説明

燃料電池

【課題】燃料電池において、アノードに燃料ガスを分散して供給することが可能な技術を提供すること。
【解決手段】燃料電池であって、電解質膜の一方の面の外側に設けられ、分散して点在し、燃料ガスが導入される複数のガス導入スポットを有するアノードと、電解質膜の他方の面の外側に設けられるカソードと、燃料ガスが通過可能な複数のガス通過部を有し、各ガス通過部を介してアノードの各ガス導入スポットにそれぞれ燃料ガスを導入するためのガス導入部と、を備え、アノードは、燃料ガスが、各ガス導入スポットから電解質膜側の面とは反対面に沿って遠ざかる方向に分散しやすいガス分散構造である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池としては、一般に、電解質膜の一方の面にアノードが、他方の面にカソードが形成された膜電極接合体(以下では、「MEA」(Membrane Electrode Assemble)と呼ぶ)を備える。この燃料電池では、アノード上に、燃料ガス供給流路を形成する流路形成部材が配置される(特許文献1参照)。なお、流路形成部材としては、導電性多孔体などが用いられる。また、アノードまたはカソードは、触媒層の他、ガス拡散層を備える場合もある。
【0003】
【特許文献1】特開2004−6104号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、酸化ガスとして、一般的に、空気、または、空気と酸素との混合気体などを用いるが、この場合、空気中の窒素等が、カソード側からアノード側にリークしてくる場合がある。それに伴い、アノードにおいて、リークしてきた窒素等(以下では、リークガスとも呼ぶ)が燃料ガス供給流路に滞留するおそれがあった。このように、燃料ガス供給流路にリークガスが滞留すると、燃料ガスがアノード(アノード面)に対して分散して供給されず、それ故、アノードにおいて局所的に燃料ガスが供給されない部分が生じ、その部分で発電が抑制されるおそれがあった。その結果、燃料電池全体として発電効率が低下するおそれがあった。
【0005】
特に、アノードデッドエンド運転型(例えば、燃料ガス供給流路に供給した燃料ガスを、ほぼ全量アノードに消費させて発電を行う運転態様)の燃料電池において、上記問題は、生じやすい。また、上記問題は、リークガスが滞留する場合に限られず、燃料ガス等に混ざった不活性ガスが滞留する場合にも生じる問題である。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、燃料電池において、アノードに燃料ガスを分散して供給することが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]
燃料電池であって、電解質膜の一方の面側に設けられ、分散して点在し、燃料ガスが導入される複数のガス導入スポットを有するアノードと、前記電解質膜の他方の面側に設けられるカソードと、前記燃料ガスが通過可能な複数のガス通過部を有し、各ガス通過部を介して前記アノードの各ガス導入スポットにそれぞれ前記燃料ガスを導入するためのガス導入部と、を備え、前記アノードは、前記燃料ガスが、各ガス導入スポットからアノード面に沿って遠ざかる方向に分散しやすいガス分散構造であることを要旨とする。なお、アノード面とは、アノードにおいて、電解質膜に接する面、または、その面の反対面をいう。
【0009】
上記構成の燃料電池によれば、燃料電池において、アノードに燃料ガスを分散して供給することができる。
【0010】
[適用例2]適用例1に記載の燃料電池において、
前記アノードは、前記電解質膜の一方の面の外側に設けられる触媒層と、前記触媒層の外側に設けられるガス拡散層と、を備え、少なくとも、前記ガス拡散層は、前記複数のガス導入スポットを有し、前記ガス分散構造であることを特徴とする燃料電池。
【0011】
このようにすれば、燃料電池において、ガス拡散層に燃料ガスを分散して供給することができる。
【0012】
[適用例3]適用例1または適用例2に記載の燃料電池において、
前記アノードは、前記ガス分散構造として、各ガス導入スポットから前記反対面に沿って遠ざかる方向に向かって形成される溝を有することを特徴とする燃料電池。
【0013】
このようにすれば、アノードにおいて、各ガス導入スポットに導入された燃料ガスを溝に沿って分散させることができ、その結果、アノード全体に燃料ガスを分散させることができる。
【0014】
[適用例4]適用例3に記載の燃料電池において、
前記溝は、前記ガス導入スポットを中心として、前記反対面に沿って、放射状、若しくは、蜘蛛の巣状に形成されていることを特徴とする燃料電池。
【0015】
このようにすれば、アノードにおいて、各ガス導入スポットに導入された燃料ガスを放射状または蜘蛛の巣状に広がる溝に沿って分散させることができ、その結果、アノード全体に燃料ガスを分散させることができる。
【0016】
[適用例5]適用例1ないし適用例4のいずれかに記載の燃料電池において、
前記アノードは、前記ガス分散構造として、各ガス導入スポットから前記反対面に沿って遠ざかる方向に、透気度が低くなる構造であることを特徴とする燃料電池。
【0017】
このようにすれば、アノードにおいて、各ガス導入スポットに導入された燃料ガスを各ガス導入スポットから前記反対面に沿って遠ざかる方向に、分散させることができ、その結果、アノード全体に燃料ガスを分散させることができる。
【0018】
[適用例6]適用例1ないし適用例5のいずれかに記載の燃料電池において、前記ガス導入部は、前記アノードの外側に設けられ、ガス不透過であると共にシート状の導電性シート部であり、前記ガス導入部の前記ガス通過部は、前記導電性シート部において、シート面に沿って分散して配置された複数の貫通孔であり、さらに、前記燃料電池は、前記導電性シート部の外側に設けられ、前記燃料ガスを前記導電性シート部の面に沿った方向に流すと共に、前記燃料ガスを前記導電性シートの各貫通孔に分散して供給するための燃料ガス供給流路を形成する流路形成部を備えることを特徴とする燃料電池。
【0019】
このようにすれば、アノードに供給する燃料ガス量のばらつきを小さくすることができる。また、リークガスがアノード側から貫通孔を介して燃料ガス供給流路に進入することが抑制され、燃料ガス供給流路にリークガスが滞留することが抑制される。
【0020】
[適用例7]適用例1ないし適用例6のいずれかに記載の燃料電池において、前記ガス導入部は、内部を前記燃料ガスが通過するパイプ状部材であり、前記ガス導入部の前記ガス通過部は、前記パイプ状部材において、分散して配置された複数の貫通孔であることを特徴とする燃料電池。
【0021】
このようにすれば、アノードに供給する燃料ガス量のばらつきを小さくすることができる。
【0022】
[適用例8]適用例1ないし適用例7のいずれかに記載の燃料電池において、前記ガス導入部は、内部を前記燃料ガスが通過するパイプ状部材であり、前記ガス導入部の前記ガス通過部は、前記パイプ状部材において、端部の開口部であることを特徴とする燃料電池。
【0023】
このようにすれば、アノードに供給する燃料ガス量のばらつきを小さくすることができる。
【0024】
[適用例9]適用例1ないし適用例8のいずれかに記載の燃料電池において、前記ガス導入部から前記アノードに供給された前記燃料ガスのほぼ全量をアノードで消費することを特徴とする燃料電池。
【0025】
このような燃料電池において、特に、上記適用例1ないし8のいずれかに記載の燃料電池の構造を持つことで、リークガス等の不活性ガスの滞留を抑制し、アノードに燃料ガスを分散して供給することが可能となる。
【0026】
[適用例10]適用例1ないし適用例9のいずれかに記載の燃料電池において、前記アノード側は、前記アノードに供給された燃料ガスを外部に排出しない閉塞構造であることを特徴とする燃料電池。
【0027】
このような燃料電池において、特に、上記適用例1ないし9のいずれかに記載の燃料電池の構造を持つことで、リークガス等の不活性ガスの滞留を抑制し、アノードに燃料ガスを分散して供給することが可能となる。
【0028】
このタイプの燃料電池は、前記燃料ガスを供給して行なう運転の態様として、該供給されたほぼすべての燃料ガスをアノードで消費する態様を含む。ここで、燃料ガスのほぼすべてを消費するとは、燃料ガスのアノードから、積極的に燃料ガスを取り出して燃料ガス供給路に循環させるといった用い方をしないことを意味している。消費には、発電のための電気化学反応に用いられるだけでなく、電解質膜の反対側への透過も含まれる。また、現実に燃料電池を構成した場合に生じるリークも、消費に含ませて良い。燃料電池において、こうした燃料ガスの使い方をしながら発電することを、デッドエンド運転と呼ぶ。このとき、燃料ガスのほぼすべてを、外部に排出することなく、内部に滞留させた状態で発電に利用している運転の態様として捉えることができる。この場合、結果的には、燃料ガスが供給されるアノードは、一般的に、燃料ガスを外部に排出あるいは放出しない閉塞構造となる。
【0029】
発電体のアノード側へ燃料ガスを供給して行なう燃料電池の運転を、アノードデッドエンド運転と呼ぶ。アノードデッドエンド運転では、燃料ガスのアノード側への供給を継続しつつ、アノード側からの燃料ガスの排出をしない状態で発電を継続する。結果的に、少なくとも定常発電時に供給された燃料ガスのほぼ全量をアノード側に留めて発電を行うことになる。発電体が、電解質膜の両面にアノードおよびカソードをそれぞれ接合してなるMEA(膜電極接合体)を備え、アノード側に燃料ガス(多くは、水素または水素含有ガス)を供給して発電を行う場合には、アノードに供給された燃料ガスのほぼすべてを、外部に排出することなく、内部に滞留させた状態で発電に利用することになる。この場合、結果的には、燃料ガスが供給されるアノード側は、一般的に、燃料ガスを外部に排出あるいは放出しない閉塞構造となる。
【0030】
