料とした後に、燃焼器具側に設けた気化燃料用のバルブで、この気化燃料の流量の微調節を行う、という2段階の流量調節を行うことが多い。このため、装置構成が煩雑となって、コスト高及び操作性の低下につながりやすい等の問題がある。
【0014】
ニードルバルブやボールバルブの燃料流路のオリフィスを小径にして、燃料の流量を微調節することも考えられる。しかし、自動車用ガソリン等の液体燃料を使用した場合に、煤等の異物がオリフィス内に付着して、目詰まりを生じやすい問題がある。また、レギュレータバルブは、その構造が複雑で部品点数が多いため、コスト高につながりやすく、耐久性にも問題がある。
【0015】
また、液体燃料をガラスウール等に浸み込ませて燃料させ、プレヒート処理を行うのは、その取り扱いに不慣れな使用者にとって非常に煩雑である。しかも、このプレヒート処理では煤が発生しやすく、燃焼器具本体や、この燃焼器具に載置した調理用具を汚してしまうことがある。また、このプレヒート処理における火炎は、バーナの火炎と違って火勢が弱く、風によって揺らぎやすい。このため、風がある日は、このプレヒート処理の火炎が燃焼器具(特に、気化器)に当たりにくく、十分な加熱効果が得られないことがある。
【0016】
そこで、この発明は、簡便な構成で、燃焼器具への燃料の流量調節を精度良く行うことを第一の課題とし、プレヒート処理において、燃焼器具の加熱に適した良好な火炎を得ることを第二の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記第一の課題を解決するため、この発明では、表面に凹部を形成した流量調節部材と、一端側が燃料を充填したタンク内に設けられ、他端側が前記表面に突き当てられた輸送管とを備え、前記他端側と前記凹部の相対位置を変化させて、前記凹部が、突き当てられた前記輸送管の管内外に跨るように位置した際に、前記輸送管と前記凹部との間の隙間を通って、前記燃料が流れ得るように燃料バルブを構成した。
【0018】
この流量調節部材の前記凹部を形成していない場所に前記他端側を突き当てた際は、この他端側が液密又は気密に閉塞されて、燃料の流動が遮断される。この一方で、前記相対位置の変化によって、輸送管内、凹部(隙間)、及び輸送管外の一連の流路が形成されると、前記流路を通って燃料が流れ得る。
【0019】
その流量は、前記凹部の形状(深さや幅等)を位置ごとに変えることによって、適宜調節することができる。例えば、この凹部を幅の狭い浅い形状とすることで、微量の燃料を流すことができ、前記位置ごとの溝の形状の変化を緩やかにすることにより、流量の微調節を行うようにすることもできる。
【0020】
また、上記第二の課題を解決するため、この発明では、液体燃料と、空気とが共存するタンク内に、前記液体燃料と前記空気をそれぞれ流す輸送管の一端側を設け、両輸送管を流れる液体燃料及び空気の流量調節を個別になし得るように燃料バルブを構成した。
【0021】
この液体燃料と空気の流量調節を個別に行い得るようにすることで、液体燃料を用いる燃焼装置におけるプレヒート処理の煩雑さを軽減することができる。すなわち、液体燃料とともに、燃料タンク内の空気を燃焼器具に供給してノズルから噴射すると、前記タンク内の空気に加えて、燃焼に必要な量の空気を容易に取り込むことができ、燃焼器具の加熱に適した良好な火炎を得ることができる。液体燃料及び空気の流量調節は、例えば、それぞれの流路中に流量調節バルブ等の公知の調節手段を設けることによってなされる。
【0022】
なお、ここでいう「空気」とは、後述する空気ポンプで燃料タンク内に加圧封入した空気と、この燃料タンク内で気化した液体燃料の混合気体のことを指している。
【0023】
前記構成においては、表面に凹部を形成した流量調節部材を備え、前記輸送管の他端側が前記表面に突き当てられており、前記他端側と前記凹部の相対位置を変化させて、前記凹部が、突き当てられた前記輸送管の管内外に跨るように位置した際に、前記輸送管と前記凹部との間の隙間を通って、前記液体燃料及び空気が流れ得るようにするのが好ましい。
【0024】
このように、液体燃料用と空気用の輸送管の他端側をそれぞれ流量調節部材の表面に突き当てて流量調節を行うようにすると、液体燃料及び空気の流量調節を同期して行うことができる。しかも、上述したように、この凹部の形状(深さや幅等)を適宜調節することによって、両者の流量を燃焼状態に合わせて、個別にきめ細かく調節することができる。
