説明

燃焼炉装置及び燃焼方法

【課題】 一次燃焼排ガスがその発生量や成分が変動しても、これを二次燃焼炉で安定燃焼させることのできる燃焼炉装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 内部空間を燃焼室とする炉本体1に、軸線方向で上流側に可燃ガス供給管4そして下流側に排気管3が接続されており、上記軸線方向で上記可燃ガス供給管4と排気管3の間の位置に、空気、排ガス、酸素もしくはこれらの任意の組合せから成る酸素含有混合ガスのうちのいずれか一つを燃焼室内へ接線方向に噴出して上記軸線まわりに旋回流を生じせしめるノズル5,6が上記炉本体1に接続されている燃焼炉装置において、ノズルは同方向に旋回流を生ずる上流側ノズル5と下流側ノズル6とを有し、上流側ノズル5はその平均旋回径dが下流側ノズル6の平均径dよりも小さくなるように設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は燃焼炉装置及び燃焼方法に関し、特に、廃棄物の焼却や溶融の過程で発生した一次燃焼排ガスを、安定かつ低公害で二次燃焼処理するための燃焼炉装置及び燃焼方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の装置としては、特許文献1に開示されているものが知られている。この特許文献1の装置は、縦型の燃焼室へ上流側たる下部でメインバーナから、廃棄物溶融炉で発生した可燃ガスを一次空気と共に送り込んで二次燃焼させ、下流側たる上部で排気管から排ガスとして排出する。上記メインバーナと排気管との間の位置では、希釈・混合用の二次空気を吹き込む複数のノズルが接線方向に設けられていて、この二次空気によって燃焼室内に旋回流が生ずる。この旋回流により、可燃ガスは空気との撹拌が良好になされ燃焼性が向上される。
【特許文献1】特開2005−003285
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1の装置にあっては、一次燃焼排ガスの状況の変動によって二次燃焼が不安定になることがあり、その改善が望まれている。
【0004】
二次燃焼のための燃焼炉は、一次燃焼の燃焼炉あるいは溶融炉と直結されていて、発生した一次燃焼排ガスを可燃ガスとしてそのまま受け入れることが多い。
【0005】
したがって、上記燃焼炉あるいは溶融炉への廃棄物の投入量あるいはその性状等の変動により、発生する一次燃焼排ガスの排出量、そして温度や成分も変動する。しかし、上記特許文献1の装置にあっては、これらの変動に対し二次燃焼において何ら対処する手段を有していない。
【0006】
その結果、一次燃焼排ガスの上記変動によって、二次燃焼としての上記燃焼炉における燃焼が不安定となり、該燃焼炉から排出される排ガス中の有害物質の増大、該排ガスの熱利用による発電における発電量の不安定化、さらには異常高温等による燃焼炉自体の短命化が問題となる。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑み、一次燃焼排ガスの発生量そして成分が変動しても、これを可燃ガスとして二次燃焼を行なう燃焼炉での燃焼を安定化して、二次燃焼後の排ガス中の有害物質を低減し、この二次燃焼の熱利用による発電量を安定化させ、かつ燃焼炉自体を長寿命使用できる、燃焼炉装置そして燃焼方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る燃焼装置は、内部空間を燃焼室とする炉本体に、軸線方向で上流側に可燃ガス供給管そして下流側に排気管が接続されており、上記軸線方向で上記可燃ガス供給管と排気管の間の位置に、空気、排ガス、酸素もしくはこれらの任意の組合せから成る酸素含有混合ガスのうちのいずれか一つを燃焼室内へ接線方向に噴出して上記軸線まわりに旋回流を生じせしめるノズルが上記炉本体に接続されている。
【0009】
かかる燃焼炉装置において、本発明では、ノズルは同方向に旋回流を生ずる上流側ノズルと下流側ノズルとを有し、上流側ノズルはその平均旋回径d1が下流側ノズルの平均旋
回径d2よりも小さくなるように設定されていることを特徴としている。
