説明

燃料電池システム

【課題】簡易な構成で、脱硫器等の圧力容器の圧抜きを行う。
【解決手段】燃料電池システム1は、第1燃料経路L1における第1燃料ポンプ2と脱硫器3との間に電磁弁11(締切圧Pa0)を備え、脱硫器3と第2燃料ポンプ4との間に電磁弁12(締切圧Pb0)を備え、更に、第2燃料ポンプ4と改質器5との間に電磁弁16(締切圧Pc0)を備える。また、第2燃料経路L2における改質器5と燃料電池スタック7の間に電磁弁17(締切圧Pd0)を備える。また、オフガス排出経路L3における燃料電池スタック7の下流に電磁弁18(締切圧Pe0)を備える。電磁弁12,17,18の締切圧Pb0,Pd0,Pe0は、それぞれ、脱硫器3,改質器5,燃料電池スタック7の所定の許容圧力以下に設定される。また、電磁弁11,12,16〜18の締切圧は、Pa0≧Pb0≧Pc0≧Pd0≧Pe0の関係を満たすように設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムに関し、特に、システム内の高圧部を圧抜きするための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、原燃料である炭化水素系の気体燃料から硫黄分を除去する脱硫器と、脱硫処理後の気体燃料を用いて水素を含有する改質ガスを生成する改質器と、生成された改質ガスを用いて発電を行う燃料電池と、を備える燃料電池システムが記載されている。このシステムでは、気体燃料の供給元、脱硫器、及び改質器は、気体燃料が通流する燃料供給路を介して接続されている。また、燃料供給路における脱硫器の上流に、気体燃料の通流・遮断を行うための電磁弁を備える一方、脱硫器の下流に、脱硫器への気体燃料の逆流を抑制するための電磁弁を備えている。そして、燃料電池システムの運転を停止させる場合には、上記2つの電磁弁を閉じることによって、燃料電池システムへの気体燃料の供給を遮断すると共に、脱硫器への気体燃料の逆流を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−44653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述のような燃料電池システムの運転時には、脱硫器等を構成する圧力容器の内部が高温・高圧になり得るので、例えば運転停止時に、燃料供給路における圧力容器の上流及び下流に位置する各電磁弁を上述のように閉じると、圧力容器内の圧力が急激に上昇する可能性がある。
この急激な圧力上昇によって、圧力容器内の圧力が、圧力容器の所定の許容圧力(例えば、圧力容器の耐圧、又は、法定基準圧力)を超過しないようにするためには、通常、圧力容器内の圧力を圧力容器外に逃がすための「圧抜き機構」を圧力容器に設けることで対処している。ここで、「圧抜き機構」の一例としては、圧力容器の所定の許容圧力以上で自動的に開弁するリリーフ弁(安全弁)を備える圧力容器用の圧抜きラインが考えられる。
【0005】
しかしながら、このような「圧抜き機構」を圧力容器に設けると、燃料電池システムを構成する部品の点数が増加するので、製造やメンテナンス等のコストが増大してしまう。
本発明は、このような実状に鑑み、上述のような「圧抜き機構」を脱硫器等の圧力容器に設けずとも、圧力容器の圧抜きを行うことが可能な燃料電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このため本発明に係る燃料電池システムは、外部より供給される炭化水素系燃料から硫黄分を除去する脱硫器を構成する第1圧力容器と、脱硫器にて脱硫処理された炭化水素系燃料を用いて水素を含有する改質燃料を生成する改質器を構成する第2圧力容器と、改質器にて生成された改質燃料を用いて発電を行い未反応燃料を排出する燃料電池スタックを構成する第3圧力容器と、を含んで構成される。
【0007】
そして、本発明に係る燃料電池システムは、第1圧力容器と第2圧力容器との間の燃料経路に備えられて、締切圧が第1圧力容器の所定の許容圧力以下に設定される第1電磁弁と、第2圧力容器と第3圧力容器との間の燃料経路に備えられて、締切圧が第2圧力容器の所定の許容圧力以下に設定される第2電磁弁と、を更に含んで構成され、第2電磁弁は、その締切圧が、第1電磁弁の締切圧以下に設定される。
【0008】
または、本発明に係る燃料電池システムは、第2圧力容器と第3圧力容器との間の燃料経路に備えられて、締切圧が第2圧力容器の所定の許容圧力以下に設定される第2電磁弁と、第3圧力容器の出口側に備えられて、締切圧が第3圧力容器の所定の許容圧力以下に設定される第3電磁弁と、を更に含んで構成され、第3電磁弁は、その締切圧が、第2電磁弁の締切圧以下に設定される。
【0009】
なお、本発明において、締切圧とは、流体が流れる流路に備えられた電磁弁の閉弁可能最大圧力をいい、この圧力よりも高い流体圧力が閉弁状態(締切状態)の電磁弁に作用すると、電磁弁は開弁する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、圧力容器の出口側に設置される電磁弁は、その締切圧が、圧力容器の所定の許容圧力以下に設定される。これにより、例えば、燃料電池システムの運転停止時に電磁弁が閉弁された状態で、圧力容器内の流体の圧力が電磁弁の締切圧より高くなった場合には、圧力容器内の流体の圧力によって電磁弁が開弁される。従って、電磁弁が、実質的にはリリーフ弁のように機能することにより、圧力容器用の「圧抜き機構」を別途設ける必要がないので、燃料電池システムの製造やメンテナンス等のコストを抑制することができる。
【0011】
更に、本発明によれば、第2電磁弁は、その締切圧が、第1電磁弁の締切圧以下に設定される。これにより、例えば、第1及び第2電磁弁が閉弁されて、脱硫器(第1圧力容器)内の流体の圧力が、第1電磁弁の締切圧より高くなったときに、脱硫器内の流体の圧力が第1電磁弁に作用し、第1電磁弁が開弁されて、更に、この圧力が改質器(第2圧力容器)を介して、第2電磁弁に作用した場合であっても、この第2電磁弁に作用した圧力により、第2電磁弁が開弁されるので、脱硫器の圧抜きを確実に行うことができる。
