説明

燃料性状判定装置

【課題】燃料性状判定装置に関し、エンジンに供給される燃料の燃料性状を正確に把握する。
【解決手段】エンジン10の排気空燃比を検出する空燃比検出手段1aと、エンジン10のスロットル弁9の開度量を検出する開度量検出手段1cとを備える。また、開度量検出手段1cで検出された前記開度量の減少時に、空燃比検出手段1aで検出された前記排気空燃比に基づき、エンジン10に供給される燃料の燃料性状を判定する判定手段3を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンに供給される燃料の燃料性状を判定する燃料性状判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンに供給される燃料の揮発性に関する燃料性状を自動的に判定し、エンジンの燃料噴射制御に活用する技術が知られている。一般に、重質成分を多く含む重質燃料の揮発性は標準的な燃料よりも低く、吸気ポート内や吸気バルブへの燃料付着の割合が大きい。一方、重質成分の含有率が低い軽質燃料の場合には揮発性が高く、燃料付着の割合が小さい。そこで、このような特性に応じて燃料噴射量を補正することで、エンジンでの燃焼状態を正確に制御することが可能となる。例えば、特許文献1には、車両の加減速情報と空燃比情報と最新の判定燃料性状とに基づいて、現在の燃料性状を判定するものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−200796号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、重質燃料の場合には、車両の加速時に吸気ポートからの燃料揮発量が減少して空燃比がリーン化しやすいという傾向がある。しかし、加速操作の直前はエンジンの負荷が低く吸気ポート内の負圧が十分に確保されている状態であり、吸気中における揮発済み燃料の割合が高いため、リーン化の度合いが大きくなりにくい。したがって、標準的な燃料を使用した場合との空燃比の相違によって燃料性状を正確に判定することが難しいという課題がある。
【0005】
本件の目的の一つは、上記のような課題に鑑み創案されたもので、エンジンに供給される燃料の性状を正確に把握することである。
なお、この目的に限らず、後述する発明を実施するための形態に示す各構成により導かれる作用効果であって、従来の技術によっては得られない作用効果を奏することも本件の他の目的として位置づけることができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)ここで開示する燃料性状判定装置は、エンジンの排気空燃比を検出する空燃比検出手段と、前記エンジンのスロットル弁の開度量を検出する開度量検出手段とを備える。また、前記開度量検出手段で検出された前記開度量の減少時に、前記空燃比検出手段で検出された前記排気空燃比に基づき、前記エンジンに供給される燃料の燃料性状を判定する判定手段を備える。
【0007】
なお、前記排気空燃比に基づき、前記燃料の揮発性や蒸発速度,前記燃料に含まれる重質成分の割合,比率等といった、燃料性状に相関する指標値を判定してもよい。言い換えると、本件でいう「燃料性状」には燃料の揮発性や揮発性に関連する諸々の性質が含まれ、判定手段による判定対象の具体例としては、燃料の重質度,揮発性,重質成分の含有量又は含有率,燃料の蒸発速度等が挙げられる。
【0008】
(2)また、前記判定手段が、前記開度量の減少に伴って発生する前記排気空燃比のリッチピークの大きさに基づいて、前記燃料性状を判定することが好ましい。
(3)また、前記スロットル弁の閉鎖時における前記開度量の変化量を演算する変化量演算手段と、前記スロットル弁の閉鎖時における前記開度量の単位時間あたりの変化率を演算する変化率演算手段と、前記変化量演算手段で演算された前記変化量と前記変化率演算手段で演算された前記変化率とに基づき、前記燃料性状を判定するための開始条件の成否を判定する開始条件判定手段と、を備える。この場合、前記判定手段が、前記判定手段で前記開始条件が成立したときに前記燃料性状を判定することが好ましい。
【0009】
(4)また、前記空燃比検出手段で検出された前記排気空燃比に応じて、前記燃料性状に対応する判定値に所定値を加算又は減算する判定値演算手段と、前記判定値演算手段で演算された前記判定値に基づいて、前記燃料性状を判定する燃料性状判定手段と、を備えることが好ましい。
(5)また、前記判定値演算手段が、前記排気空燃比が第一しきい値未満であるときに、前記判定値に前記所定値を加算し、前記排気空燃比が前記第一しきい値よりも大きい第二しきい値以上であるときに、前記判定値から前記所定値を減算することが好ましい。
【0010】
(6)また、前記エンジンの冷却水温を検出する水温検出手段を備え、前記判定値演算手段が、前記水温検出手段で検出された前記冷却水温に応じて、少なくとも前記第一しきい値及び前記第二しきい値の何れか一方の値を変更することが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
