説明

燃料電池発電システム及びその制御方法

【課題】ヒータ入力が過大で温水循環流量が増加する場合であっても、ポンプ動力の増加を防止し、発電効率の大幅な低下を抑制することが可能な燃料電池発電システムを提供する。
【解決手段】逆潮防止ヒータ3には電力需要よりも過剰な燃料電池の発電電力が入力され、当該電力に基づき排熱回収熱交換器1から貯湯槽2に流れる温水を加熱する。温度センサ4は、逆潮防止ヒータ3による加熱後の温水温度を計測する。制御部8が、温度センサ4により計測された温水温度が所定温度以上であるか否かを判断し、所定温度以上であると判断した場合には、温水循環系に設置された各機器を破損される恐れがあるため、循環ポンプ5の回転数を増加させるよう制御する。さらに、循環ポンプ5の回転数が所定回転数以上まで上昇した場合には、制御部8は、排熱回収熱交換器1内のバイパスライン6上に設置されたバイパス遮断弁7を開栓するよう制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池からの排熱を利用して温水を生成する温水循環系に係り、温水温度及び温水循環のための動力量に基づき熱交換器をバイパスさせる燃料電池発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、発電効率の高いエネルギー変換装置として燃料電池が注目を集めている。この燃料電池を備えた燃料電池発電システムとは、燃料処理装置により生成された水素と酸素の結合エネルギーを、燃料電池本体において直接電気エネルギーに変換するものであり、汚染物質の排出および騒音が少ない環境性に優れた発電装置である。
【0003】
なお、家庭用の燃料電池発電システムでは、都市ガスあるいはLPGを燃料として化学反応した際の発電及び排熱を利用して温水を需要者に供給している。ここで、家庭における電力負荷は、電化製品等の利用状況により常時変動し、例えば、ドライヤーや調理家電製品を利用する場合には1000〜2000Wの電気需要が発生するのに対し、夜間など照明を停止した状態では100〜200Wまで電力が低下する。
【0004】
このことから、燃料電池における発電電力は最低でも250〜350Wを生成するため、上記の家庭における夜間の電力負荷よりも大きいことが伺える。そのため、燃料電池の最低発電電力より家庭における電力需要が低い場合には、この余剰電力を電力系統に逆潮流させるか、あるいは逆潮流しないよう余剰電力を消費する方法が考えられている。
【0005】
しかし、電力系統の品質を保持するため、余剰電力の電力系統への逆潮流は困難であると考えられ、当該余剰電力を消費する方法が一般的に利用されている。例えば、燃料電池コージェネレーションシステムでは、この余剰電力を消費するためにヒータを備え、燃料電池からの発電及び排熱を利用して温水を生成する際に、余剰電力をヒータにおいて熱に変換することにより、排熱回収系の一部として利用する方法が一般的である。
【0006】
ここで、特許文献1では、余剰電力をヒータに導入し、併設する貯湯槽、あるいは温水の循環経路内の水をヒータで加熱する利用形態の構成が提供されている(特許文献1参照)。しかしながら、余剰電力消費のためにヒータを設置し、貯湯槽や循環経路内の水を加熱することにより温水を生成する方法では、燃料電池からの高い発電負荷時に急激に家庭内の電力需要が低下する場合、ヒータにおいて大きな電力を消費すると当該ヒータで発生する熱量が極端に大きくなってしまう。
【0007】
そのため、ヒータで加熱した温水の温度が急上昇する可能性があり、温水温度の上昇が沸点に達した場合には、内部圧力の上昇により構成部材が損傷する可能性がある。そこで、特許文献2では、ヒータへの入力電力が過大になった場合でも温水温度が過剰に上昇しないように温水流量を増加させるコージェネレーションシステムが提案されている(特許文献2参照)。具体的には、温水流量を増加させているので、貯湯槽内の貯湯水が複数の熱交換器を経由して循環するよう構成されている。
【特許文献1】特開2003−56909号公報
【特許文献2】特開2006−32140号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記システムでは、余剰電力、すなわち逆潮電力消費のためにヒータを設置し、当該ヒータにおいて電力を熱に変換することで需要者に供給する温水を生成している。また、温水温度の急激な上昇による機器の破損を防止するために、複数の熱交換器を備えた循環経路において温水流量の増加を図っている。
【0009】