【0012】
または、本発明によれば、第3電磁弁は、その締切圧が、第2電磁弁の締切圧以下に設定される。これにより、例えば、第2及び第3電磁弁が閉弁されて、改質器(第2圧力容器)内の流体の圧力が、第2電磁弁の締切圧より高くなったときに、改質器内の流体の圧力が第2電磁弁に作用し、第2電磁弁が開弁されて、更に、この圧力が燃料電池スタック(第3圧力容器)を介して、第3電磁弁に作用した場合であっても、この第3電磁弁に作用した圧力により、第3電磁弁が開弁されるので、改質器の圧抜きを確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態における燃料電池システムの概略構成図
【図2】同上実施形態における脱硫器内の圧力確認フローを示すフローチャート
【図3】図2に示す脱硫器内の圧力確認フローの第1の変形例を示すフローチャート
【図4】図2に示す脱硫器内の圧力確認フローの第2の変形例を示すフローチャート
【図5】同上実施形態における改質器内の圧力確認フローを示すフローチャート
【図6】同上実施形態における燃料電池スタック内の圧力確認フローを示すフローチャート
【図7】従来型の燃料電池システムの一例を示す概略構成図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態における燃料電池システムの概略構成を示す。
本実施形態における燃料電池システムは、原燃料として気体の炭化水素系燃料(LPG、都市ガス等)を用いて発電を行うものである。
図1に示すように、燃料電池システム1は、第1燃料ポンプ2、脱硫器(DS)3、第2燃料ポンプ4、改質器(FPS)5、加湿タンク6、固体高分子形燃料電池(PEFC)スタック7、及び、燃料電池システム1の運転制御や各種演算を行う制御装置8を備える。
【0015】
また、燃料電池システム1は、外部から供給される炭化水素系燃料を、第1燃料ポンプ2、脱硫器3、及び、第2燃料ポンプ4を介して、改質器5に供給する第1燃料経路L1と、改質器5にて生成された改質燃料(改質ガス)を、加湿タンク6を介して、燃料電池スタック7に供給する第2燃料経路L2と、を備える。
第1燃料ポンプ2は、外部からの炭化水素系燃料を高圧化して脱硫器3に供給するものであり、その作動が、制御装置8からの信号によって制御される。なお、外部の燃料供給源がLPGボンベ等の高圧ガス容器であって、脱硫器3に供給される炭化水素系燃料が十分に高圧である場合には、第1燃料ポンプ2を省略することが可能である。
【0016】
第1燃料経路L1における第1燃料ポンプ2と脱硫器3との間には、制御装置8からの信号に応じて開閉する電磁弁11が設置されている。
電磁弁11は、例えば、弁座にその下流側から対向する弁体と、弁体を上流側圧力に抗して閉弁方向に付勢するスプリングと、弁体を電磁力により開弁方向に駆動可能なソレノイドと、を含んで構成される。また、電磁弁11は、その締切圧(閉止圧)Pa0が、後述する電磁弁12の締切圧Pb0以上に設定されている。
【0017】
脱硫器3は、第1燃料ポンプ2より炭化水素系燃料が供給される圧力容器(本発明における第1圧力容器)と、この圧力容器内の炭化水素系燃料から硫黄分を除去する脱硫触媒(図示せず)と、脱硫触媒を加熱するヒータ31と、を備える。
また、脱硫器3は、その圧力容器内の流体の圧力(すなわち、第1圧力容器内の炭化水素系燃料の圧力)を間接的又は直接的に測定する圧力センサ(図示せず)を備え、この圧力センサにて測定された圧力測定値PDSが、制御装置8に伝送される。なお、この圧力センサにより、脱硫器3内の流体の圧力を間接的に測定する場合には、この圧力センサが、例えば、第1燃料経路L1における電磁弁11と脱硫器3との間に設置される。
【0018】
脱硫処理後の炭化水素系燃料は、第2燃料ポンプ4を介して、改質器5に圧送される。
第1燃料経路L1における脱硫器3と第2燃料ポンプ4との間には、制御装置8からの信号に応じて開閉する電磁弁12と、燃料流量を調整する絞り(例えば、キャピラリチューブ13)と、燃料の脈動を抑制するバッファタンク(貯留装置)14と、が設置されている。
【0019】
電磁弁12は、例えば、弁座にその下流側から対向する弁体と、弁体を上流側圧力に抗して閉弁方向に付勢するスプリングと、弁体を電磁力により開弁方向に駆動可能なソレノイドと、を含んで構成される。
電磁弁12は、その締切圧(閉止圧)Pb0が、脱硫器3(第1圧力容器)の所定の許容圧力PDS3以下(例えば、脱硫器3の耐圧以下、又は、法定基準圧力以下)に設定されている。これにより、脱硫器3内の流体の圧力が電磁弁12の締切圧Pb0より高くなると、電磁弁12が仮に閉弁状態(締切状態)であっても、脱硫器3内の流体の圧力が電磁弁12の弁体に作用してこれを開弁方向に動作させるので、制御装置8からの信号の有無に関係なく電磁弁12が開弁される。ここで、電磁弁12は、本発明における「第1電磁弁」に対応する。
【0020】
また、上述のように、電磁弁12の締切圧Pb0と電磁弁11の締切圧Pa0との関係は、次式で示される。
b0≦Pa0 ・・・(1)
キャピラリチューブ13は、極細管が螺旋状に巻回されたものである。このキャピラリチューブ13により、小流量でも脱硫器3内の高圧化を促進することができる。
【0021】
第1燃料経路L1における第2燃料ポンプ4と改質器5の間には、燃料の脈動を抑制するバッファタンク(貯留装置)15と、制御装置8からの信号に応じて開閉する電磁弁16と、が設置されている。
電磁弁16は、例えば、弁座にその下流側から対向する弁体と、弁体を上流側圧力に抗して閉弁方向に付勢するスプリングと、弁体を電磁力により開弁方向に駆動可能なソレノイドと、を含んで構成される。
【0022】
また、電磁弁16は、その締切圧Pc0が、電磁弁12の締切圧Pb0以下に設定されている。すなわち、電磁弁16の締切圧Pc0と電磁弁12の締切圧Pb0との関係は、次式で示される。
c0≦Pb0 ・・・(2)
改質器5は、第2燃料ポンプ4より炭化水素系燃料が供給される圧力容器(本発明における第2圧力容器)を備え、この圧力容器内(第2圧力容器内)に供給された炭化水素系燃料と水蒸気とを改質触媒で改質反応させて、水素を含有する改質ガスを生成する。
