説明

燃焼器に流入する燃料の組成を決定するための方法及びシステム

【課題】燃焼器(28)に流入する燃料の組成(16)を決定するための方法及びシステムを開示する。
【解決手段】本方法は、燃焼器(28)に流入する燃料の温度(24)を測定するステップと、燃料特性及び燃料ノズル(26)有効面積(Ae)を用いて第1の推定総燃料流量を算出するステップと、空力加熱サイクルモデル(14)分析を用いて第2の推定総燃料流量を算出するステップとを含む。第1の推定総燃料流量は、第2の推定総燃料流量と比較され、燃料の低位発熱量が、第1の推定総燃料流量と第2の推定総燃料流量との差から求められる。ガスタービン(10)を制御するための方法及びシステムは、該ガスタービン(10)の性能に対する燃料組成(16)の影響を算出するステップと、1以上の性能パラメータを1以上のパラメータ限界値(40)と比較するステップとを含む。ガスタービン(10)の1以上の機械制御装置(42)は、比較の結果に基づいて変更される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、ガスタービンに関する。より具体的には、本願発明は、燃料組成情報の特定、並びにガスタービンを制御するために用いるサイクル及び燃焼モデルへの該燃料組成情報の統合に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンの性能は、ガスタービン燃焼システムに供給する燃料の組成に影響を受けやすい。燃料組成における非補償形変化は、燃焼不安定性(ダイナミックス)、NOx及びCOを含む排出量の増加、希薄吹消え、並びに保炎マージンの低減又は逆火を招くおそれがある。燃料組成の変化を適時に把握することは、ガスタービン制御システムによる燃焼システムの最適化に役立てることができる。燃料組成の変化に対する補償を達成する1つの方法は、様々な方法によって達成することができる燃料組成の直接測定を含むが、それら様々な方法の多くは、費用がかかり、応答が緩慢であり、或いはそれとは別に制御目的には望ましくないものである。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明は、燃焼器に流入する燃料の組成を決定するための方法及びシステムを提供することによって上述の問題を解決する。本方法は、燃焼器に流入する燃料の温度及び圧力を測定するステップと、燃料特性及び燃料ノズル有効面積(Ae)を用いて第1の推定総燃料流量を算出するステップと、空力加熱サイクルモデル分析を用いて第2の推定総燃料流量を算出するステップとを含む。第1の推定総燃料流量は、第2の推定総燃料流量と比較され、燃料の低位発熱量における変化が、第1の推定総燃料流量と第2の推定総燃料流量との差から推測される。
【0004】
さらに開示しているのは、ガスタービンを制御するための方法及びシステムであり、本方法は、ガスタービンの性能に対する燃料組成の影響を算出するステップと、1以上の性能パラメータを1以上のパラメータ限界値と比較するステップとを含む。ガスタービンの1以上の機械制御装置は、比較の結果に基づいて変更される。
【0005】
これらの及びその他の利点及び特徴は、図面と共に行う以下の説明から一層明らかになるであろう。
【0006】
本発明とみなされる主題は、特許請求の範囲に具体的かつ明確に記載されている。本発明の上記その他の目的、特徴及び利点は、添付図面と以下の詳細な説明から明らかになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下の詳細な説明は、図面を参照して実施例によって、本発明の実施形態をその利点及び特徴と共に説明している。
【0008】
図1を参照すると、ガスタービン10は、該ガスタービン10全体にわたって分散配置した複数のデータセンサ11を含む。データセンサ11は、ここでは例示を目的として示しているが、所望のデータを得るようにその個数及び/又は位置を変更することができる。データセンサ11は、例えば温度、圧力、速度及び発電機出力のような一連のデータ12をガスタービン10から得る。データセンサ11からのデータ12は、ベースラインすなわち予定燃料組成16と共に空力加熱サイクルモデル14に入力される。空力加熱サイクルモデル14により、例えば燃焼室圧力(Pcc)及び燃料特性20などを含む空力加熱サイクルモデル出力18が得られる。空力加熱サイクルモデル出力18、20は、燃料システムモデル22に提供される。
【0009】
