説明

燃料供給装置

【課題】燃料圧の切替え指示を行うタイミングを最適化し、燃料圧が切替った場合においても実際の燃料噴射量が所望の燃料噴射量から乖離することを抑制することにより、燃費向上を図ることができる燃料供給装置を提供する。
【解決手段】ECUは、燃料噴射時間taが脈動時間t2より非常に長い場合には、(ステップS14でYES)、現在の時刻を切替タイミングに設定する(ステップS15)。また、噴射インターバルtcが脈動時間t2より長い場合には(ステップS16でYES)、燃料噴射終了と同時に脈動時間t2が開始するよう切替タイミングを設定する(ステップS17)。そして、ECUは、脈動時間t2が、燃料噴射時間taおよびその燃料噴射時間taの前後の噴射インターバルtcを足し合わせた時間よりも長い場合には(ステップS18でYES)、節部時間t3に応じて切替タイミングを設定する(ステップS19)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料タンク内に貯留された燃料を調圧して燃料消費部に供給する燃料供給装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載される内燃機関の燃料供給装置は、燃料タンク内に貯留された燃料を燃料ポンプによって燃料消費部に供給するときに、燃料消費部に対する燃料供給圧力を調整するための圧力制御装置を備えている。この圧力制御装置は、燃料タンク内の燃料を汲み上げる燃料ポンプから、燃料消費部を構成するインジェクタへの燃料供給圧力を調圧するようになっている。
【0003】
このような圧力制御装置においては、一般に、ハウジング内を2室に区画し、中央部に調圧弁体を有するダイヤフラムを備えている。このダイヤフラムの一面側において、調圧室内の燃料圧に応じたダイヤフラム中央部の変位を利用して調圧弁体を開弁方向および閉弁方向に変位させる一方、ダイヤフラムの他面側に設置された圧縮コイルばねによりダイヤフラムの変位を抑制するようになっている。これにより、調圧室内の燃料圧が設定圧に達するよう調圧弁体の開弁状態を保持するようになっている。また、このような圧力制御装置は、燃料ポンプとともに燃料タンク内に配置されていることが多い。
【0004】
このような圧力制御装置としては、ハウジング内部を区画するダイヤフラムと、このダイヤフラムの一面側に位置し、燃料ポンプから加圧燃料が導入される燃料導入口および余剰燃料が排出される排出口を有する調圧室と、ダイヤフラムの他面側に位置し、背圧流体が導入される背圧室と、ダイヤフラムと背圧室の間に大気に開放される開放室を形成するプランジャと、ダイヤフラムの変位に応じて排出口を開閉するようダイヤフラムに装着された弁部材と、ダイヤフラムとプランジャの間に介在されて弁部材を閉弁方向に付勢するスプリングと、プランジャの可動範囲を規定するストッパ手段と、によって構成される可変燃料圧調整弁を備えたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
この特許文献1に記載の燃料供給装置は、このような圧力制御装置を構成する可変燃料圧調整弁を備えることにより、背圧流体の供給の有無によってスプリングの設定荷重を2段階に切替えることで、調圧する燃料圧の設定値を低圧と高圧とのいずれかに切替えることができる。
【0006】
しかしながら、この特許文献1に記載の燃料供給装置は、1つの可変燃料圧調整弁により燃料圧を切替えることができるものの、可変燃料圧調整弁が3室により構成されているため、小型化が難しいという問題があった。また、調圧室と背圧室に燃料を供給する配管は、互いに逆向きに接続されるため、可変燃料圧調整弁の配置に制約が生じるという問題もあった。
【0007】
さらには、燃料圧を制御するコントロールユニットが、燃料圧の切替えに必要な時間を考慮するようなものではなかった。そのため、燃料圧の切替中に燃料が噴射される場合もあり、目標燃料圧と実燃料圧とが乖離している場合があった。その結果、気筒に対する燃料噴射量が適切なものとならず、空燃比が目標空燃比から乖離する可能性があるという問題があった。
【0008】
また、燃料圧を切替えることができる燃料供給装置において、燃料圧の切替え開始時間を燃料噴射に基づいて設定するものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0009】
この特許文献2に開示された燃料供給装置は、2つの可変燃料圧調整弁と、これらの可変燃料圧調整弁の状態を切替える電磁バルブと、電磁バルブを制御するECUとを備えている。この特許文献2に記載の燃料供給装置は、上記特許文献1に記載の燃料供給装置と異なり、燃料圧を切替えるために2つの可変燃料圧調整弁を必要とするため、小型化するという問題を解決できないものの、燃料圧の切替えをいずれかの気筒における燃料噴射の直後に開始することにより、燃料噴射の途中で燃料圧の切替えが開始されることを抑制し、実空燃比を目標空燃比に近づけるようになっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2009−144686号公報
【特許文献2】特開平6−249013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上述した特許文献2に記載の燃料供給装置は、切替制御が開始されてから燃料圧の脈動が収束するまでの時間と、燃料噴射間隔の時間との関係を考慮するようなものではなかった。
【0012】
そのため、燃料噴射間隔が短い場合には、燃料圧の脈動が収束する前に次の燃料噴射が実行されてしまう場合があった。さらには、車両の走行状態に応じて電磁バルブの応答時間が変化し、ECUにより燃料圧の切替え指示が行われてから燃料圧の脈動が収束するまでにかかる時間が変化するにもかかわらず、ECUは、この時間の変化に関してなんら考慮をしていないため、燃料圧の脈動が開始するタイミングや収束するタイミングを正確に予測することができなかった。したがって、燃料圧の切替え指示を行うタイミングを最適化できず、実燃料圧が目標燃料圧になっていない状態で燃料を噴射してしまい、実際の燃料噴射量が所望の燃料噴射量から乖離する可能性があった。このため、燃料噴射制御の精度が低下し、燃費向上を図ることができないという問題があった。
【0013】
本発明は、このような問題を解決するためになされたもので、可変燃料圧調整弁を有する燃料供給装置において、燃料圧の切替え指示を行うタイミングを最適化し、燃料圧が切替った場合においても実際の燃料噴射量が所望の燃料噴射量から乖離することを抑制することにより、燃費向上を図ることができる燃料供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る燃料供給装置は、上記目的達成のため、(1)燃料を調圧し燃料消費部に供給する燃料供給装置であって、少なくとも前記燃料の燃料圧を高圧にする高圧供給状態と低圧にする低圧供給状態とのいずれかの状態を取り得る可変燃料圧調整弁と、入力される電力の電気的特性に応じて前記可変燃料圧調整弁の状態を前記高圧供給状態と前記低圧供給状態との間で切替える切替弁と、前記切替弁に対する前記電力の入力の有無を切替える切替タイミングを設定し、設定した前記切替えタイミングで前記電力の入力の有無を切替える切替制御手段と、前記燃料消費部における燃料噴射を制御する燃料噴射制御手段と、を備え、前記切替制御手段は、切替えにより発生する燃料圧の脈動に起因して、目標燃料圧より低圧で噴射されることとなる燃料量と、目標燃料圧より高圧で噴射されることとなる燃料量とが略等しくなるよう切替タイミングを設定することを特徴とする。
【0015】