【0025】
前記流量調節部材を用いる構成においては、この流量調節部材が円筒形状をしており、その円筒面に前記凹部が形成されているのが好ましい。
【0026】
このように円筒形状とすると、例えばその円周全体の360度に亘って凹部を形成すれば、これと同程度の流量調節機能を備えた平面状の流量調節部材と比較して、大幅にそのコンパクト化を図ることができる。
【0027】
また、前記凹部が、前記相対位置の変位方向に沿う溝状であって、この溝の深さ又は幅の少なくとも一方を前記変位方向位置によって変化させ、前記変位方向の溝断面積の大きさを変えることによって、この溝内を流れる燃料の流量を調節するようにするのが好ましい。
【0028】
凹部を溝状とすることにより、例えばニードルバルブのオリフィスのように、その内部に異物が詰まって燃料の流動が妨げられる恐れが低い。
【0029】
また、液体燃料と空気の両方の流動を同期して調節する構成においては、前記流量調節部材が円筒形状であって、その円筒軸周りに回転自在となっており、その円筒面に、前記回転方向に沿う前記液体燃料及び前記空気の流量を調節する溝状の凹部がそれぞれ形成され、前記流量調節部材の回転角度に対応して、点火位置、火力調節位置、及び排気位置がそれぞれ決められ、前記点火位置では、前記液体燃料用及び空気用の凹部がそれぞれ形成され、前記火力調節位置では、強火位置側で断面積が大きく、弱火位置側で断面積が小さくなる前記液体燃料用の凹部が形成され、前記排気位置では、前記空気用の凹部のみが形成されるようにするのが好ましい。
【0030】
前記点火位置での燃焼は、上述したプレヒート処理に相当する。このプレヒート処理に引き続いて、流量調節部材をさらに回すという一連の操作で前記プレヒート処理から通常燃焼に速やかに移行し、その通常燃焼における火力調節も行い得るようにした。このため、従来の燃焼器具と比較して操作性が一層向上している。
【0031】
さらに、排気位置において空気のみを流すことによって、速やかに消火するとともに、燃焼器具及び燃料管路内に残留した液体燃料を排出することができる。このため、残留した液体燃料中の不純物に起因して、燃焼器具や管路内に錆が発生したり、詰まりが生じたりするのを防止することができる。また、使用後にタンク内圧を大気圧に減圧できるため、このタンクの持ち運びや保管の際の安全性が向上する。
【発明の効果】
【0032】
この発明においては、第一の課題に対して、表面に凹部を形成した流量調節部材の表面に、燃料の輸送管の他端側を突き当てて、前記凹部が前記輸送管の管内外に跨るように位置した際に、燃料等が流れるようにした。この構成によると、凹部の形状を変えることで、容易に、かつ精度良く流量制御を行うことができる。
【0033】
また、第二の課題に対して、液体燃料と空気のそれぞれの流路に流量調節手段を設けて、両者の流量制御を個別に行い得るようにした。このように個別制御することにより、液体燃料と空気の比率調節が特に難しいプレヒート処理において、容易に適量の液体燃料と空気を燃焼器具に送り込むことができる。このため、燃焼器具の加熱に適した良好な火炎を容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本願発明に係る燃料バルブを用いた燃料タンクを示す縦断面図
【図2】図1に示す燃料バルブの断面図を示し、(a)は安全弁を閉じた状態、(b)は安全弁を開いた状態
【図3】本願発明に係る燃料バルブに用いる流量調節部材とOリングの当接を模式的に示す斜視図
【図4】本願発明に係る燃料バルブに用いる流量調節部材の一例を示す側面図
【図5】図4に示す流量調節部材の、(a)はV−Vに沿った断面図、(b)はV−Vに沿った断面図
【図6】本願発明に係る燃料バルブに用いる流量調節部材の他例を示し、(a)は円筒形状の流量調節部材に形成した液体燃料用及び空気用の凹部(V溝)を円筒の周方向に展開した断面図、(b)は(a)に示したL〜Pの各位置における凹部(V溝)横幅方向の断面図
【図7】本願発明に係る燃料バルブに用いる流量調節部材の他例を示す側面図
【図8】本願発明に係る燃料バルブに用いる流量調節部材の他例を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0035】
