説明

燃料電池システム

【課題】フラッディングによるカソードの酸素拡散能の低下を抑制して、安定した出力を長期間維持する燃料電池システムを提供する。
【解決手段】水とアルコールの混合溶液である燃料を酸化するアノード、酸化剤含有ガスを還元するカソード、およびアノードとカソードの間に挟持される固体高分子電解質膜とから構成される発電部と、アノードに燃料を供給する燃料供給部と、カソードに酸化剤含有ガスを供給する酸化剤含有ガス供給部と、酸化剤含有ガス供給部とカソードの間に介挿され、酸化剤含有ガスを加湿する酸化剤含有ガス加湿部と、アノードとカソードの間の電圧を測定する電圧測定部と、電圧測定部から得られる情報に基づきカソードに供給する酸化剤含有ガスの湿度を調整する第1の制御部と、を有することを特徴とする燃料電池システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムに関し、特に固体高分子型燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、携帯機器の用途の拡大に伴って燃料電池の開発が盛んに行われている。特に携帯機器向け燃料電池において、メタノールを直接セルに供給する直接メタノール型燃料電池(DMFC)の開発が、携帯機器、特に携帯電話・ノートPC等の電源用として研究・開発が行われている。
【0003】
燃料電池では単セルを複数直列に接続することで必要とされる出力を得ている。単セルの接続方法によって、スタック型と呼ばれる3次元的に積層するものと平面型と呼ばれる2次元的に配置するものとに分けることができる。スタック型は発電によって生じる熱を有効に利用して高出力が得られる反面、携帯機器としては体積的にコンパクトにできない問題点がある。平面型は体積的にコンパクトにでき、かつ、空気の配流において補機の使用を抑えることができる等の利点があり、携帯機器向けに鋭意研究がなされている。
【0004】
一般に、現在開発されているDMFCにおいては、単セルは触媒層を塗布したカーボン多孔質板からなる電極部材を固体高分子プロトン導電膜(たとえばDupont社製Nafion膜(登録商標)等)に加熱・圧着等によって接着して製造されている。
【0005】
アノード極、カソード極には、それぞれPt−Ru系合金触媒、Pt系触媒が使用され、特にDMFCにおいては高い出力を得るために多量の触媒が使用されている。
【0006】
DMFCにおいては、燃料を直接セルに供給して発電を行うため、水素や他の燃料を用いる燃料電池と比べ、携帯性・安全性に優れた燃料電池として注目されている。
【0007】
ところが、DMFCは、長期間継続して発電すると発電出力(電圧)が経時的に低下する現象が起こってしまう問題があった。この出力が低下する原因としては、アノード、カソード触媒の活性低下、電解質膜の劣化、アノード・カソードでの燃料・酸素の拡散能の低下など挙げられていて、発電条件によって劣化原因が異なることも分かっている。
【0008】
このように、燃料電池システムの出力を低下させる因子の中で、カソードに水が滞留することによりカソードの酸素拡散能の低下する現象は、通称カソードのフラッディングとして知られている。
【0009】
特に、DMFCの様に液体燃料を直接アノードに供給して発電する燃料電池の場合には、液体燃料中の水分が過剰にセルに残存してしまう傾向にある。この過剰な水は電解質膜の乾燥によるプロトン導電率の低下を抑制する面では優れているが、カソードのフラッディングによる発電特性劣化の原因になっている。
【0010】
このように、カソードのフラッディングによる出力低下はDMFCの出力低下の大部分を占めるため、これを回避することによる発電出力の安定化を確立する手法が技術的に求められている。
【0011】
一方、過剰に水が供給されない様に燃料供給を制御していても発電中の発電用セル(以下セルと略す)の状態によっては、セル内の残存水量が低下する場合がある。セル内の残存水量が低下すると電解質膜の中の水が欠乏し、セル抵抗の増加が起こり、結果として出力低下の原因となる。
【0012】
このように燃料電池システムの水を管理する手法として特許文献1がある。
【特許文献1】特開2001−143732公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
特許文献1に示す手法は、システム内の湿度を監視しながらカソードに供給する空気中の水分を制御するものである。しかし、特許文献1は水素を燃料に用いた燃料電池に使用したもので、例えばメタノールと水の混合溶液を燃料として用いる本発明のようなDMFCにおいては、セル電圧はメタノールクロスオーバ量、セル温度、フラッディングによって影響を受ける。すなわち特許文献1は空気供給時の湿度をコントロールしているものではないため、DMFCには不適切な制御である。
【0014】
