説明

燃料電池システム

【課題】循環ポンプの上流側の管路を可撓性のあるホースで形成しても、その管路が負圧によって潰れることを回避することが可能であって、コストアップの要因も生じさせず組み付け性も悪化させない燃料電池システムを提供すること。
【解決手段】この燃料電池システムFCSは、起動時若しくは管路における冷却水の温度が閾値温度を下回った際に、冷却水ポンプCS2の回転数に上限を設け、その上限回転数を上回らない回転数で冷却水ポンプCS2を運転する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池に水素を含む燃料ガスと酸化ガスとを供給して発電させる燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
水素と酸素との電気化学反応を利用して発電する燃料電池としては、例えば、固体高分子型燃料電池がある。この固体高分子型燃料電池は、複数のセルを積層して構成されたスタックを備えている。スタックを構成するセルは、アノード(燃料極)とカソード(空気極)とを備えており、これらのアノードとカソードとの間には、イオン交換基としてスルフォンサン基を有する固体高分子電解質膜が介在している。
【0003】
アノードには燃料ガス(水素ガスまたは炭化水素を改質して水素リッチにした改質水素)が供給され、カソードには酸化剤として酸素を含む酸化ガス(一例として空気)が供給される。アノードに燃料ガスが供給されることで、燃料ガスに含まれる水素がアノードを構成する触媒層の触媒と反応し、これによって水素イオンが発生する。発生した水素イオンは固体高分子電解質膜を通過して、カソードで酸素と電気反応を起こす。この電気化学反応によって発電が行われる構成となっている。
【0004】
このような燃料電池を含む燃料電池システムでは、燃料電池の冷却のため、燃料電池に冷却水を供給するための管路と、その管路に循環ポンプと、を設けることが一般的に行われている(例えば、下記特許文献1参照)。下記特許文献1に記載の燃料電池システムでは、燃料電池の出力電流に基づいて循環ポンプの回転数を制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−100325号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところでこのような燃料電池システムを車両に搭載するにあたっては、循環ポンプから燃料電池とラジエータとを経由する流路が形成されるように管路を構成すると共に、ラジエータをバイパスすることができるように三方弁を配置した構成とすることが一般的に行われている。燃料電池システムを搭載した車両は、従来のエンジンを搭載した車両のようにシリンダブロックがないため、循環ポンプ、燃料電池、ラジエータ、三方弁をホースのような可撓性のある管路で繋ぐ必要がある。一方、このような管路構成で冷却水の循環をさせようとすると、循環ポンプの出口から燃料電池、ラジエータ、三方弁と水圧が降下し、三方弁と循環ポンプとの間の水圧が最も低下する。更に車両に搭載した場合の燃料電池システムの特徴として、特定の状況下で循環ポンプの回転数を上げたいというニーズがある。具体的には、低温起動時において余分に発電した電気を捨てるため、循環ポンプを高回転で動作させるニーズがある。更に、高温の状態から水温が下がった場合にも、循環ポンプを高回転で動作させるニーズがある。
【0007】
このように循環ポンプの回転数を上げると、三方弁と循環ポンプとの間の負圧が大きくなり、ホースが閉塞する恐れがある。そこで、ホースが閉塞しないように、三方弁と循環ポンプとの距離を短くしたり、三方弁と循環ポンプとの間に金属管を介在させたり、三方弁と循環ポンプとを直接繋いだりすることが考えられる。しかしながら、三方弁と循環ポンプとの距離を短くすれば搭載自由度が低く、ホースが差し込みにくくなり組み付け性が悪くなる。また、三方弁と循環ポンプとの間に金属管を介在させると、部品点数が多くなりコストアップの要因となるうえに、ホースの差込難さは改善されず組み付け性の悪さも改善されない。また、三方弁と循環ポンプとを直接繋ぐためにはクイックコネクタが必要となるため、更にコストアップの要因となる。
