説明

燃料電池システム

【課題】空気が混合された状態で水素含有燃料が供給された場合であっても、熱自立運転が可能な燃料電池システムを提供する。
【解決手段】燃料電池システム1の制御部11は、燃料流量計16からの値を補正することによって、空気と水素含有燃料を含む燃料の流量を正確に取得することができる。また、制御部11は、酸素または窒素を検出するセンサー17の検出結果に基づいて、燃料に含まれる空気の量を演算することができる。従って、水素発生部4に供給される燃料に空気が含まれていた場合に、燃料電池システム1は、燃料中の水素含有燃料にどの程度の空気が混合されているかを把握することができる。制御部11は、燃料中の空気の混合量に応じて、水素発生部4に供給される燃料の量を適切に調整することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の燃料電池システムとして、特許文献1に示すものが知られている。この燃料電池システムは、燃料ガス中のメタン系炭化水素の一部の成分の濃度を検出するガス濃度検出手段と、当該ガス濃度検出手段により検出したガス濃度から燃料ガス中の総発熱量を算出し、この総発熱量から燃料流量を算出する燃料流量算出手段と、この燃料流量から運転に適した燃料ガス流量を調整する燃料ガス流量調整手段と、を備えている。この燃料電池システムは、燃料ガス濃度に基づいて燃料ガス流量を調整することで、燃料ガスの季節的な変動に対応している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平09−320625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、水素含有燃料を供給する供給源は、供給圧を一定にするために、供給圧が低下した場合に空気を混合させて水素含有燃料を燃料電池システムに供給する場合がある。このような場合、従来の燃料電池システムは、特定の燃料にしか対応することができず、空気が混合された水素含有燃料の流量を正確に検出することができない。これによって、燃料電池システムが熱自立運転を行うことが出来ないという問題が生じる。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、空気が混合された状態で水素含有燃料が供給された場合であっても、熱自立運転が可能な燃料電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る燃料電池システムは、水素含有燃料を含む燃料を用いて水素含有ガスを発生させる水素発生部と、水素含有ガスを用いて発電を行うセルスタックと、を備える燃料電池システムであって、水素発生部に対して供給される燃料の供給量を取得する供給量取得部と、水素発生部の上流側において、燃料の中の酸素または窒素を検出する検出部と、検出部の検出結果に基づいて、供給量取得部からの値が含む誤差を補正し、空気を含んだ燃料の供給量を取得する補正部と、検出部の検出結果に基づいて、燃料に含まれる空気の量を演算する演算部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
この燃料電池システムは、補正部を備えている。この補正部は、供給量取得部からの値が含む誤差を補正することによって、燃料に空気が含まれていた場合に、当該燃料の供給量を正確に取得することができる。また、燃料電池システムは、酸素または窒素を検出する検出部の検出結果に基づいて、燃料に含まれる空気の量を演算する演算部を備えている。従って、水素発生部に供給される燃料に空気が含まれていた場合に、燃料電池システムは、燃料中の水素含有燃料にどの程度の空気が混合されているかを把握することができる。これによって、燃料電池システムは、空気の混合量に応じて、燃料の供給量を適切に調整することが可能となる。以上によって、燃料電池システムは、空気が混合された状態で水素含有燃料が供給された場合であっても、熱自立運転を行うことが可能となる。
【0008】
燃料電池システムは、燃料に含まれる空気の量に基づいて、燃料の供給量を調整する調整部を更に備え、調整部は、燃料に空気が含まれることによって減少する水素含有燃料の量を考慮して、調整を行うことが好ましい。空気が含まれている燃料と、含まれていない燃料を比較した場合、燃料の量が同じであれば、空気が含まれている燃料の方が、空気が含まれる分、水素含有燃料の量が減少している。調整部は、このような理由により減少する水素含有燃料の量を考慮して、燃料の調整を行うことができる。これにより、空気が混合された状態で水素含有燃料が供給された場合に、必要な量の水素含有燃料を確実に供給することができる。
【0009】
