説明

燃料供給装置

【課題】燃料カット状態からの復帰時に燃料ポンプにより燃料を迅速かつ確実に圧送することのできる燃料供給装置を提供する。
【解決手段】エンジン10の燃料噴射実行時にインジェクタ31に供給配管Lを通し燃料供給する燃料供給状態とインジェクタ31への燃料供給を停止する供給停止状態とに切替え可能な燃料供給機構40と、供給配管Lを下流側で開放して燃料の一部を燃料タンク41内に排出させるリリーフ手段48と、燃料供給機構40およびリリーフ手段48の作動を制御するECU70と、を備えた燃料供給装置であって、ECU70は、エンジン回転中にインジェクタ31による燃料噴射が一時停止される燃料カット状態となるとき、供給配管Lを通した燃料の供給圧力および供給流量のうち少なくとも一方を増加させるよう燃料供給機構40を制御するとともに、燃料の一部を供給配管Lから燃料タンク41内に排出させるようリリーフ手段48を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料供給装置に関し、特に燃料タンク内に貯留された燃料を燃料ポンプによって燃料噴射弁に供給するとともにその供給経路中における燃料ベーパの発生防止および排出促進を図るように構成された燃料供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両等に搭載される内燃機関の燃料供給装置においては、一般に、燃料タンク内の燃料を汲み上げる燃料ポンプからインジェクタ(燃料噴射弁)への燃料の供給圧力をプレッシャレギュレータやリリーフ弁によって調整し、燃料供給配管等が高温になってもその内部に燃料ベーパが生じない程度に燃料の圧力(以下、燃圧という)を高める一方で、車両の高温ソーク時等にあってもインジェクタの油密もれが生じない程度にその燃圧を抑えるようになっている。
【0003】
この種の燃料供給装置としては、例えば燃料ポンプからの燃料を燃料噴射弁に供給する燃料配管内の圧力が目標燃圧に近づくように燃料ポンプを制御する一方、燃料噴射弁による燃料噴射が停止されている燃料カット状態で、燃料配管内の圧力が目標燃圧よりも高くなると、リリーフ弁を開操作して燃料配管内の燃料を燃料タンク内に戻すようにして、エンジンが高温となっている条件下であっても燃圧が目標燃圧よりも上昇することを防止できるようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、スタートスイッチがON操作されてから所定期間の間は、燃料供給カットバルブを閉弁させるとともに、高圧側の燃料配管に接続するベーパ処理バルブを開弁させ、燃料圧力が基準圧力以上になるまでその状態を保持して、配管内燃料ベーパ量が十分に減少し燃圧が上昇し始めるまでは配管内の燃料ベーパの排出処理を実行するようにしたものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
さらに、エンジンの始動に際し、高圧燃料ポンプの駆動に先立って低圧燃料ポンプを作動させ、低圧燃料ポンプから吐出される燃料を停止中の高圧燃料ポンプ内を通しコモンレールに供給する一方で、そのコモンレールに接続されたベーパ排出弁を開弁させてコモンレール内を燃料タンク側に開放し、コモンレール内に燃料ベーパが滞留していてもそのベーパを燃料と共に燃料タンク内に排出させるようにして、高圧燃料ポンプ駆動によるコモンレール内の昇圧時間の短縮を図ったものが知られている(例えば、特許文献3参照)。
【0006】
また、ECU(電子制御ユニット)からのデューティ制御信号によって燃料ポンプの通電を制御し、エンジンの始動時に燃料ポンプを大電流で駆動するとともに、エンジン冷却水温が高いほどその大電流の保持時間を長くするようにして、燃料供給装置におけるベーパロックの防止を図ったものも知られている(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−071132号公報
【特許文献2】特開平10−131820号公報
【特許文献3】特開平11−257177号公報
【特許文献4】特開2007−126986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した従来のいずれの燃料供給装置にあっても、次のような理由により、特に燃料カット状態からの復帰時およびその直後に燃料ポンプからインジェクタ側に燃料を圧送できなくなる場合があった。
【0009】
すなわち、燃料カット状態が比較的長く続くと、エンジンコンパートメント内に限らず、エンジンや排気装置等の高温部からの熱がデリバリーパイプや燃料配管類、燃料ポンプ等に受熱され、それら内部の燃料、例えばガソリン(特にアルコール含有燃料)の温度が上昇する状態が長くなる。そのため、燃料供給装置内の燃料がその低沸点成分の沸点(低沸点の燃料成分の液体状態での蒸気圧が外圧に等しくなる温度)に達してしまうかそれに近い状態になることがあり、その場合、燃料ベーパが多量に発生してしまうために、燃料を加圧・圧送するポンプが作動してもいわゆる空汲み状態となることがある。
【0010】
また、電磁リリーフ弁を開弁させて燃料ベーパを排出させる場合でも、そのベーパ発生量が多量であるときには、燃料ベーパを完全に排出しきれない段階で、電磁リリーフ弁がその信頼性の要求(断線の可能性等を抑える必要性)から設定される連続通電の上限時間に達してしまい、電磁リリーフ弁の通電が停止されてしまう。
【0011】
本発明は、上述のような従来の問題を解消すべくなされたものであり、燃料カット状態からの復帰時に燃料ポンプにより燃料を迅速かつ確実に圧送することのできる燃料供給装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る燃料供給装置は、上記課題の解決のため、(1)内燃機関の燃料噴射弁により燃料噴射が実行されるとき該燃料噴射弁に供給配管を通し燃料を供給する燃料供給状態と前記燃料噴射弁への前記燃料の供給を停止する供給停止状態とに切替え可能な燃料供給手段と、前記供給配管の下流側部分に接続され、前記供給配管を下流側で開放して前記燃料の一部を前記供給配管の外部に排出させることができるリリーフ手段と、前記燃料供給手段および前記リリーフ手段の作動を制御する制御手段と、を備えた燃料供給装置であって、前記制御手段は、前記内燃機関の回転中に前記燃料噴射弁による前記燃料噴射が一時停止される状態となるとき、前記供給配管を通した前記燃料の供給圧力および前記供給配管を通した前記燃料の供給流量のうち少なくとも一方を増加させるよう前記燃料供給手段を制御するとともに、前記燃料の一部を前記供給配管の外部に排出させるよう前記リリーフ手段を制御することを特徴とする。
【0013】