この構成により、燃料噴射中に燃料圧を切替えた場合には、燃料圧に脈動が発生するものの、目標燃料圧より高圧となり燃料噴射量が増加する割合と目標燃料圧より低圧となり燃料噴射量が減少する割合とを略等しくすることにより、燃料噴射のタイミングにおけるその燃料噴射量を目標燃料噴射量に近づけることができる。したがって、燃料噴射が行われていない時間内に燃料圧の切替えが実行できない場合においても、燃料圧の脈動が燃料噴射に与える影響を低減し、実空燃比と目標空燃比との乖離を防止もしくは最小限にすることができる。
【0016】
ここで、本発明における「略等しくなる」とは、空燃比の変動に起因して燃費や排気ガス特性の悪化を抑制できる一定の幅を有することを意味している。
【0017】
また、上記(1)に記載の燃料供給装置において、(2)前記切替制御手段は、前記脈動中に燃料圧が前記目標燃料圧と一致する節部の前後における燃料噴射期間内の燃料噴射量が一致するよう前記切替タイミングを設定することを特徴とする。
【0018】
この構成により、燃料噴射中に燃料圧を切替えた場合には、燃料圧に脈動が発生するものの、脈動の節部の前後における燃料噴射期間内の燃料噴射量を一致させることにより、目標燃料圧より高圧となり燃料噴射量が増加する割合と燃料圧より低圧となり燃料噴射量が減少する割合とを近づけることができ、燃料噴射のタイミングにおけるその燃料噴射量を目標燃料噴射量に近づけることができる。したがって、燃料圧の切替要求が発生した場合においても燃料圧の脈動が燃料噴射に与える影響を低減し、実空燃比と目標空燃比との乖離を防止することができる。
【0019】
また、上記(1)に記載の燃料供給装置において、(3)前記切替制御手段は、前記脈動中に燃料圧が前記目標燃料圧と一致する節部のタイミングを燃料噴射期間の中央となる時間に一致させるよう前記切替タイミングを設定することを特徴とする。
【0020】
この構成により、燃料噴射中に燃料圧を切替えた場合には、燃料圧に脈動が発生するものの、脈動の節部を燃料噴射期間の中央となる時間に一致させることにより、目標燃料圧より高圧となり燃料噴射量が増加する割合と燃料圧より低圧となり燃料噴射量が減少する割合とを近づけることができ、燃料噴射のタイミングにおけるその燃料噴射量を目標燃料噴射量に近づけることができる。したがって、燃料圧の切替要求が発生した場合においても燃料圧の脈動が燃料噴射に与える影響を低減し、実空燃比と目標空燃比との乖離を最小限にすることができる。
【0021】
また、上記(1)から(3)に記載の燃料供給装置において、(4)前記切替制御手段は、前記切替弁に入力される電力の電気的特性が切替ってから前記可変燃料圧調整弁の状態が切替るまでの切替り遅れ時間に基づいて前記切替タイミングを設定することを特徴とする。
【0022】
この構成により、切替り遅れ時間に基づいて切替タイミングを設定するので、燃料噴射制御による燃料噴射のタイミングとの調整の精度を高めることができる。したがって、燃料圧の切替要求が発生した場合においても燃料圧の脈動が燃料噴射に与える影響を低減し、実空燃比と目標空燃比との乖離を防止することができる。
【0023】
また、上記(1)から(4)に記載の燃料供給装置において、(5)前記切替制御手段は、前記切替弁に入力される電力の電気的特性に応じて前記切替り遅れ時間を算出することを特徴とする。
【0024】
この構成により、車両の走行状態に応じて切替弁の切替り遅れ時間が変動する場合においても、電力の電気的特性に応じて切替り遅れ時間を算出することにより、燃料噴射制御による燃料噴射のタイミングとの調整の精度を高めることができる。
【0025】
また、上記(1)から(5)に記載の燃料供給装置において、(6)前記可変燃料圧調整弁は、前記燃料が導入される燃料導入口および該燃料が排出される燃料排出口を有するハウジングと、前記ハウジングとの間に前記燃料導入口に連通する調圧室を形成する隔壁部と前記調圧室内の燃料圧に応じて前記調圧室を前記燃料排出口に連通させる開弁方向に変位する可動弁体部とを有する調圧部材と、を備え、前記調圧室の内部に前記燃料排出口に連通するとともに前記可動弁体部の変位に応じて開度が変化する排出穴を形成する第1弁座部と、前記調圧室の内部に前記可動弁体部の変位に応じて開度が変化するとともに操作圧を有する燃料が導入される操作圧燃料導入穴を形成する第2弁座部とが、それぞれ前記ハウジングに設けられ、前記調圧部材が前記開弁方向に燃料圧を受ける面積が、前記操作圧燃料導入穴内の操作圧に応じて変化することを特徴とする。
【0026】
この構成により、調圧部材が燃料圧を受ける面積を可変とすることにより燃料圧が2段階に調圧される。したがって、可変燃料圧調整弁の内部を3室にしたり、可変燃料圧調整弁を2つ設けることなく燃料消費部に供給される燃料圧を2段階に制御することができる。このため、燃料供給装置を小型化することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、可変燃料圧調整弁を有する燃料供給装置において、切替え指示を行うタイミングを最適化し、燃料圧が切替った場合においても実際の燃料噴射量が所望の燃料噴射量から乖離することを抑制することにより、燃費向上を図ることができる燃料供給装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施の形態に係る燃料供給装置およびその周辺を示す概略構成図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る切替弁の概略構成図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る燃料供給装置の高圧供給状態を示す概略構成図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る燃料供給装置の低圧供給状態を示す概略構成図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る燃料供給装置の概略ブロック構成図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る電力供給ユニット周辺の回路図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る燃料供給装置のタイミングチャートである。
【図8】本発明の実施の形態に係る各気筒の噴射タイミングを表す図である。
【図9】本発明の実施の形態に係る燃料圧と燃料噴射量との関係を示すグラフである。
【図10】第1の実施例における燃料圧の脈動と燃料噴射タイミングとの関係を示す図である。
【図11】第2の実施例における燃料圧の脈動と燃料噴射タイミングとの関係を示す図である。
【図12】本発明の実施の形態に係る燃料圧切替可能領域を示す図である。
【図13】本発明の実施の形態に係る燃料圧切替制御処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、本実施の形態においては、本発明に係る燃料供給装置を4気筒のガソリンエンジンを搭載した車両に適用する場合について説明する。
【0030】
まず、構成について説明する。
【0031】
図1に示すように、本実施の形態に係る燃料供給装置8は、エンジン1で消費される燃料を貯留する燃料タンク2と、燃料タンク2の内部に貯留された燃料をエンジン1の複数のインジェクタ3に圧送する燃料圧送機構10と、燃料圧送機構10からインジェクタ3に供給される燃料を導入して予め設定された燃料圧に調圧するプレッシャレギュレータ20と、プレッシャレギュレータ20により調圧される燃料圧を高圧側の設定圧と低圧側の設定圧との間で切替えるようプレッシャレギュレータ20を制御する切替弁60と、を備えている。ここで、プレッシャレギュレータ20は、本発明に係る可変燃料圧調整弁を構成する。
