説明

燃料電池システム及び燃料電池の運転方法

【課題】単セルの面内水分量分布の発生を防止する燃料電池システム及び燃料電池の運転方法を提供する。
【解決手段】無加湿条件か高温条件の、少なくともいずれか一方の条件下で運転される燃料電池システムであって、燃料電池は、燃料ガス流路と酸化剤ガス流路が、燃料ガスと酸化剤ガスの流れ方向が互いに対向するようにそれぞれ配置され、且つ、前記酸化剤ガス流路入口近傍の水分量の判定手段と、前記判定手段において前記酸化剤ガス流路入口近傍の水分量が不足していると判定された場合に、燃料ガス流量を増加させるか、又は燃料ガス圧力を減少させるかの少なくともいずれか一方の操作によって、前記酸化剤ガス流路入口近傍の水分量を増加させる燃料ガス制御手段を備えることを特徴とする、燃料電池システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単セル内の面内水分量分布の発生を防止する燃料電池システム及び燃料電池の運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、燃料と酸化剤を電気的に接続された2つの電極に供給し、電気化学的に燃料の酸化を起こさせることで、化学エネルギーを直接電気エネルギーに変換する。火力発電とは異なり、燃料電池はカルノーサイクルの制約を受けないので、高いエネルギー変換効率を示す。燃料電池は、通常、電解質膜を一対の電極で挟持した膜・電極接合体を基本構造とする単セルを複数積層して構成されている。中でも、電解質膜として固体高分子電解質膜を用いた固体高分子電解質型燃料電池は、小型化が容易であること、低い温度で作動すること、などの利点があることから、特に携帯用、移動体用電源として注目されている。
【0003】
固体高分子電解質型燃料電池では、水素を燃料とした場合、アノード(燃料極)では式(1)の反応が進行する。
→ 2H + 2e …(1)
前記式(1)で生じる電子は、外部回路を経由し、外部の負荷で仕事をした後、カソード(酸化剤極)に到達する。そして、前記式(1)で生じたプロトンは、水和した状態で、固体高分子電解質膜内をアノード側からカソード側に、電気浸透により移動する。
【0004】
また、酸素を酸化剤とした場合、カソードでは式(2)の反応が進行する。
2H + (1/2)O + 2e → HO …(2)
カソードで生成した水は、主としてガス拡散層を通り、外部へと排出される。このように、燃料電池は、水以外の排出物がなく、クリーンな発電装置である。
【0005】
排出物である水分が過剰である場合には、燃料電池内部において凝縮した水が、触媒層やガス拡散層の空隙、及びはなはだしい場合にはガス流路を塞いでガスの供給を阻害し、発電のためのガスが触媒層に充分行き渡らずに燃料電池の出力が低下する問題が生じる。また、燃料電池内の水分が不足した場合には、内部抵抗が増大して燃料電池の出力および発電効率が低下するという問題が生じる。
この問題を解決するために、これまでにも様々な技術が開示されている。
【0006】
特許文献1は、燃料電池内部の水分量の過不足を判定する水分量判定手段と、当該水分量判定手段による燃料電池の内部水分量の過不足の判定結果に基づいて、燃料電池に供給される酸素あるいは水素の少なくとも一方のガス供給量を制御するガス供給量制御手段とを備える燃料電池システムに関する技術を開示している。
【0007】
特許文献2は、燃料電池が、酸化剤ガス流路に流れる空気量を調整する空気量調整手段と、電解質膜が乾燥傾向にあるか否かを判定する判定手段と、電解質膜が乾燥傾向であると判定した場合に、酸化剤ガス流路に流れる空気圧力を通常運転時よりも高くする制御を実行する制御手段を備える燃料電池システムに関する技術を開示している。
【0008】
特許文献3は、燃料ガス中の水蒸気分圧を調整して、カソードからアノードへ電解質膜を通して水又は水蒸気を移動させることで、カソード中の水分を除去する技術を開示している。
【0009】
特許文献4は、燃料電池内に燃料ガスと酸化剤ガスが互いに対向した流れとなるように燃料ガス流路及び酸化剤ガス流路が設けられ、酸化剤ガス流路出口部分を冷却する冷却水路がさらに設けられていることにより、酸化剤ガス中に含まれる水分を凝集して回収し、電解質膜を介して燃料ガス流路入口部分へ水分の供給を促進する技術を開示している。
【0010】
特許文献5は、燃料電池の運転時に、酸化剤ガス流路入口の温度が、酸化剤ガス流路出口の温度よりも低くなるようにし、かつ、酸化剤ガス流路入口の拡散層のガス拡散性は、酸化剤ガス流路出口のガス拡散性よりも低くすることにより、酸化剤ガス流路における乾燥速度を低下させ、酸化剤ガス中への水蒸気の蒸発量を抑制する技術を開示している。
【0011】
【特許文献1】特開2002−352827号公報
【特許文献2】特開2006−210004号公報
【特許文献3】特表平6−504403号公報
【特許文献4】特許3736475号公報
【特許文献5】特開2001−6698号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
無加湿の燃料ガス及び酸化剤ガスを供給する燃料電池の運転、いわゆる無加湿運転の場合には、燃料電池が有する単セルの面内で水分量分布が生じやすい。すなわち、酸化剤ガス流路入口近傍は乾燥しやすく、酸化剤ガス流路出口近傍は湿潤状態になりやすい。したがって、単セルの面内で水分量の均質化を図る必要がある。これは、膜・電極接合体の温度を70℃以上とする高温条件においても同様である。
特許文献1又は2に開示された技術は、いずれも燃料電池全体での水分量の過不足を判定し、その判定結果に対してガスを調節するという課題解決手段を有しているが、そもそも単セルの面内において水分量分布が生じるという考察はなされておらず、したがって、水分量不足及び水分量過剰の状態が同一の単セル面内で生じた場合には有効な技術ではないと考えられる。特に、特許文献2に開示された制御手段においては、空気圧力を増加させる解決手段が、エアーコンプレッサー出力増加による燃費悪化という排反を有すると考えられる。
特許文献3乃至5に開示された技術は、いずれも酸化剤ガス流路内の主に出口近傍に蓄積した水分を、電解質膜を通過させて燃料ガス流路へと透過させるという解決手段を有しており、特に、特許文献4又は5に開示された技術は、酸化剤ガス流路と燃料ガス流路が対向しているため、水分が酸化剤ガス流路出口近傍→燃料ガス流路入口近傍→燃料ガス流路出口近傍→酸化剤ガス流路入口近傍と循環するという解決手段を有している。しかし、特許文献3乃至5に開示された技術はいずれも、水分量の過不足が生じているか否かを判定する判定手段、及びその判定手段が下した結論に基いてガスを調節するガス制御手段についての考察がなされていない。また、特許文献3に開示された技術は、酸化剤ガス流路におけるフラッディングを防止するための技術であり、酸化剤ガス流路入口近傍の乾燥を防止するための技術ではない。
本発明は、単セルの面内水分量分布の発生を防止する燃料電池システム及び燃料電池の運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の燃料電池システムは、高分子電解質膜を一対の電極で挟持した膜・電極接合体を有する単セルを有するスタックを有する燃料電池を備え、当該燃料電池に燃料ガス及び酸化剤ガスを供給し、無加湿条件か、又は、膜・電極接合体の温度を70℃以上とする高温条件の、少なくともいずれか一方の条件下で運転される燃料電池システムであって、前記燃料電池は、前記膜・電極接合体の一面側に燃料ガス流路を、他面側に酸化剤ガス流路を有し、さらに、前記燃料ガス流路と前記酸化剤ガス流路が、燃料ガスと酸化剤ガスの流れ方向が互いに対向するようにそれぞれ配置され、且つ、前記酸化剤ガス流路入口近傍の水分量の判定手段と、前記判定手段において前記酸化剤ガス流路入口近傍の水分量が不足していると判定された場合に、燃料ガス流量を増加させるか、又は燃料ガス圧力を減少させるかの少なくともいずれか一方の操作によって、前記酸化剤ガス流路入口近傍の水分量を増加させる燃料ガス制御手段を備えることを特徴とする。
【0014】
このような構成の燃料電池システムは、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分が、前記高分子電解質膜を透過して燃料ガス流路入口近傍へ輸送された後、燃料ガスに含まれた水分をより多く燃料ガス流路出口近傍に輸送することで、燃料ガス流路出口近傍からより多くの水分を、前記高分子電解質膜を通じて酸化剤ガス流路入口近傍へ輸送することができ、従来技術では乾燥し易い酸化剤ガス流路入口近傍及び湿潤し易い酸化剤ガス流路出口近傍の水分量を調整し、無加湿条件又は高温条件の、少なくともいずれか一方の条件の下にありながら、単セルの面内水分量分布の発生を防止することができる。また本発明の燃料電池システムは、前記判定手段を有することにより、前記酸化剤ガス流路入口近傍の水分量不足を的確に把握することができる。
【0015】
本発明の燃料電池システムは、高分子電解質膜を一対の電極で挟持した膜・電極接合体を有する単セルを有するスタックを有する燃料電池を備え、当該燃料電池に燃料ガス及び酸化剤ガスを供給し、無加湿条件及び膜・電極接合体の温度を70℃以上とする高温条件の、少なくともいずれか一方の条件下で運転される燃料電池システムであって、前記燃料電池は、前記膜・電極接合体の一面側に燃料ガス流路を、他面側に酸化剤ガス流路を有し、さらに、前記燃料ガス流路と前記酸化剤ガス流路が、燃料ガスと酸化剤ガスの流れ方向が互いに対向するようにそれぞれ配置され、且つ、前記酸化剤ガス流路入口近傍及び出口近傍の少なくともいずれか一方の水分量の判定手段と、前記判定手段において前記酸化剤ガス流路入口近傍の水分量が不足しているか、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分量が過剰であるかの少なくともいずれか一方と判定された場合に、燃料ガス流量を増加させるか、燃料ガス圧力を減少させるかの少なくともいずれか一方の操作によって、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分の、前記燃料ガス流路を経由した前記酸化剤ガス流路入口近傍への輸送を促進することにより、前記酸化剤ガス流路入口近傍の水分量を増加させ、且つ、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分量を減少させる燃料ガス制御手段、並びに、前記判定手段において前記酸化剤ガス流路入口近傍の水分量が過剰であるか、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分量が不足しているかの少なくともいずれか一方と判定された場合に、酸化剤ガス流量を減少させるか、酸化剤ガス圧力を増加させるかの少なくともいずれか一方の操作によって、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分の、前記燃料ガス流路を経由した前記酸化剤ガス流路入口近傍への輸送を抑制することにより、前記酸化剤ガス流路入口近傍の水分量を減少させ、且つ、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分量を増加させる酸化剤ガス制御手段、の少なくともいずれか一方を備えることが好ましい。
【0016】
このような構成の燃料電池システムは、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分が、前記高分子電解質膜を透過して燃料ガス流路入口近傍へ輸送された後、燃料ガスに含まれた水分をより多く燃料ガス流路出口近傍に輸送することで、燃料ガス流路出口近傍からより多くの水分を、前記高分子電解質膜を通じて酸化剤ガス流路入口近傍へ輸送することができ、従来技術では乾燥し易い酸化剤ガス流路入口近傍及び湿潤し易い酸化剤ガス流路出口近傍の水分量を調整し、無加湿条件及び高温条件の、少なくともいずれか一方の条件の下にありながら、単セルの面内水分量分布の発生を防止することができる。また本発明の燃料電池システムは、当該燃料電池システム外へ排出される、酸化剤ガスが持ち去る水分をより少なく抑えることで、前記酸化剤ガス流路出口近傍に水分を蓄えることができる。さらに本発明の燃料電池システムは、前記判定手段を有することにより、前記酸化剤ガス流路入口近傍及び出口近傍の水分量不足及び水分量過剰を的確に把握することができる。
【0017】
本発明の燃料電池システムの一形態としては、前記判定手段が、燃料電池全体の抵抗値を測定し、当該抵抗値が、予め計測した各温度における前記単セル及び前記スタックの少なくとも一方の抵抗の最低値の105%を超える値であった時に、前記酸化剤ガス流路入口近傍の水分量が不足しているか、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分量が不足しているかの少なくともいずれか一方と判定する判定手段Aであるという構成をとることができる。
【0018】
このような構成の燃料電池システムは、燃料電池全体の抵抗値を測定するという簡便な方法によって、前記酸化剤ガス流路入口近傍及び出口近傍の水分量の不足を的確に把握することができる。
【0019】
本発明の燃料電池システムの一形態としては、前記判定手段が、燃料電池全体の電圧を測定し、当該電圧が、予め計測した各温度における前記単セル及び前記スタックの少なくとも一方の電圧の最高値の95%未満であった時に、前記酸化剤ガス流路入口近傍の水分量が過剰であるか、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分量が過剰であるかの少なくともいずれか一方と判定する判定手段Bであるという構成をとることができる。
【0020】
このような構成の燃料電池システムは、燃料電池全体の電圧を測定するという簡便な方法によって、前記酸化剤ガス流路入口近傍及び出口近傍の水分量過剰を的確に把握することができる。
【0021】
本発明の燃料電池システムの一形態としては、前記判定手段が、酸化剤ガス流路を流通する酸化剤ガスの圧損を測定し、当該圧損が、予め計測した酸化剤ガス流路を流通する酸化剤ガスの圧損の最低値の105%未満であった時に、前記酸化剤ガス流路入口近傍の水分量が不足しているか、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分量が不足しているかの少なくともいずれか一方と判定する判定手段Cであるという構成をとることができる。
【0022】
このような構成の燃料電池システムは、酸化剤ガス流路を流通する酸化剤ガスの圧損を測定するという簡便な方法によって、前記酸化剤ガス流路入口近傍及び出口近傍の水分量の不足を的確に把握することができる。
【0023】
本発明の燃料電池システムの一形態としては、前記判定手段が、酸化剤ガス流路を流通する酸化剤ガスの圧損を測定し、当該圧損が、予め計測した酸化剤ガス流路を流通する酸化剤ガスの圧損の最高値の105%を超える値であった時に、前記酸化剤ガス流路入口近傍の水分量が過剰であるか、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分量が過剰であるかの少なくともいずれか一方と判定する判定手段Dであるという構成をとることができる。
【0024】
このような構成の燃料電池システムは、酸化剤ガス流路を流通する酸化剤ガスの圧損を測定するという簡便な方法によって、前記酸化剤ガス流路入口近傍及び出口近傍の水分量過剰を的確に把握することができる。
【0025】
本発明の燃料電池システムの一形態としては、前記燃料ガス流路出口近傍に、さらに燃料ガス圧力調整弁を備える燃料電池システムであって、前記燃料ガス制御手段が、前記燃料ガス圧力調整弁の調節によって燃料ガス圧力を減少させる燃料ガス圧力制御手段であるという構成をとることができる。
【0026】
このような構成の燃料電池システムは、前記燃料ガス圧力調整弁の調節という簡便な操作によって、燃料ガス圧力を減少させることができる。
【0027】
本発明の燃料電池システムの一形態としては、前記燃料ガス圧力制御手段が、燃料ガス圧力を、大気圧以上、0.3MPa以下の範囲にまで減少させるため、前記燃料ガス圧力調整弁を調節するものであるという構成をとることができる。
【0028】
このような構成の燃料電池システムは、燃料ガス圧力を適切な範囲内に保つことで、燃料ガス中に含まれる水分量を十分に保つ結果、前記酸化剤ガス流路に電解質膜を通じて輸送できる水分量を増加させることができる。
【0029】
本発明の燃料電池システムの一形態としては、さらに酸化剤ガス供給装置を備える燃料電池システムであって、前記酸化剤ガス制御手段が、前記酸化剤ガス供給装置の調節によって酸化剤ガス流量を減少させる酸化剤ガス流量制御手段であるという構成をとることができる。
【0030】
このような構成の燃料電池システムは、前記酸化剤ガス供給装置の調節という簡便な操作によって、酸化剤ガス流量を減少させることができる。
【0031】
本発明の燃料電池システムの一形態としては、前記酸化剤ガス流量制御手段が、酸化剤ガスのストイキ比を1.0〜3.0の範囲にまで減少させるため、前記酸化剤ガス供給装置を調節するものであるという構成をとることができる。
【0032】
このような構成の燃料電池システムは、酸化剤ガスのストイキ比を適切な範囲にまで減少させることにより、酸化剤ガスが前記燃料電池外へ持ち去る水分量を減少させる結果、前記酸化剤ガス流路に電解質膜を通じて輸送できる水分量を減少させることができる。
【0033】
本発明の燃料電池システムの一形態としては、さらに燃料ガス供給装置を備える燃料電池システムであって、前記燃料ガス制御手段が、前記燃料ガス供給装置の調節によって燃料ガス流量を増加させる燃料ガス流量制御手段であるという構成をとることができる。
【0034】
このような構成の燃料電池システムは、前記燃料ガス供給装置の調節という簡便な操作によって、燃料ガス流量を増加させることができる。
【0035】
本発明の燃料電池システムの一形態としては、前記燃料ガス流量制御手段が、燃料ガスのストイキ比を1.0〜10の範囲にまで増加させるため、前記燃料ガス供給装置を調節するものであるという構成をとることができる。
【0036】
このような構成の燃料電池システムは、燃料ガスのストイキ比を適切な範囲にまで増加させることにより、前記高分子電解質膜を乾燥させてしまうことなく、また、燃料ガス中に含まれる水分量を十分に保つ結果、前記酸化剤ガス流路に電解質膜を通じて輸送できる水分量を増加させることができる。
【0037】
