説明

燃料電池用電極、該電極の製造方法及び該電極を採用した燃料電池

【課題】カソードに空気を利用しつつも酸素の透過度を改善し、リン酸湿潤性を向上させるだけではなく、耐熱性及び耐リン酸性にすぐれる燃料電池用電極、該電極の製造方法及び該電極を採用した燃料電池を提供する。
【解決手段】本発明は、フッ素またはフッ素含有作用基を有する2種類のベンゾオキサジン系モノマー、その重合体及びその混合物のうちから選択された一つ以上と、触媒と、を含む触媒層を有する燃料電池用電極、該電極の製造方法及び該電極を採用した燃料電池である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池用電極及びこれを採用した燃料電池に係り、さらに詳細には、酸素透過度を向上させてドーピングされたリン酸の湿潤性が改善されつつ、耐熱性及び耐リン酸性にすぐれる燃料電池用電極と、これを採用して効率などが改善された燃料電池とに関する。
【背景技術】
【0002】
電解質として高分子電解質膜を使用した燃料電池は、動作温度が比較的低温であると同時に、小型化が可能であるために、電気自動車や家庭用分散発電システムの電源として期待されている。高分子電解質膜燃料電池に使われる高分子電解質膜としては、NAFION(登録商標)に代表されるパーフルオロカーボンスルホン系ポリマー膜が使われている。
【0003】
しかし、このタイプの高分子電解質膜がプロトン伝導を発現するためには、水分が必要であるために加湿が必要である。また、燃料電池システム効率を高めるために、100℃以上の温度での高温運転が要求されるが、この温度では、電解質膜内の水分が蒸発して枯渇し、固体電解質としての機能が喪失されるという問題がある。
【0004】
このような従来技術に起因する問題を解決するために、無加湿でありつつ100℃以上の高温で作動できる無加湿電解質膜が開発されている。例えば、特許文献1には、無加湿電解質膜の構成材料として、リン酸がドーピングされたポリベンズイミダゾールのような材料が開示されている。
【0005】
また、パーフルオロカーボンスルホン系ポリマー膜を利用した低温作動電池では、電極、特にカソードでの発電によって生成された水(生成水)による電極内でのガス拡散不良を防止するために、撥水材であるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を混合して疎水性を付与した電極が多用されている(例えば、特許文献2を参照)。
【0006】
また、高温(150〜200℃)で作動させるリン酸型燃料電池では、電解質として液体であるリン酸を使用するが、この液状のリン酸が電極内に多量に存在してガス拡散を阻害させるという問題点がある。従って、電極触媒に撥水材であるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を混合し、電極内の細孔がリン酸によって塞がれることを防止できる電極触媒層が使われている。
【0007】
また、高温無加湿電解質であるリン酸を維持するポリベンズイミダゾール(PBI)を電解質膜に使用した燃料電池では、電極と膜との界面の接触を良好にするために、液状のリン酸を電極に含浸させることが試みられ、金属触媒のローディング含有量を高める試みがなされたが、燃料電池の発電特性が十分ではなく改善の余地が多い。
【0008】
また、リン酸がドーピングされた固体高分子電解質を利用する場合には、カソードに空気を供給する場合、最適化された電極組成を使用するとしても1週間ほどのエイジング時間が要求される。これは、カソードの空気を酸素に替えることによって性能向上はもとより、エイジング時間を短縮することは可能ではあるが、商用化を考慮した場合には、望ましいとはいえない。
【0009】
【特許文献1】特開平11−503262号公報
【特許文献2】特開平05−283082号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的は、前述の問題点を解決し、カソードに空気を利用しつつも酸素の透過度を改善し、リン酸湿潤性を向上させるだけではなく、耐熱性及び耐リン酸性にすぐれる燃料電池用電極、その製造方法及び該電極を採用した燃料電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、下記化学式1で表示される第1ベンゾオキサジン系モノマー、下記化学式2で表示される第2ベンゾオキサジン系モノマー、その重合体及びその混合物のうちから選択された一つ以上と、触媒と、を含む触媒層を有する燃料電池用電極が提供される。
【0012】
【化1】

【0013】
前記化学式1で、R、R、R及びRは互いに独立的に、水素、置換または非置換のC−C20アルキル基、置換または非置換のC−C20アルケニル基、置換または非置換のC−C20アルキニル基、置換または非置換のC−C20アリール基、置換または非置換のC−C20ヘテロアリール基、置換または非置換のC−C20シクロアルキル基または置換または非置換のC−C20ヘテロ環基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、またはシアノ基であり、Rは、置換または非置換のC−C20アルキル基、置換または非置換のC−C20アルケニル基、置換または非置換のC−C20アルキニル基、置換または非置換のC−C20アリール基、置換または非置換のC−C20アリールアルキル基、置換または非置換のC−C20ヘテロアリール基、置換または非置換のC−C20ヘテロアリールアルキル基、置換または非置換のC−C20炭素環基、置換または非置換のC−C20炭素環アルキル基、置換または非置換のC−C20ヘテロ環基、または置換または非置換のC−C20ヘテロ環アルキル基であり、かつ、前記R、R、R、R及びRのうちから選択された一つ以上は、フッ素またはフッ素含有作用基を有する。
【0014】
【化2】

