説明

燃料電池型反応装置及びそれを用いた化合物の製造方法

【課題】有用な化合物を穏和な条件で選択性高く、効率的かつ経済的な方法で製造すると共に必要に応じて電力を製造することの可能な燃料電池型反応装置を提供すること、該燃料電池型反応装置を用いる有用な化合物の製造方法を提供すること、特に、水素と酸素から過酸化水素を製造する方法を提供すること。
【解決手段】アノード膜、カソード膜及び電解質膜を一体化させたユニット膜によりアノード室、カソード室に区画され、アノード膜及び/又はカソード膜の一部が気相部に露出した状態でアノード室及び/又はカソード室に液体を存在させ、両極間を電子伝導体で外部短絡した構造であることを特徴とする燃料電池型反応装置、及び該反応装置を用いる化合物の製造方法、及び過酸化水素の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池型反応装置及びそれを用いる化合物、特に過酸化水素の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の過酸化水素の製造方法としては、例えば、(I)アルキルアントラキノンを用いた自動酸化法(非特許文献1参照)、(II)アルカリ金属水酸化物中で酸素を陰極還元する電解法(特許文献1参照)、(III)硫酸又は塩酸水溶液中に懸濁もしくは溶解した白金族系の触媒を用いて水素と酸素を触媒的に反応させる方法(特許文献2参照)などが知られており、工業的には主に上記(I)の方法が用いられていることは周知のところである。
しかしながら、これらの従来公知の方法においては、例えば、上記(I)の方法では、大量の有機溶媒の添加を必要とし、また、多くの副生物や触媒の劣化が生じるので、さまざまな分離工程や再生工程を必要とする等の経済的に不利な点があり、より安価な製造法の開発が求められている。また、上記(II)の方法においては、高価な電力エネルギーを必要とする問題点がある。さらに上記(III)の方法においては、同一反応器内において水素と酸素を混合させる必要があり、爆発危険性等の安全上の問題を有し、工業的製造法としては難点がある。
【0003】
一方、近年、燃料電池システムを用いて、温和な条件で種々の有用な化合物を製造する研究が進められている。燃料電池とは燃料を電解質膜で隔てて電気化学的に完全燃焼させ、その反応過程の自由エネルギー変化を直接電力エネルギーに変換することを目的としたシステムである。すなわち、電子の放出反応と受容反応をそれぞれアノード、カソードで行わせ、両極を結ぶ外部回路を通る電子の移動を電力として利用するものである。このような燃料電池を有機合成の立場から化学反応器とみると、原理的には電力と共に有用な化合物の製造が可能である。
【0004】
燃料電池システムを応用した化学合成法は、以下の1)〜4)に述べるような、工業生産においても有利な特徴を有している。1)活性種の分離や特殊反応場を形成させることができるため、通常の触媒反応では困難な選択反応を可能にする。2)反応速度や選択性を電気的に容易に制御することができる。3)外部回路に負荷を置けば、目的とした化合物と共に電力を得ることができる。4)酸素などの酸化性物質と水素などの還元性物質が隔膜で分離されているので爆発の危険性を低減できる。
燃料電池システムの化学合成への応用例としては、(IV)エチレンおよびプロピレンの部分酸化反応(非特許文献2参照)、(V)ベンゼンの水酸化反応(非特許文献3参照)、(VI)メタノールの酸化的カルボニル化反応(非特許文献4参照)などが提案されている。
【0005】
本発明者らは、先に燃料電池システムを応用して、(VII)水素と酸素から過酸化水素を製造する方法(非特許文献5参照)を提案してきた。この方法は、ナフィオン(デュポン社の登録商標)を隔膜とし、膜のアノード側は白金黒を、カソード側は金メッシュもしくはグラファイトを触媒電極とし、アノード室に水素ガス、塩酸水溶液が導入されたカソード室に酸素ガスを吹き込むことによって過酸化水素を製造する。しかしながら、この方法では、上記1)〜4)などの利点を有するものの、得られる過酸化水素の濃度が低く、また、経時的に過酸化水素の生成が頭打ちになるなどの難点があった。このような問題点を改善すべく、本発明者らは、新たな構造からなる燃料電池型反応装置を用いて水素と酸素から過酸化水素を製造する方法(特許文献3〜5参照)を提案した。この方法は、アノードおよびカソードによりアノード室、中間室、カソード室に区画され、中間室に電解質溶液を存在させ、両極間を電子伝導体で外部短絡された構造を有する装置もしくは該中間室がカチオン交換膜によって区画された構造を有する装置を用いて、アノード室に水素、カソード室に酸素を供給して、中間室の電解質溶液中に過酸化水素を発生させる方法である。しかしながら、この方法では、過酸化水素の生成速度が向上するものの、過酸化水素の蓄積濃度の点において必ずしも満足できるものではなく、また得られた過酸化水素に電解質が必然的に含まれてしまうという問題点があった。
化学工業界においては、これら過酸化水素の製造方法に限らず、有用な化学薬品をより効率的に製造するための反応方法や触媒の開発が常に求められている。
【0006】
【特許文献1】米国特許第4,431,494号明細書等参照
