説明

燃料供給システム

【課題】燃料の硫黄濃度を確実に低濃度に維持する。
【解決手段】サブ燃料タンク24には、給油口10から供給される燃料が貯留される。硫黄除去装置22は、サブ燃料タンク24内の燃料の硫黄濃度を低減する。メイン燃料タンク20には、サブ燃料タンク24から供給される硫黄濃度が低減された燃料が貯留される。メイン燃料タンク20内の燃料をエンジン42に供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料の硫黄を低減する燃料供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ガソリンエンジン、ディーゼルエンジンなどの内燃機関では、ガソリン、軽油などの燃料を燃焼させて、エネルギーを得る。ここで、このような燃料には硫黄が含まれており、排ガス中にも硫黄が含まれることになる。
【0003】
一方、内燃機関の排ガスには、各種の有害物質(窒素酸化物NOx、炭化水素HC、一酸化炭素CO、粒子状物質PM)が含まれており、これらを除去するために、排ガス浄化装置が設けられる。
【0004】
このような排ガス浄化装置では、NOxを除去するために、NOx吸蔵還元触媒を用いるが、このNOx吸蔵還元触媒は、硫黄分により被毒する。そこで、硫黄被毒の度合いに応じて硫黄被毒再生を行うことが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−65041号公報
【特許文献2】特開2008−286042号公報
【特許文献3】特開2007−529687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、通常の硫黄被毒再生処理は、高温還元雰囲気に触媒を保持する必要があるため、燃費悪化を招き、また触媒が劣化するという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、給油口から供給される燃料を貯留するサブ燃料タンクと、サブ燃料タンク内の燃料の硫黄濃度を低減する硫黄除去装置と、サブ燃料タンクから供給される硫黄濃度が低減された燃料を貯留するメイン燃料タンクと、を有し、メイン燃料タンク内の燃料をエンジンに供給することを特徴とする。
【0008】
また、前記メイン燃料タンク内の燃料を併記の空燃比制御のために排ガス管に供給することが好適である。
【0009】
また、前記給油口から供給される燃料の硫黄濃度を計測し、その計測結果に応じて前記硫黄除去装置の運転を制御することが好適である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、エンジンに供給する燃料中の硫黄濃度を確実に低減でき、排ガス浄化装置の硫黄被毒を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施形態に係るシステムの全体構成を示す図である。
【図2】他の実施形態の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。
【0013】
図1は、実施形態の構成を示す図である。給油口10から燃料が配管12に供給される。この配管12には、切替弁14、硫黄濃度計16、切替弁18が設けられ、他端は、メイン燃料タンク20に開放されている。
【0014】
切替弁18には、硫黄除去装置22を介し、サブ燃料タンク24に開放される配管26が接続されている。サブ燃料タンク24内には、サブ燃料ポンプ28が設置されている。このサブ燃料ポンプ28の吐出口には、配管30が接続され、この配管30の他端が切替弁14に接続されている。
【0015】
給油口10から新しい燃料を補給する場合には、切替弁14が配管12内の燃料をそのまま通過するように設定し、切替弁18が燃料を硫黄除去装置22側に流すように切り換える。これによって、給油口10からの燃料は、硫黄濃度計16において硫黄濃度が計測された後、硫黄除去装置22において硫黄分が除去されてサブ燃料タンク24に導入される。
【0016】
このようにして、給油口10からサブ燃料タンク24への燃料導入が終わった場合には、切替弁14を配管30側から硫黄濃度計16の方に燃料が供給されるように切り換える。そして、サブ燃料ポンプ28を駆動すると、サブ燃料タンク24内の燃料は、硫黄濃度計16にて硫黄濃度が計測された後、硫黄除去装置22において硫黄分が除去されて、サブ燃料タンク24に戻る。このようにして、硫黄濃度が所定値以下になるまで、この処理を繰り返す。なお、最初から硫黄濃度が所定値以下の場合にはこの処理は不要となる。