しかしながら、複数の熱交換器等の機器を備えているため、当該機器を循環して流れる温水流量を増加させると、機器における圧力損失が過大となり、温水を供給するポンプ動力が急激に増加してしまう。すなわち、ポンプ動力の増加は発電効率の低下につながり、燃料電池の本来の特徴である高効率性能を阻害する要因となる。
【0010】
そこで、本発明は、上記の課題を解消するために提案されたものであり、逆潮電力消費のためのヒータ入力が過大で温水循環流量が増加する場合であっても、ポンプ動力の増加を防止し、発電効率の大幅な低下を抑制することが可能な燃料電池発電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した目的を達成するために、本発明は、燃料電池からの排熱を回収し温水を生成する熱交換器と、前記熱交換器で生成された温水を燃料電池からの余剰電力によって加熱するヒータと、前記熱交換器で生成された温水を前記ヒータへ流入させる循環ポンプと、を備えた温水循環系を有する燃料電池発電システムにおいて、前記ヒータの出口側を流れる温水温度を計測する温度センサと、前記熱交換器をバイパスするバイパスラインと、前記温度センサにより計測された温水温度に基づき前記循環ポンプの回転数を調整し、かつ前記バイパスラインを流れる温水の供給と遮断を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記循環ポンプの回転数を所定回転数以上に増加させた場合に、前記バイパスラインに温水を供給するよう制御することを特徴とする。
【0012】
また下記の点も本発明の一態様である。燃料電池からの排熱を回収し温水を生成する熱交換器と、前記熱交換器で生成された温水を燃料電池からの余剰電力によって加熱するヒータと、前記熱交換器で生成された温水を前記ヒータへ流入させる循環ポンプと、を備えた温水循環系を有する燃料電池発電システムにおいて、前記ヒータの入り口側を流れる温水温度を計測する温度センサと、前記熱交換器をバイパスするバイパスラインと、前記循環ポンプの回転数から前記温水循環系を流れる温水流量を演算し、当該温水流量と前記温度センサにより計測された温水温度と前記ヒータへ入力する前記余剰電力とから前記ヒータの出口側の温水温度を算出し、算出した前記温水温度に基づき前記循環ポンプの回転数を調整し、かつ前記バイパスラインを流れる温水の供給と遮断を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記循環ポンプの回転数を所定回転数以上に増加させた場合に、前記バイパスラインに温水を供給するよう制御することを特徴とする。
【0013】
なお、前記温水循環系を流れる温水流量を計測する温水流量計を備え、前記制御部は、前記温度センサにより計測された温水温度と前記温水流量計により計測された温水流量と前記ヒータへ入力する前記余剰電力とから前記ヒータの出口付近の温水温度を算出することも特徴とする。また、前記バイパスラインには、温水流量を調整する流量調整弁が設けられ、前記制御部は、前記循環ポンプの回転数を所定回転数以上に増加させた場合に、前記流量調整弁により前記バイパスラインを流れる温水流量を調整することも本発明の一態様である。
【0014】
以上のような態様では、ヒータへの余剰電力が大きく、循環する温水温度が過剰に上昇するため循環ポンプの回転数を増加させた場合であっても、バイパスライン上のバイパス遮断弁を開栓し、あるいは流量調整弁を調整することで、温水温度の過剰な上昇を防止することが可能となる。また、温水流量を増加させても、複数の熱交換器を温水が通過することによる圧力損失の増加を回避することができ、発電効率の低下を防止可能な燃料電池発電システムを提供することができる。
【発明の効果】
【0015】
以上のような本発明によれば、ヒータへ入力電力が過大で温水循環流量が増加する場合であっても、排熱回収熱交換器をバイパスするバイパスラインを通じて温水を循環させることによりポンプ動力の増加を防止し、発電効率の大幅な低下を抑制することが可能な燃料電池発電システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
[第1の実施形態]
[構成]
図1は、燃料電池からの発電及び排熱から熱交換器を用いて温水を生成する第1の実施形態に係る燃料電池発電システムを示すものである。本実施形態の構成を以下に詳述するが、本発明では温水循環系周辺に特徴を有するため、一般的な燃料電池本体や改質器などの構成は省略する。
【0017】
