説明

燃料電池システム、および燃料電池の出力制御方法

【課題】充放電可能な二次電池と燃料電池の劣化を抑制し、かつ高効率なシステムを実現するための出力制御方法を有する燃料電池システムを提供する。
【解決手段】充放電可能な二次電池125と二次電池125を充電する燃料電池102とを備える燃料電池システムにおいて、二次電池125の残容量を監視し、残容量に応じて燃料電池102を起動または停止する機能と、燃料電池102の電圧を監視する機能と、燃料電池102の電圧が予め定めた管理電圧範囲を下回った場合は、燃料電池102の出力を減らす機能と、燃料電池102の電圧が管理電圧範囲を上回った場合は、燃料電池102の出力を増やす機能とを有する制御手段127を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体有機化合物を燃料とする燃料電池システムに関し、より詳細には、燃料電池の出力を制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
液体有機化合物を燃料とする燃料電池には、メタノール、エタノール、ジメチルエーテルなどの液体有機化合物を燃料とする固体高分子形燃料電池がある。これらの固体高分子形燃料電池は、騒音が小さい、運転温度が低い(約70〜80℃)、燃料の補給が容易であるなどの特長を有する。そのため、可搬式電源、電気自動車の電源、または電動バイクやアシスト式自転車、さらには医療介護用の車椅子やシニアカーなどの軽車両用電源として、幅広い用途が期待されている。
【0003】
これらの燃料電池の中で、メタノールを燃料とする直接メタノール型燃料電池(以下、「DMFC」と称する。)は、改質器を省略できる点、燃料を室温で補給できる点、出力に対する燃料コストがガソリン等よりも安い点、および50〜70℃の比較的低温で発電できるので起動時間が短い点などの利点を有している。特に、燃料をポンプ等により強制的に流通させる“アクティブ式”DMFCは、数十Wから数百Wの高い出力が得られ、電子機器や照明器具などの比較的低電力機器の給電に適している。また、セルサイズの大型化や積層セル数の増加により1kW以上のDMFCを用いれば、移動体にも適用可能である。
【0004】
従来の技術によると、燃料電池を電源装置として構成する場合、特許文献1または2に記載されているように、燃料電池と充放電が可能な二次電池とを併用することがある。
【0005】
特許文献1には、二次電池の容量に対して所定範囲を設け、二次電池の容量が所定範囲以上の場合は燃料電池の出力を停止することで、二次電池の過充電を防止する例が開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、二次電池の充電残容量に応じて、効率が高くなるような条件で燃料電池の出力を決定することで、システム総合効率の良い燃料電池システムを提供する例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−34171号公報
【特許文献2】特開平7−240212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明により解決する課題は、二次電池の充放電による劣化と燃料電池の急激な負荷変動による劣化を同時に抑制することである。
【0009】
従来技術では、二次電池の充電残容量に対応して燃料電池の出力を決める運転方法が開示されている。この技術では、二次電池の劣化を抑制することは可能であるものの、急激な負荷変動による燃料電池の劣化を増長する懸念がある。例えば、二次電池の充電容量のある特定値付近で外部の要求出力が変動する場合には、二次電池の充電容量が短時間にこの特定値を上回ったり下回ったりし、燃料電池の出力が短時間で切り替わることが想定される。燃料電池の発電も電気化学的な反応に基づくため、短時間での負荷変動が繰り返されることにより、燃料電池の劣化が進行する可能性が考えられる。
【0010】
したがって、充放電可能な二次電池と燃料電池が電気的に接続された燃料電池システムにおいて、二次電池だけでなく燃料電池の劣化の進行も抑制できる出力制御方法の確立が必要となる。
【0011】