【0015】
前記化学式2で、Rは、置換または非置換のC−C20アルキル基、置換または非置換のC−C20アルケニル基、置換または非置換のC−C20アルキニル基、置換または非置換のC−C20アリール基、置換または非置換のC−C20アリールアルキル基、置換または非置換のC−C20ヘテロアリール基、置換または非置換のC−C20ヘテロアリールアルキル基、置換または非置換のC−C20炭素環基、置換または非置換のC−C20炭素環アルキル基、置換または非置換のC−C20ヘテロ環基、または置換または非置換のC−C20ヘテロ環アルキル基であり、Rは、置換または非置換のC−C20アルキレン基、置換または非置換のC−C20アルケニレン基、置換または非置換のC−C20アルキニレン基、置換または非置換のC−C20アリーレン基、置換または非置換のC−C20ヘテロアリーレン基、−C(=O)−、−SO−からなる群から選択され、かつ、前記RとRとのうちから選択された一つ以上は、フッ素またはフッ素含有作用基である。
【0016】
上記課題を解決するために、本発明の他の観点によれば、溶媒に触媒を分散して分散液を得る第1段階と、前記分散液に下記化学式1で表示される第1ベンゾオキサジン系モノマーと下記化学式2で表示される第2ベンゾオキサジン系モノマーとのうちから選択された一つ以上と、溶媒とを含む混合物を付加した後に、撹拌してコーティング液を得る第2段階と、前記コーティング液をカーボン支持体表面にコーティングする第3段階と、を含む燃料電池用電極の製造方法が提供される。
【0017】
上記課題を解決するために、本発明のさらに他の観点によれば、前述の燃料電池用電極を含む燃料電池が提供される。
【発明の効果】
【0018】
本発明による燃料電池用電極は、フッ素またはフッ素含有作用基を有しているため、カソードに空気を利用しつつも酸素透過度が改善され、電極内部でのリン酸(HPO)の湿潤(wetting)能を向上させるだけではなく、耐熱性にすぐれる。従って、かかる電極を採用した燃料電池は、高温無加湿条件下で動作可能であり、改善された発電能を発現させることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0020】
本発明による燃料電池用電極は、下記化学式1で表示される第1ベンゾオキサジン系モノマー、下記化学式2で表示される第2ベンゾオキサジン系モノマー、その重合体及びその混合物のうちから選択された一つ以上;及び触媒を含む触媒層を有する。ここで、前記重合体は下記化学式1で表示される第1ベンゾオキサジン系モノマーの単独重合体、下記化学式2で表示される第2ベンゾオキサジン系モノマーの単独重合体、下記化学式1の第1ベンゾオキサジン系モノマーと下記化学式2の第2ベンゾオキサジン系モノマーとの共重合体をいずれも含む。また、前記混合物には、化学式1のベンゾオキサジン系モノマーと化学式1のベンゾオキサジン系モノマーで形成された混合物のようなモノマーとモノマーの混合物、化学式1のベンゾオキサジン系モノマーと化学式1のベンゾオキサジン系モノマーの重合体で形成された混合物などのようなモノマーと重合体との混合物、化学式1のベンゾオキサジン系モノマーの重合体と化学式1のベンゾオキサジン系モノマーの重合体で形成された混合物のように2種の重合体の混合物が含まれる。
【0021】
【化3】

【0022】
前記化学式1で、R、R、R及びRは互いに独立的に、水素、置換または非置換のC−C20アルキル基、置換または非置換のC−C20アルケニル基、置換または非置換のC−C20アルキニル基、置換または非置換のC−C20アリール基、置換または非置換のC−C20ヘテロアリール基、置換または非置換のC−C20シクロアルキル基または置換または非置換のC−C20ヘテロ環基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、またはシアノ基であり、Rは、置換または非置換のC−C20アルキル基、置換または非置換のC−C20アルケニル基、置換または非置換のC−C20アルキニル基、置換または非置換のC−C20アリール基、置換または非置換のC−C20アリールアルキル基、置換または非置換のC−C20ヘテロアリール基、置換または非置換のC−C20ヘテロアリールアルキル基、置換または非置換のC−C20炭素環基、置換または非置換のC−C20炭素環アルキル基、置換または非置換のC−C20ヘテロ環基、または置換または非置換のC−C20ヘテロ環アルキル基であり、かつ、前記R、R、R、R及びRのうちから選択された一つ以上は、フッ素またはフッ素含有作用基を有する。
【0023】
【化4】

【0024】
前記化学式2で、Rは、置換または非置換のC−C20アルキル基、置換または非置換のC−C20アルケニル基、置換または非置換のC−C20アルキニル基、置換または非置換のC−C20アリール基、置換または非置換のC−C20アリールアルキル基、置換または非置換のC−C20ヘテロアリール基、置換または非置換のC−C20ヘテロアリールアルキル基、置換または非置換のC−C20炭素環基、置換または非置換のC−C20炭素環アルキル基、置換または非置換のC−C20ヘテロ環基、または置換または非置換のC−C20ヘテロ環アルキル基であり、Rは、置換または非置換のC−C20アルキレン基、置換または非置換のC−C20アルケニレン基、置換または非置換のC−C20アルキニレン基、置換または非置換のC−C20アリーレン基、置換または非置換のC−C20ヘテロアリーレン基、−C(=O)−、−SO−からなる群から選択され、かつ、前記RとRとのうちから選択された一つ以上は、フッ素またはフッ素含有作用基である。
【0025】
前記化学式1で、フッ素含有作用基は特別に制限されず、フッ素を有している置換基であれば、いずれも使用可能である。
【0026】
本発明では、リン酸に溶けずに触媒も被毒させないフッ素またはフッ素含有置換基を有しており、カソードに空気を利用しつつも酸素透過度にすぐれ、親水性(または親リン酸性)物質である下記化学式1で表示されるベンゾオキサジン系モノマー、下記化学式2で表示される第2ベンゾオキサジン系モノマー、その重合体及びその混合物のうちから選択された一つ以上を押しなべて含有しており、電極内部でのリン酸(HPO)の湿潤(wetting)能を向上させつつ、耐熱性及び耐リン酸性を確保することが可能である。そして、電極の微細孔隙(micropore)にリン酸が優先的に浸透することとなり、リン酸が主に電極の巨大気孔(macropores)に浸透する場合に発生する問題点、すなわち液状のリン酸が電極内に多量に存在してガス拡散を阻害させるというフラッディング(flooding)を効率的に防止し、気相(燃料ガスまたは酸化ガス)−液相(リン酸)−固相(触媒)の3相の界面面積を拡大させることができる。
【0027】
本発明において、前記化学式1で表示される第1ベンゾオキサジン系モノマー、下記化学式2で表示される第2ベンゾオキサジン系モノマー、その重合体及びその混合物のうちから選択された一つ以上の含有量は、触媒1質量部を基準として、0.001ないし0.5質量部であることが望ましい。
【0028】
前記化学式1でR、R、R及びRは、C−C20アルキル基(例:メチル基、エチル基、ブチル基、t−ブチル基)、アリル基、C−C20アリール基、C−C20アルケニル基、C−C20アルキニル基、F、フッ素化されたC−C20アルキル基、またはフッ素化されたC−C20アリール基であることが望ましい。
【0029】
前記化学式1及び化学式2でRは、−CH−CH=CH、下記化学式で表示される置換基であることが望ましい。
【0030】
【化5】

【0031】
前記化学式2でRは、−C(CH−、−C(CF−、−C(=O)−、−SO−、−CH−、−C(CCl)−、−CH(CH)−、−CH(CF)−または下記構造式で表示される置換基であることが望ましい。
【0032】
【化6】

【0033】
、R、R、R10及びR11は互いに独立的に、水素、F、CHF、CHF、CF、またはC−C20アルキル基であり、R12は、水素、メチル基、エチル基、プロピル基、F、CHF2、CH2F、またはCF3である。
【0034】
前記化学式1で表示される第1ベンゾオキサジン系モノマーは、下記化学式3で表示される化合物、または下記化学式4で表示される化合物であることが望ましい。
【0035】
【化7】