燃料電池システムは、燃料に含まれる空気の量に基づいて、燃料の供給量を調整する調整部を更に備え、調整部は、燃料の中の酸素の消費に要する水素含有燃料の量を考慮して、調整を行うことが好ましい。燃料に空気が含まれていた場合、当該空気中の酸素を消費するための水素含有燃料が更に必要となる。従って、調整部は、酸素の消費に要する水素含有燃料の量を考慮して、燃料の調整を行うことができる。これにより、空気が混合された状態で水素含有燃料が供給された場合に、燃料電池システムは一層好適に熱自立運転を行うことができる。
【0010】
燃料電池システムは、燃料に含まれる空気の量に応じて、燃料供給異常を検出する異常検出部を更に備え、異常検出部は燃料供給異常を検出した場合に、システム停止を行うことが好ましい。これによって、燃料に含まれる空気が多くなりすぎている状況に対応することが可能となる。
【0011】
燃料電池システムにおいて、異常検出部が、補正部および演算部により得られる燃料流量に対する空気流量比を判定し、当該比率が所定の閾値を超えた場合に、燃料供給異常を検出することが好ましい。これにより、一層正確に燃料供給異常を検出することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、空気が混合された状態で水素含有燃料が供給された場合であっても、燃料電池システムの熱自立運転が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係る燃料電池システムの構成を示すブロック構成図である。
【図2】図2は、制御部の構成を示すブロック構成図である。
【図3】図3は、本発明の実施形態に係る燃料電池システムの制御処理の内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0015】
図1に示されるように、燃料電池システム1は、脱硫部2と、水気化部3と、水素発生部4と、セルスタック5と、オフガス燃焼部6と、水素含有燃料供給部7と、水供給部8と、酸化剤供給部9と、パワーコンディショナー10と、制御部11と、を備えている。燃料電池システム1は、水素含有燃料及び酸化剤を用いて、セルスタック5にて発電を行う。燃料電池システム1におけるセルスタック5の種類は特に限定されず、例えば、固体高分子形燃料電池(PEFC:Polymer Electrolyte Fuel Cell)、固体酸化物形燃料電池(SOFC:Solid Oxide Fuel Cell)、リン酸形燃料電池(PAFC:Phosphoric Acid Fuel Cell)、溶融炭酸塩形燃料電池(MCFC:Molten Carbonate Fuel Cell)、及び、その他の種類を採用することができる。なお、セルスタック5の種類、水素含有燃料の種類、及び改質方式等に応じて、図1に示す構成要素を適宜省略してもよい。
【0016】
水素含有燃料として、例えば、炭化水素系燃料が用いられる。炭化水素系燃料として、分子中に炭素と水素とを含む化合物(酸素等、他の元素を含んでいてもよい)若しくはそれらの混合物が用いられる。炭化水素系燃料として、例えば、炭化水素類、アルコール類、エーテル類、バイオ燃料が挙げられ、これらの炭化水素系燃料は従来の石油・石炭等の化石燃料由来のもの、合成ガス等の合成系燃料由来のもの、バイオマス由来のものを適宜用いることができる。具体的には、炭化水素類として、メタン、エタン、プロパン、ブタン、天然ガス、LPG(液化石油ガス)、都市ガス、タウンガス、ガソリン、ナフサ、灯油、軽油が挙げられる。アルコール類として、メタノール、エタノールが挙げられる。エーテル類として、ジメチルエーテルが挙げられる。バイオ燃料として、バイオガス、バイオエタノール、バイオディーゼル、バイオジェットが挙げられる。
【0017】
酸化剤として、例えば、空気、純酸素ガス(通常の除去手法で除去が困難な不純物を含んでもよい)、酸素富化空気が用いられる。
【0018】
脱硫部2は、水素発生部4に供給される水素含有燃料の脱硫を行う。脱硫部2は、水素含有燃料に含有される硫黄化合物を除去するための脱硫触媒を有している。脱硫部2の脱硫方式として、例えば、硫黄化合物を吸着して除去する吸着脱硫方式や、硫黄化合物を水素と反応させて除去する水素化脱硫方式が採用される。脱硫部2は、脱硫した水素含有燃料を水素発生部4へ供給する。
【0019】
水気化部3は、水を加熱し気化させることによって、水素発生部4に供給される水蒸気を生成する。水気化部3における水の加熱は、例えば、水素発生部4の熱、オフガス燃焼部6の熱、あるいは排ガスの熱を回収する等、燃料電池システム1内で発生した熱を用いてもよい。また、別途ヒータ、バーナ等の他熱源を用いて水を加熱してもよい。なお、図1では、一例としてオフガス燃焼部6から水素発生部4へ供給される熱のみ記載されているが、これに限定されない。水気化部3は、生成した水蒸気を水素発生部4へ供給する。
