説明

燃料噴射装置

【課題】コモンレールを含まない構成の燃料噴射装置において、噴射の脈動を抑制し、噴射特性のばらつきを抑制することを課題とする。
【解決手段】燃料噴射装置10は、燃料蓄圧部21が形成された第1インジェクタ11、燃料蓄圧部22が形成された第2インジェクタ12、燃料蓄圧部23が形成された第3インジェクタ13、燃料蓄圧部24が形成された第4インジェクタ14と、燃料蓄圧部21、22、23、24へ燃料を供給する燃料ポンプ15と、第1インジェクタ11、第2インジェクタ12、第3インジェクタ13、第4インジェクタ14と燃料ポンプ15とをループ状に接続する燃料供給通路16と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンの燃料噴射装置は、コモンレール(蓄圧室)へ高圧燃料を蓄えた後、このコモンレールから各気筒のインジェクタに高圧燃料を供給する構成が採用されている。このようなコモンレールを用いることで、各気筒における燃料供給のばらつきや、インジェクタの噴射動作に起因する圧力脈動を緩和する。
【0003】
ところで、低コスト化を目的に、インジェクタ内に燃料容積部を形成して、コモンレールを廃止した構成の燃料噴射システムが特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−70799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1の燃料噴射システムでは、燃料ポンプからの燃料が枝状に分岐させた経路を通りインジェクタへ供給されていることから、噴射による脈動の影響により、インジェクタの噴射挙動が変わる場合が考えられる。また、レール容積が減少したため、噴射による脈動が大きい。
【0006】
そこで、本発明は、コモンレールを含まない構成の燃料噴射装置において、噴射の脈動を抑制し、噴射特性のばらつきを抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる課題を解決する本発明の燃料噴射装置は、内部に噴射燃料を蓄える燃料蓄圧部が形成されたインジェクタと、前記燃料蓄圧部へ燃料を供給する燃料ポンプと、前記インジェクタと前記燃料ポンプとをループ状に接続する燃料供給通路と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
このような構成とすることにより、噴射の脈動を抑制するとともに、噴射特性のばらつきを抑制する。特に、複数のインジェクタを備える燃料噴射装置では、燃料供給通路をループ状に接続したことにより、各インジェクタは対称性を有するため、噴射による脈動から受ける影響を同等にすることができる。これにより噴射のばらつきを抑制することができる。
【0009】
このような燃料噴射装置において、前記燃料ポンプ内に前記インジェクタへ供給する燃料を蓄えるポンプ内蓄圧部が形成された構成とすることができる。このような構成とすることにより、燃料ポンプ内の燃料の通路の構成をインジェクタと同等とすることができる。このため、燃料ポンプを含めた燃料供給通路の閉ループ構成において、噴射による脈動の伝達が等しくなり、脈動の影響を等しくし、噴射のばらつきを抑制することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の燃料噴射装置は、燃料供給通路をループ状に形成したことにより、噴射の脈動を抑制するとともに、噴射特性のばらつきを抑制する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の燃料噴射装置の概略構成を示した説明図である。
【図2】比較例の燃料噴射装置の概略構成を示した説明図である。
【図3】本発明の燃料噴射装置の構成を簡略化して示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態を図面と共に詳細に説明する。
【実施例1】
【0013】
本発明の実施例1について図面を参照しつつ説明する。図1は本発明の燃料噴射装置10の概略構成を示した説明図である。燃料噴射装置10は4気筒のエンジンに組みつけられ、エンジンの各気筒へ燃料を噴射する装置である。燃料噴射装置10は、エンジンの各気筒へ燃料を噴射する第1インジェクタ11、第2インジェクタ12、第3インジェクタ13、第4インジェクタ14を備えている。第1インジェクタ11の内部には、噴射燃料を蓄える燃料蓄圧部21が形成されている。各インジェクタの構造は同一で、第1インジェクタ11と同様に、第2インジェクタ12の内部には燃料蓄圧部22、第3インジェクタ13の内部には燃料蓄圧部23、第4インジェクタ14の内部には燃料蓄圧部24が形成されている。
【0014】