【0010】
このような構成の本発明装置によると、燃焼室内では、上流側と下流側での二つの旋回流が生ずる。上流側の旋回流の平均旋回径は、下流側の旋回流の平均旋回径よりも小さいため、以下に述べる作用により、二次流れとして上流側と下流側とを循環する循環流が生じる。下流側旋回流はその平均旋回径が大きいため遠心力により、旋回流の半径方向外側へ働く力が生じるので、上流側旋回流の上流側から供給された可燃ガスの流線が下流側になるほど内側から外側に広がる。そのため下流側旋回流の外周域には正圧域が生じる。一方、上流側旋回流の平均旋回径は小さいため外周域には負圧域が生じている。そのため、下流側旋回流の外周域から上流側旋回流の外周域に向かって二次流れが生じ、この二次流れは上流側旋回流の中心域から下流側旋回流の中心域に向かって流れ、これが半径方向外方の周囲域へまわった後に燃焼室の内壁に沿って上流側旋回流の周囲域に達し、再びこの上流側旋回流の中心域へ戻る循環流を形成する。このような循環を繰り返すために、可燃ガスは、ノズルからの酸素含有ガスと良好に混合された状態で、燃焼室に滞留し、保炎性が向上し、火炎の安定化、すなわち燃焼安定化が図れる。
【0011】
又、本発明では、二つの旋回流と循環流によって十分に燃焼室内での撹拌・混合がなされるので、局所高温化が回避され、ひいては炉本体の長寿命化が図れる。
【0012】
本発明において、上流側ノズルは、その平均旋回径d1が燃焼室の内面に接する最大仮想円の直径Dに対してd1=(0.2〜0.5)D、下流側ノズルは、その平均旋回径d2が上記最大仮想円Dに対してd2=(0.7〜0.9)Dとなるように配設されていることが好ましい。さらに好ましくは、d1=0.3D、d2=0.8Dである。ここで、燃焼室の内面に接する最大仮想円とは、軸線に対して直角な面での断面における燃焼室の内壁に交わることなく接する円のうちの最大直径のものをいう。例えば、長方形断面の内壁をもつ燃焼室の場合、短い方の距離をもって対向する二つの内壁に接する円である。又、平均旋回径とは、例えば、上流側ノズルが異なる旋回径を形成する複数のノズルから成っている場合、各ノズルの旋回径と噴流の吹出し速度との積の総和が、上記複数のノズルでの吹出し速度の平均値と一つの仮想旋回径との積と等しくなるような、該仮想旋回径をいう。
【0013】
上流側ノズルそして下流側ノズルのそれぞれの平均旋回径が上記のごとくの範囲に選定された理由は、次のごとくである。
【0014】
(1)d1<0.2Dとすると、ノズルからの噴流が先方で拡散するために噴流の一部が
旋回を抑制する方向に作用し、旋回速度が低下し、その結果、循環流が十分に生
じない。
【0015】
(2)d1>0.5Dとすると、ノズルからのガスが遠心力により周囲域に寄ってしま
い、燃焼が行なわれる中心域への酸化剤の供給が不十分となり、保炎性が低下す
る。
【0016】
(3)d2<0.7Dとすると、循環流が生じにくく、ガス同士の混合が不十分となり、
火炎の安定性が低下する。
【0017】
(4)d2>0.9Dとすると、ノズルからの噴流の一部が燃焼室の内壁と干渉し、旋回
速度が低下し、その結果、循環流が十分に生じない。
【0018】
本発明において、可燃ガス供給管にガス流量検出手段そして排気管もしくは燃焼室の下流位置に排ガス中の酸素濃度検出手段が設けられ、それぞれ検出された可燃ガス流量の増大及び酸素濃度の低下のうちの少なくとも一方にもとづき、上流側ノズルのガス流量の増
大及び平均旋回径dの縮小の少なくとも一方がなされるように設定されていることが好ましい。
【0019】
燃焼室に供給される可燃ガス流量が増大すると、上流側ノズルと下流側ノズルから燃焼室に供給して可燃ガスを燃焼させるためのガスの酸素量が不足して、燃焼が不安定となり、燃焼室からの排ガス中の酸素濃度が低下する。そこで、上流側ノズルのガス流量を増大して酸素供給量を増加させ、火炎を安定化し燃焼を安定化する。また、可燃ガス流量が増大すると上流側ノズルの旋回流の内側を流れる可燃ガス流れ場の直径が大きくなり、ノズルから供給されるガスの酸素が可燃ガス流れ場に十分に拡散されなくなり、燃焼が不安定となる。そこで、上流側ノズルの平均旋回径dを縮小する操作を行い、可燃ガス流れ場内への酸素の拡散を促進させ、火炎を安定化し燃焼を安定化する。
