説明

燃料電池システム

【課題】燃料ガスの組成の変動があっても安定運転することができる燃料電池システムを提供すること。
【解決手段】燃料ガスが供給される燃料ガス受入部1と、改質処理部加熱手段7により加熱されて、燃料ガスを水蒸気を用いて改質処理して水素含有ガスを生成する改質処理部3と、改質処理部3から得られた水素含有ガスを用いて発電する燃料電池部6とを備え、改質処理部3の温度および燃料電池部6の負荷電流に基き、燃料ガス受入部1に対する燃料ガス供給量を制御するとともに、燃料電池部6の負荷電流に基き、改質処理部3に対する水蒸気供給量および改質処理部加熱手段7に対する酸素含有ガスの供給量を制御する制御部9を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料ガスが供給される燃料ガス受入部と、改質処理部加熱手段により加熱されて、前記燃料ガスを水蒸気を用いて改質処理して水素含有ガスを生成する改質処理部と、改質処理部から得られた水素含有ガスを用いて発電する燃料電池部とを備えた燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような燃料電池システムは、燃料ガスを水蒸気により水素ガスと一酸化炭素ガスを含む改質処理ガスに改質処理する改質処理部を備え、さらに、その改質処理ガス中の一酸化炭素ガスを二酸化炭素ガスに変成させることにより変成処理する変成処理部や、その変成処理ガス中の一酸化炭素を選択酸化することにより選択酸化処理する選択酸化処理部等を備えて構成されている。
【0003】
このような燃料電池システムの燃料ガス供給量は、前記改質処理部の温度および前記燃料電池部の出力電流に基づき決定されており、その燃料ガス供給量に基づき、所定の関数やテーブルを用いて、前記改質処理部における改質に用いる水蒸気量や、改質処理部に設けられる改質処理部加熱手段を加熱するために用いられる燃料ガス量や酸素含有ガス量(以下これらの供給量をまとめて各種管理供給量と称する)が決定されていた(たとえば特許文献1参照)。これにより、燃料電池部の負荷電流に対応して理想的に求められる燃料ガス供給量に、前記改質処理部の運転状態を安定化するための改質処理部の温度情報を基に求められる燃料ガス補正供給量を加味して、前記燃料ガス供給量が適切に設定されるとともに、前記改質処理部において、安定した改質反応および改質処理部加熱手段による加熱が実現され、燃料電池部における安定出力が実現されると考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許2793365号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記燃料ガスとして、熱量が一定に調整された都市ガスが汎用されているが、メタンを主成分とする燃料ガスとしては、天然ガス、バイオガス、炭鉱ガスなどメタン含有率やその他の成分組成が異なる種々のものが知られている。
【0006】
ところが、上記燃料電池システムにおいて都市ガスが燃料として用いられている場合に、前記燃料ガスとして都市ガスに代えて燃料が調整されていない天然ガスを用いるには、前記各種管理供給量を決定するために、別の関数あるいはテーブルを採用する必要がある。
【0007】
すなわち、上記燃料電池システムにおいては、燃料ガス供給量は、燃料ガスの組成が一定しているものとして燃料ガスの供給量が決定されているために、組成の異なる他の燃料ガスを用いて運転することはできない。具体的には、理想的には負荷電流の関数として決まる燃料ガスの供給量を、改質処理部の温度により補正して適正化したとしても、その燃料ガスの供給量に基づいて求められる前記各種管理供給量は、燃料ガスの組成の変動を反映することなく、燃料ガスの供給量の変動分に応じて変動することになる。この変動幅が大きくなると、前記改質処理部における水蒸気供給量の不足や、熱量の不足が生じ、前記改質処理部の運転状態が、前記燃料電池部の負荷電流需要を賄えるだけの反応を継続できないものになるという問題がある。このような事情から、上述の燃料電池の燃料ガスとしてを、組成の安定しない天然ガスやバイオガス、炭鉱ガスを用いることはできない。