この構成により、燃料カット状態で供給配管等が高温部からの熱を受熱したとしても、その供給配管を通した燃料の供給圧力および供給流量のうち少なくとも一方が燃料供給状態より増加するよう制御されるとともに、リリーフ手段が供給配管の下流側部分で燃料を供給配管の外部に排出させるよう制御されることになり、燃料カット状態が長く続いたとしても供給配管内の燃料の温度が上昇し難くなるとともに燃料ベーパが発生し難くなる。したがって、燃料カット状態からの復帰時に燃料ポンプにより燃料を迅速かつ確実に圧送できる燃料供給装置となる。なお、ここにいう内燃機関の回転中に燃料噴射弁による燃料噴射が一時停止される状態とは、多気筒内燃機関の場合には、同一の供給配管に接続する複数の燃料噴射弁のすべてについて燃料噴射が一時停止される燃料カット状態であり、燃料系統が1系統であればすべての燃料噴射弁の燃料噴射が停止される状態であるが、燃料系統が複数系統であれば、1系統(同一系統)中のすべての燃料噴射弁の燃料噴射が停止される状態の意である。
【0014】
上記(1)に記載の燃料供給装置においては、(2)前記燃料供給手段が、前記供給配管を通した前記燃料の供給圧力および前記供給配管を通した前記燃料の供給流量のうち少なくとも一方を増加させることができる可変燃料ポンプを有していることが望ましい。
【0015】
この構成により、可変燃料ポンプが供給配管を通した燃料の供給圧力および供給流量のうち少なくとも一方を容易にかつ迅速に変更できることになり、燃料カット状態における供給配管内の燃料温度の上昇および燃料ベーパの発生を有効に抑制できる。
【0016】
上記(2)に記載の燃料供給装置においては、(3)前記可変燃料ポンプが、燃料タンク内の燃料を前記供給配管を通して給送するフィードポンプであるのが好ましい。
【0017】
この場合、供給配管の上流側から燃料噴射弁までの燃料供給経路の全域で燃料温度の上昇および燃料ベーパの発生を有効に抑制できる。
【0018】
上記(3)に記載の燃料供給装置においては、(4)前記燃料供給手段が、非作動時に前記フィードポンプから給送される燃料を前記燃料噴射弁側に通過させるよう前記供給配管の途中に配置され、作動時には前記フィードポンプから給送される燃料を吸入し前記フィードポンプの吐出圧より高圧に加圧して前記燃料噴射弁側に吐出する高圧燃料ポンプを有し、前記燃料供給手段が前記燃料噴射の一時停止状態に切り替えられるときに前記高圧燃料ポンプが前記非作動の状態となるのが好ましい。
【0019】
この構成により、高圧燃料ポンプが停止する燃料カット状態において、フィードポンプはその供給配管を通した燃料の供給圧力および供給流量のうち少なくとも一方を増加させ、リリーフ手段は供給配管の下流側部分で燃料を供給配管の外部に排出させる。したがって、燃料カット状態が長く続いたとしても供給配管内の燃料の温度が上昇し難くなるとともに、燃料ベーパが発生し難くなり、燃料カット状態から通常運転状態に復帰するときに、高圧燃料ポンプによる高圧燃料の圧送を迅速かつ確実に再開することができる。
【0020】
上記(1)〜(4)のいずれに記載の燃料供給装置においても、(5)前記燃料供給手段が、前記供給配管に接続され、前記供給配管を通した前記燃料の供給圧力を変化させるよう設定圧を切り替えることができる燃料圧力調整手段を有しているものであってもよい。この構成により、供給配管内に燃料ベーパがより発生し難くなるとともに、燃料ベーパが発生しても燃料タンク内に迅速に排出可能となる。
【0021】
上記(1)〜(5)のいずれに記載の燃料供給装置においても、(6)前記リリーフ手段は、前記燃料の一部を前記供給配管の外部に排出させるよう前記供給配管を下流側で開放するときに通電される電磁駆動式のものであり、前記制御手段は、前記燃料供給手段が前記燃料噴射の一時停止状態に切り替えられている時間の長さに応じて、前記リリーフ手段の前記電磁駆動による作動時期を設定するのが好ましい。
【0022】
この構成により、燃料供給手段が燃料カット状態に切り替えられている時間が長くなると、リリーフ手段を例えば予め設定された連続作動時間以下となるように必要な停止時間を挟んで間欠的にかつ周期的に作動させることができる。したがって、燃料ベーパの発生量が多くなったとしても、電磁駆動式のリリーフ手段を、その信頼性を低下させることなく、供給配管内の燃料ベーパを燃料タンク内に十分に排出できるまで作動させることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、内燃機関の回転中に燃料噴射が一時停止されるとき、燃料供給手段によりその供給配管を通した燃料の供給圧力および供給流量のうち少なくとも一方を燃料供給状態より増加させるとともに、リリーフ手段により供給配管の下流側部分で燃料を供給配管の外部に排出させるようにしているので、供給配管等が高温部からの熱を受熱するような燃料カット状態が長く続いたとしても、供給配管内の燃料の温度上昇および燃料ベーパの発生を有効に抑制することができ、燃料カット状態からの復帰時に燃料ポンプにより燃料を迅速かつ確実に圧送できる燃料供給装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態に係る燃料供給装置の概略構成図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る燃料供給装置を装備した内燃機関とその燃料供給装置の制御系を含む構成図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る燃料供給装置のフィードポンプの概略構成図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る燃料供給装置の高圧燃料ポンプの概略構成を示す断面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る燃料供給装置におけるエンジン始動時の燃料供給制御の内容を示すタイミングチャートである。
【図6】本発明の一実施形態に係る燃料供給装置における燃料カット前後の燃料供給制御の内容を示すタイミングチャートである。
【図7】本発明の一実施形態に係る燃料供給装置において燃料カット状態が長い時間にわたって継続されるときの燃料供給制御の内容を示すタイミングチャートである。
【図8】本発明の一実施形態に係る燃料供給装置における燃料圧力調整手段の他の態様を示すその概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0026】
図1〜図4は、本発明の一実施形態に係る燃料供給装置の概略構成を示している。
【0027】
本実施形態の内燃機関の燃料供給装置は、例えば図1に示す多気筒エンジン10に装備されており、このエンジン10は自動車(車両)に搭載されている。
【0028】
まず、その構成について説明する。
【0029】