本発明の燃料電池システムの一形態としては、前記酸化剤ガス流路出口近傍に、さらに酸化剤ガス圧力調整弁を備える燃料電池システムであって、前記酸化剤ガス制御手段が、前記酸化剤ガス圧力調整弁の調節によって酸化剤ガス圧力を増加させる酸化剤ガス圧力制御手段であるという構成をとることができる。
【0038】
このような構成の燃料電池システムは、前記酸化剤ガス圧力調整弁の調節という簡便な操作によって、酸化剤ガス圧力を増加させることができる。
【0039】
本発明の燃料電池システムの一形態としては、前記酸化剤ガス圧力制御手段が、酸化剤ガス圧力を、大気圧以上、0.3MPa以下の範囲にまで増加させるため、前記酸化剤ガス圧力調整弁を調節するものであるという構成をとることができる。
【0040】
このような構成の燃料電池システムは、酸化剤ガス圧力を適切な範囲内に保つことで、酸化剤ガスが前記燃料電池外へ持ち去る水分量を減少させる結果、前記酸化剤ガス流路に電解質膜を通じて輸送できる水分量を減少させることができる。
【0041】
本発明の燃料電池システムの一形態としては、前記燃料ガス制御手段及び前記酸化剤ガス制御手段をいずれも備え、上述した判定手段A及び判定手段Cの少なくともいずれか一方、並びに、上述した判定手段B及び判定手段Dの少なくともいずれか一方を備え、前記判定手段A及びCの少なくともいずれか一方によって前記酸化剤ガス流路入口近傍の水分量が不足していると判定された後に、前記燃料ガス制御手段を一回以上行う水分輸送促進制御作動手段Aと、前記水分輸送促進制御作動手段Aの後に、前記判定手段A及びCの少なくともいずれか一方によって、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分量が不足していると判定された後に、前記燃料ガス制御手段を停止する水分輸送促進制御停止手段Aと、前記水分輸送促進制御停止手段Aの後に、前記酸化剤ガス制御手段を一回以上行う水分輸送抑制制御作動手段Aと、前記判定手段B及びDの少なくともいずれか一方によって、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分量が過剰であると判定された後に、前記酸化剤ガス制御手段をいずれも停止する水分輸送抑制制御停止手段Aと、前記水分輸送抑制制御停止手段Aの後に、前記判定手段A及びCの少なくともいずれか一方によって前記酸化剤ガス流路入口近傍の水分量が不足であるか否かを判定し、水分量不足の場合に再度前記水分輸送促進制御作動手段Aから行い、水分量不足でない場合に前記燃料電池の運転を継続する水分量不足最終判定手段Aを備えるという構成をとることができる。
【0042】
このような構成の燃料電池システムは、前記酸化剤ガス流路入口近傍の水分量が不足していると判定された際に、前記水分輸送促進制御作動手段Aによって前記酸化剤ガス流路出口近傍から入口近傍への水分の輸送を促進した後に、前記水分輸送抑制制御作動手段Aによって前記酸化剤ガス流路出口近傍の前記水分量を増加させることで、前記酸化剤ガス流路入口近傍及び出口近傍のいずれの水分量も過不足ない、適度な量に保つことができる。また、本発明の燃料電池システムは、前記水分量不足最終判定手段Aの結果を基に再度一連の工程を繰り返すことによって、前記酸化剤ガス流路全体の水分量分布の発生を防止することができる。
【0043】
本発明の燃料電池システムの一形態としては、前記燃料ガス制御手段及び前記酸化剤ガス制御手段をいずれも備え、上述した判定手段A及び判定手段Cの少なくともいずれか一方、並びに、上述した判定手段B及び判定手段Dの少なくともいずれか一方を備え、前記判定手段A及びCの少なくともいずれか一方によって前記酸化剤ガス流路入口近傍の水分量が不足していると判定された後に、前記酸化剤ガス制御手段を一回以上行う水分輸送抑制制御作動手段Bと、前記水分輸送抑制制御作動手段Bの後に、前記判定手段B及びDの少なくともいずれか一方によって、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分量が過剰であると判定された後に、前記酸化剤ガス制御手段を停止する水分輸送抑制制御停止手段Bと、前記水分輸送抑制制御停止手段Bの後に、前記燃料ガス制御手段を一回以上行う水分輸送促進制御作動手段Bと、前記判定手段A及びCの少なくともいずれか一方によって、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分量が不足していると判定された後に、前記燃料ガス制御手段をいずれも停止する水分輸送促進制御停止手段Bと、前記水分輸送促進制御停止手段Bの後に、前記判定手段A及びCの少なくともいずれか一方によって前記酸化剤ガス流路入口近傍の水分量が不足であるか否かを判定し、水分量不足の場合に再度前記水分輸送抑制制御作動手段Bから行い、水分量不足でない場合に前記燃料電池の運転を継続する水分量不足最終判定手段Bを備えるという構成をとることができる。
【0044】
このような構成の燃料電池システムは、前記酸化剤ガス流路入口近傍の水分量が不足していると判定された際に、前記水分輸送抑制制御作動手段Bによって前記酸化剤ガス流路出口近傍から入口近傍への水分の輸送を抑制し、前記酸化剤ガス流路出口近傍に水分を十分蓄えた後に、前記水分輸送促進制御作動手段Bによって前記酸化剤ガス流路出口近傍から入口近傍への水分の輸送を促進させることで、前記酸化剤ガス流路入口近傍及び出口近傍のいずれの水分量も過不足ない、適度な量に保つことができる。また、本発明の燃料電池システムは、前記水分量不足最終判定手段Aの結果を基に再度一連の工程を繰り返すことによって、前記酸化剤ガス流路全体の水分量分布の発生を防止することができる。
【0045】
本発明の燃料電池システムの一形態としては、前記燃料ガス制御手段及び前記酸化剤ガス制御手段をいずれも備え、上述した判定手段A及び判定手段Cの少なくともいずれか一方、並びに、上述した判定手段B及び判定手段Dの少なくともいずれか一方を備え、前記燃料ガス制御手段を一回以上行う水分小過剰輸送促進制御作動手段と、前記水分小過剰輸送促進制御作動手段の後に、前記判定手段A及びCの少なくともいずれか一方によって、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分量が不足していると判定された後に、前記燃料ガス制御手段を停止する水分小過剰輸送促進制御停止手段と、前記水分小過剰輸送促進制御停止手段の後に、前記酸化剤ガス制御手段を行う水分輸送抑制制御作動手段Cと、前記判定手段B及びDの少なくともいずれか一方によって、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分量が過剰であると判定された後に、前記酸化剤ガス制御手段をいずれも停止する水分輸送抑制制御停止手段Cと、前記水分輸送抑制制御停止手段Cの後に、前記燃料ガス制御手段を行う水分輸送促進制御作動手段Cと、前記水分輸送促進制御作動手段Cの後に、前記判定手段A及びCの少なくともいずれか一方によって、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分量が不足であるか否かを判定し、水分量不足の場合に再度前記水分輸送抑制制御作動手段Cから行い、水分量不足でない場合に前記燃料ガス制御手段を停止し、前記燃料電池の運転を継続する水分輸送促進制御停止手段Cを備えるという構成をとることができる。
【0046】
このような構成の燃料電池システムは、初めに前記水分小過剰輸送促進制御作動手段によってあえて前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分量を適度に不足させ、その後に前記水分輸送抑制制御作動手段Cによって前記酸化剤ガス流路出口近傍から入口近傍への水分の輸送を抑制し、前記酸化剤ガス流路出口近傍に水分を十分蓄えた後に、さらに前記水分輸送促進制御作動手段Cによって前記酸化剤ガス流路出口近傍から入口近傍への水分の輸送を促進させることで、前記酸化剤ガス流路入口近傍及び出口近傍のいずれの水分量も過不足ない、適度な量に保つことができる。また、本発明の燃料電池システムは、一度湿潤させてしまうと元の性能を保持できなくなるような触媒層(例えば、意図的に触媒を腐食させて触媒層中の細孔を塞いでいるような触媒層等)を有する燃料電池を有する場合において、前記触媒層に湿潤履歴を与えることがないため特に有効である。
【0047】
本発明の燃料電池システムの一形態としては、前記燃料ガス制御手段及び前記酸化剤ガス制御手段をいずれも備え、上述した判定手段A及び判定手段Cの少なくともいずれか一方、並びに、上述した判定手段B及び判定手段Dの少なくともいずれか一方を備え、前記酸化剤ガス制御手段を一回以上行う水分小過剰輸送抑制制御作動手段と、前記水分小過剰輸送抑制制御作動手段の後に、前記判定手段B及びDの少なくともいずれか一方によって、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分量が過剰であると判定された後に、前記酸化剤ガス制御手段を停止する水分小過剰輸送抑制制御停止手段と、前記水分小過剰輸送抑制制御停止手段の後に、前記燃料ガス制御手段を行う水分輸送促進制御作動手段Dと、前記判定手段A及びCの少なくともいずれか一方によって、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分量が不足していると判定された後に、前記燃料ガス制御手段をいずれも停止する水分輸送促進制御停止手段Dと、前記水分輸送促進制御停止手段Dの後に、前記酸化剤ガス制御手段を行う水分輸送抑制制御作動手段Dと、前記水分輸送抑制制御作動手段Dの後に、前記判定手段B及びDの少なくともいずれか一方によって、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分量が過剰であるか否かを判定し、水分量過剰の場合に再度前記水分輸送促進制御作動手段Dから行い、水分量過剰でない場合に前記酸化剤ガス制御手段を停止し、前記燃料電池の運転を継続する水分輸送抑制制御停止手段Dを備えるという構成をとることができる。
【0048】
このような構成の燃料電池システムは、初めに前記水分小過剰輸送抑制制御作動手段によってあえて前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分量を適度に過剰にし、その後に前記水分輸送促進制御作動手段Dによって前記酸化剤ガス流路出口近傍から入口近傍への水分の輸送を促進した後に、さらに前記水分輸送抑制制御作動手段Dによって前記酸化剤ガス流路出口近傍の前記水分量を増加させることで、前記酸化剤ガス流路入口近傍及び出口近傍のいずれの水分量も過不足ない、適度な量に保つことができる。また、本発明の燃料電池システムは、一度乾燥させてしまうと元の性能を保持できなくなるような電解質膜(例えば、パーフルオロカーボンスルホン酸電解質膜等)を有する燃料電池を有する場合において、前記電解質膜に乾燥履歴を与えることがないため特に有効である。
【0049】
本発明の燃料電池の運転方法は、高分子電解質膜を一対の電極で挟持した膜・電極接合体と、当該膜・電極接合体の一面側に設けられた酸化剤ガス流路と、他面側に設けられた燃料ガス流路とを備え、且つ、前記燃料ガス流路と前記酸化剤ガス流路が、燃料ガスと酸化剤ガスの流れ方向が互いに対向するようにそれぞれ配置された単セルを有するスタックを有する燃料電池の運転方法であって、無加湿条件か、又は、膜・電極接合体の温度を70℃以上とする高温条件の、少なくともいずれか一方の条件下において、前記酸化剤ガス流路入口近傍の水分量が不足していると判定した場合に、燃料ガス流量を増加させるか、又は燃料ガス圧力を減少させるかの少なくともいずれか一方の操作によって、前記酸化剤ガス流路入口近傍の水分量を増加させることを特徴とする。
【0050】
このような構成の燃料電池の運転方法は、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分が、前記高分子電解質膜を透過して燃料ガス流路入口近傍へ輸送された後、燃料ガスに含まれた水分をより多く燃料ガス流路出口近傍に輸送することで、燃料ガス流路出口近傍からより多くの水分を、前記高分子電解質膜を通じて酸化剤ガス流路入口近傍へ輸送することができ、従来技術では乾燥し易い酸化剤ガス流路入口近傍及び湿潤し易い酸化剤ガス流路出口近傍の水分量を調整し、無加湿条件又は高温条件の、少なくともいずれか一方の条件の下にありながら、単セルの面内水分量分布の発生を防止する燃料電池の運転を実現することができる。
【0051】
本発明の燃料電池の運転方法は、高分子電解質膜を一対の電極で挟持した膜・電極接合体と、当該膜・電極接合体の一面側に設けられた酸化剤ガス流路と、他面側に設けられた燃料ガス流路とを備え、且つ、前記燃料ガス流路と前記酸化剤ガス流路が、燃料ガスと酸化剤ガスの流れ方向が互いに対向するようにそれぞれ配置された単セルを有するスタックを有する燃料電池の運転方法であって、無加湿条件及び膜・電極接合体の温度を70℃以上とする高温条件の、少なくともいずれか一方の条件下において、前記酸化剤ガス流路入口近傍の水分量が不足しているか、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分量が過剰であるかの少なくともいずれか一方と判定した場合に、燃料ガス流量を増加させるか、燃料ガス圧力を減少させるかの少なくともいずれか一方の操作によって、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分の、前記燃料ガス流路を経由した前記酸化剤ガス流路入口近傍への輸送を促進することにより、前記酸化剤ガス流路入口近傍の水分量を増加させ、且つ、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分量を減少させ、且つ、無加湿条件及び膜・電極接合体の温度を70℃以上とする高温条件の、少なくともいずれか一方の条件下において、前記酸化剤ガス流路入口近傍の水分量が過剰であるか、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分量が不足しているかの少なくともいずれか一方と判定した場合に、酸化剤ガス流量を減少させるか、酸化剤ガス圧力を増加させるかの少なくともいずれか一方の操作によって、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分の、前記燃料ガス流路を経由した前記酸化剤ガス流路入口近傍への輸送を抑制することにより、前記酸化剤ガス流路入口近傍の水分量を減少させ、且つ、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分量を増加させることが好ましい。
【0052】
このような構成の燃料電池の運転方法は、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分が、前記高分子電解質膜を透過して燃料ガス流路入口近傍へ輸送された後、燃料ガスに含まれた水分をより多く燃料ガス流路出口近傍に輸送することで、燃料ガス流路出口近傍からより多くの水分を、前記高分子電解質膜を通じて酸化剤ガス流路入口近傍へ輸送することができ、従来技術では乾燥し易い酸化剤ガス流路入口近傍及び湿潤し易い酸化剤ガス流路出口近傍の水分量を調整し、無加湿条件又は高温条件の、少なくともいずれか一方の条件の下にありながら、単セルの面内水分量分布の発生を防止する燃料電池の運転を実現することができる。また本発明の燃料電池システムは、前記燃料電池外へ排出される、酸化剤ガスが持ち去る水分をより少なく抑えることで、前記酸化剤ガス流路出口近傍に水分を蓄えることができる。
【0053】
本発明の燃料電池の運転方法の一形態としては、燃料電池全体の抵抗値を測定し、当該抵抗値が、予め計測した各温度における前記単セル又は前記スタックの少なくとも一方の抵抗の最低値の105%を超える値であった時に、前記酸化剤ガス流路入口近傍の水分量が不足しているか、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分量が不足しているかの少なくともいずれか一方と判定するという構成をとることができる。
【0054】
このような構成の燃料電池の運転方法は、燃料電池全体の抵抗値を測定するという簡便な方法によって、前記酸化剤ガス流路入口近傍及び出口近傍の水分量の不足を的確に把握することができる。
【0055】
本発明の燃料電池の運転方法の一形態としては、燃料電池全体の電圧を測定し、当該電圧が、予め計測した各温度における前記単セル又は前記スタックの少なくとも一方の電圧の最高値の95%未満であった時に、前記酸化剤ガス流路入口近傍の水分量が過剰であるか、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分量が過剰であるかの少なくともいずれか一方と判定するという構成をとることができる。
【0056】
このような構成の燃料電池の運転方法は、燃料電池全体の電圧を測定するという簡便な方法によって、前記酸化剤ガス流路入口近傍及び出口近傍の水分量過剰を的確に把握することができる。
【0057】
本発明の燃料電池の運転方法の一形態としては、酸化剤ガス流路を流通する酸化剤ガスの圧損を測定し、当該圧損が、予め計測した酸化剤ガス流路を流通する酸化剤ガスの圧損の最低値の105%未満であった時に、前記酸化剤ガス流路入口近傍の水分量が不足しているか、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分量が不足しているかの少なくともいずれか一方と判定するという構成をとることができる。
【0058】
このような構成の燃料電池の運転方法は、酸化剤ガス流路を流通する酸化剤ガスの圧損を測定するという簡便な方法によって、前記酸化剤ガス流路入口近傍及び出口近傍の水分量の不足を的確に把握することができる。
【0059】
本発明の燃料電池の運転方法の一形態としては、酸化剤ガス流路を流通する酸化剤ガスの圧損を測定し、当該圧損が、予め計測した酸化剤ガス流路を流通する酸化剤ガスの圧損の最高値の105%を超える値であった時に、前記酸化剤ガス流路入口近傍の水分量が過剰であるか、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分量が過剰であるかの少なくともいずれか一方と判定するという構成をとることができる。
【0060】
このような構成の燃料電池の運転方法は、酸化剤ガス流路を流通する酸化剤ガスの圧損を測定するという簡便な方法によって、前記酸化剤ガス流路入口近傍及び出口近傍の水分量過剰を的確に把握することができる。
【0061】