【0020】
このようにすることにより、供給される可燃ガスの量そして排ガスの酸素濃度の少なくとも一方が変動したときに、上流側ノズルのガス流量そして上流側平均旋回径d1を対応して変更し、炉内のガス性状の影響を緩和して火炎安定性が維持される。
【0021】
本発明において、上流側ノズルは、旋回径の異なる複数の固定ノズルを有し、各固定ノズルが噴流の吹出し速度を調整可能となっていて、この速度調整によって平均旋回径d1を変更設定可能とすることができる。こうすることにより、ノズルに可動部を有するようにせずとも、複数のノズルからの噴流の合成流として平均旋回径を変更できる。可動部を有していないために、装置が簡単となると共に、可動部を有することに起因した故障や短命化といった問題がない。
【0022】
本発明において、上流側ノズルは一つもしくは複数のノズルを有し、少なくとも一つのノズルが向きを可変としていて、この向きの調整によって平均旋回径d1を変更設定可能とすることができる。ノズルの噴出方向を可動とすることで、ノズルの向きを変えるだけで平均旋回径が変更でき、装置がコンパクトかつ精密制御が可能となる。例えば、このノズルを球面軸受で支持し、ノズルをどの方向にでも任意角だけ傾いた状態に設定できるようにすることも一策である。
【0023】
さらに、本発明において、上流側ノズルは一つもしくは複数のノズルを有し、少なくとも一つのノズルが軸線方向上流側に向け0〜30°の範囲で噴出方向を可変としていることが好ましい。このノズルを上流側に向けることで、上流側旋回流の中心域で下流側に向け進行する循環流に対してこの流れの勢いを低下させる方向にノズルからの噴流を作用せしめることとなり、淀み領域を形成し、保炎性が向上し火炎が安定化する。供給する可燃ガス流量が増大した際には、ノズルからのガスの噴出方向の角度を大きくして淀み領域を効果的に形成させるようにする。
【0024】
本発明は、燃焼方法にも関しており、炉本体内に形成された燃焼室へ軸線方向で上流側にて可燃ガス供給管から可燃ガスを供給しそして下流側にて排気管から排気し、上記軸線方向で上記可燃ガス供給管と排気管の間の位置に、ノズルから空気、排ガス、酸素もしくはこれらの任意の組合せから成る酸素含有混合ガスのうちのいずれか一つを燃焼室内へ接線方向に噴出して上記軸線まわりに旋回流を生じせしめる燃焼方法において、旋回流は軸線方向の二位置で同一方向に旋回するように形成され、上流側ノズルにより形成される旋回流の平均旋回径dが下流側ノズルにより形成される旋回流の平均旋回径d2より小さくなるように設定され、可燃ガスの供給量又は性状の変動に応じて上流側ノズルの噴出方向、流量、流速及びガス組成のうちの少なくとも一つを調整することにより、火炎を安定かつ定在させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0025】
本発明は、以上のように、二次燃焼を行なう燃焼室内で上流側と下流側で二つの旋回流を形成することにより、上下流方向での循環流を生じせしめることとしたので、可燃ガスは燃焼室内に滞留することとなり、火炎が安定化し、負荷変動、すなわち可燃ガスたる一次燃焼排ガスの流量、成分に起因する変動の影響を緩和させて、炉ガス処理能力が向上すると共に安全性も向上する。さらに、CO,HC等の未燃ガスの排出も低減され、低公害化が図れる。又、燃焼室内での局所高温化が回避されるので、炉の長寿命化が図られると共に、炉の補修費も低減される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、添付図面にもとづき、本発明の実施の形態を説明する。
【0027】
図1は、本実施形態装置の概要構成図である。図1において、符号1は縦筒状の炉本体であり、内部空間が燃焼室となっており、下端にダスト排出口2がそして上端に排気口3が設けられている。上記ダスト排出口2と排気口3は、炉本体1の縦方向中間部から先細りとなるテーパ部を経て細くなっている部分を形成している。
【0028】