図1に示すエンジン10は、そのシリンダブロックを含む機関本体11に複数の気筒11a、例えば#1,#2,#3,#4で示す4つの気筒11aを直列(インライン)に配置した内燃機関であり、図2に示すように、各気筒11aにはピストン12が収納されて燃焼室13が画成されている。各気筒11a内のピストン12には、コネクティングロッド14を介してクランク軸15が連結されている。また、複数の気筒11aの燃焼室13の上部側には、それぞれ吸気弁16および排気弁17が設けられており、これら吸気弁16および排気弁17が所定のタイミングで開閉するように図示しない動弁機構が装備されている。さらに、エンジン10には、燃焼室13内に露出する点火プラグ18を有する点火装置(詳細図示せず)と、ピストン12の変位および吸気弁16の開弁動作に応じて気筒11a内に空気を吸入させる吸気装置21と、ピストン12の変位および排気弁17の開弁動作に応じて気筒11aから排気ガスを排出させる排気装置26とが装備されるとともに、本実施形態の燃料供給装置30が装備されている。なお、エンジン10のピストンクランク機構や動弁機構、点火装置等については、公知のものと同様に構成され得るので、ここでは詳述しない。
【0030】
吸気装置21は、エアクリーナ22が設けられた上流側吸気通路部21aと複数の気筒11aの吸気口に接続する複数の下流側吸気通路部21bの間にサージタンク25を形成するとともに、エアクリーナ22とサージタンク25の間にエアフローメータ23およびスロットルバルブ24を有している。ここで、エアクリーナ22には図示しないフィルタエレメントが収納されており、このエアクリーナ22で粉塵等を除去した空気が上流側吸気通路部21aに取り込まれるようになっている。また、下流側吸気通路部21bは、機関本体11の状部を構成するシリンダヘッド11hとこれに締結・固定された吸気マニホールド(詳細図示せず)とにより形成されている。
【0031】
排気装置26は、詳細を図示しないが、複数の気筒11aの排気口に接続する複数の上流側排気通路部26aおよびこれら複数の上流側排気通路部26aが合流した下流側排気通路部26bを有している。そして、その下流側排気通路部26bの上流部には排気浄化用の触媒装置28が、下流側排気通路部26bの下流部には公知の消音構造を有する図示しない消音器が、それぞれ装着されている。
【0032】
また、シリンダヘッド11hには、複数の気筒11aの燃焼室13内にそれぞれ露出するよう複数のインジェクタ(燃料噴射弁)31が装着されており、本実施形態の燃料供給装置は、これら複数のインジェクタ31によって複数の気筒11aの燃焼室13内に燃料噴射を行う筒内噴射用の燃料供給装置30(燃料供給手段)として構成されている。なお、燃料供給装置30は、筒内噴射用のインジェクタ31とは別にポート噴射用インジェクタを併有するデュアル噴射方式のものであってもよい。また、複数の下流側吸気通路部21b内を通って各気筒11a内に吸入される空気中にインジェクタ(燃料噴射弁)31により燃料を噴射するポート噴射式のものとして構成することもできる。
【0033】
燃料供給装置30は、気筒11a内に噴射させるインジェクタ31に加えて、複数のインジェクタ31に同等の圧力に加圧された燃料を分配供給するデリバリーパイプ32と、このデリバリーパイプ32に高圧側燃料配管33およびチェック弁34を通して加圧した燃料を供給するプランジャ型の高圧燃料ポンプ35と、鞍型の燃料タンク41から汲み上げた燃料を低圧側燃料配管36を通して高圧燃料ポンプ35に燃料を給送する電動のフィードポンプ37(燃料ポンプ)と、フィードポンプ37から高圧燃料ポンプ35に給送される低圧側燃料配管36内の燃料の圧力を予め設定されたフィード圧に調圧するプレッシャレギュレータ43(フィード圧調整手段)と、プレッシャレギュレータ43により燃料タンク41内に排出される余剰燃料により鞍型の燃料タンク41の他方側の燃料貯留部41bから燃料を汲み上げる公知のジェットポンプ44と、を含んで構成されている。
【0034】
デリバリーパイプ32には、複数の気筒11aの直列配置方向に等間隔を隔てて複数のインジェクタ31が接続されており、デリバリーパイプ32は、複数の気筒11aの直列配置方向に延びるその長手方向の一端側で、高圧側燃料配管33に接続されている。デリバリーパイプ32には、また、内部の燃料圧力を検出する燃料圧力センサ45が装着されている。なお、ここにいう配管とは、燃料通路を形成する任意の部材であって、燃料パイプに限定されるものではなく、燃料通路が貫通形成される部材や、互いの間に燃料通路が形成される複数の部材であってもよい。
【0035】
フィードポンプ37、プレッシャレギュレータ43およびジェットポンプ44は、それぞれ燃料タンク41の内部に配置されており、フィードポンプ37の吸入部には、ストレーナ42が装着されている。
【0036】
ここで、フィードポンプ37は、例えば従来のタービン式燃料ポンプ(例えば特開2006−300035号公報、特開2004−52742号公報参照)と同様に、ポンプ作動用の羽根車を有するポンプ作動部分37pと、そのポンプ作動部分37pを駆動する直流の内蔵モータ37mと、アウトレットチェック弁37vとを有している。
【0037】
このフィードポンプ37は、鞍型の燃料タンク41の一方側の燃料貯留部41aから燃料を汲み上げるとともに、汲み上げた燃料を第1の圧力レベル(例えば、1MPa未満の一定可変範囲内の圧力)に加圧して吐出することができ、さらに、その内蔵モータ37mの回転速度[rpm]を変化させることで、単位時間当りの吐出量を変化させることができようになっている。すなわち、フィードポンプ37は、後述するECU(電子制御ユニット)70によりON/OFF駆動および回転数制御されることで、その単位時間当りの吐出量を可変制御することができ、デリバリーパイプ32等の供給配管を通した前記燃料の供給圧力および供給流量のうち少なくとも一方を増加させることができる可変燃料ポンプ、例えば可変燃圧ポンプとなっている。
【0038】
プランジャ型の高圧燃料ポンプ35は、低圧側燃料配管36の下流側の端部に接続された燃料導入ポート35iおよび高圧側燃料配管33の上流側の端部に接続された燃料吐出ポート35eを有しており、低圧側燃料配管36、高圧側燃料配管33およびデリバリーパイプ32を含む供給配管L(以下、デリバリーパイプ32等の燃料配管Lという)の途中に配置されている。この高圧燃料ポンプ35は、作動時には、フィードポンプ37で加圧された燃料を燃料導入ポート35iから吸入し、その燃料を加圧して燃料吐出ポート35eから吐出するものであり、第2の圧力レベルに加圧された燃料をチェック弁34および高圧側燃料配管33を通してデリバリーパイプ32内に供給するようになっている。また、高圧燃料ポンプ35は、非作動時にはフィードポンプ37から給送される燃料をインジェクタ31側に通過させ得る構成となっている。
【0039】
具体的には、高圧燃料ポンプ35は、フィードポンプ37で加圧されプレッシャレギュレータ43により調圧されて給送される燃料を低圧側燃料配管36を通して導入する加圧室35aを有し、その加圧室35a内の燃料を第1の圧力レベルより十分に高圧な第2の圧力レベル(例えば、4〜13MPa)に加圧して、高圧側燃料配管33に吐出するようになっている。