【0036】
前記化学式で、R、R、R及びRは互いに独立的に、水素、F、CHF、CHF、CF、またはC−C20アルキル基であり、R、R、R、R10及びR11は互いに独立的に、水素、F、CHF、CHF、CF、またはC−C20アルキル基であり、R、R、R、R、R、R、R、R10及びR11のうちから選択された一つ以上は、少なくともF、CHF、CHFまたはCFである。
【0037】
【化8】

【0038】
前記化学式4でRは、−C(CH−、CH、−C(CF−、−C(CHF−、−C(CHF)−、または下記構造式で表示される置換基である。
【0039】
【化9】

【0040】
また、前記化学式4で、R、R、R、R10及びR11は互いに独立的に、水素、C−C20アルキル基、アリル基、C−C20アリール基、t−ブチル基、C−C20アルケニル基、C−C20アルキニル基、F、フッ素化されたC−C20アルキル基(例:CHF、CHF、CF)、またはフッ素化されたC−C20アリール基であり、R、R、R、R10及びR11のうちから選択された一つは、特にF、CHF、CHFまたはCFであり、R12は、水素、メチル基、エチル基、プロピル基、F、CHF、CHF、またはCFである。
【0041】
前記化学式3で表示される化合物の具体的な例として、下記化学式5ないし21で表示される化合物のうちから選択された一つがある。
【0042】
【化10】

【0043】
【化11】

【0044】
【化12】

【0045】
【化13】

【0046】
【化14】

【0047】
【化15】

【0048】
【化16】

【0049】
【化17】

【0050】
【化18】

【0051】
【化19】

【0052】
【化20】

【0053】
【化21】

【0054】
【化22】

【0055】
【化23】

【0056】
【化24】

【0057】
【化25】

【0058】
【化26】

【0059】
前記化学式4で表示される化合物の具体的な例として、下記化学式22ないし化学式26で表示される化合物を挙げることができる。
【0060】
【化27】

【0061】
【化28】

【0062】
【化29】

【0063】
【化30】

【0064】
【化31】

【0065】
図3は、本発明の一実施形態において、電極12を含む燃料電池10を示したものである。電極12には、表面コーティング膜が形成されているが、前記表面コーティング膜には、化学式1のベンゾオキサジン系モノマー、化学式2のベンゾオキサジン系モノマーまたはその結合物のうちから選択された少なくとも一つと、触媒とを含む。前記第1ベンゾオキサジン系モノマー、及び第2ベンゾオキサジン系モノマーは、ホモポリマー及び/またはコポリマー形態に存在可能である。
【0066】
本発明による電極は、前述の化学式1で表示される第1ベンゾオキサジン系モノマー、前述の化学式2で表示される第2ベンゾオキサジン系モノマー、その重合体及びその混合物のうちから選択された一つ以上以外に、触媒を含む。
【0067】
前記化学式1で表示される第1ベンゾオキサジン系モノマー、前述の化学式2で表示される第2ベンゾオキサジン系モノマー、その重合体及びその混合物のうちから選択された一つ以上は、リン酸湿潤性を向上させる物質であり、その含有量は、触媒1質量部に対して0.001ないし0.5質量部であることが望ましい。もし化学式1で表示される第1ベンゾオキサジン系モノマー、前述の化学式2で表示される第2ベンゾオキサジン系モノマー、その重合体及びその混合物のうちから選択された一つ以上の含有量が0.001質量部未満の場合には、電極の湿潤状態を改善するのに不十分なので、望ましくない。一方、化学式1で表示される第1ベンゾオキサジン系モノマー、前述の化学式2で表示される第2ベンゾオキサジン系モノマー、その重合体及びその混合物のうちから選択された一つ以上の含有量が0.5質量部を超えた場合には、接触抵抗が増加してセル性能の実現に役に立たず、架橋度(degree of crosslinking)の増加により最終結果の電解質膜が傷つきやすくなり、含浸され難いため、望ましくない。
【0068】
本発明で使われる化学式1で表示される第1ベンゾオキサジン系モノマーは、下記反応式1に示されたように多様な置換基を有し、フェノール、アミン及びp−ホルムアルデヒドの反応を介して製造可能である。ここで、前記反応条件は特別に制限されず、一実施形態によれば、溶媒なしにメルト・プロセス(melt process)で進められ、前記反応温度は、80ないし100℃の範囲で実施され、具体的な反応温度は、置換基の種類によって変わりうる。
【0069】
【化32】

【0070】
前記反応式1でRないしRは、化学式1で定義されたところと同じである。
【0071】
化学式2で表示される第2ベンゾオキサジン系モノマーも、化学式1の第1ベンゾオキサジン系モノマーと類似の方法によって合成可能である。
【0072】
また前記触媒としては、白金単独か、または、金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、スズ、モリブデン、コバルト及びクロムからなる群から選択された一種以上の金属と白金との合金、あるいは混合物を使用する。
【0073】
本発明による電極は、結合剤をさらに含むことができる。
【0074】
前記結合剤としては、ポリ(フッ化ビニリデン)、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロエチレン共重合体、及びパーフルオロエチレンからなる群から選択された一つ以上を使用し、結合剤の含有量は、触媒1質量部を基準として、0.001ないし0.5質量部であることが望ましい。もし結合剤の含有量が0.001質量部未満ならば、電極の湿潤状態を改善するのに不十分であり、0.5質量部を超えれば、むしろリン酸のフラッディング(flooding)を促進して望ましくない。
【0075】
前述の燃料電池用電極を製造する方法について説明すれば、次の通りである。
【0076】
まず、溶媒に触媒を分散して分散液を得る。このとき、溶媒としては、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAc)などを使用し、その含有量は、触媒1質量部を基準として、1ないし10質量部である。
【0077】
前記分散液に前記化学式1で表示される第1ベンゾオキサジン系モノマーと前述の化学式2で表示される第2ベンゾオキサジン系モノマーとのうちから選択された一つ以上と、溶媒とを含む混合物を付加した後で撹拌し、コーティング液を得る。前記コーティング液には、結合剤をさらに付加できる。
【0078】
前記溶媒としては、NMP、DMAcなどを使用し、前述の化学式1で表示される第1ベンゾオキサジン系モノマーと前述の化学式2で表示される第2ベンゾオキサジン系モノマーとのうちから選択された一つ以上の含有量は、触媒1質量部を基準として、0.001ないし0.5質量部であり、結合剤の含有量は、触媒1質量部を基準として、0.001ないし0.1質量部である。
【0079】
前記コーティング液をカーボン支持体表面にコーティングして電極を完成する。ここで、カーボン支持体をガラス基板上に固定すれば、コーティング作業しやすい。そして、前記コーティング方法としては、特別に制限されるものではないが、ドクターブレードを利用したコーティング、バーコーティング(Bar coating)、スクリーンプリンティングのような方法を利用できる。
【0080】
前記コーティング液をコーティング後に乾燥させる過程を経るが、溶媒を除去する過程として、20ないし150゜Cの温度範囲で実施する。そして、乾燥時間は乾燥温度によって変わり、10ないし60分の範囲内で実施する。乾燥は、望ましくは常温で1時間、60℃で15分以上、80℃で10分以上、及び120℃で10分以上実施する。
【0081】
本発明による燃料電池用電極は、前述のように、前記化学式1で表示される第1ベンゾオキサジン系モノマー、前述の化学式2で表示される第2ベンゾオキサジン系モノマー、その重合体またはその混合物を含有するが、前述の重合体は、燃料電池動作時の動作温度(約150℃)で重合反応がおきて得られるのである。
【0082】
本発明による燃料電池用電極を利用して燃料電池を製造する方法について説明する。
【0083】
本発明の電解質膜は、燃料電池で一般的に使われる電解質膜ならば、いずれも使用可能である。例えば、ポリベンズイミダゾール電解質膜、ポリベンゾオキサジン−ポリベンズイミダゾール共重合体電解質膜、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)多孔質膜などを使用できる。
【0084】
本発明の一実施形態によれば、電解質膜は、下記化学式27で表示される第3ベンゾオキサジン系モノマーと下記化学式28で表示される第4ベンゾオキサジン系モノマーとのうちから選択された一つ、及び架橋性化合物の重合生成物であるポリベンゾオキサジン系化合物の架橋体を含有する電解質膜を使用することができる。
【0085】
【化33】

