説明

燃料ポンプ

本発明は、燃料ポンプであって、駆動されてポンプケーシング内を回転する、ベーンチャンバを画成するガイドベーンのリングを両側にそれぞれ1つ備えるインペラと、ポンプケーシング内にガイドベーンの領域で両側に配置される部分環状の通路とを備え、部分環状の通路がベーンチャンバとともに、燃料を圧送するために圧送チャンバを形成し、一方の圧送チャンバに入口通路が開口し、他方の圧送チャンバが出口通路に開口し、かつ互いに対向するベーンチャンバが互いに接続されている燃料ポンプに関する。入口側に配置された部分環状の通路の横断面積は、部分環状の通路の終端までにゼロに減少し、横断面積が減少する領域は、45°より大きな角度範囲にわたって延在している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料ポンプであって、駆動されてポンプケーシング内を回転する、ベーンチャンバを画成するガイドベーンのリングを側面にそれぞれ1つ備えるインペラと、ポンプケーシング内にガイドベーンの領域で両側に配置される部分環状の通路とを備え、部分環状の通路がベーンチャンバとともに、燃料を圧送するために圧送チャンバを形成し、一方の圧送チャンバに入口通路が開口し、他方の圧送チャンバが出口通路に開口し、かつ互いに対向するベーンチャンバが互いに接続されている燃料ポンプに関する。
【0002】
このようなサイドチャンネルポンプ(Seitenkanalpumpe)の原理に基づく燃料ポンプは、燃料を燃料容器から自動車の内燃機関に圧送するために使用され、これにより公知である。インペラの回転時、燃料は、入口通路を介して吸い込まれ、部分環状の通路の通過中、より高い圧力レベルに昇圧される。300°〜330°の角度範囲にわたって延在可能な部分環状の通路の終端において、燃料は、出口通路及び燃料ポンプの電動モータを介して送り管路に圧送される。送り管路は、燃料を内燃機関に導く。その際、圧送チャンバ内のガイドベーンは、ガイドベーンの運動方向に対して横方向に延びる循環流を形成する。循環流は、インペラの半径方向外側の領域において流出し、部分環状の通路に流入し、部分環状の通路内において半径方向外側から半径方向内側に流動し、部分環状の通路から半径方向内側で流出し、半径方向内側でインペラのベーンチャンバに再び流入する。これにより、循環流は、部分環状の通路とベーンチャンバとに半割される。出口通路の領域で、部分環状の通路は終端する。出口側の通路が程度の差こそあれ出口通路に移行している一方、入口側の通路は、その横断面積をゼロに減少させる。横断面積のこの減少は、一般に、40°までの角度範囲にわたって実施される。この燃料ポンプにおける欠点は、かなりのレベルの騒音を発生させることにあり、このような騒音は、自動車の燃料容器に取り付けたときに不都合である。
【0003】
それゆえ、本発明の課題は、明らかに低減された騒音排出を伴う燃料ポンプを提供することであり、その際、燃料ポンプは、安価に製造可能であることが望ましい。
【0004】
本発明により、上記課題は、入口側に配置された部分環状の通路の横断面積が、部分環状の通路の終端までにゼロに減少し、横断面積が減少する領域が、45°より大きな角度範囲にわたって延在している燃料ポンプによって解決される。
【0005】
横断面積が短い角度範囲で減少する場合、循環流にとって、変化する横断面にしたがって移動するには時間が短すぎることが判っている。この状況が、燃料ポンプの騒音排出の主な原因である。部分環状の通路の、横断面積が減少する領域が、45°を超える角度範囲にわたって延在することにより、入口側に配置された部分環状の通路の長い逃げ域あるいは斜面域(Auslaufzone)が形成される。結果として、この領域は、小さな上り勾配を有している。この長く延びた領域に基づいて、循環流は、当該部分環状の通路からインペラのベーンチャンバ内及び出口通路を有する対向する部分環状の通路内に移動するのに、より長い時間を有している。このことは、燃料ポンプの騒音排出の低減につながる。この場合の利点は、この通路の形成が付加的な手間あるいはコストをほぼ必要としない点にある。ポンプケーシングのポンプカバー内の通路幾何学形状が、切削加工により形成されるか、又は成型により形成されるかにかかわらず、別の加工プログラム又は別の被加工物型の使用が付加的なコストを招くことはないので、製造に、より大きな手間あるいはコストがかかることはない。