本実施形態では、まず、温水循環系に排熱回収熱交換器1を備えている。この排熱回収熱交換器1は、燃料電池本体からの発電及び排熱により需要者に供給するための温水を生成するものであり、生成した温水を後述する貯湯槽2に供給している。また、当該温水循環系には、排熱回収熱交換器1で熱を吸収した温水を貯留しておく貯湯槽2が設置されている。なお、当該貯湯槽2は、排熱回収熱交換器1からの温水が上部から供給されるよう構成されている。
【0018】
そして、排熱回収熱交換器1と貯湯槽2との間に燃料電池からの余剰電力によって温水循環系に流れる温水を加熱する逆潮防止ヒータ3が設置されている。すなわち、燃料電池における発電電力が需用電力を上回る場合の余剰電力を当該逆潮防止ヒータ3に入力し、熱へと変換することで循環系を流れる温水を加熱する。
【0019】
なお、この逆潮防止ヒータ3の出口側には、温度センサ4が設置されており、加熱後の温水温度を常時計測している。つまり、この温度センサ4の計測により温水温度の変化を把握することできるので、極端な温度上昇を防止し、機器の破損を防ぐことが可能となる。そして、排熱回収熱交換器1や貯湯槽2などが設置された温水循環系において、温水が流れる動力源として循環ポンプ5が設置されている。図1では、貯湯槽2から排熱回収熱交換器1へ温水流路に配設されているが、設置位置に関して特に限定するものではない。
【0020】
ここで、本発明では、排熱回収熱交換器1内の熱を吸収する温水流路とは別に、熱交換器1をバイパスするバイパスライン6が設けられている。このバイパスライン6には、循環する温水の温度が所定温度まで上昇した場合、すなわち排熱回収熱交換器1などの機器に損傷を与える程度の高温になった場合に、温水が供給される。これにより、バイパスライン6を通じて熱交換器1をバイパスし、逆潮防止ヒータ3へ循環する温水が供給される。
【0021】
また、このバイパスライン6における温水の供給・遮断を調節するバイパス遮断弁7が当該バイパスライン6に設置されている。そして、本実施形態では、制御部8が前記温度センサ4、循環ポンプ5とバイパス遮断弁7に接続されており、温度センサ4により計測された温水温度が所定温度より上昇するか否かを検知し、所定温度より上昇した場合には、循環ポンプ5の回転数を増加させるよう制御する。
【0022】
ここで、当該制御部8は、循環ポンプ5の回転数が所定回転数以上まで増加しているか否かを判断し、所定回転数以上まで増加している場合に排熱回収熱交換器1内のバイパスライン6に設置されたバイパス遮断弁7を開栓するよう制御する。
【0023】
[作用]
以上のような構成を有する本実施形態の作用は以下の通りである。
まず、排熱回収熱交換器1により燃料電池本体(図示しない)からの排熱を回収し、循環系に流れる温水を生成する。そして、この生成された温水は、循環ポンプ5を動力源として貯湯槽2上部へ供給される。
【0024】
ここで、電力需要よりも過剰な燃料電池の発電電力は逆潮防止ヒータ3に入力され、この逆潮防止ヒータ3によって、排熱回収熱交換器1から貯湯槽2に流れる温水を加熱することで当該発電電力は消費される。なお、逆潮防止ヒータ3により温水が過剰に加熱されないよう、温度センサ4を介して加熱後の温水温度を計測する。
【0025】
そして、制御部8が、温度センサ4により計測された温水温度が所定温度以上であるか否かを判断し、所定温度以上であると判断した場合には、温水循環系に設置された各機器を破損される恐れがあるため、循環ポンプ5の回転数を増加させるよう制御する。すなわち、制御部8を通じて循環ポンプ5の回転数を上げることで、循環系を流れる温水流量を増加させ、温水温度の低下を図っている。なお、前記所定温度とは、上述の通り、排熱回収熱交換器などの機器に温水が損傷を与える可能性がある温度を指している。
【0026】
しかしながら、循環する温水温度が低下せず、循環ポンプ5の回転数が所定回転数以上まで上昇した場合には、制御部8は、排熱回収熱交換器1内のバイパスライン6上に設置されたバイパス遮断弁7を開栓するよう制御する。これにより、バイパス遮断弁7は開栓し、熱交換器1内の流路をバイパスするバイパスライン6に循環する温水が導入される。
【0027】
そのため、排熱回収熱交換器1内において燃料電池からの排熱を吸収しないので、温度の上昇を防止することができ、かつ循環ポンプ5の回転数の必要以上の上昇を防止することが可能となる。
【0028】
[効果]
以上のような構成を有する本実施形態では、逆潮防止ヒータへの余剰電力が大きく、循環する温水温度が過剰に上昇することにより循環ポンプの回転数を増加させた場合であっても、バイパスライン上のバイパス遮断弁を開けることで、温水温度の過剰な上昇を防止することが可能となる。また、温水流量を増加させても、複数の熱交換器を温水が通過することによる圧力損失の増加を回避することが可能となり、発電効率の低下を防止する効果も有している。