本発明の燃料電池の運転方法の一形態としては、燃料ガス圧力を、大気圧以上、0.3MPa以下の範囲にまで減少させるという構成をとることができる。
【0062】
このような構成の燃料電池の運転方法は、燃料ガス圧力を適切な範囲にまで減少させることで、燃料ガス中に含まれる水分量を十分に保つ結果、前記酸化剤ガス流路入口近傍の水分量を増加させ、且つ、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分量を減少させることができる。
【0063】
本発明の燃料電池の運転方法の一形態としては、酸化剤ガスのストイキ比を1.0〜3.0の範囲にまで減少させるという構成をとることができる。
【0064】
このような構成の燃料電池の運転方法は、酸化剤ガスのストイキ比を適切な範囲にまで減少させることで、酸化剤ガスが前記燃料電池外へ持ち去る水分量を減少させる結果、前記酸化剤ガス流路入口近傍の水分量を減少させ、且つ、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分量を増加させることができる。
【0065】
本発明の燃料電池の運転方法の一形態としては、燃料ガスのストイキ比を1.0〜10の範囲にまで増加させるという構成をとることができる。
【0066】
このような構成の燃料電池の運転方法は、燃料ガスのストイキ比を適切な範囲にまで増加させることで、前記高分子電解質膜を乾燥させてしまうことなく、前記酸化剤ガス流路入口近傍の水分量を増加させ、且つ、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分量を減少させることができる。
【0067】
本発明の燃料電池の運転方法の一形態としては、酸化剤ガス圧力を、大気圧以上、0.3MPa以下の範囲にまで増加させるという構成をとることができる。
【0068】
このような構成の燃料電池の運転方法は、酸化剤ガス圧力を適切な範囲にまで増加させることで、酸化剤ガスが前記燃料電池外へ持ち去る水分量を減少させる結果、前記酸化剤ガス流路入口近傍の水分量を減少させ、且つ、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分量を増加させることができる。
【0069】
本発明の燃料電池の運転方法の一形態としては、前記酸化剤ガス流路入口近傍の水分量が不足していると判定した場合に、燃料ガスのストイキ比を1.0〜10の範囲にまで増加させるか、燃料ガス圧力を大気圧以上、0.3MPa以下の範囲にまで減少させるかの少なくともいずれか一方を一回以上行い、その後に、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分量が不足していると判定した後に、前記燃料ガスの制御を停止し、その後に、酸化剤ガスのストイキ比を1.0〜3.0の範囲にまで減少させるか、及び、酸化剤ガス圧力を、大気圧以上、0.3MPa以下の範囲にまで増加させるかの少なくともいずれか一方を一回以上行い、その後に、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分量が過剰であると判定した後に、前記酸化剤ガスの制御を停止し、さらにその後に、前記酸化剤ガス流路入口近傍の水分量が不足していると判定した場合に、再度前記燃料ガスの制御から行い、水分量が不足していないと判定した場合に、前記燃料電池の運転を継続するという構成をとることができる。
【0070】
このような構成の燃料電池の運転方法は、前記酸化剤ガス流路入口近傍の水分量が不足していると判定した際に、前記燃料ガスの制御を行うことによって前記酸化剤ガス流路出口近傍から入口近傍への水分の輸送を促進した後に、前記酸化剤ガスの制御を行うことによって前記酸化剤ガス流路出口近傍の前記水分量を増加させることで、前記酸化剤ガス流路入口近傍及び出口近傍のいずれの水分量も過不足ない、適度な量に保つことができる。また、本発明の燃料電池の運転方法は、前記酸化剤ガス流路入口近傍の水分量が不足しているか否かを最終的に判定し、前記水分量が不足している場合には再度一連の工程を繰り返すことによって、前記酸化剤ガス流路全体の水分量分布の発生を防止することができる。
【0071】
本発明の燃料電池の運転方法の一形態としては、前記酸化剤ガス流路入口近傍の水分量が不足していると判定した場合に、酸化剤ガスのストイキ比を1.0〜3.0の範囲にまで減少させるか、及び、酸化剤ガス圧力を、大気圧以上、0.3MPa以下の範囲にまで増加させるかの少なくともいずれか一方を一回以上行い、その後に、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分量が過剰であると判定した後に、前記酸化剤ガスの制御を停止し、その後に、燃料ガスのストイキ比を1.0〜10の範囲にまで増加させるか、及び、燃料ガス圧力を、大気圧以上、0.3MPa以下の範囲にまで減少させるかの少なくともいずれか一方を一回以上行い、その後に、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分量が不足していると判定した後に、前記燃料ガスの制御を停止し、さらにその後に、前記酸化剤ガス流路入口近傍の水分量が不足していると判定した場合に、再度前記酸化剤ガスの制御から行い、水分量が不足していないと判定した場合に、前記燃料電池の運転を継続するという構成をとることができる。
【0072】
このような構成の燃料電池の運転方法は、前記酸化剤ガス流路入口近傍の水分量が不足していると判定した際に、前記酸化剤ガスの制御を行うことによって前記酸化剤ガス流路出口近傍から入口近傍への水分の輸送を抑制し、前記酸化剤ガス流路出口近傍に水分を十分蓄えた後に、前記燃料ガスの制御を行うことによって前記酸化剤ガス流路出口近傍から入口近傍への水分の輸送を促進させることで、前記酸化剤ガス流路入口近傍及び出口近傍のいずれの水分量も過不足ない、適度な量に保つことができる。また、本発明の燃料電池の運転方法は、前記酸化剤ガス流路入口近傍の水分量が不足しているか否かを最終的に判定し、前記水分量が不足している場合には再度一連の工程を繰り返すことによって、前記酸化剤ガス流路全体の水分量分布の発生を防止することができる。
【0073】
本発明の燃料電池の運転方法の一形態としては、燃料ガスのストイキ比を1.0〜10の範囲にまで増加させるか、燃料ガス圧力を大気圧以上、0.3MPa以下の範囲にまで減少させるかの少なくともいずれか一方を一回以上行い、その後に、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分量が不足していると判定した後に、前記燃料ガスの制御を停止し、その後に、酸化剤ガスのストイキ比を1.0〜3.0の範囲にまで減少させるか、及び、酸化剤ガス圧力を、大気圧以上、0.3MPa以下の範囲にまで増加させるかの少なくともいずれか一方を一回以上行い、その後に、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分量が過剰であると判定した後に、前記酸化剤ガスの制御を停止し、その後に、燃料ガスのストイキ比を1.0〜10の範囲にまで増加させるか、及び、燃料ガス圧力を、大気圧以上、0.3MPa以下の範囲にまで減少させるかの少なくともいずれか一方を行い、さらにその後に、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分量が不足していると判定した場合に、再度前記酸化剤ガスの制御から行い、水分量が不足していないと判定した場合に、前記燃料ガス制御を停止し、前記燃料電池の運転を継続するという構成をとることができる。
【0074】
このような構成の燃料電池の運転方法は、初めに前記燃料ガスの制御を行うことによってあえて前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分量を適度に不足させ、その後に前記酸化剤ガスの制御を行うことによって前記酸化剤ガス流路出口近傍から入口近傍への水分の輸送を抑制し、前記酸化剤ガス流路出口近傍に水分を十分蓄えた後に、さらに前記燃料ガスの制御を行うことによって前記酸化剤ガス流路出口近傍から入口近傍への水分の輸送を促進させることで、前記酸化剤ガス流路入口近傍及び出口近傍のいずれの水分量も過不足ない、適度な量に保つことができる。また、本発明の燃料電池の運転方法は、一度湿潤させてしまうと元の性能を保持できなくなるような触媒層(例えば、意図的に触媒を腐食させて触媒層中の細孔を塞いでいるような触媒層等)を有する燃料電池を運転する場合において、前記触媒層に湿潤履歴を与えることがないため特に有効である。
【0075】
本発明の燃料電池の運転方法の一形態としては、酸化剤ガスのストイキ比を1.0〜3.0の範囲にまで減少させるか、及び、酸化剤ガス圧力を、大気圧以上、0.3MPa以下の範囲にまで増加させるかの少なくともいずれか一方を一回以上行い、その後に、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分量が過剰であると判定した後に、前記酸化剤ガスの制御を停止し、その後に、燃料ガスのストイキ比を1.0〜10の範囲にまで増加させるか、燃料ガス圧力を大気圧以上、0.3MPa以下の範囲にまで減少させるかの少なくともいずれか一方を一回以上行い、その後に、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分量が不足していると判定した後に、前記燃料ガスの制御を停止し、その後に、酸化剤ガスのストイキ比を1.0〜3.0の範囲にまで減少させるか、及び、酸化剤ガス圧力を、大気圧以上、0.3MPa以下の範囲にまで増加させるかの少なくともいずれか一方を行い、さらにその後に、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分量が過剰であると判定した場合に、再度前記燃料ガスの制御から行い、水分量が過剰ではないと判定した場合に、前記酸化剤ガス制御を停止し、前記燃料電池の運転を継続するという構成をとることができる。
【0076】
このような構成の燃料電池の運転方法は、初めに前記酸化剤ガスの制御を行うことによってあえて前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分量を適度に過剰にし、その後に前記燃料ガスの制御を行うことによって前記酸化剤ガス流路出口近傍から入口近傍への水分の輸送を促進した後に、さらに前記酸化剤ガスの制御を行うことによって前記酸化剤ガス流路出口近傍の前記水分量を増加させることで、前記酸化剤ガス流路入口近傍及び出口近傍のいずれの水分量も過不足ない、適度な量に保つことができる。また、本発明の燃料電池の運転方法は、一度乾燥させてしまうと元の性能を保持できなくなるような電解質膜(例えば、パーフルオロカーボンスルホン酸電解質膜等)を有する燃料電池を運転する場合において、前記電解質膜に乾燥履歴を与えることがないため特に有効である。
【発明の効果】
【0077】
本発明によれば、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分が、前記高分子電解質膜を透過して燃料ガス流路入口近傍へ輸送された後、燃料ガスに含まれた水分をより多く燃料ガス流路出口近傍に輸送することで、燃料ガス流路出口近傍からより多くの水分を、前記高分子電解質膜を通じて酸化剤ガス流路入口近傍へ輸送することができ、従来技術では乾燥し易い酸化剤ガス流路入口近傍及び湿潤し易い酸化剤ガス流路出口近傍の水分量を調整し、無加湿条件又は高温条件の、少なくともいずれか一方の条件の下にありながら、単セルの面内水分量分布の発生を防止することができる。また本発明の燃料電池システムは、前記判定手段を有することにより、前記酸化剤ガス流路入口近傍の水分量不足を的確に把握することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0078】
本発明の燃料電池の運転方法は、高分子電解質膜を一対の電極で挟持した膜・電極接合体と、当該膜・電極接合体の一面側に設けられた酸化剤ガス流路と、他面側に設けられた燃料ガス流路とを備え、且つ、前記燃料ガス流路と前記酸化剤ガス流路が、燃料ガスと酸化剤ガスの流れ方向が互いに対向するようにそれぞれ配置された単セルを有するスタックを有する燃料電池の運転方法であって、無加湿条件か、又は、膜・電極接合体の温度を70℃以上とする高温条件の、少なくともいずれか一方の条件下において、前記酸化剤ガス流路入口近傍の水分量が不足していると判定した場合に、燃料ガス流量を増加させるか、又は燃料ガス圧力を減少させるかの少なくともいずれか一方の操作によって、前記酸化剤ガス流路入口近傍の水分量を増加させることを特徴とする。
【0079】
上述した燃料電池の運転方法を具体化するための好適な本発明の燃料電池システムは、高分子電解質膜を一対の電極で挟持した膜・電極接合体を有する単セルを有するスタックを有する燃料電池を備え、当該燃料電池に燃料ガス及び酸化剤ガスを供給し、無加湿条件か、又は、膜・電極接合体の温度を70℃以上とする高温条件の、少なくともいずれか一方の条件下で運転される燃料電池システムであって、前記燃料電池は、前記膜・電極接合体の一面側に燃料ガス流路を、他面側に酸化剤ガス流路を有し、さらに、前記燃料ガス流路と前記酸化剤ガス流路が、燃料ガスと酸化剤ガスの流れ方向が互いに対向するようにそれぞれ配置され、且つ、前記酸化剤ガス流路入口近傍の水分量の判定手段と、前記判定手段において前記酸化剤ガス流路入口近傍の水分量が不足していると判定された場合に、燃料ガス流量を増加させるか、又は燃料ガス圧力を減少させるかの少なくともいずれか一方の操作によって、前記酸化剤ガス流路入口近傍の水分量を増加させる燃料ガス制御手段を備えることを特徴とする。
【0080】
本発明の燃料電池の運転方法は、高分子電解質膜を一対の電極で挟持した膜・電極接合体と、当該膜・電極接合体の一面側に設けられた酸化剤ガス流路と、他面側に設けられた燃料ガス流路とを備え、且つ、前記燃料ガス流路と前記酸化剤ガス流路が、燃料ガスと酸化剤ガスの流れ方向が互いに対向するようにそれぞれ配置された単セルを有するスタックを有する燃料電池の運転方法であって、無加湿条件及び膜・電極接合体の温度を70℃以上とする高温条件の、少なくともいずれか一方の条件下において、前記酸化剤ガス流路入口近傍の水分量が不足しているか、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分量が過剰であるかの少なくともいずれか一方と判定した場合に、燃料ガス流量を増加させるか、燃料ガス圧力を減少させるかの少なくともいずれか一方の操作によって、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分の、前記燃料ガス流路を経由した前記酸化剤ガス流路入口近傍への輸送を促進することにより、前記酸化剤ガス流路入口近傍の水分量を増加させ、且つ、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分量を減少させ、且つ、無加湿条件及び膜・電極接合体の温度を70℃以上とする高温条件の、少なくともいずれか一方の条件下において、前記酸化剤ガス流路入口近傍の水分量が過剰であるか、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分量が不足しているかの少なくともいずれか一方と判定した場合に、酸化剤ガス流量を減少させるか、酸化剤ガス圧力を増加させるかの少なくともいずれか一方の操作によって、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分の、前記燃料ガス流路を経由した前記酸化剤ガス流路入口近傍への輸送を抑制することにより、前記酸化剤ガス流路入口近傍の水分量を減少させ、且つ、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分量を増加させることが好ましい。
【0081】
上述した好ましい燃料電池の運転方法を具体化するための好適な本発明の燃料電池システムは、高分子電解質膜を一対の電極で挟持した膜・電極接合体を有する単セルを有するスタックを有する燃料電池を備え、当該燃料電池に燃料ガス及び酸化剤ガスを供給し、無加湿条件及び膜・電極接合体の温度を70℃以上とする高温条件の、少なくともいずれか一方の条件下で運転される燃料電池システムであって、前記燃料電池は、前記膜・電極接合体の一面側に燃料ガス流路を、他面側に酸化剤ガス流路を有し、さらに、前記燃料ガス流路と前記酸化剤ガス流路が、燃料ガスと酸化剤ガスの流れ方向が互いに対向するようにそれぞれ配置され、且つ、前記酸化剤ガス流路入口近傍及び出口近傍の少なくともいずれか一方の水分量の判定手段と、前記判定手段において前記酸化剤ガス流路入口近傍の水分量が不足しているか、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分量が過剰であるかの少なくともいずれか一方と判定された場合に、燃料ガス流量を増加させるか、燃料ガス圧力を減少させるかの少なくともいずれか一方の操作によって、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分の、前記燃料ガス流路を経由した前記酸化剤ガス流路入口近傍への輸送を促進することにより、前記酸化剤ガス流路入口近傍の水分量を増加させ、且つ、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分量を減少させる燃料ガス制御手段、並びに、前記判定手段において前記酸化剤ガス流路入口近傍の水分量が過剰であるか、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分量が不足しているかの少なくともいずれか一方と判定された場合に、酸化剤ガス流量を減少させるか、酸化剤ガス圧力を増加させるかの少なくともいずれか一方の操作によって、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分の、前記燃料ガス流路を経由した前記酸化剤ガス流路入口近傍への輸送を抑制することにより、前記酸化剤ガス流路入口近傍の水分量を減少させ、且つ、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分量を増加させる酸化剤ガス制御手段、の少なくともいずれか一方を備えるものである。
【0082】