【0020】
水素発生部4は、脱硫部2からの水素含有燃料を用いて水素リッチガスを発生させる。水素発生部4は、水素含有燃料を改質触媒によって改質する改質器を有している。水素発生部4での改質方式は、特に限定されず、例えば、水蒸気改質、部分酸化改質、自己熱改質、その他の改質方式を採用できる。なお、水素発生部4は、セルスタック5に要求される水素リッチガスの性状によって、改質触媒により改質する改質器の他に性状を調整するための構成を有する場合もある。例えば、セルスタック5のタイプが固体高分子形燃料電池(PEFC)やリン酸形燃料電池(PAFC)であった場合、水素発生部4は、水素リッチガス中の一酸化炭素を除去するための構成(例えば、シフト反応部、選択酸化反応部)を有する。水素発生部4は、水素リッチガスをセルスタック5のアノード12へ供給する。
【0021】
セルスタック5は、水素発生部4からの水素リッチガス及び酸化剤供給部9からの酸化剤を用いて発電を行う。セルスタック5は、水素リッチガスが供給されるアノード12と、酸化剤が供給されるカソード13と、アノード12とカソード13との間に配置される電解質14と、を備えている。セルスタック5は、パワーコンディショナー10を介して、電力を外部へ供給する。セルスタック5は、発電に用いられなかった水素リッチガス及び酸化剤をオフガスとして、オフガス燃焼部6へ供給する。なお、水素発生部4が備えている燃焼部(例えば、改質器を加熱する燃焼器など)をオフガス燃焼部6と共用してもよい。
【0022】
オフガス燃焼部6は、セルスタック5から供給されるオフガスを燃焼させる。オフガス燃焼部6によって発生する熱は、水素発生部4へ供給され、水素発生部4での水素リッチガスの発生に用いられる。
【0023】
水素含有燃料供給部7は、脱硫部2へ水素含有燃料を供給する。水供給部8は、水気化部3へ水を供給する。酸化剤供給部9は、セルスタック5のカソード13へ酸化剤を供給する。水素含有燃料供給部7、水供給部8、及び酸化剤供給部9は、例えばポンプによって構成されており、制御部11からの制御信号に基づいて駆動する。
【0024】
パワーコンディショナー10は、セルスタック5からの電力を、外部での電力使用状態に合わせて調整する。パワーコンディショナー10は、例えば、電圧を変換する処理や、直流電力を交流電力へ変換する処理を行う。
【0025】
制御部11は、燃料電池システム1全体の制御処理を行う。制御部11は、例えばCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、及び入出力インターフェイスを含んで構成されたデバイスによって構成される。制御部11は、水素含有燃料供給部7、水供給部8、酸化剤供給部9、パワーコンディショナー10、その他、図示されないセンサや補機と電気的に接続されている。制御部11は、燃料電池システム1内で発生する各種信号を取得すると共に、燃料電池システム1内の各機器へ制御信号を出力する。
【0026】
燃料電池システム1に対して燃料を供給する供給源(例えばパイプラインなど)は、昇圧のために水素含有燃料に空気を混合して供給する場合がある。この場合、水素含有燃料供給部7から水素発生部4に供給される水素含有燃料にも空気が混合されている。本実施形態に係る燃料電池システム1は、水素含有燃料に空気が混合されていた場合であっても、適切に熱自立運転を行うことができる。以下の説明においては、水素含有燃料供給部7から水素発生部4へ供給されるものを「燃料」と称する。燃料は、少なくとも前述の水素含有燃料を含んでおり、水素含有燃料に空気が混合された空気混合燃料である場合と、空気が混合されていない場合がある。燃料電池システム1は、燃料の供給量を検出する燃料流量計16と、燃料の中の酸素または窒素を検出するセンサー17と、を更に備えている。図2に示すように、制御部11は、供給量取得部101と、検出部102と、演算部103と、補正部104と、調整部105と、異常検出部106と、を備えている。
【0027】
燃料流量計16は、水素発生部4の上流側に配置される。図1では、燃料流量計16は、水素含有燃料供給部7と脱硫部2との間に配置されているが、水素発生部4よりも上流であれば、どこに配置されていてもよい。燃料流量計16は、水素含有燃料供給部7から供給される燃料の流量を検出する。燃料流量計16は特定の気体流量を測定するのに最適化された特徴を有するため、燃料が水素含有燃料と空気が混合された空気混合燃料であった場合、燃料流量計16が示す空気混合燃料の流量(水素含有燃料自体の流量に空気流量を加えた値)は誤差を含んでいる。燃料流量計16の結果は空気混合燃料の流量を正確に示しておらず、また、空気混合燃料中に含まれる水素含有燃料の流量も正確に示しておらず、当該燃料流量計16の測定結果をそのまま制御に用いることはできない。本実施形態に係る燃料電池システム1は、燃料流量計16における誤差を、制御部11の補正部104によって補正可能である。このような補正を行うことによって、空気混合燃料の流量が正確に示された測定結果を、制御に用いることが可能となる。