【特許文献2】米国特許第4,009,252号明細書等参照
【特許文献3】特開2001−236968号公報
【特許文献4】特開2005−076043号公報
【特許文献5】特開2005−281057号公報
【非特許文献1】化学便覧、応用化学編I 、日本化学会編、302ページ、1986年参照
【非特許文献2】触媒,31,48ページ,1989
【非特許文献3】J.Chem.Soc.,Faraday Trance.,90,451,1994
【非特許文献4】Electrochimica Acta,Vol.39,No.14,2109,1994
【非特許文献5】Electrochimica Acta,Vol.35,No.2,319,1990
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、有用な化学薬品を穏和な条件で選択性高く、効率的かつ経済的な方法で製造すると共に必要に応じて電力を製造し、従来の触媒プロセスが抱える問題点を克服する事の可能な燃料電池型反応装置を提供するとともに、該燃料電池型反応装置を用いて、有用な化学薬品を穏和な条件で選択性高く、効率的かつ経済的な製造方法を提供すること、特に、該反応装置を用いて、水素と酸素から過酸化水素を製造することにより、従来の製造法における大量の有機溶媒の使用、製造工程の煩雑さ、電力エネルギーの大量消費、水素と酸素の混合による爆発危険性、低い過酸化水素の収率等の問題点を解決することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、かかる従来技術の問題点を解決すべく鋭意検討した結果、次の本発明に到達した。
すなわち、本発明は、
[1]アノード膜、カソード膜及び電解質膜を一体化させたユニット膜によりアノード室、カソード室に区画され、アノード膜及び/又はカソード膜の一部が気相部に露出した状態でアノード室及び/又はカソード室に液体を存在させ、両極間を電子伝導体で外部短絡した構造であることを特徴とする燃料電池型反応装置、
[2]アノード室及び/又はカソード室に存在させる液体が、水または電解質水溶液であることを特徴とする上記[1]記載の燃料電池型反応装置、
[3]アノード室に還元性物質を、カソード室に酸性物質を供給して、カソード膜中に反応生成物を発生させることを特徴とする上記[1]又は[2]記載の燃料電池型反応装置、
[4]カソード膜が、周期律表第4周期から第6周期の7〜16族から選ばれる少なくとも1種の金属、及びこれらの金属化合物、並びに導電性炭素材料から選ばれる1種以上を含む触媒電極であることを特徴とする上記[1]〜[3]のいずれか1項に記載の燃料電池型反応装置、
[5]金属化合物が、ポルフィリン系大環状配位子を有する金属ポルフィリン類であることを特徴とする上記[4]記載の燃料電池型反応装置、
[6]金属化合物が、コバルトポルフィリン類であることを特徴とする上記[4]又は[5]記載の燃料電池型反応装置、
[7]カソード膜が、金属ポルフィリン類及び導電性炭素材料を含む混合物を熱処理することによって得られたものであることを特徴とする上記[1]〜[6]のいずれか1項に記載の燃料電池型反応装置、
[8]導電性炭素材料が、活性炭、カーボンファイバー、グラファイト、カーボンウィス
カー、カーボンブラックおよびアセチレンブラックから選ばれた1種または2種以上の炭
素材料である上記[4]〜[7]のいずれか1項に記載の燃料電池型反応装置、
[9]酸化還元反応による化合物の製造方法であって、上記[1]〜[8]記載の燃料電池型反応装置を用い、アノード室に還元性物質を導入し、そしてカソード室に酸化性物質を導入して、カソード膜において該還元性物質と該酸化性物質から化合物を得ることを特徴とする化合物の製造方法、
[10]還元性物質が水素供与体であり、酸化性物質が酸素ガスであり、製造される化合物が過酸化水素であることを特徴とする上記[9]に記載の化合物の製造方法、
である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によって、目的化合物の収率及び選択性の低さ、製造工程の煩雑さ、エネルギーの大量消費等、従来の酸化プロセスが抱える問題点を克服することができる。
本発明の燃料電池型反応装置を用いることで、有用な化学物質を穏和な条件で高選択率、高効率的かつ経済的な方法で製造することができると共に、所望により電力を副産物として得ることができる。また、還元性物質及び酸化性物質がアノードとカソードで各々分離された状態で反応を行うことができるので、爆発混合気の形成による爆発危険性が回避でき、生成物と酸化生成物との逐次的な反応による副生物の生成を抑制でき、さらに反応活性、反応選択性が高いという利点がある。
実施例に示すように、本発明の反応装置を用いることで、水素と酸素から過酸化水素を電解質が含まれない中性の水中において、高選択率かつ高効率的に製造することができ、必要により、電気エネルギーを得ることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、過酸化水素の製造方法を例に本発明の詳細を説明する。無論、本発明は過酸化水素の製造方法に限定されるものではなく、前記従来の技術において記載した(IV)〜(VI)のような燃料電池システムが応用できる他の化学合成反応にも有効なものとなる。
