説明

燃料用ホース

【課題】低コスト化を実現でき、しかも押出加工性、燃料低透過性等に優れる燃料用ホースを提供する。
【解決手段】少なくとも1つの構成層を備えた燃料用ホースであって、その最内層が、フッ素ゴム100重量部に対し、融点が85〜135℃のフッ化ビニリデン・6フッ化プロピレン(PVDF−HFP)を3〜25重量部の範囲で含有し、扁平状フィラーを5〜25重量部の範囲で含有するフッ素系ゴム組成物からなり、上記最内層内で、上記扁平状フィラーがホースの長手方向に対して平行に分散されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の燃料〔ガソリン、アルコール混合ガソリン、ディーゼル燃料、RME(脂肪酸メチルエステル)およびその混合ディーゼル燃料、GTL(Gas to Liquid) およびその混合ディーゼル燃料、CNG、LPG〕の輸送等に用いられる、燃料用ホースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車等を取り巻く燃料ガスの蒸散規制は厳しくなってきており、これに対応する低透過な燃料用ホース(燃料輸送用ホース)が要求されている。そして、このような環境規制強化に伴い、特にフューエルホースやベーパーホースに関しては、一般的に、そのホースの最内層材料として、ガソリンの低透過性に優れるフッ素ゴム(FKM)が用いられる(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第2982788号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、フッ素ゴム層により所望の燃料低透過性を得るには、そのフッ素ゴム層の厚みを厚肉にしなければならない。ところが、フッ素ゴム自体は材料コストが高いため、上記フッ素ゴム層の厚肉化はコストアップにつながる。
【0004】
また、フッ素ゴムは、練りや押出といった、特にホースを製造する上で重要な加工特性に非常に乏しい。そのため、燃料低透過性の改良のため、フッ素ゴム層形成用のゴム組成物の混練り時に、白色フィラー等の充填材を加えようとしても、充填材がフッ素ゴムポリマー中に入り難いため、これによる燃料低透過性の改良は難しい。加えて、上記の理由等によりフッ素ゴムポリマーに対する充填材の添加量を増やし難いことから、押出成形時のスウェルが増加し、押出チューブの外径寸法の膨張や、押出機のダイス寸法に対する押出チューブの寸法変化率が大きくなる。さらに、上記フッ素ゴム組成物は、加硫時およびその後の冷却時の収縮性が高く、このことも寸法変化の要因となることがある。
【0005】
ところで、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR),エピクロロヒドリンゴム(ECO)等の場合、可塑剤や加工助剤等を添加するとともに、充填材として最適なものを用いることができ、練りや押出といった加工性のバランスを容易に調整することが可能であるが、フッ素ゴムの場合、上記のような充填材の添加による加工性のバランス調整は、フッ素ゴムの特性である低温脆化性を悪化させるおそれがある。さらに、ガソリン燃料の輸送等に用いられる燃料用ホースの最内層材料としてフッ素ゴムを用いる場合、上記のような可塑剤や加工助剤の添加により、フッ素ゴムの特性であるガソリン低透過性が悪化するおそれがある。そのため、燃料用ホースの最内層材料として優れるフッ素ゴムの物性を低下させずに、上記加工性を改良させながら、ガソリン低透過性を向上させることが強く望まれている。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、低コスト化を実現でき、しかも押出加工性、燃料低透過性等に優れる燃料用ホースの提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明の燃料用ホースは、少なくとも1つの構成層を備えた燃料用ホースであって、その最内層が、フッ素ゴム100重量部に対し、融点が85〜135℃のフッ化ビニリデン・6フッ化プロピレン(PVDF−HFP)を3〜25重量部の範囲で含有し、扁平状フィラーを5〜25重量部の範囲で含有するフッ素系ゴム組成物からなり、上記最内層内で、上記扁平状フィラーがホースの長手方向に対して平行に分散されているという構成をとる。
【0008】