本願明細書では、燃料ガスの消費層(アノード)に供給されたほぼ総ての燃料ガスを燃料ガス消費層で消費する運転の態様を、デッドエンド運転と呼ぶが、燃料ガス消費層からの燃料ガスの循環を意図せず、燃料ガスの消費層から名目的に燃料ガスを取り出して利用する形態が加えられていたとしても、当該構成は、デッドエンド運転に含まれる。例えば、燃料ガス消費層あるいはその上流から僅かな燃料ガスを取り出す流路を設け、取り出した燃料ガスを燃焼して補機などのプレヒートに用いる構成などを考えることができる。こうした名目的な燃料ガスの消費は、燃料ガスの取り出しを、燃料ガスの消費層もしくはその上流からとすることに格別な意味がなければ、本願明細書における「ほぼすべての燃料ガスの燃料ガス消費層で消費する」ことから除外される構成とはならない。
【0031】
本願発明の燃料電池は、さらに、アノード(水素極)の不純物(たとえば窒素)の分圧が、カソード(空気極)の不純物(たとえば窒素)の分圧とつりあった状態で継続的に発電する運転状態を実現するものとして把握することもできる。ここで、「つりあった状態」とは、たとえば平衡状態を意味し、必ずしも両者の分圧が等しい状態に限られない。
【0032】
本願発明の燃料電池は、さらに、たとえば図29や図30に示されるような構成をも含む。図29の構成例は、第1の流路と第2の流路と有している。第1の流路は、第2の流路よりも上流側に配置されている。第1の流路および第2の流路は、第1の流路あるいは第2の流路よりも流れの抵抗が高い高抵抗連通部2100xを介して連通している。これらの流路は、発電領域面外(燃料電池セルの外部)から燃料ガス導入口(例えば、マニホールド)を経由して燃料ガスを導入する。換言すれば、第2の流路への燃料ガスの供給は、主として高抵抗連通部2100xを介して(たとえば高抵抗連通部2100xのみを介して)第1の流路から導入される。
【0033】
なお、第1の流路や第2の流路は、後述の実施例のように多孔体を利用しても形成可能であるが、たとえばシール材S1、S2の挟持(図29)やハニカム構造材H2を使用した流路の形成(図30)として構成してもよい。
【0034】
高抵抗連通部2100xは、たとえば図29や図30に示されるような複数の導入部2110x(貫通孔)が面内方向に分散した板状部材が利用可能である。高抵抗連通部2100xは、以下のうちの少なくとも一つの役割を有している。第1の役割は、「第2の流路のうち燃料ガス導入口に近接する領域への燃料ガス供給を制限する役割」である。第2の役割は、「アノード反応部に沿った第2の流路の面直方向に働くガス圧の面内の不均一を抑制する役割」である。第3の役割は、「第1の流路を面内方向に流れる燃料ガスの向きを面直方向(あるいは面に交差する方向)に変換する役割」である。
【0035】
本願発明の燃料電池は、さらに、以下のような燃料電池システムとして把握することもできる。すなわち、この燃料電池システムは、
供給されたほぼすべての燃料ガスをアノード反応部で消費する態様を含む燃料電池システムであって、
発電セル内にアノードガスを導入する導入口と、
前記導入口から供給されたアノードガスをセル面内方向に導く第1のガス流路と、
前記アノード反応部に沿って延在し、
前記第1のガス流路より流れの抵抗が高く、第1のガス流路から第2のガス流路へのアノードガスの流入を妨げつつも、セル面内方向に分布した複数の連通部を介して、第1のガス流路から第2のガス流路へアノードガスを導く高抵抗部と、
を備える。
【0036】
本願発明の燃料電池は、さらに、以下のような構成を含む燃料電池システムとして把握することもできる。すなわち、この燃料電池システムは、
前記高抵抗部は、前記アノード反応部のうち一の領域に対応した一の連通部と、他の領域に対応した他の連通部とを有し、
前記一の領域で消費されるアノードガスは、前記高抵抗部のうち一の連通部を通過したガスの比率が、他の連通部を通過したガスの比率より高い、
あるいは、
前記高抵抗部は、前記アノード反応部のうち一の領域に対応した一の連通部と、他の領域に対応した他の連通部とを有し、
前記一の連通部を通過したアノードガスは、前記アノード反応部のうちの一の領域で消費される比率が、他の領域で消費される比率より高い
といった構成も可能である。
【0037】
一方、カソード流路は少なくとも上記高抵抗連通部が有さないことが好ましい。さらにカソード流路は、第2の流路も設けることなく、カソード導入口から供給されたカソードガスをセル面内方向に導く第1のガス流路のみとすることが好ましい。ただし、いわゆるガス拡散層を第2の流路と捉えれば、第1および第2の流路の組み合わせとしても良い。いずれにせよ、上記高抵抗連通部をカソード極からのみ省略することにより、カソードガスの送給機の仕事量の低減およびカソード極での排水性の向上が期待でき、特に、アノード極からの排水性能が低いシステム(燃料ガスの定常的排気の無い)燃料電池システムでは好適である。
【0038】
なお、本発明は、上記した燃料電池に限られず、MEAやアノードなど、他の装置発明の態様で実現すること可能である。また、燃料電池の製造方法など、方法発明としての態様で実現することも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下、本発明に係る燃料電池について、図面を参照しつつ、実施例に基づいて説明する。
A.第1実施例:
A1.燃料電池システム1000の構成:
まず、本発明の第1実施例に係る燃料電池100を備える燃料電池システム1000の概略構成について説明する。図1は、燃料電池システム1000および第1実施例の燃料電池100の説明図である。具体的には、図1(A)は、燃料電池システム1000のブロック図であり、図1(B)は、燃料電池100の外観構成図である。この燃料電池システム1000は、図1(A)に示すように、主に、燃料電池100と、高圧水素タンク1100と、エアコンプレッサ1200と、水素遮断弁1120と、レギュレータ1130と、制御部1300とを備えている。
【0040】
高圧水素タンク1100は、燃料電池100の燃料ガスとしての水素を貯蔵する。高圧水素タンク1100は、水素供給配管1110によって、後述する燃料電池100の燃料ガス供給マニホールドと接続している。水素供給配管1110には、上流側に水素遮断弁1120と、その下流側に水素の圧力を調整するためのレギュレータ1130が設けられている。
【0041】
エアコンプレッサ1200は、燃料電池100に酸化ガスとしての高圧空気を供給する。エアコンプレッサ1200は、空気供給配管1210によって、後述する燃料電池100の酸化ガス供給マニホールドと接続している。空気供給配管1210には加湿器が設けられているものとしても良い。燃料電池100のカソードで電気化学反応に供されなかった酸化ガスは、後述する酸化ガス排出マニホールドに接続する排出配管1220から燃料電池100の外部へと排出される。
【0042】
制御部1300は、マイクロコンピュータを中心とした論理回路として構成され、詳しくは、予め設定された制御プログラムに従って所定の演算などを実行するCPU(図示せず)と、CPUで各種演算処理を実行するのに必要な制御プログラムや制御データ等が予め格納されたROM(図示せず)と、同じくCPUで各種演算処理をするのに必要な各種データが一時的に読み書きされるRAM(図示せず)と、各種信号を入出力する入出力ポート(図示せず)等を備える。制御部1300は、水素遮断弁1120や、エアコンプレッサ1200などと信号線を介して接続され、これらを制御して、燃料電池100の発電を実行する。
【0043】
A2.燃料電池100の構成:
図2は、燃料電池100の側面図である。図1(B)または図2に示すように、燃料電池100は、シール一体発電アセンブリ200とセパレータ600とが交互に積層された構造(いわゆるスタック構造)を有している。燃料電池100は、シール一体発電アセンブリ200およびセパレータ600を所定枚数積層し、それらを積層方向に所定の締結力を付与するように締結することにより、製造される。なお、図2では、各シール一体発電アセンブリ200およびセパレータ600との間に空間が設けられているが、実際には、この空間はなく、それぞれ互いに接している。以下では、シール一体発電アセンブリ200およびセパレータ600を積層する方向を積層方向とも呼ぶ。図2に示されるシール部材700(リブ720)についての詳細は、後述する。
【0044】
図1(B)に示すように、燃料電池100には、酸化ガスが供給される酸化ガス供給マニホールド110と、酸化ガスを排出する酸化ガス排出マニホールド120と、燃料ガスが供給される燃料ガス供給マニホールド130と、冷却媒体を供給する冷却媒体供給マニホールド150と、冷却媒体を排出する冷却媒体排出マニホールド160と、が設けられている。なお、本実施例の燃料電池100は、アノード側に供給された燃料ガスを排出する構造とはなっておらず、すなわち、アノード側に供給された燃料ガスを外部に排出しない閉塞構造となっている(以下では、アノードデットエンド構造とも呼ぶ)。従って、燃料電池100は、燃料ガスを排出する燃料ガス排出マニホールドは設けられていない。また、酸化ガスとしては空気が用いられ、燃料ガスとしては水素が用いられる。冷却媒体としては、水、エチレングリコール等の不凍水、空気等を用いることができる。酸化ガスとして、空気に加えて高濃度の酸素を混合した混合ガスを用いてもよい。なお、本実施例の燃料電池100には、比較的高圧な燃料ガスが供給される。
【0045】
A3.シール一体発電アセンブリ200:
図3は、シール一体発電アセンブリ200の正面図(図2において、シール一体発電アセンブリ200を右側から見た図)である。図4は、図3におけるA−A断面の一部を示す断面図である。図4においては、シール一体発電アセンブリ200と共に、燃料電池を構成する際にシール一体発電アセンブリ200を挟持する2枚のセパレータ600を図示している。
【0046】
シール一体発電アセンブリ200は、図2、図3および図4に示すように、積層部材800と、シール部材700とで構成される。
【0047】
積層部材800は、図4に示すように、MEA24と、導電性シート860と、アノード側多孔体840と、カソード側多孔体850とを備えている。導電性シート860は、MEA24と、アノード側多孔体840との間に配置される。
【0048】