幾つかの実施形態では、燃料システムモデル22への付加的入力は、燃料温度24である。燃料温度24は、図2に示すように燃焼器28の1以上の噴射装置ノズル26において測定して、燃焼室30に流入する燃料の温度を正確に測定する(必ずではないが)のが好ましい。再び図1を参照すると、燃料温度24が測定されると、この燃料温度24は、燃料システムモデル22に入力される。燃料システムモデル22は、燃焼器圧力比(PR)を算出し、この燃焼器圧力比は、燃料特性20及び燃料ノズル有効面積(Ae)と共に使用されて、燃焼器28における総燃料流量(Wtot#FSYS)が算出される。Wtot#FSYSは、空力加熱サイクルモデル14によって算出した総燃料流量Wtot#ARESと比較され、従って実際の燃料組成に基づいて算出した流量(Wtot#FSYS)を予定燃料組成16に基づいて算出した流量と比較する。Wtot#FSYSとWtot#ARESとの間の差Wtot#ERRORは、燃焼器28における燃料の低位発熱量(LHV)の変化を示し、これは燃料組成の重要な識別子である。
【0010】
LHVは、新たな予定燃料組成16として空力加熱サイクルモデル14に入力され、新たな空力加熱サイクルモデル出力18は、燃料システムモデル22に入力され、また新たなWtot#FSYSが、燃料システムモデル22によって出力される。Wtot#FSYSは再びWtot#ARESと比較され、新たなWtot#ERROR及び新たなLHVが得られる。この誤差低減処理は、Wtot#ERRORがゼロに等しくなるまで継続される。
【0011】
誤差低減が達成されると、総流量W及び圧力比PRが第1の伝達関数32に入力され、この第1の伝達関数32は、例えば排出データ34及びダイナミックスデータ36などのガスタービン10の性能に関連するデータを出力する。データ34、36は、制御機能(制御関数)38に供給され、この制御関数38は、データ34、36を限界値40と比較する。データ34、36が限界値40の1以上を超えている場合には、制御関数38は、1以上の機械制御装置42に、入口案内ベーン角度及び/又はノズル面積などのガスタービン10の運転パラメータを変化させるような変更を行わせることができる。この方法によって、燃料組成の変化に影響を受けやすいガスタービン10の制御が可能になり、燃料組成の変化に対応して機械制御装置42を迅速に調整することが可能になる。
【0012】
幾つかの実施形態では、燃料中の成分要素の相対量が決定される。この決定は、特定の燃料の保炎マージン(FHM)を想定するのに、またその想定に対応して機械制御装置40を調整するのに特に有用である。例えば、燃料が天然ガスであるガスタービン10においては、燃料中に存在する成分メタン、エタン、ブタン及びプロパンの相対量を知ることは有利である。この実施形態では、上述のようにLHVが求められると、相対成分モデル44を用いて、燃料中に存在する成分の相対量が想定される。
【0013】
別の実施形態では、1種以上の成分の直接測定を用いて、相対成分含有量を決定することができる。特定の成分を検出するように同調させた例えば光学装置46などの1以上の成分センサを、ガスタービン10の燃料ストリーム(図示せず)内に配置することができる。次に1以上の光学装置46からの出力は、相対成分モデル44に導かれ、この相対成分モデル44において、残りの成分の相対量が求められる。1以上の光学装置46からの出力はまた、相対成分モデル44を調整するように使用され、従って将来の反復における信頼を改善する。
【0014】
成分量が上述のように決定されると、FHM伝達関数48を用いて、特定の燃料組成のFHMを求める。FHMは次に、制御関数38に入力され、限界値40と比較される。制御関数38は、限界値40に対するFHMを評価し、機械制御装置42の1以上に対する調整が必要かどうかを判定し、必要である場合には変更を指示する。
【0015】
本発明を限られた数の実施形態のみに関して詳細に説明してきたが、本発明はそのような開示した実施形態に限定されるものではないことは、容易に理解されるであろう。むしろ、本発明は、前述していない変形、変更、置き換え又は均等な構成を幾つでも組み込むように修正することができるが、それらは本発明の技術思想及び技術的範囲に相応している。加えて、本発明の様々な実施形態を説明してきたが、本発明の態様は説明した実施形態の一部のみを含むことができることを理解されたい。従って、本発明は、前述の説明によって限定されると見なすべきではなく、特許請求の範囲の技術的範囲によってのみ制限される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】ガスタービンを制御するためのシステムの概略図。