開示の燃料性状判定装置によれば、スロットル弁の閉鎖時の排気空燃比に基づく判定により、ポート内の負圧を利用して排気空燃比中に含まれる揮発燃料成分の割合を増大させることができる。これにより、燃料性状による空燃比変動が明瞭となり、燃料性状を正確に判定することができる。また、燃料の重質判定によって始動時の燃料量を適切に制御することにより、始動時のエンジンからの未燃炭化水素量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】一実施形態に係る燃料性状判定装置のブロック構成及びこの燃料性状判定装置が適用されたエンジンの構成を例示する図である。
【図2】本燃料性状判定装置で演算されるスロットル開度の変化量及び変化率を例示するグラフである。
【図3】本燃料性状判定装置で燃料性状を判定するための条件を例示するグラフである。
【図4】本燃料性状判定装置で設定されるリッチピーク判定用しきい値と冷却水温との関係を例示するグラフである。
【図5】本燃料性状判定装置で実施される制御のフローチャートの例である。
【図6】本燃料性状判定装置が適用されたエンジンの排気空燃比,エンジン回転数,体積効率及びスロットル開度の変動を例示するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図面を参照して燃料性状判定装置について説明する。なお、以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。
【0014】
[1.装置構成]
本実施形態の燃料性状判定装置は、図1に示す車載のガソリンエンジン10(以下、単にエンジン10と呼ぶ)に適用される。ここでは、多気筒のエンジン10に設けられた各気筒(シリンダ)のうち、一つの気筒15を示す。気筒15内には、コンロッドを介してクランクシャフト17に接続されたピストン16が往復摺動自在にはめ込まれている。なお、コンロッドはピストン16の往復運動をクランクシャフト17の回転運動に変換するリンク部材である。
【0015】
燃焼室のシリンダヘッド側の頂面には、吸気ポート11及び排気ポート12が接続される。吸気ポート11の入口には吸気弁13が設けられ、排気ポート12の入口には排気弁14が設けられる。吸気弁13の開閉駆動により吸気ポート11と燃焼室とが連通又は閉鎖され、排気弁14の開閉駆動により排気ポート12と燃焼室とが連通又は遮断される。これらの吸気弁13及び排気弁14の上端部は、それぞれ図示しないロッカシャフトに接続され、ロッカシャフトの揺動によって個別に上下方向に往復駆動される。
【0016】
吸気ポート11の内部には燃料供給用のインジェクタ18が設けられる。インジェクタ18から噴射される燃料量及びその噴射タイミングは、後述するエンジンECU20で制御される。
【0017】
インジェクタ18よりも上流側の吸気通路内には、スロットル弁9(ETV,Electric Throttle Valve),スロットルポジションセンサ6及びエアフローセンサ7(AFS,Air Flow Sensor)が設けられる。スロットル弁9はその開度を変更することで気筒15内に導入される空気の吸気量を変更するための電子制御式スロットルバルブである。また、スロットルポジションセンサ6はスロットル弁9のスロットル開度Tに応じた可変抵抗を内蔵したセンサである。スロットルポジションセンサ6の出力電流値(又は出力電圧値)の情報はスロットル開度Tに応じて変動するため、これ基づいてスロットル開度Tが把握される。スロットルポジションセンサ6から出力された情報はエンジンECU20に伝達される。
また、エアフローセンサ7は気筒15内に導入される吸気流量Qを検出するセンサである。ここで検出されたスロットル開度T及び吸気流量Qは、後述するエンジンECU20に伝達される。
【0018】
一方、排気ポート12に接続された排気通路内には、空燃比センサ4(例えば、酸素濃度センサやLAFS等)が設けられる。この空燃比センサ4はエンジン10の排気空燃比に対応する情報(例えば、酸素濃度やHC濃度等)を検出するものであり、ここで検出された情報もエンジンECU20に伝達される。なお、空燃比センサ4の取り付け位置はエンジン10の排気マニホールド内であってもよいし、より下流側の排気通路内であってもよい。排気通路上に触媒装置が介装された車両の場合、正確な排気空燃比を把握するには、その触媒装置よりも上流側に設けることが好ましい。
【0019】
このエンジン10には、クランクシャフトの角度θCRを検出するクランク角度センサ8が設けられる。クランク角度センサ8で検出されたクランクシャフトの角度θCRに関する情報は、後述するエンジンECU20に伝達される。なお、単位時間あたりの角度θCRの変化量からエンジン回転数Neを把握することができる。したがって、クランク角度センサ8はエンジン10のエンジン回転数Neを検出する手段としての機能を持つ。エンジン回転数Neは、クランク角度センサ8で検出されたクランクシャフトの角度θCRに基づいてエンジンECU20が演算する構成としてもよいし、クランク角度センサ8の内部で演算する構成としてもよい。
【0020】
また、エンジン10の任意の位置には、エンジン冷却水の温度Wに応じて抵抗値が変化する特性を持った水温センサ5が設けられる。水温センサ5の出力電流値(又は出力電圧値)の情報は温度Wに応じて変動するため、これ基づいて温度Wが把握される。水温センサ5から出力された情報はエンジンECU20に伝達される。
