説明

燃料供給装置

【課題】従来の機能は維持しつつ、より優れた耐久性を発揮可能な燃料供給装置を提供する。
【解決手段】モータ機構38が燃料タンク12の上方に位置するようにハウジング20等が燃料タンク12に固定されている。吸入ポート24eと燃料タンク12内の液相部分とを連通する吸入管28がハウジング20として採用されている。ハウジング20等には、吐出ポート22cと連通し、モータ室30を取り囲む吐出室32が形成されている。モータ機構38が燃料タンク12内の燃料10内に浸漬されず、燃料ポンプ14におけるモータ機構38の巻き線等の銅が腐食することがない。また、吸入管28を採用して吸入ポート24eと液相部分との連通を実現するとともに、発熱するモータ機構38を吐出室32内の燃料10で冷却することもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は燃料供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に従来の燃料供給装置が開示されている。この燃料供給装置は、燃料を貯留する燃料タンクと、この燃料タンクの内部底面に設けられ、燃料を圧送する燃料ポンプとを備えている。燃料としては、ジメチルエーテル(DME)が開示されている。
【0003】
燃料ポンプは、ハウジングと、ハウジングに回転可能に軸支された駆動軸と、駆動軸を回転駆動するモータ機構と、駆動軸の回転駆動によって燃料のポンプ作用を行うポンプ機構とを備えている。
【0004】
ハウジングには、モータ室と、モータ室より下方でモータ室に上下の軸方向で連通するポンプ室と、ポンプ室の吸入域と連通する吸入ポートと、ポンプ室の吐出域と連通する吐出ポートとが形成されている。燃料ポンプは燃料タンクの内部底面に設けられていることから、吸入ポートは燃料タンク内の液相部分に連通しており、吐出ポートは燃料ポンプの底面から下流側の供給路に連通している。また、駆動軸はモータ室及びポンプ室を跨いで延在している。モータ機構はモータ室に配設され、ポンプ機構はポンプ室内に配設されている。
【0005】
燃料ポンプの下流側の供給路には、より下流への燃料の供給を制限する開閉弁が設けられている。供給路のさらに下流側には燃料噴射装置等の燃料被供給装置が設けられ得る。
【0006】
このように構成された従来の燃料供給装置は、燃料ポンプにおいて、モータ機構が駆動軸を回転駆動することにより、ポンプ機構が作動する。これにより、燃料タンク内の液相部分の燃料は、吸入ポートからポンプ室の吸入域に吸入され、吐出域から吐出ポートを経て供給路に圧送される。供給路に圧送された燃料は開閉弁を経て燃料被供給装置に供給される。
【0007】
また、この燃料供給装置は、燃料ポンプが燃料タンクの内部底面に設けられていることにより、吸入ポートと液相部分との連通の便宜を図りつつ、発熱するモータ機構を液相部分の燃料で冷却することも行っている。
【0008】
【特許文献1】特開2003−83188号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、従来の機能は維持しつつ、より優れた耐久性を発揮可能な燃料供給装置を提供することを解決すべき課題としている。
【0010】
発明者らは、上記課題解決のために鋭意研究を行い、燃料供給装置の耐久性をより高めることのできる要因を次のように解明した。
【0011】
まず、ジメチルエーテルは潤滑のための添加剤とともに燃料として採用されており、その添加剤の中にはカルボン酸等が存在する。カルボン酸等の添加剤は、高濃度、長時間、銅と接触することにより、銅と反応し、銅を腐食させる。
【0012】
一方、上記燃料供給装置は、燃料ポンプが燃料タンクの内部底面に設けられており、燃料ポンプが燃料内に長時間浸漬されている。燃料ポンプはモ−タ機構を備え、モータ機構は巻き線、半田付け部等、銅を使用した部分を不可避的に有している。そして、燃料ポンプが燃料タンクの内部底面に設けられている構造においては、燃料がハウジング等を経てモータ室に侵入することを防止することが困難である。
【0013】
