説明

燐分離装置と燐含有有機性廃水の処理方法およびその装置

【課題】少量のオゾンにより汚泥中のSSを細かく分解して溶解性を高めるとともに、燐回収時の前処理としての固液分離設備や操作を省略する。これにより、余剰汚泥発生量の削減と燐の回収を両立する小型で操作性が容易、かつ安価な燐含有有機性廃水の処理方法を得る。
【解決手段】物理的作用による汚泥破砕装置17とオゾンを注入するエジェクータ182を直列に配した汚泥可溶化工程と、滞留槽15と、消泡機器20とで構成した燐分離装置14と、溶存性の燐をアルカリ条件下で晶析させてヒドロキシアパタイトとして回収させる燐回収装置12を備えるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水等の燐を含む有機性廃水を生物処理により浄化し、余剰汚泥の発生量を著しく削減できるとともに、汚泥の可溶化時処理時に水中に溶出する燐を効率的に資源として回収する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
生物反応槽と、沈殿槽を備えた活性汚泥法は汚水の処理法として処理性能が高く、下水処理等の各分野で広く利用されている。この浄化原理は微生物が汚水中の有機物を餌として分解・除去する作用によるため、微生物が増殖し、処理の結果として余剰汚泥が発生していた。この汚泥の最終処分量は全産業廃棄物の最終処分量に対する割合が高く、国内においては最終処分場の残余容量が極めて少ないこともあり多大なコスト負担になっている。このような状況から余剰汚泥の発生量をできるだけ削減することが望まれており、オゾン等を利用した各種可溶化手法による汚泥減量法の導入が検討されつつある。
一方、汚泥減量法を導入した場合、余剰汚泥内にポリ燐酸として蓄積していた燐酸基は、可溶化処理により燐酸イオンとして脱着する。この結果、燐酸イオンは処理水中に濃縮されて水質が悪化するといった事態が懸念されている。また、燐は肥料として貴重な資源であるため回収できることが望ましい。
このようなことから、従来の汚泥減量化および燐回収処理工程を付加した燐含有有機性廃水の処理方法については、図4のような処理方法が提案されていた。
図4において、1は原水供給路、2はブロワ、3は生物反応槽、4は沈殿槽、5は処理水排出路、7は汚泥返送路、8は汚泥減量化装置、9は可溶化汚泥搬送路、10は固液分離設備、11は分離液搬送路、12’は燐回収装置である。
また、Wgは原水、Wpは処理水、Dvは活性汚泥、Dcは沈殿汚泥、Dhは返送汚泥、Dkは可溶化汚泥、Wbは分離液、Pkは回収燐である。
図において下水等の燐含有有機性廃水を原水Wgとして、ブロワ2により曝気された生物反応槽3に供給して生物処理する。生物反応槽3から流出する燐を含有した活性汚泥Dvに鉄やアルミニウム系の凝集剤を添加することにより、原水Wgの中の燐は吸着・凝集される。この後、沈殿槽4において固液分離することにより、燐、易生物分解性有機物(BOD)、浮遊固形物(SS)が除去された処理水Wpが得られ、処理水Wpは処理水排出路5を通して系外に排出される。燐を含有した活性汚泥Dvは、凝集剤と共存した沈殿汚泥Dcとなり、その大部分は返送汚泥Dhとして汚泥返送路7を介して生物反応槽3に返送される。
一方、余剰となる沈殿汚泥Dcの一部は汚泥減量化装置8に導入してアルカリ性条件下(pH10〜12)においてオゾン酸化により可溶化される。ここでは、汚泥中の生物細胞等の生物酸化され難いSSが可溶化によりBOD化される他、余剰汚泥内にポリ燐酸として蓄積し凝集剤に吸着していた燐酸基は燐酸イオンとして脱着する。
【0003】
次に、オゾン酸化された可溶化汚泥Dkは、沈殿、遠心分離または膜分離等を備えた固液分離設備10で固液分離を行う。分離された高濃度の燐を含む分離液wbは、燐回収装置12’においてカルシウム塩(またはマグネシウム塩)を添加することにより、燐酸カルシウム(または燐酸マグネシウム塩)を析出させる。これら析出物を固液分離すると、固体成分は肥料として価値の高い燐酸化合物を回収燐Pkとして得るとともに、処理水Wpから燐を除去することができる。