本発明は係る問題点を解決するためになされたものであり、燃料電池システムの発電部の電圧を監視しながら、カソードに供給する酸化剤含有ガス中(例えば空気)の湿度を制御することにより、カソードに過剰な水が滞留しないようにすることで、フラッディングによるカソードの酸素拡散能の低下を抑制して、安定した出力を長期間維持する燃料電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係る燃料電池システムは、水とアルコールの混合溶液である燃料を酸化するアノード、酸化剤含有ガスを還元するカソード、およびアノードとカソードの間に挟持される固体高分子電解質膜とから構成される発電部と、アノードに燃料を供給する燃料供給部と、カソードに酸化剤含有ガスを供給する酸化剤含有ガス供給部と、酸化剤含有ガス供給部とカソードの間に介挿され、酸化剤含有ガスを加湿する酸化剤含有ガス加湿部と、アノードとカソードの間の電圧を測定する電圧測定部と、電圧測定部から得られる情報に基づきカソードに供給する酸化剤含有ガスの湿度を調整する制御部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、フラッディングによるカソードの酸素拡散能の低下を抑制して、安定した出力を長期間維持する燃料電池システムを提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0018】
また、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに限定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0019】
〔第1の実施の形態〕
以下、本発明の第1の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明においては、燃料にメタノール水溶液を用いた直接メタノール型の燃料電池システム(DMFC)を一例として説明する。
【0020】
図1は第1の実施の形態に係る燃料電池システムの構成を示したものである。
【0021】
図1に示した、第1の実施の形態に係る燃料電池システム10は、過剰な水がセル内に残存しないように燃料供給部42の制御および膜電極複合体(MEA)の構造の最適化を行うことで、まず、過剰な水が発電部4に供給されないように燃料供給部42、および酸化剤含有ガス供給部52、酸化剤含有ガス加湿部53を制御させて燃料電池システム10を駆動するものである。
【0022】
セルに供給される燃料41(水およびメタノール)量は燃料供給の制御やMEAの形状によって変更が可能である。DMFCの発電の際にアノード反応で使用される燃料41は、水:メタノール=1:1(mol比)である。しかしながら、アノードで生成するプロトンがカソードに移動する際に同伴水として3個程度の水が移動する。そのため、DMFCにおいては、セルに実際に供給される水/メタノール比(モル比)は1ではなく、燃料制御やMEAの構造により1〜19程度まで変化する。上記で述べた過剰の水とは、プロトンに同伴して移動する水のことで、これを極力減らすようにする。
【0023】
たとえば、燃料供給においては、通常(1〜2mol/L)よりもメタノール濃度の高い水溶液(3〜10mol/L)のメタノール水溶液を用い、かつ、単位時間当たりの燃料41の供給量を落として供給したり、MEAの構造においては、アノード2に撥水性の高いカーボン多孔板を使用したり、アノード触媒層21とアノード多孔板(後述するアノードガス拡散層22)の間にMPL層(Micro Porous Layer)を介在させるなどして、アノード2での反応に不要な水がセル内に入るのを防ぐ。
【0024】
本発明の実施の形態に係る燃料電池システムは、燃料41を酸化するアノード2、酸化剤含有ガス51を還元するカソード3、およびアノード2とカソード3の間に挟持される(固体高分子)電解質膜1とから構成される発電部4と、アノード2に燃料41を供給する燃料供給部42と、カソード3に酸化剤含有ガス51を供給する酸化剤含有ガス供給部52と、酸化剤含有ガス供給部52とカソード3の間に介挿され、酸化剤含有ガス51を加湿する酸化剤含有ガス加湿部53と、アノード2とカソード3の間の電圧を測定する電圧測定部6と、電圧測定部6から得られる情報に基づきカソード3に供給する酸化剤含有ガス51の湿度を調整する制御部7と、を有する。
【0025】
以下、図2を参照しながら説明する。
【0026】
(発電部)
発電部4は、アノード2とカソード3に挟持された電解質膜1を有する。
【0027】
(電解質膜)
直接メタノール型の燃料電池システム(DMFC)の場合、電解質膜1には、例えばDupont社のNafion膜(登録商標)を用いることができる。電解質膜1はアノード2の触媒層21(以下アノード触媒層21とする)で生成したプロトン(H)をカソード3の触媒層(以下、カソード触媒層31とする)へ移送する媒体として機能する。
【0028】
(アノード触媒層・カソード触媒層)
この電解質膜1の両側にはアノード触媒層21及びカソード触媒層31が配置される。メタノール水溶液を燃料41とする場合、アノード触媒層21には、例えばPt−Ru触媒を用いることができる。また、カソード触媒層31にはPt触媒等の貴金属触媒を用いることができる。
【0029】
アノード触媒層21はPt−Ru触媒をパーフルオルスルホン酸樹脂溶液(ナフィオン溶液(商標))、水、及びエチレングリコールと混合して分散させた後、電解質膜上にスプレー法によって塗布することで作製することができる。
【0030】
また、カソード触媒31はPt触媒をパーフルオルスルホン酸樹脂溶液(ナフィオン溶液(商標))、水、及びエチレングリコールと混合して分散させた後、電解質膜上にスプレー法によって塗布することで作製することができる。