本発明の燃料電池型反応装置の一例として実施例で用いた装置及び本発明の方法により還元性物質(水素)と酸化性物質(酸素)から過酸化水素を製造するための反応の原理を示す概略図を図1に示す。
図1に示す装置は、アノード膜3、カソード膜5及び電解質膜4を一体化させたユニット膜により、アノード室1及びカソード室2に区画された構造からなる。このカソード室2には必要に応じて液体を導入するためのカソード側中間室6を設け、カソード膜5の一部を気相部に露出させた状態で液体(イオン交換水)が導入される。アノード室1には還元性物質を供給するための還元性物質の入り口7と、還元性物質の排出口9があり、カソード室2には酸化性物質を供給するための酸化性物質の入り口8及び酸化性物質の排出口10がある。生成した過酸化水素はカソード中間室6に中性の過酸化水素水溶液として蓄積される。また、アノード膜3とカソード膜5の外側表面には集電用の金属メッシュ(例えば金製メッシュ)(図示せず)が取り付けられ、アノード膜3とカソード膜5の外側表面には電子伝導体であるリード線11によって互いに接続されている。所望によっては、アノード膜3とカソード膜5の両極間に定電圧発生装置を設けて電圧を印加することで反応を促進させることも可能である。また、所望により、外部回路に負荷をかけることにより、作動中の本発明の装置から電力を取り出すことも可能である。
【0011】
本発明で用いるアノード膜は、触媒の役割を果たすアノード活物質からなりイオン伝導性又は活性種伝導性を有するものである。また、本発明で用いるカソード膜は、触媒の役割を果たすカソード活物質からなりイオン伝導性又は活性種伝導性を有するものである。
アノード活物質としては、種々の材料を使用することができ、通常、各種金属、金属化合物、導電性炭素材料から選ばれる少なくとも1種又は2種以上を含むものが使用できる。
アノード活物質として用いる金属としては、好ましくは周期律表の1〜16族から選ばれる金属である。これらの金属は単独もしくは2種以上の混合物として用いてもよい。また、これら金属の無機化合物、有機金属化合物等の化合物が使用されるが、好ましくは金属ハロゲン化物、金属酸化物、金属水酸化物、金属硝酸塩、金属硫酸塩、金属酢酸塩、金属リン酸塩、金属カルボニル、金属アセチルアセトナト等が金属化合物として使用することができる。また、アノード活物質として用いる導電性炭素材料としては、電気伝導性を有する種々の炭素材料が使用できるが、活性炭、カーボンブラック、アセチレンブラック、グラファイト、カーボンファイバー、カーボンウィスカー等の炭素材料が好ましく用いられる。これら炭素材料は、単独もしくは2種以上の混合物として用いてもよい。
【0012】
本発明において、還元性物質として水素を用いる場合には、アノード活物質として、水素をプロトンにするための公知な触媒、例えば、前述した周期律表の8〜10族から選ばれる金属、好ましくは白金、パラジウムなどの金属又はこれらの化合物が用いられる。また、アノード活物質としては、前述した電気伝導性を有する導電性炭素材料、好ましくは活性炭、カーボンファイバー、グラファイト、カーボンウィスカー、カーボンブラックから選ばれた炭素材料を単独、もしくは2種以上の混合物として用いられる。
カソード活物質としては、各種金属、金属化合物、導電性炭素材料から選ばれる少なくとも1種又は2種以上を含むものが使用できる。
【0013】
カソード活物質として用いる金属としては、好ましくは周期律表第4周期から第6周期の7〜16族から選ばれる少なくとも1種の金属である。例えば、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、カドニウム、インジウム、錫、テルル、ランタン、タングステン、レニウム、イリジウム、白金、金、鉛、ビスマスが挙げられる。これらの金属は単独もしくは2種以上の混合物として用いてもよい。また、これら金属の無機化合物、有機金属化合物等の化合物が使用されるが、好ましくは金属ハロゲン化物、金属酸化物、金属水酸化物、金属硝酸塩、金属硫酸塩、金属酢酸塩、金属リン酸塩、金属カルボニル、金属アセチルアセトナト、金属ポルフィリン類、金属フタロシアニン類等が金属化合物として使用することができる。
【0014】
本発明においては、カソード活物質として用いる金属化合物として、好ましくは金属ポルフィリン類を含むものが用いられる。
ここで、金属ポルフィリン類としては、ポルフィリン環の中心に金属原子を有するものであればよく、各種のものがある。ポルフィリン環には様々な置換基(フェニル基、置換(メチル、カルボキシル、臭素、フッ素、ヒドロキシル、アミノ、スルホン)フェニル基等)が結合したものでもよく、また無置換のものでもよい。好ましくは、ポルフィリン、テトラフェニルポルフィリン、オクタエチルポルフィリン、プロトポルフィリン、テトラキス(カルボキシフェニル)ポルフィリン、テトラ(1−メチル−4−ピリジル)ポルフィリン等のポルフィリン類が用いられる。
また、ポルフィリン類の中心に存在する金属原子としては、マンガン、ニッケル、錫、亜鉛、コバルト、銅、カドニウム、鉄あるいはバナジウム等を挙げることができ、そのうち特にコバルトが最適である。