【0008】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、循環ポンプの上流側の管路を可撓性のあるホースで形成しても、その管路が負圧によって潰れることを回避することが可能であって、コストアップの要因も生じさせず組み付け性も悪化させない燃料電池システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明に係る燃料電池システムは、燃料電池に水素を含む燃料ガスと酸化ガスとを供給して発電させる燃料電池システムであって、前記燃料電池に冷却水を供給するための管路に設けられてなる循環ポンプと、前記循環ポンプの回転数を制御するための制御部と、を備え、前記制御部は、前記燃料電池システムの起動時若しくは前記管路における冷却水の温度が閾値温度を下回った際に、前記循環ポンプの回転数に上限を設け、その上限回転数を上回らない回転数で前記循環ポンプを運転することを特徴とする。
【0010】
本発明では、燃料電池システムの起動時若しくは管路における冷却水の温度が閾値温度を下回った場合に、管路の閉塞を起こすような負圧の発生を抑制するため、循環ポンプの回転数に上限を設け、その上限回転数を上回らない回転数で循環ポンプを運転する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、循環ポンプの上流側の管路を可撓性のあるホースで形成しても、その管路が負圧によって潰れることを回避することが可能であって、コストアップの要因も生じさせず組み付け性も悪化させない燃料電池システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態である燃料電池車両に搭載される燃料電池システムの構成を示す図である。
【図2】起動時における温度と圧力との関係を示す図である。
【図3】高温から温度が低下した場合における温度と圧力との関係を示す図である。
【図4】起動時の循環ポンプ制御のフローを示すフローチャートである。
【図5】図4の制御時において、循環ポンプの回転数の遷移と温度の遷移とを示す図である。
【図6】圧力と回転数との関係を示す図である。
【図7】高温から温度が低下した場合における循環ポンプ制御のフローを示すフローチャートである。
【図8】図7の制御時において、循環ポンプの回転数の遷移と温度の遷移とを示す図である。
【図9】本発明の実施形態である燃料電池車両における各部の配置を模式的に示す図である。
【図10】図9のI-I断面を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0014】
最初に、本発明の実施形態である燃料電池車両に搭載される燃料電池システムFCSについて図1を参照しながら説明する。図1は燃料電池車両の車載電源システムとして機能する燃料電池システムFCSのシステム構成を示す図である。燃料電池システムFCSは、燃料電池自動車(FCHV)、電気自動車、ハイブリッド自動車などの車両に搭載することができる。
【0015】
燃料電池システムFCSは、燃料電池FCと、酸化ガス供給系ASSと、燃料ガス供給系FSSと、電力系ESと、冷却系CSと、コントローラECとを備えている。燃料電池FCは、反応ガス(燃料ガス、酸化ガス)の供給を受けて発電するものである。酸化ガス供給系ASSは、酸化ガスとしての空気を燃料電池FCに供給するための系である。燃料ガス供給系FSSは、燃料ガスとしての水素ガスを燃料電池FCに供給するための系である。電力系ESは、電力の充放電を制御するための系である。冷却系CSは、燃料電池FCを冷却するための系である。コントローラECは、燃料電池システムFCS全体を統括制御するコントローラである。
【0016】
燃料電池FCは、多数のセル(アノード、カソード、及び電解質を備える単一の電池(発電体))を直列に積層してなる固体高分子電解質形のセルスタックとして構成されている。燃料電池FCでは、通常の運転において、アノードにおいて(1)式の酸化反応が生じ、カソードにおいて(2)式の還元反応が生じる。燃料電池FC全体としては(3)式の起電反応が生じる。
【0017】
2→2H++2e- (1)
(1/2)O2+2H++2e-→H2O (2)
2+(1/2)O2→H2O (3)
【0018】
酸化ガス供給系ASSは、酸化ガス流路AS3と酸化オフガス流路AS4とを有している。酸化ガス流路AS3は、燃料電池FCのカソードに供給される酸化ガスが流れる流路である。酸化オフガス流路AS4は、燃料電池FCから排出される酸化オフガスが流れる流路である。
【0019】
酸化ガス流路AS3には、エアコンプレッサAS2と、加湿器AS5とが設けられている。エアコンプレッサAS2は、フィルタAS1を介して大気中から酸化ガスを取り込むためのコンプレッサである。加湿器AS5は、エアコンプレッサAS2により加圧される酸化ガスを加湿するための加湿器である。