すなわち、燃料ポンプのモータ機構が燃料に長時間浸漬することを防ぐことができれば、燃料ポンプにおけるモータ機構の巻き線等の銅が腐食することを防止することができ、より優れた耐久性を発揮することができる。発明者らはかかる要因解明に基づき、以下の本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の燃料供給装置は、ジメチルエーテルと、銅と反応する添加剤とを含む燃料を貯留する燃料タンクと、
該燃料タンクに設けられ、該燃料を圧送する燃料ポンプとを備え、
【0015】
該燃料ポンプは、モータ室と、該モータ室に連通するポンプ室と、該ポンプ室の吸入域と連通する吸入ポートと、該ポンプ室の吐出域と連通する吐出ポートとが形成されたハウジングと、
該モータ室及び該ポンプ室を跨いで延在し、該ハウジングに回転可能に軸支された駆動軸と、
該モータ室に配設され、該駆動軸を回転駆動するモータ機構と、
該ポンプ室内に配設され、該駆動軸の回転駆動によって該燃料のポンプ作用を行うポンプ機構とを備えたものであり、
【0016】
該ハウジングは該モータ機構が該燃料タンクの上方に位置するように該燃料タンクに固定され、
該ハウジングには、該吸入ポートと該燃料タンク内の液相部分とを連通する吸入通路が形成されているとともに、該吐出ポートと連通し、該モータ室を取り囲む吐出室が形成されていることを特徴とする。
【0017】
本発明の燃料供給装置では、モータ機構が燃料内に浸漬されず、燃料タンク内の燃料の液圧によって燃料がモータ室に侵入することをほぼ完全に防止することができるため、燃料ポンプにおけるモータ機構の巻き線等の銅が腐食することがない。
【0018】
また、この燃料供給装置では、吸入ポートと燃料タンク内の液相部分とを連通する吸入通路をハウジングに形成することにより、吸入ポートと液相部分との連通を実現している。さらに、モータ室を取り囲む吐出室をハウジングに形成し、この吐出室を吐出ポートと連通させているため、発熱するモータ機構を吐出室内の燃料で冷却することもできる。
【0019】
したがって、本発明の燃料供給装置は、従来の機能を維持しつつ、より優れた耐久性を発揮することができる。
【0020】
燃料ポンプのハウジングには、モータ室を燃料タンク内の気相部分に連通する戻し通路が形成されていることが好ましい。本発明の燃料供給装置は、モータ機構によって駆動軸を回転駆動し、駆動軸によってポンプ機構を作動させることから、モータ室とポンプ室とは、モータ室が上方ではあるが、連通している。このため、吐出域の高圧、燃料供給装置に作用する振動等により、ポンプ室内の燃料がモータ室内に侵入することがある。このように侵入した燃料は、戻し通路によって燃料タンクの気相部分に還流されることとなる。このため、この場合にはモータ機構の巻き線等の腐食をより確実に防止できる。
【0021】
戻し通路には、気相部分からモータ室への燃料の逆流を防止する逆止弁が設けられていることが好ましい。例えば、燃料供給装置が車両に搭載される場合、燃料供給装置に振動が作用し、燃料タンク内の燃料は気相部分、戻し通路を経てモータ室に逆流するおそれがある。この燃料は戻し通路に設けられた逆止弁によって逆流が防止される。このため、この場合にもモータ機構の巻き線等の腐食をより確実に防止できる。
【0022】
モータ室とポンプ室とはシール部材によって封止されていることが好ましい。上記のように、モータ室とポンプ室とは連通しているが、これらがシール部材によって封止されておれば、ポンプ室内の燃料がモータ室内に侵入することを効果的に防止することができる。このため、この場合にもモータ機構の巻き線等の腐食をより確実に防止できる。
【0023】
吐出室の下流側の供給路には、より下流への燃料の供給を制限する開閉弁が設けられ得る。燃料被供給装置の運転状況等に応じ、開閉弁を閉じて燃料の供給を制限するためである。この場合、吸入通路には、ポンプ室から液相部分への燃料の逆流を防止する逆止弁が設けられていることが好ましい。燃料の圧送を行わずに開閉弁を開いた場合、供給路、吐出室、ポンプ室、吸入ポート及び吸入通路内に充填していた燃料が燃料タンクの液相部分まで逆流してしまうと、再圧送時、燃料を燃料被供給装置に供給するまでに長時間を要することとなってしまう。逆止弁が液相部分への燃料の逆流を防止すれば、再圧送時、吸入通路内の燃料が燃料タンク内の燃料に優先して供給路に供給されるため、燃料を燃料被供給装置にすぐに供給することができる。