【図2】ガスタービンの燃焼器の断面図。
【符号の説明】
【0017】
10 ガスタービン
12 一連のデータ
14 サイクルモデル
16 燃料組成
18、20 サイクルモデル出力
22 燃料システムモデル
24 燃料温度
26 噴射装置ノズル
28 燃焼器
30 燃焼室
32 第1の伝達関数
34 排出データ
36 ダイナミックスデータ
38 制御関数
40 限界値
42 機械制御装置
44 成分モデル
46 光学装置
48 FHM伝達関数

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼器(28)に流入する燃料の組成(16)を決定する方法であって、
前記燃焼器(28)に流入する燃料の温度(24)を測定するステップと、
燃料特性及び燃料ノズル(26)有効面積(Ae)を用いて第1の推定総燃料流量を算出するステップと、
空力加熱サイクルモデル(14)分析を用いて第2の推定総燃料流量を算出するステップと、
第1の推定総燃料流量を第2の推定総燃料流量と比較するステップと、
第1の推定総燃料流量と第2の推定総燃料流量との差から燃料の低位発熱量を求めるステップと
を含む方法。
【請求項2】
燃料中の1種以上の成分の比率を決定するステップを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記1種以上の成分の比率が、前記低位発熱量を相対成分モデル(44)に入力するステップによって決定される、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記1種以上の成分の比率が、1以上の成分センサを用いて1種以上の成分の量を測定するステップによって決定される、請求項2記載の方法。
【請求項5】
前記1種以上の成分の比率が、
1以上の成分センサを用いて前記1種以上の成分の少なくとも1つの成分の量を測定するステップと、
前記少なくとも1つの成分の量を相対成分モデルに入力するステップと、
前記低位発熱量を前記相対成分モデル(44)に入力することによって残りの所望の成分の相対量を求めるステップと
によって決定される、請求項2記載の方法。
【請求項6】
ガスタービン(10)を制御する方法であって、
前記ガスタービン(10)の燃焼器(28)に流入する燃料の組成(16)を決定するステップと、
前記ガスタービン(10)の性能に対する前記燃料組成(16)の影響を算出するステップと、
1以上の性能パラメータを1以上のパラメータ限界値(40)と比較するステップと、
前記比較の結果に基づいて前記ガスタービン(10)の1以上の機械制御装置(42)を変更するステップと
を含む方法。
【請求項7】
前記燃料の組成(16)が、
前記ガスタービン(10)の燃焼器(28)に流入する燃料の温度(24)を測定するステップと、
燃料特性及び燃料ノズル(26)有効面積(Ae)を用いて第1の推定総燃料流量を算出するステップと、
空力加熱サイクルモデル(14)分析を用いて第2の推定総燃料流量を算出するステップと、
第1の推定総燃料流量を第2の推定総燃料流量と比較するステップと、
第1の推定総燃料流量と第2の推定総燃料流量との差から燃料の低位発熱量を求めるステップと
によって決定される、請求項6記載の方法。
【請求項8】
燃料中の1種以上の成分の比率を決定するステップを含む、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記1種以上の成分の比率が、前記低位発熱量を相対成分モデル(44)に入力するステップによって決定される、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記1種以上の成分の比率が、
1以上の成分センサを用いて前記1種以上の成分の少なくとも1つの成分の量を測定するステップと、
前記少なくとも1つの成分の量を相対成分モデルに入力するステップと、
前記低位発熱量を前記相対成分モデル(44)に入力することによって残りの所望の成分の相対量を求めるステップと
によって決定される、請求項8記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−62990(P2009−62990A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−226587(P2008−226587)
【出願日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】