【0031】
(アノードガス拡散層、カソードガス拡散層)
アノード触媒層21及びカソード触媒層31の、電解質膜1とは反対側にそれぞれ配置されたアノードガス拡散層22及びカソードガス拡散層32が配置される。アノードガス拡散層22およびカソードガス拡散層32にはカーボンペーパー、カーボンクロスもしくはカーボン不織布等を用いることができる。それぞれのガス拡散層には主としてカーボン粉末とPTFEから成るカーボン緻密撥水層(マイクロポーラスレイヤー:MPL)を設けても良い。
【0032】
アノードガス拡散層22はアノード触媒層21への燃料供給、生成物排出、集電を円滑に行う機能を提供する。カソードガス拡散層32はカソード触媒層31への空気供給、生成物排出、集電を円滑に行う機能を提供する。
【0033】
これらアノードガス拡散層22、アノード触媒層21、電解質膜1、カソード触媒層31、カソードガス拡散層32を順に積層した構造体を膜電極複合体(MEA)5と称することが多い。
【0034】
(膜電極複合体のスタック方法)
膜電極複合体5は、例えば、アノード触媒層21及びカソード触媒層31が両面に塗布された電解質膜1と、アノードガス拡散層22及びカソードガス拡散層32とを接合して作製される。あるいは、電解質膜1と、アノード触媒層21が塗布されたアノードガス拡散層22及びカソード触媒層31が塗布されたカソードガス拡散層32とを接合しても良い。それぞれ高い圧力で接合することにより、アノード触媒層21及びカソード触媒層31と接する界面の接触抵抗を低減することができる。
【0035】
なお、ここで「接合」とは、両者が予めプレス機等を用いて圧縮されることで一体化し、一の部材と他の部材の相対する一部が融着等により、簡単な工具を用いた程度では部材の変形を伴わずに分離することが困難な加工方法、またはその結果の状態を意味する。例えば、膜電極複合体5についてもこのことが当て嵌まる。膜電極複合体5として接合した後の部材は、もとの部材の厚みに比べて全面において厚みが薄くなっている。一方、後述する「接触」とは、両者が予め圧縮によって一体化されることなく、膜電極複合体5を分解した場合に容易に両者を容易に分離可能な状態を意味し、「接合」とは区別される。
【0036】
(アノード流路板)
アノードガス拡散層22のアノード触媒層21とは反対側に、アノード流路板23が配置される。アノード流路板23は燃料のアノード流路25(25a、25b、25c)を有する。アノード流路板23に設けられるアノード流路25は、例えば、サーペンタイン流路や、複数の流路が平行に走るパラレル流路とすることができる。
【0037】
アノード流路板23はアノード拡散層22を通じてアノード触媒層21へと燃料を供給する目的と、アノード反応(式1)により生じた生成物(CO等)を排出する目的のためにアノード流路25が設けられたものである。なお、アノード流路板23に導電性を有するカーボンなどを用いることによりアノード2の集電板の機能を併せて持たせることも可能である。
【数1】

【0038】
このように、アノード集電体から電解質膜1と境界までをアノード2とする。すなわち、本実施の形態においては、アノード流路板23、アノードガス拡散層22、アノード触媒層21がアノード2に相当する。
【0039】
(カソード流路板)
カソードガス拡散層32のカソード触媒層31とは反対側に、カソード流路板33が配置される。カソード流路板33は酸化剤含有ガスのカソード流路35(35a、35b、35c)を有する。カソード流路板33に設けられるカソード流路35は、例えば、サーペンタイン流路や、複数の流路が平行に走るパラレル流路とすることができる。
【0040】
カソード流路板33はカソードガス拡散層32を通じてカソード触媒層31へと酸化剤供給ガスを供給する目的と、カソード反応(式2)により生じた生成物(HO等)を排出する目的のためにカソード流路35が設けられたものである。なお、カソード流路板33に導電性を有するカーボンなどを用いることによりカソードの集電板の機能を併せて持たせることも可能である。
【数2】

【0041】
このように、カソード流路板33から電解質膜1と境界までをカソード3とする。すなわち、本実施の形態においては、カソード流路板33、カソードガス拡散層32、カソード触媒層31がカソード3に相当する。
(燃料供給部)
本実施の形態に係る燃料電池システムは、アノード2に燃料41を供給する燃料供給部42を有する。燃料供給部42は、燃料41が貯蔵された燃料容器43からアノード2のアノード流路25(25a〜25c)に燃料41を送る機能を有する。燃料供給部42には例えばポンプを用いることができる。燃料41には所定の濃度(例えば4mol−CHOH/L)に調整したメタノール水溶液を用いることができる。
【0042】
(酸化剤含有ガス供給部)
本実施の形態に係る燃料電池システムは、カソード3に酸化剤含有ガス51を供給する酸化剤含有ガス供給部52を有する。酸化剤含有ガス供給部52は、酸化剤含有ガス51、例えば酸素を含有した空気をカソード3のカソード流路35(35a〜35c)に送る機能を有する。酸化剤ガス供給部52には例えばポンプを用いることができる。あるいは、酸化剤含有ガスを加圧して貯蔵したボンベなどを用いることもできる。
【0043】
(酸化剤含有ガス加湿部)