すなわち、本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意研究を重ねた。その研究の過程で、まず、フッ素ゴムの重要な特性、すなわち低温脆化性や燃料低透過性については、フッ素ゴム本来の特性を悪化させずに、フッ素ゴムの押出加工性(流動性)等を改善するような添加剤について各種研究を重ねた。その結果、フッ素ゴムの練りや押出加工における温度領域(140℃前後)において流動性を示し、この温度領域において可塑剤的な役割を果たす添加剤として、融点が85〜135℃のフッ化ビニリデン・6フッ化プロピレン(低融点PVDF−HFP)を特定量(少量)添加したところ、フッ素ゴムマトリックス中で上記低融点PVDF−HFPが分散相となり、低温脆化性や燃料低透過性といったフッ素ゴム本来の特性を悪化させることなく、加工特性に優れるようになることを突き止めた。なお、上記のようになる理由は、フッ素ゴムの混練りや押出の際に、その加工条件によりゴム組成物に120〜140℃程度を超える高温の熱がかかるため、上記の低融点PVDF−HFPが、この温度領域で上手く流動性を発揮し、フッ素ゴムに相溶するからである。
【0009】
そして、このフッ素ゴム組成物中に、燃料低透過性の改良のため、特定量の扁平状フィラー(タルク,クレー,マイカ等)を分散させたところ、上記低融点PVDF−HFPの作用により分散性が良くなることを突き止めた。このようにして調製されたゴム組成物をホース状に押出成形して燃料用ホースを作製すると、押出により上記扁平状フィラーがホースの長手方向に対して平行にムラなく分散することから、このフィラーの重なりによる遮断作用によって良好な燃料低透過性が得られるようになる。そのため、このフッ素ゴム層を厚肉にしなくとも、良好な燃料低透過性が得られるようになることを見いだし、本発明に到達した。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、本発明の燃料用ホースは、ホースの最内層が、フッ素ゴムを主成分とし、融点が85〜135℃のフッ化ビニリデン・6フッ化プロピレンを特定量(少量)含有し、扁平状フィラーを特定の範囲で含有するフッ素系ゴム組成物からなり、上記最内層内で、上記扁平状フィラーがホースの長手方向に対して平行に分散されている。そのため、押出加工性等に優れるようになり、特に、燃料低透過性おいて優れた性能を発揮することができる。また、上記最内層が薄肉であっても、押出加工性、燃料低透過性等に優れることから、低コスト化を実現することができる。さらに、上記薄肉化により、ホースの柔軟性も優れるようになる。しかも、フッ素ゴムの特性により、低温脆化性等にも優れるようになる。また、上記最内層押出時の吐出がスムーズになり、押出ヘッド圧の低減とそれに伴う押出温度の低下が図られることから、上記最内層のゴム焼け防止にも有利となる。そして、本発明の燃料用ホースは、ガソリン等の自動車燃料の輸送用途等において優れた機能を発揮することができる。
【0011】
特に、上記最内層に分散される扁平状フィラーが、タルク,クレー,マイカ等であるときは、より燃料低透過性に優れるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
つぎに、本発明の実施の形態について説明する。
【0013】
本発明の燃料用ホースは、単層構造であっても、2層以上の層が積層された多層構造であっても特に限定はないが、少なくとも、その最内層(単層構造の場合は、その層)が、フッ素ゴム100重量部(以下、「部」と略す)に対し、融点が85〜135℃のフッ化ビニリデン・6フッ化プロピレン(PVDF−HFP)を3〜25部の範囲で含有し、扁平状フィラーを5〜25部の範囲で含有するフッ素系ゴム組成物からなるものである。そして、上記最内層内で、上記扁平状フィラーがホースの長手方向に対して平行に分散されている。
【0014】
上記フッ素系ゴム組成物の主成分であるフッ素ゴムとしては、特に限定されるものではなく、例えば、フッ化ビニリデン−6フッ化プロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−6フッ化プロピレン−4フッ化エチレン共重合体、4フッ化エチレン−プロピレン共重合体、4フッ化エチレン−パーフルオロビニルエーテル共重合体、フッ化ビニリデン−4フッ化エチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体等があげられる。これらは単独であるいは2種以上併せて用いられる。なかでも、フッ化ビニリデン−6フッ化プロピレン−4フッ化エチレン共重合体が、燃料低透過性や低温脆化性に優れるため、好ましい。