【0086】
前記化学式27で、R13は、水素、置換または非置換のC−C20アルキル基、置換または非置換のC−C20アルケニル基、置換または非置換のC−C20アルキニル基、置換または非置換のC−C20アリール基、置換または非置換のC−C20ヘテロアリール基、置換または非置換のC−C20シクロアルキル基または置換または非置換のC−C20ヘテロ環基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、またはシアノ基であり、R14は、置換または非置換のC−C20アルキル基、置換または非置換のC−C20アルケニル基、置換または非置換のC−C20アルキニル基、置換または非置換のC−C20アリール基、置換または非置換のC−C20アリールアルキル基、置換または非置換のC−C20ヘテロアリール基、置換または非置換のC−C20ヘテロアリールアルキル基、置換または非置換のC−C20炭素環基、置換または非置換のC−C20炭素環アルキル基、置換または非置換のC−C20ヘテロ環基、または置換または非置換のC−C20ヘテロ環アルキル基である。
【0087】
【化34】

【0088】
前記化学式28で、R14は、置換または非置換のC−C20アルキル基、置換または非置換のC−C20アルケニル基、置換または非置換のC−C20アルキニル基、置換または非置換のC−C20アリール基、置換または非置換のC−C20アリールアルキル基、置換または非置換のC−C20ヘテロアリール基、置換または非置換のC−C20ヘテロアリールアルキル基、置換または非置換のC−C20炭素環基、置換または非置換のC−C20炭素環アルキル基、置換または非置換のC−C20ヘテロ環基、または置換または非置換のC−C20ヘテロ環アルキル基であり、R15は、置換または非置換のC−C20アルキレン基、置換または非置換のC−C20アルケニレン基、置換または非置換のC−C20アルキニレン基、置換または非置換のC−C20アリーレン基、置換または非置換のC−C20ヘテロアリーレン基、−C(=O)−、−SO−からなる群から選択される。
【0089】
前記化学式27の化合物の具体的な例としては、下記化学式29ないし38で表示される化合物がある。
【0090】
【化35】