ここで、固体高分子電解質膜とは、燃料電池において使用される高分子電解質膜であり、ナフィオン(商品名)に代表されるパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂のようなフッ素系高分子電解質を含むフッ素系高分子電解質膜の他、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル、ポリパラフェニレン等のエンジニアリングプラスチックや、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等の汎用プラスチック等の炭化水素系高分子にスルホン酸基、カルボン酸基、リン酸基、ボロン酸基等のプロトン酸基(プロトン伝導性基)を導入した炭化水素系高分子電解質を含む炭化水素系高分子電解質膜等が挙げられる。
【0083】
電極は、触媒層とガス拡散層を有する。
触媒層は、触媒、導電性材料及び高分子電解質を含有する触媒インクを用いて形成することができる。
触媒としては、通常、触媒成分を導電性粒子に担持させたものが用いられる。触媒成分としては、燃料極の燃料の酸化反応又は酸化剤極の酸化剤の還元反応に対して触媒活性を有しているものであれば、特に限定されず、固体高分子型燃料電池に一般的に用いられているものを使用することができる。例えば、白金、又はルテニウム、鉄、ニッケル、マンガン、コバルト、銅等の金属と白金との合金等を用いることができる。
【0084】
触媒担体である導電性粒子としては、カーボンブラック等の炭素粒子や炭素繊維のような導電性炭素材料、金属粒子や金属繊維等の金属材料も用いることができる。導電性材料は、触媒層に導電性を付与する役割も担っている。
【0085】
触媒インクは上記のような触媒と高分子電解質とを、溶媒に溶解又は分散させて得られる。
高分子電解質とは、燃料電池において使用される高分子電解質であり、具体的には、上述した固体高分子電解質膜に用いられるようなフッ素系高分子電解質及び炭化水素系高分子電解質等が挙げられる。
触媒インクの溶媒は、適宜選択すればよく、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)等の有機溶媒、又はこれら有機溶媒の混合物やこれら有機溶媒と水との混合物を用いることができる。触媒インクには、触媒及び電解質以外にも、必要に応じて結着剤や撥水性樹脂等のその他の成分を含有させてもよい。
【0086】
触媒インクの塗布方法、乾燥方法等は適宜選択することができる。例えば、塗布方法としては、スプレー法、スクリーン印刷法、ドクターブレード法、グラビア印刷法、ダイコート法などが挙げられる。また、乾燥方法としては、例えば、減圧乾燥、加熱乾燥、減圧加熱乾燥などが挙げられる。減圧乾燥、加熱乾燥における具体的な条件に制限はなく、適宜設定すればよい。
触媒インクの塗布量は、触媒インクの組成や、電極触媒に用いられる触媒金属の触媒性能等によって異なるが、単位面積当りの触媒成分量が、0.01〜2.0mg/cm程度となるようにすればよい。また、触媒層の膜厚は、特に限定されないが、1〜50μm程度とすればよい。
【0087】
触媒層の形成方法は特に限定されず、例えば、触媒インクをガス拡散層シートの表面に塗布、乾燥することによって、ガス拡散層シート表面に触媒層を形成してもよいし、或いは、電解質膜表面に触媒インクを塗布、乾燥することによって、電解質膜表面に触媒層を形成してもよい。或いは、転写用基材表面に触媒インクを塗布、乾燥することによって、転写シートを作製し、該転写シートを、電解質膜又はガス拡散シートと熱圧着等により接合した後、転写シートの基材フィルムを剥離する方法で、電解質膜表面上に触媒層を形成するか、ガス拡散層シート表面に触媒層を形成してもよい。
【0088】
ガス拡散層を形成するガス拡散層シートとしては、触媒層に効率良くガスを供給することができるガス拡散性、導電性、及びガス拡散層を構成する材料として要求される強度を有するもの、例えば、カーボンペーパー、カーボンクロス、カーボンフェルト等の炭素質多孔質体や、チタン、アルミニウム、銅、ニッケル、ニッケル−クロム合金、銅及びその合金、銀、アルミ合金、亜鉛合金、鉛合金、チタン、ニオブ、タンタル、鉄、ステンレス、金、白金等の金属から構成される金属メッシュ又は金属多孔質体等の導電性多孔質体からなるものが挙げられる。導電性多孔質体の厚さは、50〜500μm程度であることが好ましい。
【0089】
ガス拡散層シートは、上記したような導電性多孔質体の単層からなるものであってもよいが、触媒層に面する側に撥水層を設けることもできる。撥水層は、通常、炭素粒子や炭素繊維等の導電性粉粒体、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の撥水性樹脂等を含む多孔質構造を有するものである。撥水層は、必ずしも必要なものではないが、触媒層及び電解質膜内の水分量を適度に保持しつつ、ガス拡散層の排水性を高めることができる上に、触媒層とガス拡散層間の電気的接触を改善することができるという利点がある。
【0090】
作製された膜・電極接合体は、さらに、セパレータで狭持され、単セルを形成する。セパレータとしては、導電性及びガスシール性を有し、集電体及びガスシール体として機能しうるもの、例えば、炭素繊維を高濃度に含有し、樹脂との複合材からなるカーボンセパレータや、金属材料を用いた金属セパレータ等を用いることができる。金属セパレータとしては、耐腐食性に優れた金属材料からなるものや、表面をカーボンや耐腐食性に優れた金属材料等で被覆し、耐腐食性を高めるコーティングが施されたもの等が挙げられる。
セパレータには、燃料ガス及び酸化剤ガスを供給するための流路が形成されている。
【0091】
本発明の燃料電池の運転方法又は燃料電池システムに用いることができる燃料ガスとしては、一般に燃料電池のアノード電極に用いられる気体、具体的には、水素ガスを用いることができる。
本発明の燃料電池の運転方法又は燃料電池システムに用いることができる酸化剤ガスとしては、一般に燃料電池のカソード電極に用いられる気体、具体的には、空気、酸素ガスを用いることができる。
【0092】
図1は、上述した単セルの一例を積層方向に切断した断面模式図である。図に示すように、本発明の燃料電池システム中の燃料電池の単セル100は、高分子電解質膜1をカソード電極6及びアノード電極7で挟持した膜・電極接合体8を有しており、さらに当該接合体8を電極の外側から挟んだ一対のセパレータ9及び10とでなる。セパレータと電極の境界には、カソード電極6側に酸化剤ガス流路11が、アノード電極7側に燃料ガス流路12が確保されている。カソード電極6はカソード触媒層2とガス拡散層4とを積層したものからなり、アノード電極7はアノード触媒層3とガス拡散層5とを積層したものからなる。
さらに、前記酸化剤ガス流路11と前記燃料ガス流路12が、燃料ガスと酸化剤ガスの流れ方向が互いに対向するようにそれぞれ配置されている。ここで、図1中の前記流路11及び12中の「丸に点」の記号は、ガスの流れ方向が、紙面に垂直に紙面の向こう側からこちら側の方向であることを意味し、「丸にバツ印」の記号は、ガスの流れ方向が、紙面に垂直に紙面のこちら側から向こう側の方向であることを意味している。さらに、図に具体的に示されてはいないが、酸化剤ガス流路11の入口近傍が、燃料ガス流路12の出口近傍の電解質膜1を挟んで反対側に、且つ、酸化剤ガス流路11の出口近傍が、燃料ガス流路12の入口近傍の電解質膜1を挟んで反対側に配置されている。
なお、図1中ではガス流路が蛇行型流路であるものとして描かれているが、特にガス流路は特定の形態に限られず、燃料ガスと酸化剤ガスの流れ方向が互いに対向するように配置されるのであれば、どのような形態もとることができる。
【0093】
酸化剤ガス流路入口近傍及び出口近傍の水分量の判定方法としては、例えば、燃料電池全体の抵抗値を測定し、当該抵抗値が、予め計測した各温度における単セル及びスタックの少なくとも一方の抵抗の最低値以上であった時に、単セル内又はスタック内が乾燥していると判定するものが挙げられる。
水分量の判定場所を酸化剤ガス流路入口近傍としたのは、例えば、車載用燃料電池においては、一般的に酸化剤ガスとして空気、燃料ガスとして水素ガスが用いられ、同一ストイキ比におけるガス流量は空気の方が大きくなるため、酸化剤ガス流路入口から乾燥が始まることが想定されるからである。
水分量の判定場所を酸化剤ガス流路出口近傍としたのは、例えば、後述するような燃料ガス制御手段を実行した後に、酸化剤ガス流路出口近傍に一時的な水不足状態が生じると考えられるからである。
【0094】
前記判定手段が、燃料電池全体の抵抗値を測定し、当該抵抗値が、予め計測した各温度における前記単セル及び前記スタックの少なくとも一方の抵抗の最低値の105%を超える値であった時に、前記酸化剤ガス流路入口近傍の水分量が不足しているか、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分量が不足しているかの少なくともいずれか一方と判定するという構成をとることができる(このような判定手段を、以下、判定手段Aとする)。これは、燃料電池全体の抵抗値を測定するという簡便な方法によって、酸化剤ガス流路入口近傍及び出口近傍の水分量の不足を的確に把握することができるからである。なお、燃料電池全体の抵抗値が、予め計測した各温度における単セル及びスタックの少なくとも一方の抵抗の最低値の110%を超える値であった時に水分量不足と判定するのがより好ましく、120%を超える値であった時に水分量不足と判定するのが最も好ましい。
【0095】
また、酸化剤ガス流路入口近傍及び出口近傍の水分量の判定方法としては、例えば、酸化剤ガス流路を流通する酸化剤ガスの圧損を測定し、当該圧損が、予め計測した酸化剤ガス流路を流通する酸化剤ガスの圧損以下であった時に、単セル内又はスタック内が乾燥していると判定するものが挙げられる。
【0096】
前記判定手段が、酸化剤ガス流路を流通する酸化剤ガスの圧損を測定し、当該圧損が、予め計測した酸化剤ガス流路を流通する酸化剤ガスの圧損の最低値の105%未満であった時に、前記酸化剤ガス流路入口近傍の水分量が不足しているか、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分量が不足しているかの少なくともいずれか一方と判定するという構成をとることができる(このような判定手段を、以下、判定手段Cとする)。これは、酸化剤ガス流路を流通する酸化剤ガスの圧損を測定するという簡便な方法によって、酸化剤ガス流路入口近傍及び出口近傍の水分量の不足を的確に把握することができるからである。なお、酸化剤ガス流路を流通する酸化剤ガスの圧損が、予め計測した酸化剤ガス流路を流通する酸化剤ガスの圧損の最低値の100%未満であった時に水分量不足と判定するのがより好ましく、95%未満であった時に水分量不足と判定するのが最も好ましい。
【0097】
また、酸化剤ガス流路入口近傍及び出口近傍の水分量の判定方法としては、例えば、燃料電池全体の電圧を測定し、当該電圧が、予め計測した各温度における単セル及びスタックの少なくとも一方の電圧の最低値以下であった時に、単セル内又はスタック内が水分過剰であると判定するものが挙げられる。
【0098】
前記判定手段が、燃料電池全体の電圧を測定し、当該電圧が、予め計測した各温度における前記単セル及び前記スタックの少なくとも一方の電圧の最高値の95%未満であった時に、前記酸化剤ガス流路入口近傍の水分量が過剰であるか、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分量が過剰であるかの少なくともいずれか一方と判定するという構成をとることができる(このような判定手段を、以下、判定手段Bとする)。これは、燃料電池全体の電圧を測定するという簡便な方法によって、酸化剤ガス流路入口近傍及び出口近傍の水分量過剰を的確に把握することができるからである。なお、燃料電池全体の電圧が、予め計測した各温度における単セル及びスタックの少なくとも一方の電圧の最高値の90%未満であった時に水分量過剰と判定するのがより好ましく、85%未満であった時に水分量過剰と判定するのが最も好ましい。
【0099】
また、酸化剤ガス流路入口近傍及び出口近傍の水分量の判定方法としては、例えば、酸化剤ガス流路を流通する酸化剤ガスの圧損を測定し、当該圧損が、予め計測した酸化剤ガス流路を流通する酸化剤ガスの圧損以上であった時に、単セル内又はスタック内が水分量過剰であると判定するものが挙げられる。
【0100】
前記判定手段が、酸化剤ガス流路を流通する酸化剤ガスの圧損を測定し、当該圧損が、予め計測した酸化剤ガス流路を流通する酸化剤ガスの圧損の最高値の105%を超える値であった時に、前記酸化剤ガス流路入口近傍の水分量が過剰であるか、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分量が過剰であるかの少なくともいずれか一方と判定するという構成をとることができる(このような判定手段を、以下、判定手段Dとする)。これは、酸化剤ガス流路を流通する酸化剤ガスの圧損を測定するという簡便な方法によって、酸化剤ガス流路入口近傍及び出口近傍の水分量過剰を的確に把握することができるからである。なお、酸化剤ガス流路を流通する酸化剤ガスの圧損が、予め計測した酸化剤ガス流路を流通する酸化剤ガスの圧損の最高値の110%を超える値であった時に水分量過剰と判定するのがより好ましく、120%を超える値であった時に水分量過剰と判定するのが最も好ましい。
【0101】
上述した判定手段、又はその他の方法において酸化剤ガス流路入口近傍の水分量が不足しているか、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分量が過剰であるかの少なくともいずれか一方と判断された場合に、本発明の燃料電池の運転方法又は燃料電池システムは、燃料ガス流量を増加させるか、又は燃料ガス圧力を減少させるかの少なくともいずれか一方の操作によって、酸化剤ガス流路入口近傍の水分量を増加させ、且つ、酸化剤ガス流路出口近傍の水分量を減少させる。
また、上述した判定手段、又はその他の方法において酸化剤ガス流路入口近傍の水分量が過剰であるか、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分量が不足しているかの少なくともいずれか一方と判断された場合に、本発明の燃料電池の運転方法又は燃料電池システムは、酸化剤ガス流量を減少させるか、又は酸化剤ガス圧力を増加させるかの少なくともいずれか一方の操作によって、酸化剤ガス流路入口近傍の水分量を減少させ、且つ、酸化剤ガス流路出口近傍の水分量を増加させる。
【0102】
ところで、燃料ガス流路、酸化剤ガス流路に共通して、ガス流路を流れるガス中に含まれる水蒸気量、無加湿ガス流量、水蒸気の分圧及び水蒸気を含んだガスの全圧との間には、以下の式(3)に示すような関係が成り立つ。
【0103】
【数1】

(ただし、QH2Oはガス中に含まれる水蒸気量を、Qdryは無加湿ガスの流量を、PH2Oは水蒸気の分圧を、Ptotalは水蒸気を含んだガスの全圧を示す。)
【0104】
式(3)より、QH2OはQdryに比例することから、ガス中に含まれる水蒸気量QH2Oを一定以上に保つためには、供給すべき無加湿ガスの流量Qdryを一定以上に保つ必要があることが分かる。しかし後述する燃料ガス供給量変化に伴う発電性能及びカソード出口露天湿度測定によって示されるように、燃料ガスの流量を増加させ過ぎてしまうと、燃料ガス流路入口近傍において高分子電解質膜を乾燥させてしまうため、発電効率の減少を招いてしまうことが分かっている。すなわち、実際に発電効率を良好に保つためには、無加湿ガスの流量Qdryをある適切な範囲にまで増加させる必要がある。
また、式(3)より、水蒸気を含んだガスの全圧Ptotalと水蒸気の分圧PH2Oとの差(Ptotal−PH2O)、すなわち供給すべき無加湿ガスの分圧が、ガス中に含まれる水蒸気量QH2Oに反比例することが分かる。したがって、無加湿ガスの分圧を抑える程、QH2Oを増加させることができる。しかし、無加湿ガスの分圧を抑え過ぎると、酸化剤ガス流路入口近傍からの水の持ち去りが多過ぎ、酸化剤ガス流路入口近傍の高分子電解質膜を乾燥させ過ぎてしまう。したがって、実際に発電効率を良好に保つためには、無加湿ガスの分圧(Ptotal−PH2O)をある適切な範囲にまで減少させる必要がある。
したがって、本発明の効果を得るためには、上述した無加湿ガスの流量Qdryには上限値が、無加湿ガスの分圧(Ptotal−PH2O)には下限値が存在するため、「流量Qdryを上げ続ける」又は「分圧(Ptotal−PH2O)を下げ続ける」という単純な操作を行うのみでは実際にQH2Oを一定以上に保つことができない。これら2つの値の調節を一定範囲以内でそれぞれ行うことによって、発電効率を良好に保つことができる。
【0105】
上記水蒸気量の操作は、酸化剤ガス制御にも応用することができる。
式(3)より、QH2OはQdryに比例することから、ガス中に含まれる水蒸気量QH2Oを一定以下に保つためには、供給すべき無加湿ガスの流量Qdryを一定以下に保つ必要があることが分かる。しかし、酸化剤ガスの流量を減少させ過ぎてしまうと、酸化剤ガスが燃料電池外へ持ち去る水分が抑えられ、酸化剤ガス流路出口近傍において、いわゆるフラッディングが生じるため、発電効率の減少を招いてしまうことが分かっている。すなわち、実際に発電効率を良好に保つためには、無加湿ガスの流量Qdryをある適切な範囲にまで減少させる必要がある。
また、式(3)より、水蒸気を含んだガスの全圧Ptotalと水蒸気の分圧PH2Oとの差(Ptotal−PH2O)、すなわち供給すべき無加湿ガスの分圧が、ガス中に含まれる水蒸気量QH2Oに反比例することが分かる。したがって、無加湿ガスの分圧を増加させる程、QH2Oを抑制することができる。しかし、無加湿ガスの分圧を増加させ過ぎると、酸化剤ガス流路入口近傍からの水の持ち去りが少な過ぎ、上記同様に酸化剤ガス流路出口近傍においてフラッディングが生じてしまう。したがって、実際に発電効率を良好に保つためには、無加湿ガスの分圧(Ptotal−PH2O)をある適切な範囲にまで増加させる必要がある。
したがって、本発明の効果を得るためには、上述した無加湿ガスの流量Qdryには下限値が、無加湿ガスの分圧(Ptotal−PH2O)には上限値が存在するため、「流量Qdryを下げ続ける」又は「分圧(Ptotal−PH2O)を上げ続ける」という単純な操作を行うのみでは実際に発電効率を良好に保つことができない。これら2つの値の調節を一定範囲以内でそれぞれ行うことによって、発電効率を良好に保つことができる。
【0106】