【0023】
また、改質器5は、改質触媒加熱用のバーナ51を備える。このバーナ51には、外部より供給される炭化水素系燃料に加えて、後述するオフガス排出経路L3からのオフガスが供給される。
また、改質器5は、その圧力容器内の流体の圧力(すなわち、第2圧力容器内の炭化水素系燃料及び改質ガスの圧力)を間接的又は直接的に測定する圧力センサ(図示せず)を備え、この圧力センサにて測定された圧力測定値PFPSが、制御装置8に伝送される。なお、この圧力センサにより、改質器5内の流体の圧力を間接的に測定する場合には、この圧力センサが、例えば、第1燃料経路L1における電磁弁16と改質器5との間に設置される。
【0024】
第2燃料経路L2における改質器5と加湿タンク6の間には、制御装置8からの信号に応じて開閉する電磁弁17が設置されている。
電磁弁17は、例えば、弁座にその下流側から対向する弁体と、弁体を上流側圧力に抗して閉弁方向に付勢するスプリングと、弁体を電磁力により開弁方向に駆動可能なソレノイドと、を含んで構成される。
【0025】
電磁弁17は、その締切圧(閉止圧)Pd0が、改質器5(第2圧力容器)の所定の許容圧力PFPS3以下(例えば、改質器5の耐圧以下、又は、法定基準圧力以下)に設定されている。これにより、改質器5内の流体の圧力が電磁弁17の締切圧Pd0より高くなると、電磁弁17が仮に閉弁状態(締切状態)であっても、改質器5内の流体の圧力が電磁弁17の弁体に作用してこれを開弁方向に動作させるので、制御装置8からの信号の有無に関係なく電磁弁17が開弁される。ここで、電磁弁17は、本発明における「第2電磁弁」に対応する。
【0026】
また、電磁弁17は、その締切圧Pd0が、電磁弁16の締切圧Pc0以下に設定されている。すなわち、電磁弁17の締切圧Pd0と電磁弁16の締切圧Pc0との関係は、次式で示される。
d0≦Pc0 ・・・(3)
加湿タンク6は、燃料電池スタック7に供給される改質ガスを加湿するものである。
【0027】
加湿タンク6にて加湿処理された改質ガスは、第2燃料経路L2を介して、燃料電池スタック7に供給される。
燃料電池スタック7は、直列に接続された複数の電池セルを備える。各電池セルは、アノードと、カソードと、アノード及びカソード間に配置された電解質とを有する。また、燃料電池スタック7は、加湿タンク6より改質ガスが供給される圧力容器(本発明における第3圧力容器)を備え、この圧力容器内に、各電池セルのアノードが配置されている。そして、各電池セルでは、各々のアノードに改質ガスが供給され、かつ、カソードに空気が供給されると、発電反応を起こして電力を発生させる。
【0028】
なお、本実施形態では、燃料電池スタック7の発電継続による電池セルの乾燥を抑制するために、加湿タンク6を用いて改質ガスを加湿しているが、この加湿が不要である場合には、燃料電池システム1において、加湿タンク6を省略してもよい。この場合には、改質器5にて生成された改質ガスが、電磁弁17を有する第2燃料経路L2を介して、燃料電池スタック7に直接的に供給される。
【0029】
また、燃料電池スタック7は、その圧力容器内の流体の圧力(すなわち、第3圧力容器内の改質ガス等の圧力)を間接的又は直接的に測定する圧力センサ(図示せず)を備え、この圧力センサにて測定された圧力測定値PFCが、制御装置8に伝送される。なお、この圧力センサにより、燃料電池スタック7の圧力容器内の流体の圧力を間接的に測定する場合には、この圧力センサが、例えば、第2燃料経路L2における加湿タンク6と燃料電池スタック7との間に設置される。
【0030】
燃料電池スタック7には、発電反応に寄与しなかった水素(すなわち、未反応燃料)を含有するオフガスを排出させるためのオフガス排出経路L3の一端が接続されている。このオフガス排出経路L3の他端は、改質器5のバーナ51に接続されている。また、オフガス排出経路L3は、燃料電池スタック7から改質器5のバーナ51へ向かう途中で分岐して、燃料電池システム1内の貯湯槽(図示せず)のバックアップボイラー(図示せず)に接続されている。なお、貯湯槽に貯留される温水は、燃料電池システム1にて発生した熱を回収して昇温されたものである。
【0031】
オフガス排出経路L3における燃料電池スタック7の出口側には、制御装置8からの信号に応じて開閉する電磁弁18が設置されている。
電磁弁18は、例えば、弁座にその下流側から対向する弁体と、弁体を上流側圧力に抗して閉弁方向に付勢するスプリングと、弁体を電磁力により開弁方向に駆動可能なソレノイドと、を含んで構成される。
【0032】
電磁弁18は、その締切圧(閉止圧)Pe0が、燃料電池スタック7の所定の許容圧力PFC3以下(例えば、燃料電池スタック7を構成する圧力容器の耐圧以下)に設定されている。これにより、燃料電池スタック7内の流体の圧力が電磁弁18の締切圧Pe0より高くなると、電磁弁18が仮に閉弁状態(締切状態)であっても、燃料電池スタック7内の流体の圧力が電磁弁18の弁体に作用してこれを開弁方向に動作させるので、制御装置8からの信号の有無に関係なく電磁弁18が開弁される。ここで、電磁弁18は、本発明における「第3電磁弁」に対応する。
【0033】
また、電磁弁18は、その締切圧Pe0が、電磁弁17の締切圧Pd0以下に設定されている。すなわち、電磁弁18の締切圧Pe0と電磁弁17の締切圧Pd0との関係は、次式で示される。
e0≦Pd0 ・・・(4)
従って、上記の式(1)〜(4)より、電磁弁18の締切圧Pe0、電磁弁17の締切圧Pd0、電磁弁16の締切圧Pc0、電磁弁12の締切圧Pb0、及び、電磁弁11の締切圧Pa0の関係は、次式で示される。
e0≦Pd0≦Pc0≦Pb0≦Pa0 ・・・(5)
【0034】
次に、燃料電池システム1の運転停止時における脱硫器3、改質器5、及び、燃料電池スタック7の圧抜きについて説明する。
燃料電池システム1の運転を停止させる場合に、制御装置8は、第1燃料ポンプ2、脱硫器3、第2燃料ポンプ4、改質器5、加湿タンク6、及び、燃料電池スタック7の作動を停止するように、各種信号を送信すると共に、電磁弁11,12,16〜18を閉弁するように、各電磁弁に対して信号を送信する。