【0029】
[第2の実施形態]
[構成]
図2は、本発明を適用した第2の実施形態に係る燃料電池発電システムを示すものであり、上記第1の実施形態に係る構成を一部変更したものである。なお、上記第1の実施形態と同じ構成に関しては、同一の符号を付し、説明は省略する。
【0030】
図2の通り、本構成は、第1の実施形態においてバイパスライン6に設置したバイパス遮断弁7の代わりに流量調整弁9を当該バイパスライン上に配設している。この流量調整弁9は、バイパスライン6を流れる温水の流量を調整するものであり、当該流量の調整によりバイパスライン6に流した温水温度の急激な変動を防止する。
【0031】
また、制御部8は、バイパス遮断弁7の代わりに流量調整弁9に接続されている。すなわち、当該制御部8は、温度センサ4により計測された温水温度が所定温度より上昇するか否かを検知し、所定温度より上昇した場合には、循環ポンプ5の回転数を増加させ、循環ポンプ5の回転数が所定回転数以上まで増加している場合にバイパスライン6に設置された流量調整弁9を制御して温水流量を調整する。つまり、この温水流量の調整により、増加した循環ポンプ5の回転数を所定回転数以内にするよう制御している。
【0032】
なお、逆潮防止ヒータ3の入力が大きい場合にバイパス遮断弁7を開栓した場合では、排熱回収熱交換器1側とバイパスライン6側との圧力損失が大きく異なるので、温水流量が急激に増加し温水の温度に大きな変動が生じてしまう。そこで、当該制御部8が流量調整弁9を制御して、適切にバイパスライン6を流れる温水流量を調整することにより、温水温度の過剰な上昇を防止するとともに温水温度の急激な変動を抑制する。
【0033】
[作用]
以上のような構成を有する本実施形態の作用は以下の通りである。
まず、上記第1の実施形態と同様に、排熱回収熱交換器1により燃料電池本体(図示しない)からの排熱を回収し、循環系に流れる温水を生成する。そして、この生成された温水は、循環ポンプ5を動力源として貯湯槽2上部へ供給される。
【0034】
ここで、電力需要よりも過剰な燃料電池の発電電力は逆潮防止ヒータ3に入力され、この逆潮防止ヒータ3によって、排熱回収熱交換器1から貯湯槽2に流れる温水を加熱することで当該発電電力は消費される。なお、逆潮防止ヒータ3により温水が過剰に加熱されないよう、温度センサ4を介して加熱後の温水温度を計測する。
【0035】
そして、制御部8が、温度センサ4により計測された温水温度が所定温度以上であるか否かを判断し、所定温度以上であると判断した場合には、温水循環系に設置された各機器が破損する恐れがあるため、循環ポンプ5の回転数を増加させるよう制御する。すなわち、制御部8を通じて循環ポンプ5の回転数を上げることで、循環系を流れる温水流量を増加させ、温水温度の低下を図っている。
【0036】
ここで、循環する温水温度が低下せず、循環ポンプ5の回転数が所定回転数以上まで上昇した場合には、制御部8は、排熱回収熱交換器1内のバイパスライン6上に設置された流量調整弁9を制御して、適切にバイパスライン6を流れる温水流量を調整する。つまり、温水流量が急激に増加し場合の温水温度の急激な変動を防止するよう、流量調整弁9が制御され、バイパスライン6に調整した温水流量が導入される。これにより、循環ポンプ5の回転数の必要以上の上昇を抑え、かつ温水温度の急激な変動を防止することが可能となる。
【0037】
[効果]
以上のような構成を有する本実施形態では、逆潮防止ヒータへの余剰電力が大きく、循環する温水温度が過剰に上昇するため循環ポンプの回転数を増加させた場合であっても、バイパスライン上の流量調整弁を制御することで、温水温度の過剰な上昇を防止するとともに、急激な温水温度の変動を防止することができる。
【0038】
すなわち、第1の実施形態において逆潮防止ヒータの入力が大きい場合にバイパス遮断弁を開いた場合では、排熱回収熱交換器側とバイパスライン側の圧力損失とが大きく異なるので、バイパスライン中の流量が急激に増加することにより温水温度の大きな変動が発生してしまう。そのため、本構成では、流量調整弁を設置することで、温水温度の過剰な上昇を防止し、かつバイパスラインに温水を流した際の温水温度の急激な変動を抑制することが可能となる。
【0039】
[第3の実施形態]
[構成]
図3は、本発明を適用した第3の実施形態に係る燃料電池発電システムを示すものであり、上記第1の実施形態に係る構成を一部変更したものである。なお、上記第1の実施形態と同じ構成に関しては、同一の符号を付し、説明は省略する。