【0032】
エンジン1は、車両に搭載される多気筒の内燃機関により構成されている。本実施の形態においては、4つの気筒5を備える4サイクルガソリンエンジンにより内燃機関が構成されている。ここで、インジェクタ3および各気筒5は、本発明に係る燃料消費部を構成する。インジェクタ3は、エンジン1の各気筒5にそれぞれ設置されており、噴孔を形成する端部3aが吸気ポート7内に露出している。
【0033】
また、燃料圧送機構10とインジェクタ3はデリバリーパイプ4を介して接続されており、燃料圧送機構10からの燃料は、デリバリーパイプ4を介して各インジェクタ3に分配されるようになっている。
【0034】
燃料圧送機構10は、燃料タンク2内の燃料を吸入口から汲み上げ、加圧して吐出口から吐出する燃料ポンプユニット11と、燃料ポンプユニット11の吸入口側に設置され燃料ポンプユニット11内への異物の吸入を阻止するサクションフィルタ12と、燃料ポンプユニット11の吐出口側に設置され燃料ポンプユニット11から吐出された燃料に含まれる異物を除去する燃料フィルタ13と、燃料フィルタ13の上流側または下流側に設置されるチェック弁14と、を有している。
【0035】
燃料ポンプユニット11は、ポンプ作動用の羽根車を有する燃料ポンプ11pと、燃料ポンプ11pを回転駆動する内蔵直流モータであるポンプ駆動モータ11mへの通電を後述するECU(Electronic Control Unit)51により制御させることで駆動および停止されるようになっている。
【0036】
また、燃料ポンプユニット11は、燃料タンク2内から燃料を汲み上げ加圧して吐出することができるとともに、同一の供給電圧に対しそのポンプ駆動モータ11mの回転速度[rpm]を負荷トルクに応じて変化させたり、供給電圧の変化に対応してポンプ駆動モータ11mの回転速度を変化させたりすることで、単位時間あたりの吐出量や吐出圧を変化させることができるようになっている。
【0037】
チェック弁14は、燃料ポンプユニット11からインジェクタ3側への燃料供給方向に開弁する一方、インジェクタ3側から燃料ポンプユニット11側への燃料の逆流方向には閉弁し、加圧された供給燃料の逆流を阻止するようになっている。
【0038】
燃料タンク2の上部には、燃料ポンプユニット11の動作を制御する燃料ポンプコントローラ(以下、FPCという)17が設けられており、このFPC17には、ポンプ駆動モータ11mの端子電圧を検出する電圧検出部や、ポンプ駆動モータ11mに流れる電流を検出する電流検出部が装着されている。
【0039】
FPC17は、ECU51からのポンプ制御信号と、ポンプ駆動モータ11mの端子電圧を検出する電圧検出部の検出信号との偏差に応じて、燃料ポンプユニット11のポンプ駆動モータ11mに印加する電圧を制御したり、燃料圧送機構10の異常診断のためのポンプ駆動モータ11mの作動状態に応じた診断用信号をECU51に供給したりするようになっている。
【0040】
図1および図3に示すように、プレッシャレギュレータ20は、燃料が導入される流体導入口21aおよびその燃料が排出される流体排出口21bを有するハウジング21を備えている。ハウジング21は、一対の凹状のハウジング部材18、19をそれらの外周部でかしめ結合して形成されている。
【0041】
ハウジング21の内部には、ハウジング21の内部を2室に区画する隔壁状の調圧部材22が設けられている。この調圧部材22は、ハウジング21との間に流体導入口21aに連通する調圧室23を形成する隔壁部24と、調圧室23内の燃料圧に応じた開度で調圧室23を流体排出口21bに連通させる開弁方向に変位する可動弁体部25とを一体化したものである。隔壁部24は、その一面側で調圧室23内の燃料圧を常時受圧するようになっている。
【0042】
また、隔壁部24は、その他面側でハウジング21との間に調圧室23側に背圧を付与する背圧室26を形成しており、背圧室26内には、調圧部材22の可動弁体部25を閉弁方向に付勢する圧縮コイルばね27が設けられている。また、調圧部材22と共に背圧室26を形成する他方のハウジング部材19には、少なくとも1つの大気圧導入穴19aが形成されている。
【0043】
さらに、ハウジング21の内側には、互いに径が異なる外側筒状部材29および内側筒状部材30が設置されている。内側筒状部材30および外側筒状部材29の可動弁体部25側の端部には、それぞれ第1弁座部31および第2弁座部32が形成されている。また、外側筒状部材29と内側筒状部材30とによって、操作圧燃料導入穴32hが形成されている。操作圧燃料導入穴32hは、操作圧流出口21cを介して切替弁60の内部に連通している。
【0044】
図2に示すように、切替弁60は、プレッシャレギュレータ20の操作圧燃料導入穴32h内の燃料圧を切替えるためのもので、電磁コイル61と、圧縮コイルばね62と、合成樹脂製のボビン63と、バルブ67と、電磁コイル61の外周を覆うシールド65と、ステータコア68と、を備えている。
【0045】
ボビン63は、ボビン部73と、シリンダ部74と、燃料管部75と、を備えている。ボビン部73の外周には、電磁コイル61が巻きつけられている。一方、ボビン部73の内側には圧縮コイルばね62が収容されている。
【0046】
ボビン部73とシリンダ部74とは、内周面が同一面となるよう形成されており、バルブ67は、シリンダ部74の内部に往復動可能に収容されている。
【0047】
燃料管部75は、シリンダ部74の端部に形成されており、プレッシャレギュレータ20の操作圧流出口21cを介して燃料が流入される燃料流入管77と、燃料を燃料タンク2内にリターンするための燃料流出管78と、シリンダ部74の内側に向けた開口を形成する開口端部70と、を備えている。
【0048】
バルブ67は、略円柱形状の磁性体からなり、アーマチャ部71と、一方の端面に設けられたシール部64とを有している。バルブ67がシリンダ部74で移動してシール部64が開口端部70に押圧されることにより、燃料流入管77内の流路と燃料流出管78内の流路との連通が阻止されるようになっている。
【0049】
圧縮コイルばね62は、バルブ67が燃料流入管77内の流路と燃料流出管78内の流路との連通を阻止する方向に付勢している。
【0050】
このように構成される切替弁60において、電磁コイル61に通電されているON状態のときは、図3に示すように、バルブ67は、電磁コイル61により圧縮コイルばね62の付勢力に抗して吸引され、燃料流入管77内の流路と燃料流出管78内の流路とが連通される。したがって、燃料流入管77に流入された燃料は、シリンダ部74を経て燃料流出管78から排出される。
【0051】
一方、電磁コイル61に通電されていないOFF状態のときは、図4に示すように、バルブ67は、圧縮コイルばね62の付勢により燃料流入管77内の流路と燃料流出管78内の流路との連通を阻止する。したがって、燃料流入管77に流入された燃料は、バルブ67により燃料タンク2への流出を阻止される。
【0052】
次に、燃料圧を高圧にする高圧供給状態におけるプレッシャレギュレータ20の作用について説明する。
【0053】
燃料ポンプユニット11(図1参照)の運転中において、ECU51により燃料圧が高圧に設定されると、図3に示すように、切替弁60がECU51によりON状態に制御される。
【0054】
このとき、バルブ67のシール部64が開口端部70から離隔し、燃料流入管77内の流路と燃料流出管78内の流路とが連通する。そのため、操作圧燃料導入穴32hは、燃料タンク2内と連通し、排出穴31hおよび操作圧燃料導入穴32hのいずれもが大気圧となる。したがって、調圧室23の内部の燃料のみが調圧部材22を開弁方向に付勢する。つまり、調圧部材22の有効受圧面積が、隔壁部24の環状受圧面24aのみとなる。これにより、可動弁体部25の閉弁方向の推力が増加し、可動弁体部25を閉弁方向に付勢する圧縮コイルばね27の撓み量が減少することで、可動弁体部25が第1弁座部31および第2弁座部32に対して閉弁方向に変位する。