【0035】
この後、電磁弁11が閉弁されると、外部から脱硫器3への炭化水素系燃料の供給が停止される。また、電磁弁12が閉弁されると、バッファタンク14から脱硫器3への炭化水素系燃料の逆流が抑制される。また、電磁弁16が閉弁されると、バッファタンク15から改質器5への炭化水素系燃料の供給が停止される。また、電磁弁17が閉弁されると、加湿タンク6から改質器5への改質ガスの逆流が抑制される。また、電磁弁18が閉弁されると、オフガス排出経路L3から燃料電池スタック7へのオフガスの逆流が抑制される。
【0036】
このときに、脱硫器3内の炭化水素系燃料の圧力が、電磁弁12の締切圧Pb0より高くなった場合には、脱硫器3内の炭化水素系燃料の圧力が閉弁状態の電磁弁12の弁体に作用してこれを開弁方向に動作させる。これにより、電磁弁12が開弁されて、炭化水素系燃料がバッファタンク14に向かうので、脱硫器3の圧抜きを行うことができる。また、電磁弁12,16〜18は、各々の締切圧が式(5)の関係を満たすので、脱硫器3の圧抜き時に脱硫器3内の炭化水素系燃料を燃料経路下流側に向けてスムーズに放出させることができる。
【0037】
また、改質器5内の流体の圧力が、電磁弁17の締切圧Pd0より高くなった場合には、改質器5内の流体の圧力が電磁弁17の弁体に作用してこれを開弁方向に動作させる。これにより、電磁弁17が開弁されて、改質器5内の流体が加湿タンク6に向かうので、改質器5の圧抜きを行うことができる。また、電磁弁17,18は、各々の締切圧が式(4)の関係を満たすので、改質器5の圧抜き時に改質器5内の流体を燃料経路下流側に向けてスムーズに放出させることができる。
【0038】
また、燃料電池スタック7内の流体の圧力が、電磁弁18の締切圧Pe0より高くなった場合には、燃料電池スタック7内の流体の圧力が電磁弁18の弁体に作用してこれを開弁方向に動作させる。これにより、電磁弁18が開弁されて、燃料電池スタック7内の流体がオフガス排出経路L3に流入するので、燃料電池スタック7の圧抜きを行うことができる。
【0039】
次に、脱硫器3内の炭化水素系燃料の圧力が、脱硫器3の所定の許容圧力以下であることを確認する(すなわち、脱硫器3の圧抜きが正常に行われているか否かを確認する)際に制御装置8にて行われる処理について、図2を用いて説明する。
図2は、本実施形態における脱硫器3内の圧力確認フローを示す。
制御装置8は、脱硫器3の圧抜きが正常に行われるか否かの確認を、燃料電池システム1の起動時又は運転停止時に行う。
【0040】
制御装置8は、まず、ステップS1にて、電磁弁11を開弁させると共に、電磁弁12,16〜18を閉弁させる。すなわち、燃料経路における脱硫器3の下流側の電磁弁12,16〜18を閉弁させる。
ステップS2では、第1燃料ポンプ2を作動させて、脱硫器3内の炭化水素系燃料を昇圧させる。なお、このステップS2にて、脱硫器3内の炭化水素系燃料の昇圧を促進するために、脱硫器3のヒータ31により脱硫触媒を加熱して、脱硫器3内の炭化水素系燃料を加熱してもよい。
【0041】
ステップS3では、脱硫器3内の炭化水素系燃料の圧力測定値PDSと、昇圧目標値PDS2との比較を行う。ここで、昇圧目標値PDS2は、脱硫器3内の炭化水素系燃料が十分に昇圧したか否かを判定するための閾値である。また、昇圧目標値PDS2は、脱硫器3の所定の許容圧力PDS3以下の値であり、かつ、圧抜きに使用される電磁弁12の締切圧Pb0以上の値である。つまり、電磁弁12の締切圧Pb0と、昇圧目標値PDS2と、脱硫器3の所定の許容圧力PDS3との関係は、次式で示される。
b0≦PDS2≦PDS3 ・・・(6)
なお、昇圧目標値PDS2は、制御装置8の記憶手段にて記憶されている。
DS<PDS2の場合は、脱硫器3内の炭化水素系燃料の昇圧が不十分であると判定し、ステップS4に進み、第1燃料ポンプ2の作動を継続して、脱硫器3内の炭化水素系燃料を更に昇圧させる。
【0042】
一方、PDS≧PDS2の場合は、脱硫器3内の炭化水素系燃料が十分に昇圧されたと判定し、ステップS5に進み、第1燃料ポンプ2の作動を停止させると共に、電磁弁11を閉弁させる。
ステップS6では、所定の期間(T1秒間)待機する。この待機期間は、電磁弁12を用いる脱硫器3の圧抜きに必要とされる期間であり、予め設定されたものである。
【0043】
この後、ステップS7では、脱硫器3内の炭化水素系燃料の圧力測定値PDSと、降圧目標値PDS1とを比較する。ここで、降圧目標値PDS1は、脱硫器3の圧抜きが十分に行われて脱硫器3内の炭化水素系燃料が十分に降圧したか否かを判定するための閾値である。また、降圧目標値PDS1は、昇圧目標値PDS2以下の値であり、かつ、圧抜きに使用される電磁弁12の締切圧Pb0以上の値である。つまり、電磁弁12の締切圧Pb0と、降圧目標値PDS1と、昇圧目標値PDS2との関係は、次式で示される。
b0≦PDS1≦PDS2 ・・・(7)
【0044】
上記の式(6)及び式(7)より、電磁弁12の締切圧Pb0と、降圧目標値PDS1と、昇圧目標値PDS2と、脱硫器3の所定の許容圧力PDS3との関係は、次式で示される。
b0≦PDS1≦PDS2≦PDS3 ・・・(8)
なお、制御装置8の記憶手段は、降圧目標値PDS1も記憶している。
【0045】
DS≦PDS1の場合は、電磁弁12を用いた脱硫器3の圧抜きが正常に行われていると判定してステップS8に進み、燃料経路における脱硫器3の下流側の電磁弁12,16〜18を開弁させて、脱硫器3内の圧力確認フローを終了させる。
一方、PDS>PDS1の場合は、電磁弁12を用いた脱硫器3の圧抜きが正常に行われていないと判定し、ステップS9に進み、燃料経路における脱硫器3の下流側の電磁弁12,16〜18を開弁させて、脱硫器3の圧抜きを実施する。この後、ステップS10に進み、脱硫器3の圧抜きに異常がある旨を、燃料電池システム1に予め設けられた警報器等により外部に報知させて、脱硫器3内の圧力確認フローを終了させる。