MEA24は、電解質膜810と、アノード820と、カソード830とを備えている。電解質膜810は、例えばフッ素系樹脂材料あるいは炭化水素系樹脂材料で形成され湿潤状態において良好なイオン導電性を有するイオン交換膜である。アノード820は、電解質膜810の一方の面に設けられる触媒層820Aと、触媒層820Aの外側に設けられるアノード側拡散層820Bとから成る。カソード830は、電解質膜810の他方の面に設けられる触媒層830Aと、触媒層830Aの外側に設けられるカソード側拡散層830Bとから成る。触媒層820Aおよび触媒層830Aは、例えば、触媒(例えば、白金など)を担持した触媒担持担体(例えば、白金担持カーボンなど)と、電解質とから形成される。アノード側拡散層820Bおよびカソード側拡散層830Bは、金属多孔体などのガス拡散性および導電性を有する多孔質の材料で形成され、例えば、炭素繊維からなる糸で織成したカーボンクロス、あるいはカーボンペーパまたはカーボンフェルトによって形成される。MEA24は、矩形状をしている。
【0049】
アノード側多孔体840およびカソード側多孔体850は、金属多孔体などのガス拡散性および導電性を有する多孔質の材料で形成され、例えば、エキスパンドメタル、パンチングメタル、メッシュ、または、フェルトなどが用いられる。また、アノード側多孔体840およびカソード側多孔体850は、シール一体発電アセンブリ200とセパレータ600とを積層して燃料電池100を構成した際に、それぞれ、後述するセパレータ600の発電領域DAに接触する。さらに、アノード側多孔体840は、後述するように、燃料ガスをアノード820に供給するための燃料ガス供給流路として機能し、カソード側多孔体850は、後述するように、酸化ガスをカソード830に供給するための酸化ガス供給流路として機能する。また、アノード側拡散層820Bは、比較的透気度(ガス拡散性)が低く形成され、アノード側多孔体840より透気度が低く形成されている。
【0050】
図5は、導電性シート860の正面図である。具体的には、図5は、図4において導電性シート860を上側から見た図を示す。導電性シート860は、図5(A)に示すように、シート状(薄膜状)に形成され、その表面に分散して設けられた多数の貫通孔865を有している。各貫通孔865は、円形で共に口径が等しく(すなわち、同形状であり)、導電性シート860の厚さ方向に貫通し、また、導電性シート860の表面に、格子状に設けられる。導電性シート860において、シート面の面積に対して各貫通孔865の開口部分が占める割合を開口率と呼ぶ。導電性シート860は、この開口率が比較的小さく設定される。導電性シート860の開口率は、5%未満が好ましく、3%未満がさらに好ましく、1%未満が特に好ましい。そのため、導電性シート860において、貫通孔865の口径は、比較的小さく、各貫通孔865間のピッチは比較的広くなっている。それに伴い、各貫通孔865を通過する燃料ガスは、大きな圧力損失を伴う。この導電性シート860は、金で形成されており、アノード側多孔体840の一方の面に、熱圧着、ろう付け、溶接などによって接合される。以下では、燃料電池100において、積層部材800の各部材の面に沿った方向を面方向とも呼ぶ。
【0051】
図6は、アノード側拡散層820Bの様子を表す図である。具体的には、図6(A)は、図4においてアノード側拡散層820Bを上側から見た図を示し、図6(B)は、図6(A)におけるA1−A1断面を示す図である。なお、図6(A)には、アノード側拡散層820Bと導電性シート860とを積層した場合において、アノード側拡散層820Bに対向する貫通孔865の位置が点線で示されている。このアノード側拡散層820Bにおいて、導電性シート860が積層される側の面(以下では、シート積層面とも呼ぶ)には、図6(A)に示すように、貫通孔865に対応する部分を中心として、その部分から遠ざかる方向に、言い換えれば、放射状に、切欠き溝821が形成されている。この切欠き溝821は、図6(B)に示すように、シート積層面に三角柱状に形成される溝である。この切欠き溝821の機能についての詳細は、後述する。なお、この切欠き溝821は、三角柱状に限られず、例えば、シート積層面に四角柱、台形柱状等に形成されてもよい。
【0052】
シール部材700は、面方向の外周に亘って配置されている。シール部材700は、成形材料を射出成形することによって作製され、積層部材800の外周端に隙間なく気密に一体化されている。シール部材700は、ガス不透性と弾力性と燃料電池の運転温度域における耐熱性とを有する材料、例えば、ゴムやエラストマーによって形成される。具体的には、シリコン系ゴム、ブチルゴム、アクリルゴム、天然ゴム、フッ素系ゴム、エチレン・プロピレン系ゴム、スチレン系エラストマー、フッ素系エラストマーなどが用いられ得る。
【0053】
シール部材700は、図2〜図4に示すように、支持部710と、支持部710の両側に配置され、シールラインを形成するリブ720とを備えている。支持部710には、図3に示すように、各マニホールド120〜150(図1参照)に対応する貫通孔(マニホールド孔)が形成されている。リブ720は、シール一体発電アセンブリ200とセパレータ600が積層された際に、隣接するセパレータ600に密着してセパレータ600との間をシールし、反応ガスや冷却水の漏洩を防止する。リブ720は、図3に示すように、積層部材800の全周を囲むシールラインと、個々のマニホールド孔の全周を囲むシールラインとを形成する。
【0054】
A4.セパレータ600の構成:
図7は、セパレータ600のうちカソードプレート400の形状を示す説明図である。図8は、セパレータ600のうちアノードプレート300の形状を示す説明図である。図9は、セパレータ600のうち中間プレート500の形状を示す説明図である。図10は、セパレータ600の正面図である。次に、図7〜図10を参照して、セパレータ600の構成を説明する。セパレータ600は、図7〜図9に示すカソードプレート400、アノードプレート300、および、中間プレート500から構成されている。なお、図7、図8、図9は、各プレート400、300、500を、図10は、セパレータ600を、それぞれ図2の右側から見た様子を示している。また、図10における黒塗りまたは白抜きの矢印についての説明は、後述する。
【0055】
図7〜図10において、各プレート300、400、500およびセパレータ600の中央部に破線で示す領域DAは、セパレータ600がシール一体発電アセンブリ200と共に積層され燃料電池100を構成する際に、シール一体発電アセンブリ200の積層部材800に含まれるMEA24に対向する領域である。MEA24は、実際に発電が行われる領域であるので、この領域を以下では、発電領域DAと呼ぶ。発電領域DAは、MEA24が矩形であるため、当然に矩形である。
【0056】
カソードプレート400(図7)は、例えば、ステンレス鋼で形成されている。カソードプレート400は、5個のマニホールド形成部422〜432と、酸化ガス供給スリット440と、酸化ガス排出スリット444と、を備えている。マニホールド形成部422〜432は、燃料電池100を構成する際に上述した各種マニホールドを形成するための貫通部であり、発電領域DAの外側にそれぞれ設けられている。酸化ガス供給スリット440は、略長方形の長孔であり、発電領域DAの内側であって発電領域DAの上方の辺に沿って配置されている。酸化ガス排出スリット444は、酸化ガス供給スリット440と同様に略長方形の長孔であり、発電領域DAの内側であって、発電領域DAの下方の辺に沿って配置されている。
【0057】
アノードプレート300(図8)は、カソードプレート400と同様に、例えば、ステンレス鋼で形成されている。アノードプレート300は、カソードプレート400同様、5個のマニホールド形成部322〜332と、燃料ガス供給スリット350を備えている。マニホールド形成部322〜332は、燃料電池100を構成する際に上述した各種マニホールドを形成するための貫通部であり、カソードプレート400と同様に、発電領域DAの外側にそれぞれ設けられている。燃料ガス供給スリット350は、発電領域DAの内側であって発電領域DAの右方の辺に沿って、セパレータ600を構成した際にカソードプレート400における上述した酸化ガス排出スリット444と重ならないように配置されている。
【0058】
中間プレート500(図9)は、上述の各プレート300、400同様、例えば、ステンレス鋼で形成されている。中間プレート500は、厚さ方向に貫通する貫通部として、反応ガス(酸化ガスまたは燃料ガス)を供給/排出のための3つのマニホールド形成部522〜526と、複数の酸化ガス導入流路形成部542と、複数の酸化ガス排出流路形成部544と、一つの燃料ガス導入流路形成部546とを備えている。中間プレート500は、さらに、複数の冷却媒体流路形成部550を備えている。マニホールド形成部522〜526は、燃料電池100を構成する際に上述した各種マニホールドを形成するための貫通部であり、カソードプレート400、アノードプレート300と同様に、発電領域DAの外側にそれぞれ設けられている。
【0059】
各冷却媒体流路形成部550は、発電領域DAを図9における左右方向に横断する長孔形状を有しており、その両端は、発電領域DAの外側に至っている。
【0060】
中間プレート500(図9)において、複数の酸化ガス導入流路形成部542の一端は、それぞれ、マニホールド形成部522と連通しており、複数の酸化ガス導入流路形成部542とマニホールド形成部522は、全体として櫛歯形状の貫通孔を形成している。複数の酸化ガス導入流路形成部542の他端は、それぞれに、3つのプレートを接合してセパレータ600を構成した際に、上述したカソードプレート400における酸化ガス供給スリット440と重なる位置まで延びている。この結果、セパレータ600を構成した際に、各酸化ガス導入流路形成部542は、それぞれ、酸化ガス供給スリット440と連通する。
【0061】
中間プレート500(図9)において、複数の酸化ガス排出流路形成部544の一端は、それぞれ、マニホールド形成部524と連通しており、複数の酸化ガス排出流路形成部544とマニホールド形成部524は、全体として櫛歯形状の貫通孔を形成している。複数の酸化ガス排出流路形成部544の他端は、それぞれに、3つのプレートを接合してセパレータ600を構成した際に、上述したカソードプレート400における酸化ガス排出スリット444と重なる位置まで延びている。この結果、セパレータ600を構成した際に、各酸化ガス排出流路形成部544は、それぞれ、酸化ガス排出スリット444と連通する。