本発明の目的は、充放電可能な二次電池と燃料電池の劣化を抑制し、かつ高効率なシステムを実現するための出力制御方法を有する燃料電池システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明による燃料電池システムは、次のような特徴を有する。充放電可能な二次電池と前記二次電池を充電する燃料電池とを備える燃料電池システムにおいて、前記二次電池の残容量を監視し、前記残容量に応じて前記燃料電池を起動または停止する機能と、前記燃料電池の電圧を監視する機能と、前記燃料電池の電圧が予め定めた管理電圧範囲を下回った場合は、前記燃料電池の出力を減らす機能と、前記燃料電池の電圧が前記管理電圧範囲を上回った場合は、前記燃料電池の出力を増やす機能とを有する制御手段を備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、二次電池および燃料電池の劣化の進行を抑えることが可能な燃料電池システムと燃料電池の出力制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態による燃料電池システムの構成を示す図である。
【図2】本発明の実施形態による燃料電池システムの外観図である。
【図3】本発明の実施形態における、燃料電池の出力制御方法を示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施形態における、燃料電池の出力の変化の一例を示す図である。
【図5】従来技術による、燃料電池の出力の変化の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
発明者は、外部からの要求出力が急激に変動する場合でも、二次電池および燃料電池の劣化の進行を抑えることができる燃料電池システムと燃料電池の出力制御方法について鋭意検討し、新規な燃料電池システムと燃料電池の出力制御方法を確立した。
【0016】
以下に、本発明による燃料電池システムの実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。本実施形態では、燃料電池の一例として、直接メタノール形燃料電池(DMFC)を例に挙げて説明する。もちろん、本発明はDMFC以外の燃料電池にも適用できる。
【0017】
図1は、燃料電池システムの構成を示す図である。本燃料電池システムは、持ち運びが可能な可搬向け電源を想定した一例である。本燃料電池システムは、二次電池125を含む電源部と、燃料電池102を含む燃料電池部101とを備える。燃料電池102は、燃料電池部101のほぼ中央に位置する。
【0018】
上述したように、本実施形態では、燃料電池102はDMFCである。燃料電池102の発電に使われる燃料は、メタノールタンク103に充填されているメタノールである。メタノールタンク103に貯蔵されているメタノールは、100%のメタノールでも良いが、一般的には、水で希釈されて燃料電池102の発電に使われる燃料よりも高濃度のメタノール水溶液が用いられる。その濃度は、概ね40%以上である。
【0019】
メタノールタンク103の中から必要量のメタノールが、バルブやポンプからなるメタノール供給手段104によって燃料タンク108に導入される。メタノール供給手段104は、メタノール濃度に応じて動作する。
【0020】
メタノール濃度を検知する方法には、任意の方法を用いることができる。例えば、光学式、超音波式、弾性表面波式その他の濃度検出素子を用いる方法や、燃料電池102の温度、電圧、または電流等を計測し、その計測値から濃度を予測する方法などから、所望のものを選択することができる。本実施形態では、燃料タンク108に設けた濃度検出素子112を用いた場合を例として説明する。
【0021】
メタノール供給手段104の動作方法としては、濃度検出素子112で検出したメタノール濃度が予め定めた所定濃度以下になったときに動作させる方法や、濃度検出素子112で検出したメタノール濃度と予め定めた所定濃度との差分に応じて供給量を決定する方法がある。これらの制御には、マイコン等で構成された燃料電池自動運転制御機構120が用いられる。燃料電池自動運転制御機構120は、燃料制御ライン122を介してメタノール供給手段104と接続される。
【0022】
燃料タンク108には、メタノールタンク103からメタノール供給手段104によりメタノールが供給され、冷却水タンク106から水供給手段107により水が供給される。水供給手段107は、水制御ライン123を介して接続された燃料電池自動運転制御機構120により、水の供給量が制御される。燃料タンク108は、所定の濃度範囲に制御されたメタノール水溶液を一時的に貯蔵する機能のほか、メタノールタンク103や冷却水タンク106からメタノールや水が補充されたときにメタノール濃度を均一にする機能も有する。
【0023】
