説明

燃料電池システム

【課題】燃料電池の劣化を防止しつつ良好に掃気する燃料電池システムを提供する。
【解決手段】アノード流路11及びカソード流路12を有する燃料電池スタック10と、燃料ガス供給流路と、燃料オフガス排出流路と、酸化剤ガス供給流路と、酸化剤オフガス排出流路と、第1封止弁32と、第2封止弁33と、封止弁制御手段と温度センサ26と、発電停止後、燃料電池スタック10の温度が所定温度以下である場合、アノード流路11及びカソード流路12を掃気ガスで掃気する掃気手段と、を備え、発電停止時、カソード流路12を封止する燃料電池システム1であって、発電停止からの経過時間を検出する経過時間検出手段を備え、掃気手段が掃気する場合において、経過時間が第1所定時間期間内であるとき、カソード流路12、アノード流路11、の順で掃気し、経過時間が第1所定時間期間外であるとき、アノード流路11、カソード流路12、の順で掃気する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、水素(燃料ガス)と酸素を含む空気(酸化剤ガス)とが供給されることで発電する燃料電池の開発が進められ、例えば、燃料電池車(移動体)の電力源として期待されている。
【0003】
このような燃料電池は、発電に伴って、そのカソードで水(水蒸気)を生成する。また、燃料電池を構成するMEA(Membrane Electrode Assembly:膜電極接合体)の電解質膜(固体高分子膜)を良好な湿潤状態とするため、例えば、カソードに向かう空気は加湿器によって加湿される。したがって、発電停止直後の燃料電池内には、水分(水蒸気、凝縮水)が滞留している。よって、発電停止後に燃料電池が低温(0℃以下等)になると、燃料電池が凍結する虞がある。
【0004】
そこで、燃料電池が低温となり凍結する虞のある場合、空気等の掃気ガスによって燃料電池内の水分を掃気する技術が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−123040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、燃料電池の発電停止中、つまり、燃料電池と外部負荷とが電気的に遮断された状態において、外部からカソード流路(酸化剤ガス流路)に空気が流入し、この空気(酸素)がカソードの触媒(Pt、Ru等)下で電極反応により消費されると、カソードの電位が上昇したり、残留する水分が分解して活性の高いOHラジカル等が発生したりする虞がある。このように、カソードの電位が上昇したり、OHラジカル等が発生すると、カソードを形成するカーボンペーパの炭素(C)や触媒が酸化したり、電解質膜が分解し、燃料電池が劣化する虞がある。
【0007】
そこで、カソード流路の上流及び下流に、電磁弁等からなる封止弁をそれぞれ設け、燃料電池の発電停止中、封止弁を閉じて、カソード流路を外部から封止(封鎖)する構成が考えられる。
一方、燃料電池の発電停止中、アノード流路に滞留する水素は、電解質膜を透過し、カソード流路に流出する。したがって、カソード流路を封止する構成である場合、カソード流路における水素濃度が上昇することになる。
【0008】
そうすると、燃料電池の発電停止中、カソード流路を封止する構成とした場合において、カソード流路の水素濃度が上昇しているとき、燃料電池の凍結を防止するため、カソード流路よりも先にアノード流路に掃気ガス(空気等)を供給してしまうと、アノード流路に空気が、カソード流路に水素がそれぞれ滞留した状態となり、ガスの種類が、通常の状態(アノード流路:水素、カソード流路:空気)と逆となってしまう。そして、このような逆の状態となると、燃料電池の電極が反転状態(転極状態)となり、負電圧状態となる。つまり、通常時にカソードよりも電位が下がりアノードとなる電極の電位が、通常時にカソードとなる電極の電位よりも高くなる。すなわち、電極反応が通常時と逆になり、また、通常時と逆向きで電流が通流する虞もあり、電極に含まれる触媒(Pt等)が劣化してしまう虞がある。
【0009】
そこで、本発明は、燃料電池の劣化を防止しつつ良好に掃気する燃料電池システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するための手段として、本発明は、燃料ガス流路及び酸化剤ガス流路を有し、前記燃料ガス流路に燃料ガスが、前記酸化剤ガス流路に酸化剤ガスがそれぞれ供給されることで発電する燃料電池と、前記燃料ガス流路に向かう燃料ガスが通流する燃料ガス供給流路と、前記燃料ガス流路から排出された燃料オフガスが通流する燃料オフガス排出流路と、前記酸化剤ガス流路に向かう酸化剤ガスが通流する酸化剤ガス供給流路と、前記酸化剤ガス流路から排出された酸化剤オフガスが通流する酸化剤オフガス排出流路と、前記酸化剤ガス供給流路に設けられた第1封止弁と、前記酸化剤オフガス排出流路に設けられた第2封止弁と、前記第1封止弁及び前記第2封止弁を制御する封止弁制御手段と、前記燃料電池の温度を検出する温度検出手段と、前記燃料電池の発電停止後、前記温度検出手段の検出する前記燃料電池の温度が所定温度以下である場合、前記燃料ガス流路及び前記酸化剤ガス流路を掃気ガスで掃気する掃気手段と、を備え、前記燃料電池の発電停止時、前記封止弁制御手段が前記第1封止弁及び前記第2封止弁を閉じて前記酸化剤ガス流路を封止する燃料電池システムであって、前記燃料電池の発電停止からの経過時間を検出する経過時間検出手段を備え、前記掃気手段が掃気する場合において、前記経過時間検出手段の検出する経過時間が、前記酸化剤ガス流路に燃料ガスが滞留していると判断される第1所定時間期間内であるとき、前記掃気手段は、前記酸化剤ガス流路、前記燃料ガス流路、の順で掃気し、前記経過時間検出手段の検出する経過時間が、前記第1所定時間期間外であるとき、前記掃気手段は、前記燃料ガス流路、前記酸化剤ガス流路、の順で掃気することを特徴とする燃料電池システムである。
【0011】
このような構成によれば、燃料電池の発電停止時(システム停止時)、封止弁制御手段が第1封止弁及び第2封止弁を閉じて酸化剤ガス流路を封止するので、外部から酸化剤ガス流路に空気が流入せず、OHラジカルの発生を抑制できる。これにより、燃料電池の劣化を防止できる。
【0012】
また、燃料電池の発電停止後、温度検出手段の検出する燃料電池の温度が所定温度以下である場合、掃気手段が燃料ガス流路及び酸化剤ガス流路を掃気ガスで掃気するので、燃料電池の凍結を防止できる。
【0013】
このように掃気する場合において、経過時間検出手段の検出する経過時間が、酸化剤ガス流路に燃料ガスが滞留していると判断される第1所定時間期間内であるとき、掃気手段は、酸化剤ガス流路、燃料ガス流路、の順で掃気する。これにより、酸化剤ガス流路に燃料ガスが、燃料ガス流路に掃気ガス(空気等)が、滞留した状態にはならない。したがって、燃料電池の電極が反転状態(転極状態)にはならず、負電圧が発生することもない。よって、燃料電池の劣化を防止できる。
【0014】
一方、経過時間検出手段の検出する経過時間が、酸化剤ガス流路に燃料ガスが滞留していると判断される第1所定時間期間外であるとき、掃気手段は、燃料ガス流路、酸化剤ガス流路、の順で掃気する。
【0015】
この場合において、燃料ガス流路の流路断面積は、酸化剤ガスの流路断面積よりも小さく、掃気し難いため、燃料ガス流路を掃気する掃気ガスの流量は、酸化剤ガス流路を掃気する掃気ガスの流量よりも多く設定される。すなわち、掃気ガスを圧送するためのコンプレッサの燃料ガス流路の掃気時の回転速度は、酸化剤ガス流路の掃気時の回転速度よりも高く設定される。そうすると、前記したように、燃料ガス流路、酸化剤ガス流路、の順で掃気するので、掃気中において、コンプレッサの回転速度が徐々に低くなり、その結果、コンプレッサの作動音も徐々に小さくなり、ユーザが違和感を受け難くなる。
【0016】
また、コンプレッサを高い回転速度で作動させるには、コンプレッサへの印加電圧を高める必要があるが、このようにコンプレッサの回転速度が徐々に低くなる構成とすれば、コンプレッサへの印加電圧も徐々に低くなる構成となり、IRドロップによる電圧降下が発生しても、コンプレッサの電源がコンプレッサの必要作動電圧を下回る可能性が低くなる。
【0017】