【0021】
[2.制御構成]
エンジンECU20(Engine - Electronic Control Unit,エンジン電子制御装置)は、エンジン10の図1に示す気筒15を含む各気筒に対して供給される燃料噴射量や点火タイミングを統括管理する電子制御装置であり、例えばマイクロプロセッサやROM,RAM等を集積したLSIデバイスや組み込み電子デバイスとして構成される。以下、エンジン10の排気空燃比に基づいて燃料性状(例えば、重質度)を判定する重質判定制御について説明する。
【0022】
エンジンECU20には、重質判定制御を実施するための機能を実現するソフトウェア又はハードウェアとして、検出部1,演算部2及び判定部3が設けられる。
【0023】
[2−1.検出部]
検出部1は、重質判定制御に用いられる各種情報を検出するものであり、ここには排気空燃比検出部1a,水温検出部1b及びスロットル開度量検出部1cが設けられる。
【0024】
排気空燃比検出部1a(空燃比検出手段)は、空燃比センサ4で検出された情報に基づいて気筒15から排出された排気の排気空燃比を検出又は演算するとともに、リッチピークRを検出又は演算するものである。排気空燃比検出部1aには図示しない一時メモリ(例えば、DRAM,SRAM等)が設けられており、常時最新の排気空燃比を把握するだけでなく、直近の一定時間(例えば、数秒〜数百ミリ秒間)の排気空燃比を記憶している。ここでいうリッチピークRとは、車両減速時に一時的に排気空燃比がリッチ化した場合の最小排気空燃比(ピークトップの排気空燃比)の値を意味する。スロットル開度Tの減少方向への変化が終了した時点を基準として、その前後の所定時間内での排気空燃比のうち最も小さい値がリッチピークRとなる。
【0025】
水温検出部1b(水温検出手段)は、水温センサ5から伝達される情報に基づき、エンジン冷却水の温度W(冷却水温)を検出又は演算するものである。同様に、スロットル開度量検出部1c(開度量検出手段)は、スロットルポジションセンサ6で検出された情報に基づいてスロットル開度Tを検出又は演算する。検出部1で検出又は演算された排気空燃比,リッチピークR,温度W及びスロットル開度Tは、演算部2に伝達される。
【0026】
なお、これらの情報をエンジンECU20の外部で検出又は演算する構成としてもよい。例えば、水温センサ5で直接的にエンジン冷却水の温度Wを検出する構成としてもよいし、排気空燃比を検出する主体を空燃比センサ4としてもよい。
【0027】
[2−2.演算部]
演算部2は、重質判定制御に係る演算を実施するものであり、ここには変化量演算部2a,変化率演算部2b及びポイント演算部2cが設けられる。
【0028】
変化量演算部2a(変化量演算手段)は、スロットル開度Tの変化量を演算するものである。ここでは、図2中に示すように、スロットル開度Tが変化を開始してからその変化が終了するまでの開度変化をスロットル開度変化量TD(以下、単に変化量TDと呼ぶ)として演算する。例えば、図2中の時刻tA以前や時刻tB以後のように、スロットル開度Tの変化が予め設定された微小範囲内に収まる程度の状態をスロットル開度Tの安定状態とすると、変化量TDはある安定状態から脱して次の安定状態に至るまでの間にスロットル開度Tが変化した総量に対応する。したがって、スロットル開度Tの変化速度が途中で変化するような場合も考えられる。
【0029】
ここで演算される変化量TDの符号は、スロットル開度Tの減少方向への変化量を正とし、スロットル開度Tの増大方向への変化量を負とする。なお、変化量演算部2aがスロットル弁9の閉鎖時におけるスロットル開度Tの変化量のみを演算することとしてもよい。
変化率演算部2b(変化率演算手段)は、スロットル開度Tの変化率(所定時間あたりの変化量)を演算するものである。ここでは、図2中に示すように、スロットル開度Tの経時変化勾配(つまり、グラフの傾き)をスロットル開度変化率TV(以下、単に変化率TVと呼ぶ)として演算する。ここで演算される変化率TVの符号は、スロットル開度Tの減少時の勾配を正とし、スロットル開度Tの増大時の勾配を負とする。
【0030】
ここでの変化率TVの演算に係る所定時間は、予め設定された時間としてもよいし、エンジン回転数Neに応じて設定される時間としてもよい。例えば、エンジン回転数Neが高いほど所定時間を短く設定することで、所定時間内の吸気回数を同等にすることが考えられる。この場合、変化率TVは、同じ吸気回数での排気空燃比の変化率に相当するものであると捉えることもできる。
【0031】
図2中の安定状態では変化率TVがほぼ0に近く、時刻tAから時刻tBまでの間は変化率TVが正の値として演算される。変化率TVは、例えば、ドライバーによってアクセルペダルの踏み戻し操作がなされた場合に正の値となり、その踏み戻し操作が急激であるほどその値が増大する。逆に、アクセルペダルの踏み込み操作がなされた場合には負の値となり、その踏み込み操作が急激であるほどその値が減少する。なお、変化率演算部2bがスロットル弁9の閉鎖時におけるスロットル開度Tの変化率TVのみを演算するこことしてもよい。
【0032】