【0062】
中間プレート500(図9)において、燃料ガス導入流路形成部546の一端は、マニホールド形成部526と連通している。燃料ガス導入流路形成部546は、上述した酸化ガス排出流路形成部544と重ならない位置に、発電領域DAの下方の辺に沿って延び、その他端は発電領域DAの左方の辺近くにまで達している。燃料ガス導入流路形成部546のうち、発電領域DAの内側の部分は、3つのプレートを接合してセパレータ600を構成した際に、上述したアノードプレート300における燃料ガス供給スリット350と重なる。この結果、セパレータ600を構成した際に、燃料ガス導入流路形成部546は燃料ガス供給スリット350と連通する。
【0063】
セパレータ600(図10)は、中間プレート500をアノードプレート300およびカソードプレート400で挟持するようにそれぞれ接合し、中間プレート500における冷却媒体供給マニホールド150および冷却媒体排出マニホールド160に対応する領域に露出している部分を打ち抜いて作製される。3枚のプレートの接合方法は、例えば、熱圧着、ろう付け、溶接などが用いられ得る。この結果、図10においてハッチングで示す貫通部である5つのマニホールド110〜160と、複数の酸化ガス導入流路650と、複数の酸化ガス排出流路660と、燃料ガス導入流路630と、複数の冷却媒体流路670とを備えたセパレータ600が得られる。
【0064】
図10に示すように、複数の酸化ガス導入流路650は、それぞれ、上述したカソードプレート400の酸化ガス供給スリット440と、中間プレート500の酸化ガス導入流路形成部542の一つとによって形成される。各酸化ガス導入流路650は、セパレータ600の内部を通る内部流路であり、一端が酸化ガス供給マニホールド110と連通し、他端がカソードプレート400側の表面(カソード側表面)に至り、カソード側表面に開口する流路である。また、図10に示すように、複数の酸化ガス排出流路660は、上述したカソードプレート400の酸化ガス排出スリット444と、中間プレート500の酸化ガス排出流路形成部544の一つとによって形成される。各酸化ガス排出流路660は、セパレータ600の内部を通る内部流路であり、一端が酸化ガス排出マニホールド120と連通し、他端がカソードプレート400側のカソード側表面に至り、カソード側表面に開口する流路である。
【0065】
図10に示すように、燃料ガス導入流路630は、上述したアノードプレート300の燃料ガス供給スリット350と、中間プレート500の燃料ガス供給スリット350とによって形成される。燃料ガス導入流路630は、一端が燃料ガス供給マニホールド130と連通し、他端がアノード側表面に開口する内部流路である。また、複数の冷却媒体流路670は、上述した中間プレート500に形成された冷却媒体流路形成部550(図9)によって形成され、一端が冷却媒体供給マニホールド150に、他端が冷却媒体排出マニホールド160に連通している。
【0066】
A5.燃料電池100の動作:
図11は、本実施例の燃料電池100内における反応ガスの流れを示す説明図である。図12は、図11のX領域の拡大図である。図を見やすくするため、図11においては、2つのシール一体発電アセンブリ200と2つのセパレータ600が積層された様子のみを図示している。図11(A)は、図10におけるB−B断面に対応する断面図を示している。図11(B)は、右側の半分が図10におけるD−D断面に対応する断面図を示し、左側の半分が図10におけるC−C断面に対応する断面図を示している。また、図11、図12では、反応ガスの流れを矢印で示している。図12において、燃料ガスが右から左に流れているので、右側を上流側、左側を下流側とも呼ぶ。なお、この図12におけるアノード側拡散層820Bは、図6のE−E断面と対応している。
【0067】
燃料電池100は、酸化ガス供給マニホールド110に酸化ガスが供給されると共に、燃料ガス供給マニホールド130に燃料ガスが供給されることにより、発電を行う。また、発電中の燃料電池100には、発電に伴う発熱による燃料電池100の温度上昇を抑制するために、冷却媒体供給マニホールド150に冷却媒体が供給され、その後、冷却媒体流路670に供給される。冷却媒体流路670に供給された冷却媒体は、冷却媒体流路670の一端から他端まで流動しつつ熱交換を行い、冷却媒体排出マニホールド160に排出される。
【0068】
酸化ガス供給マニホールド110に供給された酸化ガスは、図11(A)において矢印で示すように、酸化ガス供給マニホールド110から酸化ガス導入流路650を通って、酸化ガス供給スリット440(図7)からカソード側多孔体850に流入する。カソード側多孔体850に流入した酸化ガスは、酸化ガス供給流路として機能するカソード側多孔体850の内部を図10において白抜きの矢印で示すように上方から下方に流動する。そして、酸化ガスは、酸化ガス排出スリット444(図7)から酸化ガス排出流路660に流入し、酸化ガス導入流路650を通って、酸化ガス排出マニホールド120へ排出される。カソード側多孔体850を流動する酸化ガスの一部は、カソード側多孔体850に当接しているカソード側拡散層830B全体に亘って拡散し、触媒層830Aでカソード反応(例えば、2H++2e-+(1/2)O2→H2O)に供される。
【0069】
燃料ガス供給マニホールド130に供給された燃料ガスは、図11(B)において矢印で示すように、燃料ガス供給マニホールド130から燃料ガス導入流路630を通って、燃料ガス供給スリット350(図8)からアノード側多孔体840に流入する。アノード側多孔体840に流入した燃料ガスは、燃料ガス供給流路として機能するアノード側多孔体840の内部を図10において黒塗りの矢印で示すように下方から上方に流動する。この際、燃料ガスは、図12に示すように、アノード側多孔体840に当接する導電性シート860の各貫通孔865を介して、面方向に垂直な方向(積層方向または厚さ方向)からアノード側拡散層820Bに流入する。そして、アノード側拡散層820Bにおいて、流入した燃料ガスは、図12に示すように、貫通孔865に対向する部分から、切欠き溝821を流れて、面方向(放射状)に広がりつつ、アノード側拡散層820B内部に拡散する。アノード側拡散層820Bに拡散した燃料ガスは、触媒層820Aでアノード反応(例えば、H2→2H++2e-)に供される。
【0070】
本実施例の燃料電池100は、アノードデットエンド構造となっており、燃料ガス排出口または燃料ガス排出流路がなく、アノード側多孔体840に供給された燃料ガスは、ほぼ全量、アノード820に吸収され、消費される。ここで、「消費」とは、燃料ガスが、アノード820で電気化学反応によって発電に用いられることの他、燃料ガスがカソード830側へリークすることも含む概念である。
【0071】
本実施例の燃料電池100は、比較的高圧な燃料ガスが供給され、積層部材800において、アノード820(アノード側拡散層820B)とアノード側多孔体840(燃料ガス供給流路)との間に、開口率が比較的小さい複数の貫通孔865を有する導電性シート860を設けている。このようにすれば、燃料ガスが、各貫通孔865を通過する際の圧力損失が大きくなり、アノード側多孔体840における燃料ガスの圧力分布を小さくすることができ、それにより、導電性シート860における各貫通孔865からアノード側拡散層820Bに供給する燃料ガス量のばらつきを小さくすることができる。また、以上のようにすれば、アノード820(アノード側拡散層820B)とアノード側多孔体840との間には、大きな圧力差が生じ、アノード820(アノード側拡散層820B)に比べて、アノード側多孔体840の方が、圧力がかなり高くなる。それに伴い、各貫通孔865において、燃料ガスの流速が速くなり、リークガスの拡散速度より燃料ガスの流速が速くなる。その結果、導電性シート860によって、リークガスがアノード側拡散層820Bから貫通孔865を介してアノード側多孔体840に進入することが抑制され、アノード側多孔体840にリークガスが滞留することが抑制される。
【0072】
以下では、下記の図13および図14に示す比較例1および比較例2としての燃料電池と比較して、本実施例の燃料電池100のさらなる有効性を検討する。図13は、比較例1としての燃料電池であって、比較的透気度が高いアノード側拡散層820Bにおける燃料ガスの拡散の様子を示す図である。図14は、比較例2としての燃料電池であって、切欠き溝821を有さないアノード側拡散層820Bにおける燃料ガスの拡散の様子を示す図である。比較例1の燃料電池では、本実施例の燃料電池100のアノード側拡散層820Bより比較的透気度が高いアノード側拡散層820Baが用いられ、比較例2の燃料電池では、比較的透気度が低い、本実施例の燃料電池100と同様なアノード側拡散層820Bが用いられる。これら比較例における燃料電池の各部の符号は、上記実施例と同様なものを用いる。また、各図において、右側を上流側、左側を下流側とも呼ぶ。
【0073】
比較例1の燃料電池において、アノード側多孔体840では、内部の流動抵抗により、上流側から下流側に向けて燃料ガスの流速は、徐々に弱まる。それに伴い、各貫通孔865において、下流側に位置する各貫通孔865ほど、通過する燃料ガスの流速も徐々に弱まる。この場合、アノード側拡散層820Bの透気度が比較的高い場合には、アノード側拡散層820Bにおいて、燃料ガスの面方向の拡散流速も、下流側ほど徐々に弱まり、その結果、図13に示すように、上流側から下流側に向かって燃料ガスの流れが生じるおそれがあった。
【0074】
このようにアノード側拡散層820Bにおいて、上流側から下流側に向かって燃料ガスの流れが生じると、リークガスがその流れに逆らって拡散することができず、アノード側拡散層820Bの下流側に蓄積されるおそれがあった。それに伴い、アノード側拡散層820Bにおいてリークガスが蓄積された部分に対応する触媒層820Aに燃料ガスの供給が阻害されるおそれがあった。
【0075】
一方、以上のように、本実施例の燃料電池100は、アノード側拡散層820Bは、透気度が比較的低く形成されているので、上流側から下流側に向かって燃料ガスの流れが生じることを抑制することができる。
【0076】