前記課題を解決するための手段として、本発明は、燃料ガス流路及び酸化剤ガス流路を有し、前記燃料ガス流路に燃料ガスが、前記酸化剤ガス流路に酸化剤ガスがそれぞれ供給されることで発電する燃料電池と、前記燃料ガス流路に向かう燃料ガスが通流する燃料ガス供給流路と、前記燃料ガス流路から排出された燃料オフガスが通流する燃料オフガス排出流路と、前記酸化剤ガス流路に向かう酸化剤ガスが通流する酸化剤ガス供給流路と、前記酸化剤ガス流路から排出された酸化剤オフガスが通流する酸化剤オフガス排出流路と、前記酸化剤ガス供給流路に設けられた第1封止弁と、前記酸化剤オフガス排出流路に設けられた第2封止弁と、前記第1封止弁及び前記第2封止弁を制御する封止弁制御手段と、前記燃料電池の温度を検出する温度検出手段と、前記燃料電池の発電停止後、前記温度検出手段の検出する前記燃料電池の温度が所定温度以下である場合、前記燃料ガス流路及び前記酸化剤ガス流路を掃気ガスで掃気する掃気手段と、を備え、前記燃料電池の発電停止時、前記封止弁制御手段が前記第1封止弁及び前記第2封止弁を閉じて前記酸化剤ガス流路を封止する燃料電池システムであって、前記酸化剤ガス流路における燃料ガス濃度を検出する燃料ガス濃度検出手段を備え、前記掃気手段が掃気する場合において、前記燃料ガス濃度検出手段の検出する燃料ガス濃度が、所定燃料ガス濃度よりも高いとき、前記掃気手段は、前記酸化剤ガス流路、前記燃料ガス流路、の順で掃気し、前記燃料ガス濃度検出手段の検出する燃料ガス濃度が、所定燃料ガス濃度以下であるとき、前記掃気手段は、前記燃料ガス流路、前記酸化剤ガス流路、の順で掃気することを特徴とする燃料電池システムである。
【0018】
このような構成によれば、掃気手段が掃気する場合において、燃料ガス濃度検出手段の検出する燃料ガス濃度が、所定燃料ガス濃度よりも高いとき、掃気手段は、酸化剤ガス流路、燃料ガス流路、の順で掃気する。これにより、酸化剤ガス流路に燃料ガスが、燃料ガス流路に掃気ガス(空気等)が、滞留した状態にはならない。したがって、燃料電池の電極が反転状態(転極状態)にはならず、負電圧が発生することもない。よって、燃料電池の劣化を防止できる。
なお、所定燃料ガス濃度は、酸化剤ガス流路に燃料ガスが滞留し、仮に、燃料ガス流路、酸化剤ガス流路、の順で掃気した場合、燃料電池の電極が反転状態(転極状態)になると判断される濃度に設定される。
【0019】
一方、燃料ガス濃度検出手段の検出する燃料ガス濃度が、所定燃料ガス濃度以下であるとき、掃気手段は、燃料ガス流路、酸化剤ガス流路、の順で掃気する。
【0020】
また、前記課題を解決するための手段として、本発明は、燃料ガス流路及び酸化剤ガス流路を有し、前記燃料ガス流路に燃料ガスが、前記酸化剤ガス流路に酸化剤ガスがそれぞれ供給されることで発電する燃料電池と、前記燃料ガス流路に向かう燃料ガスが通流する燃料ガス供給流路と、前記燃料ガス流路から排出された燃料オフガスが通流する燃料オフガス排出流路と、前記酸化剤ガス流路に向かう酸化剤ガスが通流する酸化剤ガス供給流路と、前記酸化剤ガス流路から排出された酸化剤オフガスが通流する酸化剤オフガス排出流路と、前記酸化剤ガス供給流路に設けられた第1封止弁と、前記酸化剤オフガス排出流路に設けられた第2封止弁と、前記第1封止弁及び前記第2封止弁を制御する封止弁制御手段と、前記燃料電池の温度を検出する温度検出手段と、前記燃料電池の発電停止後、前記温度検出手段の検出する前記燃料電池の温度が所定温度以下である場合、前記燃料ガス流路及び前記酸化剤ガス流路を掃気ガスで掃気する掃気手段と、前記酸化剤ガス流路における燃料ガス濃度を上昇させる燃料ガス濃度上昇手段と、を備え、前記燃料電池の発電停止時、前記燃料ガス濃度上昇手段が前記酸化剤ガス流路における燃料ガス濃度を上昇させ、前記封止弁制御手段が前記第1封止弁及び前記第2封止弁を閉じて前記酸化剤ガス流路を封止する燃料電池システムであって、前記燃料電池の発電停止からの経過時間を検出する経過時間検出手段を備え、前記掃気手段が掃気する場合において、前記経過時間検出手段の検出する経過時間が、前記酸化剤ガス流路に燃料ガスが滞留していると判断される第2所定時間期間内であるとき、前記掃気手段は、前記酸化剤ガス流路、前記燃料ガス流路、の順で掃気し、前記経過時間検出手段の検出する経過時間が、前記第2所定時間期間外であるとき、前記掃気手段は、前記燃料ガス流路、前記酸化剤ガス流路、の順で掃気することを特徴とする燃料電池システムである。
【0021】
このような構成によれば、燃料電池の発電停止時(システム停止時)、封止弁制御手段が第1封止弁及び第2封止弁を閉じて酸化剤ガス流路を封止するので、外部から酸化剤ガス流路に空気が流入せず、OHラジカルの発生を抑制できる。これにより、燃料電池の劣化を防止できる。
【0022】
また、燃料電池の発電停止時、燃料ガス濃度上昇手段が酸化剤ガス流路における燃料ガス濃度を上昇させるので、カソード側の触媒上で燃料ガスと酸化剤ガスとの反応が生成せず、当該反応によって燃料ガスが消費されず、燃料ガスが燃料ガス流路及び酸化剤ガス流路に長時間滞留し易くなると共に、酸化剤ガスによる酸化劣化を抑制できる。
【0023】
さらに、燃料電池の発電停止後、温度検出手段の検出する燃料電池の温度が所定温度以下である場合、掃気手段が燃料ガス流路及び酸化剤ガス流路を掃気ガスで掃気するので、燃料電池の凍結を防止できる。
【0024】
このように掃気する場合において、経過時間検出手段の検出する経過時間が、酸化剤ガス流路に燃料ガスが滞留していると判断される第2所定時間期間内であるとき、掃気手段は、酸化剤ガス流路、燃料ガス流路、の順で掃気する。これにより、酸化剤ガス流路に燃料ガスが、燃料ガス流路に掃気ガス(空気等)が、滞留した状態にはならない。したがって、燃料電池の電極が反転状態(転極状態)にはならず、負電圧が発生することもない。よって、燃料電池の劣化を防止できる。
【0025】
一方、経過時間検出手段の検出する経過時間が、酸化剤ガス流路に燃料ガスが滞留していると判断される第2所定時間期間外であるとき、掃気手段は、燃料ガス流路、酸化剤ガス流路、の順で掃気する。
【0026】
そうすると、燃料ガス流路、酸化剤ガス流路、の順で掃気する掃気中において、コンプレッサの回転速度が徐々に低くなり、その結果、コンプレッサの作動音も徐々に小さくなり、ユーザが違和感を受け難くなる。
また、コンプレッサの回転速度が徐々に低くなる構成とすれば、コンプレッサへの印加電圧も徐々に低くなる構成となり、IRドロップによる電圧降下が発生しても、コンプレッサの電源がコンプレッサの必要作動電圧を下回る可能性が低くなる。
【0027】
また、前記課題を解決するための手段として、本発明は、燃料ガス流路及び酸化剤ガス流路を有し、前記燃料ガス流路に燃料ガスが、前記酸化剤ガス流路に酸化剤ガスがそれぞれ供給されることで発電する燃料電池と、前記燃料ガス流路に向かう燃料ガスが通流する燃料ガス供給流路と、前記燃料ガス流路から排出された燃料オフガスが通流する燃料オフガス排出流路と、前記酸化剤ガス流路に向かう酸化剤ガスが通流する酸化剤ガス供給流路と、前記酸化剤ガス流路から排出された酸化剤オフガスが通流する酸化剤オフガス排出流路と、前記酸化剤ガス供給流路に設けられた第1封止弁と、前記酸化剤オフガス排出流路に設けられた第2封止弁と、前記第1封止弁及び前記第2封止弁を制御する封止弁制御手段と、前記燃料電池の温度を検出する温度検出手段と、前記燃料電池の発電停止後、前記温度検出手段の検出する前記燃料電池の温度が所定温度以下である場合、前記燃料ガス流路及び前記酸化剤ガス流路を掃気ガスで掃気する掃気手段と、前記酸化剤ガス流路における燃料ガス濃度を上昇させる燃料ガス濃度上昇手段と、を備え、前記燃料電池の発電停止時、前記燃料ガス濃度上昇手段が前記酸化剤ガス流路における燃料ガス濃度を上昇させ、前記封止弁制御手段が前記第1封止弁及び前記第2封止弁を閉じて前記酸化剤ガス流路を封止する燃料電池システムであって、前記酸化剤ガス流路における燃料ガス濃度を検出する燃料ガス濃度検出手段を備え、前記掃気手段が掃気する場合において、前記燃料ガス濃度検出手段の検出する燃料ガス濃度が、所定燃料ガス濃度よりも高いとき、前記掃気手段は、前記酸化剤ガス流路、前記燃料ガス流路、の順で掃気し、前記燃料ガス濃度検出手段の検出する燃料ガス濃度が、所定燃料ガス濃度以下であるとき、前記掃気手段は、前記燃料ガス流路、前記酸化剤ガス流路、の順で掃気することを特徴とする燃料電池システムである。
【0028】
このような構成によれば、掃気手段が掃気する場合において、燃料ガス濃度検出手段の検出する燃料ガス濃度が、所定燃料ガス濃度よりも高いとき、掃気手段は、酸化剤ガス流路、燃料ガス流路、の順で掃気する。