【0040】
本実施形態では、図3の通り、第1の実施形態の構成において逆潮防止ヒータ3の出口側に設置した温度センサ4を、当該逆潮防止ヒータ3の入り口側に設置している。また、それ以外の第1の実施形態の構成に加えて、温水流量を計測する温水流量計10が温水循環系に設置されている。なお、図3では、この温水流量計10が循環ポンプ5と排熱回収熱交換器1との間に配設されているが、特にこの設置位置に限定するものではない。
【0041】
また、制御部8は、逆潮防止ヒータ3の入り口側に設置した温度センサ4と温水流量計10に接続され、さらに、逆潮防止ヒータ3の入力電力を検知するため当該ヒータ3にも接続されている。そのため、当該制御部8は、逆潮防止ヒータ3の入力と温度センサ4により計測した入口温度及び温水流量計10により計測された温水流量とから逆潮防止ヒータ3の出口付近の温水温度を算出する。
【0042】
なお、この制御部8は、もちろん循環ポンプ5とバイパス遮断弁7にも接続されており、算出された逆潮防止ヒータ3の出口付近の温水温度が所定温度より高いか否かを判断し、所定温度より高いと判断した場合には、循環ポンプ5の回転数を増加させるよう制御する。また、当該制御部8は、循環ポンプ5の回転数が所定回転数以上まで増加しているか否かを判断し、所定回転数以上まで増加している場合に排熱回収熱交換器1内のバイパスライン6に設置されたバイパス遮断弁7弁を開栓するよう制御する。
【0043】
[作用]
以上のような構成を有する本実施形態の作用は以下の通りである。
まず、排熱回収熱交換器1により燃料電池本体(図示しない)からの排熱を回収し、循環系に流れる温水を生成する。そして、この生成された温水は、循環ポンプ5を動力源として貯湯槽2上部へ供給される。
【0044】
ここで、本発明では、逆潮防止ヒータ3の入り口側に設置された温度センサ4を介して流れる温水の温度が計測される。また、温水循環系を流れる温水の流量が温水流量計10により計測される。そして、電力需要よりも過剰な燃料電池の発電電力は逆潮防止ヒータ3に入力され、この逆潮防止ヒータ3によって、排熱回収熱交換器1から貯湯槽2に流れる温水を加熱することで当該発電電力は消費される。
【0045】
そして、制御部8は、逆潮防止ヒータ3の入力と温度センサ4により計測した入口温度及び温水流量計10により計測された温水流量とから逆潮防止ヒータ3の出口側の温水温度を算出する。さらに、当該制御部8は、算出した温水温度に基づいて所定温度以上であるか否かを判断し、所定温度以上であると判断した場合には、温水循環系に設置された各機器を破損される恐れがあるため、循環ポンプ5の回転数を増加させるよう制御する。すなわち、制御部8を通じて循環ポンプ5の回転数を上げることで、循環系を流れる温水流量を増加させ、温水温度の低下を図っている。
【0046】
しかしながら、循環する温水温度が低下せず、循環ポンプ5の回転数が所定回転数以上まで上昇した場合には、制御部8は、排熱回収熱交換器1内のバイパスライン6上に設置されたバイパス遮断弁7を開栓するよう制御する。これにより、バイパス遮断弁7は開栓し、熱交換器1内の流路をバイパスするバイパスライン6に循環する温水が導入される。
【0047】
そのため、排熱回収熱交換器1内において燃料電池からの排熱を吸収しないので、温度の上昇を防止することができ、かつ循環ポンプ5の回転数の必要以上の上昇を防止することが可能となる。なお、図3においてはバイパスライン6にバイパス遮断弁7を設置しているが、第2の実施形態のように、バイパス遮断弁7の代わりに流量調整弁9をバイパスライン6に設置する実施形態も包含する(図4)。
【0048】
[効果]
以上のような構成を有する本実施形態では、逆潮防止ヒータの入り口付近に温度センサを設置しても、計測された温水流量や逆潮防止ヒータへの入力電力により、当該逆潮防止ヒータの出口付近の加熱後の温度を算出することができる。そのため、第1の実施形態と同様に、逆潮防止ヒータへの余剰電力が大きく、循環する温水温度が過剰に上昇することにより循環ポンプの回転数を増加させた場合であっても、バイパスライン上のバイパス遮断弁を開けることで、温水温度の過剰な上昇を防止することが可能となる。また、温水流量を増加しても、複数の熱交換器を温水が通過することによる圧力損失の増加を回避することが可能となり、発電効率の低下を防止する効果も有している。
【0049】
[第4の実施形態]
[構成]
図5は、本発明を適用した第4の実施形態に係る燃料電池発電システムを示すものであり、上記第3の実施形態に係る構成を一部変更したものである。なお、上記第3の実施形態と同じ構成に関しては、同一の符号を付し、説明は省略する。