図2は、本発明の燃料電池システムにおける単セルの水の循環について示した断面模式図である。単純化のため、カソード及びアノード電極は、ガス拡散層と触媒層の区別なしに図示した。なお、「丸に点」及び「丸にバツ印」の記号は、図1同様に流路を流れるガスの流れ方向を示すものとする。また、酸化剤ガスは、酸化剤ガス流路入口11aから導入され、酸化剤ガス流路出口11bに到達するものとし、燃料ガスは、燃料ガス流路入口12aから導入され、燃料ガス流路出口12bに到達するものとする。
いま、酸化剤ガス流路出口11b近傍は、前記式(2)で示される反応により生成した水によって湿潤状態になっている。この水分は、矢印21に示されるように、高分子電解質膜1を透過して燃料ガス流路入口12a近傍へ輸送される。このとき、上述したような無加湿の燃料ガスの流量Qdry及び無加湿の燃料ガスの分圧(Ptotal−PH2O)の少なくともいずれか一方の調節を行うことによって、燃料ガス流路入口12a近傍に輸送された水分を、より多く燃料ガス流路の出口12b近傍へと輸送することができる。この水分は、矢印22に示されるように、高分子電解質膜1を透過して酸化剤ガス流路入口11a近傍へ輸送されることから、その結果として、乾燥し易い酸化剤ガス流路の入口11a近傍及び湿潤し易い酸化剤ガス流路の出口11b近傍の水分量を調整し、無加湿でありながら、面内水分量分布が発生しない単セルを実現することができる。
【0107】
また、酸化剤ガス流路出口11b近傍が、乾燥状態である時には、上述したような無加湿の酸化剤ガスの流量Qdry及び無加湿の酸化剤ガスの分圧(Ptotal−PH2O)の少なくともいずれか一方の調節を行うことによって、酸化剤ガスが燃料電池外へ持ち去る水分をより少なくすることができ、酸化剤ガス流路出口11b近傍に水分を蓄えることができる。
【0108】
発電効率を良好に保つために、燃料ガスのストイキ比を1.0〜10の範囲にまで増加させることが好ましい。これは、前記ストイキ比が10を超えると、燃料ガス流路入口において高分子電解質膜が乾燥してしまうため、発電効率の減少を招き、前記ストイキ比が1.0未満であるとすると、燃料ガス中に含まれる水分量を十分に保つことができず、したがって酸化剤ガス流路へ電解質膜を通じて輸送できる水分量も限られるからである。
特に、本発明の燃料電池システムの場合は、燃料ガス供給装置の調節によって燃料ガス流量を増加させることが好ましい(このような制御手段を、以下、燃料ガス流量制御手段とする)。これは、燃料ガス供給装置の調節という簡便な操作によって、燃料ガス流量を増加できるからである。ここでいう燃料ガス供給装置とは、例えば、燃料ガスボンベ、燃料ガスポンプ等が挙げられる。
なお、前記ストイキ比を1.0〜5.0の範囲にまで増加させることがより好ましく、前記ストイキ比を1.0〜3.0の範囲にまで増加させることが最も好ましい。
【0109】
発電効率を良好に保つために、燃料ガス圧力を、大気圧以上、0.3MPa以下の範囲にまで減少させることが好ましい。これは、前記圧力が0.3MPaを超えると燃料ガス中に含まれる水分量を十分に保つことができず、したがって酸化剤ガス流路へ電解質膜を通じて輸送できる水分量も限られるからである。また、前記圧力が大気圧未満であるとすると、発電に必要な燃料供給を十分に行うことができない。
特に、本発明の燃料電池システムの場合は、前記燃料ガス流路出口近傍に備えられた燃料ガス圧力調整弁の調節によって燃料ガス圧力を減少させることが好ましい(このような制御手段を、以下、燃料ガス圧力制御手段とする)。これは、燃料ガス圧力調整弁の調節という簡便な操作によって、燃料ガス圧力を減少できるからである。
前記燃料ガス圧力を、大気圧以上、0.2MPa以下の範囲にまで減少させることがより好ましく、前記圧力を、大気圧以上、0.1MPa以下の範囲にまで減少させることが最も好ましい。
【0110】
なお、上述したような燃料ガス供給装置を調節することによっても、燃料ガス圧力は調節できる。しかし、燃料ガス供給装置のみによって、燃料ガス流量の増加と燃料ガス圧力の減少とを同時に達成することは困難である。したがって、燃料ガス流路入口の燃料ガス供給装置の調節と、燃料ガス流路出口近傍の燃料ガス圧力調整弁の調節とを組み合わせることによって、燃料ガス流量の増加と、燃料ガス圧力の減少とを両立することができる。
【0111】
発電効率を良好に保つために、酸化剤ガスのストイキ比を1.0〜3.0の範囲にまで減少させることが好ましい。これは、前記ストイキ比が3.0を超えると、酸化剤ガス流路中の水分量を十分に保つことができず、したがって燃料ガス流路へ電解質膜を通じて輸送できる水分量も限られるからであり、前記ストイキ比が1.0未満であるとすると、酸化剤ガス流路中のフラッディングが回避できないからである。
特に、本発明の燃料電池システムの場合は、酸化剤ガス供給装置の調節によって酸化剤ガス流量を減少させることが好ましい(このような制御手段を、以下、酸化剤ガス流量制御手段とする)。これは、酸化剤ガス供給装置の調節という簡便な操作によって、酸化剤ガス流量を減少できるからである。ここでいう酸化剤ガス供給装置とは、例えば、酸化剤ガスボンベ、酸化剤ガスポンプ等が挙げられる。
なお、前記ストイキ比を1.2〜2.0の範囲にまで減少させることがより好ましく、前記ストイキ比を1.4〜1.7の範囲にまで減少させることが最も好ましい。
【0112】
発電効率を良好に保つために、酸化剤ガス圧力を、大気圧以上、0.3MPaの範囲にまで増加させることが好ましい。これは、前記圧力が0.3MPaを超えると酸化剤ガス流路中のフラッディングが回避できないからであり、また、前記圧力が大気圧未満であるとすると、酸化剤ガス流路中の水分量を十分に保つことができず、したがって燃料ガス流路へ電解質膜を通じて輸送できる水分量も限られるからである。
特に、本発明の燃料電池システムの場合は、前記酸化剤ガス流路出口近傍に備えられた酸化剤ガス圧力調整弁の調節によって酸化剤ガス圧力を増加させることが好ましい(このような制御手段を、以下、酸化剤ガス圧力制御手段とする)。これは、燃料ガス圧力調整弁の調節という簡便な操作によって、燃料ガス圧力を増加できるからである。
前記酸化剤ガス圧力を、0.12〜0.25MPaの範囲にまで増加させることがより好ましく、前記圧力を、0.14〜0.2MPaの範囲にまで増加させることが最も好ましい。
【0113】
なお、上述したような酸化剤ガス供給装置を調節することによっても、酸化剤ガス圧力は調節できる。しかし、酸化剤ガス供給装置のみによって、酸化剤ガス流量の減少と酸化剤ガス圧力の増加とを同時に達成することは困難である。したがって、酸化剤ガス流路入口の酸化剤ガス供給装置の調節と、酸化剤ガス流路出口近傍の酸化剤ガス圧力調整弁の調節とを組み合わせることによって、酸化剤ガス流量の減少と、酸化剤ガス圧力の増加とを両立することができる。
【0114】
図3は、本発明の燃料電池の運転方法を具体化するための、好適な燃料電池システムの典型例を示した模式図である。なお、ここでは燃料ガスとして水素ガスを、酸化剤ガスとして空気を用いる燃料電池について記載している。
図示するように、燃料ガス流路と酸化剤ガス流路が、燃料ガスである水素ガスと、酸化剤ガスである空気との流れ方向が互いに対向するようにそれぞれ配置されている。
また、燃料ガス供給装置の一種である水素ガスボンベと、水素ガスポンプとによって燃料ガス流量の調節をする(燃料ガス流量の制御)。なお、この図における水素ガスポンプとは、燃料電池スタック内で消費されなかった水素ガスを再利用するためのものである。さらに、水素ガス圧力調整弁によって、水素ガス圧力の調節を行う(燃料ガス圧力の制御)。具体的にはこのようなシステムの構成により、燃料ガス流量の増加と燃料ガス圧力の減少とを両立することができる。
さらに、酸化剤ガス供給装置の一種であるエアーコンプレッサー(ACP)によって酸化剤ガス流量の調節をする。また、空気圧力調整弁によって、空気圧力の調節を行う。具体的にはこのようなシステムの構成により、酸化剤ガス流量の減少と酸化剤ガス圧力の増加とを両立することができる。
【0115】
また、図3に示しているように、燃料ガス流路、酸化剤ガス流路には、それぞれガス流量計測手段(水素側:水素ガスボンベに付属したレギュレーター、空気側:フローメーター)、ガス圧力計測手段(水素側及び空気側:圧力計)が備えられている。
【0116】
さらに、図3には示されていないが、酸化剤ガス流路及び燃料ガス流路には、スタック圧損計測手段が備えられている。スタック圧損計測手段としては、具体的には、酸化剤ガス流路、燃料ガス流路の入口及び出口の両方にそれぞれ圧力センサを設ける。圧損の算出方法は、ΔP(圧損)=P(入口圧力)−P(出口圧力)とする。
【0117】
また、図3に示しているように、ラジエタを有する冷却系統には、水温計測手段が備えられている。これは、燃料電池の状態、特に乾燥状態又は湿潤状態か否かを、予め水温の推移によって把握するためである。なお、70〜120℃の範囲のある温度を予め設定値とし、当該設定値を超える値において燃料電池に異常(水分量分布など)が生じているとみなすのが好ましい。
【0118】
さらに、図3に示しているように、電圧計、電流計を有する電気系統には、負荷制御用、及び予め計測した各温度における単セル及びスタックの少なくとも一方の電圧・抵抗制御用のパワーコントロールユニット(PCU)が備えられている。
【0119】
また、図3に示しているように、燃料ガス流路は水素ポンプ及び水素ガス圧力調整弁による循環機能を備えるものを前提とするが、デッドエンド・少量連続排気など、循環レスシステムであってもよい。
【0120】
図4は、本発明の燃料電池の運転方法を具体化するための、好適な燃料電池システムの典型例の作動工程を示したフローチャートである。
いま、燃料電池システムが高負荷連続運転中であるとする。当該運転中、10秒〜10分おきに、水分量の判定手段の1つである燃料電池全体の抵抗値測定を行う。
ここで、抵抗値Rが、予め計測した各温度における単セル及びスタックの少なくとも一方の抵抗の最低値の105%の値(以下、設定値Rという。)を超える値であるか否か(判定手段A)で次に行う処理が異なる。抵抗値Rが、設定値R以下である場合、高負荷連続運転が続行され、抵抗値Rが、設定値Rを超える値である場合、酸化剤ガス流路入口近傍及び出口近傍の少なくともいずれか一方が水分量不足であると判断し、燃料ガス制御手段及び酸化剤ガス制御手段の少なくともいずれか一方を実行する。なお、通常は酸化剤ガス流路入口近傍の水分量不足への対策として燃料ガス制御手段を、酸化剤ガス流路出口近傍の水分量不足への対策として酸化剤ガス制御手段を、それぞれ実行するが、これら2つの制御手段を同時に行ってもよい。
燃料ガス制御手段及び酸化剤ガス制御手段は、上述したストイキ比調整及び圧力調整の少なくともいずれか一方のみを行ってもよいが、当該ストイキ比調整及び圧力調整を同時に行うのが最も好ましい。
燃料ガス制御手段及び酸化剤ガス制御手段の少なくともいずれか一方を行った後、燃料電池全体の抵抗値測定を行い、抵抗値Rが、設定値Rを超える値である場合は、再度燃料ガス制御手段及び酸化剤ガス制御手段の少なくともいずれか一方を実行し、抵抗値Rが、設定値R以下である場合には、高負荷連続運転が継続される。
【0121】
図5は、本発明の燃料電池の運転方法を具体化するための、好適な燃料電池システムの第二の典型例の作動工程を示したフローチャートである。
いま、燃料電池システムが高負荷連続運転中であるとする。当該運転中、10秒〜10分おきに、水分量の判定手段の1つである燃料電池全体の電圧測定を行う。
ここで、電圧Eが、予め計測した各温度における単セル及びスタックの少なくとも一方の電圧の最高値の95%の値(以下、設定値Eという。)未満であるか否か(判定手段B)で次に行う処理が異なる。電圧Eが、設定値E以上である場合、高負荷連続運転が続行され、電圧Eが、設定値E未満である場合、酸化剤ガス流路入口近傍及び出口近傍の少なくともいずれか一方が水分量過剰であると判断し、燃料ガス制御手段及び酸化剤ガス制御手段の少なくともいずれか一方を実行する。なお、通常は酸化剤ガス流路入口近傍の水分量過剰への対策として酸化剤ガス制御手段を、酸化剤ガス流路出口近傍の水分量過剰への対策として燃料ガス制御手段を、それぞれ実行するが、これら2つの制御手段を同時に行ってもよい。
燃料ガス制御手段及び酸化剤ガス制御手段は、上述したストイキ比調整及び圧力調整の少なくともいずれか一方のみを行ってもよいが、当該ストイキ比調整及び圧力調整を同時に行うのが最も好ましい。
燃料ガス制御手段及び酸化剤ガス制御手段の少なくともいずれか一方を行った後、燃料電池全体の電圧測定を行い、電圧Eが、設定値未満Eである場合は、再度燃料ガス制御手段及び酸化剤ガス制御手段の少なくともいずれか一方を実行し、電圧Eが、設定値E以上である場合には、高負荷連続運転が継続される。
【0122】
図6は、本発明の燃料電池の運転方法を具体化するための、好適な燃料電池システムの第三の典型例の作動工程を示したフローチャートである。
いま、燃料電池システムが高負荷連続運転中であるとする。当該運転中、10秒〜10分おきに、水分量の判定手段の1つである酸化剤ガス流路を流通する酸化剤ガスの圧損測定を行う。
ここで、圧損ΔPが、予め計測した酸化剤ガス流路を流通する酸化剤ガスの圧損の最低値の105%の値(以下、設定値ΔPという。)未満であるか否か(判定手段C)で次に行う処理が異なる。圧損ΔPが、設定値ΔP以上である場合、高負荷連続運転が続行され、圧損ΔPが、設定値ΔP未満である場合、酸化剤ガス流路入口近傍及び出口近傍の少なくともいずれか一方が水分量不足であると判断し、燃料ガス制御手段及び酸化剤ガス制御手段の少なくともいずれか一方を実行する。なお、通常は酸化剤ガス流路入口近傍の水分量不足への対策として燃料ガス制御手段を、酸化剤ガス流路出口近傍の水分量不足への対策として酸化剤ガス制御手段を、それぞれ実行するが、これら2つの制御手段を同時に行ってもよい。
燃料ガス制御手段及び酸化剤ガス制御手段は、上述したストイキ比調整及び圧力調整の少なくともいずれか一方のみを行ってもよいが、当該ストイキ比調整及び圧力調整を同時に行うのが最も好ましい。
燃料ガス制御手段及び酸化剤ガス制御手段の少なくともいずれか一方を行った後、酸化剤ガス流路を流通する酸化剤ガスの圧損測定を行い、圧損ΔPが、設定値ΔP未満である場合は、再度燃料ガス制御手段及び酸化剤ガス制御手段の少なくともいずれか一方を実行し、圧損ΔPが、設定値ΔP以上である場合には、高負荷連続運転が継続される。
【0123】
図7は、本発明の燃料電池の運転方法を具体化するための、好適な燃料電池システムの第四の典型例の作動工程を示したフローチャートである。
いま、燃料電池システムが高負荷連続運転中であるとする。当該運転中、10秒〜10分おきに、水分量の判定手段の1つである酸化剤ガス流路を流通する酸化剤ガスの圧損測定を行う。
ここで、圧損ΔPが、予め計測した酸化剤ガス流路を流通する酸化剤ガスの圧損の最高値の105%の値(以下、設定値ΔPという。なお、ΔPは、上述したΔPとは独立な値である。)を超える値であるか否か(判定手段D)で次に行う処理が異なる。圧損ΔPが、設定値ΔP以下である場合、高負荷連続運転が続行され、圧損ΔPが、設定値ΔPを超える値である場合、酸化剤ガス流路入口近傍及び出口近傍の少なくともいずれか一方が水分量過剰であると判断し、燃料ガス制御手段及び酸化剤ガス制御手段の少なくともいずれか一方を実行する。なお、通常は酸化剤ガス流路入口近傍の水分量過剰への対策として酸化剤ガス制御手段を、酸化剤ガス流路出口近傍の水分量過剰への対策として燃料ガス制御手段を、それぞれ実行するが、これら2つの制御手段を同時に行ってもよい。
燃料ガス制御手段及び酸化剤ガス制御手段は、上述したストイキ比調整及び圧力調整の少なくともいずれか一方のみを行ってもよいが、当該ストイキ比調整及び圧力調整を同時に行うのが最も好ましい。
燃料ガス制御手段及び酸化剤ガス制御手段の少なくともいずれか一方を行った後、酸化剤ガス流路を流通する酸化剤ガスの圧損測定を行い、圧損ΔPが、設定値ΔPを超える値である場合は、再度燃料ガス制御手段及び酸化剤ガス制御手段の少なくともいずれか一方を実行し、圧損ΔPが、設定値ΔP以下である場合には、高負荷連続運転が継続される。
【0124】
本発明の燃料電池システムの一形態としては、前記燃料ガス制御手段及び前記酸化剤ガス制御手段をいずれも備え、上述した判定手段A及び判定手段Cの少なくともいずれか一方、並びに、上述した判定手段B及び判定手段Dの少なくともいずれか一方を備え、前記判定手段A及びCの少なくともいずれか一方によって前記酸化剤ガス流路入口近傍の水分量が不足していると判定された後に、前記燃料ガス制御手段を一回以上行う水分輸送促進制御作動手段Aと、前記水分輸送促進制御作動手段Aの後に、前記判定手段A及びCの少なくともいずれか一方によって、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分量が不足していると判定された後に、前記燃料ガス制御手段を停止する水分輸送促進制御停止手段Aと、前記水分輸送促進制御停止手段Aの後に、前記酸化剤ガス制御手段を一回以上行う水分輸送抑制制御作動手段Aと、前記判定手段B及びDの少なくともいずれか一方によって、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分量が過剰であると判定された後に、前記酸化剤ガス制御手段をいずれも停止する水分輸送抑制制御停止手段Aと、前記水分輸送抑制制御停止手段Aの後に、前記判定手段A及びCの少なくともいずれか一方によって前記酸化剤ガス流路入口近傍の水分量が不足であるか否かを判定し、水分量不足の場合に再度前記水分輸送促進制御作動手段Aから行い、水分量不足でない場合に前記燃料電池の運転を継続する水分量不足最終判定手段Aを備えるという構成をとることができる。
【0125】
図8は、本発明の燃料電池の運転方法を具体化するための、好適な燃料電池システムの第五の典型例の作動工程を示したフローチャートである。
いま、燃料電池システムが高負荷連続運転中であるとする。当該運転中、10秒〜10分おきに、上述した水温計測手段によって冷却水温Tの計測を行う。この際、測定された水温Tが設定値T以下であれば運転を続行し、水温Tが設定値Tを超える値であれば、判定手段A(抵抗測定)をさらに行う。この際、測定された抵抗値Rが設定値R以下であれば、酸化剤ガス流路入口近傍の水分量が適切に保たれていると判定し、高負荷運転を続行する。
なお、ここまでの操作手順は図4に示した典型例の前半部分と本質的に変わりがない。抵抗Rが設定値Rを超える値である場合、酸化剤ガス流路入口近傍の水分量を以下のように増加させる点が、典型例と異なる。
【0126】