【0055】
この可動弁体部25の閉弁方向への変位により、燃料通路15から分岐通路15aを介して調圧室23に供給される燃料量が減少し、結果として燃料通路15内を流通する燃料が高圧に調圧される。
【0056】
一方、燃料圧を低圧にする低圧供給状態におけるプレッシャレギュレータ20の作用について説明する。燃料ポンプユニット11の運転中において、ECU51により燃料圧が低圧に設定されると、図4に示すように、切替弁60がECU51によりOFF状態に制御される。
【0057】
このとき、バルブ67のシール部64が開口端部70に当接し、燃料流入管77内の流路と燃料流出管78内の流路との連通が阻止される。そのため、燃料流入管77と、プレッシャレギュレータ20の操作圧燃料導入穴32hは、燃料下流側における端部が閉塞されるため、操作圧燃料導入穴32h内の燃料圧は、調圧室23内の燃料圧と等しくなる。つまり、排出穴31hのみが大気圧となり、調圧室23の内部の燃料および操作圧燃料導入穴32hの燃料が調圧部材22を開弁方向に付勢する。したがって、調圧部材22の有効受圧面積が拡大し、隔壁部24の環状受圧面24aおよび操作圧燃料導入穴32hに対向する略円形の受圧面を含むものとなる。したがって、可動弁体部25の開弁方向の推力が増加し、可動弁体部25を開弁方向に付勢する圧縮コイルばね27の撓み量が増加することで、可動弁体部25が第1弁座部31および第2弁座部32に対して開弁方向に変位する。
【0058】
そして、その可動弁体部25の開弁方向への変位により燃料通路15から分岐通路15aを介して調圧室23に供給される燃料が増加し、結果として燃料通路15内を流通する燃料が低圧に調圧される。
【0059】
図5に示すように、本実施の形態に係るエンジン1を搭載した車両は、エンジン回転数センサ41、エアフロメータ42、吸気温センサ43、スロットル開度センサ44、冷却水温センサ45、アクセル開度センサ46、燃料温度センサ47および大気圧センサ48を備えている。これらのセンサは、検出結果を表す信号をECU51にそれぞれ出力するようになっている。
【0060】
エンジン回転数センサ41は、エンジン1のクランクシャフトの回転数を検出し、エンジン回転数NeとしてECU51に出力する。エアフロメータ42は、図示しないスロットルバルブより吸気上流側に配置され、吸入空気量に応じた検出信号をECU51に出力する。吸気温センサ43は、図示しない吸気マニホールドに配置され、吸入空気の温度に応じた検出信号をECU51に出力する。スロットル開度センサ44は、スロットルバルブの開度に応じた検出信号をECU51に出力する。
【0061】
冷却水温センサ45は、エンジン1のシリンダブロックに形成されたウォータージャケットに配置されており、エンジン1の冷却水温Twに応じた検出信号をECU51に出力する。アクセル開度センサ46は、アクセルペダルの踏み込み量に応じた検出信号をECU51に出力する。
【0062】
燃料温度センサ47は、燃料通路15内を流通する燃料の温度に応じた検出信号をECU51に出力する。大気圧センサ48は、大気圧に応じた検出信号をECU51に出力する。
【0063】
燃料供給装置8の一部を構成するECU51は、図5に示すように、CPU(Central Processing Unit)52、RAM(Random Access Memory)53、ROM(Read Only Memory)54およびバックアップメモリ55などを備えている。なお、本実施の形態に係るECU51は、本発明に係る切替制御手段および燃料噴射制御手段を構成する。
【0064】
ROM54は、燃料圧切替制御および気筒5における燃料噴射制御を実行するための制御プログラムを含む各種制御プログラムや、これらの各種制御プログラムを実行する際に参照されるマップなどが記憶されている。CPU52は、ROM54に記憶された各種制御プログラムやマップに基づいて各種の演算処理を実行するようになっている。また、RAM53は、CPU52による演算結果や、上述した各センサから入力されたデータ等を一時的に記憶するようになっている。バックアップメモリ55は、不揮発性のメモリにより構成されており、例えばエンジン1の停止時に保存すべきデータ等を記憶するようになっている。
【0065】
CPU52、RAM53、ROM54およびバックアップメモリ55は、バス58を介して互いに接続されるとともに、入力インターフェース56および出力インターフェース57と接続されている。
【0066】
入力インターフェース56には、エンジン回転数センサ41、エアフロメータ42、吸気温センサ43、スロットル開度センサ44、冷却水温センサ45、アクセル開度センサ46、燃料温度センサ47および大気圧センサ48が接続されている。さらに、入力インターフェース56には、オルタネータ35が接続されている。なお、車両がECU51以外の他のECUを搭載し、これらのセンサのうち少なくとも一部から出力された信号が、当該他のECUを介してECU51に入力されるようにしてもよい。
【0067】
出力インターフェース57は、インジェクタ3、点火プラグ6、FPC17、切替弁60や図示しないスロットルバルブなどに接続されている。そして、ECU51は、上記した各種センサの出力に基づいて、燃料圧切替制御および燃料噴射制御などを含む各種制御を実行する。
【0068】
本実施の形態において、ECU51は、オルタネータ35の起電力を検出するようになっている。図6は、本実施の形態における電力供給ユニット34周辺の回路図である。
【0069】
電力供給ユニット34は、エンジン1に機械的に接続されるオルタネータ35と、オルタネータ35に電気的に接続されるバッテリ37とを有している。オルタネータ35は、エンジン1にベルト36で接続され、ベルト36を介してエンジン1から駆動力が入力されるようになっている。
【0070】
オルタネータ35は、図示しない固定子のステータコイル、回転子のロータコイル、整流器およびレギュレータから構成されている。ロータコイルは、レギュレータを介してイグニッションスイッチ38の一端子に接続されている。イグニッションスイッチ38の他端子はバッテリ37に接続されており、イグニッションスイッチ38がON状態に移行すると、バッテリ37からレギュレータを介してロータコイルに通電され、ロータコイルが磁化される。エンジン1により生成された駆動力は、ロータコイルに入力されるようになっており、エンジン1の回転に連動してロータコイルが回転すると、ステータコイルに交流電圧が発生する。発生した交流電圧は整流器で直流電圧に変換され、この直流電圧がオルタネータ35の起電圧としてバッテリ37に印加される。
【0071】
オルタネータ35の起電力は、エンジン回転数Neに応じて変化する。エンジン回転数Neが高回転数である場合には、オルタネータ35の起電力は、例えば14[V]の近傍になる。一方、エンジン回転数Neが低回転数である場合には、オルタネータ35の起電力は例えば8[V]の近傍になる。
【0072】
また、オルタネータ35はECU51に接続されており、オルタネータ35の起電力がECU51に入力されるようになっている。また、切替弁60の電磁コイル61は、ECU51に接続されており、オルタネータ35の起電力に応じた電圧が電磁コイル61に印加されるようになっている。つまり、切替弁60の電磁コイル61に印加される電圧は、オルタネータ35の起電力を検出することにより求められる。
【0073】