【0050】
本実施形態では、図5の通り、第3の実施形態において設けられた循環する温水流量を計測する温水流量計10が配設されておらず、制御部8が循環ポンプ5の回転数から温水流量を算出するものである。すなわち、当該制御部8は、循環ポンプ5と逆潮防止ヒータ3の入力電力を検知するため当該ヒータ3にも接続され、さらに逆潮防止ヒータ3の入り口付近に設置した温度センサ4に接続されている。そのため、当該制御部8は、上述した通り、循環ポンプ5の回転数から温水流量を算出し、この算出した温水流量と逆潮防止ヒータ3の入力及び温度センサ4により計測した入口温度とから逆潮防止ヒータ3の出口側の温水温度を算出する。
【0051】
なお、この制御部8は、もちろんバイパス遮断弁7にも接続されており、算出された逆潮防止ヒータ3の出口側の温水温度が所定温度より高いか否かを判断し、所定温度より高いと判断した場合には、循環ポンプ5の回転数を増加させるよう制御する。また、当該制御部8は、循環ポンプ5の回転数が所定回転数以上まで増加しているか否かを判断し、所定回転数以上まで増加している場合に排熱回収熱交換器1内のバイパスライン6に設置されたバイパス遮断弁7弁を開栓するよう制御する。
【0052】
[作用]
以上のような構成を有する本実施形態の作用は以下の通りである。
まず、排熱回収熱交換器1により燃料電池本体(図示しない)からの排熱を回収し、循環系に流れる温水を生成する。そして、この生成された温水は、循環ポンプ5を動力源として貯湯槽2上部へ供給される。
【0053】
ここで、本発明では、逆潮防止ヒータ3の入り口側に設置された温度センサ4を介して流れる温水の温度が計測される。また、制御部8が循環ポンプ5の回転数から循環系を流れる温水流量を算出する。そして、電力需要よりも過剰な燃料電池の発電電力は逆潮防止ヒータ3に入力され、この逆潮防止ヒータ3によって、排熱回収熱交換器1から貯湯槽2に流れる温水を加熱することで当該発電電力は消費される。
【0054】
そして、制御部8は、逆潮防止ヒータ3の入力と温度センサ4により計測した入口温度及び算出した温水流量とから逆潮防止ヒータ3の出口付近の温水温度を算出する。さらに、当該制御部8は、算出した温水温度に基づいて所定温度以上であるか否かを判断し、所定温度以上であると判断した場合には、温水循環系に設置された各機器を破損される恐れがあるため、循環ポンプ5の回転数を増加させるよう制御する。すなわち、制御部8を通じて循環ポンプ5の回転数を上げることで、循環系を流れる温水流量を増加させ、温水温度の低下を図っている。
【0055】
しかしながら、循環する温水温度が低下せず、循環ポンプ5の回転数が所定回転数以上まで上昇した場合には、制御部8は、排熱回収熱交換器1内のバイパスライン6上に設置されたバイパス遮断弁7を開栓するよう制御する。これにより、バイパス遮断弁7は開栓し、熱交換器1内の流路をバイパスするバイパスライン6に循環する温水が導入される。
【0056】
そのため、排熱回収熱交換器1内において燃料電池からの排熱を吸収しないので、温度の上昇を防止することができ、かつ循環ポンプ5の回転数の必要以上の上昇を防止すること可能となる。なお、図5においてはバイパスライン6にバイパス遮断弁7を設置しているが、第2の実施形態のように、バイパス遮断弁7の代わりに流量調整弁9をバイパスライン6に設置する実施形態も包含する(図6)。
【0057】
[効果]
以上のような構成を有する本実施形態では、循環する温水流量を計測する温水流量計を設けなくても、循環ポンプの回転数から温水流量を算出することができるので、第3の実施形態よりも温水流量系分のコストダウンを図ることができる。また、第1の実施形態と同様に、逆潮防止ヒータへの余剰電力が大きく、循環する温水温度が過剰に上昇することにより循環ポンプの回転数を増加させた場合であっても、バイパスライン上のバイパス遮断弁を開けることで、温水温度の過剰な上昇を防止することが可能となる。なお、温水流量を増加しても、複数の熱交換器を温水が通過することによる圧力損失の増加を回避することが可能となり、発電効率の低下を防止する効果も有している。
【0058】
[他の実施形態]
なお、本発明は以上のような実施形態に限定されるものではなく、以下の実施形態も包含する。すなわち、第1の実施形態では、制御部8が、温度センサ4により計測された温水温度が所定温度より上昇するか否かを検知し、所定温度より上昇した場合には、循環ポンプ5の回転数を増加させ、当該回転数が所定回転数以上まで増加している場合に排熱回収熱交換器1内のバイパスライン6に設置されたバイパス遮断弁7弁を開栓するよう制御する。