【0017】
次に、切替弁18を切り換え、サブ燃料ポンプ28を駆動することで、サブ燃料タンク24内の燃料が硫黄濃度計16で濃度計測された後、メイン燃料タンク20に導入される。この場合、硫黄濃度計16において、硫黄濃度が所定値以下であることを確認しながら、メイン燃料タンク20への燃料の導入を行う。なお、給油口10から供給する燃料の硫黄濃度が所定値以下の場合には、切替弁14,18を切り換えて、給油口10からの燃料が配管12を介し直接メイン燃料タンク20に導入されるようにしてもよい。
【0018】
このようにして、硫黄濃度が所定値以上の場合には、硫黄除去装置22による硫黄の除去が行われ、メイン燃料タンク20に導入される燃料は硫黄濃度が所定値以下のものに確実に制御することが可能になる。
【0019】
メイン燃料タンク20内には、メイン燃料ポンプ32が設けられており、このメイン燃料ポンプ32の吐出口には配管34が接続され、この配管34の他端にはコモンレール36が接続されている。このコモンレール36には、配管38を介し、燃料噴射弁40が接続されている。この燃料噴射弁40は、エンジン42の各気筒44に対応して設けられており、コモンレール36から供給される燃料を所定のタイミングで対応する気筒内にそれぞれ噴射する。また、各燃料噴射弁40、コモンレール36には、配管46が接続され、これによって燃料の一部がメイン燃料タンク20に返送されるようになっている。すなわち、コモンレール36内は所定の高圧状態になっており、燃料噴射弁40を各気筒での燃料噴射タイミングで開くことによって該気筒内に燃料が噴射され、エンジン42が駆動され、出力軸から回転エネルギーが出力される。
【0020】
また、メイン燃料ポンプ32からの配管34には、分岐する配管48が接続され、この配管48には、燃料噴射弁50が接続されている。この燃料噴射弁50は、エンジン42の排ガス管52内の排ガス浄化装置54の手前に配置されている。排ガス浄化装置54は、内部に排ガス浄化触媒を有するもので、エンジン排ガス中の有害物質を除去するが、その前段の排ガス中に燃料を噴射することで、排ガス中の空燃費を所定のものとして、排ガス浄化装置54の機能を十分なものに維持する。
【0021】
本実施形態では、エンジン42の各気筒44に供給する燃料が硫黄が低濃度に維持されたメイン燃料タンク20内の燃料であるため排ガス中の硫黄分が少なく、さらに燃料噴射弁50に供給する燃料もメイン燃料タンク20内の燃料であるため、排ガス浄化装置54の排ガス浄化触媒の硫黄被毒を大幅に抑制することができる。
【0022】
なお、サブ燃料タンク24、メイン燃料タンク20には、レベルセンサ56,58がそれぞれ設けられ、サブ燃料タンク24内の燃料残量は、常時表示しておくことが好適であり、所定値以下になった場合に計測表示することが好ましい。また、メイン燃料タンク20の燃料が所定値以下になった場合には、サブ燃料タンク24内の燃料を自動的に所定量移送することが好適である。
【0023】
なお、硫黄濃度計16、レベルセンサ56,58の検出値や、給油口10からの燃料投入などの信号は、制御装置に供給され、制御装置が切替弁14,18の切り換えやサブ燃料ポンプ28の駆動を制御する。また、燃料噴射弁40,50やメイン燃料ポンプ32の制御は、エンジン制御用の別の制御装置によって行われる。
【0024】
ここで、硫黄除去装置22は、燃料中に含有される硫黄分を除去できる装置であればどのようなものでもよい。例えば、吸着剤を用いた吸着脱硫装置や、オゾン、過酸化物、過酸化水素、光酸化などを利用する酸化脱硫装置などが挙げられる。中でも、吸着剤による脱硫装置は、運転におけるエネルギー消費が小さく、装置もコンパクトにできることから好ましい。燃料中の硫黄分を吸着除去可能な吸着剤としては、多孔体(ゼオライト、メソポーラスシリカ多孔体(FSM)、酸性白土、活性炭など)、金属酸化物(活性アルミナ、酸化チタン、酸化ニッケル、酸化マンガン、過マンガン酸カリウム、硫酸マンガン、酸化バナジウム、酸化コバルトなど)、金属(白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、銀、ニッケルなど)などを使用することができる。また、これらの吸着剤を2種類以上組み合わせて使用することもできる。
【0025】
また、排ガス浄化装置54において使用される排ガス浄化触媒としては、NOx吸蔵還元触媒(NSR)、選択還元触媒(SCR)、酸化触媒、ディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)、三元触媒などが挙げられる。特に、硫黄被毒の影響が大きい触媒において、本実施形態の硫黄分の少ない燃料を使うことの効果が大きい。
