説明

燃料噴射装置

【課題】1系統の燃料供給系で、パイロット噴射時は低圧噴射、メイン噴射時は高圧噴射となる噴射特性を実現する。
【解決手段】ノズルニードル43の低リフト域では、シート部431と弁座411との間の開口面積が小さいため、サック部414の圧力はコモンレール3の燃料圧力よりも大幅に低くなり、実質の噴射圧力も低いものとなる。そこで、燃料溜まり室413と制御室46とを連通させる連通路441を設け、ノズルニードル43が開弁向きに移動するのに伴って連通路441の開口面積が縮小されるように構成する。これにより、低リフト域(貫通孔441が全閉になる前の領域)では、高圧供給通路415と貫通孔441の両方から制御室46に高圧燃料が供給されるため、ノズルニードル43の移動速度は低くり、低リフト域の時間が従来よりも長くなる。そして、この低リフト域の噴射期間をパイロット噴射期間として利用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料を内燃機関に噴射するための燃料噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の圧縮着火式内燃機関用燃料噴射装置として、高圧燃料系と低圧燃料系の2系統の燃料供給系を有し、ノズルニードルのリフトにより使用する燃料供給系が切り替わる構造とし、噴射圧力を開弁初期は低圧とし、後期は高圧とするものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような燃料噴射装置は、微少噴射(パイロット噴射)時の低圧噴射による着火性向上、および、大噴射(メイン噴射)時の高圧噴射によるスモーク排出量の抑制に有効である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平09−014077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の従来の燃料噴射装置は、高圧燃料系と低圧燃料系の2系統の燃料供給系を有するため、装置の構造が複雑で高コストになるという問題があった。
【0006】
本発明は上記点に鑑みて、1系統の燃料供給系で、パイロット噴射時は低圧噴射、メイン噴射時は高圧噴射となる噴射特性を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、燃料を高圧化して吐出する燃料ポンプ(2)と、燃料ポンプ(2)から吐出された燃料を貯留するコモンレール(3)と、コモンレール(3)から供給された高圧燃料を内燃機関の燃焼室に噴射させる燃料噴射弁(4)とを備え、燃料噴射弁(4)は、燃料を噴射するための噴孔(412)およびこの噴孔(412)が開口する弁座(411)を有するノズルボデー(41)と、コモンレール(3)から高圧燃料が常時供給される制御室(46)を形成するシリンダ(44)と、制御室(46)の燃料を低圧部(1)に排出させる排出通路(416)を開閉する制御弁(47)と、一端側に形成されたシート部(431)が弁座(411)と接離して噴孔(412)を開閉するとともに、他端側に形成されたピストン部(432)がシリンダ(44)に摺動自在に挿入されるノズルニードル(43)と、ノズルニードル(43)の回りに形成され、コモンレール(3)から高圧燃料が常時供給される燃料溜まり室(413)とを備え、制御室(46)の燃料の圧力がピストン部(432)に作用し、その燃料の圧力によりノズルニードル(43)が閉弁向きに付勢される燃料噴射装置において、燃料溜まり室(413)と制御室(46)とを連通させる連通路(48、441)を備え、ノズルニードル(43)が閉弁位置にあるときは連通路(48、441)の開口面積は最大であり、ノズルニードル(43)が開弁向きに移動するのに伴って連通路(48、441)の開口面積が縮小されるように構成されていることを特徴とする。
【0008】
ところで、ノズルニードル(43)のリフト量が小さい領域では、シート部(431)と弁座(411)との間の開口面積が小さいため、シート部(431)と弁座(411)との当接部よりも下流側の空間であるサック部の圧力は低くなり、実質の噴射圧力も低いものとなる。
【0009】