【0046】
なお、ステップS8及びS9にて、電磁弁12,16〜18を開弁させることにより、脱硫器3内の炭化水素系燃料が、燃料電池システム1外に放出されることなく、バックアップボイラー等で回収されるので、脱硫器3内の圧力確認フローを実行することによるシステムのエネルギー効率の低下を抑制することができる。
図3は、図2に示す脱硫器3内の圧力確認フローの第1の変形例である。
【0047】
図2にて示した脱硫器3内の圧力確認フローと異なる点について説明する。
ステップS2にて第1燃料ポンプ2を作動させた後、その作動を継続したまま、ステップS21にて所定の期間(T2秒間)待機する。この待機期間は、第1燃料ポンプ2の作動後、このポンプからの燃料供給量と、昇圧によって電磁弁12を通過する燃料流量と、が釣り合い、脱硫器3内の炭化水素系燃料の圧力が安定するまでの期間(例えば、ポンプ作動による燃料昇圧速度(燃料圧力上昇速度)がゼロになるまでの期間)に基づいて、予め設定されたものである。
【0048】
この後、ステップS7以降は、図2に示す圧力確認フローと同様である。
なお、ステップS21では、上述の処理の代わりとして、待機期間を設定せずに、脱硫器3内の炭化水素系燃料の圧力を監視して、燃料昇圧速度がゼロになった段階でステップS7の判定に進むようにしてもよい。
図4は、図2に示す脱硫器3内の圧力確認フローの第2の変形例である。
【0049】
図2にて示した脱硫器3内の圧力確認フローと異なる点について説明する。
まず、ステップS30では、全ての電磁弁11,12,16〜18を閉弁させる。
この後、ステップS31では、脱硫器3のヒータ31により脱硫触媒を加熱して、脱硫器3内の炭化水素系燃料を加熱・昇圧させる。
ステップS32では、脱硫器3内の炭化水素系燃料の圧力測定値PDSと、昇圧目標値PDS2との比較を行う。
【0050】
DS<PDS2の場合は、脱硫器3内の炭化水素系燃料の昇圧が不十分であると判定し、ステップS33に進み、脱硫器3のヒータ31による加熱を継続して、脱硫器3内の炭化水素系燃料を更に昇圧させる。
一方、PDS≧PDS2の場合は、脱硫器3内の炭化水素系燃料が十分に昇圧されたと判定し、ステップS34に進み、脱硫器3のヒータ31による加熱を停止させる。
【0051】
ステップS35では、所定の期間(T3秒間)待機する。この待機期間は、電磁弁12を用いる脱硫器3の圧抜きに必要とされる期間であり、予め設定されたものである。
この後、ステップS7以降は、図2に示す圧力確認フローと同様である。
以上のように、図2〜図4に示したステップS1〜S10、S21、及び、S30〜35により、本発明における第1の圧抜き確認手段の機能が実現される。
【0052】
次に、改質器5内の流体の圧力が、改質器5の所定の許容圧力以下であることを確認する(すなわち、改質器5の圧抜きが正常に行われているか否かを確認する)際に制御装置8にて行われる処理について、図5を用いて説明する。
図5は、本実施形態における改質器5内の圧力確認フローを示す。
制御装置8は、改質器5の圧抜きが正常に行われるか否かの確認を、燃料電池システム1の起動時又は運転停止時に行う。
【0053】
制御装置8は、まず、ステップS41にて、電磁弁11,12,16を開弁させると共に、電磁弁17,18を閉弁させる。すなわち、燃料経路における改質器5の下流側の電磁弁17,18を閉弁させる。
ステップS42では、第2燃料ポンプ4を作動させて、改質器5内の流体を昇圧させる。なお、このステップS42にて、第2燃料ポンプ4の作動に加えて、第1燃料ポンプ2を作動させて、改質器5内の流体の昇圧を促進させてもよい。
【0054】
ステップS43では、改質器5内の流体の圧力測定値PFPSと、昇圧目標値PFPS2との比較を行う。ここで、昇圧目標値PFPS2は、改質器5内の流体が十分に昇圧したか否かを判定するための閾値である。また、昇圧目標値PFPS2は、改質器5の所定の許容圧力PFPS3以下の値であり、かつ、圧抜きに使用される電磁弁17の締切圧Pd0以上の値である。つまり、電磁弁17の締切圧Pd0と、昇圧目標値PFPS2と、改質器5の所定の許容圧力PFPS3との関係は、次式で示される。
d0≦PFPS2≦PFPS3 ・・・(9)
なお、昇圧目標値PFPS2は、制御装置8の記憶手段にて記憶されている。
FPS<PFPS2の場合は、改質器5内の流体の昇圧が不十分であると判定し、ステップS44に進み、第2燃料ポンプ4の作動を継続して、改質器5内の流体を更に昇圧させる。
【0055】
一方、PFPS≧PFPS2の場合は、改質器5内の流体が十分に昇圧されたと判定し、ステップS45に進み、第2燃料ポンプ4の作動を停止させると共に、電磁弁11,12,16を閉弁させる。
ステップS46では、所定の期間(T4秒間)待機する。この待機期間は、電磁弁17を用いる改質器5の圧抜きに必要とされる期間であり、予め設定されたものである。
【0056】
この後、ステップS47では、改質器5内の流体の圧力測定値PFPSと、降圧目標値PFPS1とを比較する。ここで、降圧目標値PFPS1は、改質器5の圧抜きが十分に行われて改質器5内の流体が十分に降圧したか否かを判定するための閾値である。また、降圧目標値PFPS1は、昇圧目標値PFPS2以下の値であり、かつ、圧抜きに使用される電磁弁17の締切圧Pd0以上の値である。つまり、電磁弁17の締切圧Pd0と、降圧目標値PFPS1と、昇圧目標値PFPS2との関係は、次式で示される。
d0≦PFPS1≦PFPS2 ・・・(10)
【0057】
上記の式(9)及び式(10)より、電磁弁17の締切圧Pd0と、降圧目標値PFPS1と、昇圧目標値PFPS2と、改質器5の所定の許容圧力PFPS3との関係は、次式で示される。
d0≦PFPS1≦PFPS2≦PFPS3 ・・・(11)
なお、制御装置8の記憶手段は、降圧目標値PFPS1も記憶している。
【0058】
FPS≦PFPS1の場合は、電磁弁17を用いた改質器5の圧抜きが正常に行われていると判定してステップS48に進み、燃料経路における改質器5の下流側の電磁弁17,18を開弁させて、脱硫器3内の圧力確認フローを終了させる。