また、燃料タンク108には、燃料タンク108内の燃料の液位を検知することができる液面検知手段113が設けられている。液面検知手段113により、燃料タンク108内の燃料の液位が所定の位置以上または所定の位置未満であるかを判別することができる。液面検知手段113が燃料の液位を検知すると、燃料タンク108は、例えば、燃料の液位が所定の位置以上であれば「HIGH」、所定の位置未満であれば「LOW」というような信号を、濃度信号ライン121を介して燃料電池自動運転制御機構120へ出力する。このようにして、液面の位置を判別することができる。
【0024】
燃料タンク108に収容されているメタノール水溶液の一部は、燃料循環ポンプ109によって燃料循環ライン105を経由し、燃料電池102に供給される。供給された燃料の内、未反応のメタノール水溶液は、燃料循環ライン105を経由して再び燃料タンク108に戻される。
【0025】
燃料電池102のアノード上でのメタノール酸化反応によって発生した二酸化炭素は、燃料電池102では、溶存あるいは微小な気泡として存在する。この二酸化炭素は、燃料循環ライン105を経由して燃料タンク108に移り、燃料タンク108の気相に大半が放出される。燃料タンク108は、気相の圧力が増加すると、上方に設置された気液分離膜110を通して、二酸化炭素を燃料電池部101の外部に放出する。気液分離膜110には、触媒処理反応器を設け、微量の有機物を除去する機構を付与しても良い。
【0026】
空気は、ファンやその他の空気供給手段111から燃料電池102に供給され、カソード上で水を生成する。
【0027】
発電後の排気ガスは、燃料電池部101の外部に放出される。排気ガスの出口に気液分離膜と冷却器を設置して、排気ガスから水を回収し、冷却水タンク106に戻す方法も採ることができる。
【0028】
濃度検出素子112の設置場所は、メタノール水溶液が循環するライン上であれば特に制限はないが、本実施形態では燃料タンク108内に設置する。メタノール濃度をより迅速に計測するためには、燃料タンク108または燃料タンク108に近い場所に濃度検出素子112を設置することが望ましい。燃料タンク108または燃料タンク108に近い場所に濃度検出素子112を設けることで、計測の時間遅れを回避し、濃度制御を迅速に行うことができる。このような構成によって、メタノール濃度を調整した燃料を、燃料タンク108から燃料電池102に供給することができる。
【0029】
燃料電池部101は、二次電池充電/給電回路126を介して二次電池125と電気的に接続され、発電で得た電力で二次電池125を充電する。燃料電池電力制御回路127は、二次電池残容量検出ライン128を介して二次電池125の充電容量(残容量)を監視し、さらには燃料電池電圧検出ライン129を介して燃料電池102の電圧を、燃料電池電流検出ライン130および電流センサ124を介して燃料電池102の電流を、それぞれ監視する。燃料電池電力制御回路127は、二次電池125の充電容量、および燃料電池102の電圧と電流についての情報に基づき、燃料電池電力制御ライン131を介して二次電池充電/給電回路126へ指令を与えることで、燃料電池102の起動、発電停止、および出力の制御を行うことができる。
【0030】
図2は、燃料電池システムの外観図である。図2では、二次電池125、燃料電池部101に含まれる燃料電池102、燃料タンク108、および燃料電池自動運転制御機構120を示している。
【0031】
図3は、本発明の実施形態による燃料電池システムにおいて、燃料電池の出力制御方法を示すフローチャートである。本実施形態による燃料電池システムにおける燃料電池の出力制御方法の一例について、図3を用いて説明する。
【0032】
以下の説明では、燃料電池の出力とは燃料電池が供給する電力のことであるが、燃料電池が供給する電流を出力としてもよい。
【0033】
本実施形態では、燃料電池の出力状態のパラメータ(以下、「出力パラメータ」と称する)をCで表し、出力パラメータがCのときの燃料電池の出力をP(C)で表す。燃料電池が起動しているが出力していない状態、すなわち二次電池を充電していないようなアイドリング状態をP(0)で表し、このときの出力状態をC=0で表す。すなわち、P(0)=0である。
【0034】
本実施形態では、燃料電池の発電時の出力を、出力の大きさに応じてP(1)、P(2)、およびP(3)の3段階に分割し、それぞれの出力状態をC=1、2、および3で表す。燃料電池が定格出力で発電している状態をC=3と設定した。すなわち、P(3)は定格出力である。
【0035】
各々の出力の大きさは、
P(0)<P(1)<P(2)<P(3)