そして、請求項1の発明によると、連通路(48、441)の開口面積によって制御室(46)への燃料流入量が変化し、制御室(46)への燃料流入量によってノズルニードル(43)の移動速度が変化する。具体的には、ノズルニードル(43)のリフト量が小さい領域(以下、低リフト域という)では、ノズルニードル(43)のリフト量が大きい領域(以下、高リフト域という)よりも制御室(46)への燃料流入量が多いため、ノズルニードル(43)の移動速度は低くなる。これにより、低リフト域の時間が従来よりも長くなり、実質噴射圧力が低い噴射期間を長く確保することができる。そして、この低リフト域の噴射期間をパイロット噴射期間として利用することにより、1系統の燃料供給系で、パイロット噴射時は低圧噴射、メイン噴射時は高圧噴射となる噴射特性を実現することができる。
【0010】
請求項2に記載の発明のように、請求項1に記載の燃料噴射装置において、連通路(441)はシリンダ(44)に形成された孔であり、ノズルニードル(43)によって連通路(441)の開口面積が制御される構成とすることができる。
【0011】
請求項3に記載の発明のように、請求項1に記載の燃料噴射装置において、連通路(48)は、ノズルニードル(43)の外周面とシリンダ(44)の内周面とのクリアランスにて構成することができる。
【0012】
請求項4に記載の発明では、燃料を高圧化して吐出する燃料ポンプ(2)と、燃料ポンプ(2)から吐出された燃料を貯留するコモンレール(3)と、コモンレール(3)から供給された高圧燃料を内燃機関の燃焼室に噴射させる燃料噴射弁(4)とを備え、燃料噴射弁(4)は、燃料を噴射するための噴孔(412)およびこの噴孔(412)が開口する弁座(411)を有するノズルボデー(41)と、コモンレール(3)から高圧燃料が常時供給される制御室(46)を形成するシリンダ(44)と、制御室(46)の燃料を低圧部(1)に排出させる排出通路(416)を開閉する制御弁(47)と、一端側に形成されたシート部(431)が弁座(411)と接離して噴孔(412)を開閉するとともに、他端側に形成されたピストン部(432)がシリンダ(44)に摺動自在に挿入されるノズルニードル(43)と、ノズルニードル(43)の回りに形成され、コモンレール(3)から高圧燃料が常時供給される燃料溜まり室(413)とを備え、制御室(46)の燃料の圧力がピストン部(432)に作用し、その燃料の圧力によりノズルニードル(43)が閉弁向きに付勢される燃料噴射装置において、ピストン部(432)とシリンダ(44)との間に配置されるとともに、ピストン部(432)およびシリンダ(44)に対して摺動自在な筒状のノズルガイド(49)を備え、ノズルニードル(43)が開弁向きに移動する際、ノズルニードル(43)が所定位置まで移動する間はノズルニードル(43)およびノズルガイド(49)が一体となって移動し、ノズルニードル(43)が所定位置まで移動した後はノズルガイド(49)が停止したままノズルニードル(43)のみが開弁向きに移動するように構成されていることを特徴とする。
【0013】
これによると、制御室(46)の燃料の圧力を受けて移動する部位の受圧面積によってノズルニードル(43)の移動速度が変化する。具体的には、ノズルニードル(43)が所定位置まで移動する間(以下、低リフト域という)は、ノズルニードル(43)およびノズルガイド(49)が受圧部であり、その後の高リフト域では、ノズルニードル(43)のみが受圧部であるため、受圧面積が相対的に大きい低リフト域ではノズルニードル(43)の移動速度は低くなる。これにより、低リフト域の時間が従来よりも長くなり、実質噴射圧力が低い噴射期間を確保することができる。また、高リフト域に移行すると、噴射圧力が高くなる。したがって、1系統の燃料供給系で、噴射初期は低噴射圧、噴射後期は高噴射圧となる噴射特性を実現することができる。
【0014】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態に係る燃料噴射装置の全体構成を示す図である。
【図2】第1実施形態に係る燃料噴射装置の噴射パターンの一例を示す図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係る燃料噴射装置における燃料噴射弁の要部を示す断面図である。