上記筒状の炉本体1は、上流側(図にて下端側)から下流側(図にて上端側)に向けて延びる軸線に対して直角な断面での形状に限定はなく、円形でも四角形でもよく、本例では、図2に見られるごとく矩形をなしている。
【0029】
炉本体1の上流側には、側部に、可燃物含有ガスを供給する可燃ガス供給管4が接続されている。この可燃ガス供給管4は、例えば、図示しない一次燃焼炉としての廃棄物焼却炉あるいは溶融炉に接続されていて、これらの炉からの排ガスが可燃物含有ガスとして上記炉本体1の燃焼室で二次燃焼される。
【0030】
上記可燃ガス供給管4よりも上方(下流側)で、軸線方向に間隔をもった二位置には上流側ノズル5そして下流側ノズル6がそれぞれ接続されている。該上流側ノズル5そして下流側ノズル6は、図3(A),(B)に見られるように、それぞれ複数のノズル(図示の例では二つのノズル)を有し、この複数のノズル5,6は同方向での旋回流を燃焼室で形成するように、接線方向に配されている。この場合、上流側ノズル5により形成される旋回径d1は、下流側ノズル6により形成される旋回径d2よりも小さくなるように、ノズル5,6の位置が定められている。
【0031】
本実施形態では上記炉本体1は、軸線に直角な断面を示す図2に見られるように、短辺の長さAそして長辺の長さBの矩形断面の壁部を有していて、この壁部に内方から接する円、すなわち、短辺と同じ長さAの直径Dの仮想円が上記長辺Bの壁部に接して描くことができる。この円は、どの辺に対しても交差することなく内方から接する円としては最大径であり、これを最大仮想円と定義づける。このような最大仮想円の直径Dに対し、上記上流側ノズル5による旋回径d1そして下流側ノズル6による旋回径d2は、
1=(0.2〜0.5)D
2=(0.7〜0.9)D
に設定され、好ましくは、
1=0.3D
2=0.8D
と設定される。
【0032】
上流側ノズル5そして下流側ノズル6からは、空気、排ガス、酸素もしくはこれらの任意の組合せから成る酸素含有混合ガスが燃焼室内へ噴出される。
【0033】
このような構成の本実施形態では、燃焼室内では、上流側ノズル5と下流側ノズル6か
らの酸素含有ガスの噴出により二つの旋回流5A,6Aが生ずる。上記二つの旋回流5A,6Aの中心域と周囲域との間で循環流Cが生ずる。すなわち、この循環流Cは、上流側旋回流5Aの中心域から下流側旋回流6Aの中心域に向かって流れ、これが半径方向外周の周囲域にまわった後に燃焼室の内壁に沿って上流側旋回流5Aの周囲域に達し、再びこの上流側旋回流5Aの中心域へ戻る。このような循環を繰り返すために、可燃ガスは燃焼室に、ノズルからのガスと良好に混合された状態で滞留し、保炎性が向上し、火炎の安定化、すなわち燃焼安定化が図れる。
【0034】
このようにして、可燃ガスが安定かつ良好に燃焼される状況において、上記旋回径d1,d2が上述の値に定められる理由は、次のごとくである。
【0035】
(1)d1<0.2Dとすると、ノズルからの噴流が先方で拡散するために噴流の一部が
旋回を抑制する方向に作用し、旋回速度が低下し、その結果、循環流が十分に生
じない。
【0036】
(2)d1>0.5Dとすると、ノズルからのガスが遠心力により周囲域に寄ってしま
い、燃焼が行なわれる中心域への酸化剤の供給が不十分となり、保炎性が低下す
る。
【0037】
(3)d2<0.7Dとすると、循環流が生じにくく、ガス同士の混合が不十分となり、
火炎の安定性が低下する。
【0038】
(4)d2>0.9Dとすると、ノズルからの噴流の一部が燃焼室の内壁と干渉し、旋回
速度が低下し、その結果、循環流が十分に生じない。
【0039】
上記炉本体1には、排出口3に接続された排気管を経て、下流側へ順次、排ガス処理装置7、ファン等の排気装置8が接続されていて、処理後の排ガスが煙突9から大気へ放出されるようになっている。又、この排ガスの一部は、循環路10を経て、上流側ノズル5そして必要に応じて下流側ノズル6から燃焼室へ再循環される。
【0040】
又、上記炉本体1の上流端側には、炉内壁の温度モニタ用の温度センサ11が設けられている。
【0041】
さらに、下端のダスト排出口2は、ダスト処理装置12に接続されている。
【0042】