【0040】
図4に示すように、高圧燃料ポンプ35は、加圧室35aの容積を変化させるようポンプハウジング35h内に往復摺動可能に設けられるプランジャ35pと、このプランジャ35pを駆動するよう例えばエンジン10の排気カムシャフト(図示していない)の一端に設けられたカムシャフト35sと、カムシャフト35sのカム部分Cpにより図中上下方向に昇降駆動されるフォロワリフタ35fと、このフォロワリフタ35fをカムシャフト35sのカム部分Cpに付勢する圧縮スプリング35gとを有しており、そのポンプハウジング35hとプランジャ35pの間に画成される加圧室35aが、プランジャ35pの往復移動によってその容積を変化させて、フィードポンプ37からの燃料の吸入と加圧および吐出作業とを行うようになっている。
【0041】
高圧燃料ポンプ35の加圧室35aと高圧側燃料配管33との間、すなわち、高圧燃料ポンプ35とインジェクタ31との間の高圧側燃料配管33には、高圧燃料ポンプ35側の燃料圧力がインジェクタ31側の燃料圧力に対し有意の差圧(例えば、100kPa未満)を持って大きくなると開弁し、高圧燃料ポンプ35側の圧力がインジェクタ31側の圧力に略等しいか小さくなると閉弁するばね付のチェック弁34が、高圧側燃料配管33を上流側部分33aと下流側部分33bとに区画するように設けられている。
【0042】
また、高圧燃料ポンプ35の加圧室35aの燃料導入ポート35iには、入力信号に応じ閉弁するときには高圧の逆流を阻止する逆止弁機能を有する一方、入力信号に応じ開弁するときにはプランジャ35pの変位に応じ加圧室35a内への燃料の吸入または加圧室35a内の燃料の低圧側燃料配管36への漏出を許容する電磁スピル弁38が設けられている。
【0043】
この電磁スピル弁38は、ポペット状の弁体38vと、ECU70により通電を制御されて弁体38vを電磁駆動する電磁駆動コイル38cと、弁体38vを常時開弁方向に付勢するスプリング38kとを有している。そして、弁体38vは、電磁駆動コイル38cが非励磁状態となる非駆動時にはフィードポンプ37から給送される燃料圧力を加圧室35a内に導入するよう開弁動作し、電磁駆動コイル38cが励磁状態となる駆動時に高圧燃料ポンプ35の加圧・吐出動作を可能にするよう閉弁動作するようになっている。
【0044】
具体的には、弁体38vは、加圧室35a内に位置する一端側で燃料導入ポート35iを開閉可能なポペット弁体形状をなすとともに、他端側では電磁駆動コイル38cの中心部に挿入された鉄心形状を有しており、弁体38vは、電磁駆動コイル38cに励磁電流が供給されない非励磁状態において、加圧室35a内の燃料圧力の変化に応じて開弁し得るようになっている。また、電磁スピル弁38は、電磁駆動コイル38cが励磁されるときに弁体38vにより加圧室35aの燃料導入ポート35iを閉止して、プランジャ35pの往復移動による加圧室35aの容積変化とそれに伴う加圧室35a内への燃料の吸入、加圧室35a内での加圧および加圧室35aからの吐出作業を可能にする。
【0045】
上述の燃料タンク41内のフィードポンプ37からインジェクタ31への燃料供給経路を構成するフィードポンプ37、低圧側燃料配管36、高圧燃料ポンプ35、チェック弁34、高圧側燃料配管33およびデリバリーパイプ32は、プレッシャレギュレータ43およびジェットポンプ44と共に、燃料供給機構40(燃料供給手段)を構成している。そして、燃料供給機構40は、エンジン10のインジェクタ31により燃料噴射が実行されるときそれらインジェクタ31にデリバリーパイプ32等の供給配管を通して燃料を供給する燃料供給状態と、インジェクタ31による燃料噴射が停止されるとき(エンジン10の停止時および後述する燃料カット時)にインジェクタ31への燃料供給を停止する供給停止状態とに、切替え可能になっている。
【0046】
プレッシャレギュレータ43は、その詳細を図示しないが、フィードポンプ37から吐出される燃料の圧力を開弁方向に受圧する弁体としてのダイヤフラムと、このダイヤフラムを閉弁方向に付勢する圧縮コイルばねとを有している。そして、プレッシャレギュレータ43は、そのダイヤフラムの受圧する燃料の圧力が設定圧を超えると開弁し、ダイヤフラムの受圧する燃料の圧力が設定圧に満たない間は閉弁状態を維持することで、低圧側燃料配管36内の燃料圧力(フィード燃圧)を予め設定されたフィード圧に調圧することができる圧力調整手段となっている。
【0047】
このプレッシャレギュレータ43は、低圧側燃料配管36内のフィード燃圧を設定圧に調圧するための余剰燃料の排出量(単位時間当りの排出量(L/h))が予め設定された一定排出流量の範囲内であれば、上述のように低圧側燃料配管36内のフィード燃圧を略一定の設定圧に維持することができる。しかし、その範囲を超える流量でフィードポンプ37から燃料が吐出・供給されるときには、低圧側燃料配管36内のフィード燃圧を通常の設定圧レベルに保持することはできず、フィード燃圧がフィードポンプ37の吐出量に応じ第1の圧力レベルの範囲内で通常のフィード圧を超える圧力に上昇することを許容するものとなる。
【0048】
一方、燃料供給装置30は、燃料供給機構40に加えて、デリバリーパイプ32の長手方向の他端側と燃料タンク41の間に介装されたリリーフ配管46と、このリリーフ配管46上に設けられた電磁リリーフ弁47とを備えている。
【0049】
リリーフ配管46は、電磁リリーフ弁47よりデリバリーパイプ32側の高圧側配管部分46aと、電磁リリーフ弁47より燃料タンク41側の低圧側配管部分46bとによって構成されており、これら全体として供給配管Lの下流側部分を構成している。
【0050】
電磁リリーフ弁47は、図2中ではデリバリーパイプ32から離れているが、デリバリーパイプ32に比較的近接する位置に配置されている。この電磁リリーフ弁47は、高圧側配管部分46aに導入されるデリバリーパイプ32内の燃料圧力をパイロット圧として受圧する弁体47vと、この弁体47vを常時閉弁方向に付勢するとともに、パイロット圧が予め設定された圧力に達すると弁体47vによりその開弁方向に圧縮されるスプリング47kと、弁体47vをスプリング47kの付勢力に抗してパイロット圧と同様の開弁方向に付勢することができる電磁操作部47nとを含んで構成されている。
【0051】
そして、電磁リリーフ弁47は、電磁操作部47nの非通電時においては、弁体47vに作用するパイロット圧とスプリング47kの付勢力とに応じて作動するリリーフ弁となり、デリバリーパイプ32内の燃料圧力がエンジン10の通常運転時の筒内噴射圧力に応じて設定された設定圧(例えば、15MPa程度)を超えないように調整し、ECU70により通電される電磁操作部47nの通電時においては、デリバリーパイプ32内の燃料圧力が電磁操作部47nの非通電時における設定圧より十分に小さい圧力(第1の圧力レベルより小さい圧力)であっても開弁するようになっている。なお、図2に示す電磁リリーフ弁47は、その主要な構成要素を簡略に図示したものであり、特定のバルブ形式を記号で示したものではない。