という関係とした。燃料電池の出力状態間での出力の差、すなわち、P(3)−P(2)、P(2)−P(1)、およびP(1)−P(0)の値は、等しくても等しくなくてもよい。
【0036】
燃料電池の発電時の出力を3段階に分割することで、出力の大きさが短時間のうちに激しく変わることを防ぐことができる。したがって、負荷変動が短時間で繰り返すことを防止でき、燃料電池の劣化の進行を抑制することができる。
【0037】
本実施形態では、燃料電池の発電時の出力を3段階(すなわち出力P(1)〜P(3))に分割した。発電時の出力の分割数は、2以上であればよく、特に制限はない。燃料電池の出力状態を変えたときに出力の変化量(すなわち、出力状態間での出力の差)が小さくなるように分割数を定めて、出力状態を分割すればよい。好ましい分割数は、燃料電池の定格出力にもよるが、燃料電池システムの構成や出力の制御の煩雑さを考慮すると、2〜5である。
【0038】
さらに、本実施形態では、燃料電池の電圧に管理電圧範囲を設定する。管理電圧範囲は、燃料電池の電圧の所定値LとH(ただしL<H)により定められ、L以上H以下の電圧の範囲である。所定値LとHは、電極の劣化が進行しない電圧の範囲、過渡状態での電圧降下幅、安全率、および燃料電池のスタックのセル数などに応じて、適切に定めることができる。本実施形態による燃料電池システムでは、燃料電池の電圧Vが管理電圧範囲内の値になるように、すなわちL≦V≦Hとなるように、燃料電池の出力を制御する。
【0039】
具体的には、燃料電池の電圧Vが管理電圧範囲を下回った場合(V<L)は、燃料電池の出力を減らして電圧Vが所定値L以上(V≧L)となるようにし、電圧Vが管理電圧範囲を上回った場合(V>H)は、出力を増やして電圧Vが所定値H以下(V≦H)となるようにする。燃料電池の発電時の出力を増減するときは、出力の大きさを1段階ずつ変える。本実施形態では、出力を増やすときはP(1)からP(2)へ、P(2)からP(3)へと1段階ずつ変え、出力を減らすときはP(3)からP(2)へ、P(2)からP(1)へと1段階ずつ変える。
【0040】
このようにして、発電時の出力を2段階以上に分割し、適切な管理電圧範囲を設定して電圧Vが管理電圧範囲内の値(L≦V≦H)となるように、燃料電池の出力を制御する。この結果、燃料電池の電圧Vは、二次電池の残容量が急激に所定値Aを上回ったり下回ったりする変化を起こした場合でも、急激な変化が緩和されるとともに、電極の劣化を起こさないように管理電圧範囲内に留まるように制御される。このため、二次電池だけでなく燃料電池の劣化を抑制することができる。
【0041】
また、二次電池の残容量について、所定値Aを設定する。所定値Aは、二次電池の満充電容量や燃料電池の定格出力などに応じて定める任意の値とすることができる。本燃料電池システムでは、二次電池の残容量を監視し、二次電池の残容量が所定値A未満になると、燃料電池により二次電池を充電する。
【0042】
出力パラメータC、燃料電池の出力P(C)、燃料電池の管理電圧範囲(電圧の所定値LとH)、および二次電池の残容量の所定値Aは、予め定めて燃料電池電力制御回路127に設定する。燃料電池電力制御回路127は、これらの値に基づいて燃料電池の出力を制御する。
【0043】
以下、図3を用いて、燃料電池の出力制御方法の一例を説明する。燃料電池の出力制御は、燃料電池電力制御回路127が実行する。
【0044】
燃料電池システムの起動後、燃料電池電力制御回路127には、二次電池残容量検出ライン128を介して、二次電池125の残容量信号が入力される(S1)。
【0045】
燃料電池電力制御回路127は、入力した残容量信号を基に、二次電池125の残容量が所定値A以上か否かを判断する(S2)。
【0046】
二次電池125の残容量が所定値A以上の場合、燃料電池電力制御回路127は、燃料電池電圧検出ライン129および燃料電池電流検出ライン130を介して、燃料電池102が発電して出力しているかを判断する(S3)。
【0047】
燃料電池102が出力している場合は、燃料電池102の発電を停止させる(S4)。
【0048】
S2において、二次電池125の残容量が所定値A未満の場合には、燃料電池電力制御回路127は、燃料電池電圧検出ライン129および燃料電池電流検出ライン130を介して、燃料電池102が発電して出力しているかを判断する(S5)。
【0049】
燃料電池102が出力していない場合は、燃料電池を起動させ(S6)、出力パラメータをC=0とする(S7)。出力パラメータCの値は、燃料電池電力制御回路127に記憶される。
【0050】