【0008】
そこで、本発明の目的は、上記実状に鑑み、燃料ガスとして組成の異なるガスや組成の変動するガスを用いたとしても、安定運転することができる燃料電池システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
〔構成1〕
上記目的を達成するための本発明の燃料電池システムの特徴構成は、
燃料ガスが供給される燃料ガス受入部と、改質処理部加熱手段により加熱されて、前記燃料ガスを水蒸気を用いて改質処理して水素含有ガスを生成する改質処理部と、改質処理部から得られた水素含有ガスを用いて発電する燃料電池部とを備え、
前記改質処理部の温度および前記燃料電池部の負荷電流に基づき、前記燃料ガス受入部に対する燃料ガス供給量を制御するとともに、前記燃料電池部の負荷電流に基づき、各種管理供給量を制御する制御部を備えた点にある。
【0010】
〔作用効果1〕
上記構成によると、前記制御部は、前記改質処理部の温度および前記燃料電池部の負荷電流に基き、前記燃料ガス受入部に対する燃料ガス供給量を制御したうえで、
前記各種管理供給量を、従来、前記燃料ガス供給量に基づき制御していたのに代え、前記燃料電池部の負荷電流に基づき制御する。すなわち、各種管理供給量の制御は、燃料ガス受け入れ部に対する燃料ガス供給量の制御とは別の制御とされる。
【0011】
これにより、燃料電池部の負荷電流に基づき、まず、燃料ガス供給量を求める。このようにして求められた燃料ガス量は、そのままでは燃料ガスの組成変動を加味していないものであるので、前記改質処理部において生成する水素含有ガス量は前記燃料電池部において必要とされる水素量に対して過不足を生じる。その結果、この過不足を反映して燃料電池部の出力が変動する。この変動を燃料ガス供給量を改質処理部の温度を加味して補正すると、前記改質処理部の温度は前記燃料ガスの燃焼熱量を反映することになるので、前記燃料ガスの組成変動の影響を補正する制御が行えることになる。このような制御が可能となるのは、改質処理部の温度が実質的に改質処理部に供給される燃料ガスの燃焼熱量を反映するものだからである。
【0012】
ここで、上記従来の前記燃料ガス供給量に基づく制御を基準に考えると、燃料ガスの組成変動に基づく燃料電池部の出力変動に対する燃料ガス供給量の補正は、想定される燃料ガスの組成に基き為されているから、誤った基準に基づき補正されることになる。すると補正された後の燃料ガス量は、さらに補正を必要とする状態にとどまる。これに対して、上記本発明の構成によると、この燃料電池部の出力の変動を直接改質処理部に関する各種管理供給量に反映することになり、発電に寄与する成分に応じた調整を行い、直接的に改質処理部の運転温度の適正化および前記燃料電池部の運転条件の適正化を行うことができ、燃料電池システムの安定運転に寄与することができる。
【0013】
そのため、原料ガスの組成の変動がある程度大きくても、安定的に追従して運転を継続しやすくなり、燃料電池の効率的な運転に寄与することができた。
【0014】
また、従来も制御パラメータとして監視していた負荷電流量に基づき、各種管理供給量を制御するので、新たに監視しなければならない制御パラメータは発生せず、燃料電池システムとしての構成を複雑化することなく制御部による制御が行える。
【0015】
〔構成2〕
また、上記構成に加えて、前記改質処理部で生成した水素含有ガス中の一酸化炭素ガスを変成処理する変成処理部を備えるとともに、変成処理部を通過した一酸化炭素ガスを選択酸化して二酸化炭素ガスに変換する選択酸化処理部を備え、前記制御部は、前記燃料電池部の負荷電流に基づき、前記選択酸化処理部に対する酸素含有ガス供給量を制御可能に構成されてもよい。
【0016】
〔作用効果2〕
燃料電池システムとしては、通常、改質処理部で改質された水素含有ガス中の一酸化炭素ガスを変成処理する変成処理部、変成処理部を通過した一酸化炭素ガスを選択酸化して二酸化炭素ガスに変換する選択酸化処理部を備えるが、この変成処理部や選択酸化処理部についても、燃料電池部の負荷電流に基づき直接制御することになるから、この燃料電池部の出力の変動を直接各種管理供給量に反映することになり、燃料ガスの組成の変動に全く関与することなく、直接的に前記燃料電池部の運転条件の適正化を行うことができ、燃料電池システムの安定運転に寄与することができる。