一方、燃料ガス濃度検出手段の検出する燃料ガス濃度が、所定燃料ガス濃度以下であるとき、掃気手段は、燃料ガス流路、酸化剤ガス流路、の順で掃気する。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、燃料電池の劣化を防止しつつ良好に掃気する燃料電池システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】第1実施形態に係る燃料電池システムの構成図である。
【図2】電解質膜の含水率(%)と、水素透過量(L/s)との関係を示すグラフである。
【図3】第1実施形態に係る燃料電池システムの動作を示すフローチャートである。
【図4】第1実施形態に係る燃料電池システムの一動作例を示すタイムチャートである。
【図5】第1実施形態に係る燃料電池システムの一動作例を示すタイムチャートである。
【図6】第2実施形態に係る燃料電池システムの動作を示すフローチャートである。
【図7】第2実施形態に係る燃料電池システムの一動作例を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
≪第1実施形態≫
以下、本発明の第1実施形態について、図1〜図5を参照して説明する。
なお、図4〜図5では、ソーク開始後(システム待機中)、第1封止弁32及び第2封止弁33が継続して閉じた状態を記載しているが、燃料電池スタック10の掃気時に適宜に開いた状態となる。後記する図7についても同様である。
【0032】
≪燃料電池システムの構成≫
図1に示す第1実施形態に係る燃料電池システム1は、図示しない燃料電池車(移動体)に搭載されている。燃料電池システム1は、燃料電池スタック10と、燃料電池スタック10のアノードに対して水素(燃料ガス、反応ガス)を給排するアノード系と、燃料電池スタック10のカソードに対して酸素を含む空気(酸化剤ガス、反応ガス)を給排するカソード系と、燃料電池スタック10の掃気時に掃気ガスをアノード系に導入する掃気ガス導入系と、燃料電池スタック10の発電を制御する電力制御系と、これらを電子制御するECU70(Electronic Control Unit、電子制御装置)と、を備えている。
【0033】
<燃料電池スタック>
燃料電池スタック10は、複数(例えば200〜400枚)の固体高分子型の単セルが積層して構成されたスタックであり、複数の単セルは直列で接続されている。単セルは、MEA(Membrane Electrode Assembly:膜電極接合体)と、これを挟む2枚の導電性を有するセパレータと、を備えている。MEAは、1価の陽イオン交換膜等からなる電解質膜(固体高分子膜)と、これを挟むアノード及びカソード(電極)とを備えている。
【0034】
アノード及びカソードは、カーボンペーパ等の導電性を有する多孔質体と、これに担持され、アノード及びカソードにおける電極反応を生じさせるための触媒(Pt、Ru等)と、を含んでいる。
【0035】
各セパレータには、各MEAの全面に水素又は空気を供給するための溝や、全単セルに水素又は空気を給排するための貫通孔が形成されており、これら溝及び貫通孔がアノード流路11(燃料ガス流路)、カソード流路12(酸化剤ガス流路)として機能している。
【0036】
そして、アノード流路11を介して各アノードに水素が供給されると、式(1)の電極反応が起こり、カソード流路12を介して各カソードに空気が供給されると、式(2)の電極反応が起こり、各単セルで電位差(OCV(Open Circuit Voltage)、開回路電圧)が発生するようになっている。次いで、燃料電池スタック10とモータ51等の外部回路とが電気的に接続され、電流が取り出されると、燃料電池スタック10が発電するようになっている。
【0037】
2H→4H+4e …(1)
+4H+4e→2HO …(2)
【0038】
ここで、このような燃料電池スタック10では、アノード流路11の水素が、分子のまま、電解質膜を透過(クロスオーバー)し、カソード流路12に流出するという特性を有している。すなわち、アノード流路11における水素の分圧と、カソード流路12における水素の分圧との差(水素分圧差)が大きくなるにつれて、アノード流路11からカソード流路12への水素の透過量(L/s)が増加するという傾向を有している。
【0039】
このような水素の透過量は、図2に示すように、電解質膜の含水率(%)が高くなるにつれて、増加する傾向を有している(図5参照)。なお、電解質膜の含水率(%)とは、電解質膜が含んでいる水分の割合(%)である。
【0040】
電解質膜の含水率(%)は、プロトン(H)の輸送性を確保するため、通常、カソード流路12に向かう空気を加湿するための後記する加湿器(図示しない)によって、目標含水率(%)に近づくように設計されているが、車外の温度・湿度、大気圧、カソードにおける水分の生成程度(燃料電池スタック10の発電状況)に基づいて、多少変動する。
すなわち、電解質膜の含水率は、発電停止前の燃料電池スタック10の発電状態及び空気供給量に大きく依存するものの、車外の温度が低く、湿度が高く、大気圧が高く、カソードにおける水分の生成量が多くなるにつれて、電解質膜の含水率(%)が高くなる傾向となる。なお、燃料電池スタック10が高出力で発電していた場合、発電に伴う生成水が増加するので、電解質膜の含水率が増加する傾向となり、空気が大流量で供給されていた場合、電解質膜の乾燥が進むので、電解質膜の含水率が減少する傾向となる。
【0041】
ここで、第1実施形態では、後記するように、燃料電池スタック10の発電停止後、アノード流路11を水素、カソード流路12を空気で封止した場合において、アノード流路11からカソード流路12への水素の透過量(L/s)は、電解質膜の含水量(%)が一定で、水素の分圧差のみに起因すると仮定した場合を例示し(図4参照)、このように仮定した場合において、事前試験等により求められた図4に示す第1所定時間期間に基づいて、カソード流路12に水素が滞留するか否か判断する構成を例示する。
【0042】
ただし、外気温度を検出する温度センサ、外気湿度を検出する湿度センサ、大気圧を検出する大気圧センサを備える構成とし、外気温度、外気湿度、大気圧や、停止前の発電状況に基づいて、電解質膜の含水率(%)を補正し、判断基準となる第1所定時間期間を可変(補正)する構成としてもよい(図5参照)。
つまり、例えば、(1)外気の温度が低く、湿度が高く、大気圧が高くにつれて、(2)発電停止直前の燃料電池スタック10の出力が大きくなるにつれて、(3)発電停止直前の空気の供給量が少なくなるにつれて、電解質膜の含水率が高くなり、水素の透過量が増加するので、第1所定時間期間が短く、かつ、第1所定時間期間が燃料電池スタック10の発電停止時に近づくようにシフトするように補正する構成としてもよい。
【0043】
<アノード系>
図1に戻って説明を続ける。
アノード系は、水素タンク21と、ノーマルクローズ型(常閉型)の遮断弁22と、エゼクタ23と、ノーマルクローズ型のパージ弁24と、ノーマルクローズ型の掃気ガス排出弁25と、温度センサ26(温度検出手段)と、を備えている。
【0044】
水素タンク21は、配管21a、遮断弁22、配管22a、エゼクタ23、配管23aを介して、アノード流路11の入口に接続されている。そして、燃料電池スタック10を発電させるため、ECU70からの指令によって遮断弁22が開かれると、水素が、水素タンク21から遮断弁22等を通って、アノード流路11に供給されるようになっている。
【0045】
ここで、アノード流路11(燃料ガス流路)に向かう水素(燃料ガス)が通流する燃料ガス供給流路は、配管21aと、配管22aと、配管23aとを備えて構成されている。
【0046】
アノード流路11の出口は、配管23bを介して、エゼクタ23の吸気口に接続されている。そして、アノード流路11から排出された未消費の水素を含むアノードオフガスが、エゼクタ23に戻された後、アノード流路11に再供給され、その結果、水素が循環するようになっている。なお、配管23bには、アノードオフガスに同伴する液状の水分を分離する気液分離器(図示しない)が設けられている。
【0047】
配管23bの途中は、配管24a、パージ弁24、配管24bを介して、後記する希釈器35に接続されている。パージ弁24は、燃料電池スタック10の発電時に、配管23bを循環するアノードオフガスに含まれる不純物(水蒸気、窒素等)を排出(パージ)する場合、ECU70によって定期的に開かれる。