【0015】
本発明において、カソード活物質として用いるもう一つの材料は、導電性炭素材料である。導電性炭素材料としては、電気伝導性を有する種々の炭素材料が使用できるが、活性炭、カーボンブラック、アセチレンブラック、グラファイト、カーボンファイバー、カーボンウィスカー等の炭素材料が好ましく用いられる。これら炭素材料は、単独もしくは2種以上の混合物として用いてもよい。
また、本発明においてカソード活物質として金属ポルフィリン類を用いる場合は、金属ポルフィリン類と導電性炭素材料との混合物が好ましく用いられる。
【0016】
金属ポルフィリン類と導電性炭素材料の混合方法としては、例えば、金属ポルフィリン類と粒子状の導電性炭素材料を均一に物理混合するか、金属ポルフィリン類と粒子状の導電性炭素材料を溶媒に溶解または分散させた後、溶媒を留去して導電性炭素材料に含浸担持する方法などが挙げられる。
この場合、溶媒としては、ジメチルホルムアミド、キノリン、アセトン、ジクロロメタンあるいは水などを使用することができる。その他の方法としては、金属ポルフィリン類を導電性炭素材料にスパッタ法あるいは蒸着法により付与することもできる。
【0017】
これら混合物は、そのままの状態でもカソード活物質として使用できるが、好ましくは上記混合物を熱処理したものを使用する。熱処理は、酸素、空気、不活性ガス中で行うことができるが、窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス中で熱処理を行うことが好ましい。熱処理温度は、100〜1000℃、好ましくは400〜1000℃、さらに好ましくは500〜900℃である。
アノード膜及びカソード膜は、その活物質の導電性が不足する場合、触媒としてではなく、導電性を上げる目的で導電性炭素材料を含ませることもできる。例えば、電極活物質を、導電性を上げる目的で添加された導電性炭素材料と組み合わせて用いる場合には、粒子状の導電性炭素材料と均一に混合するか、粒子状の導電性炭素材料に、電極活物質を担持させてなる粒子を用いると、組成が均一で、電子伝導性の良好なアノード膜及びカソード膜が得られるので好ましい。導電性炭素材料としては前記したものが用いられる。
【0018】
以上、本発明の装置に用いるアノード活物質及びカソード活物質の組成について述べたが、電極として、電極活物質を、導電性炭素材料と組み合わせて用いる場合には、両者の重量の合計に対する前者の重量(金属換算)の比は、0.0001〜50重量%であることが好ましく、より好ましくは0.001〜30重量%、さらに好ましくは0.001〜10重量%から選ばれる。
後述の実施例で示されるように本発明の方法によって水素と酸素から過酸化水素を製造する場合には、アノード膜として、白金黒及びカーボンファイバーを含む電極が好ましく用いられる(この場合、カーボンファイバーは、活物質としてではなく、導電性を上げる目的で添加されている)。なお、一般に燃料電池で使用されている入手しやすい電極を用いてもよい。
【0019】
また、カソード膜としては、活性炭素及びカーボンファイバーを混合した導電性炭素材料、またはコバルトポルフィリン類を導電性炭素材料に含浸担持したものを不活性ガス中で熱処理したものを電極成分として用いることが好ましい。
上述したアノード膜及びカソード膜は、上述した各主成分以外に撥水剤を混合して用いることが好ましい。この場合、撥水剤としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレンオリゴマー(TFEO)、フッ化黒鉛((CF)n)、フッ化ピッチ(FP)などが例示される。これら撥水剤は、本発明において、ガス(還元性物質、酸化性物質)と液体(例えば、水)とユニット膜(アノード膜、カソード膜、電解質膜)との気体−液体−固体における三相界面での電気化学的反応効率を向上させる効果を持つ。また、これら撥水剤は、触媒粒子の結着剤としても機能するので、上記成分と物理混合してホットプレスすることによりシート状に成型して電極として用いることができる。撥水剤を用いる場合の使用量は、使用する電極活物質の1〜250重量%、好ましくは25〜100重量%とすることができる。
【0020】
本発明の電解質膜としては、イオン伝導体であれば特に限定されない。例えば、リン酸、塩酸、硫酸、塩酸等の酸性電解質を支持体に含浸させたプロトン酸膜、シリカ、アルミナ、H型ゼオライト、リン酸ジルコニウム、ヘテロポリ酸等の固体電解質膜、SrCeO、BaCeO系等のペロブスカイト型焼結体、ポリスチレン・スルホン酸系あるいはフッ化炭素系重合体・スルホン酸系等のイオン交換高分子膜等が挙げられる。
本発明においては、フッ素樹脂系のナフィオン(デュポン社の登録商標)膜などのイオン交換高分子膜が好ましく用いられる。
以上、本発明の装置の構成材料であるアノード膜、カソード膜、電解質膜の組成について述べた。本発明においては、上記のアノード膜、電解質膜、カソード膜をホットプレス等で圧着し、一体化させてシート状にしたユニット膜を本発明の装置に設置する。
アノード膜、カソード膜、及びアノード膜、電解質膜、カソード膜から構成されるユニット膜の作成法は、例えば、実施例に示されるように、塗布法やドクターブレード法等、一般的に燃料電池で採用されている方法を用いることができる。