このように燐含有有機性廃水は、先ず生物処理系でBOD成分が分解され、沈殿汚泥を汚泥減量化装置8においてアルカリ性条件下でオゾン酸化することで、燐が脱着するとともに生物細胞等の生物酸化され難いSSが可溶化される。この可溶化汚泥を固液分離すると、分離液には燐がイオンとして存在し、前述のように燐酸カルシウム等の有用な肥料資源として回収することができる。
また、可溶化汚泥Dkは生物分解性が向上しているので、生物処理系に返送されることでさらに生物酸化され、余剰汚泥の発生量を削減することができるようになる(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第3442205号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
オゾンは強力な酸化力を有するため汚泥の可溶化処理には有効な手段である。しかしながら、オゾンの反応はpHの影響を受けやすく、特にアルカリ性条件下では自己分解速度が大きくなり反応効率が低下する。また、通常の汚泥減量化のために行うオゾン処理条件ではSSを完全に分解して溶解することは困難である。このため、生物細胞を細かく分解して溶解するためには多量のオゾン消費が必要となる。しかしながら、オゾン酸化装置は高価で消費電力が大きいため、無駄な消費を抑えることが望ましい。
また、燐回収処理時には、燐回収装置内部での閉塞や不具合を防止するため、可溶化汚泥は、沈殿、遠心分離または膜分離等を備えた固液分離設備で固液分離を行った後、SSを除去した分離液のみを導入するといった方策がとられている。このように、燐回収処理時には複雑な前処理設備や操作が必要であった。
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、少量のオゾンにより活性汚泥を細かく分解して液化し流動性を向上させるとともに、活性汚泥細胞中に取込まれていたポリ燐酸を燐酸イオンとして溶出させる。このように燐回収時の前処理としての固液分離設備や操作が省略され、小型、操作性が容易、かつ安価な燐含有有機性廃水の処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記問題を解決するため、本発明は、次のように構成したものである。
請求項1記載の燐分離装置の発明は、汚泥破砕装置とオゾン酸化装置と滞留槽との循環系で構成され、沈殿汚泥の一部を可溶化し燐を分離することを特徴としている。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の燐分離装置において、前記汚泥破砕装置がキャビテーション発生ノズルを備えた物理的作用による汚泥破砕装置であり、前記オゾン酸化装置はオゾン発生装置とオゾンエジェクターで構成したものであり、前記滞留槽は複数の隔壁により上下迂回流による押出し流れを形成するものであることを特徴としている。
請求項3記載の発明は、請求項2記載の燐分離装置において、前記滞留槽に消泡機器が接続されていることを特徴としている。
請求項4記載の発明は、請求項3記載の燐分離装置において、前記消泡機器が、回転羽の高速回転により、泡を機械的に破泡して液状とするものであることを特徴としている。
請求項5記載の発明は、請求項2記載の燐分離装置において、前記滞留槽に排出オゾンを分解する排オゾン分解器が接続されていることを特徴としている。
【0006】
請求項6記載の燐含有有機性廃水の処理装置の発明は、生物反応槽と沈殿槽と該沈殿槽に溜った沈殿汚泥を前記生物反応槽に返送する返送路を備えて成る有機性廃水浄化生物処理装置と、前記返送路の一部に請求項1〜5のいずれか1項記載の燐分離装置を備えるとともに、前記可溶化された可溶化汚泥から燐を回収する燐回収装置を前記燐分離装置の後段に接続し、前記燐回収装置で燐回収後の可溶化汚泥を前記生物反応槽に返送する返送路を備えたことを特徴としている。