【0059】
これに対し、本実施形態では、制御部8が循環ポンプ5の回転数を制御せず、温度センサ4により計測された温水温度が所定温度より上昇するか否かを検知し、所定温度より上昇した場合には、排熱回収熱交換器1内のバイパスライン6に設置されたバイパス遮断弁7弁を開栓するよう制御する。具体的な作用は、第1の実施形態と同様に、まず、排熱回収熱交換器1により燃料電池本体からの排熱を回収し、循環系に流れる温水を生成する。そして、この生成された温水は、循環ポンプ5を動力源として貯湯槽2上部へ供給される。
【0060】
ここで、電力需要よりも過剰な燃料電池の発電電力は逆潮防止ヒータ3に入力され、この逆潮防止ヒータ3によって、排熱回収熱交換器1から貯湯槽2に流れる温水を加熱することで当該発電電力は消費される。なお、逆潮防止ヒータ3により温水が過剰に加熱されないよう、温度センサ4を介して加熱後の温水温度を計測する。
【0061】
そして、本実施形態では、制御部8が、温度センサ4により計測された温水温度が所定温度以上であるか否かを判断し、所定温度以上であると判断した場合に、排熱回収熱交換器1内のバイパスライン6上に設置されたバイパス遮断弁7を開栓するよう制御する。これにより、バイパス遮断弁7は開栓し、熱交換器1内の流路をバイパスするバイパスライン6に循環する温水が導入される。
【0062】
なお、制御部8が循環ポンプ5の回転数を制御せず、温度センサ4により計測された温水温度に基づいて直接バイパス遮断弁7を制御する本実施形態は、上記第2〜4の実施形態にも適用可能である。ここで、バイパス遮断弁7ではなく、流量調整弁9を用いている場合には、計測、あるいは算出した逆潮防止ヒータ3の出口付近の温度に基づいて、直接流量調整弁9を制御する。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の第1の実施形態の構成図
【図2】本発明の第2の実施形態の構成図
【図3】本発明の第3の実施形態の構成図(1)
【図4】本発明の第3の実施形態の構成図(2)
【図5】本発明の第4の実施形態の構成図(1)
【図6】本発明の第4の実施形態の構成図(2)
【符号の説明】
【0064】
1…熱交換器
2…貯湯槽
3…逆潮防止ヒータ
4…温度センサ
5…循環ポンプ
6…バイパスライン
7…バイパス遮断弁
8…制御部
9…流量調整弁
10…温水流量計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池からの排熱を回収し温水を生成する熱交換器と、前記熱交換器で生成された温水を燃料電池からの余剰電力によって加熱するヒータと、前記熱交換器で生成された温水を前記ヒータへ流入させる循環ポンプと、を備えた温水循環系を有する燃料電池発電システムにおいて、
前記ヒータの出口側を流れる温水温度を計測する温度センサと、
前記熱交換器をバイパスするバイパスラインと、
前記温度センサにより計測された温水温度に基づき前記循環ポンプの回転数を調整し、かつ前記バイパスラインを流れる温水の供給と遮断を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記循環ポンプの回転数を所定回転数以上に増加させた場合に、前記バイパスラインに温水を供給するよう制御することを特徴とする燃料電池発電システム。
【請求項2】
燃料電池からの排熱を回収し温水を生成する熱交換器と、前記熱交換器で生成された温水を燃料電池からの余剰電力によって加熱するヒータと、前記熱交換器で生成された温水を前記ヒータへ流入させる循環ポンプと、を備えた温水循環系を有する燃料電池発電システムにおいて、
前記ヒータの入り口側を流れる温水温度を計測する温度センサと、
前記熱交換器をバイパスするバイパスラインと、
前記循環ポンプの回転数から前記温水循環系を流れる温水流量を演算し、当該温水流量と前記温度センサにより計測された温水温度と前記ヒータへ入力する前記余剰電力とから前記ヒータの出口側の温水温度を算出し、算出した前記温水温度に基づき前記循環ポンプの回転数を調整し、かつ前記バイパスラインを流れる温水の供給と遮断を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記循環ポンプの回転数を所定回転数以上に増加させた場合に、前記バイパスラインに温水を供給するよう制御することを特徴とする燃料電池発電システム。
【請求項3】
前記温水循環系を流れる温水流量を計測する温水流量計を備え、
前記制御部は、前記温度センサにより計測された温水温度と前記温水流量計により計測された温水流量と前記ヒータへ入力する前記余剰電力とから前記ヒータの出口付近の温水温度を算出することを特徴とする請求項2に記載の燃料電池発電システム。