【0017】
〔構成3〕
尚、前記燃料ガスが、組成が変動する天然ガスやバイオガス、炭鉱ガスであることが望ましい。
【0018】
〔作用効果3〕
上記組成の変動する燃料ガスとしてバイオガスや炭鉱ガスが挙げられるが、従来、前記バイオガスや炭鉱ガスは、さらにエネルギーを使って精製しなければエネルギー源として適正なものとならなかったのに対して、精製に必要なエネルギー量を低減させ、かつ燃料電池の原料としての燃焼ガスに用いることができることになるので、これらのガスの利用可能性を大きく高めることができる。
【発明の効果】
【0019】
従って、本発明によれば、幅広い組成の燃料ガスを原料として用いることができる燃料電池を提供することができ、安定運転することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】燃料電池システムの概略構成図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明の燃料電池システムを説明する。尚、以下に好適な実施例を記すが、これら実施例はそれぞれ、本発明をより具体的に例示するために記載されたものであって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々変更が可能であり、本発明は、以下の記載に限定されるものではない。
【0022】
〔燃料電池システム〕
本発明の燃料電池システムは、天然ガス等の燃料ガスを受入れる燃料ガス受入部1を備え、前記燃料ガス受入部1より受入れた燃料ガス中の硫黄成分を除去する脱硫処理部2を備え、前記脱硫処理部2で脱硫された燃料ガスを受入れ、水蒸気を用いて改質処理して水素含有ガスを生成する改質処理部3を備え、改質処理部3で生成した改質ガス(水素含有ガス)中の一酸化炭素ガスを変成処理する変成処理部4を備えるとともに、変成処理部4を通過した変成ガス(水素含有ガス)中の一酸化炭素ガスを選択酸化して二酸化炭素ガスに変換した燃料水素ガス(水素含有ガス)を得る選択酸化処理部5を備え、得られた燃料水素ガス(水素含有ガス)を用いて発電する燃料電池部6を備える。また、前記改質処理部3には、改質処理部加熱手段としての燃焼器7が設けられるとともに、前記燃焼器7からの廃熱を用いて水蒸気を生成する水蒸気生成器8が設けられ、一組の改質装置を構成している。燃料電池システムのこれらの構成に供給される各種管理供給量は、前記改質処理部3に設けられる温度検知部3aと前記燃料電池部6に設けられる負荷電流検知部6aからの検知信号に基づき制御部9により制御される。
【0023】
前記脱硫処理部2は、たとえば、銅−亜鉛系脱硫触媒が内槽された触媒反応器からなり、前記燃料ガス受入部1より受入れた燃料ガス中に含まれる硫黄成分を除去し、前記硫黄成分が前記改質処理部3における改質反応を阻害しないよう前記燃料ガスを脱硫した脱硫ガスを生成する。前記燃料ガス受入部1より前記脱硫処理部2に受入れる燃料ガス量は、流量調整弁2aにおいて前記制御部9により供給制御される。
【0024】
前記改質処理部3は、前記脱硫処理部2を経て供給される脱硫ガスに、前記水蒸気生成器8から供給される水蒸気を添加混合して、ルテニウム、ニッケル、白金などの改質触媒により改質して水素含有ガスを生成する。この際、改質反応は吸熱反応であるため、前記燃焼器7により前記改質処理部3が加熱される。前記燃焼器7は、前記燃料電池部6からのオフガスと、前記燃料ガス受入部1からの燃料ガスとから調整される燃料を、ブロワ7aから供給される空気を用いて燃焼し、前記改質処理部3に設けられる改質触媒を所定の温度域に維持するように、前記制御部9から流量調整弁7bにおいて燃料ガスの供給が制御され、改質ガスを生成する。水蒸気生成器8は、前記燃焼器7からの排ガスの排熱により加熱され、生成する水蒸気供給量は、流量調整弁8aにより制御される。また、前記改質処理部3における温度は、前記温度検知部3aにより監視されており、前記温度検知部3aにおける検知信号は、前記制御部9に入力される。