一方、PFPS>PFPS1の場合は、電磁弁17を用いた改質器5の圧抜きが正常に行われていないと判定し、ステップS49に進み、燃料経路における改質器5の下流側の電磁弁17,18を開弁させて、改質器5の圧抜きを実施する。この後、ステップS50に進み、改質器5の圧抜きに異常がある旨を、上記の警報器等により外部に報知させて、改質器5内の圧力確認フローを終了させる。
【0059】
なお、ステップS48及びS49にて、電磁弁17,18を開弁させることにより、改質器5内の流体(炭化水素系燃料及び改質ガス)が、燃料電池システム1外に放出されることなく、バックアップボイラー等で回収されるので、改質器5内の圧力確認フローを実行することによるシステムのエネルギー効率の低下を抑制することができる。
ここにおいて、図5に示したステップS41〜S50により、本発明における第2の圧抜き確認手段の機能が実現される。
【0060】
次に、燃料電池スタック7内の流体の圧力が、燃料電池スタック7の所定の許容圧力以下であることを確認する(すなわち、燃料電池スタック7の圧抜きが正常に行われているか否かを確認する)際に制御装置8にて行われる処理について、図6を用いて説明する。
図6は、本実施形態における燃料電池スタック7内の圧力確認フローを示す。
制御装置8は、燃料電池スタック7の圧抜きが正常に行われるか否かの確認を、燃料電池システム1の起動時又は運転停止時に行う。
【0061】
制御装置8は、まず、ステップS61にて、電磁弁11,12,16,17を開弁させると共に、電磁弁18を閉弁させる。すなわち、オフガス排出経路L3における燃料電池スタック7の下流側の電磁弁18を閉弁させる。
ステップS62では、第2燃料ポンプ4を作動させて、燃料電池スタック7内の流体を昇圧させる。なお、このステップS62にて、第2燃料ポンプ4の作動に加えて、第1燃料ポンプ2を作動させて、燃料電池スタック7内の流体の昇圧を促進させてもよい。
【0062】
ステップS63では、燃料電池スタック7内の流体の圧力測定値PFCと、昇圧目標値PFC2との比較を行う。ここで、昇圧目標値PFC2は、燃料電池スタック7内の流体が十分に昇圧したか否かを判定するための閾値である。また、昇圧目標値PFC2は、燃料電池スタック7の所定の許容圧力PFC3以下の値であり、かつ、圧抜きに使用される電磁弁18の締切圧Pe0以上の値である。つまり、電磁弁18の締切圧Pe0と、昇圧目標値PFC2と、燃料電池スタック7の所定の許容圧力PFC3との関係は、次式で示される。
e0≦PFC2≦PFC3 ・・・(12)
なお、昇圧目標値PFC2は、制御装置8の記憶手段にて記憶されている。
FC<PFC2の場合は、燃料電池スタック7内の流体の昇圧が不十分であると判定し、ステップS64に進み、第2燃料ポンプ4の作動を継続して、燃料電池スタック7内の流体を更に昇圧させる。
【0063】
一方、PFC≧PFC2の場合は、燃料電池スタック7内の流体が十分に昇圧されたと判定し、ステップS65に進み、第2燃料ポンプ4の作動を停止させると共に、電磁弁11,12,16,17を閉弁させる。
ステップS66では、所定の期間(T5秒間)待機する。この待機期間は、電磁弁18を用いる燃料電池スタック7の圧抜きに必要とされる期間であり、予め設定されたものである。
【0064】
この後、ステップS67では、燃料電池スタック7内の流体の圧力測定値PFCと、降圧目標値PFC1とを比較する。ここで、降圧目標値PFC1は、燃料電池スタック7の圧抜きが十分に行われて燃料電池スタック7内の流体が十分に降圧したか否かを判定するための閾値である。また、降圧目標値PFC1は、昇圧目標値PFC2以下の値であり、かつ、圧抜きに使用される電磁弁18の締切圧Pe0以上の値である。つまり、電磁弁18の締切圧Pe0と、降圧目標値PFC1と、昇圧目標値PFC2との関係は、次式で示される。
e0≦PFC1≦PFC2 ・・・(13)
【0065】
上記の式(12)及び式(13)より、電磁弁18の締切圧Pe0と、降圧目標値PFC1と、昇圧目標値PFC2と、燃料電池スタック7の所定の許容圧力PFC3との関係は、次式で示される。
e0≦PFC1≦PFC2≦PFC3 ・・・(14)
なお、制御装置8の記憶手段は、降圧目標値PFC1も記憶している。
【0066】
FC≦PFC1の場合は、電磁弁18を用いた燃料電池スタック7の圧抜きが正常に行われていると判定してステップS68に進み、オフガス排出経路L3における燃料電池スタック7の下流側の電磁弁18を開弁させて、脱硫器3内の圧力確認フローを終了させる。
一方、PFC>PFC1の場合は、電磁弁18を用いた燃料電池スタック7の圧抜きが正常に行われていないと判定し、ステップS69に進み、オフガス排出経路L3における燃料電池スタック7の下流側の電磁弁18を開弁させて、燃料電池スタック7の圧抜きを実施する。この後、ステップS70に進み、燃料電池スタック7の圧抜きに異常がある旨を、上記の警報器等により外部に報知させて、燃料電池スタック7内の圧力確認フローを終了させる。
【0067】
なお、ステップS68及びS69にて、電磁弁18を開弁させることにより、燃料電池スタック7内の流体(改質ガス及びオフガス)が、燃料電池システム1外に放出されることなく、バックアップボイラー等で回収されるので、燃料電池スタック7内の圧力確認フローを実行することによるシステムのエネルギー効率の低下を抑制することができる。
ここにおいて、図6に示したステップS61〜S70により、本発明における第3の圧抜き確認手段の機能が実現される。
【0068】
次に、本実施形態における燃料電池システムの効果を、従来型の燃料電池システムと比較しつつ説明する。
図7は、従来型の燃料電池システムの一例の概略構成を示す。
図1にて示した本実施形態における燃料電池システムと異なる点について説明する。
従来型の燃料電池システム21では、第1燃料経路L1における脱硫器3とキャピラリチューブ13との間に電磁弁22を備えている。この電磁弁22は、本実施形態における電磁弁12に対応するものであるが、電磁弁22の締切圧は、脱硫器3の所定の許容圧力PDS3よりも高い。
【0069】