【化36】

【化37】

【化38】

【化39】

【化40】

【化41】

【化42】

【化43】

【化44】

【0091】
前記化学式28の第2ベンゾオキサジン系モノマーの具体的な例として、下記化学式39ないし43で表示される化合物がある。
【化45】

【化46】

【化47】

【化48】

【化49】

【0092】
前記化学式43で、Rは、−CH−CH=CH、または下記化学式で表示される基である。
【0093】
【化50】

【0094】
前記架橋性化合物の非制限的な例として、ポリベンズイミダゾール(PBI)、ポリベンズチアゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリイミド系のうちから選択された一つ以上を挙げることができる。
【0095】
前記化学式27で表示される第3ベンゾオキサジン系モノマーと化学式28で表示される第4ベンゾオキサジン系モノマーとのうちから選択された一つと、架橋性化合物とを所定混合比で混合する。ここで、架橋性化合物の含有量は、第3ベンゾオキサジン系モノマーと第4ベンゾオキサジン系モノマーとのうちから選択された一つの重量100質量部を基準として、5ないし95質量部であることが望ましい。
【0096】
もし架橋性化合物の含有量が5質量部未満ならば、リン酸が含浸できずにプロトン伝導性が落ち、95質量部を超えれば、過剰リン酸の存在下で架橋体がポリリン酸に溶けて気体透過が発生して望ましくない。
【0097】
架橋性化合物としては、ポリベンズイミダゾール(PBI)を例にして、電解質膜の製造方法について説明する。
【0098】
第一の方法によれば、前述の化学式27で表示される第3ベンゾオキサジン系モノマーと化学式28の第4ベンゾオキサジン系モノマーとのうちから選択された一つと、PBIのような架橋性化合物とを混合した後、これを50ないし250℃、特に80ないし220℃の範囲で硬化反応を実施する。次に、これに酸のようなプロトン伝導体を含浸させて電解質膜を形成する。
【0099】
第二の方法によれば、化学式27で表示される第3ベンゾオキサジン系モノマーと化学式28の第4ベンゾオキサジン系モノマーとのうちから選択された一つと、PBIのような架橋性化合物との混合物を利用して膜を形成する。
【0100】
前記膜を形成する方法としては、テープキャスティング法を利用することも可能であり、一般的なコーティング法を利用することも可能である。前記コーティング法の例としては、支持体上にドクターブレードを利用して前記混合物をキャスティングする方法を挙げることができる。ここで、ドクターブレードとしては、250〜500μmのギャップを有するものを使用する。
【0101】
もし前記膜を形成する過程で、ドクターブレードを利用したキャスティング法を利用する場合には、硬化後に、酸を含浸する段階以前に支持体から電解質膜を分離して支持体を除去する段階がさらに実施される。このように支持体を除去しようとする場合には、60ないし80℃の蒸溜水に浸漬する過程を経る。
【0102】
前記支持体としては、電解質膜を支持する役割を果たすものであるならば、いずれも使用可能であり、支持体の例として、ガラス基板、ポリイミドフィルムなどを使用する。
【0103】
テープキャスティング法を利用する場合には、テープキャスティングされた膜を硬化する前に、ポリエチレンテレフタレートのような支持体から分離した後、硬化のためのオーブンに入れるので、硬化後に支持体を除去する段階が不要である。
【0104】
また、ベンゾオキサジン系モノマーとポリベンズイミダゾールとからなる混合物を利用して膜をテープキャスティング法によって形成する場合、混合物を濾過する段階をさらに経ることができる。
【0105】
このように形成された膜を熱処理して硬化反応を実施した後、これを酸のようなプロトン伝導体に含浸して電解質膜を形成する。
【0106】
前記プロトン伝導体の非制限的な例としては、リン酸、C−C10アルキルホスホン酸などを使用する。前記C−C10アルキルホスホン酸の例として、エチルホスホン酸などがある。
【0107】
前記プロトン伝導体の含有量は、電解質膜の総重量100質量部対比で、300ないし1,000質量部で使われる。本発明で使用する酸の濃度は特別に制限されるものではないが、リン酸を使用する場合、85重量%のリン酸水溶液を使用し、リン酸含浸時間は、80℃で2.5時間ないし14時間の範囲である。
【0108】
前記電解質膜は、燃料電池の水素イオン伝導膜として使われうる。これを利用して燃料電池用電極−膜アセンブリ(MEA:Membrane Electrode Assembly)を製造する過程について説明すれば、次の通りである。本発明で使用する用語である“電極−膜アセンブリ(MEA)”は、電解質膜を中心にして、この両面に触媒層と拡散層とによって構成された電極が積層されている構造を指す。
【0109】
本発明のMEAは、前述の電極触媒層を具備している電極を前記過程によって得た電解質膜の両面に位置させた後、高温と高圧とで接合して形成し、ここに燃料拡散層を接合して形成できる。
【0110】
このとき、前記接合のための加熱温度及び圧力は、電解質膜が軟化する温度まで加熱した状態で、0.1ないし3ton/cm、特に約1ton/cmの圧力で加圧して実行する。
【0111】
その後、前記MEAにそれぞれバイポーラプレートを装着して燃料電池を完成する。ここで、バイポーラプレートは、燃料供給用溝を有しており、集電体機能を有している。
【0112】
本発明の燃料電池は、特にその用途が限定されるものではないが、望ましい一面によれば、高分子電解質膜燃料電池として使われる。
【0113】
本発明の化学式で使われる置換基の定義について述べれば、次の通りである。
【0114】
本発明の化学式で、前記非置換のC−C20アルキル基の具体的な例としては、メチル、エチル、プロピル、イソブチル、sec−ブチル、ペンチル、iso−アミル、ヘキシルなどを挙げることができ、前記アルキルのうち一つ以上の水素原子は、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されたC−C20のアルキル基(例:CCF、CHCF、CHF、CClなど)、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、アミジノ基、ヒドラジン、ヒドラゾン、カルボン酸基やその塩、スルホン酸基やその塩、リン酸やその塩、またはC−C20アルキル基、C−C20アルケニル基、C−C20アルキニル基、C−C20ヘテロアルキル基、C−C20アリール基、C−C20アリールアルキル基、C−C20ヘテロアリール基、またはC−C20ヘテロアリールアルキル基で置換可能である。
【0115】
本発明の化学式で、前記非置換のC−C20アルケニル基の具体的な例としては、ビニレン、アリレンなどを挙げることができ、前記アルケニルのうち一つ以上の水素原子は、前述のアルキル基の場合と同じ置換基で置換可能である。
【0116】
本発明の化学式で、前記非置換のC−C20アルキニル基の具体的な例としては、アセチレンなどを挙げることができ、前記アルキニルにうちの一つ以上の水素原子は、前述のアルキル基の場合と同じ置換基で置換可能である。
【0117】
本発明の化学式で、前記非置換のC−C20アルキレン基の具体的な例としては、メチレン、エチレン、プロピレン、イソブチレン、sec−ブチレン、ペンチレン、iso−アミレン、ヘキシレンなどを挙げることができ、前記アルキレンのうち一つ以上の水素原子は、前述のアルキル基の場合と同じ置換基で置換可能である。
【0118】
本発明の化学式で、前記非置換のC−C20アルケニレン基の具体的な例としては、アリル基などを挙げることができ、前記アルケニレンのうち一つ以上の水素原子は、前述のアルキル基の場合と同じ置換基で置換可能である。
【0119】
本発明の化学式で、前記非置換のC−C20アルキニレン基の具体的な例としては、アセチレン基などを挙げることができ、前記アルキニルのうち一つ以上の水素原子は、前述のアルキル基の場合と同じ置換基で置換可能である。
【0120】
本発明で使われるアリール基は、単独または組み合わせて使われ、一つ以上の環を含むC−C20カルボ環芳香族システムを意味し、前記環は、ペンダント方法で共に付着されるか、または融合されうる。アリールという用語は、フェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチルのような芳香族ラジカルを含む。前記アリール基は、ハロアルキレン、ニトロ、シアノ、アロキシ及び低級アルキルアミノのような置換基を有することができる。また、前記アリール基のうち一つ以上の水素原子は、前述のアルキル基の場合と同じ置換基で置換可能である。
【0121】
本発明で使われるアリーレン基は、単独または組み合わせて使われ、一つ以上の環を含むC−C20カルボ環芳香族システムを意味し、前記環は、ペンダント方法で共に付着されるか、または融合されうる。アリーレンという用語は、フェニレン、ナフチレン、テトラヒドロナフチレンのような芳香族ラジカルを含む。前記アリーレン基は、ハロアルキレン、ニトロ、シアノ、アルコキシ及び低級アルキルアミノのような置換基を有することができる。また、前記アリーレン基のうち一つ以上の水素原子は、前述のアルキル基の場合と同じ置換基で置換可能である。
【0122】
本発明で使われるアリールアルキル基は、前記定義されたところのようなアリール基で、水素原子のうち一部が低級アルキル、例えばメチル、エチル、プロピルのようなラジカルで置換されたものを意味する。例えば、ペンチル、フェニルエチルなどがある。前記アリールアルキル基のうち一つ以上の水素原子は、前述のアルキル基の場合と同じ置換基で置換可能である。