本実施の形態に係る燃料電池システムは、酸化剤含有ガス供給部52とカソード3の間に介挿され、酸化剤含有ガス51を加湿する酸化剤含有ガス加湿部53を有する。酸化剤含有ガス加湿部53は、酸化剤含有ガス51の湿度を相対的に変化させる機能を有する。
【0044】
例えば、図1に示すように、切り替えバルブ54と水を貯蔵した容器55から構成することができる。水を貯蔵した容器55は、酸化剤含有ガス供給部52から送られてくる酸化剤含有ガス51により水がバブリングされ、酸化剤含有ガス51が加湿される機能を有する。酸化剤含有ガス51の湿度を相対的に変化させるには、切り替えバルブ54を切り替えることにより、酸化剤含有ガス51が水を貯蔵した容器55を経由する場合には相対的に湿度が高い状態に、経由しない場合には相対的に湿度が低い状態に、と適宜選択することにより実現することができる。
【0045】
もしくは適切な量の水を酸化剤含有ガス51の供給時に、酸化剤含有ガス51と共にカソード3に供給しても良い。容器55をバブリングさせて酸化剤含有ガス51を加湿して供給する場合は、この手段は有効である。なぜなら、容器55の内部の水温が60℃以下の場合には、バブリングしても十分な水を酸化剤含有ガスと共にカソード3に供給することが困難(水の水蒸気分圧が低いため)だからである。具体的には、海綿などの多孔質体に水を含ませ、この表面に酸素含有ガス51を通気させて加湿する方法や酸化剤含有ガス51の供給流路に少量の水をポンプ等で供給することで、酸化剤含有ガス51と水滴をセル内のカソード流路に直接供給する手法を適用することができる。
【0046】
(電圧測定部)
本実施の形態に係る燃料電池システムは、アノード2とカソード3の間の電圧を測定する電圧測定部6を有する。電圧測定部6は、発電部4が先に述べたようなアノード集電体とカソード集電板を用いる場合には、これらの間の電圧を公知の電圧測定手段を適用して測定することができる。
【0047】
また、本実施の形態に係る燃料電池システムは、発電部4の温度を測定する温度測定部8を有していてもよい。温度測定部8は、アノード2に熱電対を設置するなどの公知の温度測定手段を適用して測定することができる。
【0048】
(制御部)
本実施の形態に係る燃料電池システムは、電圧測定部6から得られる情報に基づきカソード3に供給する酸化剤含有ガス51の湿度を調整する制御部7を有する。電圧測定部6で得られる情報(電圧情報)は、信号線E4により、制御部7に送られる。
【0049】
図3に制御部7の構成を示す。制御部7は、外部入力部100、判定部110、調整部120、情報格納部130、演算処理部140を有する。
【0050】
(外部入力部)
外部入力部100は、電圧入力部101、温度入力部102を有する。電圧入力部101は電圧測定部6と信号線E4により接続されている。温度入力部102は温度測定部8と信号線E3により接続されている。
【0051】
(判定部)
判定部110は、電圧判定部111、温度判定部112を有する。電圧判定部111は信号線E4を介して電圧測定部6から得られる情報(電圧情報)に基づいて、酸化剤含有ガス加湿部53を通じて、酸化剤含有ガス51の湿度を相対的に変化させるか否かを判定する機能を有する。
【0052】
また、温度判定部112は、信号線E3を介して温度測定部8から得られる情報(温度情報)に基づいて、燃料供給部42を通じて、燃料41の単位時間当たりの供給量の増加、維持、減少について判定する機能を有する。
【0053】
(調整部)
調整部120は、湿度調整部121、燃料供給調整部122を有する。湿度調整部121は信号線E2を通じて酸化剤含有ガス加湿部53に接続されている。第1の形態においては切り替えバルブ54により酸化剤含有ガスの流路の切り替えを行い、酸化剤含有ガス51の湿度を調整する機能を有する。
【0054】
燃料供給調整部122は、信号線E1を通じて燃料供給部42に接続されている。第2の実施の形態においては前述した燃料供給部42(ポンプ)に接続され、単位時間当たりの燃料供給量を調整する機能を有する。
【0055】
(情報格納部)
情報格納部130は、電圧情報格納部131、温度情報格納部132を有する。上記判定部110で行う判定のために参照するための電圧情報、温度情報を格納する。情報格納部130にはハードディスクなどの記憶媒体を用いることができる。
【0056】
(演算処理部)
演算処理部140は、外部入力部100、判定部110、調整部120、情報格納部130の情報のやり取り、情報の演算処理や加工、情報格納部130への格納等を行う機能を有する。演算処理部140には電子計算機などのCPUを用いることができる。
【0057】
(燃料電池の機能)
次に図1に示した発電スタックの基本的な機能について説明する。まず、燃料41(メタノール水溶液)は燃料供給部42(ポンプ)を通じてアノード流路25へ供給され、アノードガス拡散層22を通してアノード触媒層21へ供給される。膜電極複合体5のアノード触媒層21においては上述したアノード反応(式1)が起こる。
【0058】
(式1)に基づき、アノード触媒層21で生成したプロトン(H)はアノード触媒層21から電解質膜1を通りカソード触媒層31へと流れる。電子(e)はアノードガス拡散層22、アノード流路板23、外部回路(図示省略)、カソード流路板33、カソードガス拡散層32を経由してカソード触媒層31へと運ばれる。アノード触媒層21で生成した二酸化炭素(CO)はアノードガス拡散層22、アノード流路25を通して外部へ排出される。