【0020】
酸化オフガス流路AS4には、圧力センサS6と、背圧調整弁A3と、加湿器AS5とが設けられている。背圧調整弁A3は、酸化ガス供給圧を調整するための弁である。加湿器AS5は、酸化ガス(ドライガス)と酸化オフガス(ウェットガス)との間で水分交換するためのものとして設けられている。
【0021】
燃料ガス供給系FSSは、燃料ガス供給源FS1と、燃料ガス流路FS3と、循環流路FS4と、循環ポンプFS5と、排気排水流路FS6とを有している。燃料ガス流路FS3は、燃料ガス供給源FS1から燃料電池FCのアノードに供給される燃料ガスが流れる流路である。循環流路FS4は、燃料電池FCから排出される燃料オフガスを燃料ガス流路FS3に帰還させるための流路である。循環ポンプFS5は、循環流路FS4内の燃料オフガスを燃料ガス流路FS3に圧送するポンプである。排気排水流路FS6は、循環流路FS4に分岐接続される流路である。
【0022】
燃料ガス供給源FS1は、例えば、高圧水素タンクや水素吸蔵合金などで構成され、高圧(例えば、35MPa〜70MPa)の水素ガスを貯蔵するものである。遮断弁H1を開くと、燃料ガス供給源FS1から燃料ガス流路FS3に燃料ガスが流出する。燃料ガスは、レギュレータH2やインジェクタFS2により、例えば、200kPa程度まで減圧されて、燃料電池FCに供給される。
【0023】
燃料ガス流路FS3には、遮断弁H1と、レギュレータH2と、インジェクタFS2と、遮断弁H3と、圧力センサS4とが設けられている。遮断弁H1は、燃料ガス供給源FS1からの燃料ガスの供給を遮断又は許容するための弁である。レギュレータH2は、燃料ガスの圧力を調整するものである。インジェクタFS2は、燃料電池FCへの燃料ガス供給量を制御するものである。遮断弁H3は、燃料電池FCへの燃料ガス供給を遮断するための弁である。
【0024】
レギュレータH2は、その上流側圧力(一次圧)を、予め設定した二次圧に調圧する装置であり、例えば、一次圧を減圧する機械式の減圧弁などで構成される。機械式の減圧弁は、背圧室と調圧室とがダイアフラムを隔てて形成された筺体を有し、背圧室内の背圧により調圧室内で一次圧を所定の圧力に減圧して二次圧とする構成を有する。インジェクタFS2の上流側にレギュレータH2を配置することにより、インジェクタFS2の上流側圧力を効果的に低減させることができる。
【0025】
インジェクタFS2は、弁体を電磁駆動力で直接的に所定の駆動周期で駆動して弁座から離隔させることによりガス流量やガス圧を調整することが可能な電磁駆動式の開閉弁である。インジェクタFS2は、燃料ガス等の気体燃料を噴射する噴射孔を有する弁座と、その気体燃料を噴射孔まで供給案内するノズルボディと、このノズルボディに対して軸線方向(気体流れ方向)に移動可能に格納保持され噴射孔を開閉する弁体とを備えている。
【0026】
インジェクタFS2の弁体は電磁駆動装置であるソレノイドにより駆動され、コントローラECから出力される制御信号によってインジェクタFS2のガス噴射時間及びガス噴射時期を制御することが可能なように構成されている。インジェクタFS2は、その下流に要求されるガス流量を供給するために、インジェクタFS2のガス流路に設けられた弁体の開口面積(開度)及び開放時間の少なくとも一方を変更することにより、下流側に供給されるガス流量(又は水素モル濃度)を調整する。
【0027】
循環流路FS4には、遮断弁H4が設けられ、排気排水流路FS6が接続されている。排気排水流路FS6には、排気排水弁H5が設けられている。排気排水弁H5は、コントローラECからの指令によって作動することにより、循環流路FS4内の不純物を含む燃料オフガスと水分とを外部に排出するための弁である。排気排水弁H5の開弁により、循環流路FS4内の燃料オフガス中の不純物の濃度が下がり、循環系内を循環する燃料オフガス中の水素濃度を上げることができる。
【0028】
排気排水弁H5を介して排出される燃料オフガスは、酸化オフガス流路AS4を流れる酸化オフガスと混合され、希釈器(図示せず)によって希釈される。循環ポンプFS5は、循環系内の燃料オフガスをモータ駆動により燃料電池FCに循環供給する。
【0029】
電力系ESは、DC/DCコンバータES1と、バッテリES2と、トラクションインバータES3と、トラクションモータES4と、補機類ES5とを備えている。燃料電池システムFCSは、DC/DCコンバータES1とトラクションインバータES3とが並列に燃料電池FCに接続するパラレルハイブリッドシステムとして構成されている。