【0048】
また、配管24aの接続位置よりも上流側の配管23bは、配管25a、掃気ガス排出弁25、配管25bを介して、後記する配管34aに接続されている。掃気ガス排出弁25は、燃料電池スタック10の掃気時、詳細には、アノード流路11の掃気時に、コンプレッサ31が作動した状態で、ECU70により、後記する掃気ガス導入弁41と共に開かれる設定となっている。
【0049】
なお、燃料電池スタック10の掃気時とは、燃料電池スタック10の発電停止後のシステム停止中において、温度センサ26によって検出される燃料電池スタック10の温度(システム温度)が所定温度(0℃、5℃等)以下であり、この後、燃料電池スタック10内が凍結すると判断される時である。
【0050】
ここで、アノード流路11(燃料ガス流路)から排出されたアノードオフガス(燃料オフガス)が通流する燃料オフガス排出流路は、配管23bと、配管24aと、配管24bと、配管25aと、配管25bとを備えて構成されている。
【0051】
そして、アノード流路11の上流には、遮断弁22及び後記する掃気ガス導入弁41が配置され、アノード流路11の下流には、パージ弁24、掃気ガス排出弁25が配置されているが、いずれの弁もノーマルクローズ型であり、燃料電池スタック10の発電停止中(システム停止中)、原則として、閉状態で維持され、アノード流路11は封止された状態となる。したがって、車外の空気が、掃気ガス排出弁25等を通って、アノード流路11に流入することはない。
【0052】
温度センサ26は、配管23bのアノード流路11の出口寄りに取り付けられている。そして、温度センサ26は、配管23b内の温度を燃料電池スタック10の温度として検出し、ECU70に出力するようになっている。
ただし、温度センサ26の位置はこれに限定されず、例えば、後記する配管33aに取り付けてもよいし、燃料電池スタック10から排出された冷媒が通流する配管(図示しない)に取り付けてもよいし、燃料電池スタック10自体に取り付けてもよい。また、外気温度センサの検出する外気温度に基づいて、燃料電池スタック10の温度を推定する構成としてもよい。
【0053】
<カソード系>
カソード系は、コンプレッサ31(酸化剤ガス供給手段、掃気ガス供給手段)と、ノーマルクローズ型(常閉型)の第1封止弁32と、ノーマルクローズ型の第2封止弁33と、ノーマルオープン型(常開型)の背圧弁34と、希釈器35と、水素センサ36(燃料ガス濃度検出手段)と、を備えている。
【0054】
コンプレッサ31は、配管31a、第1封止弁32、配管32aを介して、カソード流路12の入口に接続されている。そして、コンプレッサ31は、ECU70の指令に従って作動すると、酸素を含む空気を取り込み、配管31a等を介して、カソード流路12に供給するようになっている。また、コンプレッサ31は、燃料電池スタック10の掃気時、空気を掃気ガスとして吐出し、アノード流路11又はカソード流路12に供給し、掃気手段を構成している。
なお、コンプレッサ31や、第1封止弁32、第2封止弁33、背圧弁34、遮断弁22、パージ弁24、掃気ガス排出弁25は、燃料電池スタック10の発電中は燃料電池スタック10を電源とし、燃料電池スタック10の発電停止中は後記するバッテリ55を電源としている。
【0055】
ここで、カソード流路12(酸化剤ガス流路)に向かう空気(酸化剤ガス)が通流する酸化剤ガス供給流路は、配管31aと配管32aとを備えて構成されている。そして、この酸化剤ガス供給流路に、第1封止弁32が設けられている。
【0056】
第1封止弁32は、ECU70によって制御されるノーマルクローズ型の電磁弁であり、燃料電池スタック10の発電中(システム作動中)は開状態となり、発電停止後、つまり、発電停止中(システム停止中)は閉状態となる。
このような第1封止弁32は、例えば、ソレノイドやステッピングモータ等で駆動するゲート弁、ボール弁や、ステッピングモータで駆動するバタフライ弁で構成される。また、ノーマルクローズ型に限定されず、ノーマルオープン型としてもよい。第2封止弁33についても同様である。
【0057】
カソード流路12の出口は、配管33a、第2封止弁33、配管33b、背圧弁34、配管34aを介して、希釈器35に接続されている。そして、カソード流路12から排出されたカソードオフガス(酸化剤オフガス)は、配管33a等を介して、希釈器35に排出されるようになっている。
【0058】
ここで、カソード流路12(酸化剤ガス流路)から排出されたカソードオフガスが通流する酸化剤オフガス排出流路は、配管33aと、配管33bと、配管34aと、後記する配管35aとを備えて構成されている。そして、この酸化剤オフガス排出流路に、第2封止弁33が設けられている。
【0059】
第2封止弁33は、ECU70によって制御されるノーマルクローズ型の電磁弁であり、燃料電池スタック10の発電中(システム作動中)は開状態となり、発電停止後、つまり、発電停止中(システム停止中)は閉状態となる。
【0060】
背圧弁34は、バタフライ弁等から構成されたノーマルオープン型の弁であって、その開度は、アクセル開度等の発電要求量に対応して、ECU70により制御される。
【0061】
希釈器35は、アノードオフガスとカソードオフガスとを混合し、アノードオフガス中の水素を、カソードオフガス(希釈用ガス)で希釈する容器であり、その内部に希釈空間を備えている。そして、希釈後のガスは、配管35aを介して、車外に排出されるようになっている。
【0062】
水素センサ36は、例えば接触燃焼式で水素濃度(燃料ガス濃度)を検出するセンサであり、配管33aに取り付けられている。そして、水素センサ36は、配管33a内の水素濃度をカソード流路12における水素濃度として検出し、ECU70に出力するようになっている。
なお、図1に示すように、水素センサ36は、第1封止弁32と第2封止弁33との間に配置されているので、第1封止弁32及び第2封止弁33が閉じカソード流路12の封止中も、カソード流路12における水素濃度を検出可能となっている。ただし、水素センサ36の位置はこれに限定されず、例えば、カソード流路12に直接取り付ける構成や、配管32aに取り付ける構成としてもよい。
【0063】
また、配管32aと配管33aとを跨ぐように加湿器(図示しない)が設けられている。この加湿器は、水分透過性を有する中空糸膜を複数本内蔵し、この中空糸膜を介して、カソード流路12に向かう空気と、カソード流路12から排出された多湿のカソードオフガスとの間で水分交換させ、カソード流路12に向かう空気を加湿するものである。
【0064】
<掃気ガス導入系>
掃気ガス導入系は、ノーマルクローズ型の掃気ガス導入弁41を備えている。掃気ガス導入弁41の上流は配管41aを介して配管31aに接続されており、掃気ガス導入弁41の下流は配管41bを介して配管23aに接続されている。そして、アノード流路11の掃気時に、コンプレッサ31が作動した状態で、ECU70によって掃気ガス導入弁41が開かれると、コンプレッサ31からの掃気ガスが、アノード流路11に導入されるようになっている。
【0065】
<電力制御系>
電力制御系は、モータ51と、PDU52(Power Drive Unit)と、電力制御器53と、コンタクタ54と、バッテリ55(蓄電装置)と、を備えている。モータ51は、PDU52、電力制御器53、コンタクタ54を順に介して、燃料電池スタック10の出力端子(図示しない)に接続されている。バッテリ55は、電力制御器53に接続されている。
【0066】
モータ51は、燃料電池車を走行させるための駆動力を発生する電動機である。
PDU52は、ECU70の指令に従って、燃料電池スタック10及び/又はバッテリ55からの直流電力を、三相交流電力に変換して、モータ51に出力するインバータである。
【0067】
電力制御器53は、ECU70の指令に従って、燃料電池スタック10の発電と、バッテリ55の充放電とを制御するものである。このような電力制御器53は、DC−DCチョッパ回路等の各種電子回路を備えて構成される。
コンタクタ54は、ECU70の指令に従って、燃料電池スタック10とモータ51等の外部回路とを電気的にON(接続)/OFF(切断)するスイッチである。
【0068】
バッテリ55は、電力を充電/放電する蓄電装置であり、例えば、リチウムイオン型の単電池が複数組み合わせてなる組電池で構成される。