【0052】
リリーフ配管46および電磁リリーフ弁47は、これら全体として、デリバリーパイプ32(供給配管)の下流側部分に接続され、デリバリーパイプ32等の供給配管Lを下流側で開放してその内部の燃料の一部をその供給配管Lの外部に排出させることができる電磁駆動式のリリーフ手段48を構成している。
【0053】
燃料供給装置30は、さらに、燃料供給機構40およびリリーフ手段48に加えて、これらの制御手段としてのECU70を備えている。
【0054】
ECU70は、その詳細なハードウェア構成を図示しないが、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)および不揮発メモリからなるバックアップメモリを備え、さらに、A/D変換器等を含む入力インターフェース回路と、ドライバやリレースイッチを含む出力インターフェース回路と、定電圧回路とを含んで構成されている。このECU70は、ROM内に予め格納された制御プログラムに従い、センサ情報や予めバックアップメモリに格納されている設定値情報等に基づいて、さらには他の車載ECU(Electronic Control Unit;電子制御ユニット)との間で通信を行いながら、例えばエンジン10の運転状態や加速要求等に応じた噴射時期および時間(燃料噴射量)でインジェクタ31への噴射指令信号を出力するとともに、各気筒への最適な時期に点火装置への点火信号を出力し、さらに、高圧燃料ポンプ35の電磁スピル弁38への閉弁駆動信号やフィードポンプ37への電源供給制御信号等を適時に出力するようになっている。
【0055】
ECU70は、さらに、ROM内に格納された制御プログラムに従って、次に述べるような制御手段としての各機能を発揮するようになっている。
【0056】
まず、ECU70は、高圧燃料ポンプ35のプランジャ35pの加圧行程中における電磁スピル弁38の閉弁のタイミングおよび時間を最適に制御することで、高圧燃料ポンプ35からデリバリーパイプ32に供給される燃料圧力および供給量をエンジン10の運転状態およびインジェクタ31の噴射特性に応じた最適値に制御するようになっている。
【0057】
また、ECU70は、エンジン10の始動時に、エンジン10の冷却水温または/および高圧燃料ポンプ35の作動開始後の燃料圧力センサ45の検出情報に基づいて、燃料供給経路中に燃料ベーパ発生しているか否かを判定し、燃料ベーパが発生していると判定した場合には、点火信号出力時点(イグニッションON)から短い待ち時間の間はエンジン10のクランキングを禁止するとともに、フィードポンプ37によるフィード燃圧を通常より大きい値にするようにフィードポンプ37の回転数を高くし、かつ、電磁リリーフ弁47を開弁させるという始動時ベーパ排出制御を実行するようになっている。
【0058】
また、ECU70は、燃料供給機構40の燃料供給経路中における燃料ベーパの排出に要する待ち時間が経過したと判断したとき、フィードポンプ37の回転数を通常の回転数に戻してフィード燃圧を通常圧に低下させ、電磁リリーフ弁47の電磁操作部47nへの通電による開弁操作を停止して電磁リリーフ弁47を閉弁させてから、エンジン10のクランキングを許可するようになっている。なお、ここにいう待ち時間は、図5中に示す待ち時間T1に相当し、予め設定された一定時間でもあってもよいし、エンジン10の始動時の冷却水温や油温等に応じて設定される可変設定時間であってもよい。また、始動時ベーパ排出制御中、電磁スピル弁38の電磁駆動コイル38cには通電されず、ECU70は、高圧燃料ポンプ35を加圧・吐出動作の実行できない非作動状態に維持する。
【0059】
さらに、ECU70は、燃料圧力センサ45により検出される高圧側のデリバリーパイプ32内の燃料圧力が第2圧力レベルに近い予め設定された圧力値を超えたとき、インジェクタ31による燃料噴射に必要な第2の燃料圧力レベルに達し得る状態になったと判断して、インジェクタ31への噴射指令信号の出力を開始するようになっている。
【0060】
ところで、燃料供給装置30の燃料供給機構40においては、インジェクタ31による燃料噴射が実行されるときにはインジェクタ31に加圧された燃料を供給する燃料供給状態となるが、エンジン10の停止のためにインジェクタ31による燃料噴射が停止されるときにはインジェクタ31への加圧燃料の供給を中断する供給停止状態となる。さらに、エンジン10の停止時のみならずその回転(機関回転)中にデリバリーパイプ32に接続する同一燃料系統中のすべてのインジェクタ31による燃料噴射が一時的に停止される燃料カット状態となるときにも、燃料供給機構40は、インジェクタ31への加圧燃料の供給を中断する供給停止状態となる。
【0061】
そこで、ECU70は、エンジン10の回転中にインジェクタ31による燃料噴射が停止される燃料カット状態となるとき、燃料供給機構40を制御してデリバリーパイプ32等の供給配管を通した燃料の供給圧力および供給流量のうち少なくとも一方を増加させるとともに、リリーフ手段48を制御してデリバリーパイプ32内の燃料の一部をデリバリーパイプ32およびリリーフ配管46の外部である燃料タンク41内に排出させるようになっている。
【0062】
具体的には、ECU70は、エンジン10の負荷状態を示すセンサ情報または/およびインジェクタ31の制御状態、あるいは、要求噴射量に応じた高圧燃料ポンプ35の要求圧送量の算出値から、減速時等のエンジン10の低負荷時であってインジェクタ31からの燃料噴射を一時的に停止する燃料カット状態(ここでは、エンジン10の回転中に高圧燃料ポンプ35の要求圧送量がゼロとなる状態を含む)の開始を検出するとともに、その検出時には、低圧側燃料配管36内のフィード燃圧を最大にするようフィードポンプ37の回転数[rpm]を増加させ、かつ、電磁リリーフ弁47の電磁操作部47nに通電して電磁リリーフ弁47を開弁させるようになっている。なお、エンジン10の燃料カット状態で燃料供給機構40が供給停止状態に切り替えられるときには、電磁スピル弁38の電磁駆動コイル38cには通電されず、ECU70は、高圧燃料ポンプ35を加圧・吐出動作の実行できない状態に維持する。
【0063】
そして、エンジン10の燃料カット状態から通常運転状態(燃料噴射を実行する状態)に復帰するときには、その復帰の直前に、フィードポンプ37の回転数を通常値に戻してフィード燃圧を通常に戻し、かつ、電磁リリーフ弁47の電磁操作部47nによる開弁操作を停止して電磁リリーフ弁47を閉弁させ、通常運転時のリリーフ弁機能を発揮させるようになっている。
【0064】
すなわち、ECU70は、燃料供給機構40を燃料カット状態に切り替えるときには、そのデリバリーパイプ32等の供給配管を通した燃料の供給圧力および供給流量のうち少なくとも一方を増加させるように燃料供給機構40を制御するとともに、その燃料の一部をデリバリーパイプ32等の供給配管の外部である燃料タンク41内に排出させるようリリーフ手段48を制御するようになっている。