【0030】
DC/DCコンバータES1は、バッテリES2から供給される直流電圧を昇圧してトラクションインバータES3に出力する機能と、燃料電池FCが発電した直流電力、又は回生制動によりトラクションモータES4が回収した回生電力を降圧してバッテリES2に充電する機能とを有する。DC/DCコンバータES1のこれらの機能により、バッテリES2の充放電が制御される。また、DC/DCコンバータES1による電圧変換制御により、燃料電池FCの運転ポイント(出力端子電圧、出力電流)が制御される。燃料電池FCには、電圧センサS1と電流センサS2とが取り付けられている。電圧センサS1は、燃料電池FCの出力端子電圧を検出するためのセンサである。電流センサS2は、燃料電池FCの出力電流を検出するためのセンサである。
【0031】
バッテリES2は、余剰電力の貯蔵源、回生制動時の回生エネルギー貯蔵源、燃料電池車両の加速又は減速に伴う負荷変動時のエネルギーバッファとして機能する。バッテリES2としては、例えば、ニッケル・カドミウム蓄電池、ニッケル・水素蓄電池、リチウム二次電池等の二次電池が好適である。バッテリES2には、SOC(State of charge)を検出するためのSOCセンサS3が取り付けられている。
【0032】
トラクションインバータES3は、例えば、パルス幅変調方式で駆動されるPWMインバータである。トラクションインバータES3は、コントローラECからの制御指令に従って、燃料電池FC又はバッテリES2から出力される直流電圧を三相交流電圧に変換して、トラクションモータES4の回転トルクを制御する。トラクションモータES4は、例えば、三相交流モータであり、燃料電池車両の動力源を構成する。
【0033】
補機類ES5は、燃料電池システムFCS内の各部に配置されている各モータ(例えば、ポンプ類などの動力源)、これらのモータを駆動するためのインバータ類、及び各種の車載補機類を総称するものである。
【0034】
冷却系CSは、ラジエータCS1と、冷却液ポンプCS2(循環ポンプ)と、冷却液往路CS3と、冷却液復路CS4と、三方弁CS5と、ラジエータキャップCS6と、リザーブタンクCS7とを有している。ラジエータCS1は、燃料電池FCを冷却するための冷却液を放熱して冷却するものである。冷却液ポンプCS2は、冷却液を燃料電池FCとラジエータCS1との間で循環させるためのポンプである。冷却液往路CS3は、ラジエータCS1と燃料電池FCとを繋ぐ流路であって、三方弁CS5と、冷却液ポンプCS2と、水温センサS8とが設けられている。冷却液ポンプCS2が駆動することで、冷却液はラジエータCS1から燃料電池FCへと冷却液往路CS3を通って流れる。また、三方弁CS5は、冷却液往路CS3と冷却液復路CS4とを繋ぐ流路と、冷却液往路CS3による流路とを切り替えることができるように構成されている。三方弁CS5を切り替えることで、ラジエータCS1を経由する流路と経由しないバイパス流路とが選択可能なように構成されている。冷却液復路CS4は、燃料電池FCとラジエータCS1とを繋ぐ流路であって、水温センサS7が設けられている。冷却液ポンプCS2が駆動することで、燃料電池FCを冷却した冷却液はラジエータCS1へと還流する。
【0035】
コントローラEC(制御部)は、CPU、ROM、RAM、及び入出力インタフェースを備えるコンピュータシステムであり、燃料電池システムFCSの各部を制御するものである。例えば、コントローラECは、イグニッションスイッチから出力される起動信号IGを受信すると、燃料電池システムFCSの運転を開始する。その後、コントローラECは、アクセルセンサから出力されるアクセル開度信号ACCや、車速センサから出力される車速信号VCなどを基に、燃料電池システムFCS全体の要求電力を求める。燃料電池システムFCS全体の要求電力は、車両走行電力と補機電力との合計値である。
【0036】
ここで、補機電力には、車載補機類(加湿器、エアコンプレッサ、水素ポンプ、及び冷却水循環ポンプ等)で消費される電力、車両走行に必要な装置(変速機、車輪制御装置、操舵装置、及び懸架装置等)で消費される電力、乗員空間内に配設される装置(空調装置、照明器具、及びオーディオ等)で消費される電力などが含まれる。
【0037】