【0026】
硫黄濃度計16は、燃料中の硫黄濃度が計測できれば、どのようなものでもよく、波長分散蛍光X線分析計など公知のものが適宜採用される。
【0027】
本実施形態によれば、硫黄が確実に低濃度に維持された燃料をエンジン燃焼用の燃料として用いることができるため排ガス中の硫黄分を大幅に減少させることができる。従って、排ガス浄化触媒の硫黄被毒を大幅に抑制して、排ガス浄化性能を大幅に向上できる。また、排ガス浄化触媒の硫黄被毒を解除するための触媒再生の頻度を減少して、触媒再生に必要なエネルギーを減少することができる。
【0028】
さらに、排ガス浄化装置54の上流側に硫黄低濃度燃料を供給する燃料噴射弁50を備えているため、排ガスの空燃費制御に燃料を添加しても、排ガス浄化触媒の硫黄被毒を抑制することができる。
【0029】
特に本実施形態では、燃料を貯留するタンクを2つに分け、メイン燃料タンク20に貯留する燃料は硫黄を低濃度にしたものに限定することができる。このため、エンジン42、排ガス管52に供給する燃料を低硫黄濃度のものにすることができる。また、燃料の硫黄濃度を計測しているため、継続使用による硫黄の使用量を正確に推定することができ、排ガス浄化触媒の再生を適切なタイミングで行うことができる。また、サブ燃料タンク24内の燃料を何度も硫黄除去装置22に循環することができるため、確実に燃料中の硫黄分を低減することが可能となる。さらに、サブ燃料タンク24内の燃料中の硫黄濃度が所定値以下になれば、硫黄除去装置22の運転を停止するため、硫黄除去装置22の過度の運転によるエネルギー消費を抑え、硫黄除去装置22の寿命を延ばすことが可能になる。
【0030】
また、硫黄除去装置22の位置は、他の場所でもかまわない。例えば、図2に示すように、サブ燃料ポンプ28の吐出側の配管30に硫黄除去装置22を設けてもよい。この場合、給油口10からの燃料は一旦サブ燃料タンク24に導入され、サブ燃料ポンプ28を駆動して、サブ燃料タンク24内の燃料を硫黄除去装置22に循環することで燃料中の硫黄分を除去できる。さらに、硫黄濃度計16によりサブ燃料タンク24内の燃料中の硫黄濃度を計測してもよい。また、サブ燃料タンク24への燃料の導入経路、排出経路と、硫黄除去装置22による燃料中の硫黄分の除去経路とを独立にしてもよい。いずれにしても、サブ燃料タンク24内の燃料中の硫黄濃度を所定の低濃度にして、その後硫黄低濃度燃料をメイン燃料タンク20に導入することで、エンジン42に導入する燃料中の硫黄濃度を確実に低濃度に維持することができる。
【符号の説明】
【0031】
10 給油口、12,26,30,34,38,46,48 配管、14,18 切替弁、16 硫黄濃度計、20 メイン燃料タンク、22 硫黄除去装置、24 サブ燃料タンク、28 サブ燃料ポンプ、32 メイン燃料ポンプ、36 コモンレール、40,50 燃料噴射弁、42 エンジン、44 気筒、52 排ガス管、54 排ガス浄化装置、56,58 レベルセンサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給油口から供給される燃料を貯留するサブ燃料タンクと、
サブ燃料タンク内の燃料の硫黄濃度を低減する硫黄除去装置と、
サブ燃料タンクから供給される硫黄濃度が低減された燃料を貯留するメイン燃料タンクと、
を有し、
メイン燃料タンク内の燃料をエンジンに供給することを特徴とする燃料供給システム。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料供給システムであって、
前記メイン燃料タンク内の燃料を併記の空燃比制御のために排ガス管に供給することを特徴とする燃料供給システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の燃料供給システムであって、
前記給油口から供給される燃料の硫黄濃度を計測し、その計測結果に応じて前記硫黄除去装置の運転を制御することを特徴とする燃料供給システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2011−196201(P2011−196201A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−61814(P2010−61814)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】