前記判定手段Aにより、抵抗値Rが設定値Rを超える値であれば、酸化剤ガス流路入口近傍の水分量が不足していると判定し、燃料ガス流量制御手段、及び燃料ガス圧力制御手段の少なくともいずれか一方を行う(水分輸送促進制御作動手段A)。当該作動手段Aは、判定手段C(圧損測定)によって酸化剤ガス流路出口近傍の水分量が不足していると判定されるまで1回以上行い、当該判定によって停止する(水分輸送促進制御停止手段A)。
次に、酸化剤ガス流量制御手段、及び酸化剤ガス圧力制御手段の少なくともいずれか一方を行う(水分輸送抑制制御作動手段A)。当該作動手段Aは、判定手段D(圧損測定)によって酸化剤ガス流路出口近傍の水分量が過剰であると判定されるまで1回以上行い、当該判定によって停止する(水分輸送抑制制御停止手段A)。
最後に、判定手段A(抵抗測定)により酸化剤ガス流路入口近傍の水分量が不足であるか否かを判定し、水分量不足の場合に再度前記水分輸送促進制御作動手段Aから行い、水分量不足でない場合に燃料電池の運転を継続する。
【0127】
このような構成の燃料電池システムは、前記酸化剤ガス流路入口近傍の水分量が不足していると判定された際に、前記水分輸送促進制御作動手段Aによって前記酸化剤ガス流路出口近傍から入口近傍への水分の輸送を促進した後に、前記水分輸送抑制制御作動手段Aによって前記酸化剤ガス流路出口近傍の前記水分量を増加させることで、前記酸化剤ガス流路入口近傍及び出口近傍のいずれの水分量も過不足ない、適度な量に保つことができる。また、本発明の燃料電池システムは、前記水分量不足最終判定手段Aの結果を基に再度一連の工程を繰り返すことによって、前記酸化剤ガス流路全体の水分量分布の発生を防止することができる。
【0128】
同様の観点から、本発明の燃料電池の運転方法の一形態としては、前記酸化剤ガス流路入口近傍の水分量が不足していると判定した場合に、燃料ガスのストイキ比を1.0〜10の範囲にまで増加させるか、燃料ガス圧力を大気圧以上、0.3MPa以下の範囲にまで減少させるかの少なくともいずれか一方を一回以上行い、その後に、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分量が不足していると判定した後に、前記燃料ガスの制御を停止し、その後に、酸化剤ガスのストイキ比を1.0〜3.0の範囲にまで減少させるか、及び、酸化剤ガス圧力を、大気圧以上、0.3MPa以下の範囲にまで増加させるかの少なくともいずれか一方を一回以上行い、その後に、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分量が過剰であると判定した後に、前記酸化剤ガスの制御を停止し、さらにその後に、前記酸化剤ガス流路入口近傍の水分量が不足していると判定した場合に、再度前記燃料ガスの制御から行い、水分量が不足していないと判定した場合に、前記燃料電池の運転を継続するという構成をとることができる。
【0129】
本発明の燃料電池システムの一形態としては、前記燃料ガス制御手段及び前記酸化剤ガス制御手段をいずれも備え、上述した判定手段A及び判定手段Cの少なくともいずれか一方、並びに、上述した判定手段B及び判定手段Dの少なくともいずれか一方を備え、前記判定手段A及びCの少なくともいずれか一方によって前記酸化剤ガス流路入口近傍の水分量が不足していると判定された後に、前記酸化剤ガス制御手段を一回以上行う水分輸送抑制制御作動手段Bと、前記水分輸送抑制制御作動手段Bの後に、前記判定手段B及びDの少なくともいずれか一方によって、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分量が過剰であると判定された後に、前記酸化剤ガス制御手段を停止する水分輸送抑制制御停止手段Bと、前記水分輸送抑制制御停止手段Bの後に、前記燃料ガス制御手段を一回以上行う水分輸送促進制御作動手段Bと、前記判定手段A及びCの少なくともいずれか一方によって、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分量が不足していると判定された後に、前記燃料ガス制御手段をいずれも停止する水分輸送促進制御停止手段Bと、前記水分輸送促進制御停止手段Bの後に、前記判定手段A及びCの少なくともいずれか一方によって前記酸化剤ガス流路入口近傍の水分量が不足であるか否かを判定し、水分量不足の場合に再度前記水分輸送抑制制御作動手段Bから行い、水分量不足でない場合に前記燃料電池の運転を継続する水分量不足最終判定手段Bを備えるという構成をとることができる。
【0130】
図9は、本発明の燃料電池の運転方法を具体化するための、好適な燃料電池システムの第六の典型例の作動工程を示したフローチャートである。
いま、燃料電池システムが高負荷連続運転中であるとする。この状態から、冷却水温T測定及び判定手段Aの実行までは、上述した第五の典型例(図8)と同様である。
【0131】
前記判定手段Aにより、抵抗値Rが設定値Rを超える値であれば、酸化剤ガス流路入口近傍の水分量が不足していると判定し、酸化剤ガス流量制御手段、及び酸化剤ガス圧力制御手段の少なくともいずれか一方を行う(水分輸送抑制制御作動手段B)。当該作動手段Bは、判定手段D(圧損測定)によって酸化剤ガス流路出口近傍の水分量が過剰であると判定されるまで1回以上行い、当該判定によって停止する(水分輸送抑制制御停止手段A)。
次に、燃料ガス流量制御手段、及び燃料ガス圧力制御手段の少なくともいずれか一方を行う(水分輸送促進制御作動手段B)。当該作動手段Bは、判定手段C(圧損測定)によって酸化剤ガス流路出口近傍の水分量が不足していると判定されるまで1回以上行い、当該判定によって停止する(水分輸送促進制御停止手段B)。
最後に、判定手段A(抵抗測定)により酸化剤ガス流路入口近傍の水分量が不足であるか否かを判定し、水分量不足の場合に再度前記水分輸送抑制制御作動手段Bから行い、水分量不足でない場合に燃料電池の運転を継続する。
【0132】
このような構成の燃料電池システムは、前記酸化剤ガス流路入口近傍の水分量が不足していると判定された際に、前記水分輸送抑制制御作動手段Bによって前記酸化剤ガス流路出口近傍から入口近傍への水分の輸送を抑制し、前記酸化剤ガス流路出口近傍に水分を十分蓄えた後に、前記水分輸送促進制御作動手段Bによって前記酸化剤ガス流路出口近傍から入口近傍への水分の輸送を促進させることで、前記酸化剤ガス流路入口近傍及び出口近傍のいずれの水分量も過不足ない、適度な量に保つことができる。また、本発明の燃料電池システムは、前記水分量不足最終判定手段Aの結果を基に再度一連の工程を繰り返すことによって、前記酸化剤ガス流路全体の水分量分布の発生を防止することができる。
【0133】
同様の観点から、本発明の燃料電池の運転方法の一形態としては、前記酸化剤ガス流路入口近傍の水分量が不足していると判定した場合に、酸化剤ガスのストイキ比を1.0〜3.0の範囲にまで減少させるか、及び、酸化剤ガス圧力を、大気圧以上、0.3MPa以下の範囲にまで増加させるかの少なくともいずれか一方を一回以上行い、その後に、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分量が過剰であると判定した後に、前記酸化剤ガスの制御を停止し、その後に、燃料ガスのストイキ比を1.0〜10の範囲にまで増加させるか、及び、燃料ガス圧力を、大気圧以上、0.3MPa以下の範囲にまで減少させるかの少なくともいずれか一方を一回以上行い、その後に、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分量が不足していると判定した後に、前記燃料ガスの制御を停止し、さらにその後に、前記酸化剤ガス流路入口近傍の水分量が不足していると判定した場合に、再度前記酸化剤ガスの制御から行い、水分量が不足していないと判定した場合に、前記燃料電池の運転を継続するという構成をとることができる。
【0134】
本発明の燃料電池システムの一形態としては、前記燃料ガス制御手段及び前記酸化剤ガス制御手段をいずれも備え、上述した判定手段A及び判定手段Cの少なくともいずれか一方、並びに、上述した判定手段B及び判定手段Dの少なくともいずれか一方を備え、前記燃料ガス制御手段を一回以上行う水分小過剰輸送促進制御作動手段と、前記水分小過剰輸送促進制御作動手段の後に、前記判定手段A及びCの少なくともいずれか一方によって、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分量が不足していると判定された後に、前記燃料ガス制御手段を停止する水分小過剰輸送促進制御停止手段と、前記水分小過剰輸送促進制御停止手段の後に、前記酸化剤ガス制御手段を行う水分輸送抑制制御作動手段Cと、前記判定手段B及びDの少なくともいずれか一方によって、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分量が過剰であると判定された後に、前記酸化剤ガス制御手段をいずれも停止する水分輸送抑制制御停止手段Cと、前記水分輸送抑制制御停止手段Cの後に、前記燃料ガス制御手段を行う水分輸送促進制御作動手段Cと、前記水分輸送促進制御作動手段Cの後に、前記判定手段A及びCの少なくともいずれか一方によって、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分量が不足であるか否かを判定し、水分量不足の場合に再度前記水分輸送抑制制御作動手段Cから行い、水分量不足でない場合に前記燃料ガス制御手段を停止し、前記燃料電池の運転を継続する水分輸送促進制御停止手段Cを備えるという構成をとることができる。
【0135】
図10は、本発明の燃料電池の運転方法を具体化するための、好適な燃料電池システムの第七の典型例の作動工程を示したフローチャートである。
いま、燃料電池システムが高負荷連続運転中であるとする。当該運転中、10秒〜10分おきに、上述した水温計測手段によって冷却水温Tの計測を行う。この際、測定された水温Tが設定値T以下であれば運転を続行し、水温Tが設定値Tを超える値であれば、燃料ガス流量制御手段、及び燃料ガス圧力制御手段の少なくともいずれか一方を行う(水分小過剰輸送促進制御作動手段)。当該作動手段は、判定手段A(抵抗測定)によって酸化剤ガス流路出口近傍の水分量が不足していると判定されるまで1回以上行い、当該判定によって停止する(水分小過剰輸送促進制御停止手段)。
すなわち、ここまでの作動工程は、前半の水温計測手段によって燃料電池内における何らかの異常を検知した後、その異常が酸化剤ガス流路のどの部位の異常かを判断すること無く、酸化剤ガス流路出口近傍から燃料ガス流路を経由した酸化剤ガス流路入口近傍への水分の輸送を小過剰分だけ促進することにより、酸化剤ガス流路出口近傍の水分量を一時的に不足状態としている。
【0136】
前記水分小過剰輸送促進制御停止手段の後に、酸化剤ガス流量制御手段、及び酸化剤ガス圧力制御手段の少なくともいずれか一方を行う(水分輸送抑制制御作動手段C)。当該作動手段Cは、判定手段B(電圧測定)によって酸化剤ガス流路出口近傍の水分量が過剰であると判定されるまで1回以上行い、当該判定によって停止する(水分輸送抑制制御停止手段C)。
次に、燃料ガス流量制御手段、及び燃料ガス圧力制御手段の少なくともいずれか一方を行う(水分輸送促進制御作動手段C)。最後に、判定手段A(抵抗測定)により酸化剤ガス流路出口近傍の水分量が不足であるか否かを判定し、水分量不足の場合に再度前記水分輸送抑制制御作動手段Cから行い、水分量不足でない場合に燃料電池の運転を継続する。
【0137】
このような構成の燃料電池システムは、初めに前記水分小過剰輸送促進制御作動手段によってあえて前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分量を適度に不足させ、その後に前記水分輸送抑制制御作動手段Cによって前記酸化剤ガス流路出口近傍から入口近傍への水分の輸送を抑制し、前記酸化剤ガス流路出口近傍に水分を十分蓄えた後に、さらに前記水分輸送促進制御作動手段Cによって前記酸化剤ガス流路出口近傍から入口近傍への水分の輸送を促進させることで、前記酸化剤ガス流路入口近傍及び出口近傍のいずれの水分量も過不足ない、適度な量に保つことができる。また、本発明の燃料電池システムは、一度湿潤させてしまうと元の性能を保持できなくなるような触媒層(例えば、意図的に触媒を腐食させて触媒層中の細孔を塞いでいるような触媒層等)を有する燃料電池を有する場合において、前記触媒層に湿潤履歴を与えることがないため特に有効である。
【0138】
同様の観点から、本発明の燃料電池の運転方法の一形態としては、燃料ガスのストイキ比を1.0〜10の範囲にまで増加させるか、燃料ガス圧力を大気圧以上、0.3MPa以下の範囲にまで減少させるかの少なくともいずれか一方を一回以上行い、その後に、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分量が不足していると判定した後に、前記燃料ガスの制御を停止し、その後に、酸化剤ガスのストイキ比を1.0〜3.0の範囲にまで減少させるか、及び、酸化剤ガス圧力を、大気圧以上、0.3MPa以下の範囲にまで増加させるかの少なくともいずれか一方を一回以上行い、その後に、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分量が過剰であると判定した後に、前記酸化剤ガスの制御を停止し、その後に、燃料ガスのストイキ比を1.0〜10の範囲にまで増加させるか、及び、燃料ガス圧力を、大気圧以上、0.3MPa以下の範囲にまで減少させるかの少なくともいずれか一方を行い、さらにその後に、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分量が不足していると判定した場合に、再度前記酸化剤ガスの制御から行い、水分量が不足していないと判定した場合に、前記燃料ガス制御を停止し、前記燃料電池の運転を継続するという構成をとることができる。
【0139】
本発明の燃料電池システムの一形態としては、前記燃料ガス制御手段及び前記酸化剤ガス制御手段をいずれも備え、上述した判定手段A及び判定手段Cの少なくともいずれか一方、並びに、上述した判定手段B及び判定手段Dの少なくともいずれか一方を備え、前記酸化剤ガス制御手段を一回以上行う水分小過剰輸送抑制制御作動手段と、前記水分小過剰輸送抑制制御作動手段の後に、前記判定手段B及びDの少なくともいずれか一方によって、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分量が過剰であると判定された後に、前記酸化剤ガス制御手段を停止する水分小過剰輸送抑制制御停止手段と、前記水分小過剰輸送抑制制御停止手段の後に、前記燃料ガス制御手段を行う水分輸送促進制御作動手段Dと、前記判定手段A及びCの少なくともいずれか一方によって、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分量が不足していると判定された後に、前記燃料ガス制御手段をいずれも停止する水分輸送促進制御停止手段Dと、前記水分輸送促進制御停止手段Dの後に、前記酸化剤ガス制御手段を行う水分輸送抑制制御作動手段Dと、前記水分輸送抑制制御作動手段Dの後に、前記判定手段B及びDの少なくともいずれか一方によって、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分量が過剰であるか否かを判定し、水分量過剰の場合に再度前記水分輸送促進制御作動手段Dから行い、水分量過剰でない場合に前記酸化剤ガス制御手段を停止し、前記燃料電池の運転を継続する水分輸送抑制制御停止手段Dを備えるという構成をとることができる。
【0140】
図11は、本発明の燃料電池の運転方法を具体化するための、好適な燃料電池システムの第八の典型例の作動工程を示したフローチャートである。
いま、燃料電池システムが高負荷連続運転中であるとする。当該運転中、10秒〜10分おきに、上述した水温計測手段によって冷却水温Tの計測を行う。この際、測定された水温Tが設定値T以下であれば運転を続行し、水温Tが設定値Tを超える値であれば、酸化剤ガス流量制御手段、及び酸化剤ガス圧力制御手段の少なくともいずれか一方を行う(水分小過剰輸送抑制制御作動手段)。当該作動手段は、判定手段B(電圧測定)によって酸化剤ガス流路出口近傍の水分量が過剰であると判定されるまで1回以上行い、当該判定によって停止する(水分小過剰輸送抑制制御停止手段)。
すなわち、ここまでの作動工程は、前半の水温計測手段によって燃料電池内における何らかの異常を検知した後、その異常が酸化剤ガス流路のどの部位の異常かを判断すること無く、酸化剤ガス流路出口近傍から燃料ガス流路を経由した酸化剤ガス流路入口近傍への水分の輸送を小過剰分だけ抑制することにより、酸化剤ガス流路出口近傍の水分量を一時的に過剰状態としている。
【0141】
前記水分小過剰輸送抑制制御停止手段の後に、燃料ガス流量制御手段、及び燃料ガス圧力制御手段の少なくともいずれか一方を行う(水分輸送促進制御作動手段D)。当該作動手段Dは、判定手段A(抵抗測定)によって酸化剤ガス流路出口近傍の水分量が不足していると判定されるまで1回以上行い、当該判定によって停止する(水分輸送促進制御停止手段D)。
次に、酸化剤ガス流量制御手段、及び酸化剤ガス圧力制御手段の少なくともいずれか一方を行う(水分輸送抑制制御作動手段D)。最後に、判定手段B(電圧測定)により酸化剤ガス流路出口近傍の水分量が過剰であるか否かを判定し、水分量過剰の場合に再度前記水分輸送促進制御作動手段Dから行い、水分量過剰でない場合に燃料電池の運転を継続する。
【0142】
このような構成の燃料電池システムは、初めに前記水分小過剰輸送抑制制御作動手段によってあえて前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分量を適度に過剰にし、その後に前記水分輸送促進制御作動手段Dによって前記酸化剤ガス流路出口近傍から入口近傍への水分の輸送を促進した後に、さらに前記水分輸送抑制制御作動手段Dによって前記酸化剤ガス流路出口近傍の前記水分量を増加させることで、前記酸化剤ガス流路入口近傍及び出口近傍のいずれの水分量も過不足ない、適度な量に保つことができる。また、本発明の燃料電池システムは、一度乾燥させてしまうと元の性能を保持できなくなるような電解質膜(例えば、パーフルオロカーボンスルホン酸電解質膜等)を有する燃料電池を有する場合において、前記電解質膜に乾燥履歴を与えることがないため特に有効である。
【0143】