そして、コントローラECは、燃料電池FCとバッテリES2とのそれぞれの出力電力の配分を決定する。コントローラECは、燃料電池FCの発電量が目標電力に一致するように、酸化ガス供給系ASS及び燃料ガス供給系FSSを制御するとともに、DC/DCコンバータES1を制御して、燃料電池FCの運転ポイント(出力端子電圧、出力電流)を制御する。更に、コントローラECは、アクセル開度に応じた目標トルクが得られるように、例えば、スイッチング指令として、U相、V相、及びW相の各交流電圧指令値をトラクションインバータES3に出力し、トラクションモータES4の出力トルク、及び回転数を制御する。更に、コントローラECは、冷却系CSを制御して燃料電池FCが適切な温度になるように制御する。
【0038】
続いて、本実施形態の燃料電池システムFCSにおいて、循環ポンプとしての冷却液ポンプCS2がどのように駆動されることで、三方弁CS5と冷却液ポンプCS2との間の極端な圧力低下が回避されているかについて説明する。図2は、起動時における温度と圧力との関係を示す図である。図2に示されるように、起動時においては、起動当初の水温T0(水温は、水温センサS7及び水温センサS8のいずれで測定してもよいものである。以下同じ)から、閾値温度T1に至るまで、三方弁CS5と冷却液ポンプCS2との間の水圧がPsとなるように冷却液ポンプCS2の回転数が抑制されている。
【0039】
図3は、水温Taから水温T2まで温度が上昇し、その後水温T3まで温度低下した場合の、温度と圧力との関係を示す図である。図3に示されるように、本実施形態特有の制御を行わなければ、水温は水温Taから水温T2まで上昇し、その後水温T3から水温T4,水温T4まで低下するものである。しかしながら、水温が水温T3まで下がった段階で、三方弁CS5と冷却液ポンプCS2との間の水圧がPsとなるように冷却液ポンプCS2の回転数が抑制されている。水温は、水温T4と水温T5との間の水温T4´まで低下するように調整される。
【0040】
続いて、起動時の具体的な制御について、図4を参照しながら説明する。図4は、起動時の循環ポンプ制御のフローを示すフローチャートである。ステップS01では、温度TAを計測する。温度TAとは、水温センサS7及び水温センサS8のいずれかで測定される水温である。温度TAが図2に示す水温T0であれば、ステップS02の処理に進む。ステップS02では、冷却液ポンプCS2の回転数の上限を制限回転数R1に設定し、冷却液ポンプCS2を回転させる。ステップS03では、温度TAが、水温T1(水温T0よりもTだけ高温)となっているか判断する。温度TAが水温T1となっていれば、冷却液ポンプCS2の上限回転数を解除し、温度TAが水温T1に到達していなければステップS02の処理を継続する。
【0041】
図5に、図4の制御時における、冷却液ポンプCS2の回転数の遷移と水温の遷移とを示す。また、図6に、水圧と冷却液ポンプCS2の回転数との関係を示す。図6に示されるように、冷却液ポンプCS2の回転数が上昇すると、三方弁CS5と冷却液ポンプCS2との間の水圧は低下する。本実施形態では、冷却液ポンプCS2の回転数が、R1(R2)である場合に、下限水圧Psとなるように設定している。尚、図5において二点鎖線で示すように、負圧限界閉塞を起こさない程度に、徐々に冷却液ポンプCS2の回転数を上げることも好ましいものである。
【0042】
続いて、水温が高温から低下した場合における制御について、図7を参照しながら説明する。図7は、水温が高温から低下した場合における循環ポンプ制御のフローを示すフローチャートである。図7を参照しながらする説明では、適宜図3を参照するものとする。
【0043】
図3に示されるように、温度TAが水温Taを越えたものとし、ステップS11の処理を開始する。ステップS11では、温度TAが水温T3まで下降したか判断する。温度TAが水温T3まで下降していればステップS12の処理に進み、温度TAが水温T3まで下降していなければステップS11の処理を続ける。
【0044】
ステップS12では、冷却液ポンプCS2の回転数の上限を制限回転数R2(図6参照)に設定し、冷却液ポンプCS2を回転させる。ステップS12に続くステップs3では、温度の狙い値を、水温T4から水温T5へ変更する。ステップS14では、温度TAが水温T5まで低下したか判断する。温度TAが水温T5まで低下していればステップS15の処理に進み、温度TAが水温T5まで低下していなければステップS14の処理を続ける。
【0045】
ステップS15では、温度の狙い値を、水温T5から水温T4まで戻す。ステップS15に続くステップS16では、温度TAが水温T4´まで戻ったか判断する。温度TAが水温T4´まで戻っていれば冷却液ポンプCS2の回転数制限を解除し、温度TAが水温T4´まで戻っていなければステップS16の処理を続ける。図8に、図7の制御時において、循環ポンプの回転数の遷移と温度の遷移とを示す。図8において二点鎖線で示すように、負圧限界閉塞を起こさない程度に、徐々に冷却液ポンプCS2の回転数を上げることも好ましいものである。