【0025】
前記変成処理部4は、酸化鉄、銅系の変成触媒を用いて、前記改質処理部3で生成した改質ガス中のCOガスと前記改質処理部3に供給された水蒸気の余剰分とを反応させて変成処理することにより、前記改質処理部3において得られた水素含有ガス中に含まれる一酸化炭素成分を変成して二酸化炭素に変換する。これにより、前記水素含有ガス中における燃料電池部6の燃料極を劣化させる原因となる一酸化炭素濃度を低減させた変成ガスを得る。
【0026】
前記選択酸化処理部5は、前記変成処理部4から排出される変成ガス中に残留している一酸化炭素を除去する選択酸化触媒が備えられ、前記変成ガスをブロワ5aから供給される空気(酸素)により、前記変成ガスは、さらに一酸化炭素ガス濃度の低い(たとえば10ppm以下)水素リッチな組成の燃料水素ガスに変換するように構成されている。
【0027】
得られた燃料水素ガスは、前記燃料電池部6の燃料極に供給され、電力負荷に対して負荷電流が供給される。負荷電流は、負荷電流検知部6aにおいて監視され、その検知信号は前記制御部に入力される。また、前記燃料電池部6の燃料極におけるオフガスは前記燃焼器7に循環され、燃焼される。
【0028】
〔運転例〕
前記制御部9は、燃料電池システムの上記構成における、前記改質処理部3に設けられる温度検知部3aと前記燃料電池部6に設けられる負荷電流検知部6aからの検知信号に基づき、前記燃料ガス受入部1に対する燃料ガス供給量、前記改質処理部3に対する水蒸気供給量および燃焼器7に対する燃料ガスおよび酸素含有ガスの供給量および前記選択酸化処理部5に対する酸素含有ガス供給量を制御する。
【0029】
燃料電池の制御では、パラメータとして以下を制御する。
【0030】
燃料ガス量(Q0)
燃料ガス1分子当たりの炭素数(n)※
(※各種燃料ガスが混在している場合は、各種燃料ガスの体積割合による平均値とする)
電池電流(I0)
セル枚数(N)
改質処理部部の温度(T0)
想定メタン転化率(η0)
想定水素利用率(UH0)
水蒸気量(Q1)
水蒸気量と燃料ガスのカーボン比(S/C)
選択酸化空気流量(Q2)
選択酸化空気中の酸素と改質ガス中の一酸化炭素の比(O2/CO)
オフガス燃焼用バーナ空気流量(Q3)
オフガス燃料とバーナ空気の比(A/F)
【0031】
燃料電池の運転制御を行う場合、電池電流(I0)から計算される必要燃料水素ガス(QH1)から逆算し、燃料ガス流量を決定するテーブルを備える。この燃料ガス流量は改質処理部3の温度制御を行うためにフィードバック制御(改質処理部の温度T0が設定値よりも下がれば燃料ガス流量を増加、T0が設定値より上がれば燃料ガス流量を減少するように制御)を行うことができる(f(T0))。
【0032】
通常、改質水流量Q1および選択酸化空気流量Q2は燃料ガス流量Q0を元に、燃料ガスガス組成とS/C、O2/COのパラメータにより決定される。また、バーナ空気流量Q3は燃料ガス流量Q0と電池電流I0、A/F、セル枚数Nのパラメータにより決定される。
【0033】
すなわち、燃料ガス流量の目標値は、ファラデー数や水素の熱量などの固定された係数から求められる係数をF1とした場合、電池で消費される水素量は下記のように計算される。
燃料水素ガス量=I0×N×F1
電池に送る水素量としては電池の水素利用率UH0を考慮して、
電池に送る水素量=電池で消費される水素量/UHO
で計算される。
燃料ガス流量Q0としてはメタン転化率η0を考慮して
電池に送る水素量/η0
で計算される。
ここでN、F1、UH0、η0は全て固定値であるため、結局、燃料ガス流量の目標値は電池電流I0の関数となり、以下のように表される。
燃料ガス流量の目標値=k0*I0
(k0はN、F1、UH0、η0によって決まる定数)
さらに、この燃料ガス流量Q0は改質処理部の温度T0によりフィードバック補正されるため、実際の値は、下記関数によりI0とT0から求められる。
【0034】
Q0=k0*I0+f(T0)
【0035】