【0065】
さらに、ECU70は、燃料カット状態が予め設定された閾値連続時間より長時間に及ぶときには、電磁リリーフ弁47をそれ以上連続通電するとコイル温度が上昇して断線発生の可能性が生じ得るので、断線発生の可能性が低い連続動作時間およびそれに対応する通電休止時間を含む繰返し周期で電磁リリーフ弁47の電磁操作部47nに通電し、電磁リリーフ弁47を周期的に再起動させて、その間欠動作によりベーパを排出させるようになっている。すなわち、制御手段としてのECU70は、燃料供給機構40が燃料カット状態に切り替えられている時間の長さに応じて、リリーフ手段48の電磁駆動によるリリーフ作動の時期(動作開始のタイミングおよび動作継続時間)を設定するようになっている。
【0066】
次に、その作用について説明する。
【0067】
上述のように構成された本実施形態の内燃機関の燃料供給装置では、エンジン10の始動時には、ECU70によって、高圧燃料ポンプ35を作動させずに所定時間のみ電磁リリーフ弁47を開弁作動させる始動時ベーパ排出制御が実行される。
【0068】
すなわち、図5に示すように、まず、イグニッション・オン(点火信号出力;同図中のIGON)になると、そのIGON時点のエンジン10の冷却水温や油温等のセンサ情報に基づいて、供給配管L内およびインジェクタ31内の燃料供給経路中に燃料ベーパ発生しているか否かが判定され、燃料ベーパが発生していると判定された場合には、フィードポンプ37の回転数を高回転速度に設定することで低圧側燃料配管36内のフィード燃圧が第1の圧力レベルの範囲内の最大値に近い値まで高められるとともに、リリーフ手段48の電磁リリーフ弁47が通電により開弁操作されて、デリバリーパイプ32等の供給配管Lがその下流側で開放させたリリーフ状態となる。また、IGON時点から待ち時間T1の間は、エンジン10のクランキングが禁止されるとともに、電磁スピル弁38の電磁駆動コイル38cに通電されないことによって、高圧燃料ポンプ35が加圧・吐出動作の実行できない非作動状態に維持される。
【0069】
この状態においては、フィードポンプ37からデリバリーパイプ32等の供給配管L内に通常より高供給流量または/および高供給圧力で燃料が供給されるとともに、デリバリーパイプ32等の供給配管Lがその下流側部分に設けられた電磁リリーフ弁47の開弁作動によって燃料タンク41内に開放されたリリーフ状態となっているので、高温再始動時等であってデリバリーパイプ32等の供給配管Lに燃料ベーパが発生したときでも、フィードポンプ37からのフィード燃圧が第1の圧力レベルの最大値程度まで高められることで、ベーパ排出時間が非常に短縮され、クランキング開始までの待ち時間T1を短縮できるとともに、燃料ベーパを確実に排出できることになる。
【0070】
次いで、燃料供給機構40の燃料供給経路中における燃料ベーパの排出に要する待ち時間T1が経過すると、フィードポンプ37の回転数が通常の回転数に戻され、低圧側燃料配管36内のフィード燃圧が通常圧に低下するとともに、電磁リリーフ弁47の電磁操作部47nへの通電が停止されてその強制開弁操作が解除され、さらに、エンジン10のクランキングが開始される。
【0071】
エンジン10の運転中、その運転状態や要求負荷等に応じた噴射時期および燃料噴射量でインジェクタ31への噴射指令信号が出力され、気筒11a内に燃料が噴射される。
【0072】
この状態においては、燃料供給機構40は、複数のインジェクタ31にデリバリーパイプ32を通して高圧燃料を分配・供給する燃料供給状態となっており、高圧燃料ポンプ35のプランジャ35pの加圧行程中における電磁スピル弁38の閉弁のタイミングおよび時間が最適に制御されることで、高圧燃料ポンプ35からデリバリーパイプ32に供給される燃料圧力および供給量がエンジン10の運転状態およびインジェクタ31の噴射特性に応じた最適値に制御される。
【0073】
一方、車両の減速時や降坂時等のようにアクセル開度が低下し、エンジン10が低負荷の運転状態になるとき、ECU70は、燃費向上や排気エミッション低減等のために、エンジン10の負荷状態に応じて、エンジン10をその回転中にインジェクタ31による燃料噴射を一時的に停止させるいわゆる燃料カット状態に移行させることがある。
【0074】
このとき、燃料供給機構40は、燃料カット状態が継続される時間Tfcの間、インジェクタ31への加圧燃料の供給を中断する供給停止状態となる。
【0075】
一方、このとき、エンジン10の負荷状態を示すセンサ情報または/およびインジェクタ31の制御状態から燃料カット状態が開始されたことが検出されると、図6に示すように、低圧側燃料配管36内のフィード燃圧を最大にするようフィードポンプ37の回転数が高回転速度に変更され、かつ、電磁操作部47nへの通電により電磁リリーフ弁47が開弁操作される。また、電磁駆動コイル38cに通電されない電磁スピル弁38が開弁状態になるとともに、高圧燃料ポンプ35が加圧・吐出動作の実行できない非作動状態となる。
【0076】
この状態においては、フィードポンプ37からデリバリーパイプ32等の供給配管L内に通常より高供給流量または/および高供給圧力で燃料が供給されるとともに、デリバリーパイプ32等の供給配管Lがその下流側部分に設けられた電磁リリーフ弁47の開弁作動によって燃料タンク41内に開放されたリリーフ状態となるので、エンジン10や供給配管Lが高温となった運転状態で燃料カット状態が長時間続くような場合であっても、デリバリーパイプ32等の供給配管Lからの燃料ベーパの排出が確実に実行される。しかも、フィードポンプ37からのフィード燃圧が第1の圧力レベルの最大値程度まで高められることで、デリバリーパイプ32等の供給配管Lからの燃料ベーパの排出時間が非常に短縮されることになる。したがって、燃料カット状態から通常運転状態に復帰したときに高圧燃料ポンプ35がいわゆる空汲み状態となるようなことが防止され、燃料カット状態から通常運転状態への復帰時に、高圧燃料ポンプ35による高圧燃料の給送を迅速・確実に再開可能とすることができる。
【0077】
すなわち、燃料カット状態でデリバリーパイプ32等の供給配管Lがエンジン10やその排気装置26等の高温部からの熱を受熱したとしても、その供給配管Lを通した燃料の供給圧力および供給流量のうち少なくとも一方、例えばフィード燃圧が通常の燃料供給状態におけるフィード燃圧より高圧の高フィード燃圧に増加するように制御されるとともに、リリーフ手段48が供給配管Lの下流側部分で燃料を供給配管Lの外部に排出させるように制御されることから、高温環境でエンジン10の燃料カット状態が長く続いたような場合であったとしても、供給配管L内の燃料の温度が上昇し難くなるとともに、供給配管L内で燃料ベーパが発生し難くなる。したがって、燃料供給装置30においては、エンジン10の燃料カット状態からの復帰時に高圧燃料ポンプ35により高圧燃料を迅速かつ確実に圧送できることとなる。