【0024】
ハウジングは、上端の吸入ポートから下方に延びる吸入管と、液相部分の最低液位より高さが高い底面を有して吸入管を容器状に覆い、逆止弁によって常態で閉止される吸入口が底面に貫設された吸入タンクとを有することができる。この場合、燃料の圧送を行わずに開閉弁を開いた場合、逆止弁が吸入タンクの底面の吸入口を閉じているため、開閉弁より上流側の供給路、吐出ポート、ポンプ室、吸入ポート、吸入通路内に充填していた燃料が吸入タンクに貯留される。再圧送時、吸入タンク内の燃料が燃料タンク内の燃料に優先して吸入管を経て吸入ポートに吸入される。この際、吸入タンクの底面は燃料タンクの最低液位より高さが高いため、燃料を燃料被供給装置に確実に早く供給することができる。なお、続けて燃料を圧送する場合、逆止弁はポンプ作用によって吸入口を開いているため、常態として燃料タンク内の燃料が吸入タンクの吸入口、吸入管を経て吸入ポートに吸入される。
【0025】
吸入タンク内は抜き通路により気相部分に連通していることが好ましい。吸入タンクに還流してくる燃料が吸入タンクの容量を超えた場合、その燃料を抜き通路により気相部分を介して液相部分に戻すためである。
【0026】
ポンプ室はモータ室より下方でモータ室に上下の軸方向で連通し得る。この場合、ポンプ機構は、ポンプ室内に配設され、駆動軸と一体回転可能な駆動ギヤと、ポンプ室を跨いで延在する従動軸と、ポンプ室内に配設され、従動軸と一体回転可能な従動ギヤとからなり得る。このギヤポンプ機構は、容積型であり、上記作用効果を生じさせる。ポンプ機構がギヤポンプ機構であれば、ギヤポンプ機構自体の軸長が短いため、燃料タンクの上方に突出する部分を小さくすることが可能である。なお、本発明の燃料供給装置において、ポンプ機構としては、ピストンポンプ機構、スクロール式ポンプ機構、その他の一般的なものを採用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明を具体化した実施例1〜5を図面を参照しつつ説明する。
【実施例1】
【0028】
実施例1の燃料供給装置は、車両用の動力機関に適用されるものである。図1に示すように、この燃料供給装置は、燃料10を貯留する燃料タンク12と、この燃料タンク12の上面に設けられ、燃料10を圧送する燃料ポンプ14とを備えている。燃料10としては、ジメチルエーテルと、潤滑のためのカルボン酸等の添加剤とを含むものを採用している。燃料タンク12内は、燃料10からなる液相部分と、気相部分とに区別される。
【0029】
燃料ポンプ14は、モータケース20、センターブロック22、アンダーブロック24、取付リング26及び吸入管28からなるハウジングを備えている。
【0030】
モータケース20内には、上下で略円柱状の空間をなすモータ室30がセンターブロック22とともに形成されているとともに、モータ室30を取り囲む環状の吐出室32がセンターブロック22とともに形成されている。モータケース20の外周には取付フランジ20aが突設され、取付フランジ20aには上下に貫通するボルト穴20bが形成されている。
【0031】
モータケース20の下端にはセンターブロック22が設けられている。センターブロック22には、上下の軸方向に延びる主軸孔22aが貫設されているとともに、主軸孔22aと平行に副軸孔22bが下面から上方に向かって凹設されている。
【0032】
また、センターブロック22には、主軸孔22aと副軸孔22bとの間において、後述のポンプ室24pの吐出域から下面に開く吐出ポート22cが凹設されている。この吐出ポート22cは、センターブロック22内を貫設する吐出通路22dによって吐出室32に連通している。
【0033】