また、燃料電池システム21では、第2燃料経路L2における改質器5と加湿タンク6との間に電磁弁23が設置されている。この電磁弁23は、本実施形態における電磁弁17に対応するものであるが、電磁弁23の締切圧は、改質器5の所定の許容圧力PFPS3よりも高い。
また、本実施形態ではオフガス排出経路L3に逆流抑制用の電磁弁18が設置されているが、燃料電池システム21ではオフガス排出経路L3に逆流抑制用の電磁弁が設置されていない。
【0070】
燃料電池システム21は、脱硫器3の圧抜きを行うための脱硫器圧抜きラインL10を備えている。この脱硫器圧抜きラインL10は、第1燃料経路L1における電磁弁11と脱硫器3との間から分岐して第1燃料ポンプ2の上流に戻るラインである。また、脱硫器圧抜きラインL10は、脱硫器3内の炭化水素系燃料の圧力が上昇して脱硫器3の所定の許容圧力PDS3に近づくと自動的に開弁するリリーフ弁(SV)24を備えている。
【0071】
また、燃料電池システム21は、改質器5の圧抜きを行うための改質器圧抜きラインL11を備えている。この改質器圧抜きラインL11は、第2燃料経路L2における改質器5と電磁弁23との間から分岐して燃料電池システム21外に向かうラインである。また、改質器圧抜きラインL11は、改質器5内の流体の圧力が上昇して改質器5の所定の許容圧力PFPS3に近づくと自動的に開弁するリリーフ弁(SV)25を備えている。
【0072】
燃料電池システム21では、これらの構成により、脱硫器3及び改質器5の圧抜きを可能としている。
しかしながら、燃料電池システム21では、例えば、改質器5内の流体の圧力が上昇して改質器5の所定の許容圧力PFPS3に近づき、この結果、リリーフ弁25が作動した場合に、リリーフ弁25がゴミ等の異物を挟み込む可能性がある。このため、改質器5の圧抜き後に、改質器5内の流体の圧力が改質器5の所定の許容圧力PFPS3より低くなっても、リリーフ弁25が完全に閉弁されず、この結果、改質器5内からの改質ガス等が改質器圧抜きラインL11を介して燃料電池システム21外に洩れる可能性がある。
【0073】
この点、本実施形態における燃料電池システム1では、改質器5内の流体の圧力が電磁弁17の締切圧Pd0より高くなった場合に、改質器5内の流体の圧力により電磁弁17が開弁されて、改質器5内の流体が加湿タンク6に向かうので、改質器5内からの改質ガス等が燃料電池システム1外に洩れる可能性は比較的小さい。
従って、本実施形態における燃料電池システム1は、従来型の燃料電池システム21に比べて、改質ガス等の洩れを抑制することができるので、システムのエネルギー効率を向上させることができる。
【0074】
本実施形態によれば、燃料電池システム1は、脱硫器3と改質器5との間の第1燃料経路L1に備えられて、締切圧Pb0が脱硫器3(第1圧力容器)の所定の許容圧力PDS3以下に設定される電磁弁12を含んで構成される。これにより、例えば、燃料電池システム1の運転停止時に電磁弁12が閉弁された状態で、脱硫器3内の流体の圧力が電磁弁12の締切圧Pb0より高くなった場合には、脱硫器3内の炭化水素系燃料の圧力によって電磁弁12が開弁される。従って、電磁弁12が、実質的にはリリーフ弁のように機能することにより、脱硫器3用の「圧抜き機構」を別途設ける必要がないので、燃料電池システム1の製造やメンテナンス等のコストを抑制することができる。
【0075】
また、本実施形態によれば、燃料電池システム1は、改質器5と燃料電池スタック7との間の第2燃料経路L2に備えられて、締切圧Pd0が改質器5(第2圧力容器)の所定の許容圧力PFPS3以下に設定される電磁弁17を含んで構成される。これにより、例えば、燃料電池システム1の運転停止時に電磁弁17が閉弁された状態で、改質器5内の流体の圧力が電磁弁17の締切圧Pd0より高くなった場合には、改質器5内の流体の圧力によって電磁弁17が開弁される。従って、電磁弁17が、実質的にはリリーフ弁のように機能することにより、改質器5用の「圧抜き機構」を別途設ける必要がないので、燃料電池システム1の製造やメンテナンス等のコストを抑制することができる。
【0076】
また、本実施形態によれば、燃料電池システム1は、燃料電池スタック7の出口側に備えられて、締切圧Pe0が燃料電池スタック7(第3圧力容器)の所定の許容圧力PFC3以下に設定される電磁弁18を含んで構成される。これにより、例えば、燃料電池システム1の運転停止時に電磁弁18が閉弁された状態で、燃料電池スタック7内の流体の圧力が電磁弁18の締切圧Pe0より高くなった場合には、燃料電池スタック7内の流体の圧力によって電磁弁18が開弁される。従って、電磁弁18が、実質的にはリリーフ弁のように機能することにより、燃料電池スタック7用の「圧抜き機構」を別途設ける必要がないので、燃料電池システム1の製造やメンテナンス等のコストを抑制することができる。
【0077】
また、本実施形態によれば、電磁弁17は、その締切圧Pd0が、電磁弁12の締切圧Pb0以下に設定される。これにより、例えば、電磁弁12,17が閉弁されて、脱硫器3内の炭化水素系燃料の圧力が、電磁弁12の締切圧Pb0より高くなったときに、この圧力が電磁弁12に作用し、電磁弁12が開弁されて、更に、この圧力が改質器5を介して、電磁弁17に作用した場合であっても、この電磁弁17に作用した圧力により、電磁弁17が開弁されるので、脱硫器3の圧抜きを確実に行うことができる。
【0078】
また、本実施形態によれば、電磁弁18は、その締切圧Pe0が、電磁弁17の締切圧Pd0以下に設定される。これにより、例えば、電磁弁17,18が閉弁されて、改質器5内の流体の圧力が、電磁弁17の締切圧Pd0より高くなったときに、この圧力が電磁弁17に作用し、電磁弁17が開弁されて、更に、この圧力が燃料電池スタック7を介して、電磁弁18に作用した場合であっても、この電磁弁18に作用した圧力により、電磁弁18が開弁されるので、改質器5の圧抜きを確実に行うことができる。
【0079】