ポイント演算部2c(判定値演算手段)は、後述する判定部3において、燃料が重質燃料であると判定された場合に、燃料性状に対応する判定ポイントP(判定値)を演算するものである。判定ポイントPは、その値が大きいほど燃料性状が重質である可能性が高く、値が小さいほど重質燃料である可能性が低いことを示す指標値である。本実施形態では、一回の判定のみで燃料性状が重質であるか否かを判断するのではなく、判定を複数回繰り返してその都度、判定ポイントPを増減させ、判定ポイントPの大きさに基づいて燃料性状を判断することとしている。具体的な判定ポイントPの加減算の手法については後述する。
【0033】
なお、ポイント演算部2cは、エンジン10を搭載した車両の電源(イグニッションスイッチ)のオン/オフ状態に関わらず、判定ポイントPを記憶しておくための不揮発型バックアップメモリ(例えば、ROM,FRAM,フラッシュメモリ等)を有する。これにより、燃料の供給や補給があった場合やエンジン10の再始動後等であっても、判定ポイントPの演算値が維持される。
【0034】
[2−3.判定部]
判定部3(判定手段)は、重質判定制御に係る判定制御を実施するものであり、ここには開始条件判定部3a及び燃料性状判定部3bが設けられる。
開始条件判定部3a(開始条件判定手段)は、重質判定制御の開始条件を判定するものである。本実施形態では、以下の条件1,2がともに成立した場合に、排気空燃比に基づく燃料性状の判定を実施する。
条件1.スロットル弁9の閉鎖時(スロットル開度Tの減少時)であること
条件2.変化量TD及び変化率TVの値が所定条件を満たすこと
【0035】
上記の条件1及び条件2は、例えば図3に示すようなマップを用いて同時に判定することが考えられる。この場合、変化量TDの値をx座標とし、変化率TVの値をy座標した平面座標系上の点が図3中の判定領域内に位置する場合に、重質判定制御の開始条件が成立することとする。判定領域は、図3に示すように、変化量TD及び変化率TVがともに正である象限に設定される。また、変化量TDの値が大きいほど小さい値の変化率TVで判定領域に含まれるように、あるいは、変化率TVの値が大きいほど小さい値の変化量TDで判定領域に含まれるように、判定領域と非判定領域との境界線が設定される。
【0036】
なお、図3に示すようなマップを用いることなく、演算のみで上記の条件1,条件2の成否を判定してもよい。例えば、変化量TD及び変化率TVがともに正であり、かつ、それらの乗算値が所定値以上である場合に重質判定制御の開始条件が成立することとする。あるいは、変化量TD毎に重質判定制御の開始条件が成立する変化率TVの下限値を記憶させた数値マップを予め用意しておき、この数値マップと実際の変化量TD及び変化率TVとを用いて重質判定制御の開始条件を判定することも考えられる。
【0037】
ここで、重質判定制御の開始条件を設定する意義について説明する。
一般に、標準的な燃料よりも重質成分の含有率の高い低揮発燃料を使用した場合には、加速操作時(例えば、アクセルペダルの踏み込み操作時)に排気空燃比がリーン化する。しかし、このような排気空燃比のリーン化の度合いを正確に検出することは、以下のような理由から困難であることが指摘されている。
【0038】
理由1.加速操作の直前はエンジン10が低負荷であって吸気ポート11の負圧が確保された状態である場合が多いため、吸気ポート11の内壁に付着した燃料が揮発しやすく、吸気中の揮発済み燃料の割合が高いこと。
理由2.加速時にはスロットル開度Tが変化してから実際に吸気が気筒15内に流入するまでにいわゆる「吸気遅れ」が存在し、この「吸気遅れ」の時間を利用してスロットル開度Tの変化に基づく燃料噴射量の補正が実施されるため、気筒15内の空燃比が適正化されやすく、結果的に排気空燃比の増大幅が小さくなること。
【0039】
したがって、燃料性状に由来するリーン化傾向を加速操作時の排気空燃比から把握することは難しい。一方、エンジン10が高負荷であって吸気ポート11内に付着している燃料量が比較的多い状態で減速操作(例えば、アクセルペダル踏み戻し操作)がなされると、吸気ポート11内の負圧が上昇して付着燃料が急激に気化するため、これに伴って排気空燃比がリッチ化する。このときのリッチ化の度合いは、スロットル弁9が急激に閉鎖するほど増大する。そこで、本実施形態では、条件1で「スロットル弁9の閉鎖時」を識別し、さらに条件2で変化量TDや変化率TVがある程度大きい状態を識別する。これにより、全ての排気空燃比を参照するのではなく、燃料性状に由来するリッチ化傾向が識別しやすい状態で検出された排気空燃比を参照して、燃料性状を判定する。
【0040】
燃料性状判定部3b(燃料性状判定手段)は、二種類の機能を持っている。第一の機能は、開始条件判定部3aで条件1,2が成立した場合に、気筒15内に供給された燃料が重質燃料であるか否かを仮判定し、その仮判定結果に基づいてポイント演算部2cに判定ポイントPを演算させる機能である。第二の機能は、ポイント演算部2cで演算された判定ポイントPに基づいて、最終的な燃料性状の判断を下す機能である。
【0041】