【0006】
横断面積の減少を伴う部分環状の通路の十分にフラットな立ち上がりは、70°〜150°、特に90°の角度範囲により達成される。本態様において、循環流は、移動するのに十分な時間を有している。
【0007】
特に簡単な態様において、部分環状の通路は、横断面積が減少する領域において、横断面積の減少が均一に行われるように形成されている。このことは、部分環状の通路の立ち上がりが直線状であることを意味する。
【0008】
別の有利な態様では、横断面積が減少する領域が、2つの部分領域から形成され、第1の部分領域において横断面積は、第2の部分領域より強く減少する。これにより、第1の部分領域において、循環流に対する比較的強い干渉が行われるのに伴い、騒音排出が高まるが、この騒音排出は、従来技術において公知であるよりも、遙かに小さな規模で発生するにすぎないことが達成される。これに対して、第2の部分領域では、循環流に対する特に低い干渉が生じる。これにより、循環流の付加的な安定化が生じる。加えて、この構成により、問題となる領域は、部分環状の通路の長さに関して、部分環状の通路の終端から離間する。この状況は、部分環状の通路の終端において、それぞれ部分環状の通路の終端と始端、ひいては出口と入口とを互いに接続する掻取り器(Abstreifer)が始まり、掻取り器の領域がやはり騒音排出の領域であるがゆえに、重要である。
【0009】
両部分領域は、横断面積の減少が両部分領域において均一に、ひいてはそれぞれ直線状に行われると、特に簡単に形成されている。
【0010】
折曲点の形態での両部分領域間の移行部は、別の態様では、両部分領域が互いに連続的に移行し、その結果、部分環状の通路の通路基底が、両部分領域の長さに関して、凸面状にインペラに接近することによって回避される。
【0011】
部分環状の通路から、上述の横断面積が減少する領域への移行部は、折曲点として形成されていても、連続的に形成されていてもよい。後者の場合は、それにより、移行部の凹面状の形態が生じる。
【0012】
本発明について複数の実施の形態を参照しながら詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る燃料ポンプを示す図である。
【図2】ポンプケーシングの概略断面図である。
【図3】ポンプケーシングの別の実施の形態を示す図である。
【図4】ポンプケーシングの別の実施の形態を示す図である。
【0014】
図1は、燃料を自動車の燃料容器2から内燃機関3に圧送するための燃料ポンプ1を示している。燃料ポンプ1は、ポンプケーシング4を備えるポンプ段を有している。ポンプケーシング4は、ポンプカバー5とポンプベース6とを有している。ポンプケーシング4内には、インペラ7が配置されている。インペラ7は、電動モータ9の軸8を介して駆動される。ポンプ段により入口通路10を介して燃料容器2から吸い込まれた燃料は、出口通路11及び電動モータ9を介して出口12に圧送される。出口12から、燃料は、送り管路13を介して内燃機関3に到達する。
【0015】
図2は、ポンプカバー5と、ポンプベース6と、インペラ7とを備えるポンプケーシング4を示している。インペラ7は、両側に、ベーン15,15a,15bよりなるそれぞれ1つのリング14を有している。2つのベーン15,15a,15bは、それぞれ1つのベーンチャンバ18,19を画成している。ポンプケーシング4は、ベーン15,15a,15bの領域において、両側に、それぞれ1つの部分環状の通路16,17を有している。部分環状の通路16,17は、ベーンチャンバ18,19とともに圧送チャンバ20,21を形成している。圧送チャンバ20,21は、各1つの部分環状の通路16,17と、それぞれの部分環状の通路16,17に対向するベーンチャンバ18,19とに半割されている。部分環状の通路16,17は、入口通路10の領域で始まり、約330°の角度範囲の後、出口通路11の領域で終わっている。インペラ7の回転方向に関して、部分環状の通路16,17の終端に、掻取り器22が接続している。掻取り器22は、出口通路11と入口通路10との間に配置されている。ポンプベース6に設けられた部分環状の通路17が、その延在長さの広範な部分にわたって一定の横断面積を有しているのに対して、ポンプカバー5に設けられた部分環状の通路16は、その終端に、減じられた横断面積を有する領域23を有している。図2で見て、領域23は、アルファベットのAとBとにより画成されている。領域23は、90°の角度範囲にわたって延在しているが、例えば110°のより大きな角度範囲も可能である。領域23の延びにわたって、横断面積は、コンスタントに減少して、通路基底の直線状の延びを生じる。