【図4】本発明の第3実施形態に係る燃料噴射装置における燃料噴射弁の要部を示す断面図である。
【図5】図4のA矢視図である。
【図6】本発明の第4実施形態に係る燃料噴射装置における燃料噴射弁の要部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0017】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について説明する。図1は本発明の第1実施形態に係る燃料噴射装置の全体構成を示す図である。
【0018】
図1に示すように、燃料噴射装置は、燃料を低圧状態で蓄える低圧部としての燃料タンク1、燃料タンク1から吸い上げた燃料を高圧化し吐出する燃料ポンプ2、燃料ポンプ2から吐出された燃料を貯留するコモンレール3、コモンレール3から供給された高圧燃料を多気筒圧縮着火式内燃機関(以下、内燃機関という。図示せず)の燃焼室に噴射させる燃料噴射弁4を備えている。
【0019】
燃料噴射弁4には、高圧配管6を介してコモンレール3から高圧燃料が供給され、燃料噴射弁4内のリーク燃料は、低圧配管7を介して燃料タンク1に戻されるようになっている。
【0020】
燃料噴射弁4は、略円筒状のノズルボデー41を備え、ノズルボデー41の一端側にはテーパ状の弁座411が形成され、この弁座411に、高圧燃料を内燃機関に噴出させる噴孔412が開口している。
【0021】
ノズルボデー41内には、コモンレール3から高圧燃料が常時供給される燃料溜まり室413が形成され、コモンレール3からの高圧燃料は燃料溜まり室413を介して噴孔412に向かって流れるようになっている。
【0022】
燃料溜まり室413には、略円柱状のノズルニードル43、円筒状のシリンダ44、およびノズルスプリング45が配置されている。
【0023】
ノズルニードル43はノズルボデー41に摺動自在に挿入されている。ノズルニードル43の一端側にはテーパ状のシート部431が形成され、ノズルニードル43の往復動に伴ってシート部431が弁座411に接離することにより、噴孔412が開閉される。なお、シート部431と弁座411との当接部よりも下流側にサック部414が形成され、このサック部414に噴孔412が接続されている。
【0024】
ノズルニードル43の他端側には円柱状のピストン部432が形成され、このピストン部432がシリンダ44に摺動自在に挿入されている。また、ノズルニードル43は、燃料溜まり室413の燃料の圧力によって開弁向きに付勢されるようになっている。
【0025】
シリンダ44内には制御室46が形成され、この制御室46には、ノズルボデー41に形成された高圧供給通路415を介してコモンレール3からの高圧燃料が常時供給されるようになっている。そして、制御室46の燃料の圧力がピストン部432に作用し、その燃料の圧力によりノズルニードル43が閉弁向きに付勢されるようになっている。
【0026】
シリンダ44には、燃料溜まり室413と制御室46とを連通させる連通路としての貫通孔441が形成されている。この貫通孔441は、ノズルニードル43によって開口面積が制御されるようになっている。具体的には、ノズルニードル43が閉弁位置にあるときは貫通孔441の開口面積は最大であり、ノズルニードル43が開弁向きに移動するのに伴って貫通孔441の開口面積が縮小されるようになっている。
【0027】
ノズルボデー41には、制御室46の燃料を燃料タンク1側に排出させる排出通路416、および制御弁47が収容される弁室417が形成され、排出通路416は、弁室417および低圧配管7を介して燃料タンク1に接続されている。
【0028】
制御弁47は、排出通路416を開閉する弁体471、駆動電流が供給されると電磁力を発生して弁体471を開弁向きに吸引するソレノイド472、および弁体471を閉弁向きに付勢するバルブスプリング473を備えている。
【0029】
ノズルボデー41には、燃料溜まり室413と弁室417とを仕切る仕切り板部418が形成されている。そして、ノズルスプリング45は、ノズルニードル43とシリンダ44とに挟持されて、ノズルニードル43を閉弁向きに付勢するとともに、シリンダ44を仕切り板部418に押し付けている。