【0021】
本発明の装置は、前記ユニット膜によりアノード室、カソード室に区画された構造を有し、それらの両方もしくはいずれかに液体を存在させる。その際、アノード膜及び/又はカソード膜の一部が気相部に露出させた状態でアノード室及び/又はカソード室に液体を導入する。
本発明の装置は、還元性物質、酸化性物質をガスとしてアノード及びカソードに供給するので、背景技術の欄のところで説明した(IV)〜(VII)に記載の従来の燃料電池型反応装置に比べ、各物質の活量を上げることが可能となり、反応活性及び反応選択性が向上するという効果がある。
【0022】
例えば、実施例に示されるように、カソード膜の一部が露出した状態でカソード室にイオン交換水を存在させた場合、カソード膜中に三相界面が形成され、電気化学的反応効率が向上する。カソード膜中で生成した過酸化水素は、カソード室に存在させたイオン交換水中に過酸化水素水溶液として蓄積される。
また、同様にアノード室にアノード膜の一部が露出した状態で液体(例えば水)を存在させることもできる。その場合においても、アノード膜中に三相界面が形成され、電気化学的反応効率が向上する。また、アノード室に存在させた水によって、アノード膜中で発生するプロトンの移動を促進させるという効果を併せ持つ。カソード膜中で生成した過酸化水素は、分解生成物である水を含んだ過酸化水素水溶液としてカソード室に蓄積する。
さらに、アノード室及びカソード室の両方にアノード膜及びカソード膜の一部が気相に露出した状態で液体を存在させてもよく、上述した作用により、高効率的に反応性生物が得られるという効果がある。
【0023】
本発明でアノード室及び/又はカソード室に存在させる液体としては、無機、有機の液状物質であれば特に限定されないが、好ましくは水または電解質水溶液が用いられる。水としては、純水、イオン交換水が用いられる。また、電解質水溶液としては、酸性、中性、アルカリ性の弱電解質水溶液または強電解質水溶液が用いられる。これら電解質水溶液としては、例えば、HCl,HSO,HPO,HClO,HNO等およびそれらの塩類またはNaOH,KOH,LiOH,NH,NHOH等の水溶液または水ガラス、水道水、工業用水等のごとき、酸性、中性ならびにアルカリ性の弱電解質水溶液から強電解質水溶液までのものを単独、もしくは2種類以上の混合物としたものなどが挙げられる。また、電解質を溶解させる溶媒として、アルコール、塩化メチレン、クロロホルム、酢酸、アセトニトリルなどの非水溶媒あるいはそれらの混合物を用いても良い。
【0024】
本発明で用いる還元性物質としては、電子供与能力を有する化合物、好ましくはアノード上でプロトンと電子を放出することが可能な水素供与体が用いられる。具体的には、水素、アルコール類、ハイドロキノン類、さらには飽和炭化水素等が挙げられ、更に好ましくは工業的に安価な水素が用いられる。また、これらの水素供与体は、窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガスとの混合ガスとして用いてもよい。
本発明で用いる酸化性物質としては、電子受容能力を有する化合物であれば特に制限はなく、例えば空気、酸素、酸化窒素などが挙げられ、好ましくは空気又は酸素が用いられる。また、これら酸化性物質は必ずしも純粋である必要はなく、窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガスとの混合物であってもよい。さらに、カソード室に被酸化性基質を供給することにより、カソード膜中に酸化生成物を発生させることもできる。
【0025】
本発明の方法においては、反応装置のスケールにともなって変わる種々の条件(例えば、還元性物質、酸化性物質及び電解溶液の供給量など)は、反応装置のスケールにあわせて適宜選択できる。
上記還元性物質及び酸化性物質がアノード室又はカソード室に供給される場合、それぞれの流量は、反応装置のスケールに合わせて適宜選択できるが、通常、それぞれの流量は0.1ml/分〜100000ml/分、好ましくは1ml/分〜1000ml/分とすることができる。
【0026】
本発明の方法においては、アノードとカソードの両極間に電圧を印加することにより、反応を加速させることができる。電圧を印加する場合の電圧は、通常0.1〜10V 、好ましくは0.2〜2V とすることができる。
本発明の方法における反応条件としては、反応温度は、通常−20〜200℃、好ましくは−5〜150℃の範囲から選択される。また、反応時の還元性物質及び酸化性物質の圧力は、常圧で行うことができるが、所望により、加圧下でも減圧下でも実施することができる。加圧下で行う場合は、常圧を越えて100気圧以下とすることができる。減圧下で行う場合は、常圧未満で10−2Torr以上とすることができる。反応時間は、反応生成物の選択率や収率の実質的な目標値を定め、適宜選択すればよく、特に制限されないが、通常、数秒ないし数時間である。
【0027】