このような、本実施形態装置では、廃棄物焼却炉等での一次燃焼により得られた、可燃物含有ガスを次の要領で燃焼する。
【0043】
(i)可燃物含有ガスが可燃ガス供給管4から燃焼室内へ供給される。これと共に、空気、排ガス、酸素もしくはこれらの任意の組合せの酸素含有混合ガスが上流側ノズル5そして下流側ノズル6から燃焼室内へ噴出される。これらのノズル5,6からの噴流により、上流側旋回流5A、下流側旋回流6Aが形成され、その結果、循環流Cが形成される。この循環流Cの形成により、可燃ガスは燃焼室内に滞留して、保炎性が向上し、燃焼が安定する。
【0044】
(ii)燃焼後の排ガスは、排ガス処理装置7で無害化され、排気装置8により煙突9から大気へ放出される。
【0045】
(iii)これと共に、燃焼後のダストはダスト排出口2から排出され、ダスト処理装置12で無害化され処分される。
【0046】
(iv)本実施形態では、炉壁で最も温度が高くなる領域に温度センサ11が設けられており、検出温度が所定値以上になったときには、炉壁の保護のために、上流側ノズル6からの噴出ガスの流量を低下させて燃焼の勢いを弱めたり、あるいは旋回流d1を小さくするように調整して火炎を中心に寄らせ、炉壁近傍が過度に高温にならないようにする。
【0047】
本発明では、図示された形態に限定されず、種々変更が可能である。例えば、炉本体1の対向壁面のそれぞれに設けられたノズルは一つでなく、複数とすることができる。図4においては、一つの壁面に三つのノズル15A,15B,15Cが設けられていて、旋回流の中心を通りノズルの噴出方向と平行な線Xからの各ノズルまでの距離をLA,LB,LCとし、噴出速度をVA,VB,VCとすることができる。このとき、三つのノズル15A,15B,15Cにより形成される合成流にもとづく旋回流は、これと同じ旋回流を生ずる一つの仮想ノズルからの噴流によるものと考えることができる。その仮想ノズルの上記線Xからの距離をL、そして噴出速度をVとすると、
V=(VA+VB+VC)/3
L=(VA・LA+VB・LB+VC・LC)/(VA+VB+VC
と表すことができる。
【0048】
したがって、いずれかのノズルからの噴出条件を変えることにより、合成流による旋回流の平均旋回径を変更できる。一次燃焼により得られた可燃ガスは一次燃焼の状況により変化して二次燃焼に影響を与えるので、その場合の上流側ノズルの旋回径の調整に特に有効である。
【0049】
又、上流側ノズルは一つもしくは複数のノズルを有し、少なくとも一つのノズルの向きを可変とすることによっても、平均旋回径d1を変更設定可能とすることができる。ノズルの噴出方向を可動とすることで、ノズルの向きを変えるだけで平均旋回径が変更でき、装置がコンパクトかつ精密制御が可能となる。
【0050】
さらに、本発明において、上流側ノズルは一つもしくは複数のノズルを有し、少なくとも一つのノズルが軸線方向上流側に向け0〜30°の範囲で噴出方向を可変としていることができる。このノズルを上流側に向けることで、上流側旋回流の中心域で下流側に向け進行する循環流に対してこの流れの勢いを低下させる方向にノズルからの噴流を作用せしめることとなり、淀み領域を形成し、保炎性が向上し火炎が安定化する。
【0051】
さらに、本発明において、可燃ガス供給管にガス流量検出手段そして排気管もしくはその下流位置に排ガス中の酸素濃度検出手段が設けられ、それぞれ検出された可燃ガス流量の増大及び酸素濃度の低下のうちの少なくとも一方にもとづき、上流側ノズルのガス流量の増大及び平均旋回径d1の縮小の少なくとも一方がなされるように設定されていることができる。
【0052】
こうすることにより、供給される可燃ガスの量そして排ガスの酸素濃度の少なくとも一方が変動したときに、可燃ガス供給量そして上流側平均旋回径d1を自動的に変更して、炉内のガス性状の影響を緩和して火炎安定性が維持される。
【0053】
又、本発明において、旋回流は軸線方向の二位置で同一方向に旋回するように形成され、上流側ノズルの噴出方向、流量、流速及びガス組成のうちの少なくとも一つを調整することにより、旋回火炎を安定かつ定在させることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の一実施形態装置の概要構成図である。