【0059】
酸化剤ガス手段52から供給される空気12により、プロトン及びエレクトロンは、カソード触媒層31において上述した(式2)に示すカソード反応で消費される。なお、図1において、酸化剤含有ガス51はカソード流路板33のカソード流路35、カソードガス拡散層32を介してカソード触媒層31へ供給される。
【0060】
一般に、カソード反応(式2)が起こる際、プロトンの移動と共にメタノール(CHOH)および水(HO)も電解質膜1を通過して移動する(前者をメタノールのクロスオーバー、後者を水のクロスオーバーと呼ぶ)。このうち、電解質膜1を透過したメタノールは酸化剤ガス供給部52から供給される空気51によりカソード触媒層31において(式3)に示す酸化反応を起こし、水が生成される。
【数3】

【0061】
また、カソード反応(式2)で生成した水、および透過した水の一部は電解質膜1を通してアノード触媒層21へ逆拡散する。残りの水は膜電極複合体5からカソード流路板33を通じて外部へと排出される。
【0062】
ここで、(式2)に示すカソード反応および(式3)に示す酸化反応により生成する水がカソード3から適切に排出されない場合、カソード3において水が滞留し、酸化剤含有ガス41がカソード触媒31に適切に供給されない状態となる。これが先に説明したカソードのフラッディングである。
【0063】
本発明に係る燃料電池システム10においては、燃料供給部42と酸化剤含有ガス加湿部53を有することにより、発電中に発電部4の中に残存する水分量を調整することができる。これによりカソード3に過剰の水が滞留することによって生じるカソード3のフラッディングによる出力の低下を抑制することが可能となる効果を有する。
【0064】
このフラッディングは制御部7において以下の制御を行うことにより、防止することができる。
【0065】
以下、図4を参照し、この手順について説明する。
【0066】
〔フラッディング〕
図4はカソード3のフラッディングを防止するための手順を示したプロセスフローである。なお、当然のことながら、カソード3のフラッディングは燃料電池システム10が設計範囲内にある所定の出力を行う時に生じるものであるので、燃料電池システム10は稼動状態にあるものとする。また、このとき、電圧測定部6により発電部4の電圧は常時測定され、信号線E4により制御部7に送られているものとする。なお、電圧測定部6による発電部4の電圧の測定は、必要に応じて適宜測定されてもよい。
【0067】
制御部7の電圧入力部101に送られた電圧情報は演算処理部140で演算処理され、あるいは電圧情報格納部131に予め格納された温度情報と比較参照される。これらの演算処理、比較参照の結果は電圧判定部111に保存される。電圧判定部111に保存された結果に基づき、湿度調整部121から信号線E2を介して酸化剤含有ガス加湿部53が制御される。
【0068】
説明の便宜のために、所定の電圧として以下の4つを定義する。
【0069】
V3 : 燃料電池システムの稼動において復旧不可能と判断される最小電圧値
V1 : 燃料電池システムの稼動において許容される最小電圧値
V2 : 燃料電池システムの稼動において許容される最大電圧値
V4 : 燃料電池システムの稼動において復旧不可能と判断される最大電圧値
Vi(i=1、2、3、4)は燃料電池システムの種類等に応じて、予め設定された値であり、電圧情報格納部131に格納され、適宜参照される。なお、V3<V1≦V2<V4である。
【0070】
(第1非加湿ステップ:S1)
まず、初期状態として、燃料電池システム10に非加湿酸化剤含有ガスを供給する第1非加湿ステップS1を行う。ここで「非加湿酸化剤含有ガス」とは、酸化剤含有ガス51が酸化剤含有ガス加湿部53の操作によって、相対的に湿度の低い酸化剤ガス51となっていることをいう。一方、「加湿酸化剤含有ガス」とは、酸化剤含有ガス51が酸化剤含有ガス加湿部53の操作によって、先の「非加湿酸化剤含有ガス」に比較して相対的に湿度の高い酸化剤ガス51となっていることをいう。
【0071】
例えば、図1に示す燃料電池システム10においてはバルブ54を切り替え、酸化剤含有ガス51が水を貯蔵した容器55を経由しない状態とすることにより第1非加湿ステップS1を行うことができる。
【0072】
非加湿酸化剤含有ガスをカソード3に供給して所定の時間(例えば5〜10分間)経過し、燃料電池システム10が安定した後、電圧測定部6から得られる情報に基づき、電圧値Vを求める。ここで「電圧測定部6から得られる情報に基づき、電圧値Vを求める」とは、電圧測定部から得られる情報は、必ずしも電圧値そのものであるとは限らないので(例えば、電圧測定部6からの情報は0−5Vの信号の形で送られてくることもある)、このような情報を演算処理部140で演算処理(変換)し正しい値(電圧V)とすることを意味する。
【0073】
この電圧値Vに応じて以下の場合に分けて、制御部7では判断され、制御される。
【0074】
(S1−1) V4<V : 所定の運転停止モードに入る。
【0075】
(S1−2) V2<V≦V4 : 第1非加湿ステップS1を継続する。
【0076】