【0028】
センサー17は、水素発生部4の上流側に配置される。図1では、センサー17は、水素含有燃料供給部7と脱硫部2との間に配置されているが、水素発生部4よりも上流であれば、どこに配置されていてもよい。センサー17は、水素含有燃料供給部7から供給される燃料の中に含まれている酸素または窒素を検出する。センサー17として、酸素センサー及び窒素センサーのいずれかを配置してもよく、あるいは、両方を組み合わせて配置してもよい。燃料が空気混合燃料であった場合、センサー17は、空気混合燃料における酸素濃度、あるいは窒素濃度を検出する。センサー17は、制御部11と電気的に接続されており、検出結果を制御部11へ出力する。
【0029】
制御部11の供給量取得部101は、燃料流量計16の計測結果を受信して、燃料の供給量を取得する機能を有している。制御部11の検出部102は、センサー17からの検出結果を取得する機能を有している。制御部11の検出部102は、センサー17からの検出結果に基づいて、燃料の中の酸素または窒素の量を取得する機能を有している。
【0030】
制御部11の補正部104は、供給量取得部101での取得結果や検出部102での検出結果に基づいて、燃料流量計16からの値が含む誤差を補正し、空気を含んだ燃料の供給量を取得する機能を有している。補正部104は、燃料流量計16の出力値を補正することで、空気混合燃料の流量(水素含有燃料の流量と空気の流量の合計)を取得する。補正部104は、予め記憶された燃料流量計16の空気濃度に対する誤差のデータに基づいて補正を行う。
【0031】
制御部11の演算部103は、検出部102の検出結果、及び補正部104によって補正された燃料の供給量に基づいて、燃料に含まれる水素含有燃料および空気の量を演算する機能を有している。具体的に、制御部11の演算部103は、補正部104によって正確に取得された空気混合燃料の流量と、検出部102の検出結果と、予め記憶された空気濃度に関するデータとを用いて、正確な空気混合燃料における空気の量を演算することができる。制御部11は、空気中に酸素または窒素がどの程度含有されているかのデータを記憶している。制御部11の演算部103は、当該データに対して検出結果を照会させることで、空気混合燃料の流量全体のうち、空気流量がどの程度であるかを演算することができる。
【0032】
制御部11の調整部105は、燃料に含まれる空気の量に応じて、水素発生部4に対する燃料の流量を調整する機能を有している。水素含有燃料のみからなる燃料と空気混合燃料とを比較した場合、同じ燃料流量であっても、空気混合燃料に含まれる水素含有燃料の流量は、空気流量の分だけ少なくなる。従って、制御部11の調整部105は、所望の水素含有燃料の流量が得られるように、水素含有燃料供給部7からの燃料の流量を調整する。制御部11の調整部105は、補正後の燃料流量計16の検出結果をフィードバックさせて制御を行うことができる。更に、空気混合燃料には酸素が含まれているため、当該酸素を消費する必要がある。空気の混合に伴い、酸素を消費するための水素含有燃料を確保する必要が生じる。従って、制御部11の調整部105は、燃料の中の酸素の消費に要する空気含有燃料の量を考慮して、水素含有燃料供給部7の燃料の流量を調整する機能を有する。制御部11の調整部105は、燃料電池システム1の熱自立運転に必要とされる水素含有燃料の流量を供給できるよう水素含有燃料供給部7の調整を行うことができる。調整部105は、更に、燃料の中の酸素の消費に必要な水素含有燃料の流量も考慮して調整を行うことが可能である。
【0033】
制御部11の異常検出部106は、燃料に含まれる空気の量に応じて、燃料供給異常を検出する機能を有している。また、制御部11の異常検出部106は、燃料供給異常を検出した場合に、システム停止を行う機能を有している。例えば、制御部11の異常検出部106は、燃料中の炭素に対する酸素の比率(空気流量/燃料流量)を判定し、当該比率が所定の閾値を超えた場合に、燃料供給異常を検出する。
【0034】
次に、図3を参照して、本実施形態に係る燃料電池システム1の制御処理の一例について説明する。図3の制御処理は、水素含有燃料供給部7から水素発生部4へ供給される燃料が、空気混合燃料である場合の例を示している。図3は、水素含有燃料に空気が混合されたとき、または燃料の空気の濃度が変化したときの処理を示す。図3に示す処理は、制御部11において所定のタイミングで繰り返し実行される。