【0030】
次に、上記構成になる燃料噴射装置の作動を説明する。図1において、燃料ポンプ2は内燃機関により駆動されて、燃料タンク1から吸い上げた燃料を高圧にして蓄圧器2に供給する。また、コモンレール3内の燃料圧力が目標圧力になるように、燃料ポンプ2の燃料吐出量が制御される。
【0031】
まず、ソレノイド472に通電されていないときには、バルブスプリング473に付勢される弁体471により排出通路416が閉じられる。この状態では、制御室46には、高圧供給通路415を介して高圧燃料が供給されるとともに、貫通孔441を介して高圧燃料が供給されるため、制御室46はコモンレール3の燃料圧力と同圧(すなわち、高圧)になる。そして、制御室46の燃料の圧力によりノズルニードル43が閉弁向きに付勢され、シート部431が弁座411に当接して噴孔412が閉じられている。
【0032】
次に、ソレノイド472に通電されると、弁体471がソレノイド472に吸引されて排出通路416が開かれて、制御室46の燃料は、排出通路416、弁室417、および低圧配管7を介して燃料タンク1に戻される。これにより、制御室46の燃料の圧力が低下し、ノズルニードル43が燃料溜まり室413の燃料の圧力によって開弁向きに付勢され、ノズルニードル43がノズルスプリング45に抗してリフトすることにより、シート部431が弁座411から離れて噴孔412が開かれ、噴孔412から燃料が噴射される。
【0033】
ところで、ノズルニードル43のリフト量が小さい領域(以下、低リフト域という)では、シート部431と弁座411との間の開口面積が小さいため、サック部414の圧力はコモンレール3の燃料圧力よりも大幅に低くなり、実質の噴射圧力も低いものとなる。一方、ノズルニードル43のリフト量が大きい領域(以下、高リフト域という)では、シート部431と弁座411との間の開口面積が大きいため、サック部414の圧力はコモンレール3の燃料圧力と略等しくなり、噴射圧力も高いものとなる。
【0034】
そして、低リフト域では、換言すると、貫通孔441が全閉になる前の領域では、高圧供給通路415と貫通孔441の両方から制御室46に高圧燃料が供給される。一方、ノズルニードル43のリフト量が大きい領域(以下、高リフト域という)では、換言すると、貫通孔441が全閉になった領域では、高圧供給通路415および貫通孔441のうち高圧供給通路415のみから制御室46に高圧燃料が供給される。
【0035】
したがって、低リフト域では、高リフト域よりも制御室46への燃料流入量が多いため、ノズルニードル43の移動速度は低くなる。これにより、低リフト域の時間が従来よりも長くなり、噴射圧力が低い噴射期間を長く確保することができる。具体的には、低リフト域の時間が、内燃機関において要求されるパイロット噴射期間相当になるように、制御室46への燃料流入量および排出量、さらにはノズルニードル43の受圧面積等を設定する。
【0036】
図2は噴射パターンの一例を示す図である。この図2に示すように、本実施形態では、制御弁47に対する駆動信号として、パイロット駆動信号Xとメイン駆動信号Yとを出力する。なお、ノズルニードル43が貫通孔441を全閉にした時に、パイロット駆動信号Xの出力が停止されるように、パイロット駆動信号Xの出力時間が設定されている。そして、パイロット駆動信号Xの出力中は、低リフト域であるため低圧噴射となり、メイン駆動信号Yの出力中は、高リフト域までリフトするため高圧噴射となる。
【0037】
以上説明したように、本実施形態によると、低リフト域の噴射期間をパイロット噴射期間として利用することにより、1系統の燃料供給系で、パイロット噴射時は低圧噴射、メイン噴射時は高圧噴射となる噴射特性を実現することができる。
【0038】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について説明する。図3は本発明の第2実施形態に係る燃料噴射装置における燃料噴射弁の要部を示す断面図である。本実施形態は、連通路の構成が第1実施形態と異なっている。以下、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0039】