同様の観点から、本発明の燃料電池の運転方法の一形態としては、酸化剤ガスのストイキ比を1.0〜3.0の範囲にまで減少させるか、及び、酸化剤ガス圧力を、大気圧以上、0.3MPa以下の範囲にまで増加させるかの少なくともいずれか一方を一回以上行い、その後に、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分量が過剰であると判定した後に、前記酸化剤ガスの制御を停止し、その後に、燃料ガスのストイキ比を1.0〜10の範囲にまで増加させるか、燃料ガス圧力を大気圧以上、0.3MPa以下の範囲にまで減少させるかの少なくともいずれか一方を一回以上行い、その後に、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分量が不足していると判定した後に、前記燃料ガスの制御を停止し、その後に、酸化剤ガスのストイキ比を1.0〜3.0の範囲にまで減少させるか、及び、酸化剤ガス圧力を、大気圧以上、0.3MPa以下の範囲にまで増加させるかの少なくともいずれか一方を行い、さらにその後に、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分量が過剰であると判定した場合に、再度前記燃料ガスの制御から行い、水分量が過剰ではないと判定した場合に、前記酸化剤ガス制御を停止し、前記燃料電池の運転を継続するという構成をとることができる。
【0144】
本発明の燃料電池の運転方法、及び当該運転方法を具体化するための好適な燃料電池システムは、酸化剤ガス流路出口近傍の水分が、高分子電解質膜を透過して燃料ガス流路入口近傍へ輸送された後、燃料ガスに含まれた水分をより多く燃料ガス流路出口近傍に輸送することで、燃料ガス流路出口近傍からより多くの水分を、高分子電解質膜を通じて酸化剤ガス流路入口近傍へ輸送することができ、従来技術では乾燥し易い酸化剤ガス流路入口近傍及び湿潤し易い酸化剤ガス流路出口近傍の水分量を調整し、無加湿条件又は高温条件の、少なくともいずれか一方の条件の下にありながら、単セルの面内水分量分布の発生を防止することができる。また本発明の燃料電池システムは、判定手段を有することにより、酸化剤ガス流路入口近傍の水分量不足を的確に把握することができる。
【0145】
本発明の好ましい燃料電池の運転方法、及び当該運転方法を具体化するための好適な燃料電池システムによれば、酸化剤ガス流路出口近傍の水分が、高分子電解質膜を透過して燃料ガス流路入口近傍へ輸送された後、燃料ガスに含まれた水分をより多く燃料ガス流路出口近傍に輸送することで、燃料ガス流路出口近傍からより多くの水分を、高分子電解質膜を通じて酸化剤ガス流路入口近傍へ輸送することができ、従来技術では乾燥し易い酸化剤ガス流路入口近傍及び湿潤し易い酸化剤ガス流路出口近傍の水分量を調整し、無加湿条件及び高温条件の、少なくともいずれか一方の条件の下にありながら、単セルの面内水分量分布の発生を防止することができる。また本発明によれば、本発明の燃料電池システム外へ排出される、酸化剤ガスが持ち去る水分をより少なく抑えることで、前記酸化剤ガス流路出口近傍に水分を蓄えることができる。さらに本発明の燃料電池システムによれば、判定手段を有することにより、酸化剤ガス流路入口近傍及び出口近傍の水分量不足及び水分量過剰を的確に把握することができる。
【実施例】
【0146】
1.燃料ガス供給量変化に伴う発電性能、露天湿度及び圧損測定
上述した膜・電極接合体を有し、且つ、燃料ガス流路と酸化剤ガス流路が、燃料ガス(水素ガス)と酸化剤ガス(空気)の流れ方向が互いに対向するようにそれぞれ配置された単セルに関して、燃料ガスとして用いた水素ガスのストイキ比の変化に対する、セル電圧E(V)、セル抵抗R(mΩ・cm)、アノード出口露天湿度(%)、カソード出口露天湿度(%)、水素ガス圧損(kPa)、空気圧損(kPa)の変化について、それぞれ測定した。詳細な実験条件は以下の通りである。
【0147】
電流密度:1.0A/cm
冷却水出口温度:80℃
水素ガス流量:ストイキ比1.2〜6.0まで徐々に増加させて計測
空気流量:ストイキ比1.3、1.5、1.6のそれぞれについて計測
ガス圧力:水素ガス、空気共に200kPa・Abs
ガス流路入口加湿:水素ガス流路、空気流路共に無加湿
【0148】
図12は水素ガスのストイキ比の変化に伴うセル電圧変化を、図13はセル抵抗変化を、それぞれ示したグラフである。グラフ上の白丸が空気ストイキ比1.3の時の、白四角が空気ストイキ比1.5の時の、白三角が空気ストイキ比1.6の時のデータをそれぞれ示している。
図12に示されるように、空気ストイキ比1.3、1.5、1.6の時のいずれも、水素ガスのストイキ比が2.5付近で、セル電圧が極大値を有する。また、図13に示されるように、空気ストイキ比1.5、1.6の時のいずれも、水素ガスのストイキ比が2.5付近で、セル抵抗が極小値を有する。
【0149】
図14は水素ガスのストイキ比の変化に伴うアノード出口露天湿度変化を、図15はカソード出口露天湿度変化を、それぞれ示したグラフである。グラフ上の白丸、白四角及び白三角は図12及び図13と同様のものを示す。燃料ガス流路出口から排出されるアノード排水は、その一部が電解質膜を透過することによって、電解質膜を挟んで反対側の酸化剤ガス流路の入口に輸送されるため、アノード出口露天湿度を調べることにより、酸化剤ガス流路入口の水分量を知ることができる。また、カソード出口露天湿度を調べることにより、酸化剤ガス流路出口の水分量を知ることができる。
図14に示されるように、空気ストイキ比1.5、1.6の時のいずれも、水素ガスのストイキ比が2.5付近で、アノード出口露天湿度が極大値を有する。なお、空気ストイキ比が1.3の時(白丸)は、水素ガスストイキ比を増加させても、アノード出口露天湿度は飽和したまま、高加湿を維持し続けている。また、図15に示されるように、空気ストイキ比1.3、1.5、1.6の時のいずれも、水素ガスのストイキ比が2.5付近で、ほぼ単調減少であるカソード出口露天湿度のグラフの変曲点が存在する。
【0150】
図16は水素ガスのストイキ比の変化に伴う水素ガス圧損変化を示したグラフである。なお、この時の空気ストイキ比は1.5である。この図から、水素ガス圧損は、水素ガスのストイキ比に比例して増加していることが分かる。
【0151】
図17は水素ガスのストイキ比の変化に伴う空気圧損変化を示したグラフである。なお、この時の空気ストイキ比は1.6である。この図から、空気圧損は、上述した様な電圧、抵抗が最大値を有する水素ガスストイキ比2.5付近で急激に減少することが分かる。
【0152】
2.燃料ガス供給量が発電性能及び単セルの面内水分量分布にもたらす影響の考察
上述した発電性能測定より、水素ガスのストイキ比が2.5付近でセル電圧が極大値を示し、前記比が2.5付近でセル抵抗が極小値を示していることから、前記比が1.5〜3.0の範囲において、発電性能が最も高くなることが分かる。
また上述した露天湿度測定より、水素ガスのストイキ比が2.5付近でアノード出口露天湿度のグラフの極大値が存在し、前記比が2.5付近でカソード出口露天湿度のグラフの変曲点が存在することから、前記比が1.0〜4.0の範囲において、燃料ガス流路から酸化剤ガス流路へ電解質膜を透過する水分量の増加率が最も高くなることが分かる。
さらに、上述した圧損測定より、空気圧損は、上述した様な電圧、抵抗が最大値を有する水素ガスストイキ比2.5付近で急激に減少することが分かる。
したがって、燃料ガス供給量が発電性能、単セルの面内水分量分布及びガス圧損にもたらす影響に関して、以下の考察を導くことができる。
【0153】
水素ガスのストイキ比が1.0未満であると、水素ガスが輸送する水分量が減少することによって、図2に示したような水の循環が途切れ、単セルの面内水分量分布が生じ、発電性能低下につながる。さらに、前記水分量分布により、局部的に酸化剤ガス流路の詰まりが発生するため空気ガス圧損が高くなる。
また、水素ガスのストイキ比が4.0を超えると、水素ガスが輸送する水分量が必要以上に増加することによって、燃料ガス流路入口における電解質膜が乾燥し、結果的に酸化剤ガス流路出口から燃料ガス流路入口へ電解質膜を透過する水分量が低下し、発電性能低下につながる。さらに、前記水分量低下により、酸化剤ガス流路中が乾燥するため空気ガス圧損が低くなる。
【0154】
3.まとめ
本実施例の燃料ガス供給量変化に伴う発電性能、露天湿度及び圧損測定を行うことによって、燃料ガスの一種である水素ガスのストイキ比が1.0〜4.0の範囲において、電解質膜を乾燥させてしまうことなく、酸化剤ガス流路入口近傍の水分量を増加させることができ、発電性能の低下を抑制することができることが明らかとなった。
【図面の簡単な説明】
【0155】
【図1】本発明の燃料電池システム中の単セルを積層方向に切断した断面模式図である。
【図2】本発明の燃料電池システムにおける単セルの水の循環について示した断面模式図である。
【図3】本発明の燃料電池の運転方法を具体化するための、好適な燃料電池システムの典型例を示した模式図である。
【図4】本発明の燃料電池の運転方法を具体化するための、好適な燃料電池システムの典型例の作動工程を示したフローチャートである。
【図5】本発明の燃料電池の運転方法を具体化するための、好適な燃料電池システムの第二の典型例の作動工程を示したフローチャートである。
【図6】本発明の燃料電池の運転方法を具体化するための、好適な燃料電池システムの第三の典型例の作動工程を示したフローチャートである。
【図7】本発明の燃料電池の運転方法を具体化するための、好適な燃料電池システムの第四の典型例の作動工程を示したフローチャートである。
【図8】本発明の燃料電池の運転方法を具体化するための、好適な燃料電池システムの第五の典型例の作動工程を示したフローチャートである。
【図9】本発明の燃料電池の運転方法を具体化するための、好適な燃料電池システムの第六の典型例の作動工程を示したフローチャートである。
【図10】本発明の燃料電池の運転方法を具体化するための、好適な燃料電池システムの第七の典型例の作動工程を示したフローチャートである。
【図11】本発明の燃料電池の運転方法を具体化するための、好適な燃料電池システムの第八の典型例の作動工程を示したフローチャートである。
【図12】水素ガスのストイキ比の変化に伴うセル電圧変化を示したグラフである。
【図13】水素ガスのストイキ比の変化に伴うセル抵抗変化を示したグラフである。
【図14】水素ガスのストイキ比の変化に伴うアノード出口露天湿度変化を示したグラフである。
【図15】水素ガスのストイキ比の変化に伴うカソード出口露天湿度変化を示したグラフである。
【図16】水素ガスのストイキ比の変化に伴う水素ガス圧損変化を示したグラフである。
【図17】水素ガスのストイキ比の変化に伴う空気圧損変化を示したグラフである。
【符号の説明】
【0156】
1…固体高分子電解質膜
2…カソード触媒層
3…アノード触媒層
4,5…ガス拡散層
6…カソード電極
7…アノード電極
8…膜・電極接合体
9,10…セパレータ
11…酸化剤ガス流路
11a…酸化剤ガス流路入口
11b…酸化剤ガス流路出口
12…燃料ガス流路
12a…燃料ガス流路入口
12b…燃料ガス流路出口
21,22…水分の移動方向を示す矢印
100…単セル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子電解質膜を一対の電極で挟持した膜・電極接合体を有する単セルを有するスタックを有する燃料電池を備え、当該燃料電池に燃料ガス及び酸化剤ガスを供給し、無加湿条件か、又は、膜・電極接合体の温度を70℃以上とする高温条件の、少なくともいずれか一方の条件下で運転される燃料電池システムであって、
前記燃料電池は、前記膜・電極接合体の一面側に燃料ガス流路を、他面側に酸化剤ガス流路を有し、さらに、前記燃料ガス流路と前記酸化剤ガス流路が、燃料ガスと酸化剤ガスの流れ方向が互いに対向するようにそれぞれ配置され、且つ、
前記酸化剤ガス流路入口近傍の水分量の判定手段と、
前記判定手段において前記酸化剤ガス流路入口近傍の水分量が不足していると判定された場合に、燃料ガス流量を増加させるか、又は燃料ガス圧力を減少させるかの少なくともいずれか一方の操作によって、前記酸化剤ガス流路入口近傍の水分量を増加させる燃料ガス制御手段を備えることを特徴とする、燃料電池システム。
【請求項2】
高分子電解質膜を一対の電極で挟持した膜・電極接合体を有する単セルを有するスタックを有する燃料電池を備え、当該燃料電池に燃料ガス及び酸化剤ガスを供給し、無加湿条件及び膜・電極接合体の温度を70℃以上とする高温条件の、少なくともいずれか一方の条件下で運転される燃料電池システムであって、
前記燃料電池は、前記膜・電極接合体の一面側に燃料ガス流路を、他面側に酸化剤ガス流路を有し、さらに、前記燃料ガス流路と前記酸化剤ガス流路が、燃料ガスと酸化剤ガスの流れ方向が互いに対向するようにそれぞれ配置され、且つ、
前記酸化剤ガス流路入口近傍及び出口近傍の少なくともいずれか一方の水分量の判定手段と、
前記判定手段において前記酸化剤ガス流路入口近傍の水分量が不足しているか、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分量が過剰であるかの少なくともいずれか一方と判定された場合に、燃料ガス流量を増加させるか、燃料ガス圧力を減少させるかの少なくともいずれか一方の操作によって、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分の、前記燃料ガス流路を経由した前記酸化剤ガス流路入口近傍への輸送を促進することにより、前記酸化剤ガス流路入口近傍の水分量を増加させ、且つ、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分量を減少させる燃料ガス制御手段、並びに、
前記判定手段において前記酸化剤ガス流路入口近傍の水分量が過剰であるか、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分量が不足しているかの少なくともいずれか一方と判定された場合に、酸化剤ガス流量を減少させるか、酸化剤ガス圧力を増加させるかの少なくともいずれか一方の操作によって、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分の、前記燃料ガス流路を経由した前記酸化剤ガス流路入口近傍への輸送を抑制することにより、前記酸化剤ガス流路入口近傍の水分量を減少させ、且つ、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分量を増加させる酸化剤ガス制御手段、の少なくともいずれか一方を備える、請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記判定手段が、燃料電池全体の抵抗値を測定し、当該抵抗値が、予め計測した各温度における前記単セル及び前記スタックの少なくとも一方の抵抗の最低値の105%を超える値であった時に、前記酸化剤ガス流路入口近傍の水分量が不足しているか、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分量が不足しているかの少なくともいずれか一方と判定する判定手段Aである、請求項1又は2に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記判定手段が、燃料電池全体の電圧を測定し、当該電圧が、予め計測した各温度における前記単セル及び前記スタックの少なくとも一方の電圧の最高値の95%未満であった時に、前記酸化剤ガス流路入口近傍の水分量が過剰であるか、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分量が過剰であるかの少なくともいずれか一方と判定する判定手段Bである、請求項1又は2に記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記判定手段が、酸化剤ガス流路を流通する酸化剤ガスの圧損を測定し、当該圧損が、予め計測した酸化剤ガス流路を流通する酸化剤ガスの圧損の最低値の105%未満であった時に、前記酸化剤ガス流路入口近傍の水分量が不足しているか、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分量が不足しているかの少なくともいずれか一方と判定する判定手段Cである、請求項1又は2に記載の燃料電池システム。
【請求項6】
前記判定手段が、酸化剤ガス流路を流通する酸化剤ガスの圧損を測定し、当該圧損が、予め計測した酸化剤ガス流路を流通する酸化剤ガスの圧損の最高値の105%を超える値であった時に、前記酸化剤ガス流路入口近傍の水分量が過剰であるか、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分量が過剰であるかの少なくともいずれか一方と判定する判定手段Dである、請求項1又は2に記載の燃料電池システム。
【請求項7】
前記燃料ガス流路出口近傍に、さらに燃料ガス圧力調整弁を備える燃料電池システムであって、
前記燃料ガス制御手段が、前記燃料ガス圧力調整弁の調節によって燃料ガス圧力を減少させる燃料ガス圧力制御手段である、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の燃料電池システム。
【請求項8】
前記燃料ガス圧力制御手段が、燃料ガス圧力を、大気圧以上、0.3MPa以下の範囲にまで減少させるため、前記燃料ガス圧力調整弁を調節するものである、請求項7に記載の燃料電池システム。
【請求項9】
さらに酸化剤ガス供給装置を備える燃料電池システムであって、
前記酸化剤ガス制御手段が、前記酸化剤ガス供給装置の調節によって酸化剤ガス流量を減少させる酸化剤ガス流量制御手段である、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の燃料電池システム。
【請求項10】
前記酸化剤ガス流量制御手段が、酸化剤ガスのストイキ比を1.0〜3.0の範囲にまで減少させるため、前記酸化剤ガス供給装置を調節するものである、請求項9に記載の燃料電池システム。
【請求項11】
さらに燃料ガス供給装置を備える燃料電池システムであって、
前記燃料ガス制御手段が、前記燃料ガス供給装置の調節によって燃料ガス流量を増加させる燃料ガス流量制御手段である、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の燃料電池システム。
【請求項12】
前記燃料ガス流量制御手段が、燃料ガスのストイキ比を1.0〜10の範囲にまで増加させるため、前記燃料ガス供給装置を調節するものである、請求項11に記載の燃料電池システム。
【請求項13】
前記酸化剤ガス流路出口近傍に、さらに酸化剤ガス圧力調整弁を備える燃料電池システムであって、