(S1−3) V1≦V≦V2 : 第1非加湿ステップS1を継続する。
【0077】
(S1−4) V<V1 : 加湿ステップS2を行う。
【0078】
(加湿ステップ:S2)
上記(S1−4)と判定された場合、加湿ステップS2を以下のように行う。例えば、図1に示す燃料電池システム10においてはバルブ54を切り替え、酸化剤含有ガス51が水を貯蔵した容器55を経由する状態とすることにより加湿ステップS2を行うことができる。
【0079】
加湿酸化剤含有ガスをカソード3に供給して所定の時間(例えば5〜10分間)経過し、燃料電池システム10が安定した後、電圧測定部6から得られる電圧情報から電圧値Vを求める。この時、電圧値Vに応じて以下の場合に分けて、制御部7では判断され、制御される。
【0080】
(S2−1) V1≦V : 第1非加湿ステップS1を行う。
【0081】
(S2−2) V<V1 : 他の原因があると判断される。
【0082】
すなわち、電圧測定部6から得られる情報に基づき求められた電圧値Vが、所定の電圧値(上記の場合V1がこれに相当)よりも小さいと判断された場合に、制御部7がカソード3に供給する酸化剤含有ガス51の湿度を上昇させてカソード3に供給する調整(加湿ステップS2)を行う。
【0083】
(第1の実施の形態の効果)
このように、第1の実施の形態によれば、電圧測定部6、制御部7、酸化剤含有ガス加湿部53を有することにより、第1非加湿ステップS1、加湿ステップS2を行うことが可能となる。このことにより、燃料電池システム10の発電中に発電部4の中に残存する水分量を調整することができる。また、これによりカソード3に過剰の水が滞留することによって生じるカソード3のフラッディングによる出力の低下を抑制することが可能となる効果を有する。
【0084】
さらに、出力低下が生じた場合に、カソード3のフラッディングに起因するものかどうかを判定することができる。すなわち、(S2−2)の場合を除き、燃料電池システム10の出力低下はカソード3のフラッディングが原因によるものであり、第1非加湿ステップS1、加湿ステップS2により出力を回復させることができる。
【0085】
〔第2の実施の形態〕
上記第1の実施の形態において、(S2−2)の場合、すなわち、燃料電池システム10の出力の低下がカソード3のフラッディングによるものではなく、他に原因があると判定された場合に対応した第2の実施の形態について説明する。
【0086】
燃料41を直接アノード2に供給する燃料電池システム10においては、出力(電圧)の低下がカソード3のフラッディングによる電圧の低下に起因しない場合がある。この原因として、いわゆる「燃料クロスオーバー」と呼ばれる燃料41が供給過剰になっている場合や、逆に燃料41が供給不足になっている場合が該当する。このような場合には、カソード3でフラッディングによる出力(電圧)低下が起こっていなくても出力(電圧)が低下する状態が観察される。
【0087】
ここで、燃料クロスオーバーにより燃料41が供給過剰になった場合にはカソード3で(式3)に示す燃料41の酸化反応により発電部4の温度が上昇する。逆に、燃料41が供給不足になった場合にはカソード3で酸化反応に供給される燃料41が減少するため、発電部4の温度が低下する。
【0088】
第2の実施の形態においては、この特徴を利用し、発電部4の電圧が燃料電池システムの稼動において許容される最小電圧値(V1)を下回った場合(第1の実施の形態における(S2−2)に相当)には、燃料供給部42を制御することで燃料41のクロスオーバによる電圧の低下、もしくは燃料41の不足による電圧の低下が起こっているのかどうかを、発電部4の温度を温度測定部8で測定し、制御部7で判定するものである。具体的には、発電部4の温度測定部8から得られる温度情報に基づき、以下の手順に行うことで、出力が低下する原因を詳細に判定することができる。
【0089】
第2の実施の形態、第1の実施の形態に加え、発電部4が発電部4の温度を測定する温度測定部8を有し、制御部7が温度測定部8から得られる情報に基づきアノード3に供給する単位時間当たりの燃料供給量を調整することを特徴とする燃料電池システムである。
【0090】
ここで、温度測定部8による発電部4の温度は稼動している間は継続的に測定されてもよいし、必要に応じて適宜測定されてもよい。これら温度情報は信号線E3により制御部7に送られる。
【0091】
制御部7の温度入力部102に送られた温度情報は演算処理部140で演算処理され、あるいは温度情報格納部132に予め格納された温度情報と比較参照される。これらの演算処理、比較参照の結果は温度判定部112に保存される。温度判定部112に保存された結果に基づき、燃料供給調整部122から信号線E1を介して燃料供給部42が制御される。
【0092】
説明の便宜のために、所定の温度として以下の4つを定義する。
【0093】
T3 : 燃料電池システムの稼動において復旧不可能と判断される最低温度
T1 : 燃料電池システムの稼動において許容される最低温度
T2 : 燃料電池システムの稼動において許容される最高温度
T4 : 燃料電池システムの稼動において復旧不可能と判断される最高温度
Ti(i=1、2、3、4)は燃料電池システムの種類等に応じて、予め設定された値であり、温度情報格納部131に格納され、適宜参照される。なお、T3<T1≦T2<T4である。