図3に示すように、シリンダ44は、第1実施形態における連通路としての貫通孔441(図1参照)が廃止されている。
【0040】
ノズルニードル43のピストン部432の端部外周面には、端部に向かって縮径するテーパ433が形成されている。そして、シリンダ44におけるノズルニードル側の内周角部とテーパ433とのクリアランスが、連通路48を構成している。この連通路48の開口面積は、ノズルニードル43が閉弁位置にあるときは最大であり、ノズルニードル43が開弁向きに移動するのに伴って縮小されるようになっている。
【0041】
本実施形態の燃料噴射装置は、低リフト域では、換言すると、連通路48が全閉になる前の領域では、高圧供給通路415と連通路48の両方から制御室46に高圧燃料が供給される。一方、高リフト域では、換言すると、連通路48が全閉になった領域では、高圧供給通路415および連通路48のうち高圧供給通路415のみから制御室46に高圧燃料が供給される。
【0042】
したがって、第1実施形態と同様に、低リフト域の時間が従来よりも長くなり、噴射圧力が低い噴射期間を長く確保することができる。そして、低リフト域の噴射期間をパイロット噴射期間として利用することにより、1系統の燃料供給系で、パイロット噴射時は低圧噴射、メイン噴射時は高圧噴射となる噴射特性を実現することができる。
【0043】
なお、上記実施形態においては、ピストン部432にテーパ433を形成したが、シリンダ44におけるノズルニードル側の端部内周面に、端部に向かって拡径するテーパを形成し、そのテーパとピストン部432の外周角部とのクリアランスにより連通路を構成してもよい。
【0044】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態について説明する。図4は本発明の第3実施形態に係る燃料噴射装置における燃料噴射弁の要部を示す断面図、図5は図4のA矢視図である。本実施形態は、連通路の構成が第1実施形態と異なっている。以下、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0045】
図4、5に示すように、シリンダ44は、第1実施形態における連通路としての貫通孔441(図1参照)が廃止されている。
【0046】
ノズルニードル43のピストン部432の端部外周面には、3個の切り欠き溝434が周方向に沿って均等に配置されて形成されている。そして、シリンダ44におけるノズルニードル側の内周角部と切り欠き溝434における外周角部とのクリアランスが、連通路48を構成している。この連通路48の開口面積は、ノズルニードル43が閉弁位置にあるときは最大であり、ノズルニードル43が開弁向きに移動するのに伴って縮小されるようになっている。
【0047】
また、ノズルニードル43のピストン部432の端部外周面には、隣接する切り欠き溝434間に、摺動ガイド部435が形成されている。そして、この摺動ガイド部435は、常にシリンダ44内に位置している。
【0048】
本実施形態の燃料噴射装置は、低リフト域では、換言すると、連通路48が全閉になる前の領域では、高圧供給通路415と連通路48の両方から制御室46に高圧燃料が供給される。一方、高リフト域では、換言すると、連通路48が全閉になった領域では、高圧供給通路415および連通路48のうち高圧供給通路415のみから制御室46に高圧燃料が供給される。
【0049】
したがって、第1実施形態と同様に、低リフト域の時間が従来よりも長くなり、噴射圧力が低い噴射期間を長く確保することができる。そして、低リフト域の噴射期間をパイロット噴射期間として利用することにより、1系統の燃料供給系で、パイロット噴射時は低圧噴射、メイン噴射時は高圧噴射となる噴射特性を実現することができる。
【0050】
(第4実施形態)
本発明の第4実施形態について説明する。図6は本発明の第4実施形態に係る燃料噴射装置における燃料噴射弁の要部を示す断面図である。本実施形態は、連通路を廃止している。以下、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0051】
図6に示すように、シリンダ44は、第1実施形態における連通路としての貫通孔441(図1参照)が廃止されている。