【0123】
本発明で使われるヘテロアリール基は、N、O、PまたはSのうちから選択された1、2または3個のヘテロ原子を含み、残りの環原子がCであるC−C20一価単環または二環芳香族の有機化合物を意味する。前記ヘテロ原子のうち一つ以上の水素原子は、前述のアルキル基の場合と同じ置換基で置換可能である。
【0124】
本発明で使われるヘテロアリーレン基は、N、O、PまたはSのうちから選択された1、2または3個のヘテロ原子を含み、残りの環原子がCであるC−C20一価単環または二環芳香族の有機化合物を意味する。前記ヘテロアリーレンのうち一つ以上の水素原子は、前述のアルキル基の場合と同じ置換基で置換可能である。
【0125】
本発明で使われるヘテロアリールアルキル基は、前記ヘテロアリール基の水素原子の一部がアルキル基で置換されたものを意味する。前記ヘテロアリールアルキル基のうち一つ以上の水素原子は、前述のアルキル基の場合と同じ置換基で置換可能である。
【0126】
本発明で使われる炭素環基は、シクロヘキシル基のようにC−C10構成の環基を指し、前記炭素環基のうち一つ以上の水素原子は、前述のアルキル基の場合と同じ置換基で置換可能である。
【0127】
本発明で使われる炭素環アルキル基は、前記炭素環基の水素原子一部がアルキル基で置換されたものを意味する。前記炭素環アルキル基のうち一つ以上の水素原子は、前述のアルキル基の場合と同じ置換基で置換可能である。
【0128】
本発明で使われるヘテロ環基は、N、S、P、Oのようなヘテロ原子を含有しているC−C10環基を指摘し、かかるヘテロ環基のうち一つ以上の水素原子は、前述のアルキル基の場合と同じ置換基で置換可能である。
【0129】
本発明で使われるヘテロ環アルキル基は、前記ヘテロ炭素環基の水素原子の一部がアルキル基で置換されたものを意味する。前記ヘテロ環アルキル基のうち一つ以上の水素原子は、前述のアルキル基の場合と同じ置換基で置換可能である。
【実施例】
【0130】
以下、本発明を下記実施例を例にして詳細に説明するが、本発明が下記実施例にのみ限定されるものではない。
【0131】
(実施例1:燃料電池用電極及びこれを利用した燃料電池の製造)
撹拌容器に、カーボンに50重量%PtCo(TEC36E52)が担持された触媒1g及び溶媒N−メチルピロリドン(NMP)3gを付加し、これをモルタルを利用して撹拌してスラリを作った。前記スラリに、10重量%の化学式13で表示される3,4−DFPh−4FAのNMP溶液を付加するが、化学式13の化合物が0.026gになるように添加してさらに撹拌した。
【0132】
次に、前記混合物に5重量%のフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体NMP溶液を付加し、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体が0.026gになるように添加し、10分間混合してカソード触媒層形成用スラリを製造した。
【0133】
カーボンペーパーを4×7cmに切ってガラス板上に固定し、ドクターブレード(Sheen Instrument)でコーティングし、このときのギャップ間隔は、600μmに調節した。
【0134】
前記カーボンペーパーの上部に前記カソード触媒層形成用スラリをコーティングし、これを常温で1時間乾燥し、80℃で1時間乾燥し、120℃で30分乾燥し、150℃で15分間乾燥してカソード(燃料極)を製造した。完成されたカソードでのPtCoローディング量は、3.0mg/cm値を有する。
【0135】
アノードとしては、下記過程によって得た電極を利用した。
【0136】
撹拌容器に、カーボンに50重量%白金が担持された触媒2g及び溶媒NMP 9gを付加し、これを高速撹拌機を利用して2分間撹拌した。次に、前記混合物にポリ(フッ化ビニリデン)0.05gをNMP 1gに溶解した溶液を付加して2分間さらに撹拌し、アノード触媒層形成用スラリを製作した。これを微細多孔層(microporous layer)がコーティングされたカーボンペーパー上に、バーコーター機(bar coater)でコーティングして製作した。完成されたアノードの白金ローディング量は、1.4mg/cm値を有する。
【0137】
これと別途に、化学式27のベンゾオキサジン系モノマーを65質量部にし、ポリベンズイミダゾールを35質量部にしてブレンディングした後、これに対して80ないし220℃の範囲で硬化反応を実施した。次に、これに85重量%リン酸を80℃で4時間以上含浸させて電解質膜を形成した。ここで、リン酸の含有量は、電解質膜総重量100質量部に対して約500質量部であった。
【0138】
前記カソードとアノードとの間に、前記電解質膜を介在させてMEAを製作した。ここで、前記カソードとアノードは、リン酸含浸なしに使用した。
【0139】
前記カソードとアノードとの間の気体透過を防止するために、主ガスケット用として200μm厚のテフロン(登録商標)膜と、サブガスケット用として20μm厚のテフロン(登録商標)膜とを電極と電解質膜との界面に重ねて使用した。そして、MEAに加えられる圧力は、トルクレンチを使用して調節し、1,2,3N−m Torqueまで段階的に増大させつつ組み立てた。
【0140】
温度150℃、電解質膜に対して加湿しない条件で、アノードに水素(流速:100ccm)、カソードに空気(250ccm)を流通させて発電させ、電池特性の測定を行った。このとき、リン酸をドーピングした電解質を使用するので、経時的に燃料電池の性能が向上するので、作動電圧が最高点に達するまでエイジングした後で最終評価する。そして、前記カソードとアノードの面積は2.8×2.8=7.84cmに固定し、カソードの電極厚は約430μmであり、アノード電極厚は約390μmであった。
【0141】
(実施例2:燃料電池用電極及びこれを利用した燃料電池の製造)
カソード製造時に化学式13で表示される3,4−DFPh−4FAの代わりに、化学式12の4FPh−2,4,6−TFAを使用したことを除いては、実施例1と同じ方法によって実施し、カソード及びこれを利用した燃料電池を製造した。そして、完成されたカソードでのPtCoローディング量は、2.5mg/cm値を有する。
【0142】
(実施例3:燃料電池用電極及びこれを利用した燃料電池の製造)
カソード製造時に化学式13で表示される3,4−DFPh−4FAの代わりに、化学式25のHFIDPh−2,4,6−TFAを使用したことを除いては、実施例1と同じ方法によって実施し、カソード及びこれを利用した燃料電池を製造した。そして、完成されたカソードでのPtCoローディング量は、2.5mg/cm値を有する。
【0143】
(実施例4:燃料電池用電極及びこれを利用した燃料電池の製造)
カソード製造時に化学式13で表示される3,4−DFPh−4FAの代わりに、化学式5のt−BuPh−4FAを使用したことを除いては、実施例1と同じ方法によって実施し、カソード及びこれを利用した燃料電池を製造した。そして、完成されたカソードでのPtCoローディング量は、2.5mg/cm値を有する。
【0144】
(比較例1:燃料電池用電極及びこれを利用した燃料電池の製造)
カソード製造時に化学式13で表示される3,4−DFPh−4FAを使用しないことを除いては、実施例1と同じ方法によって実施し、カソード及びこれを利用した燃料電池を製造した。そして、完成されたカソードでのPtCoローディング量は、3.0mg/cm値を有し、完成されたアノードでの白金ローディング量は、1.4mg/cm値を有する。
【0145】
(比較例2:燃料電池用電極及びこれを利用した燃料電池の製造)
カソード製造時に化学式13で表示される3,4−DFPh−4FAを使用せず、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体の代わりにポリ(フッ化ビニリデン)を使用したことを除いては、実施例1と同じ方法によって実施し、カソード及びこれを利用した燃料電池を製造した。そして、完成されたカソードでのPtCoローディング量は、3.0mg/cm値を有し、完成されたアノードでの白金ローディング量は、1.4mg/cm値を有する。
【0146】
前記実施例1及び比較例1−2によって製造された燃料電池において、動作時間によるセル電圧変化を調べて図1に表した。
【0147】
これを参照すれば、同じ動作時間で実施例1の燃料電池が比較例1及び2の場合に比べ、セル電圧特性が改善されるということが分かった。
【0148】
また、前記実施例1−2及び比較例1によって製造された燃料電池において、電流密度によるセルポテンシャル変化を調べ、その結果は、それぞれ図2に示した。
【0149】
図2を参照すれば、実施例1及び実施例2の燃料電池が比較例1の場合と比較し、MEAの性能が向上するということを確認した。これを介して、リン酸湿潤性を向上させる添加剤の付加によって、電極内の微細気孔にリン酸をくまなく分布させることによって三相界面の面積を拡大させて性能を向上させるということが分かった。
【0150】
(評価例1:セル性能評価)
燃料電池の性能向上の原因を分析するために、V−log Iグラフでタフェル・フィッティング(Tafel fitting)を実施し、傾度とy切片とを求める(数式1参照)。交換電流密度と関連したy切片値は、添加剤を添加した場合に増大する。反応メカニズムと関連した傾度は、PBI標準電極及びPTFE電極と明確に区別される値を示し、反応メカニズムの変化のあることを予想できる。
【0151】
【数1】