また、ECU51は、CPU52(図5参照)により制御されるトランジスタ69を有している。トランジスタ69は、オルタネータ35の起電力を切替弁60の電磁コイル61に印加するON状態と、オルタネータ35の起電力が切替弁60の電磁コイル61に印加されないOFF状態とのいずれかの状態をとるようになっている。
【0074】
図7は、以上のように構成された燃料供給装置8の動作を示すタイミングチャートである。最初に、図7において、燃料圧が低圧から高圧に切替えられる箇所について説明する。また、オルタネータ35の起電力Ebが12[V]である場合を例に説明する。
【0075】
まず、ECU51は、車両の走行状態に基づいて、時刻T0より前に燃料圧を低圧から高圧に切替える燃料圧切替要求が発生したと判断している。そして、ECU51は、オルタネータ35の起電力Ebを検出すると、後述するように設定される時刻T0、すなわち切替タイミングにおいて、オルタネータ35の起電力が切替弁60の電磁コイル61に印加されるよう、トランジスタ69をON状態にする(実線81参照)。
【0076】
トランジスタ69がON状態になると、電磁コイル61に印加される電圧が0[V]から12[V]になる(実線82参照)。このとき、切替弁60の電磁コイル61に電圧Ebが印加されると、切替弁60の電磁コイル61に供給される電流Iは、以下の式(1)で表される。
【0077】
I(t)=Eb/R(1−exp(−t/τ)) (1)
ここで、Ebは、オルタネータ35の起電力であり、τは、L/Rにより表される時定数である。また、Rは、電磁コイル61の電気抵抗、Lは、電磁コイル61のインダクタンスを表している。
【0078】
このため、電磁コイル61に供給される電流Iは、式(1)に表される応答特性にしたがって上昇する(実線83参照)。このような電流Iが電磁コイル61に供給されると、切替弁60のバルブ67に加わる吸引力Fは、以下の式(2)により表される。
【0079】
F = Φ/(2・μ・S) (2)
式(2)において、μは透磁率であり、真空の透磁率と比透磁率の積により求められる。また、Sは磁気通路の断面積を表している。また、Φは、磁気ギャップ中の磁束であり、以下の式(3)により表される。
【0080】
Φ = n・(I/R) (3)
式(3)において、nは電磁コイル61のターン数、Iは上記式(1)により求められる電流、Rは磁気抵抗をそれぞれ表している。
【0081】
したがって、電磁コイル61に供給される電流Iが上記式(1)にしたがって増加すると、電磁コイル61のバルブ67に対する吸引力は、式(2)にしたがって増加する。
【0082】
そして、時刻T1において、バルブ67に対する電磁コイル61の吸引力が、圧縮コイルばね62のバルブ67に対する付勢力より大きくなると、バルブ67のシール部64が開口端部70に当接する下死点から離隔する上死点の方向に移動を開始する(実線84参照)。その結果、プレッシャレギュレータ20の操作圧燃料導入穴32h内の燃料圧、すなわちパイロット圧が300[kPa]から大気圧に低下する(実線85参照)。
【0083】
これにより、プレッシャレギュレータ20の可動弁体部25は、オーバーシュートを経て閉弁方向に変位し(実線86参照)、これに伴い、燃料通路15内を流通する燃料も、時刻T2において一旦高圧となった後、オーバーシュートを経て時刻T3において高圧の定常状態となる(実線87参照)。
【0084】
ところで、この可動弁体部25のオーバーシュート量および変位の脈動の収束の特性は、プレッシャレギュレータ20の構造に依存するため、予め実験的な測定により求めることができる。これに対し、切替弁60のバルブ67が下死点から上死点に移動を開始する時刻T1は、上記式(1)に示すように、電磁コイル61に印加される電圧Ebに応じて電磁コイル61に供給される電流Iが変わるため、毎回異なる値となる。つまり、オルタネータ35の起電力Ebによって時刻T0からT2までの時間t1が変動する。
【0085】
したがって、本実施の形態に係るECU51は、燃料圧を低圧から高圧に切替える際に、オルタネータ35の起電力Ebを検出することにより、切替り遅れ時間t1を算出し、この算出した切替り遅れ時間t1および予め求められた脈動時間t2に基づいて燃料圧の切替タイミングT0を制御するようになっている。ここで、本実施の形態に係るオルタネータ35の起電力Ebは、本発明に係る電気的特性を意味する。
【0086】
次に、図7において、燃料圧が高圧から低圧に切替えられる箇所について説明する。ECU51は、車両の暖機時や燃料の高温時などに燃料圧を高圧に設定した状態で、車両の暖機が終了したり燃料温度が低下した場合に、燃料圧を高圧から低圧に低下する燃料圧切替制御を実行するようになっている。
【0087】
ECU51は、車両の暖機時や燃料の高温時などに燃料圧を高圧に設定した状態で、車両の暖機が終了したり燃料温度が低下した場合には、燃料圧を高圧から低圧に切替える燃料圧切替要求が発生したと判断する。
【0088】
そして、ECU51は、切替弁60の電磁コイル61に印加されているオルタネータ35の起電力が遮断されるよう、後述するように設定される時刻T0'、すなわち切替タイミングにおいて、トランジスタ69をON状態からOFF状態に移行する(実線81参照)。
【0089】
トランジスタ69がOFF状態になると、電磁コイル61に印加される電圧が12[V]から0[V]になる(実線82参照)。このとき、切替弁60の電磁コイル61に印加されていた電圧がEbから0になり、切替弁60の電磁コイル61に供給される電流I(t)は、以下の式(4)で表される。
【0090】
I(t)=Eb/R・exp(−t/τ) (4)
そのため、電磁コイル61に供給される電流Iは、式(4)に表される応答特性にしたがって減少する(実線83参照)。
【0091】
また、切替弁60のバルブ67に加わる吸引力Fは、上述した式(2)および式(3)により表される。したがって、電磁コイル61に供給される電流Iが上記式(4)にしたがって減少すると、電磁コイル61のバルブ67に対する吸引力は、式(2)にしたがって減少する。
【0092】
そして、時刻T1'において、電磁コイル61のバルブ67に対する吸引力が、圧縮コイルばね62のバルブ67に対する付勢力より小さくなると、バルブ67のシール部64が開口端部70から離隔した上死点から下死点の方向に移動を開始する(実線84参照)。
【0093】
そして、時刻T2'において、バルブ67のシール部64が開口端部70に当接すると(実線84参照)、プレッシャレギュレータ20の操作圧燃料導入穴32h内の燃料圧、すなわちパイロット圧が大気圧から300[kPa]に上昇する(実線85参照)。
【0094】
これにより、燃料通路15内を流通する燃料の燃料圧は、プレッシャレギュレータ20の可動弁体部25の開弁方向への変位に応じて、時刻T3'において一旦目標となる低圧に達すると、オーバーシュートを経て(実線87参照)、時刻T4'において低圧となる(実線87参照)。
【0095】
燃料圧を低圧から高圧に切替える場合と同様、可動弁体部25のオーバーシュート量および変位の脈動の収束は、予め実験的な測定により求めることができる。また、切替弁60のバルブ67が上死点から下死点に到達するまでにかかる時間(時刻T1'〜T2')も、予め実験的な測定により求めることができる。これに対し、バルブ67が上死点から下死点に向けて移動を開始する時刻T1'は、上記式(4)に示すように、切替え開始時に電磁コイル61に印加されている電圧Ebに応じて電磁コイル61に供給される電流Iが変わるため変動する。つまり、オルタネータ35の起電力によって切替り遅れ時間t1が変動する。
【0096】