S5で燃料電池102の出力の有無を確認後、またはS7で出力パラメータをC=0とした後、燃料電池電力制御回路127には、燃料電池102の電圧信号が燃料電池電圧検出ライン129を介して入力される(S8)。燃料電池電力制御回路127は、入力した電圧信号を基に、燃料電池102の電圧Vを検知する。
【0051】
この後、出力パラメータCの値および燃料電池102の電圧Vに応じて、燃料電池102の発電出力P(C)を決定する。S5で燃料電池102が発電して出力している場合には、出力パラメータCの値は、後述するように1〜3のいずれかに設定されて燃料電池電力制御回路127に記憶されている。以下、S8で燃料電池102の電圧信号を入力した後の制御方法について、出力パラメータCの値毎に説明する。出力パラメータCの値は、S9、S15、S20で判断する。
【0052】
出力パラメータC=3、すなわち燃料電池102が定格出力で発電している場合(S9)は、燃料電池102の電圧Vが所定値L以上か否かを判断する(S10)。
【0053】
燃料電池102の電圧Vが所定値L以上の場合は、燃料電池102の出力をP(3)、すなわち定格出力としたままで発電を継続する(S11)。そして、出力パラメータCをC=3とし(S12)、燃料電池電力制御回路127がこれを記憶する。
【0054】
S10で燃料電池102の電圧Vが所定値L未満の場合(すなわち電圧Vが管理電圧範囲を下回った場合)は、燃料電池102の出力をP(2)に変更して発電する(S13)。そして、出力パラメータCをC=2とし(S14)、燃料電池電力制御回路127がこれを記憶する。
【0055】
出力パラメータがC=2の場合(S15)は、燃料電池102の電圧Vが所定値Hより大きいか否かを判断する(S16)。
【0056】
燃料電池102の電圧Vが所定値Hより大きい場合(すなわち電圧Vが管理電圧範囲を上回った場合)は、燃料電池102の出力をP(3)に変更して発電する(S11)。そして、出力パラメータCをC=3とし(S12)、燃料電池電力制御回路127がこれを記憶する。
【0057】
S16で、燃料電池102の電圧Vが所定H以下の場合、燃料電池102の電圧Vが所定値L以上か否かを判断する(S17)。
【0058】
燃料電池102の電圧Vが所定値L以上の場合は、燃料電池102の出力をP(2)としたままで発電を継続する(S13)。そして、出力パラメータCをC=2とし(S14)、燃料電池電力制御回路127がこれを記憶する。
【0059】
S17で、燃料電池102の電圧Vが所定値L未満の場合(すなわち電圧Vが管理電圧範囲を下回った場合)は、燃料電池102の出力をP(1)に変更して発電する(S18)。そして、出力パラメータCをC=1とし(S19)、燃料電池電力制御回路127がこれを記憶する。
【0060】
出力パラメータがC=1の場合(S20)は、燃料電池102の電圧Vが所定値Hより大きいか否かを判断する(S21)。
【0061】
燃料電池102の電圧Vが所定値Hより大きい場合(すなわち電圧Vが管理電圧範囲を上回った場合)は、燃料電池102の出力をP(2)に変更して発電する(S13)。そして、出力パラメータCをC=2とし(S14)、燃料電池電力制御回路127がこれを記憶する。
【0062】
S21で、燃料電池102の電圧Vが所定値H以下の場合は、燃料電池102の出力をP(1)としたままで発電を継続する(S18)。そして、出力パラメータCをC=1とし(S19)、燃料電池電力制御回路127がこれを記憶する。
【0063】
出力パラメータがC=0の場合、すなわちS20でC=1でない場合は、燃料電池102の出力をP(1)に変更して発電する(S18)。そして、出力パラメータCをC=1とし(S19)、燃料電池電力制御回路127がこれを記憶する。
【0064】
以上説明したS9〜S21の処理後、すなわち燃料電池102の出力P(C)および出力パラメータCの値を決定した後、再びS1の処理を行う。
【0065】
以上のようにして燃料電池の出力を制御すると、燃料電池は、出力と電圧の急激な変化が緩和され、劣化を抑制できる。さらに、燃料電池の出力状態に応じて、効率が高くなるように燃料電池の出力を決定することができる。
【0066】
(実施例)
図4は、本発明の実施形態による燃料電池システムにおける、燃料電池の出力の変化の一例を示す図である。図4には、二次電池の残容量が所定値Aの近傍の値を変化した場合に、図3に示した出力制御方法に従って本燃料電池システムが動作したときの燃料電池の出力の変化を例示している。
【0067】