また、反応形式としては、回分的又は連続的に行うことが可能であり、特に制限されない。反応を連続的に行う場合には、適当な装置を併用し、カソード室に形成される反応混合物を連続的に抜き出しながら、必要に応じて水もしくは電解質水溶液等の液体をカソード室に連続的に導入すればよい。具体的には、例えば、カソード室に新たに生成物が含まれる液体の排出口を設置して、液体を連続的に導入してもよい。
反応生成物は、反応装置中の反応混合物から慣用の手段、例えば、蒸留又は抽出などを公知の分離手段によって分離し、所望の純度にすることができる。なお、反応装置の大きさについては特に制限はないが、例えば、カソード室及びアノード室の容積は約0.1cmから約10mの範囲から選択することができ、アノード膜、カソード膜及び電解質膜から構成されるユニット膜のサイズもそれに合わせて調整することができる。
【0028】
次に、本発明について、水素と酸素から過酸化水素を製造する反応を例にとって説明する。この場合、以下の(1)、(2)式に示す反応が、ガス(水素、酸素)と液体とユニット膜(アノード3、カソード5、電解質膜4)が形成する、気体−液体−固体の三相界面で進行する。
→ 2H + 2e (1)
+ 2H + 2e → H (2)
すなわち、アノード3に供給された水素供与体である水素は、電極上でプロトンと電子を放出し((1)式)、プロトンは電解質膜4を通過してカソード5へ移動し、一方、電子は外部回路を経由してカソード5に移動する。そして、カソード5では供給された酸素が電子及びプロトンと反応して、生成物である過酸化水素が得られる((2)式)。
【0029】
本発明の装置は、還元性物質、酸化性物質をガスとして供給するので、背景技術の欄のところで説明した(IV)〜(VII)に記載の従来の燃料電池型反応装置に比べ、各物質の活量を上げることが可能となり、さらには導電性炭素材料、もしくは酸素の2電子還元に有効な金属ポルフィリン類及び導電性炭素材料を含むカソードを用いることで反応活性及び反応選択性が向上するという効果がある。このように、上記の装置を用いると、ユニット膜(アノード3、カソード5及び電解質膜4)の内部において、反応性を有する化学種の三相界面への移動が起きる。このため、本発明においては、アノード及びカソードの両者がイオン伝導性あるいは活性種伝導性であることを必要とする。以上の反応原理は、この過酸化水素製造法に限らず、その他の種々の酸化反応においても本質的に同様である。
【実施例】
【0030】
以下、実施例及び比較例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。当業者は、以下に示す実施例のみならず様々な変更を加えて実施することが可能であり、かかる変更も本特許請求の範囲に包含される。
[実施例1]
実施例1では図1に示す燃料電池型反応装置を用いて、酸素と水素からの過酸化水素の製造を行った。
この反応装置は、アノード膜3、電解質膜4、カソード膜5を一体化させたユニット膜により、アノード室1及びカソード室2に区画された構造からなる。このカソード室2には液体を導入するためのカソード中間室6を設け、カソード膜5の一部を気相部に露出させた状態で液体が導入される。中間室6には、カソード5の半分の面積を気相部に露出させた状態でイオン交換水を0.5ml量導入した。電解質膜4としては、ナフィオン117膜(円形、厚さ:0.2mm、直径:約25mm、米国デュポン製)を用いた。
【0031】
アノード室1は還元性物質(水素)の入口7と、余剰の還元性物質の排出口9を有する。カソード室2は酸化性物質(酸素)の入口8と、余剰の酸化性物質の排出口10を有する。アノード3とカソード5の上には集電のための金製メッシュが配され、金製リード線11によって、電流計12を介して短絡されている。
アノード膜3、カソード膜5及び電解質膜4から構成されるユニット膜の作成方法は以下の通りである。
アノード膜3は、Pt/活性炭(Cabot社製、XC−72)25mg、カーボンファイバー粉末(昭和電工社製、VGCF)25mg及びPTFE粉末(ダイキン工業社製、F104)5mgをよく混合し、これを円形シート状(厚さ:約1mm、直径:約16mm)にホットプレート(ADAVANTEC社製TOP−15)とステンレス板、ステンレスローラーを用いて120℃で成型し作成した。
【0032】
カソード膜5は、テトラフェニルポルフィリンコバルト(アルドリッチ製)とカーボンファイバー粉末(昭和電工社製、VGCF)をジクロロメタン中に溶解、分散させた後、ジクロロメタンを留去してカーボンファイバー粉末上に含浸担持した混合粉末をヘリウム気流中150℃で1時間乾燥させた後、550℃で2時間熱処理活性化して得たコバルト−テトラフェニルポルフィリン/カーボンファイバー粉末(コバルト−テトラフェニルポルフィリンの担持量は、コバルト金属基準で0.3重量%とした)18mg、カーボンファイバー粉末(昭和電工社製、VGCF)30mg及びPTFE粉末(ダイキン工業社製、F104)3mgを混合したものをアノード3と同様に円形シート状(厚さ:約0.6mm、直径:約16mm)にホットプレート(ADAVANTEC社製 TOP−15)とステンレス板、ステンレスローラーを用いて120℃で成型し作成した。
【0033】