したがって、本実施の形態に係るECU51は、燃料圧を高圧から低圧に切替える際に、オルタネータ35の起電力Ebを検出することにより、切替り遅れ時間t1を予測し、この予測した切替り遅れ時間t1に基づいて燃料圧の切替タイミングT0'を制御するようになっている。
【0097】
オルタネータ35の起電力Ebと切替り遅れ時間t1とは、切替り遅れ時間マップとして予め対応付けられている。ECU51は、高圧への切替時および低圧への切替時に使用する切替り遅れ時間マップをそれぞれROM54に予め記憶しており、ECU51は、オルタネータ35の起電力Ebを表す信号を取得すると、切替り遅れ時間マップを参照して切替り遅れ時間t1を算出するようになっている。
【0098】
燃料圧が低圧から高圧に切替る場合には、オルタネータ35の起電力Ebが小さいほど、トランジスタ69をON状態にしてからバルブ67が移動を開始するまでの時間が長くなる。したがって、ECU51は、オルタネータ35の起電力Ebが小さいほど、トランジスタ69をOFF状態にするタイミングを前倒しすることになる。一方、燃料圧が高圧から低圧に切替る場合には、オルタネータ35の起電力Ebが大きいほど、トランジスタ69をOFF状態にしてからバルブ67が移動を開始するまでの時間が長くなる。したがって、ECU51は、オルタネータ35の起電力Ebが大きいほど、トランジスタ69をOFF状態にするタイミングを前倒しすることになる。
【0099】
また、燃料温度が低下すると、燃料の粘性が高まるため、プレッシャレギュレータ20の可動弁体部25の変位に時間がかかる。したがって、ECU51は、予め実験的な測定により求められている脈動時間t2を燃料温度により補正するようにしてもよい。
【0100】
図8は、4つの気筒5を構成する#1〜#4気筒の噴射タイミングを示すタイミングチャートである。
【0101】
ECU51は、エンジン回転数センサ41からのピストンの位置、および吸気カム角センサからのカム軸回転位相の情報に基づき、燃料噴射タイミングを決定しインジェクタ3に信号を送る。インジェクタ3は、ECU51の信号に従って、指示された噴射タイミングで燃料を噴射する。ここで、各気筒5における燃料噴射および点火の順序は、クランクシャフトにねじれが生じないよう、#1気筒、#3気筒、#4気筒、#2気筒の順に行われるようになっている。
【0102】
図8に示すように、ECU51は、車速やアクセル開度など車両の走行状態に基づいて目標空燃比を設定し、エアフロメータ42から吸入空気量を表す信号を入力すると、各気筒5に対する燃料噴射量を算出する。そして、後述するように、燃料圧切替制御により設定されている燃料圧に基づき各気筒5における燃料噴射時間taを設定する。また、設定した燃料噴射時間taと、エンジン回転数センサ41から入力される信号とに基づき、各気筒5において燃料を噴射していない時間tbと、ある気筒5において燃料噴射が終了してから次の気筒5において燃料噴射が開始されるまでの時間、すなわち噴射インターバルtcとを算出するようになっている。ここで、本実施の形態に係る燃料噴射時間taは、本発明に係る燃料噴射期間を意味する。
【0103】
インジェクタ3が開弁した際に各気筒5の燃焼室内に噴射される燃料噴射量は、インジェクタ3の開弁時間および燃料圧に応じて求められる。
【0104】
図9は、インジェクタ3の開弁時間を同一にした場合における燃料圧と燃料噴射量との関係を示すグラフである。図9に示すように、インジェクタ3による燃料噴射量は、燃料圧の平方根に比例している。そのため、ECU51は、車速やアクセル開度などに基づいて、各気筒5の燃焼室に供給される燃料量を算出すると、燃料圧に応じてインジェクタ3の開弁時間を設定するようになっている。
【0105】
したがって、図8に示すように、燃料圧の切替えが発生すると、燃料圧の脈動は時間t2続くことになるが、この脈動時間t2の間にいずれかの気筒5において燃料噴射が実行されると、実燃料噴射量が目標燃料噴射量から乖離するおそれがあり、結果として実空燃比が目標空燃比から乖離する可能性がある。そのため、ECU51は、原則として、脈動時間t2が噴射時間taと重ならないよう燃料圧の切替タイミングを設定する燃料圧切替制御を実行するようになっている。
【0106】
一方、図8に示すように、噴射インターバルtcが脈動時間t2より短くなると、ECU51がどのように燃料圧の切替タイミングを設定したとしても、脈動時間t2が燃料噴射時間taと重なることになる。
【0107】
そこで、ECU51は、燃料噴射時間taと脈動時間t2が重なる場合には、以下に第1の実施例および第2の実施例として説明するいずれかの方法で、燃料圧の切替タイミングを適切に設定することにより、実空燃比が目標空燃比から乖離することを抑制するようになっている。
【0108】
まず、図10を参照して第1の実施例を説明する。なお、以下の説明では、#2気筒において燃料噴射が実行される時に燃料圧の脈動が生じる場合を例に説明する。
【0109】
脈動時間t2において、燃料圧が燃料圧切替え終了後の目標燃料圧と一致するタイミングを節部とし、切替り遅れ時間t1の直後から節部までの時間を節部時間t3とする。そして、ECU51は、#2気筒の噴射時間taのうち、節部より前の時間における燃料噴射量と節部より後の時間における燃料噴射量とが一致するよう、節部時間t3の開始時刻を設定する。したがって、ECU51は、図10におけるS1とS2との面積が等しくなるように切替タイミングを設定する。
【0110】
この場合、まず、ECU51は、脈動の節部の後に発生するオーバーシュート量から、脈動中の節部の後における燃料噴射量(図10においてS2で示す)を算出する。また、脈動中の節部の前において、燃料噴射時間taの開始時点から図10のS2で示す燃料噴射量と等しい燃料噴射量(図10においてS1で示す)となるまでの時間を算出し、その終了時点を節部に一致させる。そして、節部から節部時間t3だけ遡った時刻を節部時間t3の開始時刻に設定する。また、切替り遅れ時間t1の終了時刻が節部時間t3の開始時刻となるよう切替り遅れ時間t1の開始時刻、すなわち切替タイミングを設定する。
【0111】
なお、ECU51は、図10におけるS2を算出する際に、脈動のうち燃料噴射時間taを過ぎている部分がある場合については、当該部分の燃料噴射量を0として計算する。
【0112】
次に、図11を参照して第2の実施例を説明する。
【0113】
ECU51は、上述した節部のタイミングが噴射時間taの中央となる時間に一致するよう切替タイミングを設定するようになっている。
【0114】
この場合、第1の実施例と比較して、節部の前後における燃料噴射量に差が生じるものの、噴射時間ta内において、節部より高圧側および低圧側の脈動のいずれもが含まれることになるので、節部の前後における燃料噴射量を算出することなく容易に節部の前後における燃料噴射量を互いに近づけることができる。そして、ECU51は、算出した節部時間t3と切替り遅れ時間t1とに基づいて切替タイミングを設定する。
【0115】
なお、脈動時間t2が噴射インターバルtcより短い場合(tc>t2)におけるECU51による燃料圧切替制御は、以下のようになる。
【0116】
ECU51は、燃料圧の予測精度が低下する脈動時間t2が噴射インターバルtc内に収まるよう切替タイミングを設定する。これにより、燃料噴射時における実燃料噴射量を目標燃料噴射量に近づけることが可能となる。
【0117】
したがって、ECU51は、ある気筒5において燃料噴射が終了した直後に脈動時間t2が開始するよう、燃料圧の切替タイミングを設定するようになっている。
【0118】