また、比較例2の燃料電池のアノード側拡散層820Bにおいて、導電性シート860の各貫通孔865から導入された燃料ガスは、アノード側拡散層820Bの透気度が比較的低いため、各貫通孔865に対応する部分から遠い領域では、図14に示すように、燃料ガスがあまり拡散していない不拡散領域が生じ、この不拡散領域にリークガスが滞留するおそれがあった。そうすると、触媒層820Aにおいて、不拡散領域に対応する部分では、燃料ガスがあまり供給されないので、その部分では、発電量が減少するおそれがあり、その結果、燃料電池全体の発電効率が低下するおそれがあった。
【0077】
一方、以上のように、本実施例の燃料電池100は、アノード側拡散層820Bのシート積層面において、各貫通孔865と対向する部分から放射状に切欠き溝821が形成されている。このようにすれば、アノード側拡散層820Bにおいて、貫通孔865に対向する部分から導入された燃料ガスは、切欠き溝821を流れて、面方向に沿って放射状に広がりつつ、アノード側拡散層820B内部に拡散するので、アノード側拡散層820Bにおいて燃料ガスの不拡散領域が生じることを抑制することができる。その結果、触媒層820Aに燃料ガスを略均一に供給することができ、燃料電池全体の発電効率を向上させることができる。このように、本実施例の燃料電池100は、アノード820において、燃料ガスが分散しやすいガス分散構造となっている。
【0078】
上記実施例において、アノード820は、請求項におけるアノードに該当し、カソード830は、請求項におけるカソードに該当し、導電性シート860は、請求項におけるガス導入部に該当し、切欠き溝821は、請求項における溝に該当し、貫通孔865は、請求項における貫通孔に該当し、アノードにおいて、貫通孔865に対応する部分は、請求項におけるガス導入スポットに該当する。
【0079】
B.第2実施例:
図15は、本発明の第2実施例に係る燃料電池100Aにおける切欠き溝821aの構造を説明する説明図である。この図15は、第1実施例の燃料電池100の図6(A)の拡大部分に対応する。本実施例の燃料電池100Aは、基本的に第1実施例の燃料電池100と同様の構成であるが、アノード側拡散層820Bにおいて、第1実施例の切欠き溝821とは、異なる切欠き溝821aを備える。燃料電池100Aにおいて、第1実施例と同様の構成の部分には、同じ符号を付し、説明を省略する。
【0080】
本実施例の燃料電池100Aのアノード側拡散層820Bにおける切欠き溝821aは、導電性シート860の各貫通孔865に対応する部分を中心として、蜘蛛の巣状に形成されている。このようにすれば、アノード側拡散層820Bにおいて、貫通孔865に対向する部分から導入された燃料ガスは、切欠き溝821aを流れて、面方向に沿って蜘蛛の巣状に広がりつつ、アノード側拡散層820B内部に拡散するので、アノード側拡散層820Bにおいて燃料ガスの不拡散領域が生じることを抑制することができる。その結果、触媒層820Aに燃料ガスを略均一に供給することができ、燃料電池全体の発電効率を向上させることができる。このように、本実施例の燃料電池100Aは、アノード820において、燃料ガスが分散しやすいガス分散構造となっている。切欠き溝821aは、請求項における溝に該当する。
【0081】
C.第3実施例:
図16は、本発明の第3実施例に係る燃料電池100Bにおけるアノード側拡散層820B1の構造を説明する説明図である。この図16は、第1実施例の燃料電池100の図6(A)の拡大部分に対応する。本実施例の燃料電池100Bは、基本的に第1実施例の燃料電池100と同様の構成であるが、第1実施例のアノード側拡散層820Bとは、異なるアノード側拡散層820B1を備える。燃料電池100Bにおいて、第1実施例と同様の構成の部分には、同じ符号を付し、説明を省略する。
【0082】
本実施例の燃料電池100Bにおいて、アノード側拡散層820B1は、導電性シート860の各貫通孔865に対応する部分を中心として、面方向に沿って遠ざかる方向に、または、面方向に沿って放射状に徐々に透気度が高くなるように形成されている。具体的には、アノード側拡散層820B1は、導電性シート860の各貫通孔865に対応する部分を中心として、面方向に沿って遠ざかる方向に、気孔率が大きくなるように形成されている。このようにすれば、アノード側拡散層820Bにおいて、貫通孔865に対向する部分から導入された燃料ガスは、面方向に沿って放射状に広がりつつ、アノード側拡散層820B内部に拡散するので、アノード側拡散層820Bにおいて燃料ガスの不拡散領域が生じることを抑制することができる。その結果、触媒層820Aに燃料ガスを略均一に供給することができ、燃料電池全体の発電効率を向上させることができる。なお、上記では、アノード側拡散層820B1の透気度を、気孔率を変化させることにより変化させているが、これに限られず、アノード側拡散層820B1の透気度を、アノード側拡散層820B1内部の細孔の口径、アノード側拡散層820B1の材質、または、これらの組み合わせによって、変化させるようにしてもよい。このように、本実施例の燃料電池100Bは、アノード820において、燃料ガスが分散しやすいガス分散構造となっている。
【0083】
D.変形例:
なお、本発明では、上記した実施の形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様にて実施することが可能である。
【0084】
D1.変形例1:
上記実施例の燃料電池において、アノード側拡散層は、アノード側多孔体840より透気度が高いものが用いられていたが、本発明はこれに限られるものではなく、アノード側多孔体840は、アノード側拡散層より透気度が高いものを用いてもよい。このようにすれば、アノード側多孔体840において、燃料ガスが分散しやすくなり、導電性シート860の各貫通孔865に分散して燃料ガスを供給することができる。
【0085】
D2.変形例2:
上記実施例の燃料電池は、酸化ガスとして、空気を用いているが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、酸化ガスとして、酸素を含めばよく、酸素以外のガスが混合した所定の混合ガスを用いることができる。
【0086】
D3.変形例3:
上記実施例の燃料電池は、アノードデットエンド運転型の燃料電池であり、燃料ガスを循環ポンプ等で循環させる必要がなく、省スペース化、または、循環のためのポンプ動力を削減することができ、エネルギ効率を向上させることができる。従って、上記実施例の燃料電池は、自動車、電車、飛行機、船舶、リニアモータカなどの移動体に搭載するのに好適である。
【0087】
D4.変形例4:
上記実施例の燃料電池は、アノードデットエンド運転型の燃料電池であるが、本発明はこれに限られるものではなく、燃料ガスを循環させる循環型燃料電池に適用してもよい。
【0088】
D5.変形例5:
上記実施例の燃料電池は、固体高分子型の燃料電池であったが、本発明は、これに限られず、水素分離膜型燃料電池、溶融炭酸塩型燃料電池、固体酸化物型燃料電池、リン酸型燃料電池等、種々の燃料電池に適用可能である。
【0089】
D6.変形例6:
上記実施例の燃料電池において、導電性シートの各貫通孔の口径は、同様であったが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、導電性シートの各貫通孔において、酸化ガス供給スリット440(すなわち、カソード830に酸化ガスを供給するための酸化ガス供給口)からの相対距離が遠くなる程、言い換えれば、酸化ガス排出スリット444(すなわち、カソード830から酸化ガスを排出するための酸化ガス排出口)からの相対距離が近くなるほど、その口径が大きくなるようにしてもよい。
【0090】
D7.変形例7:
上記実施例の燃料電池において、導電性シートは、金シートが用いられているが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、導電性シートは、金以外の導電性部材で形成されていてもよく、例えば、チタン、ステンレスで形成されてもよい。この場合、導電性シートは、アノード側多孔体840の一方の面に、熱圧着、ろう付け、溶接などによって接合される。
【0091】
また、導電性シートを、ポリマー型導電性ペーストで形成してもよい。このポリマー型導電性ペーストは、例えば、銀ペースト、カーボンペースト、銀・カーボンペーストなどがある。この場合、ポリマー型導電性ペーストをシート状にした後に、アノード側多孔体840の一方の面に熱圧着により接合するようにしてもよい。
【0092】
D8.変形例8:
上記実施例の燃料電池において、アノード側に供給された燃料ガスを外部に排出しない閉塞構造(アノードデットエンド構造)となっているが、本発明はこれに限られるものではなく、アノード820側から燃料ガスを排出するための機構、例えば、燃料ガス排出口や燃料ガス排出流路、燃料ガス排出マニホールドなどを有していてもよい。この場合、この燃料電池は、燃料電池の外部に、燃料ガス排出マニホールドから排出される燃料ガスを遮断可能な遮断弁(以下では、遮断弁Nと呼ぶ)を備え、その遮断弁Nを閉弁した状態で、アノード側多孔体840(アノード側)に供給した燃料ガスのほぼ全量を、アノード820に吸収させ、消費させる作動モードを有していてもよい。このようにしても上記実施例の燃料電池と同様の効果を奏することができる
【0093】
D9.変形例9:
上記実施例の燃料電池では、アノード820に供給された燃料ガスが、ほぼ全量、アノードで消費される構造を採用しているが、係る構造での運転が可能としているアノード820への燃料ガス供給の流路構成としては、種々の構成が採用可能である。以下では、上記実施例の燃料電池のように、アノード820にシャワー状に燃料ガスを供給する構成(シャワー流路タイプとも呼ぶ)の変形例を以下に説明する。
【0094】
シャワー流路の第1変形例:図17は、シャワー流路の第1変形例の構成を示す説明図である。第1変形例は、上記実施例の導電性シート860に相当する分散板2100がMEA2000と一体として形成された構成を有している。MEA2000は、アノード2200と電解質膜2300とを有している。また、分散板2100には、所定間隔で多数の貫通孔(オリフィス)2110が設けられている。
【0095】