【0035】
図3に示すように、制御部11の検出部102は、センサー17の検出結果を取得して当該検出結果に基づいて、燃料中の酸素濃度を測定する(ステップS10)。このとき、制御部11の検出部102は、燃料中の窒素濃度を測定してもよい。制御部11の供給量取得部101は、燃料流量計16の検出結果に基づいて燃料の流量(ただし、この時点では誤差を含んでいる)を取得する。制御部11の補正部104は、S10の測定結果に基づいて、燃料流量計16からの値を補正する(ステップS20)。燃料流量計16からの値を補正することで、補正部104は、水素含有燃料流量と空気流量を合わせた燃料全体の流量を取得する。
【0036】
次に、制御部11の演算部103は、燃料に含まれる空気の流量を演算する(ステップS30)。具体的には、制御部11の演算部103は、予め記憶していた空気中の酸素の量(あるいは窒素の量)に関するデータと、S10で測定した酸素濃度とを比較し、燃料中の空気の濃度を演算する。制御部11の演算部103は、S20で正確に補正された燃料の流量、及び燃料中の空気の濃度に基づいて、空気流量を演算する。
【0037】
次に、制御部11の演算部103は、S10の測定結果に基づいて、燃料中の空気流量と燃料流量の比率(空気流量/燃料流量)を演算する(ステップS40)。制御部11の演算部103は、S10で測定した燃料中の酸素濃度を用いて、空気流量/燃料流量を演算することができる。なお、S10で窒素濃度が測定された場合、大気中のN/Oの比が用いられる。制御部11の異常検出部106は、S40で演算した空気流量/燃料流量が予め設定した所定の閾値Maxより小さいか否かを判定する(ステップS50)。S50において、空気流量/燃料流量が閾値Max以上であった場合、制御部11の異常検出部106は燃料供給異常であると判断し、システム停止を実行する(ステップS70)。
【0038】
S50において空気流量/燃料流量が閾値Maxより小さいと判定した場合、制御部11の調整部105は、水素含有燃料供給部7に対する流量指示値を補正する(ステップS60)。S60において、制御部11の調整部105は、燃料電池システム1の制御に必要とされる所望の水素含有燃料の流量を供給できるように、流量指示値を補正する。また、調整部105は、燃料に含まれる酸素を消費するのに必要とされる水素含有燃料の流量が加算されるように、流量指示値を補正することもできる(具体的な制御例については後述)。また、制御部11の調整部105は、補正された燃料流量計16の計測結果に基づいた流量制御を行う。すなわち、制御部11の調整部105は、正確な燃料の流量に基づいて、水素含有燃料供給部7の制御を行う。
【0039】
S60の処理が終了すると、図3に示す制御処理が終了する。なお、次回以降の制御処理においては、S10での測定結果に変化がなければS20〜S60の処理を行わず、S10での酸素濃度または窒素濃度の監視のみを繰り返し行ってもよい。また、図3の制御処理は、燃料電池システム1の運転中、常時実行されてもよく、所定の期間を設けて定期的に実行してもよい。
【0040】
次に、図3に示す制御処理の更に具体的な制御例を示す。制御の一例として第一制御例、第二制御例、第三制御例を挙げているが、制御内容や用いる数式はこれらに限定されない。なお、以降の説明において用いられる記号の説明を以下に示す。なお、誤差、濃度などは百分率ではなく小数である。また、以降に示す式では、水素含有燃料は炭化水素(アルコールやエーテルなど、分子に酸素や窒素等が結合していないもの)として取り扱っている。

Finit :制御開始時における水素含有燃料供給部7への流量指示値
Fadj :制御終了時における水素含有燃料供給部7への流量指示値
finit :制御開始時における燃料流量計16の流量測定結果
f’init :制御開始時における、制御部11にて補正された、燃料流量計16の流量測定結果
fS20 :S20終了時における燃料流量計16の流量測定結果
f’S20 :S20終了時における、制御部11にて補正された、燃料流量計16の流量測定結果
e :センサー17の測定値から決められる燃料流量計16の流量測定結果に含まれる誤差
aS20 :S20終了時における燃料中の空気流量
gS20 :S20終了時における燃料中の水素含有燃料流量
glost :S20終了時における燃料中の水素含有燃料流量のうち、燃料中の空気との燃焼反応により消費される流量
g :燃料電池システム1に供給するべき水素含有燃料流量
o :センサー17が測定した、燃料中の酸素濃度
CO2 :空気中の酸素濃度
m :水素含有燃料の平均炭素原子数
n :水素含有燃料の平均水素原子数
【0041】
[第一制御例]