【0052】
ノズルニードル43のピストン部432とシリンダ44との間には、ピストン部432およびシリンダ44に対して摺動自在に円筒状のノズルガイド49が配置されている。このノズルガイド49は、その一端側に制御室46の燃料の圧力が作用するようになっている。また、ノズルガイド49は、シリンダ44から突出した側の端部に、径方向内側に向かって突出するガイド鍔部491が形成されている。
【0053】
ピストン部432の端部外周面には、径方向外側に向かって突出するニードル鍔部436が形成されており、このニードル鍔部436は、ガイド鍔部491と係合可能になっている。そして、ノズルニードル43とノズルガイド49とに挟持されたガイドスプリング50により、ガイド鍔部491がニードル鍔部436に向かって付勢されている。図6は閉弁状態を示しており、このときには、ガイドスプリング50に付勢されてガイド鍔部491とニードル鍔部436が係合している。
【0054】
ここで、閉弁状態でのノズルガイド49と仕切り板部418との間の距離をガイドストロークSgとする。
【0055】
次に、上記構成になる燃料噴射装置の開弁時の作動を説明する。
【0056】
ソレノイド472(図1参照)に通電されると、弁体471(図1参照)がソレノイド472に吸引されて排出通路416が開かれ、制御室46の燃料の圧力が低下する。これにより、ノズルニードル43が燃料溜まり室413の燃料の圧力によって開弁向きに付勢されるとともに、ノズルガイド49も燃料溜まり室413の燃料の圧力によってノズルニードル43と同じ向きに付勢され、シート部431が弁座411から離れて噴孔412が開かれ、噴孔412から燃料が噴射される。
【0057】
このノズルニードル43が開弁向きに移動する過程において、ノズルガイド49が仕切り板部418に当接するまで、すなわちノズルニードル43およびノズルガイド49がガイドストロークSgだけ移動する間は、ノズルニードル43およびノズルガイド49は一体となって移動する。また、ノズルニードル43およびノズルガイド49がガイドストロークSgだけ移動した後は、ノズルガイド49が停止したままノズルニードル43のみが開弁向きに移動する。
【0058】
ここで、排出通路416が開かれているときの、制御室46への燃料流入量および排出量は一定であるため、制御室46の燃料の圧力を受けて移動する部位の受圧面積によってノズルニードル43の移動速度が変化する。具体的には、ノズルニードル43およびノズルガイド49がガイドストロークSgだけ移動する間(以下、低リフト域という)は、ノズルニードル43およびノズルガイド49が制御室46の燃料圧力の受圧部であり、その後のノズルガイド49が停止したままノズルニードル43のみが移動する間(以下、高リフト域という)は、ノズルニードル43のみが制御室46の燃料圧力の受圧部であるため、受圧面積が相対的に大きい低リフト域ではノズルニードル43の移動速度は低くなる。
【0059】
したがって、第1実施形態と同様に、低リフト域の時間が従来よりも長くなり、噴射圧力が低い噴射期間を長く確保することができる。そして、低リフト域の噴射期間をパイロット噴射期間として利用することにより、1系統の燃料供給系で、パイロット噴射時は低圧噴射、メイン噴射時は高圧噴射となる噴射特性を実現することができる。
【0060】
(他の実施形態)
上記各実施形態では、シリンダ44をノズルボデー41と別体にしたが、シリンダ44をノズルボデー41に一体に形成してもよい。また、上記各実施形態は、実施可能な範囲で任意に組み合わせが可能である。
【符号の説明】
【0061】
1 燃料タンク(低圧部)
2 燃料ポンプ
3 コモンレール
4 燃料噴射弁
41 ノズルボデー
43 ノズルニードル
44 シリンダ
46 制御室
47 制御弁
411 弁座
412 噴孔
413 燃料溜まり室
416 排出通路
431 シート部
432 ピストン部
441 貫通孔(連通路)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料を高圧化して吐出する燃料ポンプ(2)と、
前記燃料ポンプ(2)から吐出された燃料を貯留するコモンレール(3)と、