【請求項4】
前記バイパスラインには、バイパス遮断弁が設けられ、
前記制御部は、前記循環ポンプの回転数を所定回転数以上に増加させた場合に、前記バイパス遮断弁を開栓することにより温水を前記バイパスラインに供給するよう制御することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の燃料電池発電システム。
【請求項5】
前記バイパスラインには、温水流量を調整する流量調整弁が設けられ、
前記制御部は、前記循環ポンプの回転数を所定回転数以上に増加させた場合に、前記流量調整弁により前記バイパスラインを流れる温水流量を調整することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の燃料電池発電システム。
【請求項6】
燃料電池からの排熱を回収し温水を生成する熱交換器と、前記熱交換器で生成された温水を燃料電池からの余剰電力によって加熱するヒータと、前記熱交換器で生成された温水を前記ヒータへ流入させる循環ポンプと、を備えた温水循環系を有する燃料電池発電システムの制御方法において、
前記ヒータの出口側を流れる温水温度を計測する温度センサと、
前記熱交換器をバイパスするバイパスラインと、を備え、
前記温度センサにより計測された温水温度に基づき前記循環ポンプの回転数を調整し、かつ前記バイパスラインを流れる温水の供給と遮断を制御する制御ステップを実行し、
前記制御ステップは、前記循環ポンプの回転数を所定回転数以上に増加させた場合に、前記バイパスラインに温水を供給するよう制御することを特徴とする燃料電池発電システムの制御方法。
【請求項7】
燃料電池からの排熱を回収し温水を生成する熱交換器と、前記熱交換器で生成された温水を燃料電池からの余剰電力によって加熱するヒータと、前記熱交換器で生成された温水を前記ヒータへ流入させる循環ポンプと、を備えた温水循環系を有する燃料電池発電システムの制御方法において、
前記ヒータの入り口側を流れる温水温度を計測する温度センサと、
前記熱交換器をバイパスするバイパスラインと、を備え、
前記循環ポンプの回転数から前記温水循環系を流れる温水流量を演算し、当該温水流量と前記温度センサにより計測された温水温度と前記ヒータへ入力する前記余剰電力とから前記ヒータの出口側の温水温度を算出し、算出した前記温水温度に基づき前記循環ポンプの回転数を調整し、かつ前記バイパスラインを流れる温水の供給と遮断を制御する制御ステップを実行し、
前記制御ステップは、前記循環ポンプの回転数を所定回転数以上に増加させた場合に、前記バイパスラインに温水を供給するよう制御することを特徴とする燃料電池発電システムの制御方法。
【請求項8】
前記温水循環系を流れる温水流量を計測する温水流量計を備え、
前記制御ステップは、前記温度センサにより計測された温水温度と前記温水流量計により計測された温水流量と前記ヒータへ入力する前記余剰電力とから前記ヒータの出口付近の温水温度を算出することを特徴とする請求項7に記載の燃料電池発電システムの制御方法。
【請求項9】
前記バイパスラインには、バイパス遮断弁が設けられ、
前記制御ステップは、前記循環ポンプの回転数を所定回転数以上に増加させた場合に、前記バイパス遮断弁を開栓することにより温水を前記バイパスラインに供給するよう制御することを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項に記載の燃料電池発電システムの制御方法。
【請求項10】
前記バイパスラインには、温水流量を調整する流量調整弁が設けられ、
前記制御ステップは、前記循環ポンプの回転数を所定回転数以上に増加させた場合に、前記流量調整弁により前記バイパスラインを流れる温水流量を調整することを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項に記載の燃料電池発電システムの制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−218356(P2008−218356A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−57917(P2007−57917)
【出願日】平成19年3月7日(2007.3.7)
【出願人】(301060299)東芝燃料電池システム株式会社 (358)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】