第一制御例は、水素発生部4に供給される水素含有燃料の流量(すなわち、空気混合燃料の流量から空気の流量を除いたもの)が、燃料電池システム1の制御に必要とされる水素含有燃料の流量に一致するようにする制御である。
【0042】
〈スタート時〉
制御開始時においては、水素含有燃料供給部7への流量指示値(Finit)として、前回処理にて設定されていた指示値が設定されている。ただし、初回処理時は、任意の指示値が設定される。また、制御開始時における燃料電池システム1の状態に応じて、燃料電池システム1の制御に必要とされる水素含有燃料流量(g)が設定される。また、制御開始時における燃料流量計16の流量測定結果(finit)が取得される。このfinitは、誤差を含む値である。
【0043】
〈ステップS10〉
センサー17によって、燃料中の酸素濃度が測定される。
【0044】
〈ステップS20〉
燃料中の酸素濃度に基づいて、燃料流量計16の流量測定結果に含まれる誤差(e)が決定される。また、誤差を調整するために、式(1)によって燃料流量計16の流量測定結果の補正がなされ、補正された流量測定結果(f’init)が取得される。
【0045】
【数1】

【0046】
燃料流量計16の流量測定結果の補正がなされることによって、水素含有燃料供給部7から供給される燃料の流量(水素含有燃料と空気の合計の流量)が正確に取得される。ただし、この時点では補正された流量測定結果(f’init)と水素含有燃料供給部7への流量指示値(Finit)は一致していない。なぜなら、制御開始時において流量指示値(Finit)が水素含有燃料供給部7へ送信されても、燃料流量計16の流量測定結果が正確な流量を表示していないため、制御部11は誤差を含んだ当該流量測定結果に合わせて水素含有燃料供給部7の調整を行っている。従って、第一制御例においては、燃料流量計16の補正が行われた後は、補正後の流量測定結果が、流量指示値(Finit)と一致するまで、すなわち、式(2)の条件が満たされるまで、水素含有燃料供給部7の調整と燃料流量計16による測定が繰り返し実行される。
【0047】
【数2】

【0048】
〈ステップS30〉
S20終了時における燃料流量計16の補正された流量測定結果(f’S20)に基づいて、S20終了時における燃料中の空気の実質流量(aS20)及び水素含有燃料の実質流量(gS20)が、式(3)及び式(4)に基づいて演算される。
【0049】
【数3】

【0050】
〈ステップS40〉
S20終了時における燃料中の空気の実質流量(aS20)から、S20終了時における燃料中の水素含有燃料の実質流量(gS20)が除算される。
【0051】
〈ステップS50・ステップS70〉
S40にて求められた値が、一定値以上であるかの判定がなされる。一定値以上であった場合、システムが停止される。
【0052】
〈ステップS60〉
燃料電池システム1の制御に必要とされる流量(g)の水素含有燃料が供給されるように、水素含有燃料供給部7への流量指示値(Fadj)が、式(8)に基づいて調整される。式(8)は、式(5)〜式(7)に示す演算を経て導き出される。燃料流量計16の補正された流量測定結果は、正しい流量を示しているため、水素含有燃料供給部7は、流量指示値(Fadj)に従った流量の燃料を正確に供給することができる。
【0053】
【数4】

【0054】
[第二制御例]
第二制御例は、第一制御例と同様に、水素発生部4に供給される水素含有燃料の流量(すなわち、空気混合燃料の流量から空気の流量を除いたもの)が、燃料電池システム1の制御に必要とされる水素含有燃料の流量に一致するようにする制御である。第二制御例は、S20の時点では水素含有燃料供給部7の調整を行わず、S60で一度に調整を行っている点で第一制御例と相違している。
【0055】
〈スタート時〉
第一制御例における「スタート時」の制御と同様である。
【0056】
〈ステップS10〉
第一制御例における「ステップS10」の制御と同様である。
【0057】
〈ステップS20〉
燃料中の酸素濃度に基づいて、燃料流量計16の流量測定結果に含まれる誤差(e)が決定される。また、誤差を調整するために、式(9)によって燃料流量計16の流量測定結果の補正がなされ、補正された流量測定結果(f’init)が取得される。
【0058】
【数5】

【0059】
ここでは、水素含有燃料供給部7の調整は実施されない。すなわち、式(10)、式(11)に示す関係がなりたっている。
【0060】
【数6】

【0061】
〈ステップS30〉
第一制御例と同様に、S20終了時における燃料中の空気の実質流量(aS20)及び水素含有燃料の実質流量(gS20)が、式(12)及び式(13)に基づいて演算される。
【0062】
【数7】

【0063】
〈ステップS40〉
第一制御例における「ステップS40」の制御と同様である。