【0078】
また、本実施形態では、燃料供給機構40が、供給配管Lを通した燃料の供給圧力および供給流量のうち少なくとも一方を増加させることができるフィードポンプ37を有しているので、フィードポンプ37によってその供給圧力および供給流量のうち少なくとも一方を容易にかつ迅速に変更でき、燃料カット状態における供給配管L内の燃料温度の上昇および燃料ベーパの発生を有効に抑制できるものとなる。
【0079】
さらに、供給配管Lの上流端に位置するフィードポンプ37によって前記燃料の供給圧力および供給流量のうち少なくとも一方を増加させるので、供給配管Lの上流側からインジェクタ31までの燃料供給経路の全域で燃料温度の上昇および燃料ベーパの発生を有効に抑制することができる。
【0080】
加えて、燃料供給機構40の高圧燃料ポンプ35が、その非作動時にフィードポンプ37から給送される燃料をインジェクタ31側に通過させるよう供給配管Lの途中に配置され、その吐出口近傍のチェック弁34は第1の圧力レベルより小さい前後差圧で開弁するように構成されているので、燃料カット状態が長く続いたとしても、供給配管L内で燃料の温度が上昇し難くなるとともに燃料ベーパが発生し難くなり、燃料カット状態から通常運転状態に復帰するときに、高圧燃料ポンプ35による高圧燃料の圧送を迅速かつ確実に再開することができる。
【0081】
一方、燃料カット状態が継続される時間Tfcが予め設定された閾値連続時間より長くなるときには、エンジン10の運転状態が燃料カット状態に切り替えられている時間の長さに応じて、供給配管Lの下流側を燃料タンク41内に開放させるためのリリーフ手段48の電磁リリーフ弁47への通電時期が可変設定され、図7に示すように、電磁リリーフ弁47が周期的に再起動されて、その間欠動作により燃料ベーパが長時間にわたり継続して排出される。したがって、電磁リリーフ弁47を長時間連続通電すると電磁操作部47nのコイル温度が上昇して断線発生の可能性が生じ得るが、本実施形態では、その断線発生の可能性が低い連続動作時間T2aおよびそれに対応する通電休止時間T2bを含む繰返し周期T2で電磁リリーフ弁47の電磁操作部47nに断続的な通電がなされるので、電磁リリーフ弁47の信頼性を低下させずに済む。その結果、デリバリーパイプ32等の供給配管L内での燃料ベーパの発生量が多くなったとしても、電磁駆動式のリリーフ手段48を、その信頼性を低下させることなく、供給配管L内の燃料ベーパを燃料タンク41内に十分に排出できるまで確実に作動させることができる。
【0082】
このように、本実施形態の内燃機関の燃料供給装置においては、エンジン10の燃料カット状態において、デリバリーパイプ32等の供給配管L等がエンジン10等の高温部からの熱を受熱したとしても、その供給配管L等を通した燃料の供給圧力および供給流量のうち少なくとも一方が通常運転状態より増加するように制御されるとともに、リリーフ手段48が供給配管Lの下流側部分で燃料を燃料タンク41内に排出させるように制御されるので、エンジン10の燃料カット状態が長く続いたとしても、供給配管L内の燃料の温度上昇および燃料ベーパの発生を有効に抑制することができ、その燃料カット状態からの復帰時に高圧燃料ポンプ35による高圧燃料の圧送を迅速かつ確実に再開できるものである。
【0083】
また、上述の実施形態では、プレッシャレギュレータ43が余剰燃料の所定の吐出流量範囲内において制御対象の燃料圧力を略設定圧に保持するものとして、燃料カット状態下でデリバリーパイプ32、配管33,36および高圧燃料ポンプ35中の燃料ベーパを排出させる際にはフィードポンプ37の単位時間当りの吐出量を増減させることとしていたが、燃料カット時におけるプレッシャレギュレータの設定圧を通常運転時よりも高圧の設定圧に可変設定する燃料圧力調整手段を構成してもよい。また、低圧側燃料配管36とプレッシャレギュレータ43の間に遮断弁や絞りを挿入するようなことも考えられる。
【0084】
例えば、燃圧を高低2段に切り替える従来の燃料供給装置(例えば、特開2007−303372号公報参照)のように、フィードポンプの単位時間当りの吐出量の変化に応じて、低吐出量・低燃料圧力段階では低圧プレッシャレギュレータが作動し、高吐出量・高燃料圧力段階では高圧プレッシャレギュレータが作動するように燃料圧力調整手段を構成することができる。
【0085】
具体的には、図8に示すような燃料圧力調整機構80(燃料圧力調整手段)を構成することができる。この燃料圧力調整手段80においては、フィードポンプ37の吐出側の低圧側燃料通路36に低圧プレッシャレギュレータ81と高圧プレッシャレギュレータ82とが接続されている。低圧プレッシャレギュレータ81は、フィードポンプ37の吐出側の低圧側燃料通路36に接続する調整圧ポート81aと、燃料タンク41側に連通するリターンポート81bとを有しており、大気圧を背圧として第1の設定圧に設定されている。また、高圧プレッシャレギュレータ82は、低圧側燃料通路36に接続する調整圧ポート82aと、燃料タンク41側に連通するリターンポート82bを有しており、大気圧を背圧として低圧プレッシャレギュレータ81の第1の設定圧よりも高い第2の設定圧に設定されている。さらに、戻り側の燃料通路R1には、低圧プレッシャレギュレータ81のリターンポート81bから燃料タンク41内に戻る燃料の流量をその前後差圧(上流側と下流側の間の差圧)に応じて制限するオリフィス83が設けられており、このオリフィス83により所定の流量に達するまでは低圧プレッシャレギュレータ81を作動させるようになっている。加えて、低圧プレッシャレギュレータ81のリターンポート81bから燃料タンク41内に戻るリターン燃料通路R1側には、そのリターン燃料通路R1中の燃料の流量に応じて燃料タンク41内で他方側の燃料貯留部41bから一方側の燃料貯留部41aに燃料を移送し、あるいは一方側の燃料貯留部41a内で内部タンク41cの外部から内部に燃料を移送することができる公知のジェットポンプ85,86(移送ポンプ)が設けられている。勿論、このような構成において、高圧プレッシャレギュレータ82の設定圧を燃料ベーパの排出に適した設定圧とすることもできる。
【0086】
あるいは、図8の形態とは異なり、単一のプレッシャレギュレータとしながら、例えばその調圧用のダイヤフラムの背面側の背圧室に導入される背圧流体の供給の有無によってダイヤフラムが弁体を閉弁方向に付勢する付勢力を高・低に変化させることで、調圧値を低圧値と高圧値に切り替える設定圧切替えの可能なものを、低圧側燃料配管36のフィード圧を異なる複数の設定圧に調圧可能な手段として用いることもできるし、他方式の設定圧可変のプレッシャレギュレータを用いることもできることはいうまでもない。
【0087】
すなわち、燃料供給機構40は、供給配管Lの一部である低圧側燃料配管36に接続され、供給配管Lを通した燃料の供給圧力を変化させるよう設定圧を切り替えることができる燃料圧力調整手段を有しているものであってもよい。そのようにすると、供給配管L内に燃料ベーパがより発生し難くなるとともに、燃料ベーパが発生しても、燃料タンク41内に迅速に排出可能となる。