この発明に係る燃料バルブを用いた燃料タンクを図1に、燃料バルブを図2(a)及び(b)に示す。この燃料バルブは、ガソリンや灯油等の液体燃料Lをタンク1に充填し、この液体燃料Lを燃焼器具(図示せず)に送り込む際に使用するもので、横向きに寝かせた状態で用いられる。
【0036】
このタンク1の口には、キャップ2が嵌め込まれている。このキャップ2には燃料混合室3と、液体燃料流路4と、空気流路5と、燃料取り出し口6が形成されるとともに、タンク1内に空気を送り込んで加圧する空気ポンプ7と、このタンク1を横向きの状態に支持するスタンド8が設けられている。
【0037】
タンク1内には、液体燃料輸送管9と空気輸送管10が設けられ、液体燃料輸送管9の一端側(吸い込み口側)は液体燃料L中に、空気輸送管10の一端側(吸い込み口側)は空気A中にそれぞれ位置している。また、液体燃料輸送管9の他端側(排出口側)は液体燃料流路4に、空気輸送管10の他端側(排出口側)は空気流路5にそれぞれ接続されている。
【0038】
燃料混合室3には円筒形状の流量調節部材11が設けられている。この燃料混合室3の内面と、流量調節部材11の円筒面との間には、燃料が流れるための所定量の隙間gが確保されている。この流量調節部材11の円筒面にはその周方向に沿うV溝12が二本形成されている。
【0039】
流量調節部材11には、これと同軸に流量調節つまみ13が挿し込まれている。流量調節つまみ13は、流量調節部材11に対して、その軸方向に所定範囲内でスライドし、その軸周りに、キー部(図示せず)同士の係合により、流量調節部材11と一体に回転するようになっている。この回転の回転角度を調節することによって、液体燃料L及び空気Aの流量が調節される。
【0040】
また、この流量調節つまみ13は、安全弁の弁軸を兼ねており、その先端側は弁体14となっている。この流量調節つまみ13を前記スライドにより先端側に押し込むと、この弁体14が燃料取り出し口6を塞いだ状態となって、燃料タンクを持ち運ぶ際に流量調節つまみ13を不用意に回転させても液体燃料L等は流れない(図2(a)を参照)。その一方で、この流量調節つまみ13を逆方向にスライドさせて弁体14を開弁状態とすると、前記回転角度に対応して、液体燃料L等を流すことができる(図2(b)中の矢印fを参照)。この弁体14の開弁・閉弁状態においては、ロックばね15で付勢された鋼球16が、流量調節つまみ13に形成されたロック溝17に嵌まり込んで、この開弁・閉弁状態が安定的に維持される。
【0041】
この安全弁機構においては、本実施形態に示すように流量調節つまみ13が安全弁の弁軸を兼ねるようにしても良いし、安全弁の弁軸を流量調節つまみ13とは別部材で構成するようにしても良い。
【0042】
この流量調節部材11による液体燃料L及び空気Aの流量調節について、図3〜5に基づいて説明する。この流量調節部材11の円筒面には、液体燃料流路4及び空気流路5にそれぞれ設けられた吐出部18のOリング19が突き当てられている(図3を参照。なお、吐出部18の図示は省略している。)。このOリング19(吐出部18)は、両流路4、5内に設けられた吐出ばね20によって、円筒面側に付勢されている(図2(a)及び(b)を参照)。
【0043】
流量調節部材11は、上述したようにその軸周りに回転するようになっている。この回転により、V溝12とOリング19の相対位置を変化させて、Oリング19がV溝12を跨るように位置した際に(図4中のVで示す箇所を参照)、流路4、5を経由して輸送管9、10の排出口とV溝12との間に流路が形成され、液体燃料L等が流れる(図5(a)を参照)。これに対して、Oリング19がV溝12の形成されていない箇所に位置している場合(図4中のVで示す箇所を参照)、前記流路は形成されず、液体燃料L等は流れない(図5(b)を参照)。
【0044】
この流量調節部材11には、液体燃料Lの流量と、空気Aの流量を個別に調節するために、二本のV溝12、12が形成されている。この二本のV溝12、12を通った液体燃料L及び空気Aは、燃料混合室3の内壁と流量調節部材11の円筒面との間の隙間gに流れ込んで混合され、燃料取り出し口6を通って燃焼器具(図示せず)に送られる(図2(b)中の矢印fを参照)。
【0045】