【0015】
上記フッ素ゴムとともに用いられるPVDF−HFPとしては、先に述べたように融点が85〜135℃のもの(低融点PVDF−HFP)が用いられる。すなわち、これよりも融点の高い、通常のPVDF−HFPでは、フッ素ゴム組成物の練りや押出の際に、所望の加工性改善効果が認められないからである。なお、フッ素ゴム組成物調製時の温度領域を、通常のPVDF−HFPが溶融する温度まで上げた場合、押出成形時にゴム焼け現象が起きるおそれがある。しかしながら、本発明では、上記のような低融点PVDF−HFPを使用していることから、ゴム焼け防止にも有利となる。そして、このような低融点PVDF−HFPは、具体的には、アルケマ社製のKYNAR2750、KYNAR7201、KYNAR9301等があげられる。
【0016】
そして、上記低融点PVDF−HFPの含有割合は、先に述べたように、フッ素ゴム100部に対して、3〜25部の範囲内に設定されている。好ましくは5〜20部の範囲内である。すなわち、上記低融点PVDF−HFPの含有割合が3部未満であると、フッ素ゴム組成物への流動性付与が充分でないために、押出加工性の改善効果に乏しく、逆に25部を超えると、練り時の樹脂パウダー(低融点PVDF−HFP)の添加時間が長くなり、更には、練り後の保管(常温付近での保管)の際にコンパウンド硬さが相当高くなるため、押出加工時の際に扱いにくくなるからである。
【0017】
フッ素ゴムおよび上記低融点PVDF−HFPとともに用いられる扁平状フィラーとしては、特に限定されるものではないが、その分散により、より優れた燃料低透過性等が得られる点で、タルク、クレー、マイカを用いることが好ましい。なお、これらの各種扁平状フィラーは、単独であるいは二種以上併せて用いられる。
【0018】
そして、上記扁平状フィラーの含有割合は、先に述べたように、フッ素ゴム100部に対して、5〜25部の範囲内に設定されている。好ましくは10〜20部の範囲内である。すなわち、上記扁平状フィラーが5部未満であると、目的とする燃料低透過性効果が充分に得られないからであり、逆に25部を超えると、練り時のフィラー添加時間が長くなることに加え、低温脆化性の悪化を引き起こす傾向がみられるからである。
【0019】
なお、上記最内層形成用のフッ素系ゴム組成物には、通常、架橋剤(加硫剤)が配合される。このような架橋剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、硫黄系架橋剤、過酸化物架橋剤、ポリオール架橋剤、ポリアミン架橋剤等があげられる。
【0020】
また、上記最内層形成用のフッ素系ゴム組成物は、上記各成分とともに、必要に応じ、カーボンブラック等の充填剤、加硫促進剤、共架橋剤、可塑剤、加工助剤、老化防止剤、難燃剤等を含有しても差し支えない。
【0021】
そして、本発明の燃料用ホースは、例えば、つぎのようにして製造することができる。すなわち、まず、上記最内層形成用のフッ素系ゴム組成物の各材料を準備し、フッ素ゴムと、低融点PVDF−HFPと、扁平状フィラーと、必要に応じ、カーボンブラック等の充填剤とを、ニーダー等の混練機を用いて混練する。その後、架橋剤、共架橋剤等を添加し、さらに、ロール、バンバリーミキサー、二軸混練押出機等の混練機を用いて混練することにより、最内層形成用のフッ素系ゴム組成物を調製する。そして、このゴム組成物を、押出成形機を用いてホース状に押出成形することにより、単層構造の燃料用ホースを作製することができる。また、上記ホースは、必要に応じ、他のゴム材〔エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM),アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR),アクリロニトリル−ブタジエンゴムと塩化ビニルとのブレンド材(NBR・PVC),ブチルゴム(IIR),エピクロロヒドリンゴム(ECO)等〕等との積層により、積層ホースとすることもできる。この場合、上記最内層とともに、各層を同時に押出成形することにより積層ホースを作製してもよく、また、上記最内層の外周面に、順次、各層を押出形成してもよい。さらに、必要に応じ、補強糸層や接着層を設けてもよい。
【0022】
このようにして得られた燃料用ホースの最内層内では、ホースの長手方向に対して、扁平状フィラーの偏平面が平行に揃えた状態で分散している。このため、ホース内側からのガソリン等の燃料の透過が、上記扁平状フィラーによって物理的に遮断されることになる。