図18は、分散板2100の機能を説明する説明図である。燃料ガスは、分散板2100によって水素ガスを消費するアノード2200から隔離された上流側の流路で分配される。上流側の流路で分配された燃料ガスは、分散板2100に設けられた貫通孔2110を通って、燃料ガス消費層であるアノード2200に局所的に供給される。つまり、本変形例の燃料電池では、燃料ガスは、貫通孔2110の存在位置に対応する部位のアノード2200に直接的に供給される。こうした局所的な燃料ガスの供給を実現する構成としては、例えば、燃料ガスが、アノード2200の他の領域を経由することなく、燃料ガスを消費する部位に直接供給する経路を有する構成、あるいはアノード2200の面外の離れた方向(好ましくはアノード2200から隔離された流路)からアノード2200に向かって、主として垂直な方向に燃料ガスを供給する構成なども採用可能である。一方、アノード2200は、窒素の滞留が発生しにくい形状とすればよい。例えば、平滑な面(フラットな面)から構成し、電解質膜2300側に凹部などを有しない形状とすればよい。
【0096】
分散板2100の貫通孔2110の径およびピッチは、実験的に定めることができるが、例えば所定の運転状態(たとえば定格運転状態)において、貫通孔2110を通過する燃料ガスの流速が窒素ガスの拡散による逆流を十分に抑制できるようにしても良い。係る条件が成立するように、貫通孔2110における十分な流速あるいは十分な圧力損失が発生するように、貫通孔2110の間隔と流路断面積を設定すればよい。たとえば、固体高分子型燃料電池では、分散板2100の開口率を1%程度以下とすることで、十分な流速あるいは十分な圧力損失が発生することが確認された。このような開口率は、循環型の燃料ガス流路と比較すると1桁から2桁程度少ないため、循環型の燃料ガス流路にコンプレッサを用いて燃料ガスの流量を確保する構成とは本質的に異なっている。本実施例および変形例では、燃料タンクからの高圧水素を直接(あるいは所定の高圧圧力まで調圧弁で調圧した状態で)、燃料電池に導くことにより、開口率の低い構造でも十分な燃料ガスを確保している。
【0097】
シャワー流路の第2変形例:図19は、シャワー流路の第2変形例の構成を示す説明図である。この変形例では、アノード2200と電解質膜2300とを備えたMEA2201上に配置される分散板2101を、緻密な多孔体を用いて実現している。分散板2101の多孔体の開口率は、十分な流速あるいは十分な圧力損失が発生するように選択されている。細孔を用いた場合には、細孔毎に、いわば離散化して、燃料ガスが局所的に供給されるのに対して、多孔体を用いた場合には、連続的に燃料ガスを供給することができるという利点を有している。また燃料ガスのアノード2200への供給が一層均一化されるという利点も得られる。緻密な多孔体は、カーボン粉を焼結することによって製造しても良いし、カーボンや金属粉をバインド剤を用いて固めることにより製造することも可能である。多孔体は、連続多孔体であれば良く、厚さ方向への連続性を確保して面方向の連続性を確保しない異方性を備えたものとしても良い。多孔体の開口率については、シャワー流路の第1変形例と同様に決定すればよい。
【0098】
シャワー流路の第3変形例:図20は、シャワー流路の第3変形例として、プレスメタルを用いて構成された分散板2102を示す説明図である。図21は、図20におけるC−C断面を示す模式図である。分散板2102は、分散板2102の上流側の流路を形成するための突部2102tを備え、この突部2102tの側面には細孔2112が形成されている。この分散板2102は、電解質膜2300の両側にアノード2200とカソード2400とを備えたアノード2200側に配置されており、図21に示すように、突部2102tを利用して、分散板2102の上流側の流路を一体に形成している。燃料ガスは、この突部2102tの側面に形成された細孔2112を介して、アノード2200に供給される。
【0099】
係る構成によれば、分散板2102をプレス加工により容易に形成することができるうえ、分散板2102上流の流路を簡易に形成できるという利点も得られる。細孔2112を通過した燃料ガスは、突部2102t内部の空間を経て、アノード2200に到るので、分散性を十分に確保することができる。細孔2112は、プレス加工に拠って形成しても良いし、突部2102tの形成の前工程または後工程において、放電加工など、他の手法により形成しても良い。細孔2112による開口率については、シャワー流路の第1変形例と同様に決定すればよい。
【0100】
シャワー流路の第4変形例:図22は、シャワー流路の第4変形例として、分散板2014hmの内部に、流路を形成した構成を示す説明図である。この変形例の分散板2014hmは、長方形の形状の分散板2014hmの短手方向に形成された複数の流路2142nと、この流路2142nから、分散板2014hmの厚さ方向に設けられ、図示しないアノード側に開披した多数の細孔2143nとを備える。分散板2014hmは、電解質膜2300の両側に水素側電極(図示せず)とカソード2400とを備えたMEA2203の水素側電極側に配置されており、分散板2014hmを介して、燃料ガスの供給を受ける。係る構成に拠れば、各細孔2143nまでの流路を、個別に用意できるという利点が得られる。なお、図22では、細孔2143nの配置は千鳥状としたが、格子状であってもよいし、ある程度ランダムに配置しても良い。
【0101】
シャワー流路の第5変形例:図23は、シャワー流路の第5変形例として、パイプを使用して分散板2014hpを形成した構成を示す説明図である。分散板2014hpは、図23に示したように、矩形のフレーム2140を備え、その短手方向に亘って、中空の多数のパイプ2130を備えている。このパイプ2130の表面には、複数の細孔2141nが形成されている。この分散板2014hpは、アノード2200とで電解質膜2300とを備えたMEA2204のアノード2200上に設置される。分散板2014hpのフレーム2140に用意されたガス流入口から燃料ガスを供給すると、燃料ガスは、分散板2014hpの各パイプ2130の内部を通り、細孔2141nから、アノード2200へと分配される。係る構成によれば、燃料ガスを均一に分散できるのに加えて、分散板2014hpを構成するのに細孔2141nを除いて穴加工を行なう必要がないという利点が得られる。細孔2141nは、アノード2200側に向けて配置して良いし、反対側に向けて配置してもよい。後者の場合には、燃料ガスの分散性は一層改善される。
【0102】
以上説明したように、燃料ガスをアノード2200に分散させつつ導く構造であれば、種々の構成を採用することができる。分散板としては、多孔体やプレスメタルに限られず、燃料ガスを分配しつつアノード2200に導くように構成されていればよい。
【0103】
D10.変形例10:
上記実施例の燃料電池では、燃料ガス供給流路は、多孔体を用いた多孔体タイプの流路であったが、燃料ガス供給流路の形態は種々の構成を採ることができる。以下では、燃料ガス供給流路の変形例を説明する。
【0104】
図24は、いわゆる分岐流路タイプの燃料ガス供給流路を用いた構成例を示す模式図である。図示する燃料ガス供給流路は、上記実施例の燃料電池におけるアノード側多孔体840に代えて用いられる流路形成部材5000に、櫛歯状に形成されている。具体的には、ガス流路は、燃料ガスを導入する主流路5010、この主流路から分岐し、主流路5010とは交差する方向に形成された複数本の副流路5020、この副流路から更に櫛歯状に分岐する櫛歯流路5030から形成されている。主流路5010および副流路5020は、先端の櫛歯流路5030と比べて流路断面積を十分に確保しているので、流路形成部材5000の面内の圧力分布は、アノード側多孔体840と同程度もしくはそれ以下となっている。
【0105】
この流路形成部材5000は、カーボンや金属などを用いて形成することができる。カーボンを用いる場合は、型を用いてカーボン粉を高温または低温で焼結することにより、図24に示した流路を備えた流路形成部材5000を得ることができる。金属を用いる場合には、金属プレートから溝を削り出すことにより、同様の流路を備えた流路形成部材5000を形成しても良いし、あるいはプレス加工により、図示する流路を備えた流路形成部材5000を得ても良い。なお、流路形成部材5000は、単品として設ける必要はなく、他の部材、例えばセパレータと一体に形成することも可能である。
【0106】
なお、この流路形成部材5000は、アノード側多孔体840ごと代えて用いてもよいが、アノード側多孔体840および導電性シート860ごと代替してもよい。この場合には、櫛歯流路5030を十分に細い流路とし、副流路5020から、いわば毛細血管のように細かくかつ多数に分岐させておけばよい。また、図24では、主流路5010を流路形成部材5000の一縁部に沿って設けたが、流路形成部材5000面内の燃料ガスの圧力差を小さくするために、主流路5010を複数の縁部に設けて、副流路5020の長さを短くしたり、あるいは主流路5010を流路形成部材の中心に設けて、副流路5020を主流路5010の左右に配置しても良い。同様に、櫛歯流路5030は、副流路5020の両側に設けても差し支えない。
【0107】
次に、図25に基づいて、サーペンタイン型の流路構成について説明する。図25は、流路が葛籠折れの形状をとっているサーペンタイン型流路を備えた流路形成部材の構成例を模式的に示す模式図である。図25(A)は、燃料ガスの流路が単一のタイプの流路形成部材5100を例示し、図25(B)は、燃料ガス流路が複数本統合されたタイプの流路形成部材5200を例示している。
【0108】
図示するように、図25(A)に例示した流路形成部材5100は、燃料ガスの流路を囲う外壁のうち対向する外壁5110,5115から、内側に向けて交互に延長された複数の流路壁5120を備える。流路壁5120で区切られた部分が連続する流路となっている。この一端に流入口5150が形成されており、燃料ガスはここから流路に供給される。この流路形成部材5100は、図24の流路形成部材5000と同様、上記実施例のアノード側多孔体840に代えて用いられる。
【0109】