前記酸化剤ガス制御手段が、前記酸化剤ガス圧力調整弁の調節によって酸化剤ガス圧力を増加させる酸化剤ガス圧力制御手段である、請求項1乃至12のいずれか一項に記載の燃料電池システム。
【請求項14】
前記酸化剤ガス圧力制御手段が、酸化剤ガス圧力を、大気圧以上、0.3MPa以下の範囲にまで増加させるため、前記酸化剤ガス圧力調整弁を調節するものである、請求項13に記載の燃料電池システム。
【請求項15】
前記燃料ガス制御手段及び前記酸化剤ガス制御手段をいずれも備え、
請求項3に記載の判定手段A及び請求項5に記載の判定手段Cの少なくともいずれか一方、並びに、請求項4に記載の判定手段B及び請求項6に記載の判定手段Dの少なくともいずれか一方を備え、
前記判定手段A及びCの少なくともいずれか一方によって前記酸化剤ガス流路入口近傍の水分量が不足していると判定された後に、前記燃料ガス制御手段を一回以上行う水分輸送促進制御作動手段Aと、
前記水分輸送促進制御作動手段Aの後に、前記判定手段A及びCの少なくともいずれか一方によって、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分量が不足していると判定された後に、前記燃料ガス制御手段を停止する水分輸送促進制御停止手段Aと、
前記水分輸送促進制御停止手段Aの後に、前記酸化剤ガス制御手段を一回以上行う水分輸送抑制制御作動手段Aと、
前記判定手段B及びDの少なくともいずれか一方によって、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分量が過剰であると判定された後に、前記酸化剤ガス制御手段をいずれも停止する水分輸送抑制制御停止手段Aと、
前記水分輸送抑制制御停止手段Aの後に、前記判定手段A及びCの少なくともいずれか一方によって前記酸化剤ガス流路入口近傍の水分量が不足であるか否かを判定し、水分量不足の場合に再度前記水分輸送促進制御作動手段Aから行い、水分量不足でない場合に前記燃料電池の運転を継続する水分量不足最終判定手段Aを備える、請求項1乃至14に記載の燃料電池システム。
【請求項16】
前記燃料ガス制御手段及び前記酸化剤ガス制御手段をいずれも備え、
請求項3に記載の判定手段A及び請求項5に記載の判定手段Cの少なくともいずれか一方、並びに、請求項4に記載の判定手段B及び請求項6に記載の判定手段Dの少なくともいずれか一方を備え、
前記判定手段A及びCの少なくともいずれか一方によって前記酸化剤ガス流路入口近傍の水分量が不足していると判定された後に、前記酸化剤ガス制御手段を一回以上行う水分輸送抑制制御作動手段Bと、
前記水分輸送抑制制御作動手段Bの後に、前記判定手段B及びDの少なくともいずれか一方によって、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分量が過剰であると判定された後に、前記酸化剤ガス制御手段を停止する水分輸送抑制制御停止手段Bと、
前記水分輸送抑制制御停止手段Bの後に、前記燃料ガス制御手段を一回以上行う水分輸送促進制御作動手段Bと、
前記判定手段A及びCの少なくともいずれか一方によって、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分量が不足していると判定された後に、前記燃料ガス制御手段をいずれも停止する水分輸送促進制御停止手段Bと、
前記水分輸送促進制御停止手段Bの後に、前記判定手段A及びCの少なくともいずれか一方によって前記酸化剤ガス流路入口近傍の水分量が不足であるか否かを判定し、水分量不足の場合に再度前記水分輸送抑制制御作動手段Bから行い、水分量不足でない場合に前記燃料電池の運転を継続する水分量不足最終判定手段Bを備える、請求項1乃至15に記載の燃料電池システム。
【請求項17】
前記燃料ガス制御手段及び前記酸化剤ガス制御手段をいずれも備え、
請求項3に記載の判定手段A及び請求項5に記載の判定手段Cの少なくともいずれか一方、並びに、請求項4に記載の判定手段B及び請求項6に記載の判定手段Dの少なくともいずれか一方を備え、
前記燃料ガス制御手段を一回以上行う水分小過剰輸送促進制御作動手段と、
前記水分小過剰輸送促進制御作動手段の後に、前記判定手段A及びCの少なくともいずれか一方によって、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分量が不足していると判定された後に、前記燃料ガス制御手段を停止する水分小過剰輸送促進制御停止手段と、
前記水分小過剰輸送促進制御停止手段の後に、前記酸化剤ガス制御手段を行う水分輸送抑制制御作動手段Cと、
前記判定手段B及びDの少なくともいずれか一方によって、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分量が過剰であると判定された後に、前記酸化剤ガス制御手段をいずれも停止する水分輸送抑制制御停止手段Cと、
前記水分輸送抑制制御停止手段Cの後に、前記燃料ガス制御手段を行う水分輸送促進制御作動手段Cと、
前記水分輸送促進制御作動手段Cの後に、前記判定手段A及びCの少なくともいずれか一方によって、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分量が不足であるか否かを判定し、水分量不足の場合に再度前記水分輸送抑制制御作動手段Cから行い、水分量不足でない場合に前記燃料ガス制御手段を停止し、前記燃料電池の運転を継続する水分輸送促進制御停止手段Cを備える、請求項1乃至16に記載の燃料電池システム。
【請求項18】
前記燃料ガス制御手段及び前記酸化剤ガス制御手段をいずれも備え、
請求項3に記載の判定手段A及び請求項5に記載の判定手段Cの少なくともいずれか一方、並びに、請求項4に記載の判定手段B及び請求項6に記載の判定手段Dの少なくともいずれか一方を備え、
前記酸化剤ガス制御手段を一回以上行う水分小過剰輸送抑制制御作動手段と、
前記水分小過剰輸送抑制制御作動手段の後に、前記判定手段B及びDの少なくともいずれか一方によって、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分量が過剰であると判定された後に、前記酸化剤ガス制御手段を停止する水分小過剰輸送抑制制御停止手段と、
前記水分小過剰輸送抑制制御停止手段の後に、前記燃料ガス制御手段を行う水分輸送促進制御作動手段Dと、
前記判定手段A及びCの少なくともいずれか一方によって、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分量が不足していると判定された後に、前記燃料ガス制御手段をいずれも停止する水分輸送促進制御停止手段Dと、
前記水分輸送促進制御停止手段Dの後に、前記酸化剤ガス制御手段を行う水分輸送抑制制御作動手段Dと、
前記水分輸送抑制制御作動手段Dの後に、前記判定手段B及びDの少なくともいずれか一方によって、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分量が過剰であるか否かを判定し、水分量過剰の場合に再度前記水分輸送促進制御作動手段Dから行い、水分量過剰でない場合に前記酸化剤ガス制御手段を停止し、前記燃料電池の運転を継続する水分輸送抑制制御停止手段Dを備える、請求項1乃至17に記載の燃料電池システム。
【請求項19】
高分子電解質膜を一対の電極で挟持した膜・電極接合体と、当該膜・電極接合体の一面側に設けられた酸化剤ガス流路と、他面側に設けられた燃料ガス流路とを備え、且つ、前記燃料ガス流路と前記酸化剤ガス流路が、燃料ガスと酸化剤ガスの流れ方向が互いに対向するようにそれぞれ配置された単セルを有するスタックを有する燃料電池の運転方法であって、
無加湿条件か、又は、膜・電極接合体の温度を70℃以上とする高温条件の、少なくともいずれか一方の条件下において、前記酸化剤ガス流路入口近傍の水分量が不足していると判定した場合に、燃料ガス流量を増加させるか、又は燃料ガス圧力を減少させるかの少なくともいずれか一方の操作によって、前記酸化剤ガス流路入口近傍の水分量を増加させることを特徴とする、燃料電池の運転方法。
【請求項20】
高分子電解質膜を一対の電極で挟持した膜・電極接合体と、当該膜・電極接合体の一面側に設けられた酸化剤ガス流路と、他面側に設けられた燃料ガス流路とを備え、且つ、前記燃料ガス流路と前記酸化剤ガス流路が、燃料ガスと酸化剤ガスの流れ方向が互いに対向するようにそれぞれ配置された単セルを有するスタックを有する燃料電池の運転方法であって、
無加湿条件及び膜・電極接合体の温度を70℃以上とする高温条件の、少なくともいずれか一方の条件下において、前記酸化剤ガス流路入口近傍の水分量が不足しているか、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分量が過剰であるかの少なくともいずれか一方と判定した場合に、燃料ガス流量を増加させるか、燃料ガス圧力を減少させるかの少なくともいずれか一方の操作によって、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分の、前記燃料ガス流路を経由した前記酸化剤ガス流路入口近傍への輸送を促進することにより、前記酸化剤ガス流路入口近傍の水分量を増加させ、且つ、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分量を減少させ、且つ、
無加湿条件及び膜・電極接合体の温度を70℃以上とする高温条件の、少なくともいずれか一方の条件下において、前記酸化剤ガス流路入口近傍の水分量が過剰であるか、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分量が不足しているかの少なくともいずれか一方と判定した場合に、酸化剤ガス流量を減少させるか、酸化剤ガス圧力を増加させるかの少なくともいずれか一方の操作によって、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分の、前記燃料ガス流路を経由した前記酸化剤ガス流路入口近傍への輸送を抑制することにより、前記酸化剤ガス流路入口近傍の水分量を減少させ、且つ、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分量を増加させる、請求項19に記載の燃料電池の運転方法。
【請求項21】
燃料電池全体の抵抗値を測定し、当該抵抗値が、予め計測した各温度における前記単セル又は前記スタックの少なくとも一方の抵抗の最低値の105%を超える値であった時に、前記酸化剤ガス流路入口近傍の水分量が不足しているか、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分量が不足しているかの少なくともいずれか一方と判定する、請求項19又は20に記載の燃料電池の運転方法。
【請求項22】
燃料電池全体の電圧を測定し、当該電圧が、予め計測した各温度における前記単セル又は前記スタックの少なくとも一方の電圧の最高値の95%未満であった時に、前記酸化剤ガス流路入口近傍の水分量が過剰であるか、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分量が過剰であるかの少なくともいずれか一方と判定する、請求項19又は20に記載の燃料電池の運転方法。
【請求項23】
酸化剤ガス流路を流通する酸化剤ガスの圧損を測定し、当該圧損が、予め計測した酸化剤ガス流路を流通する酸化剤ガスの圧損の最低値の105%未満であった時に、前記酸化剤ガス流路入口近傍の水分量が不足しているか、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分量が不足しているかの少なくともいずれか一方と判定する、請求項19又は20に記載の燃料電池の運転方法。
【請求項24】
酸化剤ガス流路を流通する酸化剤ガスの圧損を測定し、当該圧損が、予め計測した酸化剤ガス流路を流通する酸化剤ガスの圧損の最高値の105%を超える値であった時に、前記酸化剤ガス流路入口近傍の水分量が過剰であるか、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分量が過剰であるかの少なくともいずれか一方と判定する、請求項19又は20に記載の燃料電池の運転方法。
【請求項25】
燃料ガス圧力を、大気圧以上、0.3MPa以下の範囲にまで減少させる、請求項19乃至24のいずれか一項に記載の燃料電池の運転方法。
【請求項26】
酸化剤ガスのストイキ比を1.0〜3.0の範囲にまで減少させる、請求項19乃至25のいずれか一項に記載の燃料電池の運転方法。
【請求項27】
燃料ガスのストイキ比を1.0〜10の範囲にまで増加させる、請求項19乃至26のいずれか一項に記載の燃料電池の運転方法。
【請求項28】
酸化剤ガス圧力を、大気圧以上、0.3MPa以下の範囲にまで増加させる、請求項19乃至27のいずれか一項に記載の燃料電池の運転方法。
【請求項29】
前記酸化剤ガス流路入口近傍の水分量が不足していると判定した場合に、燃料ガスのストイキ比を1.0〜10の範囲にまで増加させるか、燃料ガス圧力を大気圧以上、0.3MPa以下の範囲にまで減少させるかの少なくともいずれか一方を一回以上行い、その後に、
前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分量が不足していると判定した後に、前記燃料ガスの制御を停止し、その後に、
酸化剤ガスのストイキ比を1.0〜3.0の範囲にまで減少させるか、及び、酸化剤ガス圧力を、大気圧以上、0.3MPa以下の範囲にまで増加させるかの少なくともいずれか一方を一回以上行い、その後に、
前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分量が過剰であると判定した後に、前記酸化剤ガスの制御を停止し、
さらにその後に、前記酸化剤ガス流路入口近傍の水分量が不足していると判定した場合に、再度前記燃料ガスの制御から行い、水分量が不足していないと判定した場合に、前記燃料電池の運転を継続する、請求項19乃至28のいずれか一項に記載の燃料電池の運転方法。
【請求項30】
前記酸化剤ガス流路入口近傍の水分量が不足していると判定した場合に、酸化剤ガスのストイキ比を1.0〜3.0の範囲にまで減少させるか、及び、酸化剤ガス圧力を、大気圧以上、0.3MPa以下の範囲にまで増加させるかの少なくともいずれか一方を一回以上行い、その後に、
前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分量が過剰であると判定した後に、前記酸化剤ガスの制御を停止し、その後に、
燃料ガスのストイキ比を1.0〜10の範囲にまで増加させるか、及び、燃料ガス圧力を、大気圧以上、0.3MPa以下の範囲にまで減少させるかの少なくともいずれか一方を一回以上行い、その後に、
前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分量が不足していると判定した後に、前記燃料ガスの制御を停止し、
さらにその後に、前記酸化剤ガス流路入口近傍の水分量が不足していると判定した場合に、再度前記酸化剤ガスの制御から行い、水分量が不足していないと判定した場合に、前記燃料電池の運転を継続する、請求項19乃至29のいずれか一項に記載の燃料電池の運転方法。
【請求項31】
燃料ガスのストイキ比を1.0〜10の範囲にまで増加させるか、燃料ガス圧力を大気圧以上、0.3MPa以下の範囲にまで減少させるかの少なくともいずれか一方を一回以上行い、その後に、
前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分量が不足していると判定した後に、前記燃料ガスの制御を停止し、その後に、
酸化剤ガスのストイキ比を1.0〜3.0の範囲にまで減少させるか、及び、酸化剤ガス圧力を、大気圧以上、0.3MPa以下の範囲にまで増加させるかの少なくともいずれか一方を一回以上行い、その後に、
前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分量が過剰であると判定した後に、前記酸化剤ガスの制御を停止し、その後に、
燃料ガスのストイキ比を1.0〜10の範囲にまで増加させるか、及び、燃料ガス圧力を、大気圧以上、0.3MPa以下の範囲にまで減少させるかの少なくともいずれか一方を行い、
さらにその後に、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分量が不足していると判定した場合に、再度前記酸化剤ガスの制御から行い、水分量が不足していないと判定した場合に、前記燃料ガス制御を停止し、前記燃料電池の運転を継続する、請求項19乃至30のいずれか一項に記載の燃料電池の運転方法。
【請求項32】
酸化剤ガスのストイキ比を1.0〜3.0の範囲にまで減少させるか、及び、酸化剤ガス圧力を、大気圧以上、0.3MPa以下の範囲にまで増加させるかの少なくともいずれか一方を一回以上行い、その後に、
前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分量が過剰であると判定した後に、前記酸化剤ガスの制御を停止し、その後に、
燃料ガスのストイキ比を1.0〜10の範囲にまで増加させるか、燃料ガス圧力を大気圧以上、0.3MPa以下の範囲にまで減少させるかの少なくともいずれか一方を一回以上行い、その後に、
前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分量が不足していると判定した後に、前記燃料ガスの制御を停止し、その後に、
酸化剤ガスのストイキ比を1.0〜3.0の範囲にまで減少させるか、及び、酸化剤ガス圧力を、大気圧以上、0.3MPa以下の範囲にまで増加させるかの少なくともいずれか一方を行い、
さらにその後に、前記酸化剤ガス流路出口近傍の水分量が過剰であると判定した場合に、再度前記燃料ガスの制御から行い、水分量が過剰ではないと判定した場合に、前記酸化剤ガス制御を停止し、前記燃料電池の運転を継続する、請求項19乃至31のいずれか一項に記載の燃料電池の運転方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate


【公開番号】特開2009−259758(P2009−259758A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−171365(P2008−171365)
【出願日】平成20年6月30日(2008.6.30)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】