ここで、ECU51が燃料圧の切替指示を行ってから脈動時間が開始するまでの時間t1は、上述したように、例えばオルタネータ35の起電力Ebを用いて算出するようになっている。これにより、車両の走行状況に応じて時間t1は変化するものの、ECU51は時間t1を正確に予測し、燃料噴射が終了するタイミングから時間t1だけ早い時間に切替指示を行うことにより、脈動時間t2を燃料噴射が行われた直後に合わせることができる。
【0119】
また、脈動時間t2より燃料噴射時間taが非常に長い場合(ta>>t2)におけるECU51による燃料圧切替制御は、以下のようになる。
【0120】
ここで、燃料噴射時間taが脈動時間t2と比較しして非常に大きい(ta>>t2)とは、この燃料噴射時間ta内において、どのようなタイミングで燃料圧の切替えが行われたとしても脈動に起因した燃料噴射量の変動の割合が、燃料噴射時間ta全体における燃料噴射量と比較して十分小さく、実空燃比と目標空燃比との乖離が燃費や排気ガス特性の悪化を生じさせない値を意味する。この値は、予め実験的な測定により求められている。
【0121】
したがって、ECU51は、燃料噴射時間ta内に脈動が収束する限り、切替タイミングの設定に制限がないため、本実施の形態においては、切替タイミングを現在の時刻とし、燃料圧の切替えを開始するようにする。なお、ECU51は、燃料噴射時間ta内に脈動が収束する限り、切替タイミングを現在の時刻より遅らせてもよい。
【0122】
図12は、エンジン回転数および燃料噴射量に対し、燃料圧の切替えが可能な領域を示す図である。
【0123】
図12において、領域1は、脈動時間t2より燃料噴射時間taが非常に長い場合(ta>>t2)を示す。領域2は、脈動時間t2が噴射インターバルtcより短い場合(tc>t2)を示す。領域3は、脈動時間t2が噴射インターバルtc以上となる場合(tc≦t2)であるが、燃料噴射時に脈動が十分に収束しており、実空燃比と目標空燃比との乖離がほとんど発生しない領域を表す。また、領域4は、脈動時間t2が、燃料噴射時間taおよびその燃料噴射時間taの前後の噴射インターバルtcを足し合わせた時間よりも短い場合(ta+2tc>t2)を示す。従来の燃料供給装置は、少なくとも領域4において実空燃比を目標空燃比から乖離させずに燃料圧を切替えることに関しては考慮していなかった。これに対し、本発明に係る燃料供給装置は、上述したように、脈動時間t2が噴射インターバルtcより長い場合においても、ta+2tc>t2を満たす領域4において実空燃比を目標空燃比と略一致させることが可能となる。したがって、燃料圧の切替えが可能となる領域を、従来と比較して大幅に拡大することができる。
【0124】
次に、本実施の形態に係る燃料圧切替制御処理について図13を参照して説明する。なお、以下の処理は、ECU51を構成するCPU52によって所定のタイミングで実行されるとともに、CPU52によって処理可能なプログラムを実現する。また、以下の説明では、燃料圧を低圧から高圧に切替える場合を例に説明する。
【0125】
図13に示すように、ECU51は、まず、車両の走行状態を取得し、燃料圧切替要求が発生したか否かを判定する(ステップS11)。具体的には、ECU51は、冷却水温センサ45、燃料温度センサ47などの各種センサから入力される信号に基づいて、車両が暖機中であるか否か、あるいは燃料が高温であるか否かを判定し、暖機中あるいは高燃料温度であると判断した場合には、燃料圧を高圧状態に維持し、暖機中および高燃料温度のいずれでもないと判断した場合には、燃料圧を低圧状態に維持する。
【0126】
そして、ECU51は、燃料圧が低圧の場合において、暖機中および高燃料温度のいずれかに該当した場合には、燃料圧切替要求が発生したと判断する。
【0127】
ECU51は、燃料圧切替要求が発生したと判断した場合には(ステップS11でYES)、ステップS12に移行する。一方、燃料圧切替要求が発生していないと判断した場合には(ステップS11でNO)、STARTに戻る。
【0128】
次に、ECU51は、燃料噴射時間taおよび噴射インターバルtcを取得する(ステップS12)。具体的には、ECU51は、燃料噴射制御において設定されている燃料噴射時間taおよび噴射インターバルtcを参照し、これらの値を取得する。
【0129】
次に、ECU51は、切替り遅れ時間t1、脈動時間t2および節部時間t3を算出する(ステップS13)。切替り遅れ時間t1は、上述したように、切替弁60の電磁コイル61に供給される電力の電気的特性、すなわち電圧Ebに基づいて算出する。また、脈動時間t2および節部時間t3は、上述したように、予め実験的な測定により求められているとともに、燃料温度センサ47により検出された燃料温度に基づいて補正されている。
【0130】
次に、ECU51は、燃料噴射時間taと脈動時間t2とを比較し、燃料噴射時間taが脈動時間t2と比較して非常に大きいか否かを判断する(ステップS14)。上述したように、燃料噴射時間taが脈動時間t2と比較しして非常に大きい(ta>>t2)とは、この燃料噴射時間ta内において、どのようなタイミングで燃料圧の切替えが行われたとしても、実空燃比と目標空燃比との乖離が燃費や排気ガス特性の悪化を生じさせない値を意味する。
【0131】
ECU51は、燃料噴射時間taが脈動時間t2と比較して非常に大きい(ta>>t2)と判断した場合には(ステップS14でYES)、ステップS15に移行する。一方、燃料噴射時間taが脈動時間t2と比較して非常に大きくはないと判断した場合には(ステップS14でNO)、ステップS16に移行する。
【0132】
ステップS15に移行した場合、ECU51は、燃料噴射時間ta内に脈動が収束する限り、切替タイミングの設定に制限がないため、切替タイミングを現在の時刻とし、燃料圧の切替えを開始するようにする。
【0133】
一方、ステップS16に移行した場合、ECU51は、噴射インターバルtcと脈動時間t2とを比較し、噴射インターバルtcが脈動時間t2より大きいか否かを判断する。
【0134】
ECU51は、噴射インターバルtcが脈動時間t2より大きい(tc>t2)と判断した場合には(ステップS16でYES)、ステップS17に移行する。なお、このステップにおいて、図12に示した領域3が含まれる場合もYESと判断するようにしてもよい。一方、噴射インターバルtcが脈動時間t2以下である(tc≦t2)と判断した場合には(ステップS16でNO)、ステップS18に移行する。
【0135】
ステップS17に移行した場合、ECU51は、次に燃料噴射が行われる気筒5において燃料噴射が終了したと同時に脈動時間t2が開始するよう、トランジスタ69をOFF状態からON状態に切替えるタイミングを設定する。このとき、ECU51は、次に燃料噴射が行われる気筒5において燃料噴射が終了する時間よりも、ステップS12で算出した切替り遅れ時間t1だけ早い時間が、トランジスタ69をOFF状態からON状態に切替えるタイミングとなるよう設定する。
【0136】
一方、ステップS18に移行した場合、ECU51は、ある気筒5における燃料噴射時間taおよびその燃料噴射時間taの前後の噴射インターバルtcを足し合わせた時間と、脈動時間t2とを比較する。比較の結果、ECU51は、脈動時間t2が、燃料噴射時間taおよびその燃料噴射時間taの前後の噴射インターバルtcを足し合わせた時間よりも短い(ta+2tc>t2)と判断した場合には(ステップS18でYES)、ステップS19に移行する。一方、ECU51は、脈動時間t2が、燃料噴射時間taおよびその燃料噴射時間taの前後の噴射インターバルtcを足し合わせた時間以上である(ta+2tc≦t2)と判断した場合には(ステップS18でNO)、ステップS20に移行する。
【0137】
ステップS19に移行した場合、ECU51は、節部時間t3および節部の前後における燃料噴射量に応じて切替タイミングを設定する。この場合、ECU51は、上述した第1の実施例あるいは第2の実施例に従い、切替タイミングを設定し、この切替タイミングにおいてトランジスタ69をOFF状態からON状態に切替える。