さらに、センターブロック22にはモータ室30から外周面まで延びる戻し通路22fが形成されている。センターブロック22の外周にも取付フランジ22gが突設され、取付フランジ22gにも上下に貫通するボルト穴22hが形成されている。モータケース20とセンターブロック22とは、両者間に適数個のOリングが設けられた状態でボルト穴20b、22hに挿通されるボルト34によって一体化されている。
【0034】
センターブロック22の下端にアンダーブロック24が設けられている。アンダーブロック24には、主軸孔22aと同軸に駆動ギヤ室24a及び主軸孔24bが上面から下方に向かって凹設されているとともに、副軸孔22bと同軸に従動ギヤ室24c及び副軸孔24dが上面から下方に向かって凹設されている。駆動ギヤ室24a及び従動ギヤ室24cがポンプ室24pである。
【0035】
また、アンダーブロック24には、主軸孔24bと副軸孔24dとの間において、ポンプ室24pの吸入域から下面に開く吸入ポート24eが貫設されている。アンダーブロック24は、センターブロック22との間にOリングが設けられた状態で図示しないボルトによってセンターブロック22と一体化されている。
【0036】
取付リング26は、燃料タンク12に嵌合する凹部26aを有するとともに、ボルト34を螺合する雌ねじ26bを有している。モータケース20及びセンターブロック22はこの取付リング26の雌ねじ26bに締結されるボルト34によって燃料タンク12の上面に固定されている。取付リング26とセンターブロック22との間にもOリングが介在されている。また、取付リング26は戻し通路22fを燃料タンク12の気相部分に連通する凹部26cも凹設されている。
【0037】
吸入管28は軸方向に延びる管状のものであり、この吸入管28の内部が吸入通路となっている。この吸入管28は、アンダーブロック24の吸入ポート24eに嵌合され、下方に延びて下端が燃料10内に浸かっている。また、アンダーブロック24の下面には吸入管28を覆う金属メッシュからなるフィルタ50が設けられている。
【0038】
また、モータ室30並びに駆動ギヤ室24a及び主軸孔22a、24bを跨ぐように駆動軸36が上下に延在しており、この駆動軸36はモータケース20、センターブロック22及びアンダーブロック24に軸受装置を介して回転可能に軸支されている。
【0039】
駆動軸36を一体に含み、巻き線、半田付け部等、銅を使用した部分を不可避的に有するモータ機構38は、燃料タンク12の上方に位置するように、モータ室30に配設されている。なお、ここでいう燃料タンク12の上方とは、燃料タンク12の液相部分が最も高い液面よりもモータ機構38が上に存在していることを意味する。本実施例では、モータ機構38が燃料タンク12の上面よりも上に位置している。
【0040】
また、駆動ギヤ室24a内には、駆動軸36が挿通されて駆動軸36と一体回転可能な駆動ギヤ40が配設されている。また、従動ギヤ室24c及び副軸孔22b、24dを跨ぐように従動軸42が上下に延在しており、この従動軸42はセンターブロック22及びアンダーブロック24に軸受装置を介して回転可能に軸支されている。従動ギヤ室24c内には、従動軸42が挿通されて従動軸42と一体回転可能な従動ギヤ44が配設されている。こうして、ギヤポンプ機構52がポンプ室24p内に配設されている。
【0041】
吐出室32はモータケース20の側面から下流側の供給路46に連通しており、供給路46には、より下流への燃料の供給を制限する開閉弁48が設けられている。供給路46のさらに下流側には燃料噴射装置が設けられている。
【0042】
このように構成された燃料供給装置は、軸長が短いギヤポンプ機構52を採用していることから、燃料ポンプ14を燃料タンク12の上面に設けていても、燃料タンク12の上方に突出する部分を小さくし、車両への搭載性を上げている。
【0043】
そして、燃料ポンプ14において、モータ機構38が駆動軸36を回転駆動することにより、ギヤポンプ機構52が作動する。これにより、燃料タンク12内の液相部分の燃料10は、吸入管28から吸入ポート24eを経てポンプ室24pの吸入域に吸入され、吐出域から吐出ポート22c、吐出通路22d及び吐出室32を経て供給路46に圧送される。供給路46に圧送された燃料10は開閉弁48を経て燃料噴射装置に供給される。