【0152】
前記式によれば、タフェル切片(Tafel intercept)は、交換電流密度iにより変わり、iは、酸素濃度により決まる。添加剤の含まれている電極と含まれていない電極とのタフェル切片を比較すれば、触媒付近の酸素濃度上昇いかんを予想できる。
【0153】
前記実施例1−4及び比較例1によって製造された燃料電池において、タフェルフィッティング評価を実施し、下記表1に表した。
【0154】
【表1】

【0155】
前記表1で%は、触媒層での各該当物質の含有量である重量%を示したものである。
【0156】
前記表1から分かるように、白金付近の酸素濃度を表すタフェルラインのy切片が標準電極である比較例1の場合より高く、酸素移動抵抗によって発生する酸素過電圧が標準電極である比較例1の場合より低い。
【0157】
かかる結果から、実施例1〜4では、電極内の酸素濃度が高まり、それによってさらに低い酸素過電圧と、高い酸素還元反応とが電極内で発生するということが分かった。
【0158】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0159】
本発明の燃料電池用電極、該電極の製造方法及び該電極を採用した燃料電池は、例えば、燃料電池関連の技術分野に効果的に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0160】
【図1】本発明の実施例1及び比較例1、2によって製造された燃料電池において、動作時間によるセル電圧変化を示したグラフである。
【図2】本発明の実施例1、2及び比較例1によって製造された燃料電池において、電流密度によるセルポテンシャル変化を示したグラフである。
【図3】本発明の一実施例による電極を備える燃料電池を示した図面である。
【符号の説明】
【0161】
10 燃料電池
12 電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表示される第1ベンゾオキサジン系モノマー、下記化学式2で表示される第2ベンゾオキサジン系モノマー、その重合体及びその混合物のうちから選択された一つ以上と、触媒と、を含む触媒層を有することを特徴とする、燃料電池用電極。
【化1】

前記化学式1で、R、R、R及びRは互いに独立的に、水素、置換または非置換のC−C20アルキル基、置換または非置換のC−C20アルケニル基、置換または非置換のC−C20アルキニル基、置換または非置換のC−C20アリール基、置換または非置換のC−C20ヘテロアリール基、置換または非置換のC−C20シクロアルキル基または置換または非置換のC−C20ヘテロ環基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、またはシアノ基であり、
は、置換または非置換のC−C20アルキル基、置換または非置換のC−C20アルケニル基、置換または非置換のC−C20アルキニル基、置換または非置換のC−C20アリール基、置換または非置換のC−C20アリールアルキル基、置換または非置換のC−C20ヘテロアリール基、置換または非置換のC−C20ヘテロアリールアルキル基、置換または非置換のC−C20炭素環基、置換または非置換のC−C20炭素環アルキル基、置換または非置換のC−C20ヘテロ環基、または置換または非置換のC−C20ヘテロ環アルキル基であり、
かつ、前記R、R、R、R及びRのうちから選択された一つ以上は、フッ素またはフッ素含有作用基を有し、
【化2】

前記化学式2で、Rは、置換または非置換のC−C20アルキル基、置換または非置換のC−C20アルケニル基、置換または非置換のC−C20アルキニル基、置換または非置換のC−C20アリール基、置換または非置換のC−C20アリールアルキル基、置換または非置換のC−C20ヘテロアリール基、置換または非置換のC−C20ヘテロアリールアルキル基、置換または非置換のC−C20炭素環基、置換または非置換のC−C20炭素環アルキル基、置換または非置換のC−C20ヘテロ環基、または置換または非置換のC−C20ヘテロ環アルキル基であり、
は、置換または非置換のC−C20アルキレン基、置換または非置換のC−C20アルケニレン基、置換または非置換のC−C20アルキニレン基、置換または非置換のC−C20アリーレン基、置換または非置換のC−C20ヘテロアリーレン基、−C(=O)−、−SO−からなる群から選択され、
かつ、前記RとRとのうちから選択された一つ以上は、フッ素またはフッ素含有作用基である。
【請求項2】
前記化学式1で、R、R、R及びRは、C−C20アルキル基、アリル基、C−C20アリール基、C−C20アルケニル基、C−C20アルキニル基、F、フッ素化されたC−C20アルキル基、またはフッ素化されたC−C20アリール基であることを特徴とする、請求項1に記載の燃料電池用電極。
【請求項3】
前記化学式1及び化学式2で、Rは、−CH−CH=CH、または下記構造式で表示される置換基のいずれかであることを特徴とする、請求項1に記載の燃料電池用電極。
【化3】

【請求項4】
前記化学式2で、Rは、−C(CH−、−C(CF−、−C(=O)−、−SO−、−CH−、−C(CCl)−、−CH(CH)−、−CH(CF)−または下記構造式で表示される置換基であることを特徴とする、請求項1に記載の燃料電池用電極。
【化4】