従って、前記制御部は、上記K0(もしくは、N、F1、UH0、η0)およびf(T0)を制御テーブルに記憶し、燃料ガス流量Q0を決定する。
【0036】
上記各種管理供給量のパラメータは、前記改質処理部3の温度T0が一定になるように流量制御してf(T0)を無視できる運転条件を想定すると、燃料ガスが天然ガス(純メタン)である場合(n=1)、たとえば、負荷電流量(I0)に基づき、下表1より決定されるパラメータを用いることになる。
【0037】
【表1】

【0038】
〔比較運転例〕
従来行われている各種管理供給量の決定方法として、燃料ガス量Q0に基づいて各種管理供給量を求めた場合の比較運転例を下記に示す。
【0039】
改質水流量Q1は、改質処理部における発熱量に変動がない場合、上記運転例と同様にして求めた燃料ガス流量Q0と燃料ガス組成、S/Cのパラメータにより決定される。燃料が純メタンの場合(燃料ガス1分子当たりの炭素数n=1)、改質ガスを作る主な反応は、下記のように表される。
【0040】
CH4+H2O→CO+3H2(改質反応)
CO+H2O→CO2+H2(変成反応)
【0041】
この反応をまとめると下記のように表される。
【0042】
CH4+2H2O→CO2+4H2
【0043】
ここで燃料ガスを純メタンとすると、1モル当たりに必要な水蒸気(水)は2モル(S/C=2)であるが、実際は反応条件の安定化のため、S/Cを2.5〜3.0程度に設定する必要がある。従って改質水流量Q1は下記のように決定される。
【0044】
Q1=Q0*n*S/C
【0045】
従って、前記制御部は、上記S/Cに基づいて、改質水流量Q1を決定する。
【0046】
選択酸化空気流量Q2は、同様に燃料ガス流量Q0を元に想定される係数F2を固定値としてO2/COから下記のように決定される。
【0047】
Q2=Q0*F2*O2/CO
【0048】
従って、前記制御部は、上記F2、O2/COに基づいて、選択酸化空気流量Q2を決定する。
【0049】
バーナ空気流量Q3については電池燃料極出口のオフガス熱量を計算し、それにA/Fのパラメータをかけて決定される。
オフガス熱量の計算には供給される燃料ガス流量から、電池で消費される水素量(I0×N×F1)に水素の熱量から計算される固定係数F3をかけることにより燃料ガス流量換算し、実際の燃料ガス流量Q0から減算することによりオフガス熱量を計算することができる。
従って、燃料ガスの理論空気量をA0として、下記式によって求められる。
【0050】
Q3=(Q0−F3×I0×N×F1)×A0×A/F
【0051】
従って、前記制御部は、上記F3、N、F1、A0、A/Fに基づいて、バーナ空気流量Q3を決定する。
ここで、I0から求められるQ0を基準に、前記改質処理部3の温度T0が一定になるように流量制御してf(T0)を無視できる運転条件を想定すると、燃料ガスの組成が変動し、nの値が変ると、上記パラメータで運転した場合に、実際のS/C、O2/CO、A/Fの値が運転継続可能な許容値を超えて大きくずれるおそれがある。
【0052】
たとえば、燃料ガスが天然ガスの場合に用いるべきパラメータを都市ガスに適用した場合、1m3あたりの熱量は約40MJ/m3であるが、都市ガス(燃料ガス1分子当たりの炭素数n=1.2)では1m3当たりの熱量が約46MJ/m3と約1.15倍の熱量変動が発生する。すなわち燃料ガスの供給熱量を同一(改質処理部3の動作温度が一定)とした場合、純メタンと都市ガスでは約1.15倍の流量変化があり、その流量を元に決定されるプロセス量もその流量分変化する。
【0053】
たとえば、燃料ガスの流量に基づき、各パラメータから流量を求める制御をしている場合、燃料ガスを天然ガス(n=1)から都市ガス(n=1.2)に変更すると改質処理部3の温度を一定に運転制御した場合に、燃料ガスの流量は1/1.15となり、実際の運転状態は、
Q0=0.87モル/min
Q1=2.35モル/min
Q2=0.113モル/min
Q3=2.78モル/min
となる。
【0054】
しかし、この状態での実際の制御パラメータは、
S/C=2.25
2/CO=1.42
A/F=1.05
となる。
【0055】
これは、通常、燃料電池システムが、