また、燃料噴射装置1は燃料蓄圧部21乃至24へ燃料を供給する燃料ポンプ15と、第1インジェクタ11乃至第4インジェクタ14と燃料ポンプ15とをループ状に接続する燃料供給通路16とを備えている。燃料供給通路16は燃料の流通する配管であって、インジェクタ間を接続する配管161、162、163及び、第3インジェクタ13と燃料ポンプ15とを接続する配管164、第4インジェクタ14と燃料ポンプ15とを接続する配管165は、全て内径が等しく、長さが等しい。
【0015】
燃料ポンプ15は、機械式、または電気式のポンプで内部に燃料蓄圧部21乃至24と同容積のポンプ内蓄圧部25が形成されており、ポンプ蓄圧部25内の燃料をリリーフする減圧弁26を備えている。減圧弁26はポンプ内蓄圧部25内の燃料が所定の圧力となった際に燃料をリリーフして燃料噴射装置1の安全を維持する。
【0016】
次に、燃料噴射装置1の効果を説明する。初めに、比較例の燃料噴射装置50について説明する。図2は比較例の燃料噴射装置50の概略構成を示した説明図である。比較例の燃料噴射装置50は、燃料供給通路56と各インジェクタの接続状態が異なる点で、燃料噴射装置1と異なっている。すなわち、比較例の燃料噴射装置50では、燃料供給通路56が分岐して各インジェクタに接続している。なお、その他の構成は本発明と同一であり、同一の構成については図面中、同一の参照番号を付して説明する。
【0017】
図2に示すように、燃料供給通路56の末端に接続する第1インジェクタ11は、燃料供給通路56の分岐がないため(図2中のA)、他のインジェクタとは異なる接続状態となっている。このため、第1インジェクタ11の噴射による脈動の分散経路と、他のインジェクタにおける噴射による脈動の分散経路が異なる。したがって、第1インジェクタ11の噴射による脈動の影響と、他のインジェクタの噴射による脈動の影響が異なり、噴射時の挙動が変わってくる。本発明の燃料噴射装置1はこのような問題を解消する。
【0018】
図3は、燃料噴射装置1の構成を簡略化して示した説明図である。図3の説明図では、第1インジェクタ11の噴射による脈動の影響が、ループ状に形成された燃料供給通路16を伝わる様子を示している。各インジェクタにおける噴射による脈動は、各インジェクタと接続される燃料供給通路16を伝わり分散される。例えば、図3に示すように、第1インジェクタ11の噴射による脈動は、燃料供給通路16の第2インジェクタ12が接続する側と第3インジェクタ13が接続する側の両方へ伝わる。また、第2インジェクタ12の噴射による脈動は、燃料供給通路16の第1インジェクタ11が接続する側と、第4インジェクタ14が接続する側の両方へ伝わる。第3インジェクタ13、第4インジェクタ14の場合も同様である。特に、燃料ポンプ15内にポンプ内蓄圧部25が形成されており、燃料ポンプ15内の燃料の通路の構成がインジェクタと同等であるため、噴射による脈動の伝達が等しく、脈動の影響が等しくなる。
【0019】
このように、燃料供給通路16がループ状に形成されていることから、各インジェクタは対称性を備え、各インジェクタ間における相違がないので、同等の挙動が得られる。これにより、パイロット噴射時などの噴射挙動が同等となり、噴射のばらつきが抑制される。また、各インジェクタをループ状の燃料供給通路16で接続したことにより、噴射による脈動が分散しやすく、より減衰の効果が得られる。
【0020】
上記実施例は本発明を実施するための例にすぎず、本発明はこれらに限定されるものではなく、これらの実施例を種々変形することは本発明の範囲内であり、さらに本発明の範囲内において、他の様々な実施例が可能であることは上記記載から自明である。
【符号の説明】
【0021】
10 燃料噴射装置
11 第1インジェクタ
12 第2インジェクタ
13 第3インジェクタ
14 第4インジェクタ
15 燃料ポンプ
16 燃料供給通路
21、22、23、24 燃料蓄圧部
25 ポンプ内蓄圧部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に噴射燃料を蓄える燃料蓄圧部が形成されたインジェクタと、
前記燃料蓄圧部へ燃料を供給する燃料ポンプと、
前記インジェクタと前記燃料ポンプとをループ状に接続する燃料供給通路と、
を備えたことを特徴とする燃料噴射装置。
【請求項2】
請求項1記載の燃料噴射装置において、
前記燃料ポンプは、内部に前記インジェクタへ供給する燃料を蓄えるポンプ内蓄圧部が形成されたことを特徴とする燃料噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−159681(P2010−159681A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−2084(P2009−2084)
【出願日】平成21年1月7日(2009.1.7)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】