まず、第一の機能を説明する。燃料性状判定部3bは、水温検出部1bで検出又は演算されたエンジン冷却水の温度Wから、判定ポイントPの演算に用いられるリッチピーク判定用しきい値を演算する。本実施形態では、第一しきい値JFUELRP_AF1及び第二しきい値JFUELRP_AF2の二種類のしきい値が用いられる。第一しきい値JFUELRP_AF1及び第二しきい値JFUELRP_AF2はともに、水温Wが低いほど小さく(リッチ側に)設定され、水温Wが高いほど大きい値に(リーン側に)設定される。一方、同一の水温Wでは、第一しきい値JFUELRP_AF1が第二しきい値JFUELRP_AF2よりも小さい値に設定される。
【0042】
例えば、図4に示すように、水温Wに関わらず第一しきい値JFUELRP_AF1及び第二しきい値JFUELRP_AF2の差が一定値となるようにそれぞれの値を設定してもよい。図示しないラジエータ等の冷却装置によって水温Wが所定の上限水温WA以下の範囲になるように制御される場合には、第一しきい値JFUELRP_AF1及び第二しきい値JFUELRP_AF2も上限水温WA以下の範囲で設定すればよい。なお、上限水温WAでの第一しきい値JFUELRP_AF1及び第二しきい値JFUELRP_AF2の値は、ストイキの排気空燃比よりもリッチ側の大きさに設定される。
【0043】
第一しきい値JFUELRP_AF1は、排気空燃比検出部1aで検出又は演算されたリッチピークRの大きさが、低揮発燃料を使用した場合のリッチピークRであるといえるか否かを判断するためのしきい値である。一方、第二しきい値JFUELRP_AF2は、リッチピークRの大きさが標準的な燃料を使用した場合のリッチピークRであるといえるか否かを判断するためのしきい値である。
【0044】
また、燃料性状判定部3bは排気空燃比検出部1aで検出又は演算されたリッチピークRの値と上記のしきい値とを比較し、リッチピークRの値が第一しきい値JFUELRP_AF1よりも小さい場合に燃料が重質燃料である可能性が高いものと仮判定する。一方、リッチピークRの値が第二しきい値JFUELRP_AF2よりも大きい場合には、燃料が標準的な燃料である可能性が高い(重質燃料でない)ものと仮判定する。ここでの仮判定結果は、ポイント演算部2cに伝達される。
【0045】
これを受けてポイント演算部2cは、判定ポイントPを演算する。まず、燃料が重質燃料である可能性が高い場合には、その時点での判定ポイントPに所定値(例えば1)を加算し、判定ポイントPを増大させる。判定ポイントPの初期値は例えばP=0とし、値域は0≦P≦所定ポイントP0とする。一方、燃料が標準的な燃料である可能性が高い場合には、その時点での判定ポイントPから所定値(例えば1)を減算し、判定ポイントPを減少させる。ポイント演算部2cは、燃料性状判定部3bから仮判定が伝達される度にこのような演算を繰り返し実施する。
【0046】
ここで、燃料が重質燃料である可能性が高いと判断された回数と、燃料が標準的な燃料である可能性が高いと判断された回数とに着目すれば、前者が後者よりも多くならなければ判定ポイントPの値が増大し続けることはない。したがって、燃料性状に依存しないリッチピークRの不規則な変動や外乱,ノイズ等の影響が抑制されることになり、燃料性状の判定精度が向上する。
【0047】
次に、第二の機能を説明する。燃料性状判定部3bは、ポイント演算部2cで演算された判定ポイントPが予め設定された所定ポイントP0以上になったときに、燃料が重質燃料であると判断し、エンジン10の始動(次回の始動)や始動直後の燃料制御用の各種パラメータ,冷態始動時の加減速増減量等を変更する。例えば、標準的な燃料を使用している場合と比較して加速時の燃料噴射量を増大させることや、始動直後の燃料噴射量を増大させるような制御が実施される。なお、ここでの判断結果をポイント演算部2cに伝達し、不揮発型バックアップメモリに記憶させてもよい。
【0048】
[3.フローチャート]
エンジンECU20で実施される重質判定制御に係るフローチャートを図5に例示する。エンジンECU20の内部において所定の周期で繰り返し実施される。
ステップA10では、クランク角度センサ8でクランクシャフトの角度θCRが検出され、エンジン回転数Neが取得される。ここで取得されたエンジン回転数Neは、変化率演算部2bに伝達される。また、ステップA20では、水温センサ5で検出された情報がエンジンECU20に伝達され、水温検出部1bにおいてエンジン冷却水の水温Wが取得される。ここで取得された水温Wは、開始条件判定部3aに伝達される。続くステップA30では、スロットルポジションセンサ6で検出された情報がエンジンECU20に伝達され、スロットル開度量検出部1cにおいてスロットル開度Tが取得される。
【0049】
ステップA40では、変化率演算部2bにおいてスロットル開度Tの変化率TVが演算される。変化率TVは、所定時間内のスロットル開度Tの変化量として演算される。また、この演算に係る所定時間は、ステップA10で演算されたエンジン回転数Neに応じて設定されてもよく、あるいは予め設定された時間が設定されてもよい。
また、ステップA50では、変化量演算部2aにおいてスロットル開度Tの変化量TDが演算される。変化量TDは、スロットル開度Tが変化し始めて安定状態を脱した時点から再び安定状態に至るまでの開度変化量として演算される。ステップA40及びステップA50で演算された変化率TV及び変化量TDは、開始条件判定部3aに伝達される。
【0050】