【0138】
一方、ステップS20に移行した場合には、ECU51は、燃料切替タイミングをどのように設定しても燃料圧の脈動に起因して実燃料噴射量が目標燃料噴射量から乖離し、実空燃比が目標空燃比から乖離する可能性が高いため、燃料圧の切替タイミングの設定を回避する。
【0139】
なお、燃料圧を高圧から低圧に切替える場合においても、ECU51は、図12に示した燃料圧切替制御処理と同様の処理を実行するようになっているが、上述したように、ECU51は、切替え遅れ時間t1にバルブ67が上死点から下死点に移動する時間を加えるようにする。
【0140】
以上のように、本発明の実施の形態に係る燃料供給装置8は、燃料噴射中に燃料圧を切替えた場合には、燃料圧に脈動が発生し、実燃料噴射量が目標燃料噴射量と乖離するものの、目標燃料圧より高圧となり燃料噴射量が増加する割合と燃料圧より低圧となり燃料噴射量が減少する割合とを略等しくすることにより、燃料噴射のタイミングにおけるその燃料噴射量を目標燃料噴射量に近づけることができる。したがって、燃料噴射が行われていない時間内に燃料圧の切替えが実行できない場合においても、燃料圧の脈動が燃料噴射に与える影響を低減し、実空燃比と目標空燃比との乖離を防止あるいは最小限にすることができる。
【0141】
また、切替り遅れ時間に基づいて切替タイミングを設定するので、燃料噴射制御による燃料噴射のタイミングとの調整の精度を高めることができる。したがって、燃料圧の切替要求が発生した場合においても燃料圧の脈動が燃料噴射に与える影響を低減し、実空燃比と目標空燃比との乖離を防止することができる。
【0142】
また、車両の走行状態に応じて切替弁60の切替り遅れ時間が変動する場合においても、電力の電気的特性に応じて切替り遅れ時間を算出することにより、燃料噴射制御による燃料噴射のタイミングとの調整の精度を高めることができる。
【0143】
また、調圧部材22が燃料圧を受ける面積を可変とすることにより燃料圧が2段階に調圧される。したがって、プレッシャレギュレータ20の内部を3室にしたり、プレッシャレギュレータ20を2つ設けることなくインジェクタ3に供給される燃料圧を2段階に制御することができる。このため、燃料供給装置8を小型化することができる。
【0144】
なお、以上の説明において、プレッシャレギュレータ20および切替弁60の構成は一例である。したがって、小型化、低コスト化あるいは燃料圧の切替え応答性などの点で本実施の形態に係る燃料供給装置8より低下する可能性が高いものの、例えば、プレッシャレギュレータ20を公知のものと置き換えてもよい。
【0145】
以上のように、本発明に係る燃料供給装置は、燃料圧の切替え指示を行うタイミングを最適化し、燃料圧が切替った場合においても実際の燃料噴射量が所望の燃料噴射量から乖離することを抑制することにより、燃費向上を図ることができるという効果を奏するものであり、燃料タンク内に貯留された燃料を調圧して燃料消費部に供給する燃料供給装置に有用である。
【符号の説明】
【0146】
1 エンジン
2 燃料タンク
3 インジェクタ(燃料消費部)
5 気筒(燃料消費部)
7 吸気ポート
8 燃料供給装置
10 燃料圧送機構
11 燃料ポンプユニット
15 燃料通路
15a 分岐通路
19a 大気圧導入穴
20 プレッシャレギュレータ(可変燃料圧調整弁)
21 ハウジング
21a 流体導入口
21b 流体排出口
21c 操作圧流出口
22 調圧部材
23 調圧室
24 隔壁部
24a 環状受圧面
25 可動弁体部
26 背圧室
31 第1弁座部
31h 排出穴
32 第2弁座部
32h 操作圧燃料導入穴
35 オルタネータ
41 エンジン回転数センサ
42 エアフロメータ
44 スロットル開度センサ
45 冷却水温センサ
47 燃料温度センサ
51 ECU(切替制御手段、燃料噴射制御手段)
60 切替弁
61 電磁コイル
67 バルブ
69 トランジスタ
70 開口端部
75 燃料管部
77 燃料流入管
78 燃料流出管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料を調圧し燃料消費部に供給する燃料供給装置であって、
少なくとも前記燃料の燃料圧を高圧にする高圧供給状態と低圧にする低圧供給状態とのいずれかの状態を取り得る可変燃料圧調整弁と、
入力される電力の電気的特性に応じて前記可変燃料圧調整弁の状態を前記高圧供給状態と前記低圧供給状態との間で切替える切替弁と、
前記切替弁に対する前記電力の入力の有無を切替える切替タイミングを設定し、設定した前記切替えタイミングで前記電力の入力の有無を切替える切替制御手段と、
前記燃料消費部における燃料噴射を制御する燃料噴射制御手段と、を備え、
前記切替制御手段は、切替えにより発生する燃料圧の脈動に起因して、目標燃料圧より低圧で噴射されることとなる燃料量と、目標燃料圧より高圧で噴射されることとなる燃料量とが略等しくなるよう切替タイミングを設定することを特徴とする燃料供給装置。
【請求項2】
前記切替制御手段は、前記脈動中に燃料圧が前記目標燃料圧と一致する節部の前後における燃料噴射期間内の燃料噴射量が一致するよう前記切替タイミングを設定することを特徴とする請求項1に記載の燃料供給装置。
【請求項3】
前記切替制御手段は、前記脈動中に燃料圧が前記目標燃料圧と一致する節部のタイミングを燃料噴射期間の中央となる時間に一致させるよう前記切替タイミングを設定することを特徴とする請求項1に記載の燃料供給装置。
【請求項4】
前記切替制御手段は、前記切替弁に入力される電力の電気的特性が切替ってから前記可変燃料圧調整弁の状態が切替るまでの切替り遅れ時間に基づいて前記切替タイミングを設定することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1の請求項に記載の燃料供給装置。
【請求項5】
前記切替制御手段は、前記切替弁に入力される電力の電気的特性に応じて前記切替り遅れ時間を算出することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1の請求項に記載の燃料供給装置。
【請求項6】
前記可変燃料圧調整弁は、前記燃料が導入される燃料導入口および該燃料が排出される燃料排出口を有するハウジングと、前記ハウジングとの間に前記燃料導入口に連通する調圧室を形成する隔壁部と前記調圧室内の燃料圧に応じて前記調圧室を前記燃料排出口に連通させる開弁方向に変位する可動弁体部とを有する調圧部材と、を備え、
前記調圧室の内部に前記燃料排出口に連通するとともに前記可動弁体部の変位に応じて開度が変化する排出穴を形成する第1弁座部と、前記調圧室の内部に前記可動弁体部の変位に応じて開度が変化するとともに操作圧を有する燃料が導入される操作圧燃料導入穴を形成する第2弁座部とが、それぞれ前記ハウジングに設けられ、
前記調圧部材が前記開弁方向に燃料圧を受ける面積が、前記操作圧燃料導入穴内の操作圧に応じて変化することを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1の請求項に記載の燃料供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−32722(P2013−32722A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−168483(P2011−168483)
【出願日】平成23年8月1日(2011.8.1)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】