図25(B)は、このサーペンタイン型流路が、複数本の流路の束として構成された例を示している。この場合、外壁5210および5215から内側に向けて交互に延長された複数の流路壁5220の間に、外壁5210,5215とは連設されていない仕切壁5230,5240が設けられている。また、流路の入り口には、流入口5250が形成されている。流入口5250から流入した燃料ガスは、仕切壁5230,5240を備えた幅広のサーペンタイン型流路を流れて、流路形成部材5200の面方向にくまなく行き渡る。この流路形成部材5200は、図24の流路形成部材5000と同様、上述した実施例の多孔体840に代えて用いられる。
【0110】
図25に示した流路形成部材5100,5200は、図24に示した櫛歯型の流路を備えた流路形成部材5000と同様に、カーボンや金属から形成される。その形成方法も同様である。これらの流路形成部材5100,5200は、単品として設ける必要はなく、他の部材、例えばセパレータと一体に形成することも可能である。
【0111】
D11.変形例11:
図26は、燃料ガス供給流路の変形例の一つとして、循環路タイプの燃料電池6000の内部構成を模式的に示す説明図である。図示するように、本変形例の燃料電池6000では、アノード側セパレータ6200に、燃料ガス供給流路となる凹部6220と燃料ガス入口ポート6210と規制板6230とが設けられている。燃料ガス供給流路となる凹部6220は、アノード側セパレータ6200のアノード6100と対向する領域に亘って形成されている。アノード側セパレータ6200における燃料ガス入口ポート6210には、ノズル6300が、凹部6220に向けて燃料ガスを噴出可能に取り付けられている。このノズル6300から燃料ガスを噴出することによって、燃料ガス入口ポート6210から、凹部6220内に燃料ガスが供給される。規制板6230は、燃料ガスの流れ方向を規制する部材であり、ノズル6300の近傍から、凹部6220の中心付近に向けて、凹部6220の底面から立設されている。規制板6230のノズル6300に近い側の端部は、ノズル6300の側面形状に合わせて湾曲され、ノズル6300との間で通路Aを形成している。
【0112】
このような燃料電池6000では、燃料ガス入口ポート6210から供給された燃料ガスが、ノズル6300の噴射孔6320から燃料ガス供給流路(凹部6220)内に噴射されると、この燃料ガスは、アノード側セパレータ6200の凹部6220の内側壁、および、規制板6230によって流れ方向が規制され、図中に白抜き矢印で示したように、アノード6100の表面に沿って、図示した上流側から下流側に流れる。このとき、ノズル6300から噴出する高速の燃料ガスによって生じるエゼクタ効果により、下流側の燃料ガスおよびリークガス(不活性ガス)を含む流体は、規制板6230の一方の端部とノズル6300との間の隙間(通路A)から吸引され、上流側に循環する。こうすることによって、燃料ガス供給流路、および、アノード6120表面における上記流体の滞留を抑制することができる。
【0113】
なお、上記変形例の燃料電池6000では、エゼクタ効果を利用して、上記流体をアノード6100の表面に沿った方向に循環させるものとしたが、燃料電池の内部において、アノードの表面に沿った方向に上記流体を循環させることが可能な構造であれば、他の構成を用いても良い。例えば、燃料電池6000において、ノズル6300や規制板6230の代わりに、アノード側セパレータ6200や、アノード6100の面内等、燃料ガス供給流路となり得る部位に、整流板を設けるようにし、この整流板、および燃料ガスの流れによって、上記流体をアノード6100の表面に沿った方向に循環させるようにしてもよい。あるいは凹部6220などのガス流路に、微小なアクチュエータ(例えばマイクロマシン)を循環路に沿って組み込んで、燃料ガスの循環を起こさせる構造としても良い。このほか、凹部6220内に温度差を設けて対流を利用して循環を起こさせる構成も考えられる。
【0114】
D12.変形例12:
図27及び図28を用いて、上記実施例の燃料電池における燃料ガス供給形態の変形例について説明する。図27は、燃料ガス供給形態の第1変形例としての燃料ガスの流れを説明する説明図である。図28は、燃料ガス供給形態の第2変形例についての燃料ガスの流れを説明する説明図である。まず、両変形例に共通する構成から説明する。これら2つの燃料電池では、発電体は、フレーム7550とMEA7510とアノード側多孔体7540を備える。フレーム7550の中央部には、MEA7510を嵌め込むための開口部7555が設けられており、この開口部7555を覆うように、MEA7510が配置される。アノード側多孔体7540はMEA7510の上に配置される。また、フレーム7550の外周部には、燃料ガスや空気、あるいは冷却水が通る貫通孔が複数設けられているのは、上述した実施例と同一である。
【0115】
燃料ガス供給形態の第1変形例および第2変形例は、上記実施例と比較して、アノード側多孔体において、2つの方向から燃料ガスが供給される点で異なる。燃料ガス供給形態の第1変形例と第2変形例は、全体構造はほぼ同一であり、燃料ガスが、図示しないセパレータを介して供給される点は、同一であるが、アノード側多孔体7540への燃料ガスの供給方向が互いに異なっている。燃料ガス供給形態の第1変形例では、図27に示すように、アノード側多孔体7540に燃料ガスを供給するための一つの燃料ガス供給スリット7417aは、フレーム7550の開口部7555の外縁部のうち、一つの長辺近傍に設けられ、もう一つの燃料ガス供給スリット7417bは、対向するもう一つの長辺近傍に配置されている。他方、第2の変形例では、図28に示したように、燃料ガス供給スリット7517a及び7517bは、それぞれ、開口部7555の対向する2つの短辺に隣接して配置されている。
【0116】
燃料ガス供給形態の第1変形例では、燃料ガスは、燃料ガス供給スリット7417aや燃料ガス供給スリット7417bを通り、アノード側多孔体7540の中で長辺端部側から中央方向、すなわち矢印7600aの方向(図27において上から下)へ、あるいは矢印7600bの方向(図28において下から上)に供給される。このとき、燃料ガス供給スリット7417aを通ってアノード側多孔体7540に供給された燃料ガスと燃料ガス供給スリット7417bを通ってアノード側多孔体7540に供給された燃料ガスは、モジュールの中央付近でぶつかり混合する。一方、燃料ガス供給形態の第2変形例では、燃料ガスは、燃料ガス供給スリット7517aや燃料ガス供給スリット7517bを通り、アノード側多孔体7540の中で短辺端部側から中央方向、すなわち矢印7700aの方向(図28において左から右)及び矢印7700bの方向(図28において右から左)に流れる。燃料ガス供給形態の第2の変形例でも、燃料ガス供給スリット7517aを通ってアノード側多孔体7540に供給された燃料ガスと燃料ガス供給スリット7517bを通ってアノード側多孔体7540に供給された燃料ガスは、モジュールの中央付近でぶつかり混合する。
【0117】
以上説明した燃料ガス供給形態の第1と第2の変形例によれば、燃料ガスは、アノード側多孔体7540に対して、対向する2つの辺の端部側に設けられた燃料ガス供給スリット7417aおよび7417b(あるいは燃料ガス供給スリット7517aおよび7517b)から、対向する2方向に供給される。対向流として供給された燃料ガスは、アノード側多孔体7540の中央部でぶつかって互いに混合するので、リークガス(不活性ガス)が局在化しにくいという利点が得られる。したがって、燃料電池の発電効率を向上させることができる。もとより、対向する2辺から燃料ガスを供給することにより、アノード側多孔体7540内での燃料ガスの分布の偏りが抑制されるという利点も得られる。なお、燃料ガス供給形態の第1と第2の変形例では燃料ガス供給流路として多孔体を用いているが、燃料ガス供給流路は多孔体に限られず、後述する種々の供給方式が利用可能である。
【0118】
D13.変形例13:
上記実施例の燃料電池の始動時制御について説明する。本変形例の燃料電池では、始動時において、アノード側の燃料ガス流路に燃料ガスの供給が開始され、所定時間TA経過後、初めて負荷を接続し、燃料電池から電流を取り出している。このようにすれば、燃料電池の発電終了後にカソード側からアノード側にリークし滞留しているリークガス(窒素ガスまたは不活性ガス)は、所定時間TAの間に、燃料ガスの圧力で、カソード側に押し返され、リークガス滞留量が減少してから負荷が接続されることになる。したがって、アノード820において、燃料電池の始動時に燃料ガスが欠乏した状態で運転されるという事態の発生を抑制することができる。なお、この場合の「始動」とは、燃料電池に反応ガス(燃料ガスおよび酸化ガス)を供給すると共に、燃料電池に負荷を接続することをいう。燃料電池の停止時にリークガスがアノード側に滞留するのは、燃料ガスの供給が停止された結果、アノード側の燃料ガス圧力が低下するためである。特にアノードデッドエンドの構成を採用した場合、燃料ガスの供給によるリークガスの排出路への排出が期待できない。したがって、燃料ガスの供給を開始してから、負荷を接続するまでに十分な時間TAを確保することは有効である。
【0119】
燃料電池の始動時において、燃料ガスの供給量および電気的な負荷を接続するまでの所定時間TAのうち少なくとも一方を、燃料電池の運転開始時におけるリークガス滞留量に基づいて決定する構成とすることも可能である。このリークガス滞留量は、例えば、燃料電池において前回の起動終了時から今回の始動時までの燃料電池停止期間や燃料電池の温度から推定するようにしてもよい。燃料電池の温度は、例えば、燃料電池を冷却する冷媒の温度等に基づいて検出することができる。このようにすれば、燃料電池の始動時間の短縮化を実現しつつ、アノード側の燃料ガス流路におけるリークガス滞留量を減少させることができる。
【0120】
また、燃料電池の始動時に負荷を接続するタイミングを、アノード側の水素濃度に基づいて決定しても良い。上記実施例の燃料電池において、水素濃度センサをアノード側の燃料ガス流路内の所定部位に取り付け、始動時において、アノード側の燃料ガス流路に燃料ガスの供給が開始された後、水素濃度センサから検出される水素濃度値を監視する。水素濃度値が、所定の閾値より高くなった場合に、電気的な負荷を接続するものとすれば、アノード820において、水素欠乏運転となることを抑制することができる。このほか、アノード側の圧力や温度から、電気的な負荷の接続のタイミングを求める構成なども可能である。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】燃料電池システム1000および第1実施例の燃料電池100の説明図である。