【0069】
<IG>
IG61は、燃料電池システム1(燃料電池車)の起動スイッチであり、運転席周りに設けられている。また、IG61はECU70と接続されており、ECU70はIG61のON/OFF信号を検知するようになっている。
【0070】
<ECU>
ECU70(制御手段)は、燃料電池システム1を電子制御する制御装置であり、CPU、ROM、RAM、各種インタフェイス、電子回路などを含んで構成されており、その内部に記憶されたプログラムに従って、各種機器を制御し、各種処理を実行するようになっている。
【0071】
<ECU−封止弁制御機能>
ECU70(封止弁制御手段)は、第1封止弁32及び第2封止弁33を開閉制御する機能を備えている。
【0072】
<ECU−掃気要否判定機能>
ECU70は、燃料電池スタック10の発電停止後のシステム停止中において、燃料電池スタック10を掃気する必要があるか否か判定する機能を備えている。
ここでは、温度センサ26を介して検出される燃料電池スタック10の温度が、所定温度以下である場合、掃気する必要があると判定される。所定温度は、そのまま放置するとその後に燃料電池スタック10が凍結する虞があると判断される温度であり、事前試験等によって求められ、例えば、0℃、5℃に設定される。
【0073】
<ECU−経過時間検出機能>
ECU70(経過時間検出手段)は、燃料電池スタック10の発電停止から現在までの経過時間を、内蔵するクロックを利用して検出する機能を備えている。この場合において、経過時間の起点は、(1)IG61のOFF時、(2)コンタクタ54のOFF時、(3)遮断弁22の閉弁等の処理後のソーク開始時、(4)カソード流路12の封止開始時(第1封止弁32及び第2封止弁33の閉弁時)、等に適宜に変更してよい。
【0074】
<ECU−掃気順序決定機能>
ECU70は、燃料電池スタック10を掃気する場合、アノード流路11、カソード流路12の掃気の順序を決定する機能を備えている。
具体的には、(1)電解質膜を透過した水素がカソード流路12に滞留していると判断される場合、転極状態とならないように、カソード流路12、アノード流路11の順で掃気すると決定する。一方、(2)カソード流路12に滞留していないと判断される場合、アノード流路11、カソード流路12の順で掃気すると決定する。
【0075】
さらに具体的には、(1)燃料電池スタック10の発電停止から現在(掃気必要と判断した時)までの経過時間が、第1所定時間期間内であるとき、カソード流路12、アノード流路11の順で掃気すると決定する。一方、(2)燃料電池スタック10の発電停止から現在(掃気必要と判断した時)までの経過時間が、第1所定時間期間外であるとき、アノード流路11、カソード流路12の順で掃気すると決定する。
【0076】
第1所定時間期間は、アノード流路11から電解質膜を透過してカソード流路12に透過した水素が、カソード流路12に滞留していると判断される期間であり、事前試験、シミュレーションによって求められる(図4参照)。
【0077】
<ECU−掃気実行機能>
ECU70は、決定した掃気の順序に従って、アノード流路11の掃気(アノード掃気)、カソード流路12の掃気(カソード掃気)を実行する機能を備えている。この場合において、ECU70は、コンプレッサ31の他、第1封止弁32、第2封止弁33、掃気ガス導入弁41、掃気ガス排出弁25を適宜に制御する。
なお、アノード流路11は、カソード流路12よりも細く、掃気し難いので、ECU70は、アノード掃気を実行する場合、コンプレッサ31の回転速度を高めて掃気ガスの流量を増加させる設定となっている。
【0078】
≪燃料電池システムの動作≫
次に、図3を参照して、燃料電池システム1の動作を説明する。
なお、IG61がOFFされると、そのOFF信号を検知したECU70は、図3の一連の処理を開始する。また、初期状態において、燃料電池スタック10には水素、空気が供給されており、アクセル(図示しない)から入力されたアクセル開度に対応して電力制御器53が制御され、燃料電池スタック10は発電している。
【0079】
ステップS101において、ECU70は、コンタクタ54をOFFする。これにより、燃料電池スタック10と外部回路とが電気的に遮断され、燃料電池スタック10の発電が停止する。
また、ECU70は、遮断弁22を閉じる。これにより、水素タンク21の水素が無駄に供給されることはない。ここで、パージ弁24、掃気ガス排出弁25及び掃気ガス導入弁41はノーマルクローズ型であり閉じているので、アノード流路11は車外から封止(封鎖)された状態となる。よって、アノード流路11の水素が車外に大量に漏洩せず、また、車外の空気がアノード流路11に流入することもない。
【0080】
ステップS102において、ECU70は、第1封止弁32及び第2封止弁33を閉じる。これにより、カソード流路12は車外から封止(封鎖)され、車外の空気がカソード流路12に流入せず、燃料電池スタック10の劣化が防止される。
また、ECU70は、コンプレッサ31を停止(OFF)する。これにより、コンプレッサ31において無駄に電力消費されることはない。
【0081】
そうすると、アノード流路11に主に水素が滞留し、カソード流路12に主に空気が滞留した状態となる。よって、アノード流路11における水素の分圧は、カソード流路12における水素の分圧よりも高い。
【0082】
そして、このような状態で時間が経過すると、前記したように、アノード流路11における水素の分圧と、カソード流路12における水素の分圧との差(水素分圧差)に基づいて、アノード流路11の水素がMEA(電解質膜)を透過しカソード流路12に流出、つまり、アノード流路11の水素がカソード流路12にクロスオーバーする。
【0083】
このように水素が透過・流出する場合において、その初期段階では、カソード流路12に流出した水素がカソードの触媒表面に残留している酸素と反応し水を生成するので、アノード流路11の水素濃度が減少するものの、カソード流路12の水素濃度は所定の初期期間上昇せず、その初期期間の経過後に上昇する(図4参照)。
なお、電解質膜の含水率が高くなると、水素の透過量が増加する傾向となるが(図2参照)、ここでは、電解質膜の含水率及び水素の透過量が一定である場合を例示する。
【0084】
そして、アノード流路11における水素の分圧と、カソード流路12における水素の分圧が等しくなると、水素の透過量が略0となる。
【0085】
その後、アノード流路11の水素は、掃気ガス排出弁25等に内蔵されるシール(Oリング)の極小隙間や、燃料電池スタック10に内蔵されるシールの極小隙間を通って、極小流量で車外に流出し、アノード流路11の水素濃度が徐々に低下する(図4参照)。一方、カソード流路12の水素は、第1封止弁32や第2封止弁33に内蔵されるシール(Oリング)の極小隙間や、燃料電池スタック10に内蔵されるシールの極小隙間を通って、極小流量で車外に流出し、カソード流路12の水素濃度が徐々に低下する(図4参照)。
【0086】
ステップS103において、ECU70は、燃料電池スタック10の掃気が必要であるか否か判定する。具体的には、温度センサ26を介して検出される燃料電池スタック10の温度が、掃気するべきと判断される所定温度(0℃、5℃等)以下である場合、掃気が必要であると判定する。
【0087】
燃料電池スタック10の掃気は必要であると判定した場合(S103・Yes)、ECU70の処理はステップS105に進む。一方、燃料電池スタック10の掃気が必要でないと判定した場合(S103・No)、ECU70の処理はステップS104に進む。
【0088】
ステップS104において、ECU70は、ステップS103でNoと判定してから所定時間(例えば、30分〜1時間)経過したか否か判定する。
所定時間経過したと判定した場合(S104・Yes)、ECU70の処理はステップS103に進む。一方、所定時間経過していないと判定した場合(S104・No)、ECU70はステップS104の判定を繰り返す。
これにより、所定時間の経過毎(S104・Yes)、ステップS103の判定が繰り返されるので、燃料電池スタック10の凍結が防止される。
【0089】
ステップS105において、ECU70は、燃料電池スタック10の発電停止からの経過時間が第1所定時間期間内であるか否か判定する。なお、ここでは、図4に示すように、経過時間の起点は、コンタクタ54のOFF等の発電停止処理の完了後のソーク開始時とする。