【0016】
図3は、第2の実施の形態を示している。第2の実施の形態は、図2に示した燃料ポンプとは、領域23の形態についてのみ相違する。領域23は、2つの部分領域24,25に分割されている。第1の部分領域24は、第2の部分領域25と比べて横断面積のより大きな減少を示している。第1の部分領域24は、30°の角度範囲にわたって延在している一方、第2の部分領域25は、60°にわたって延在している。両部分領域24,25は、それぞれ1つの直線状に延びる通路基底を有している。しかし、両部分領域24,25を同じ長さに形成することも可能である。
【0017】
図4は、別の実施の形態を示している。領域23内の通路基底は、凸面状にインペラ7に向かって湾曲している。最も強い湾曲は、インペラ7の回転方向に関して、領域23の始端に形成されている。部分環状の通路16から領域23への移行部は、折曲点の形態で点Aに形成されている。しかし、移行部を連続的に、ひいては凹面状に形成することも可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ポンプであって、駆動されてポンプケーシング内を回転する、ベーンチャンバを画成するガイドベーンのリングを両側にそれぞれ1つ備えるインペラと、前記ポンプケーシング内に前記ガイドベーンの領域で両側に配置される部分環状の通路とを備え、該部分環状の通路が前記ベーンチャンバとともに、燃料を圧送するために圧送チャンバを形成し、一方の圧送チャンバに入口通路が開口し、他方の圧送チャンバが出口通路に開口し、かつ互いに対向するベーンチャンバが互いに接続されている燃料ポンプにおいて、入口側に配置された部分環状の通路の横断面積が、該部分環状の通路の終端までにゼロに減少し、該横断面積が減少する領域が、45°より大きな角度範囲にわたって延在していることを特徴とする、燃料ポンプ。
【請求項2】
前記角度範囲は、70°〜150°、特に90°である、請求項1記載の燃料ポンプ。
【請求項3】
前記部分環状の通路は、前記横断面積が減少する領域において、横断面積の減少が均一に行われるように形成されている、請求項1及び2の少なくとも1項記載の燃料ポンプ。
【請求項4】
前記横断面積が減少する領域が、2つの部分領域から形成され、第1の部分領域において前記横断面積は、第2の部分領域より強く減少する、請求項1及び2の少なくとも1項記載の燃料ポンプ。
【請求項5】
前記横断面積の減少は、両部分領域において均一に行われる、請求項4記載の燃料ポンプ。
【請求項6】
両部分領域は、互いに連続的に移行する、請求項4記載の燃料ポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−514482(P2013−514482A)
【公表日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−543611(P2012−543611)
【出願日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際出願番号】PCT/EP2010/069241
【国際公開番号】WO2011/082930
【国際公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(508097870)コンチネンタル オートモーティヴ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (205)
【氏名又は名称原語表記】Continental Automotive GmbH
【住所又は居所原語表記】Vahrenwalder Strasse 9, D−30165 Hannover, Germany
【Fターム(参考)】