こうして得られたシート状のアノード膜3及びカソード膜5の間に電解質膜4としてナフィオン117膜(円形、厚さ:0.2mm、直径:約25mm、米国デュポン製)を挟み、ホットプレス装置(アズワン社製、AH2003)を用いて140℃、5MPaで成型し、アノード膜3、カソード膜5及び電解質膜4から構成されるユニット膜を作成し、H型反応セルに設置した。
【0034】
上記の反応装置を用いて以下のようにして反応を行った。
アノード室1に水素ガスを、カソード室2に酸素ガスをそれぞれ常圧下、20ml/分の流量で供給し、反応温度5℃、反応時間2時間として反応を行った。
その結果、カソード室2に設けた中間室6のイオン交換水中に過酸化水素の生成が認められ、同時に電流の発生も認められた。この間、アノード3とカソード5の間の電位差、電流及び両極間を流れた電気量を、各々電位差計(北斗電工社製ELECTRON METERHE−104)、無抵抗電流計(北斗電工社製ZERO SHUNT AMMETER HM−104)及びクーロンメーター(北斗電工社製COULOMB METER HF−210)を用いて測定した。生成した過酸化水素の濃度は、KMnO水溶液を用いて分析した。
【0035】
得られた過酸化水素の生成濃度は0.53重量%、生成速度は51.25μmol・h−1、電流効率は4.65%、電流密度は29.56mA・cm−2であった。電流効率は、流れた電気量を無抵抗電流計とクーロンメーターを用いて計測し、下記の式によって求めた。
電流効率=(過酸化水素蓄積量(mol)×100/(流れた電気量(C)/96500(C/mol))式中の電気量とは、計測クーロン値(Q)を平均電流値に換算した値である(I(A)=Q(C)・3600(S))。
【0036】
[実施例2]
カソード活成分として、カーボンファイバー粉末(昭和電工社製、VGCF)30mg、活性炭粉末(和光純薬工業社製、Charcoal,Activated,Powder)18mg及びPTFE粉末(ダイキン工業社製、F104)3mgを混合したものを用いた以外は実施例1と同様にして反応を行った。過酸化水素の生成濃度は0.4重量%、生成速度は32.46μmol・h−1、電流効率は9.68%、電流密度は8.99mA・cm−2であった。
【0037】
[実施例3]
カソード活成分の金属ポルフィリン類として、オクタエチルポルフィリンコバルト(アルドリッチ社製)を用いた以外は実施例1と同様にして反応を行った。過酸化水素の生成濃度は0.35重量%、生成速度は79.50μmol・h−1、電流効率は3.97%、電流密度は26.82mA・cm−2であった。
【0038】
[実施例4]
カソード活成分の熱処理活性化温度を800℃とした以外は実施例1と同様にして反応を行った。過酸化水素の生成濃度は1.02重量%、生成速度は100.63μmol・h−1、電流効率は3.22%、電流密度は83.32mA・cm−2であった。
【0039】
[実施例5]
カソードの膜厚を0.2mmとし、カソード活成分の熱処理活性化温度を800℃とした以外は実施例1と同様にして反応を行った。過酸化水素の生成濃度は1.70重量%、生成速度は161.54μmol・h−1、電流効率は5.65%、電流密度は76.57mA・cm−2であった。
【0040】
[実施例6]
カーボンファイバー粉末(昭和電工社製、VGCF)48mg及びPTFE粉末(ダイキン工業社製、F104)3mgを混合したものを円形シート状(厚さ:約0.6mm、直径:約16mm)にホットプレートとステンレス板、ステンレスローラーを用いて120℃で成型し作成した。次に、プロパノール140μl及びナフィオン液(アルドリッチ社製、ナフィオン濃度10%、水溶媒)10μlの混合溶液に実施例1で得られたカソード活成分であるコバルト−テトラフェニルポルフィリン/カーボンファイバー粉末(熱処理活性化温度800℃)2mgを加えて超音波攪拌したスラリーを上記で得られたシートに塗布し、減圧乾燥したものをカソードとして用いた以外は実施例1と同様にして反応を行った。過酸化水素の生成濃度は3.97重量%、生成速度は399.35μmol・h−1、電流効率は10.28%、電流密度は104.12mA・cm−2であった。
【0041】
[実施例7]
プロパノール350μl及びナフィオン液(アルドリッチ社製、ナフィオン濃度10%、水溶媒)50μlの混合溶液に実施例1で得られたカソード活成分であるコバルト−テトラフェニルポルフィリン/カーボンファイバー粉末(熱処理活性化温度800℃)10mgを加えて超音波攪拌したスラリーをドクターブレード法によりテフロンシート上に印刷した。こうして得られたカソード活成分を含む円形状シート(厚さ:約0.01mm、直径:約16mm)と実施例1で得られたアノードの間にナフィオン117膜を挟み、ホットプレス装置を用いて140℃、0.5MPaで転写し、さらにカーボンファイバー粉末(昭和電工社製、VGCF)48mg及びPTFE粉末(ダイキン工業社製、F104)3mgを混合して作成した円形シート状(厚さ:約 0.6mm、直径:約16mm)をカソード活成分側に設置して、ホットプレス装置を用いて140℃、5MPaで成型した。こうして得られたユニット膜を使用した以外は実施例1と同様にして反応を行った。過酸化水素の生成濃度は3.39重量%、生成速度は330.74μmol・h−1、電流効率は12.22%、電流密度は72.53mA・cm−2であった。