この二本のV溝12、12の溝形状(深さ及び幅)と相対位置は、燃焼器具の使用態様に基づいて適宜決められる。例えば、ガソリンや灯油等の液体燃料Lを用いる燃焼器具は、通常燃焼前に、上述したようにプレヒート処理を行い、気化器を予め加熱するのが一般的である。
【0046】
そこで、本願発明に係る燃料バルブは、通常燃焼の前に、プレヒート処理で気化器を加熱するとともに、使用後に、燃料流路に残留した液体燃料Lを排出して、タンク内圧を大気圧に下げるために、液体燃料L及び空気Aの流量調節を個別に行っている。この流量調節を行うためのV溝12の形成パターンを図6(a)及び(b)に示す。
【0047】
プレヒート処理を行う「点火」位置(図6(a)のL部を参照)と、「強火」〜「弱火」の火力調節位置(図6(a)のM〜O部を参照)、及び使用後の「排気」位置(図6(a)のP部を参照)の間で流量調節つまみ13を操作することによって、液体燃料L及び空気Aの流量調節を簡便に行うことができる。液体燃料L用のV溝12は、「点火」から「弱火」の調節範囲内に形成されていて、「弱火」側に向かうほど、V溝12の深さは浅く、幅は小さくなっている。また、空気A用のV溝12は、「点火」及び「排気」の各位置において形成されていて、「点火」よりも「排気」位置において、V溝12の深さは深く、かつ幅は大きくなっている。
【0048】
すなわち、「点火」操作においては、液体燃料Lと空気Aの両方が流れ、液体燃料Lの燃焼にこの空気Aが用いられる。このため、この点火操作における安定した燃焼状態を得ることができ、スムーズに気化器を加熱することができる。また、「強火」〜「弱火」の通常燃焼においては、液体燃料Lのみが流れ、この液体燃料Lが前記気化器で気化して、この気化した燃料が燃焼器具のノズルから噴射された際に、燃焼用の空気が取り込まれる。
【0049】
この「弱火」位置においては、気化した燃料のノズルからの噴射圧力が低いため、燃焼に必要な十分な量の空気を取り込めない場合もあり得る。この場合は、「弱火」の調節位置において、燃料タンクから液体燃料Lとともに空気Aを取り込めるように、空気A用のV溝12を形成し、前記噴射圧力を高めるようにすることもできる。
【0050】
「排気」操作においては、空気Aのみが流れ、燃料流路内に残留した液体燃料Lがその圧力でもって燃焼器具外に排出される。このため、残留した液体燃料L中の不純物に起因して管路内に錆が発生したり、詰まりが生じたりするのを防止することができる。また、燃料タンク内圧が大気圧に減圧されるため、持ち運びや保管の際の安全性が向上する。
【0051】
この流量調節部材11における、点火操作、強火〜弱火操作、排気操作の順序は、勿論、図6に記載の順序に限定されるものではなく、例えば、弱火操作と排気操作の間に「消火操作」の位置を設ける等、必要に応じて適宜変更することができる。
【0052】
このV溝12は、図4等に示したように、一つの吐出部18に対して一本のみとするだけでなく、図7に示すように、複数本のV溝12の集合体のように構成しても良い。この集合体を構成する各V溝12の始点・終点位置をずらしたり、各V溝12の深さや幅を周方向の位置ごとに適宜変化させたりすることによって、燃料等の流量のきめ細かい調節を行うことができる。
【0053】
このV溝12は、図8に示すように、円筒形状の流量調節部材11の軸方向に沿うものであっても良い。この場合、この軸方向にOリング19とV溝12を相対的にスライドさせることによって、図4等に示した流量調節部材11と同様に燃料の流量調節を行うことができる。
【0054】
上記においては、凹部12としてV溝形状のものを採用した例について示したが、この溝形状は勿論このV溝に限定されるものではなく、断面矩形状等の他の溝形状、あるいは窪み状とすることもできる。
【0055】
この溝形状(深さや幅等)は所望の流量を考慮した上で適宜変えることができる。例えば、極めて微量の燃料を供給したい場合は、幅の狭い極浅の溝を形成すればよいし、流量の微調節を行いたい場合は、流量調節部材11と吐出部18(Oリング19)との相対スライド方向の溝深さ及び幅の変化量を緩やかにすればよい。また、このように凹部12を溝形状とすると、溝内に異物が付着したとしても、Oリング19のスライドに伴ってこの異物が速やかに除去される。このため、流路(凹部12)の目詰まりに起因する不具合を防止することもできる。
【0056】