【0023】
上記最内層の厚みは、通常、0.2〜3.0mmの範囲に設定されるが、積層ホースの場合は、できる限り薄肉(0.2〜0.5mm)に形成することが、コストを抑える等の点で好ましい。
【0024】
そして、このようにして得られる本発明の燃料用ホースは、自動車等の燃料〔ガソリン、アルコール混合ガソリン、ディーゼル燃料、RME(脂肪酸メチルエステル)およびその混合ディーゼル燃料、GTL(Gas to Liquid) およびその混合ディーゼル燃料、CNG、LPG〕の輸送等に用いられるホース、例えば、フューエルホース、ベーパーホース等として好適に用いることができる。
【0025】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0026】
まず、実施例および比較例に先立ち、下記に示す材料を準備した。
【0027】
〔フッ素ゴム〕
ダイエルG901、ダイキン社製
【0028】
〔PVDF−HFP(i)〕
KYNAR2750(融点:135℃)、アルケマ社製
【0029】
〔PVDF−HFP(ii)〕
KYNAR7201(融点:126℃)、アルケマ社製
【0030】
〔PVDF−HFP(iii )〕
KYNAR9301(融点:90℃)、アルケマ社製
【0031】
〔PVDF−HFP(iv)〕
KYNAR2850(融点:160℃)、アルケマ社製
【0032】
〔SRFカーボン〕
シーストGS、東海カーボン社製
【0033】
〔タルク〕
ミクロエースK−1、日本タルク社製
【0034】
〔クレー〕
polyfil DLX、Huber社製
【0035】
〔マイカ〕
M−XF、レプコ社製
【0036】
〔過酸化物架橋剤〕
パーヘキサ25B−40、日本油脂社製
【0037】
〔共架橋剤(i)〕
ハイクロスED−P、精工化学社製
【0038】
〔共架橋剤(ii)〕
TAIC−M60、日本化成社製
【0039】
〔加硫剤〕
ノクセラーTRA、大内新興化学社製
【実施例】
【0040】
〔実施例1〜9、比較例1〜4〕
下記の表1および表2に示す各材料を準備し、同表に示す割合で、フッ素ゴムと、PVDF−HFPと、カーボンブラックとを、ニーダーを用いて混練し、その後、このものに、同表に示す割合で、架橋剤、共架橋剤等を添加し、さらに、ロールを用いて混練することにより、ゴム組成物を調製した。
【0041】
【表1】

【0042】
【表2】

【0043】
そして、上記のようにして調製されたゴム組成物を用いて、マンドレル上に押出成形し、160℃×45分加熱し、単層構造の燃料用ホースを作製した(層の厚み1.5mm、ホース内径7.5mm)。
【0044】
このようにして得られた実施例品および比較例品の燃料用ホースに関し、下記の基準に従って各特性の評価を行った。これらの結果を、後記の表3および表4に併せて示した。
【0045】
〔ニーダー加工性〕
ホース作製時のゴム組成物調製に際し、モリヤマ社製3Lニーダーを用い、ポリマーを素練りした後、架橋剤、共架橋剤を除くその他の材料を一括投入し、135℃排出温度設定にて練りを実施した。その際、まとまり感の良い順に、○、△、×と評価した。
【0046】
〔押出加工性〕
ホース作製の際に、三葉製作所社製φ50mm押出機を用い、温調100℃,スピンドル/ダイス=7.5mm/10.5mm,回転数45rpmの設定において、吐出量とスウェルを測定した。そして、吐出量に優れ(35g/10s以上)、外径スウェルの小さなもの(25%未満)を○、吐出量が少なく(20g/10s未満)、外径スウェルが大きいもの(45%以上)を×と評価し、吐出量が20g/10s以上35g/10s未満で、外径スウェルが25%以上45%未満のものを△と評価した。
【0047】
〔常態時物性〕
ホース形成用ゴム組成物を用い、ミキシングロールにより厚み2mmの未加硫ゴムシートを作製し、これに160℃×45分間のプレス加硫を施してゴムシートを作製した。ついで、上記ゴムシートを、JIS5号ダンベルで打ち抜き、加硫ゴムテストピースを作製した。そして、JIS K 6251に準拠して、その破断点強度(TS)、破断伸び(Eb )、および硬度(HA)を測定した。なお、この試験において本発明に要求される破断点強度(TS)は10MPa以上であり、破断伸び(EB)は250%以上であり、硬度(HA)は65〜80HAの範囲である。
【0048】
〔圧縮永久歪み〕