【0042】
[比較例1]
開回路条件(両極間を短絡させない)とした以外は、実施例1と同様にして反応を行った。その結果、反応は進行せず、過酸化水素の生成は認められなかった。
[比較例2]
アノード室に水素と酸素の混合ガスを供給した以外は、実施例1と同様にして反応を行った。その結果、反応は進行するが、過酸化水素は生成せず、得られた生成物は水のみであった。
【0043】
[比較例3]
カソード室に水素と酸素の混合ガスを供給した以外は、実施例1と同様にして反応を行った。その結果、反応は進行せず、過酸化水素の生成は認められなかった。
比較例1〜3の結果より、本反応は燃料電池型反応によって進行することが明白である。
[比較例4]
カソードを気相部に露出させず、完全にイオン交換水で満たした以外は実施例1と同様にして反応を行った。その結果、反応は進行せず、過酸化水素の生成は認められなかった。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明の反応装置、該装置を用いた化合物の製造方法は、化学品、特に水素と酸素から過酸化水素を、容易にしかも高選択率かつ高効率で製造することができ、また、必要により、電気エネルギーを得ることもできることから、化学工業において有用な化合物、特に水素と酸素から過酸化水素を製造するために用いることができる。過酸化水素は、化学、パルプ、医薬、食品、繊維、半導体工業において、漂白剤、酸化剤として使用されている有用な基礎薬品である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の装置を用いて、還元性物質(水素)と酸化性物質(酸素)から過酸化水素を製造する方法の概略図である。
【符号の説明】
【0046】
1 アノード室
2 カソード室
3 アノード
4 電解質膜
5 カソード
6 カソード中間室(液体としてイオン交換水が含まれる)
7 還元性物質(水素)の入口
8 酸化性物質(酸素)の入口
9 還元性物質(水素)の排出口
10 酸化性物質(酸素)の排出口
11 リード線
12 電流計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノード膜、カソード膜及び電解質膜を一体化させたユニット膜によりアノード室、カソード室に区画され、アノード膜及び/又はカソード膜の一部が気相部に露出した状態でアノード室及び/又はカソード室に液体を存在させ、両極間を電子伝導体で外部短絡した構造であることを特徴とする燃料電池型反応装置。
【請求項2】
アノード室及び/又はカソード室に存在させる液体が、水または電解質水溶液であることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池型反応装置。
【請求項3】
アノード室に還元性物質を、カソード室に酸性物質を供給して、カソード膜中に反応生成物を発生させることを特徴とする請求項1又は2に記載の燃料電池型反応装置。
【請求項4】
カソード膜が、周期律表第4周期から第6周期の7〜16族から選ばれる少なくとも1種の金属、及びこれらの金属化合物、並びに導電性炭素材料から選ばれる1種以上を含む触媒電極であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の燃料電池型反応装置。
【請求項5】
金属化合物が、ポルフィリン系大環状配位子を有する金属ポルフィリン類であることを特徴とする請求項4に記載の燃料電池型反応装置。
【請求項6】
金属化合物が、コバルトポルフィリン類であることを特徴とする請求項4又は5に記載の燃料電池型反応装置。
【請求項7】
カソード膜が、金属ポルフィリン類及び導電性炭素材料を含む混合物を熱処理することによって得られたものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の燃料電池型反応装置。
【請求項8】
導電性炭素材料が、活性炭、カーボンファイバー、グラファイト、カーボンウィスカー、カーボンブラックおよびアセチレンブラックから選ばれた1種または2種以上の炭素材料である請求項4〜7のいずれか1項に記載の燃料電池型反応装置。
【請求項9】
酸化還元反応による化合物の製造方法であって、請求項1〜8のいずれかに記載の燃料電池型反応装置を用い、アノード室に還元性物質を導入し、そしてカソード室に酸化性物質を導入して、カソード膜において該還元性物質と該酸化性物質から化合物を得ることを特徴とする化合物の製造方法。
【請求項10】
還元性物質が水素供与体であり、酸化性物質が酸素ガスであり、製造される化合物が過酸化水素であることを特徴とする請求項9に記載の化合物の製造方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2009−68080(P2009−68080A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−238820(P2007−238820)
【出願日】平成19年9月14日(2007.9.14)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】