【0090】
経過時間が第1所定時間期間内であると判定した場合(S105・Yes)、カソード流路12に水素が滞留していると判断し(図4参照)、ECU70の処理はステップS106に進む。
一方、経過時間が第1所定時間期間外であると判定した場合(S105・No)、カソード流路12に水素が滞留していないと判断し(図4参照)、ECU70の処理はステップS108に進む。
【0091】
ステップS106において、ECU70は、カソード掃気(カソード流路12の掃気)を実行する。
具体的には、ECU70は、第1封止弁32及び第2封止弁33を開き、コンプレッサ31を作動させる。なお、背圧弁34は全開とすることが好ましい。
そうすると、コンプレッサ31の吐出する空気は掃気ガスとしてカソード流路12に供給され、この掃気ガスがカソード流路12に滞留する水素及び水分(水蒸気、結露水)を車外に押し出し、カソード流路12が掃気される。
【0092】
このようなカソード掃気は、例えば、事前試験等により求められた所定のカソード掃気時間にて実行される。
そして、ECU70は、このカソード掃気時間が経過した場合、カソード掃気は完了したと判断し、ECU70の処理はステップS107に進む。なお、第1封止弁32及び第2封止弁33は開いたままとする。
【0093】
ステップS107において、ECU70は、アノード掃気(アノード流路11の掃気)を実行する。
具体的には、ECU70は、コンプレッサ31を作動させたまま、掃気ガス導入弁41及び掃気ガス排出弁25を開く。なお、パージ弁24も開く構成としてもよい。
そうすると、コンプレッサ31の吐出する掃気ガスは、掃気ガス導入弁41を通って、アノード流路11に供給され、この掃気ガスがアノード流路11に滞留する水素及び水分(水蒸気、結露水)を車外に押し出し、アノード流路11が掃気される。
【0094】
この場合において、アノード流路11を含むアノード系の流路は、その流路断面積がカソード系よりも小さく、また、配管23bからなる水素循環ラインを備え、掃気されにくい構成であるので、掃気ガスの流量を高めるためにコンプレッサ31の回転速度は、カソード掃気(S106)よりも高く設定される。
【0095】
また、第1封止弁32及び第2封止弁33が開いたままであるので、掃気ガスのアノード流路11/カソード流路12への分配比は、背圧弁34の開度によっても制御される。つまり、背圧弁34の開度が小さくなると、アノード流路11への掃気ガスの流量が増加する。
さらに、アノード掃気の実行中、コンプレッサ31からの掃気ガスの一部は、カソード流路12、配管33a、配管33b、配管34a、配管35aを通って車外に排出される。したがって、掃気ガスによってアノード流路11から希釈されつつ押し出された水素は、配管34a等を通流する掃気ガス(カソードオフガス)によっても希釈されるので、高濃度の水素が車外に排出されることはない。
【0096】
このようなアノード掃気は、例えば、事前試験等により求められた所定のアノード掃気時間にて実行される。
そして、ECU70は、このアノード掃気時間が経過した場合、アノード掃気は完了したと判断し、コンプレッサ31を停止し、掃気ガス導入弁41及び掃気ガス排出弁25を閉じる。なお、ここでは、第1封止弁32及び第2封止弁33は開いたままとする構成を例示するが、閉じる構成としてもよい。
【0097】
このように、第1封止弁32及び第2封止弁33は開いたままであるので、その後、車外の空気がカソード流路12に流入するが、カソード掃気後であるので、カソード流路12に水素は滞留しておらず、燃料電池スタック10(カソード)が劣化することはない。
なお、車外の空気がカソード流路12に流入した場合において、カソード流路12に水素が滞留していると、流入した空気の酸素と水素がカソードの触媒上で反応し、カソード(触媒)が劣化してしまう。
【0098】
その後、ECU70の処理はENDに進み、燃料電池システム1は停止中となる。
【0099】
ステップS108において、ECU70は、ステップS107と同様に、前記したアノード掃気時間にてアノード掃気を実行する。
この場合において、第1所定時間期間前であるとき、アノード流路11に多量の水素が滞留しており、高濃度の水素が押し出されると考えられるので(図4参照)、第1封止弁32及び第2封止弁33を開き、掃気ガスの一部をカソード流路12側に供給し、カソード流路12から排出され配管34a等を通流する掃気ガス(カソードオフガス)によって、アノード流路11からの水素を希釈する。
【0100】
ステップS109において、ECU70は、ステップS108と同様に、前記したカソード掃気時間にてカソード掃気を実行する。
【0101】
そして、カソード掃気の完了後、ECU70の処理はENDに進み、燃料電池システム1は停止中となる。
【0102】
≪燃料電池システムの効果≫
このような燃料電池システム1によれば次の効果を得る。
燃料電池スタック10を掃気する場合において(S103・Yes)、発電停止(ソーク開始)からの経過時間が第1所定時間期間内であるとき(S105・Yes)、カソード流路12に水素が滞留していると判断し、カソード掃気(S106)、アノード掃気(S107)の順に実行するので、燃料電池スタック10を転極状態(負電圧状態)とせずに、燃料電池スタック10を掃気できる。つまり、転極状態(負電圧状態)によって燃料電池スタック10が劣化することはない。
【0103】
一方、燃料電池スタック10を掃気する場合において(S103・Yes)、発電停止(ソーク開始)からの経過時間が第1所定時間期間外であるとき(S105・No)、カソード流路12に水素が滞留していないと判断し、アノード掃気(S108)、カソード掃気(S109)の順に実行することより、燃料電池スタック10を掃気できる。
この場合において、アノード掃気(S108)からカソード掃気(S109)に移行する際、コンプレッサ31の回転速度が低くなり、作動音が小さくなるので、回転速度が高くなり作動音が大きくなる構成に対して、燃料電池システム1の周囲のユーザが違和感を受け難くなる。
【0104】
また、コンプレッサ31の作動電圧が高く消費電力の大きいアノード掃気を、カソード掃気よりも先に実行するので、アノード掃気の実行によりバッテリ55の電圧が低下しても、カソード掃気を実行でき、一連の掃気処理が途中で中断され難くなる。
【0105】
≪第1実施形態−変形例≫
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されず、例えば、次のように変更できる。また、後記する実施形態の構成と適宜に組み合わせてもよい。
【0106】
前記した実施形態では、コンプレッサ31からの空気を掃気ガスとして燃料電池スタック10を掃気する構成を例示したが、その他に例えば、窒素(不活性ガス)の充填された窒素タンク(不活性ガスタンク)を備え、窒素を掃気ガスとして燃料電池スタック10を掃気する構成としてもよい。
【0107】
前記した実施形態では、燃料電池スタック10の発電停止からの経過時間と、第1所定時間期間とに基づいて、カソード流路12に水素が滞留しているか否か判定する構成としたが、その他に例えば、水素センサ36の検出する水素濃度に基づいて、カソード流路12に水素が滞留しているか否か判定する構成としてもよい。
【0108】
すなわち、水素センサ36の検出する水素濃度が、所定水素濃度(所定燃料ガス濃度)よりも高いとき、カソード流路12に水素が滞留していると判定し、カソード流路12、アノード流路11、の順で掃気し、一方、水素濃度が、所定水素濃度以下であるとき、カソード流路12に水素が滞留していないと判定し、アノード流路11、カソード流路12、の順で掃気する構成としてもよい。
なお、所定水素濃度は、カソード流路12に水素が滞留し、仮に、アノード流路11、カソード流路12、の順で掃気した場合、燃料電池スタック10の電極が反転状態(転極状態)になると判断される濃度に設定される。
また、この構成は、後記する第2実施形態に適用してもよい。
【0109】
その他、アノード流路11及び/又はカソード流路12の水素を排出する掃気以外の処理(例えば、燃料電池スタック10の発電継続による水素消費処理)の有無に基づいて、カソード流路12に水素が滞留しているか否か判定する構成としてもよい。
【0110】