【0064】
〈ステップS50・ステップS70〉
第一制御例における「ステップS50・S70」の制御と同様である。
【0065】
〈ステップS60〉
第一制御例と同様に、燃料電池システム1の制御に必要とされる流量(g)の水素含有燃料が供給されるように、水素含有燃料供給部7への流量指示値(Fadj)が、式(17)に基づいて調整される。式(17)は、式(14)〜式(16)に示す演算を経て導き出される。燃料流量計16の補正された流量測定結果は、正しい流量を示しているため、水素含有燃料供給部7は、流量指示値(Fadj)に従った流量の燃料を正確に供給することができる。
【0066】
【数8】

【0067】
第二制御例は、水素含有燃料供給部7の調整をステップS60で一度にまとめて行っているため、演算の負荷を第一制御例に比して軽くすることができる。一方、第二制御例では、誤差を含んだ流量測定結果に基づく水素含有燃料供給部7の出力状態が、ステップS60の処理が完了するまで継続されている。すなわち、第一制御例は、第二制御例に比してより早い段階で、少なくとも流量測定結果が誤差を含んでいることによる影響を解消することができる。
【0068】
[第三制御例]
第三制御例は、燃料中の酸素を消費するための水素含有燃料を考慮し、当該酸素を消費するための分量を除いた水素含有燃料の流量を、燃料電池システム1の制御に必要とされる水素含有燃料流量(g)に一致させる場合の制御例である。
【0069】
〈スタート時〜ステップS50・S70〉
第一制御例または第二制御例における「スタート時」〜「ステップS50・S70」の制御と同様である。
【0070】
〈ステップS60〉
水素含有燃料と酸素との燃焼反応は、式(18)で示される。
【0071】
【数9】

【0072】
S20終了時における燃料の流量(=f’S20)のうち、水素含有燃料の一部は式(18)に示す燃焼反応により燃焼する。燃料中の空気との燃焼反応により消費される流量(glost)は、式(19)で導き出される。従って、水素リッチガス中の水素を発生させるのに寄与できる水素含有燃料の流量は、式(20)で導き出される。
【0073】
【数10】

【0074】
従って、酸素を消費するための燃料を除いた水素含有燃料の流量を、燃料電池システム1の制御に必要とされる流量(g)と一致させる場合、水素含有燃料供給部7への流量指示値(Fadj)は、式(23)に基づいて調整される。式(23)は、式(21)〜式(22)に示す演算を経て導き出される。燃料流量計16の補正された流量測定結果は、正しい流量を示しているため、水素含有燃料供給部7は、流量指示値(Fadj)に従った流量の燃料を正確に供給することができる。
【0075】
【数11】

【0076】
第三制御例は、燃料に含まれる酸素を消費するための水素含有燃料まで考慮して制御を行うため、燃料電池システム1に必要な水素含有燃料を第一制御例及び第二制御例に比して、一層正確に供給することができる。一方、第三制御例の場合は酸素消費に用いられる水素含有燃料を補うような制御がなされるため、発生する熱量は第一制御例や第二制御例より大きくなる。従って、水素含有燃料の流量の正確性を重視して制御を行う場合は、第三制御例がより好ましく、システムの熱のバランスを重視して制御を行う場合は、第一制御例あるいは第二制御例がより好ましい。
【0077】
なお、第一制御例や第二制御例の演算を行った後に、更に演算を加えて酸素を消費するための水素含有燃料を補うような制御をおこなってもよい。
【0078】
次に、燃料電池システム1の作用・効果について説明する。
【0079】
燃料電池システム1の制御部11は、燃料流量計16からの値を補正することによって、燃料が空気と水素含有燃料を含む空気混合燃料であった場合でも、燃料流量を正確に取得することができる。制御部11は、酸素または窒素を検出するセンサー17の検出結果に基づいて、燃料に含まれる空気の量を演算することができる。従って、水素発生部4に供給される燃料に空気が含まれていた場合に、燃料電池システム1は、燃料中の水素含有燃料にどの程度の空気が混合されているかを把握することができる。制御部11は、燃料中の空気の混合量に応じて、水素発生部4に供給される燃料の量を適切に調整することが可能となる。すなわち、制御部11は、燃料流量計16からの値を補正して空気混合燃料の流量を正確に取得することができ、燃料中に含まれる空気の混合量を把握できるため、燃料中の空気の混合量によらず、熱自立運転に必要な量の水素含有燃料が得られるように制御を行うことができる。以上によって、燃料電池システム1は、空気が混合された状態で水素含有燃料が供給された場合であっても、熱自立運転を行うことが可能となる。
【0080】