上述した燃料等の微量供給や流量の微調節、及び流路の目詰まり防止性は、ねじの回転によってオリフィスとニードルとの間の弁開度を調節するニードルバルブの不得手とするところであって、本願に係る調節機構を採用するメリットは大きい。しかも、流量調節部材11に輸送管9、10の排出口側を突き当てるだけの簡単な構成なので、耐久性を有するとともに、メンテナンス性も高い。
【0057】
また、上記においては、複数のV溝(凹部12)を形成して、液体燃料Lと空気Aの流量を個別に調節する構成としたが、V溝(凹部12)を一本とし、液体燃料Lの流量のみを調節する構成としたり、三本以上とし、三種類以上の液体燃料L、気化燃料、又は空気Aの流量を個別に調節する構成とすることもできる。
【0058】
この流量調節部材11として、円筒形状のものだけでなく、例えば、円錐形状、平板形状のものも適宜採用することができる。
【符号の説明】
【0059】
1 タンク
2 キャップ
3 燃料混合室
4 液体燃料流路
5 空気流路
6 燃料取り出し口
7 空気ポンプ
8 スタンド
9 液体燃料輸送管
10 空気輸送管
11 流量調節部材
12 V溝(凹部)
13 流量調節つまみ
14 弁体
15 ロックばね
16 鋼球
17 ロック溝
18 吐出部
19 Oリング
20 吐出ばね
L 液体燃料
A 空気

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に凹部(12)を形成した流量調節部材(11)と、一端側が燃料を充填したタンク(1)内に設けられ、他端側が前記表面に突き当てられた輸送管とを備え、
前記他端側と前記凹部(12)の相対位置を変化させて、前記凹部(12)が、突き当てられた前記輸送管の管内外に跨るように位置した際に、前記輸送管と前記凹部(12)との間の隙間を通って、前記燃料が流れ得るようにした燃料バルブ。
【請求項2】
液体燃料(L)と、空気(A)とが共存するタンク(1)内に、前記液体燃料(L)と前記空気(A)をそれぞれ流す輸送管(9、10)の一端側を設け、両輸送管(9、10)を流れる前記液体燃料(L)及び空気(A)の流量調節を個別になし得るようにした燃料バルブ。
【請求項3】
表面に凹部(12)を形成した流量調節部材(11)を備え、前記輸送管(9、10)の他端側が前記表面に突き当てられており、前記他端側と前記凹部(12)の相対位置を変化させて、前記凹部(12)が、突き当てられた前記輸送管(9、10)の管内外に跨るように位置した際に、前記輸送管と前記凹部(12)との間の隙間を通って、前記液体燃料(L)及び空気(A)が流れ得るようにした請求項2に記載の燃料バルブ。
【請求項4】
前記流量調節部材(11)が円筒形状をしており、その円筒面に前記凹部(12)が形成されている請求項1又は3に記載の燃料バルブ。
【請求項5】
前記凹部(12)が、前記相対位置の変位方向に沿う溝状であって、この溝の深さ又は幅の少なくとも一方を前記変位方向位置によって変化させ、前記変位方向の溝の断面積の大きさを変えることによって、この溝内を流れる燃料の流量を調節するようにした請求項1、3又は4のいずれか一つに記載の燃料バルブ。
【請求項6】
前記流量調節部材(11)が円筒形状であって、その円筒軸周りに回転自在となっており、その円筒面に、前記回転方向に沿う前記液体燃料(L)及び前記空気(A)の流量を調節する溝状の凹部(12)がそれぞれ形成され、
前記流量調節部材(11)の回転角度に対応して、点火位置、火力調節位置、及び排気位置がそれぞれ決められ、前記点火位置では、前記液体燃料(L)用及び空気(A)用の凹部(12)がそれぞれ形成され、前記火力調節位置では、強火位置側で断面積が大きく、弱火位置側で断面積が小さくなる前記液体燃料(L)用の凹部(12)が形成され、前記排気位置では、前記空気(A)用の凹部(12)のみが形成されている請求項3に記載の燃料バルブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−117764(P2012−117764A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−268575(P2010−268575)
【出願日】平成22年12月1日(2010.12.1)
【出願人】(592073123)新富士バーナー株式会社 (8)
【Fターム(参考)】