メタノールタンク103に濃度が90%のメタノール水溶液を投入し、本燃料電池システムを起動したところ、燃料電池102の出力の時間変化は、図4のような挙動を示した。図4において、P(0)=0W、P(1)=25W、P(2)=65W、P(3)=100Wである。
【0068】
二次電池125の残容量が所定値A未満となると、燃料電池102に燃料(メタノール)および空気が供給されて発電を開始し、時間t1にて出力25W(P(1))で発電した。このとき、図3のフローチャートでは、S2、S6、S7、S18、およびS19の処理が実行された。時間t1からt2では、燃料電池102の電圧Vは、管理電圧範囲内の値(すなわちL≦V≦H)となっている。
【0069】
時間t2で、燃料電池102の電圧Vが所定値Hより大きくなると(すなわち電圧Vが管理電圧範囲を上回ると)、燃料電池102の出力は65W(P(2))となる。このとき、図3のフローチャートでは、S21、S13、およびS14の処理が実行された。時間t2からt3では、燃料電池102の電圧Vは、管理電圧範囲内の値(すなわちL≦V≦H)となっている。
【0070】
時間t3で、燃料電池102の電圧Vが所定値Hより大きくなると(すなわち電圧Vが管理電圧範囲を上回ると)、燃料電池102は、定格出力の100W(P(3))で発電した。このとき、図3のフローチャートでは、S16、S11、およびS12の処理が実行された。時間t3からt4では、燃料電池102の電圧Vは、管理電圧範囲内の値(すなわちL≦V≦H)となっている。
【0071】
時間t4で、二次電池125の残容量が所定値Aに達すると、燃料電池102は発電を停止した(出力はP(0)=0W)。このとき、図3のフローチャートでは、S2、S3、およびS4の処理が実行された。
【0072】
再び二次電池125の残容量が所定値A未満になると、燃料電池102は発電を開始し、時間t5〜t8で、時間t1〜t4と同じ動作を繰り返した。
【0073】
その後、二次電池125の残容量が所定値A未満になると、燃料電池102は発電を開始し、出力は時間t9〜t15にて変化した。時間t9〜t11での出力の変化は、時間t1〜t3での出力の変化と同じなので、説明を省略する。
【0074】
時間t12で、燃料電池102の電圧Vが所定値L未満になると(すなわち電圧Vが管理電圧範囲を下回ると)、燃料電池102の出力は65W(P(2))となる。このとき、図3のフローチャートでは、S10、S13、およびS14の処理が実行された。時間t12からt13では、燃料電池102の電圧Vは、管理電圧範囲内の値(すなわちL≦V≦H)となっている。
【0075】
時間t13で、燃料電池102の電圧Vが所定値L未満になると(すなわち電圧Vが管理電圧範囲を下回ると)、燃料電池102の出力は25W(P(1))となる。このとき、図3のフローチャートでは、S16、S17、S18およびS19の処理が実行された。時間t13からt14では、燃料電池102の電圧Vは、管理電圧範囲内の値(すなわちL≦V≦H)となっている。
【0076】
時間t14で、燃料電池102の電圧Vが所定値Hより大きくなると(すなわち電圧Vが管理電圧範囲を上回ると)、燃料電池102の出力は65W(P(2))となる。このとき、図3のフローチャートでは、S21、S13、およびS14の処理が実行された。時間t14からt15では、燃料電池102の電圧Vは、管理電圧範囲内の値(すなわちL≦V≦H)となっている。
【0077】
時間t15で、二次電池125の残容量が所定値Aに達すると、燃料電池102は発電を停止した(出力はP(0)=0W)。このとき、図3のフローチャートでは、S2、S3、およびS4の処理が実行された。
【0078】
(比較例)
図5は、従来の燃料電池システムにおける、燃料電池の出力の変化の一例を示す図である。図5には、二次電池の残容量が所定値Aの近傍の値を変化した場合に、従来技術と同様な出力制御方法に従って燃料電池システムが動作したときの燃料電池の出力の変化を例示している。
【0079】
二次電池の残容量が所定値A未満になると、燃料電池は、時間t1’にて定格出力(100W)で発電を開始した。
【0080】
時間t2’で、二次電池の残容量が所定値Aに達すると、燃料電池は発電を停止した(出力は0W)。
【0081】
再び二次電池の残容量が所定値A未満になると、燃料電池は定格出力で(100W)発電を開始し、時間t3’〜t4’およびt5’〜t6’で、時間t1’〜t2’と同じ動作を繰り返した。
【0082】
燃料電池の起動と発電停止は、外部からの要求電力にもよるが、数分単位でなされる場合がある。比較例のように短い時間間隔で起動と発電停止を繰り返すと、急激な電位変化により燃料電池は徐々に性能が劣化する。本発明は、このような急激な電位変化を緩和するように出力を制御することで、燃料電池の性能劣化を抑制することができる。