上記常態時物性試験において作製のゴムシートを、JIS K 6262に準拠した形状とサイズに成形して加硫ゴムテストピースを作製し、JIS K 6262に準拠して、温度100℃×試験時間72時間の測定条件にて圧縮永久歪みを測定した。そして、圧縮永久歪みが40%以下であるものを○と評価し、40%を超えるものを×と評価した。
【0049】
〔低温脆化〕
JIS K 6261に準じて、脆化温度(℃)を測定し、低温脆化性を評価した。なお、脆化温度は−20℃以下であることが好ましいと考える。
【0050】
〔ガソリン透過性(カップ法)〕
図1に示すように、まず、外周に雄ネジを備えたフランジ付きのSUS製カップ(内径Φ:66mm、カップ内高さD:40mm)20を準備し、この中に、エタノール10重量%含有レギュラーガソリンを100mlを入れた。その後、上記カップ20のフランジ部21に、先の評価で作製したゴムシート(試料)10を載せ、金属リング11を介して金網(16メッシュ)12を乗せ、ついで、内周に雌ネジを備えた締付け用キャップ30を、上記カップ20のフランジ部21に形成された雄ネジに螺合した。このようにして組立てられたものを逆さまにし、40℃オーブンに投入した。そのまま7日間放置し、その後、一旦新しいガソリン(エタノール10重量%含有)に入替えて、入替え直後のカップ全体の重量W0(mg)を測定した。そして、上記カップを再度逆さまにし、40℃オーブンに3日間投入した後、カップ全体の重量W1(mg)を測定した。これらの値(W0,W1)をもとに、下記の式(1)に従い、透過係数(mg・mm/cm2 /day)を算出した。なお、式(1)中、tはゴムシート(試料)の厚み(mm)であり、Aはガソリンに対する上記ゴムシートの接触面積(ガソリン透過面の面積)(cm2 )である。
【0051】
【数1】

【0052】
【表3】

【0053】
【表4】

【0054】
上記結果より、実施例の燃料用ホースは、そのホース形成用ゴム組成物に、低融点PVDF−HFPが特定量配合されているため、いずれも、その調製時のニーダー加工性およびロール加工性に優れることから、練り易く、また、押出加工性に優れることから、薄肉押出加工性も改善される。そして、実施例の燃料用ホースは、そのホース形成用ゴム組成物に、タルク,クレー,マイカといった扁平状フィラーが特定量配合されているため、ガソリン低透過性に優れることから、燃料用ホースとして優れた性能を発揮することができる。
【0055】
これに対して、比較例1では、扁平状フィラーが不含であるため、ガソリン低透過性に優れない。また、比較例2では、扁平状フィラーの割合が少ないため、目的とする燃料低透過性効果が充分に得られておらず、比較例3では、扁平状フィラーの割合が多過ぎるため、練り加工時間を長く要し、低温脆化性も悪化する。なお、比較例4に配合されているPVDF−HFPは、融点の高い通常のPVDF−HFPであるため、比較例4では、実施例にみられるような加工性の改善等が認められない。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の燃料用ホースは、主に、自動車用の燃料用ホースに好適に用いられるが、トラクター、耕運機、船舶等にも用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】ガソリン透過性(カップ法)の試験方法を示す説明図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの構成層を備えた燃料用ホースであって、その最内層が、フッ素ゴム100重量部に対し、融点が85〜135℃のフッ化ビニリデン・6フッ化プロピレン(PVDF−HFP)を3〜25重量部の範囲で含有し、扁平状フィラーを5〜25重量部の範囲で含有するフッ素系ゴム組成物からなり、上記最内層内で、上記扁平状フィラーがホースの長手方向に対して平行に分散されていることを特徴とする燃料用ホース。
【請求項2】
上記扁平状フィラーが、タルク,クレーおよびマイカからなる群から選ばれた少なくとも一つである請求項1記載の燃料用ホース。

【図1】
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【公開番号】特開2009−56694(P2009−56694A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−225771(P2007−225771)
【出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】