【0046】
続いて、本発明の実施形態である燃料電池システムFCSを搭載した燃料電池車両における、各部の配置について図9を参照しながら説明する。図9に示されるように、ラジエータCS1は,サイドメンバーSMとサイドメンバーSMとの間の前方に配置されている。サイドメンバーSMの外側にはフロントタイヤTR,TRが配置されている。フロントタイヤTR,TRは、ドライブシャフト14によって繋がっている。
【0047】
ラジエータCS1の後方には、トランスアクスルTAが配置されている。トランスアクスルTAは、図示されているのとは反対側のサイドメンバーSM側に配置されていても構わない。トランスアクスルTAには、エアコンコンプレッサ10と、エアコンプレッサモータ12と、エアコンプレッサ圧縮部11と、冷却液ポンプCS2とが繋がれている。冷却ポンプCS2と三方弁CS5とは、冷却液往路CS3によってつながれている。
【0048】
図9のI-I断面を模式的に示す図を図10に示す。図9に示されるように、エアコンプレッサ圧縮部11の上方にはインタークーラー15が配置されており、インタークーラー15から延びるエアホース13は後方に延び、冷却液往路CS3の上方を通っている。
【0049】
このように、トランスアクスルTA、エアコンプレッサモータ12、冷却液ポンプCS2、及びエアコンコンプレッサ10を、それぞれの軸の向きを合わせた上で一体に搭載することで、NV低減効果を発揮することができる。
【0050】
また、燃料電池FCをドライブシャフト14よりも後方に配置した際に、エアコンコンプレッサ10及びエアコンプレッサモータ12よりも後方に冷却液ポンプCS2を配置することで、三方弁CS5と冷却液復路CS4とを繋ぐバイパス流路を短くすることができ、暖機を早く行うことができる。
【0051】
また、エアコンプレッサ圧縮部11の上方にインタークーラー15を配置することで、インタークーラー15から延びるエアホース13と、ドライブシャフト14との干渉を回避することができる。
【0052】
また、インタークーラー15から延びるエアホース13を挟むように、冷却液ポンプCS2と三方弁CS5とを配置することで、エアホース13と、冷却液ポンプCS2と三方弁CS5とを繋ぐ管路との干渉を回避することができる。
【符号の説明】
【0053】
FCS:燃料電池システム
FC:燃料電池
ASS:酸化ガス供給系
AS1:フィルタ
AS2:エアコンプレッサ
AS3:酸化ガス流路
AS4:酸化オフガス流路
AS5:加湿器
A3:背圧調整弁
CS:冷却系
CS1:ラジエータ
CS2:冷却液ポンプ
CS3:冷却液往路
CS4:冷却液復路
FSS:燃料ガス供給系
FS1:燃料ガス供給源
FS2:インジェクタ
FS3:燃料ガス流路
FS4:循環流路
FS5:循環ポンプ
FS6:排気排水流路
H1:遮断弁
H2:レギュレータ
H3:遮断弁
H4:遮断弁
H5:排気排水弁
ES:電力系
ES1:DC/DCコンバータ
ES2:バッテリ
ES3:トラクションインバータ
ES4:トラクションモータ
ES5:補機類
EC:コントローラ
S1:電圧センサ
S2:電流センサ
S3:SOCセンサ
S4,S6:圧力センサ
S5:水温センサ
ACC:アクセル開度信号
IG:起動信号
VC:車速信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池に水素を含む燃料ガスと酸化ガスとを供給して発電させる燃料電池システムであって、
前記燃料電池に冷却水を供給するための管路に設けられてなる循環ポンプと、
前記循環ポンプの回転数を制御するための制御部と、を備え、
前記制御部は、前記燃料電池システムの起動時若しくは前記管路における冷却水の温度が閾値温度を下回った際に、前記循環ポンプの回転数に上限を設け、その上限回転数を上回らない回転数で前記循環ポンプを運転することを特徴とする燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−99237(P2012−99237A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−243587(P2010−243587)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】