ステップA60では、開始条件判定部3aにおいて、条件1及び条件2が成立するか否かが判定される。ここでは、図3に示すようなマップを用いて、変化量TD,変化率TVで座標を規定された点が判定領域内に位置するか否かが判定される。ここで、判定領域内に位置する場合には条件1及び条件2が成立するためステップA70に進み、位置しない場合にはそのままこのフローを終了する。
【0051】
ステップA70では、燃料性状判定部3bにおいて、水温検出部1bで取得された水温Wに基づいて第一しきい値JFUELRP_AF1及び第二しきい値JFUELRP_AF2が設定される。また、続くステップA80では、排気空燃比検出部1aでリッチピークRが検出される。そしてステップA90では、燃料性状判定部3bにおいて、リッチピークRが第一しきい値JFUELRP_AF1よりも小さいか否かが判定される。ここで、R<JFUELRP_AF1である場合には燃料が重質燃料である可能性が高いものと仮判定され、ステップA100に進む。ステップA100では、ポイント演算部2cにおいて、判定ポイントPがインクリメントされ(PにP+1が代入され)、ステップA110に進む。また、ステップA90でR<JFUELRP_AF1でない場合には、ステップA100をスキップしてステップA110に進む。
【0052】
ステップA110では、燃料性状判定部3bにおいて、リッチピークRが第二しきい値JFUELRP_AF2よりも大きいか否かが判定される。ここでR>JFUELRP_AF2である場合には燃料が標準的な燃料である可能性が高いものと仮判定され、ステップA120に進む。ステップA120では、ポイント演算部2cにおいて、判定ポイントPがデクリメントされ(PにP−1が代入され)、ステップA130に進む。また、ステップA110でR>JFUELRP_AF2でない場合には、ステップA120をスキップしてステップA130に進む。
【0053】
なお、ステップA90及びステップA110での判定条件から、JFUELRP_AF1≦R≦JFUELRP_AF2である場合には判定ポイントPが変化することなく同一値で維持される。したがって、第一しきい値JFUELRP_AF1以上、第二しきい値JFUELRP_AF2以下の範囲は、判定ポイントPの加減算が実施されないリッチピークRの不感帯として機能している。
ステップA130では、燃料性状判定部3bにおいて、判定ポイントPが所定ポイントP0以上であるか否かが判定される。ここでP≧P0である場合にはステップA140に進み、燃料が重質燃料であると判断される。この場合、燃料性状に適合するように燃料制御用の各種パラメータ,燃料噴射量等が変更され、インジェクタ18から噴射される燃料量や噴射タイミング等が制御される。一方、ステップA130でP<P0である場合にはステップA150に進み、燃料が重質燃料でない(標準的な燃料である)と判断されて、標準的な燃料に見合った燃料の制御が実施される。
【0054】
[4.作用]
エンジン10を搭載した車両でアクセルペダルの踏み戻し操作がなされたときの排気空燃比,エンジン回転数Ne,体積効率Ec及びスロットル開度Tの変動を図6に例示する。時刻t1にアクセルペダルの踏み戻し操作がなされると、スロットル開度Tが安定状態を脱して減少方向に変化し始め、変化率演算部2bでは変化率TVが演算される。また、時刻t1以降は、エンジン回転数Ne及び体積効率Ecも徐々に低下する。
【0055】
時刻t2にアクセルペダルの踏み戻し操作が終了すると、スロットル開度Tが再び安定状態となり、変化量演算部1aでは変化量TDが演算される。このとき、開始条件判定部3aでは重質判定制御の開始条件が判定される。ここで変化量TD及び変化率TVが条件1,条件2を満足するときには、排気空燃比検出部1aにおいて時刻t2の前後のリッチピークRが検出される。
【0056】
ここで、燃料が重質燃料である場合には、吸気ポート11内の負圧が上昇して付着燃料が急激に気化する。そのため、図6中に実線で示すように排気空燃比が大きくリッチ化し、リッチピークRの値がR1となる。なお、リッチピークRの値はスロットル弁9が急激に閉鎖するほど増大する。一方、標準的な燃料の場合には、重質燃料に比して吸気ポート11内の付着燃料量が少ないため、図6中に破線で示すように排気空燃比のリッチ化の度合いが小さい。したがって、リッチピークRの値はR1よりも大きい(リーン側の)R2となる。
【0057】
燃料性状判定部3bでは、エンジン冷却水の水温Wに基づいて第一しきい値JFUELRP_AF1及び第二しきい値JFUELRP_AF2が設定され、これらのしきい値JFUELRP_AF1,JFUELRP_AF2とリッチピークRの値とが比較される。標準的な燃料の場合にはリッチピークRの値R2が比較的小さいため、判定ポイントPが少なくとも増大することがない。したがって、燃料が重質燃料でない(標準的な燃料である)と判断される。
【0058】
一方、燃料が重質燃料である場合にはリッチピークRの値R1が比較的大きいため、判定ポイントPが少なくとも減少することはない。また、R1>JFUELRP_AF1であれば燃料が重質燃料である可能性が高いものと仮判定され、判定ポイントPがインクリメントされる。この仮判定の繰り返しを経て、判定ポイントPがP≧P0になって初めて燃料が重質燃料であると判断され、燃料性状に応じた燃料の制御が実施される。