また、空気が含まれている燃料と、含まれていない燃料を比較した場合、燃料の量が同じであれば、空気が含まれている燃料の方が、空気が含まれる分、水素含有燃料の量が減少している。燃料電池システム1の制御部11の調整部105は、このような理由により減少する水素含有燃料の量を考慮して、燃料の調整を行うことができる。これにより、空気が混合された状態で水素含有燃料が供給された場合に、必要な量の水素含有燃料を確実に供給することができる。
【0081】
また、燃料に空気が含まれていた場合、当該空気中の酸素を消費するための水素含有燃料が更に必要となる。燃料電池システム1の制御部11は、燃料の中の酸素の消費に要する水素含有燃料の量を考慮して、水素発生部4に供給する燃料の量を調整することができる。これにより、空気が混合された状態で水素含有燃料が供給された場合に、燃料電池システムは一層好適に熱自立運転を行うことができる。
【0082】
また、燃料電池システム1は、燃料に含まれる空気の量に応じて、燃料供給異常を検出する異常検出部106を備え、異常検出部106は燃料供給異常を検出した場合に、システム停止を行うことができる。これによって、燃料に含まれる空気が多くなりすぎている状況に対応することが可能となる。
【0083】
また、異常検出部106は、補正部104および演算部103により得られる燃料流量に対する空気流量比を判定し、当該比率が所定の閾値を超えた場合に、燃料供給異常を検出することができる。これにより、一層正確に燃料供給異常を検出することができる。
【0084】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明に係る燃料電池システムは、実施形態に係る上記燃料電池システム1に限定されない。
【0085】
例えば、図3に示す制御処理の例では、センサー17の検出結果として酸素濃度を用いたが、窒素濃度を用いてもよく、酸素濃度及び窒素濃度の両方を用いてもよい。
【符号の説明】
【0086】
1…燃料電池システム、4…水素発生部、5…セルスタック、11…制御部、16…燃料流量計(供給量取得部)、17…センサー(検出部)、101…供給量取得部、102…検出部、103…演算部、104…補正部、105…調整部、106…異常検出部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素含有燃料を含む燃料を用いて水素含有ガスを発生させる水素発生部と、
前記水素含有ガスを用いて発電を行うセルスタックと、を備える燃料電池システムであって、
前記水素発生部に対して供給される前記燃料の供給量を取得する供給量取得部と、
前記水素発生部の上流側において、前記燃料の中の酸素または窒素を検出する検出部と、
前記検出部の検出結果に基づいて、前記供給量取得部からの値が含む誤差を補正し、前記空気を含んだ前記燃料の供給量を取得する補正部と、
前記検出部の検出結果に基づいて、前記燃料に含まれる空気の量を演算する演算部と、
を備えることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
前記燃料に含まれる前記空気の量に基づいて、前記燃料の供給量を調整する調整部を更に備え、
前記調整部は、前記燃料に前記空気が含まれることによって減少する前記水素含有燃料の量を考慮して、調整を行うことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記燃料に含まれる前記空気の量に基づいて、前記燃料の供給量を調整する調整部を更に備え、
前記調整部は、前記燃料の中の酸素の消費に要する前記水素含有燃料の量を考慮して、調整を行うことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記燃料に含まれる空気の量に応じて、燃料供給異常を検出する異常検出部を更に備え、
前記異常検出部は燃料供給異常を検出した場合に、システム停止を行うことを特徴とする請求項1〜3の何れか一項記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記異常検出部が、前記補正部および前記演算部により得られる燃料流量に対する空気流量比を判定し、当該比率が所定の閾値を超えた場合に、燃料供給異常を検出することを特徴とする請求項4記載の燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−169214(P2012−169214A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−31011(P2011−31011)
【出願日】平成23年2月16日(2011.2.16)
【出願人】(000004444)JX日鉱日石エネルギー株式会社 (1,898)
【Fターム(参考)】