前記した実施形態では、燃料電池システム1が燃料電池車に搭載された場合を例示したが、その他の移動体、例えば、自動二輪車、列車、船舶に搭載された構成でもよい。また、家庭用の据え置き型の燃料電池システムや、給湯システムに組み込まれた燃料電池システムに、本発明を適用してもよい。
【0111】
≪第2実施形態≫
次に、本発明の第2実施形態について、図6〜図7を参照して説明する。
なお、第1実施形態とは、ECU70に設定されたプログラムが異なり、その動作が一部異なる。
【0112】
≪燃料電池システムの動作≫
第2実施形態では、IG61がOFFされると、ECU70の処理はステップS201に進み、ステップS201において、ECU70は、遮断弁22を閉じる。ここで、パージ弁24、掃気ガス排出弁25及び掃気ガス導入弁41は閉じているので、アノード流路11は封止された状態となる。
なお、ここでは、遮断弁22を閉じ、後記するようにアノード流路11等に残留する水素で燃料電池スタック10をディスチャージする構成を例示するが、残留する水素が少なく良好にディスチャージできないと判断される場合、遮断弁22を開いたままとし、ディスチャージ後に閉じる構成としてもよい。
【0113】
ステップS102において、ECU70は、第1封止弁32及び第2封止弁33を閉じ、コンプレッサ31をOFFする。これにより、カソード流路12は封止された状態となる。
その後、ECU70の処理はステップS202に進む。
【0114】
ステップS202において、ECU70は、燃料電池スタック10をティスチャージ(放電)させ、カソード流路12を水素に置換する。
具体的には、ECU70は、アノード流路11及びカソード流路12が封止した状態、コンタクタ54がONの状態で、電力制御器53を制御し、燃料電池スタック10を発電させる。なお、燃料電池スタック10の発電電力は、例えば、バッテリ55に充電する。その他、図示しないディスチャージ用抵抗器を設けて、このディスチャージ用抵抗器に通電し、発電電力を熱に変換する構成としてもよい。
【0115】
そうすると、この発電に伴って、アノード流路11に残留する水素が消費され、カソード流路12に残留する空気(酸素)が消費される。
【0116】
ここで、アノード系においてアノード流路11を含み封止されている空間、つまり、遮断弁22、掃気ガス導入弁41、パージ弁24及び掃気ガス排出弁25で閉じられた空間(アノード封止空間)の体積V1は、カソード系においてカソード流路12を含み封止されている空間、つまり、第1封止弁32及び第2封止弁33で閉じられた空間(カソード封止空間)の体積V2よりも大きい(V1>V2)。
これにより、燃料電池スタック10の発電(ディスチャージ)が進むと、前記カソード封止空間の酸素は、前記アノード封止空間の水素よりも先に無くなってしまう。
【0117】
そして、このようにカソード封止空間(カソード流路12)において酸素が存在しない状態で、さらに燃料電池スタック10の発電(ディスチャージ)が進むと、カソードの触媒上で、式(3)の反応が起こり、カソード流路12における水素濃度が上昇する(図7参照)。
【0118】
4H+4e→2H …(3)
【0119】
したがって、第2実施形態において、カソード流路12における水素濃度を上昇させる水素濃度上昇手段(燃料ガス濃度上昇手段)は、水素タンク21と、電力制御器53と、バッテリ55と、ECU70とを備えて構成されている。
ただし、この他に例えば、配管23aと配管32aとを配管(図示しない)で接続すると共に、この配管にノーマルクローズ型の電磁弁を設け、カソード流路12における水素濃度を上昇させる場合、前記電磁弁を開き、カソード流路12に水素を直接導入する構成としてもよい。
【0120】
このようなディスチャージ(水素濃度上昇処理)は、例えば、事前試験等により求められた所定のディスチャージ時間にて実行される。
【0121】
そして、ECU70は、このディスチャージ時間が経過した場合、ディスチャージは完了した、つまり、カソード流路12における水素濃度は所定濃度に上昇し、水素への置換は完了したと判断する。次いで、ECU70は、電力制御器53を制御し、燃料電池スタック10の発電を停止させる。
【0122】
その後、ECU70の処理はステップS203に進み、ステップS203において、ECU70は、コンタクタ54をOFFする。
【0123】
そうすると、アノード流路11及びカソード流路12に主に水素が滞留した状態となる。よって、第1実施形態のように、水素分圧差に基づいて、アノード流路11の水素がカソード流路12に透過・流出せず、カソードの触媒上で水素が消費されることはない。
その代わりに、アノード流路11、カソード流路12の水素は、掃気ガス排出弁25に内蔵されるシール(Oリング)の極小隙間や、燃料電池スタック10に内蔵されるシールの極小隙間を通って、極小流量で車外に流出ことになる。ゆえに、カソード流路12に水素が滞留する時間は、第1実施形態よりも長くなる。
【0124】
そして、第2実施形態では、燃料電池スタック10の発電停止からの経過時間が第2所定時間期間内である場合、カソード流路12に水素が滞留していると判断する。なお、第2所定時間期間は、事前試験等によって求められる。また、大気圧が低くなると、カソード流路12の水素が車外に流出し易くなるので、大気圧に基づいて、第2所定時間期間を可変(補正)する構成としてもよい。
【0125】
その後、ECU70の処理はステップS103に進み、ステップS103において掃気は必要であると判定した場合(S103・Yes)、ECU70の処理はステップS204に進む。
【0126】
ステップS204において、ECU70は、燃料電池スタック10の発電停止からの経過時間が第2所定時間期間内であるか否か判定する。なお、ここでは、図7に示すように、経過時間の起点は、ディスチャージ等の発電停止処理の完了後のソーク開始時とする。
【0127】
経過時間が第2所定時間期間内であると判定した場合(S204・Yes)、カソード流路12に水素が滞留していると判断し(図7参照)、ECU70の処理は、ステップS106に進む。そして、ECU70は、カソード掃気(S106)、アノード掃気(S107)の順で実行する。
【0128】
一方、経過時間が第2所定時間期間外であると判定した場合(S204・No)、カソード流路12に水素が滞留していないと判断し(図7参照)、ECU70の処理は、ステップS108に進む。そして、ECU70は、アノード掃気(S108)、カソード掃気(S109)の順で実行する。
【0129】
≪燃料電池システムの効果≫
このような燃料電池システム1によれば次の効果を得る。
ディスチャージ(S202)により、カソード流路12の水素濃度が上昇し、水素に置換されるので、ディスチャージ完了後において、アノード流路11とカソード流路12との間における水素分圧差が小さくなり、水素がアノード流路11からカソード流路12に透過しない。また、カソード流路12に酸素が滞留していないので、水素と酸素とがカソードの触媒で反応することもない。
【0130】
燃料電池スタック10を掃気する場合において(S103・Yes)、発電停止(ソーク開始)からの経過時間が第2所定時間期間内であるとき(S204・Yes)、カソード流路12に水素が滞留していると判断し、カソード掃気(S106)、アノード掃気(S107)の順に実行するので、燃料電池スタック10を転極状態(負電圧状態)とせずに、燃料電池スタック10を掃気できる。つまり、転極状態(負電圧状態)によって燃料電池スタック10が劣化することはない。
【0131】
一方、燃料電池スタック10を掃気する場合において(S103・Yes)、発電停止(ソーク開始)からの経過時間が第2所定時間期間外であるとき(S204・No)、カソード流路12に水素が滞留していないと判断し、アノード掃気(S108)、カソード掃気(S109)の順に実行することより、燃料電池スタック10を掃気できる。
この場合において、アノード掃気(S108)からカソード掃気(S109)に移行する際、コンプレッサ31の回転速度が低くなり、作動音が小さくなるので、回転速度が高くなり作動音が大きくなる構成に対して、燃料電池システム1の周囲のユーザが違和感を受け難くなる。
【符号の説明】
【0132】
1 燃料電池システム
10 燃料電池スタック(燃料電池)
11 アノード流路(燃料ガス流路)
12 カソード流路(酸化剤ガス流路)
21 水素タンク(燃料ガス濃度上昇手段)
21a、22a、23a 配管(燃料ガス供給流路)