【符号の説明】
【0083】
101…燃料電池部、102…燃料電池、103…メタノールタンク、104…メタノール供給手段、105…燃料循環ライン、106…冷却水タンク、107…水供給手段、108…燃料タンク、109…燃料循環ポンプ、110…気液分離膜、111…空気供給手段、112…濃度検出素子、113…液面検知手段、120…燃料電池自動運転制御機構、121…濃度信号ライン、122…燃料制御ライン、123…水制御ライン、124…電流センサ、125…二次電池、126…二次電池充電/給電回路、127…燃料電池電力制御回路、128…二次電池残容量検出ライン、129…燃料電池電圧検出ライン、130…燃料電池電流検出ライン、131…燃料電池電力制御ライン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
充放電可能な二次電池と前記二次電池を充電する燃料電池とを備える燃料電池システムにおいて、
前記二次電池の残容量を監視し、前記残容量に応じて前記燃料電池を起動または停止する機能と、
前記燃料電池の電圧を監視する機能と、
前記燃料電池の電圧が予め定めた管理電圧範囲を下回った場合は、前記燃料電池の出力を減らす機能と、
前記燃料電池の電圧が前記管理電圧範囲を上回った場合は、前記燃料電池の出力を増やす機能と、
を有する制御手段を備えることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
充放電可能な二次電池と前記二次電池を充電する燃料電池とを備える燃料電池システムにおいて、
前記燃料電池の発電時の出力が、出力の大きさに応じて2段階以上に分割されて設定され、
前記二次電池の残容量を監視し、前記残容量に応じて前記燃料電池を起動または停止する機能と、
前記燃料電池の電圧を監視する機能と、
前記燃料電池の発電時の出力が最小の段階以外の場合であり、前記燃料電池の電圧が予め定めた管理電圧範囲を下回った場合は、前記燃料電池の出力を1段階小さくする機能と、
前記燃料電池の発電時の出力が最大の段階以外の場合であり、前記燃料電池の電圧が前記管理電圧範囲を上回った場合は、前記燃料電池の出力を1段階大きくする機能と、
を有する制御手段を備えることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項3】
前記燃料電池は、メタノールを主成分とした水溶液を燃料として用いる請求項1または2記載の燃料電池システム。
【請求項4】
充放電可能な二次電池と前記二次電池を充電する燃料電池とを備える燃料電池システムで用いる燃料電池の出力制御方法において、
前記二次電池の残容量を監視し、
前記残容量に応じて前記燃料電池を起動または停止し、
前記燃料電池の電圧を監視し、
前記燃料電池の電圧が予め定めた管理電圧範囲を下回った場合は、前記燃料電池の出力を減らし、
前記燃料電池の電圧が前記管理電圧範囲を上回った場合は、前記燃料電池の出力を増やす、
ことを特徴とする燃料電池の出力制御方法。
【請求項5】
充放電可能な二次電池と前記二次電池を充電する燃料電池とを備える燃料電池システムで用いる燃料電池の出力制御方法において、
前記燃料電池の発電時の出力を、出力の大きさに応じて2段階以上に分割し、
前記二次電池の残容量を監視し、
前記残容量に応じて前記燃料電池を起動または停止し、
前記燃料電池の電圧を監視し、
前記燃料電池の発電時の出力が最小の段階以外の場合であり、前記燃料電池の電圧が予め定めた管理電圧範囲を下回った場合は、前記燃料電池の出力を1段階小さくし、
前記燃料電池の発電時の出力が最大の段階以外の場合であり、前記燃料電池の電圧が前記管理電圧範囲を上回った場合は、前記燃料電池の出力を1段階大きくする、
ことを特徴とする燃料電池の出力制御方法。
【請求項6】
前記燃料電池の燃料として、メタノールを主成分とした水溶液を用いる請求項4または5記載の燃料電池の出力制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−41783(P2013−41783A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−179373(P2011−179373)
【出願日】平成23年8月19日(2011.8.19)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】