【0094】
(アノード温度判定ステップ:S3)
加湿ステップS2の(S2−2)において、「他に原因があると判断」された場合、アノード2の温度測定部8で測定された温度Tに応じて以下の場合分けを行う。
【0095】
(S3−1) T4<T : 所定の運転停止モードに入る。
【0096】
(S3−2) T2<T≦T4 : 燃料低減ステップS4を行う。
【0097】
(S3−3) T1≦T≦T2 : 電圧判定ステップS6を行う。
【0098】
(S3−4) T3≦T<T1 : 燃料増加ステップS5を行う。
【0099】
(S3−5) T<T3 : 所定の運転停止モードに入る。
【0100】
このアノード温度判定ステップS3により、燃料電池システム10の出力が低下している原因が、発電部4に供給される燃料41が多すぎるためにクロスオーバーを引き起こしていることに起因するものであるのか、あるいは少なすぎて発電部4の温度が低下していることに起因するものであるのか、が判定される。
【0101】
これを更に正確に判断するために、アノード温度判定ステップS3の場合分けに応じて、以下の燃料低減ステップS4、燃料増加ステップS5のいずれかを行う。
【0102】
(燃料低減ステップ:S4)
上記(S3−2)と判定された場合、燃料低減ステップS4を以下のように行う。例えば、図1に示す燃料電池システム10においては燃料供給部42のポンプの回転数を低減し、発電部4へ供給される単位時間当たりの燃料41を低減することにより燃料低減ステップS4を行うことができる。
【0103】
このように燃料低減ステップS4を所定の時間(例えば5分間)経過し、燃料電池システム10が安定した後、温度測定部8に基づき得られる情報から発電部4の温度を求める。ここで「温度測定部8から得られる情報から発電部4の温度を求める」とは、温度測定部8から得られる情報は、必ずしも温度の値そのものであるとは限らないので(例えば、温度測定部8からの情報は0−5Vの信号の形で送られてくることもある)、このような情報を演算処理部140で演算処理し、正しい値に(温度T)とすることを意味する。
【0104】
この時、温度に応じて以下の場合に分けて、制御部7で判定され、制御される。
【0105】
(S4−1) T2<T : 電圧判定ステップS6を行う。
【0106】
(S4−2) T≦T2 : 燃料低減ステップS4を継続する。
【0107】
すなわち、温度測定部8から得られる情報に基づき求められた温度の値Tが予め与えられた第1の範囲内(上記の場合、T2<T<T4に相当)に含まれると判断された場合に、制御部7がアノード3に供給する単位時間当たりの燃料41の供給を低下させる調整(燃料減少ステップS4)を行う。
【0108】
(燃料増加ステップ:S5)
上記(S3−4)と判定された場合、燃料増加ステップS5を以下のように行う。例えば、図1に示す燃料電池システム10においては燃料供給部42のポンプの回転数を増加し、発電部4へ供給される単位時間当たりの燃料41を増加することにより燃料増加ステップS5を行うことができる。
【0109】
このように燃料増加ステップS5を所定の時間(例えば5分間)経過し、燃料電池システム10が安定した後、温度測定部8から得られる温度情報から温度Tを求める。この時、温度Tに応じて以下の場合に分けて、制御部7で判定され、制御される。
【0110】
(S5−1) T1≦T : 電圧判定ステップS6を行う。
【0111】
(S5−2) T<T1 : 燃料増加ステップS5を継続する。
【0112】
すなわち、温度測定部8から得られる情報に基づき求められた温度の値Tが予め与えられた第2の範囲内(上記の場合、T3<T<T1に相当)に含まれると判断された場合に、制御部7がアノード3に供給する単位時間当たりの燃料41の供給を増加させる調整(燃料増加ステップS5)を行う。
【0113】
(電圧判定ステップ:S6)
上記(S3−3)、(S4−1)、(S5−1)と判定された場合、電圧判定ステップS6を以下のように行う。
【0114】
(S6−1) V3≦V : 電圧判定ステップS6を継続する。
【0115】
(S6−2) V<V3 : 第2非加湿ステップS7を行う。
【0116】
(第2非加湿ステップ:S7)
上記(S6−2)と判定された場合、第2非加湿ステップS7を以下のように行う。
【0117】
(S7−1) V1≦V : 第2非加湿ステップS7を継続する。
【0118】
(S7−2) V3≦V<V1 : 第1非加湿ステップS1を行う。
【0119】
(S7−3) V<V3 : 所定の運転停止モードに入る。
【0120】
(第2の実施の形態の効果)
第2の実施の形態によれば、燃料供給部42の不具合により出力(電圧)が低下しているようであればそれを是正した後、再度酸化剤含有ガス加湿部53を制御する。これにより発電部4の温度Tが燃料電池システム10の稼動において許容される範囲内(T1≦T≦T2)に回復する場合には、電圧測定部6の電圧を監視しながら酸化剤含有ガス51の湿度を変化させることにより、カソード3におけるフラッディングを抑制しつつ、出力(電圧)を安定領域(V1≦V≦V2)に維持することができる。
【0121】