【0059】
[5.効果]
このように、上述の燃料性状判定装置では、条件1に規定された通り、スロットル弁9の閉鎖時の排気空燃比に基づく判定が実施される。これにより、吸気ポート11内の負圧を利用して排気空燃比中に含まれる揮発燃料成分の割合を増大させることができ、燃料性状による空燃比変動が明瞭となり、例えば燃料の揮発性や重質度といったような燃料性状を正確に判定することができる。
【0060】
また、重質燃料の使用時には、その燃料性状に合致した燃料制御を実施することでドラビリを確保することができる。一方、標準的な燃料の使用時には、重質燃料を想定しない制御をすることができ、例えばエンジン10の始動直後の燃料噴射量を多めにするような必要がない。したがって、燃料消費量を適正化することが可能となり、燃費を改善することができるとともに、排気性能を向上させることができる。例えば、始動時のエンジン10から排出される排気中に含まれる未燃炭化水素(HC)の量を低減することができる。
【0061】
また、上述の燃料性状判定装置では、ポイント演算部2cが判定ポイントPを記憶しておくための不揮発型バックアップメモリを備えている。これにより、例えばエンジン10を停止して燃料が供給されたような場合であっても、その燃料供給前の判定ポイントPを保持しておくことができ、給油後の燃料性状の判定に用いることができる。
なお、仮に標準的な燃料を使用していた車両に重質燃料が供給されたとしても、その直後のエンジン10の始動時には燃料ラインに標準的な燃料が残留しているため、重質燃料に対応する燃料制御が直ちに要求されるわけではない。このような意味では、車両の電源(イグニッションスイッチ)のオン/オフ状態に関わらず判定ポイントPを記憶しておくことは、エンジン10に実際に供給される燃料性状に合致した燃料制御を実施することが可能になるという点で合理的である。例えば、燃料タンク内に貯留されている燃料の性状を判定するような手法と比較すると、より正確に燃料性状を判定することができる。
【0062】
また、上述の燃料性状判定装置では、排気空燃比検出部1aで検出されたリッチピークRに基づく判定を実施している。これにより、燃料の揮発の度合いを鮮明に観察することができ、燃料性状を正確に判定することができる。
また、上述の燃料性状判定装置では、条件2に規定された通り、燃料性状に由来するリッチ化傾向が識別しやすい状態で検出された排気空燃比を参照して、燃料性状を判定している。すなわち、スロットル開度の変化量TD及び変化率TVに基づいて重質判定制御の開始条件を判定している。これにより、排気空燃比の検出精度を向上させることができ、誤判定を防止することができる。したがって、燃料性状の判定精度のさらなる向上が期待できる。
【0063】
また、上述の燃料性状判定装置では、一回の判定で燃料性状を決定するのではなく、判定ポイントPを用いて燃料性状を決定している。これにより、一時的な排気空燃比の変動や誤差等の影響を小さくすることができ、正確に燃料性状を判定することができる。
また、上述の燃料性状判定装置では、判定ポイントPの加減算に際し、第一しきい値JFUELRP_AF1以上、第二しきい値JFUELRP_AF2以下の範囲をリッチピークRの不感帯として機能させている。これにより、燃料性状に依存しないリッチピークRの不規則な変動や外乱,ノイズ等の影響が抑制することができ、燃料性状の判定精度をさらに向上させることができる。
【0064】
さらに、上述の燃料性状判定装置では、エンジン冷却水の水温Wに応じて第一しきい値JFUELRP_AF1及び第二しきい値JFUELRP_AF2を設定している。このように、冷却水温に応じて判定ポイントPの加減算に係る基準を変更することにより、温度条件を考慮して燃料性状を正確に判定することができる。
[6.変形例等]
上述した実施形態に関わらず、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。本実施形態の各構成は、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせてもよい。
【0065】
上述の実施形態では、仮判定の内容に応じて判定ポイントPに所定値を加算、あるいは減算する構成を例示したが、加算される所定値と減算される所定値とを異なる値に設定することも考えられる。例えば、判定ポイントPの加算時の所定値を減算時の所定値よりも大きく設定すれば、燃料が重質燃料であると判定されやすくすることができる。この場合、標準的な燃料から重質燃料への燃料性状変更時における燃料制御の切り換えを早めることができ、ドラビリを重視した設定となる。一方、判定ポイントPの加算時の所定値を減算時の所定値よりも小さく設定すれば、燃料が重質燃料であると判定されにくくする(より慎重に重質燃料であると判断させる)ことができる。この場合、重質燃料から標準的な燃料への燃料性状変更時における燃料制御の切り換えを早めることができ、燃費や排気性能を重視した設定となる。
【0066】