23b、24a、24b、25a、25b 配管(燃料オフガス排出流路)
25 掃気ガス排出弁(掃気手段)
26 温度センサ(温度検出手段)
31 コンプレッサ(掃気手段)
31a、32a 配管(酸化剤ガス供給流路)
32 第1封止弁
33 第2封止弁
33a、33b、34a、35a 配管(酸化剤オフガス排出流路)
36 水素センサ(燃料ガス濃度検出手段)
41 掃気ガス導入弁(掃気手段)
53 電力制御器(燃料ガス濃度上昇手段)
55 バッテリ(燃料ガス濃度上昇手段)
70 ECU(封止弁制御手段、掃気手段、経過時間検出手段、燃料ガス濃度上昇手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガス流路及び酸化剤ガス流路を有し、前記燃料ガス流路に燃料ガスが、前記酸化剤ガス流路に酸化剤ガスがそれぞれ供給されることで発電する燃料電池と、
前記燃料ガス流路に向かう燃料ガスが通流する燃料ガス供給流路と、
前記燃料ガス流路から排出された燃料オフガスが通流する燃料オフガス排出流路と、
前記酸化剤ガス流路に向かう酸化剤ガスが通流する酸化剤ガス供給流路と、
前記酸化剤ガス流路から排出された酸化剤オフガスが通流する酸化剤オフガス排出流路と、
前記酸化剤ガス供給流路に設けられた第1封止弁と、
前記酸化剤オフガス排出流路に設けられた第2封止弁と、
前記第1封止弁及び前記第2封止弁を制御する封止弁制御手段と、
前記燃料電池の温度を検出する温度検出手段と、
前記燃料電池の発電停止後、前記温度検出手段の検出する前記燃料電池の温度が所定温度以下である場合、前記燃料ガス流路及び前記酸化剤ガス流路を掃気ガスで掃気する掃気手段と、
を備え、
前記燃料電池の発電停止時、前記封止弁制御手段が前記第1封止弁及び前記第2封止弁を閉じて前記酸化剤ガス流路を封止する燃料電池システムであって、
前記燃料電池の発電停止からの経過時間を検出する経過時間検出手段を備え、
前記掃気手段が掃気する場合において、
前記経過時間検出手段の検出する経過時間が、前記酸化剤ガス流路に燃料ガスが滞留していると判断される第1所定時間期間内であるとき、前記掃気手段は、前記酸化剤ガス流路、前記燃料ガス流路、の順で掃気し、
前記経過時間検出手段の検出する経過時間が、前記第1所定時間期間外であるとき、前記掃気手段は、前記燃料ガス流路、前記酸化剤ガス流路、の順で掃気する
ことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
燃料ガス流路及び酸化剤ガス流路を有し、前記燃料ガス流路に燃料ガスが、前記酸化剤ガス流路に酸化剤ガスがそれぞれ供給されることで発電する燃料電池と、
前記燃料ガス流路に向かう燃料ガスが通流する燃料ガス供給流路と、
前記燃料ガス流路から排出された燃料オフガスが通流する燃料オフガス排出流路と、
前記酸化剤ガス流路に向かう酸化剤ガスが通流する酸化剤ガス供給流路と、
前記酸化剤ガス流路から排出された酸化剤オフガスが通流する酸化剤オフガス排出流路と、
前記酸化剤ガス供給流路に設けられた第1封止弁と、
前記酸化剤オフガス排出流路に設けられた第2封止弁と、
前記第1封止弁及び前記第2封止弁を制御する封止弁制御手段と、
前記燃料電池の温度を検出する温度検出手段と、
前記燃料電池の発電停止後、前記温度検出手段の検出する前記燃料電池の温度が所定温度以下である場合、前記燃料ガス流路及び前記酸化剤ガス流路を掃気ガスで掃気する掃気手段と、
を備え、
前記燃料電池の発電停止時、前記封止弁制御手段が前記第1封止弁及び前記第2封止弁を閉じて前記酸化剤ガス流路を封止する燃料電池システムであって、
前記酸化剤ガス流路における燃料ガス濃度を検出する燃料ガス濃度検出手段を備え、
前記掃気手段が掃気する場合において、
前記燃料ガス濃度検出手段の検出する燃料ガス濃度が、所定燃料ガス濃度よりも高いとき、前記掃気手段は、前記酸化剤ガス流路、前記燃料ガス流路、の順で掃気し、
前記燃料ガス濃度検出手段の検出する燃料ガス濃度が、所定燃料ガス濃度以下であるとき、前記掃気手段は、前記燃料ガス流路、前記酸化剤ガス流路、の順で掃気する
ことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項3】
燃料ガス流路及び酸化剤ガス流路を有し、前記燃料ガス流路に燃料ガスが、前記酸化剤ガス流路に酸化剤ガスがそれぞれ供給されることで発電する燃料電池と、
前記燃料ガス流路に向かう燃料ガスが通流する燃料ガス供給流路と、
前記燃料ガス流路から排出された燃料オフガスが通流する燃料オフガス排出流路と、
前記酸化剤ガス流路に向かう酸化剤ガスが通流する酸化剤ガス供給流路と、
前記酸化剤ガス流路から排出された酸化剤オフガスが通流する酸化剤オフガス排出流路と、
前記酸化剤ガス供給流路に設けられた第1封止弁と、
前記酸化剤オフガス排出流路に設けられた第2封止弁と、
前記第1封止弁及び前記第2封止弁を制御する封止弁制御手段と、
前記燃料電池の温度を検出する温度検出手段と、
前記燃料電池の発電停止後、前記温度検出手段の検出する前記燃料電池の温度が所定温度以下である場合、前記燃料ガス流路及び前記酸化剤ガス流路を掃気ガスで掃気する掃気手段と、
前記酸化剤ガス流路における燃料ガス濃度を上昇させる燃料ガス濃度上昇手段と、
を備え、
前記燃料電池の発電停止時、前記燃料ガス濃度上昇手段が前記酸化剤ガス流路における燃料ガス濃度を上昇させ、前記封止弁制御手段が前記第1封止弁及び前記第2封止弁を閉じて前記酸化剤ガス流路を封止する燃料電池システムであって、
前記燃料電池の発電停止からの経過時間を検出する経過時間検出手段を備え、
前記掃気手段が掃気する場合において、
前記経過時間検出手段の検出する経過時間が、前記酸化剤ガス流路に燃料ガスが滞留していると判断される第2所定時間期間内であるとき、前記掃気手段は、前記酸化剤ガス流路、前記燃料ガス流路、の順で掃気し、
前記経過時間検出手段の検出する経過時間が、前記第2所定時間期間外であるとき、前記掃気手段は、前記燃料ガス流路、前記酸化剤ガス流路、の順で掃気する
ことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項4】
燃料ガス流路及び酸化剤ガス流路を有し、前記燃料ガス流路に燃料ガスが、前記酸化剤ガス流路に酸化剤ガスがそれぞれ供給されることで発電する燃料電池と、
前記燃料ガス流路に向かう燃料ガスが通流する燃料ガス供給流路と、
前記燃料ガス流路から排出された燃料オフガスが通流する燃料オフガス排出流路と、
前記酸化剤ガス流路に向かう酸化剤ガスが通流する酸化剤ガス供給流路と、
前記酸化剤ガス流路から排出された酸化剤オフガスが通流する酸化剤オフガス排出流路と、
前記酸化剤ガス供給流路に設けられた第1封止弁と、
前記酸化剤オフガス排出流路に設けられた第2封止弁と、
前記第1封止弁及び前記第2封止弁を制御する封止弁制御手段と、
前記燃料電池の温度を検出する温度検出手段と、
前記燃料電池の発電停止後、前記温度検出手段の検出する前記燃料電池の温度が所定温度以下である場合、前記燃料ガス流路及び前記酸化剤ガス流路を掃気ガスで掃気する掃気手段と、
前記酸化剤ガス流路における燃料ガス濃度を上昇させる燃料ガス濃度上昇手段と、
を備え、
前記燃料電池の発電停止時、前記燃料ガス濃度上昇手段が前記酸化剤ガス流路における燃料ガス濃度を上昇させ、前記封止弁制御手段が前記第1封止弁及び前記第2封止弁を閉じて前記酸化剤ガス流路を封止する燃料電池システムであって、
前記酸化剤ガス流路における燃料ガス濃度を検出する燃料ガス濃度検出手段を備え、
前記掃気手段が掃気する場合において、
前記燃料ガス濃度検出手段の検出する燃料ガス濃度が、所定燃料ガス濃度よりも高いとき、前記掃気手段は、前記酸化剤ガス流路、前記燃料ガス流路、の順で掃気し、
前記燃料ガス濃度検出手段の検出する燃料ガス濃度が、所定燃料ガス濃度以下であるとき、前記掃気手段は、前記燃料ガス流路、前記酸化剤ガス流路、の順で掃気する
ことを特徴とする燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−37790(P2013−37790A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−170572(P2011−170572)
【出願日】平成23年8月3日(2011.8.3)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】