S/C=2.5〜3.0
2/CO=1.5〜1.7
A/F=1.2〜1.4
で制御されるべき許容範囲を超えて運転してしまうことになるので燃料電池部6が運転不
能な状態となる。
【0056】
〔実施例〕
これに対して、負荷電流出力を基に前記表1のテーブルよりQ1、Q2、Q3を決定すると、
Q0=0.87モル/min
Q1=2.7モル/min
Q2=0.13モル/min
Q3=4.1モル/min
として運転することとなる。
【0057】
すると、実際の制御パラメータは
S/C=2.58
2/CO=1.63
A/F=1.21
となり、正常運転を行うことができる。
【0058】
〔まとめ〕
これら運転例をまとめると表2のようになる。表2より、電池電流(I0)に基づいて、各制御流量(Q1〜Q3)を求めると、Q0に基づいて各制御流量(Q1〜Q3)を求める場合にくらべて、制御パラメータのばらつきを好適な範囲に抑制できる事が読み取れる。
【0059】
【表2】

【0060】
〔その他の実施形態〕
上記運転例では、簡略化のため改質処理部3の温度を不変に制御できているものとしての数値計算例を示しているが、実際には改質処理部3の温度(T0)に基づき燃料ガス供給量(Q0)をフィードバック制御するファクタとしてf(T0)を前記制御部に制御させることもできる。
【0061】
上記運転例では簡略化のため、燃料ガス組成の変化を、天然ガスと都市ガスとの置きかえとして説明したが、上述の例より、連続的に組成が変動しうるバイオガスや炭鉱ガスに対しても、同様に対応することができることが明らかであり、バイオガスや炭鉱ガスの利用可能性を大きく高めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明によれば、燃料ガスの組成の変動があっても安定運転することができる燃料電池システムとして用いることができる。
【符号の説明】
【0063】
1 :燃料ガス受入部
2 :脱硫処理部
2a :流量調整弁
3 :改質処理部
3a :温度検知部
4 :変成処理部
5 :選択酸化処理部
5a :ブロワ
6 :燃料電池部
6a :負荷電流検知部
7 :燃焼器(改質処理部加熱手段)
7a :ブロワ
7b :流量調整弁
8 :水蒸気生成器
8a :流量調整弁
9 :制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガスが供給される燃料ガス受入部と、改質処理部加熱手段により加熱されて、前記燃料ガスを水蒸気を用いて改質処理して水素含有ガスを生成する改質処理部と、改質処理部から得られた水素含有ガスを用いて発電する燃料電池部とを備えた燃料電池システムであって、
前記改質処理部の温度および前記燃料電池部の負荷電流に基づき、前記燃料ガス受入部に対する燃料ガス供給量を制御するとともに、前記燃料電池部の負荷電流に基づき、前記改質処理部に対する水蒸気供給量および改質処理部加熱手段に対する酸素含有ガスの供給量を制御する制御部を備えた燃料電池システム。
【請求項2】
前記改質処理部で生成した水素含有ガス中の一酸化炭素ガスを変成処理する変成処理部を備えるとともに、変成処理部を通過した一酸化炭素ガスを選択酸化して二酸化炭素ガスに変換する選択酸化処理部を備え、前記制御部は、前記燃料電池部の負荷電流に基づき、前記選択酸化処理部に対する酸素含有ガス供給量を制御可能に構成されている請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記燃料ガスが、熱量が調整されていない天然ガスやバイオガスまたは炭鉱ガスである請求項1または2に記載の燃料電池システム。

【図1】
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【公開番号】特開2012−216420(P2012−216420A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−80978(P2011−80978)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【Fターム(参考)】