【0044】
この間、この燃料供給装置では、モータ機構38が燃料タンク12の上方に位置しているため、モータ機構38が燃料10内に浸漬されず、燃料タンク12内の燃料10の液圧によって燃料10がモータ室30に侵入することをほぼ完全に防止することができるため、燃料ポンプ14におけるモータ機構38の巻き線等の銅が腐食することがない。
【0045】
また、この燃料供給装置では、吸入管28内の吸入通路により、吸入ポート24eと燃料タンク12内の液相部分とを連通している。さらに、モータ室30を取り囲む吐出室32をモ−タケース20に形成し、この吐出室32を吐出ポート22cと連通させているため、発熱するモータ機構38を吐出室32内の燃料10で冷却することもできる。
【0046】
したがって、この燃料供給装置は、従来の機能を維持しつつ、より優れた耐久性を発揮することができる。
【0047】
また、この燃料供給装置では、吐出域の高圧、振動等により、ポンプ室24p内の燃料10が主軸孔22a内の軸受装置を経てモータ室30内に侵入することがある。しかし、この燃料供給装置では、モータ室30を気相部分に連通する戻し通路22fを有するため、このようにモータ室30に侵入した燃料10は、戻し通路22fによって燃料タンク12の気相部分に還流される。このため、モータ機構38の巻き線等が燃料10に長時間浸漬されることはなく、モータ機構38の巻き線等の腐食はより確実に防止されている。
【0048】
さらに、この燃料供給装置では、フィルタ50を採用しているため、燃料ポンプ12内に貯留される燃料10に異物が混入していても、その異物がポンプ室24pに混入することを防止することができる。これにより、燃料ポンプ14や燃料噴射装置の異常運転を防止している。
【実施例2】
【0049】
実施例2の燃料供給装置は、図2及び図3に示すように、実施例1の燃料供給装置における戻し通路22fに逆止弁22iを設け、逆止弁22iによって燃料タンク12の気相部分からモータ室30への燃料10の逆流を防止するものである。逆止弁22iは、弁体22lと、この弁体22lを閉止方向に付勢する押圧バネ22kとからなる。他の構成は実施例1と同一である。
【0050】
この燃料供給装置が例えば車両に搭載される場合、燃料供給装置に振動が作用し、燃料タンク12内の燃料10が気相部分、戻し通路22fを経てモータ室30に逆流しようとしても、その燃料10は逆止弁22iによって逆流が防止される。このため、この場合にもモータ機構38の巻き線等の腐食をより確実に防止できる。他の作用効果は実施例1と同一である。
【実施例3】
【0051】
実施例3の燃料供給装置は、図4に示すように、実施例1の燃料供給装置における主軸孔22a内にシール部材としてのリップシール22jを設け、このリップシール22jによってモータ室30とポンプ室24pとを封止したものである。他の構成は実施例1と同一である。
【0052】
この燃料供給装置では、ポンプ室24p内の燃料10がモータ室30内に侵入することを効果的に防止することができる。このため、この場合にもモータ機構38の巻き線等の腐食をより確実に防止できる。他の作用効果は実施例1と同一である。
【実施例4】
【0053】
実施例4の燃料供給装置は、図5に示すように、実施例3の燃料供給装置における吸入管28に代え、他の吸入管54を採用したものである。
【0054】
吸入管54の下端には内径が大径となったバネ室54aが形成されている。吸入管54の内部が吸入通路であり、この吸入通路は開閉弁48より上流側の燃料10を貯留可能である。
【0055】
バネ室54aは下端の通孔54bによって液相部分に連通している。バネ室54a内には、軸方向に付勢力をもつ押圧バネ56aが収納されているとともに、押圧バネ56aによって通孔54bを内側から閉止可能な弁体56bが設けられている。押圧バネ56a及び弁体56bがポンプ室24pから液相部分への燃料10の逆流を防止する逆止弁56を構成している。他の構成は実施例3と同一である。
【0056】