【図2】燃料電池100の側面図である。
【図3】シール一体発電アセンブリ200の正面図(図2においてシール一体発電アセンブリ200を右側から見た図)である。
【図4】図3におけるA−A断面の一部を示す断面図である。
【図5】導電性シート860の正面図である。
【図6】アノード側拡散層820Bの様子を表す図である。
【図7】セパレータ600のうちカソードプレート400の形状を示す説明図である。
【図8】セパレータ600のうちアノードプレート300の形状を示す説明図である。
【図9】セパレータ600のうち中間プレート500の形状を示す説明図である。
【図10】セパレータ600の正面図である。
【図11】燃料電池100内における反応ガスの流れを示す説明図である。
【図12】図11のX領域の拡大図である。
【図13】比較例1としての燃料電池であって比較的透気度が高いアノード側拡散層820Bにおける燃料ガスの拡散の様子を示す図である。
【図14】比較例2としての燃料電池であって切欠き溝821を有さないアノード側拡散層820Bにおける燃料ガスの拡散の様子を示す図である。
【図15】本発明の第2実施例に係る燃料電池100Aにおける切欠き溝821aの構造を説明する説明図である。
【図16】本発明の第3実施例に係る燃料電池100Bにおけるアノード側拡散層820B1の構造を説明する説明図である。
【図17】シャワー流路の第1変形例の構成を示す説明図である。
【図18】分散板2100の機能を説明する説明図である。
【図19】シャワー流路の第2変形例の構成を示す説明図である。
【図20】シャワー流路の第3変形例としてプレスメタルを用いて構成された分散板2102を示す説明図である。
【図21】図20におけるC−C断面を示す模式図である。
【図22】シャワー流路の第4変形例として分散板2014hmの内部に流路を形成した構成を示す説明図である。
【図23】シャワー流路の第5変形例としてパイプを使用して分散板2014hpを形成した構成を示す説明図である。
【図24】いわゆる分岐流路タイプの燃料ガス供給流路を用いた構成例を示す模式図である。
【図25】流路が葛籠折れの形状をとっているサーペンタイン型流路を備えた流路形成部材の構成例を模式的に示す模式図である。
【図26】燃料ガス供給流路の変形例の一つとして循環路タイプの燃料電池6000の内部構成を模式的に示す説明図である。
【図27】燃料ガス供給形態の第1変形例としての燃料ガスの流れを説明する説明図である。
【図28】燃料ガス供給形態の第2変形例についての燃料ガスの流れを説明する説明図である。
【図29】本発明の燃料電池の一つの構成例(その1)を示す図である。
【図30】本発明の燃料電池の一つの構成例(その2)を示す図である。
【符号の説明】
【0122】
24…MEA
100,100A,100B…燃料電池
110…酸化ガス供給マニホールド
120…酸化ガス排出マニホールド
130…燃料ガス供給マニホールド
150…冷却媒体供給マニホールド
160…冷却媒体排出マニホールド
200…シール一体発電アセンブリ
300…アノードプレート
322…マニホールド形成部
350…燃料ガス供給スリット
400…カソードプレート
400同様…カソードプレート
422…マニホールド形成部
440…酸化ガス供給スリット
444…酸化ガス排出スリット
500…中間プレート
522〜526…マニホールド形成部
542…酸化ガス導入流路形成部
544…酸化ガス排出流路形成部
546…燃料ガス導入流路形成部
550…冷却媒体流路形成部
600…セパレータ
630…燃料ガス導入流路
650…酸化ガス導入流路
660…酸化ガス排出流路
670…冷却媒体流路
700…シール部材
710…支持部
720…リブ
800…積層部材
810…電解質膜
820…アノード
820A…触媒層
820B,820B1,820Ba…アノード側拡散層
821,821a…切欠き溝
830…カソード
830A…触媒層
830B…カソード側拡散層
840…アノード側多孔体
840…多孔体
850…カソード側多孔体
860…導電性シート
865…貫通孔
1000…燃料電池システム
1100…高圧水素タンク
1110…水素供給配管
1120…水素遮断弁
1120…遮断弁
1130…レギュレータ
1200…エアコンプレッサ
1210…空気供給配管
1220…排出配管
1300…制御部
2000…MEA
2014hm…分散板
2014hp…分散板
2100…分散板
2101…分散板
2102…分散板
2102t…突部
2110…貫通孔
2112…細孔
2130…パイプ
2140…フレーム
2141n…細孔
2142n…流路
2143n…細孔
2200…アノード
2201…MEA
2203…MEA
2204…MEA
2300…電解質膜
2400…カソード
5000…流路形成部材
5000面…流路形成部材
5010…主流路
5020…副流路
5030…櫛歯流路
5100…流路形成部材
5110…外壁
5120…流路壁
5150…流入口
5200…流路形成部材
5210…外壁
5220…流路壁
5230…仕切壁
5250…流入口
6000…燃料電池
6100…アノード
6120表面…アノード
6200…アノード側セパレータ
6210…燃料ガス入口ポート
6220…凹部
6230…規制板
6300…ノズル
6320…噴射孔
7417a…燃料ガス供給スリット
7417b…燃料ガス供給スリット
7510…MEA
7517a…燃料ガス供給スリット
7517b…燃料ガス供給スリット
7540…アノード側多孔体
7550…フレーム
7555…開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池であって、
電解質膜の一方の面側に設けられ、分散して点在し、燃料ガスが導入される複数のガス導入スポットを有するアノードと、
前記電解質膜の他方の面側に設けられるカソードと、
前記燃料ガスが通過可能な複数のガス通過部を有し、各ガス通過部を介して前記アノードの各ガス導入スポットにそれぞれ前記燃料ガスを導入するためのガス導入部と、
を備え、
前記アノードは、前記燃料ガスが、各ガス導入スポットからアノード面に沿って遠ざかる方向に分散しやすいガス分散構造であることを特徴とする燃料電池。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料電池において、
前記アノードは、
前記電解質膜の一方の面の外側に設けられる触媒層と、前記触媒層の外側に設けられるガス拡散層と、を備え、
少なくとも、前記ガス拡散層は、前記複数のガス導入スポットを有し、前記ガス分散構造であることを特徴とする燃料電池。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の燃料電池において、
前記アノードは、前記ガス分散構造として、各ガス導入スポットから前記反対面に沿って遠ざかる方向に向かって形成される溝を有することを特徴とする燃料電池。
【請求項4】
請求項3に記載の燃料電池において、
前記溝は、前記ガス導入スポットを中心として、前記反対面に沿って、放射状、若しくは、蜘蛛の巣状に形成されていることを特徴とする燃料電池。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の燃料電池において、
前記アノードは、前記ガス分散構造として、各ガス導入スポットから前記反対面に沿って遠ざかる方向に、透気度が低くなる構造であることを特徴とする燃料電池。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の燃料電池において、
前記ガス導入部は、
前記アノードの外側に設けられ、ガス不透過であると共にシート状の導電性シート部であり、
前記ガス導入部の前記ガス通過部は、
前記導電性シート部において、シート面に沿って分散して配置された複数の貫通孔であり、
さらに、前記燃料電池は、
前記導電性シート部の外側に設けられ、前記燃料ガスを前記導電性シート部の面に沿った方向に流すと共に、前記燃料ガスを前記導電性シートの各貫通孔に分散して供給するための燃料ガス供給流路を形成する流路形成部を備えることを特徴とする燃料電池。
【請求項7】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の燃料電池において、
前記ガス導入部は、
内部を前記燃料ガスが通過するパイプ状部材であり、
前記ガス導入部の前記ガス通過部は、
前記パイプ状部材において、分散して配置された複数の貫通孔であることを特徴とする燃料電池。
【請求項8】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の燃料電池において、
前記ガス導入部は、
内部を前記燃料ガスが通過するパイプ状部材であり、
前記ガス導入部の前記ガス通過部は、
前記パイプ状部材において、端部の開口部であることを特徴とする燃料電池。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の燃料電池において、
前記ガス導入部から前記アノードに供給された前記燃料ガスのほぼ全量をアノードで消費することを特徴とする燃料電池。
【請求項10】
請求項1ないし請求項9のいずれかに記載の燃料電池において、
前記アノード側は、前記アノードに供給された燃料ガスを外部に排出しない閉塞構造であることを特徴とする燃料電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公開番号】特開2009−26512(P2009−26512A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−186615(P2007−186615)
【出願日】平成19年7月18日(2007.7.18)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】