前記コモンレール(3)から供給された高圧燃料を内燃機関の燃焼室に噴射させる燃料噴射弁(4)とを備え、
前記燃料噴射弁(4)は、
燃料を噴射するための噴孔(412)およびこの噴孔(412)が開口する弁座(411)を有するノズルボデー(41)と、
前記コモンレール(3)から高圧燃料が常時供給される制御室(46)を形成するシリンダ(44)と、
前記制御室(46)の燃料を低圧部(1)に排出させる排出通路(416)を開閉する制御弁(47)と、
一端側に形成されたシート部(431)が前記弁座(411)と接離して前記噴孔(412)を開閉するとともに、他端側に形成されたピストン部(432)が前記シリンダ(44)に摺動自在に挿入されるノズルニードル(43)と、
前記ノズルニードル(43)の回りに形成され、前記コモンレール(3)から高圧燃料が常時供給される燃料溜まり室(413)とを備え、
前記制御室(46)の燃料の圧力が前記ピストン部(432)に作用し、その燃料の圧力により前記ノズルニードル(43)が閉弁向きに付勢される燃料噴射装置において、
前記燃料溜まり室(413)と前記制御室(46)とを連通させる連通路(48、441)を備え、
前記ノズルニードル(43)が閉弁位置にあるときは前記連通路(48、441)の開口面積は最大であり、前記ノズルニードル(43)が開弁向きに移動するのに伴って前記連通路(48、441)の開口面積が縮小されるように構成されていることを特徴とする燃料噴射装置。
【請求項2】
前記連通路(441)は前記シリンダ(44)に形成された孔であり、前記ノズルニードル(43)によって前記連通路(441)の開口面積が制御される構成であることを特徴とする請求項1に記載の燃料噴射装置。
【請求項3】
前記連通路(48)は、前記ノズルニードル(43)の外周面と前記シリンダ(44)の内周面とのクリアランスであることを特徴とする請求項1に記載の燃料噴射装置。
【請求項4】
燃料を高圧化して吐出する燃料ポンプ(2)と、
前記燃料ポンプ(2)から吐出された燃料を貯留するコモンレール(3)と、
前記コモンレール(3)から供給された高圧燃料を内燃機関の燃焼室に噴射させる燃料噴射弁(4)とを備え、
前記燃料噴射弁(4)は、
燃料を噴射するための噴孔(412)およびこの噴孔(412)が開口する弁座(411)を有するノズルボデー(41)と、
前記コモンレール(3)から高圧燃料が常時供給される制御室(46)を形成するシリンダ(44)と、
前記制御室(46)の燃料を低圧部(1)に排出させる排出通路(416)を開閉する制御弁(47)と、
一端側に形成されたシート部(431)が前記弁座(411)と接離して前記噴孔(412)を開閉するとともに、他端側に形成されたピストン部(432)が前記シリンダ(44)に摺動自在に挿入されるノズルニードル(43)と、
前記ノズルニードル(43)の回りに形成され、前記コモンレール(3)から高圧燃料が常時供給される燃料溜まり室(413)とを備え、
前記制御室(46)の燃料の圧力が前記ピストン部(432)に作用し、その燃料の圧力により前記ノズルニードル(43)が閉弁向きに付勢される燃料噴射装置において、
前記ピストン部(432)と前記シリンダ(44)との間に配置されるとともに、前記ピストン部(432)および前記シリンダ(44)に対して摺動自在な筒状のノズルガイド(49)を備え、
前記ノズルニードル(43)が開弁向きに移動する際、前記ノズルニードル(43)が所定位置まで移動する間は前記ノズルニードル(43)および前記ノズルガイド(49)が一体となって移動し、前記ノズルニードル(43)が所定位置まで移動した後は前記ノズルガイド(49)が停止したまま前記ノズルニードル(43)のみが開弁向きに移動するように構成されていることを特徴とする燃料噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−41839(P2012−41839A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−182276(P2010−182276)
【出願日】平成22年8月17日(2010.8.17)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】