この燃料供給装置では、燃料10の圧送を行わずに開閉弁48を開いた場合、逆止弁56が吸入管54の通孔54bを閉じているため、開閉弁48より上流側の供給路46、吐出室32、吐出通路22d、ポンプ室24p、吸入ポート22c及び吸入通路内に充填していた燃料10が吸入管54の下端の逆止弁56で堰き止められ、燃料ポンプ14内で貯留される。
【0057】
このため、再圧送時、燃料ポンプ14内の燃料10が燃料タンク12内の燃料10に優先して供給路46に供給されるため、燃料10を燃料噴射装置にすぐに供給することができる。なお、再圧送時には、ポンプ作用によって吸入管54内の燃料10が押圧バネ54bを引き上げ、通孔54bは開かれる。他の作用効果は実施例3と同一である。
【実施例5】
【0058】
実施例5の燃料供給装置は、図6に示すように、実施例3の燃料供給装置における吸入管28に代えて他の吸入管56を採用するとともに、フィルタ50に代えて吸入タンク58を採用したものである。
【0059】
吸入管56の外周面の下部にはフランジ56aが形成されている。また、吸入管56の外周面には、フランジ56aのより下部において、下端の通孔56bとは異なる通孔56cが形成されている。
【0060】
吸入タンク58は吸入管56を容器状に覆っている。吸入タンク58の底面は、燃料タンク12の液相部分の最低液位より高さが高く設定されている。また、吸入タンク58の底面には最低液位でも液相部分と連通する吸入口58aが形成されている。そして、吸入タンク58は、開閉弁48より上流側の燃料10を貯留可能である。
【0061】
吸入管56の回りには、フランジ56aを座面とし、軸方向に付勢力をもつ押圧バネ60aが設けられている。また、吸入管56の下端には、押圧バネ60aによって吸入口58aを吸入タンク58の内側から閉止可能な弁体60bが設けられている。押圧バネ60a及び弁体60bがポンプ室24pから液相部分への燃料10の逆流を防止する逆止弁60を構成している。
【0062】
また、アンダーブロック24には抜き通路24fが形成されている。抜き通路24fは、アンダーブロック24の下面からセンターブロック22に形成された戻し通路22fに連通しており、吸入タンク58の上端を燃料タンク12の気相部分に連通させている。他の構成は実施例1と同一である。
【0063】
この燃料供給装置では、燃料10の圧送を行わずに開閉弁48を開いた場合、逆止弁60が吸入タンク58の底面の吸入口58aを閉じているため、開閉弁48より上流側の供給路46、吐出室32、吐出通路22d、吐出ポート22c、ポンプ室24p、吸入ポート24e、吸入管56内に充填していた燃料10が吸入タンク58に貯留される。
【0064】
この際、吸入タンク58は、開閉弁48より上流側の全ての燃料10を貯留可能である。また、開閉弁48を閉じずに、モータ機構38を逆回転させること等により、開閉弁48より下流側の燃料10が還流してくる場合には、吸入タンク58の容量を超えた燃料10を抜き通路24f及び戻し通路によって燃料タンク12に還流する。
【0065】
再圧送時、吸入タンク58内の燃料10が燃料タンク12内の燃料10に優先して吸入管56を経て吸入ポート24eに吸入される。この際、吸入タンク58の底面は燃料タンク12の最低液位より高さが低いため、燃料10を燃料噴射装置に確実に早く供給することができる。なお、続けて燃料10を圧送する場合、逆止弁60はポンプ作用によって吸入口58aを開いているため、常態として燃料タンク12内の燃料10が吸入タンク58の吸入口58a、吸入管56の通孔56b、56cを経て吸入ポート24eに吸入される。弁体60aが通孔56bに着座してしまった場合には、通孔56cから吸入管56内に燃料10が吸入される。他の作用効果は実施例1と同一である。
【0066】
以上において、本発明を実施例1〜5に即して説明したが、本発明は上記実施例1〜5に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、車両用の動力機関等に燃料を供給するためのに燃料供給装置に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】実施例1の燃料供給装置の断面図である。