すなわち、制御部7、温度測定部8、燃料供給部42を有することにより、アノード温度判定ステップS3を行うことが可能となる。すなわち、燃料電池システム10の出力が低下している原因が、発電部4に供給される燃料41が多すぎるためにクロスオーバーを引き起こしていることに起因するものなのか、それとも少なすぎて発電部4の温度が低下していることに起因するものなのか、あるいはそれ以外の原因によるものであるのか、が判定される。
【0122】
これに加えて、燃料低減ステップS4あるいは燃料増加ステップS5、および電圧判定ステップS6を行うことにより、燃料電池システム10の出力低下を回復することができるか、あるいは更に別の原因により回復不能であるか、を判定することができる。すなわち、(S7−3)の場合を除き、燃料電池システム10の出力低下は燃料41の供給が過剰に供給されたことによるクロスオーバー、燃料41の供給が不足していることによる発電部4の温度低下によるものであり、第2非加湿ステップS7により出力を回復することができる。
【0123】
一方、(S7−3)の場合には、2つの原因(燃料41の供給が過剰に供給されたことによるクロスオーバー、燃料41の供給が不足していることによる発電部4の温度低下)以外に原因があるものと判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】本発明に係る燃料電池システムを示す構成図。
【図2】本発明に係る発電部を示す断面図。
【図3】本発明の係る制御部を示す構成図。
【図4】本発明の実施形態に係るプロセスフロー図。
【符号の説明】
【0125】
1 ・・・ 電解質膜
2 ・・・ アノード
3 ・・・ カソード
4 ・・・ 発電部
5 ・・・ 膜電極複合体(MEA)
6 ・・・ 電圧測定部
7 ・・・ 制御部(第1の制御部、第2の制御部)
8 ・・・ 温度測定部
10 ・・・ 燃料電池システム
21 ・・・ アノード触媒層
22 ・・・ アノードガス拡散層
23 ・・・ アノード流路板(アノード集電板)
24 ・・・ ガスケット
25、25a、25b、25c ・・・ アノード流路
31 ・・・ カソード触媒層
32 ・・・ カソードガス拡散層
33 ・・・ カソード流路板(カソード集電板)
34 ・・・ ガスケット
35、35a、35b、35c ・・・ カソード流路
41 ・・・ 燃料
42 ・・・ 燃料供給部
43 ・・・ 燃料容器
51 ・・・ 酸化剤含有ガス(空気)
52 ・・・ 酸化剤含有ガス供給部
53 ・・・ 酸化剤含有ガス加湿部
54 ・・・ バルブ(切替バルブ)
55 ・・・ 容器
E1、E2、E3、E4 ・・・ 信号線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水とアルコールの混合溶液である燃料を酸化するアノード、酸化剤含有ガスを還元するカソード、および前記アノードと前記カソードの間に挟持される固体高分子電解質膜とから構成される発電部と、
前記アノードに前記燃料を供給する燃料供給部と、
前記カソードに前記酸化剤含有ガスを供給する酸化剤含有ガス供給部と、
前記酸化剤含有ガス供給部と前記カソードの間に介挿され、前記酸化剤含有ガスを加湿する酸化剤含有ガス加湿部と、
前記アノードと前記カソードの間の電圧を測定する電圧測定部と、
前記電圧測定部から得られる情報に基づき前記カソードに供給する酸化剤含有ガスの湿度を調整する制御部と、
を有することを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
前記発電部がこの発電部の温度を測定する温度測定部を有し、
前記制御部が前記温度測定部から得られる情報に基づき前記アノードに供給する単位時間当たりの燃料供給量を調整する
ことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記アルコールがメタノールであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記電圧測定部から得られる情報に基づき求められた電圧の値が、所定の電圧の値よりも小さいと判断された場合に、前記制御部が前記カソードに供給する前記酸化剤含有ガスの湿度を上昇させて前記カソードに供給する調整を行うことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記温度測定部から得られる情報に基づき求められた温度の値が予め与えられた第1の範囲内に含まれると判断された場合に、前記制御部が前記アノードに供給する単位時間当たりの前記燃料の供給を低下させる調整を行うことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【請求項6】
前記温度測定部から得られる情報に基づき求められた温度の値が予め与えられた第2の範囲内に含まれると判断された場合に、前記制御部が前記アノードに供給する単位時間当たりの前記燃料の供給を増加させる調整を行うことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−245641(P2009−245641A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−87989(P2008−87989)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】