また、本実施形態によれば、燃料電池システム1では、脱硫器3内の流体の圧力が、電磁弁12により、脱硫器3の所定の許容圧力PDS3以下に抑制されることを確認する(ステップS1〜S10、S21、及び、S30〜35)。これにより、電磁弁12の圧抜き機能が低下した場合であっても比較的早期にその機能低下を検知して対処することができるので、燃料電池システム1のフェールセーフ性を向上させることができる。
【0080】
また、本実施形態によれば、燃料電池システム1では、改質器5内の流体の圧力が、電磁弁17により、改質器5の所定の許容圧力PFPS3以下に抑制されることを確認する(ステップS41〜S50)。これにより、電磁弁17の圧抜き機能が低下した場合であっても比較的早期にその機能低下を検知して対処することができるので、燃料電池システム1のフェールセーフ性を向上させることができる。
【0081】
また、本実施形態によれば、燃料電池システム1では、燃料電池スタック7内の流体の圧力が、電磁弁18により、燃料電池スタック7の所定の許容圧力PFC3以下に抑制されることを確認する(ステップS61〜S70)。これにより、電磁弁18の圧抜き機能が低下した場合であっても比較的早期にその機能低下を検知にて対処することができるので、燃料電池システム1のフェールセーフ性を向上させることができる。
【0082】
なお、上述の実施形態では、原燃料として、LPGや都市ガス等の気体の炭化水素系燃料を用いて説明したが、原燃料は、気体の炭化水素系燃料に限らず、この他、原燃料として、灯油等の液体の炭化水素系燃料を用いることも可能である。
【符号の説明】
【0083】
1 燃料電池システム
2 第1燃料ポンプ
3 脱硫器(DS)
4 第2燃料ポンプ
5 改質器(FPS)
6 加湿タンク
7 燃料電池スタック
8 制御装置
11 電磁弁
12 電磁弁(第1電磁弁)
13 キャピラリチューブ
14,15 バッファタンク
16 電磁弁
17 電磁弁(第2電磁弁)
18 電磁弁(第3電磁弁)
21 燃料電池システム
22,23 電磁弁
24,25 リリーフ弁
31 ヒータ
51 バーナ
L1 第1燃料経路
L2 第2燃料経路
L3 オフガス排出経路
L10 脱硫器圧抜きライン
L11 改質器圧抜きライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部より供給される炭化水素系燃料から硫黄分を除去する脱硫器を構成する第1圧力容器と、
前記脱硫器にて脱硫処理された炭化水素系燃料を用いて水素を含有する改質燃料を生成する改質器を構成する第2圧力容器と、
前記改質器にて生成された改質燃料を用いて発電を行い未反応燃料を排出する燃料電池スタックを構成する第3圧力容器と、
前記第1圧力容器と前記第2圧力容器との間の燃料経路に備えられて、締切圧が前記第1圧力容器の所定の許容圧力以下に設定される第1電磁弁と、
前記第2圧力容器と前記第3圧力容器との間の燃料経路に備えられて、締切圧が前記第2圧力容器の所定の許容圧力以下に設定される第2電磁弁と、
を含んで構成され、
前記第2電磁弁は、その締切圧が、前記第1電磁弁の締切圧以下に設定されることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
前記第3圧力容器の出口側に備えられて、締切圧が前記第3圧力容器の所定の許容圧力以下に設定される第3電磁弁を更に含んで構成され、
前記第3電磁弁は、その締切圧が、前記第2電磁弁の締切圧以下に設定されることを特徴とする請求項1記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記第3圧力容器内の流体の圧力が、前記第3電磁弁により、当該圧力容器の所定の許容圧力以下に抑制されることを確認する第3の圧抜き確認手段を備えることを特徴とする請求項2記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記第1圧力容器内の流体の圧力が、前記第1電磁弁により、当該圧力容器の所定の許容圧力以下に抑制されることを確認する第1の圧抜き確認手段を備えることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載の燃料電池システム。
【請求項5】
外部より供給される炭化水素系燃料から硫黄分を除去する脱硫器を構成する第1圧力容器と、
前記脱硫器にて脱硫処理された炭化水素系燃料を用いて水素を含有する改質燃料を生成する改質器を構成する第2圧力容器と、
前記改質器にて生成された改質燃料を用いて発電を行い未反応燃料を排出する燃料電池スタックを構成する第3圧力容器と、
前記第2圧力容器と前記第3圧力容器との間の燃料経路に備えられて、締切圧が前記第2圧力容器の所定の許容圧力以下に設定される第2電磁弁と、
前記第3圧力容器の出口側に備えられて、締切圧が前記第3圧力容器の所定の許容圧力以下に設定される第3電磁弁と、
を含んで構成され、
前記第3電磁弁は、その締切圧が、前記第2電磁弁の締切圧以下に設定されることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項6】
前記第3圧力容器内の流体の圧力が、前記第3電磁弁により、当該圧力容器の所定の許容圧力以下に抑制されることを確認する第3の圧抜き確認手段を備えることを特徴とする請求項5記載の燃料電池システム。
【請求項7】
前記第2圧力容器内の流体の圧力が、前記第2電磁弁により、当該圧力容器の所定の許容圧力以下に抑制されることを確認する第2の圧抜き確認手段を備えることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1つに記載の燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−113991(P2012−113991A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−262622(P2010−262622)
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(000004444)JX日鉱日石エネルギー株式会社 (1,898)
【Fターム(参考)】