前記化学式で、R、R、R、R10及びR11互いに独立的に、水素、C−C20アルキル基、アリル基、C−C20アリール基、t−ブチル基、C−C20アルケニル基、C−C20アルキニル基、F、フッ素化されたC−C20アルキル基、またはフッ素化されたC−C20アリール基であり、R12は、水素、メチル基、エチル基、プロピル基、F、CHF、CHF、またはCFである。
【請求項5】
前記化学式1で表示される第1ベンゾオキサジン系モノマーが、下記化学式3で表示される化合物であることを特徴とする、請求項1に記載の燃料電池用電極。
【化5】

前記化学式3で、R、R、R及びRは互いに独立的に、水素、F、CHF、CHF、CF、またはC−C20アルキル基であり、
、R、R、R10及びR11は互いに独立的に、水素、F、CHF、CHF、CF、またはC−C20アルキル基であり、
かつ、R、R、R、R、R、R、R、R10及びR11のうちから選択された一つは、少なくともF、CHF、CHFまたはCFである。
【請求項6】
前記化学式3で表示される化合物が、下記化学式5から21で表示される化合物のうちから選択された一つであることを特徴とする、請求項5に記載の燃料電池用電極。
【化6】

【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

【化12】

【化13】

【化14】

【化15】

【化16】

【化17】

【化18】

【化19】

【化20】

【化21】

【化22】

【請求項7】
前記化学式2で表示される第2ベンゾオキサジン系モノマーが、下記化学式4で表示される化合物であることを特徴とする、請求項1に記載の燃料電池用電極。
【化23】


前記化学式4で、Rは、−C(CH−、CH、−C(CF−、−C(CHF−、−C(CHF)−または下記構造式で表示される置換基である。
【化24】

前記化学式で、R、R、R、R10及びR11は互いに独立的に、水素、C−C20アルキル基、アリル基、C−C20アリール基、t−ブチル基、C−C20アルケニル基、C−C20アルキニル基、F、フッ素化されたC−C20アルキル基、またはフッ素化されたC−C20アリール基であり、R12は、水素、メチル基、エチル基、プロピル基、F、CHF、CHF、またはCFであり、
、R、R、R10及びR11のうちから選択された一つは、F、CHF、CHF、またはCFである。
【請求項8】
前記化学式4で表示される化合物が、下記化学式22から化学式26で表示される化合物のうちから選択されることを特徴とする、請求項7に記載の燃料電池用電極。
【化25】

【化26】

【化27】

【化28】

【化29】

【請求項9】
前記化学式1で表示される第1ベンゾオキサジン系モノマー、前記化学式2で表示される第2ベンゾオキサジン系モノマー、その重合体及びその混合物のうちから選択された一つ以上の含有量は、触媒1質量部を基準として、0.001から0.5質量部であることを特徴とする、請求項1に記載の燃料電池用電極。
【請求項10】
前記触媒が、白金単独か、または、金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、スズ、モリブデン、コバルト及びクロムからなる群から選択された一種以上の金属と白金との合金、あるいは混合物であることを特徴とする、請求項1に記載の燃料電池用電極。
【請求項11】
結合剤がさらに含まれたことを特徴とする、請求項1に記載の燃料電池用電極。
【請求項12】
前記結合剤が、ポリ(フッ化ビニリデン)、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロエチレン共重合体及びパーフルオロエチレンからなる群から選択された一つ以上であることを特徴とする、請求項11に記載の燃料電池用電極。
【請求項13】
前記結合剤の含有量が、触媒1質量部を基準として、0.001から0.5質量部であることを特徴とする、請求項11に記載の燃料電池用電極。
【請求項14】
溶媒に触媒を分散して分散液を得る第1段階と、
前記分散液に下記化学式1で表示される第1ベンゾオキサジン系モノマーと下記化学式2で表示される第2ベンゾオキサジン系モノマーとのうちから選択された一つ以上と、溶媒とを含む混合物を付加した後に、撹拌してコーティング液を得る第2段階と、
前記コーティング液をカーボン支持体表面にコーティングする第3段階と、
を含むことを特徴とする、燃料電池用電極の製造方法。
【化30】

前記化学式1で、R、R、R及びRは互いに独立的に、水素、置換または非置換のC−C20アルキル基、置換または非置換のC−C20アルケニル基、置換または非置換のC−C20アルキニル基、置換または非置換のC−C20アリール基、置換または非置換のC−C20ヘテロアリール基、置換または非置換のC−C20シクロアルキル基または置換または非置換のC−C20ヘテロ環基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、またはシアノ基であり、
は、置換または非置換のC−C20アルキル基、置換または非置換のC−C20アルケニル基、置換または非置換のC−C20アルキニル基、置換または非置換のC−C20アリール基、置換または非置換のC−C20アリールアルキル基、置換または非置換のC−C20ヘテロアリール基、置換または非置換のC−C20ヘテロアリールアルキル基、置換または非置換のC−C20炭素環基、置換または非置換のC−C20炭素環アルキル基、置換または非置換のC−C20ヘテロ環基、または置換または非置換のC−C20ヘテロ環アルキル基であり、
かつ、前記R、R、R、R及びRのうちから選択された一つ以上は、フッ素またはフッ素含有作用基を有し、
【化31】

前記化学式2で、Rは、置換または非置換のC−C20アルキル基、置換または非置換のC−C20アルケニル基、置換または非置換のC−C20アルキニル基、置換または非置換のC−C20アリール基、置換または非置換のC−C20アリールアルキル基、置換または非置換のC−C20ヘテロアリール基、置換または非置換のC−C20ヘテロアリールアルキル基、置換または非置換のC−C20炭素環基、置換または非置換のC−C20炭素環アルキル基、置換または非置換のC−C20ヘテロ環基、または置換または非置換のC−C20ヘテロ環アルキル基であり、
は、置換または非置換のC−C20アルキレン基、置換または非置換のC−C20アルケニレン基、置換または非置換のC−C20アルキニレン基、置換または非置換のC−C20アリーレン基、置換または非置換のC−C20ヘテロアリーレン基、−C(=O)−、−SO−からなる群から選択され、
かつ、前記RとRとのうちから選択された一つ以上は、フッ素またはフッ素含有作用基である。
【請求項15】
前記第2段階で、結合剤をさらに付加することを特徴とする、請求項14に記載の燃料電池用電極の製造方法。
【請求項16】
請求項1から請求項13のうちのいずれか1項に記載の燃料電池用電極を含む燃料電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−153227(P2008−153227A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−324782(P2007−324782)
【出願日】平成19年12月17日(2007.12.17)
【出願人】(590002817)三星エスディアイ株式会社 (2,784)
【Fターム(参考)】