【図2】実施例2の燃料供給装置の断面図である。
【図3】実施例2の燃料供給装置の一部拡大断面図である。
【図4】実施例3の燃料供給装置の断面図である。
【図5】実施例4の燃料供給装置の断面図である。
【図6】実施例5の燃料供給装置の断面図である。
【符号の説明】
【0069】
10…燃料
12…燃料タンク
14…燃料ポンプ
30…モータ室
24p…ポンプ室
24e…吸入ポート
22c…吐出ポート
20、22、24、26…ハウジング(20…モータケース、22…センターブロック、24…アンダーブロック、26…取付リング)
36…駆動軸
38…モータ機構
52…ポンプ機構
28、54、56…吸入管(吸入通路)
32…吐出室
22f…戻し通路
22i…逆止弁
22j…リップシール(シール部材)
50…フィルタ
46…供給路
48…開閉弁
56、60…逆止弁
58a…吸入口
58…吸入タンク
24f…抜き通路
24b…駆動ギヤ
42…従動軸
44…従動ギヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジメチルエーテルと、銅と反応する添加剤とを含む燃料を貯留する燃料タンクと、
該燃料タンクに設けられ、該燃料を圧送する燃料ポンプとを備え、
該燃料ポンプは、モータ室と、該モータ室に連通するポンプ室と、該ポンプ室の吸入域と連通する吸入ポートと、該ポンプ室の吐出域と連通する吐出ポートとが形成されたハウジングと、
該モータ室及び該ポンプ室を跨いで延在し、該ハウジングに回転可能に軸支された駆動軸と、
該モータ室に配設され、該駆動軸を回転駆動するモータ機構と、
該ポンプ室内に配設され、該駆動軸の回転駆動によって該燃料のポンプ作用を行うポンプ機構とを備えたものであり、
該ハウジングは該モータ機構が該燃料タンクの上方に位置するように該燃料タンクに固定され、
該ハウジングには、該吸入ポートと該燃料タンク内の液相部分とを連通する吸入通路が形成されているとともに、該吐出ポートと連通し、該モータ室を取り囲む吐出室が形成されていることを特徴とする燃料供給装置。
【請求項2】
前記ハウジングには、前記モータ室を前記燃料タンク内の気相部分に連通する戻し通路が形成されている請求項1記載の燃料供給装置。
【請求項3】
前記戻し通路には、前記気相部分から前記モータ室への前記燃料の逆流を防止する逆止弁が設けられている請求項2記載の燃料供給装置。
【請求項4】
前記モータ室と前記ポンプ室とはシール部材によって封止されている請求項1記載の燃料供給装置。
【請求項5】
前記吐出室の下流側の供給路には、より下流への前記燃料の供給を制限する開閉弁が設けられ、前記吸入通路には、前記ポンプ室から前記液相部分への該燃料の逆流を防止する逆止弁が設けられている請求項1記載の燃料供給装置。
【請求項6】
前記ハウジングは、上端の前記吸入ポートから下方に延びる吸入管と、前記液相部分の最低液位より高さが高い底面を有して該吸入管を容器状に覆い、前記逆止弁によって常態で閉止される吸入口が該底面に貫設された吸入タンクとを有する請求項5記載の燃料供給装置。
【請求項7】
前記吸入タンク内は抜き通路により前記気相部分に連通している請求項6記載の燃料供給装置。
【請求項8】
前記ポンプ室は前記モータ室より下方で該モータ室に上下の軸方向で連通し、
前記ポンプ機構は、前記ポンプ室内に配設され、前記駆動軸と一体回転可能な駆動ギヤと、前記ポンプ室を跨いで延在する従動軸と、該ポンプ室内に配設され、該従動軸と一体回転可能な従動ギヤとからなる請求項1記載の燃料供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−138518(P2008−138518A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−305812(P2006−305812)
【出願日】平成18年11月10日(2006.11.10)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】