【図2】図1の炉本体の軸線に直角な面での断面として示す外形図である。
【図3】炉本体内での旋回流を示し、(A)は上流側ノズル、(B)は下流側ノズルにより形成される旋回流である。
【図4】他の実施形態を示し、ノズルを複数設けた場合の図である。
【符号の説明】
【0055】
1 炉本体
2 ダスト排出口
3 排気口(管)
4 可燃ガス供給管
5 上流側ノズル
6 下流側ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間を燃焼室とする炉本体に、軸線方向で上流側に可燃ガス供給管そして下流側に排気管が接続されており、上記軸線方向で上記可燃ガス供給管と排気管の間の位置に、空気、排ガス、酸素もしくはこれらの任意の組合せから成る酸素含有混合ガスのうちのいずれか一つを燃焼室内へ接線方向に噴出して上記軸線まわりに旋回流を生じせしめるノズルが上記炉本体に接続されている燃焼炉装置において、ノズルは同方向に旋回流を生ずる上流側ノズルと下流側ノズルとを有し、上流側ノズルはその平均旋回径d1が下流側ノズルの平均旋回径d2よりも小さくなるように設定されていることを特徴とする燃焼炉装置。
【請求項2】
上流側ノズルは、その平均旋回径dが燃焼室の内面に接する最大仮想円の直径Dに対してd1=(0.2〜0.5)D、下流側ノズルは、その平均旋回径dが上記最大仮想円Dに対してd2=(0.7〜0.9)Dとなるように配設されていることとする請求項1に記載の燃焼炉装置。
【請求項3】
可燃ガス供給管にガス流量検出手段そして排気管もしくは燃焼室の下流位置に排ガス中の酸素濃度検出手段が設けられ、それぞれ検出された可燃ガス流量の増大及び酸素濃度の低下のうちの少なくとも一方にもとづき、上流側ノズルのガス流量の増大及び平均旋回径dの縮小の少なくとも一方がなされるように設定されていることとする請求項1又は請求項2に記載の燃焼炉装置。
【請求項4】
上流側ノズルは、旋回径の異なる複数の固定ノズルを有し、各固定ノズルが噴流の吹出し速度を調整可能となっていて、この速度調整によって平均旋回径d1を変更設定可能としていることとする請求項1ないし請求項3のうちの一つに記載の燃焼炉装置。
【請求項5】
上流側ノズルは一つもしくは複数のノズルを有し、少なくとも一つのノズルが向きを可変としていて、この向きの調整によって平均旋回径d1を変更設定可能としていることとする請求項1ないし請求項3のうちの一つに記載の燃焼炉装置。
【請求項6】
上流側ノズルは一つもしくは複数のノズルを有し、少なくとも一つのノズルが軸線方向上流側に向け0〜30°の範囲で噴出方向を可変としていることとする請求項1ないし請求項5のうちの一つに記載の燃焼炉装置。
【請求項7】
炉本体内に形成された燃焼室へ軸線方向で上流側にて可燃ガス供給管から可燃ガスを供給しそして下流側にて排気管から排気し、上記軸線方向で上記可燃ガス供給管と排気管の間の位置に、ノズルから空気、排ガス、酸素もしくはこれらの任意の組合せから成る酸素含有混合ガスのうちのいずれか一つを燃焼室内へ接線方向に噴出して上記軸線まわりに旋回流を生じせしめる燃焼方法において、旋回流は軸線方向の二位置で同一方向に旋回するように形成され、上流側ノズルにより形成される旋回流の平均旋回径dが下流側ノズルにより形成される旋回流の平均旋回径d2より小さくなるように設定され、可燃ガスの供給量又は性状の変動に応じて上流側ノズルの噴出方向、流量、流速及びガス組成のうちの少なくとも一つを調整することにより、火炎を安定かつ定在させることを特徴とする燃焼方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−329478(P2006−329478A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−151388(P2005−151388)
【出願日】平成17年5月24日(2005.5.24)
【出願人】(000004123)JFEエンジニアリング株式会社 (1,044)
【Fターム(参考)】