【0088】
なお、上述の一実施形態では、エンジン10が筒内噴射式のものであったが、本発明はエンジン10にデュアル噴射方式の燃料供給装置を搭載する場合にも適用できることは勿論である。その場合、ECU70は、インジェクタ31からの筒内噴射を基本としながら、エンジン10の始動暖気時や低回転高負荷時等のように筒内噴射では混合気形成が不十分となる特定の運転状態下でポート噴射を併用したり、ポート噴射が有効な高回転高負荷時等にポート噴射用インジェクタからのポート噴射を実行させたりする機能を併有するものとなる。
【0089】
また、本発明にいう内燃機関の回転中に燃料噴射弁による燃料噴射が一時停止される状態とは、多気筒内燃機関の場合において同一の供給配管に接続する複数の燃料噴射弁のすべてについて燃料噴射が停止される状態の意である。すなわち、燃料系統が1系統であればすべての燃料噴射弁の燃料噴射が停止される状態であるが、上述のように燃料系統が低圧系統と高圧系統の複数系統であったり複数のバンクに対応する複数の燃料系統であったりする場合には、複数のうちいずれか1系統中のすべての燃料噴射弁の燃料噴射が停止される状態の意である。
【0090】
フィードポンプ37は、タービン式燃料ポンプでなく他の回転式の燃料ポンプで構成されてもよいし、プランジャ式その他の非回転式の燃料ポンプで構成されてもよい。また、回転式の燃料ポンプの回転速度(単位時間当りの回転数)を変化させるのではなく、1回転当りあるいは1回の吸入・吐出動作の容量(吐出容量)を変化させることで、単位時間当りの燃料吐出量を変化させるものであってもよい。燃料カット状態に移行することの判断が、高圧燃料ポンプの要求圧送量が0になることで判断できることは上述の通りである。
【0091】
以上説明したように、本発明に係る燃料供給装置は、内燃機関の回転中に燃料噴射が一時停止されるとき、燃料供給手段によりその供給配管を通した燃料の供給圧力および供給流量のうち少なくとも一方を燃料供給状態より増加させるとともに、リリーフ手段により供給配管の下流側部分で燃料を供給配管の外部に排出させるようにしているので、供給配管等が高温部からの熱を受熱するような燃料カット状態が長く続いたとしても、供給配管内の燃料の温度上昇および燃料ベーパの発生を有効に抑制することができ、燃料カット状態からの復帰時に燃料ポンプにより燃料を迅速かつ確実に圧送できる燃料供給装置を提供することができるという効果を奏するものであり、燃料タンク内に貯留された燃料を燃料ポンプによって燃料噴射弁に供給するとともにその供給経路中における燃料ベーパの発生防止および排出促進を図るように構成された燃料供給装置全般に有用である。
【符号の説明】
【0092】
10 エンジン(内燃機関)
11a 気筒
11h シリンダヘッド
12 ピストン
13 燃焼室
22 エアクリーナ
23 エアフローメータ
24 スロットルバルブ
25 サージタンク
30 燃料供給装置
31 インジェクタ(燃料噴射弁)
32 デリバリーパイプ(供給配管)
33 高圧側燃料配管
34 チェック弁
35 高圧燃料ポンプ
36 低圧側燃料配管
37 フィードポンプ(燃料ポンプ)
38 電磁スピル弁
40 燃料供給機構(燃料供給手段)
41 燃料タンク
43 プレッシャレギュレータ(圧力調整手段)
45 燃料圧力センサ
46 リリーフ配管(供給配管の下流側部分)
47 電磁リリーフ弁
48 リリーフ手段
70 ECU(電子制御ユニット;制御手段)
80 燃料圧力調整機構(圧力調整手段)
L 供給配管
R1 リターン燃料通路
T1 待ち時間
T2 繰返し周期
T2a 連続動作時間
T2b 通電休止時間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の燃料噴射弁により燃料噴射が実行されるとき該燃料噴射弁に供給配管を通し燃料を供給する燃料供給状態と前記燃料噴射弁への前記燃料の供給を停止する供給停止状態とに切替え可能な燃料供給手段と、前記供給配管の下流側部分に接続され、前記供給配管を下流側で開放して前記燃料の一部を前記供給配管の外部に排出させることができるリリーフ手段と、前記燃料供給手段および前記リリーフ手段の作動を制御する制御手段と、を備えた燃料供給装置であって、
前記制御手段は、前記内燃機関の回転中に前記燃料噴射弁による前記燃料噴射が一時停止される状態となるとき、前記供給配管を通した前記燃料の供給圧力および前記供給配管を通した前記燃料の供給流量のうち少なくとも一方を増加させるよう前記燃料供給手段を制御するとともに、前記燃料の一部を前記供給配管の外部に排出させるよう前記リリーフ手段を制御することを特徴とする燃料供給装置。
【請求項2】
前記燃料供給手段が、前記供給配管を通した前記燃料の供給圧力および前記供給配管を通した前記燃料の供給流量のうち少なくとも一方を増加させることができる可変燃料ポンプを有していることを特徴とする請求項1に記載の燃料供給装置。
【請求項3】
前記可変燃料ポンプが、燃料タンク内の燃料を前記供給配管を通して給送するフィードポンプであることを特徴とする請求項2に記載の燃料供給装置。
【請求項4】
前記燃料供給手段が、非作動時に前記フィードポンプから給送される燃料を前記燃料噴射弁側に通過させるよう前記供給配管の途中に配置され、作動時には前記フィードポンプから給送される燃料を吸入し前記フィードポンプの吐出圧より高圧に加圧して前記燃料噴射弁側に吐出する高圧燃料ポンプを有し、前記燃料供給手段が前記燃料噴射の一時停止状態に切り替えられるときに前記高圧燃料ポンプが前記非作動の状態となることを特徴とする請求項3に記載の燃料供給装置。
【請求項5】
前記燃料供給手段が、前記供給配管に接続され、前記供給配管を通した前記燃料の供給圧力を変化させるよう設定圧を切り替えることができる燃料圧力調整手段を有していることを特徴とする請求項1ないし請求項4のうちいずれか1の請求項に記載の燃料供給装置。
【請求項6】
前記リリーフ手段は、前記燃料の一部を前記供給配管の外部に排出させるよう前記供給配管を下流側で開放するときに通電される電磁駆動式のものであり、前記制御手段は、前記燃料供給手段が前記燃料噴射の一時停止状態に切り替えられている時間の長さに応じて、前記リリーフ手段の前記電磁駆動による作動時期を設定することを特徴とする請求項1ないし請求項5のうちいずれか1の請求項に記載の燃料供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−62856(P2012−62856A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−209283(P2010−209283)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】