また、上述の実施形態では、判定ポイントPが予め設定された所定ポイントP0以上になったときに燃料が重質燃料であると判断するものを説明したが、所定ポイントP0が必ずしも固定値である必要はない。例えば、エンジン10の運転状態に関わる各種パラメータ(エンジン回転数Neや外気温度,吸気圧,排気圧,排気温度,車両の走行距離等)に応じて所定ポイントP0を適宜設定する構成としてもよい。
【0067】
また、上述の実施形態では、二種類のしきい値を用いてリッチピークRの大きさを判定するものを例示したが、より多数のしきい値を用いてリッチピークRの大きさを詳細に判定することも考えられる。例えば、リッチピークRの大きさが大きいほど判定ポイントPの加算量を増大させれば、燃料が重質燃料であるか否かの判断をより素早く確定させることができる。
【0068】
また、上述の実施形態では、燃料性状が重質であるか否かを判定するものを例示したが、判定内容をより細分化して、燃料性状を判定するものとすることも考えられる。例えば、燃料性状を標準的なものと重質のものとに二分するのではなく、リッチピークRの大きさに基づいて燃料の揮発性(低揮発性,中揮発性,高揮発性等といった揮発しやすさの度合い)や蒸発速度,燃料に含まれる重質成分の割合,比率等といった燃料の重質度に相関する指標値を評価する構成としてもよい。この場合、より正確に燃料性状を把握することが可能となり、エンジン10の制御性を向上させることができる。
【0069】
なお、上述の実施形態ではガソリンエンジン10を想定したものを例示したが、本燃料性状判定装置の適用対象はこれに限定されず、ディーゼルエンジンに対して適用することも可能である。また、本燃料性状判定装置での重質判定制御は、温態(エンジン10の冷態始動時以外の状態)であっても実施可能であり、エンジン冷却水の温度Wに応じて実施/非実施を切り換える必要はない。
【符号の説明】
【0070】
1 検出部
1a 排気空燃比検出部(空燃比検出手段)
1b 水温検出部(水温検出手段)
1c スロットル開度量検出部(開度量検出手段)
2 演算部
2a 変化量演算部(変化量演算手段)
2b 変化率演算部(変化率演算手段)
2c ポイント演算部(判定値演算手段)
3 判定部(判定手段)
3a 開始条件判定部(開始条件判定手段)
3b 燃料性状判定部(燃料性状判定手段)
4 空燃比センサ
5 水温センサ
6 スロットルポジションセンサ
20 エンジンECU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの排気空燃比を検出する空燃比検出手段と、
前記エンジンのスロットル弁の開度量を検出する開度量検出手段と、
前記開度量検出手段で検出された前記開度量の減少時に、前記空燃比検出手段で検出された前記排気空燃比に基づき、前記エンジンに供給される燃料の燃料性状を判定する判定手段と、
を備えたことを特徴とする、燃料性状判定装置。
【請求項2】
前記判定手段が、前記開度量の減少に伴って発生する前記排気空燃比のリッチピークの大きさに基づいて、前記燃料性状を判定する
ことを特徴とする、請求項1記載の燃料性状判定装置。
【請求項3】
前記スロットル弁の閉鎖時における前記開度量の変化量を演算する変化量演算手段と、
前記スロットル弁の閉鎖時における前記開度量の単位時間あたりの変化率を演算する変化率演算手段と、
前記変化量演算手段で演算された前記変化量と前記変化率演算手段で演算された前記変化率とに基づき、前記燃料性状を判定するための開始条件の成否を判定する開始条件判定手段と、を備え、
前記判定手段が、前記開始条件判定手段で前記開始条件が成立したときに前記燃料性状を判定する
ことを特徴とする、請求項1又は2記載の燃料性状判定装置。
【請求項4】
前記空燃比検出手段で検出された前記排気空燃比に応じて、前記燃料性状に対応する判定値に所定値を加算又は減算する判定値演算手段と、
前記判定値演算手段で演算された前記判定値に基づいて、前記燃料性状を判定する燃料性状判定手段と、を備えた
ことを特徴とする、請求項1〜3の何れか1項に記載の燃料性状判定装置。
【請求項5】
前記判定値演算手段が、前記排気空燃比が第一しきい値未満であるときに、前記判定値に前記所定値を加算し、前記排気空燃比が前記第一しきい値よりも大きい第二しきい値以上であるときに、前記判定値から前記所定値を減算する
ことを特徴とする、請求項4記載の燃料性状判定装置。
【請求項6】
前記エンジンの冷却水温を検出する水温検出手段を備え、
前記判定値演算手段が、前記水温検出手段で検出された前記冷却水温に応じて、少なくとも前記第一しきい値及び前記第二しきい値の何れか一方の値を変更する
ことを特徴とする、請求項5記載の燃料性状判定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−117388(P2012−117388A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−265366(P2010−265366)
【出願日】平成22年11月29日(2010.11.29)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.FRAM
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【出願人】(000176811)三菱自動車エンジニアリング株式会社 (402)
【Fターム(参考)】