請求項7記載の燐含有有機性廃水の処理方法の発明は、生物反応槽と沈殿槽と該沈殿槽に溜った沈殿汚泥を前記生物反応槽に返送する返送路を備えて成る有機性廃水浄化生物処理装置と、前記沈殿汚泥の一部を可溶化し燐を分離する燐分離装置と、前記燐分離装置で可溶化された汚泥から燐を回収する燐回収装置と、燐回収後の可溶化汚泥を前記生物反応槽に返送する工程を備えた燐含有有機性廃水の処理方法において、物理的作用による汚泥破砕装置とオゾン酸化装置を配した汚泥可溶化手法と、滞留槽と、消泡機器とで構成した燐分離装置と、溶存性の燐をアルカリ条件下で晶析させてヒドロキシアパタイトとして回収させる燐回収装置を備えるとともに、前記滞留槽から可溶化汚泥を直接前記燐回収装置に導入する工程を備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
上記構成の発明によると、物理的作用による汚泥破砕装置とオゾン酸化装置を併用して汚泥を可溶化処理することにより、オゾン単独での処理に対し、少量のオゾン消費により、活性汚泥を細かく分解して流動性を向上させるとともに、活性汚泥細胞中に取込まれていたポリ燐酸を燐酸イオンとして液中に溶解させることができる。
したがって、アルカリ条件下で晶析させてヒドロキシアパタイトとして回収させる燐回収装置に直接導入した場合にも、閉塞や不具合が生じることなく長期間安定して稼動することが可能となる。
さらには、pH10未満での処理により燐を高効率に回収することができるため、アルカリ性下におけるオゾンの自己分解の影響を防止し、オゾンの無駄な消費を抑えることができるとともに、アルカリ性添加剤の消費量を低減し、生物処理系への悪影響を防止する効果も得られる。また、キャビテーション発生器を通過する汚泥は、管路抵抗により温度が上昇する傾向にあるため、低水温時の燐回収効率が低下するのを防止する効果も期待できる。
また、滞留槽内において、オゾン酸化処理時に発生した泡に付着して液中から分離されるSS成分は、消泡機器により再度液中に戻されて可溶化処理されることにより、更なる分解及び溶解が促進されることとなる。このため、沈殿、遠心分離または膜分離等を備えた固液分離設備は不要である。
また、キャビテーション発生器とエジェクターを直列に配することにより、汚泥はオゾン酸化の前段においてキャビテーションの強力な物理的作用により汚泥細胞が破砕されて細かく分解される。この後オゾンの強力な化学的酸化作用により効果的に活性汚泥が効果的に分解されて流動性が高まるとともに、燐酸イオンが液中に溶解する。また、本構造により小型の装置が得られる。
また、滞留槽を隔壁により上下迂回流による押出し流れを形成することにより、オゾンの反応効率を向上させることができ、滞留槽の小型化が実現できる。
また、滞留槽では一部の汚泥が発泡性となり、液相から浮上分離し、消泡機器に移送して除泡した後、消泡汚泥返送部を介して液相に返流される。これが繰り返されることにより、活性汚泥等のSS成分は効果的に可溶化が促進され、細かく分解されて液中に溶解する。
さらに、消泡機器は回転羽の高速回転により泡を機械的に破泡して液状とする方式を採用することにより、消泡水をシャワーで除泡する場合と比較すると、汚泥が希釈されることがないため可溶化の効率が向上するとともに、設備がシンプルでコンパクトになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
〈本発明の実施の形態〉
図1は本発明の実施の形態に係る燐回収処理工程を付加した燐含有有機性廃水の処理方法の概略構成図である。図において、1は原水供給路、2はブロワ、3は生物反応槽、4は沈殿槽、5は処理水排出路、7は汚泥返送路、9は可溶化汚泥搬送路、12は燐回収装置、そして14は本発明に係る燐分離装置である。また、Wgは原水、Wpは処理水、Dvは活性汚泥、Dcは沈殿汚泥、Dhは返送汚泥、Dkは可溶化汚泥、Pkは回収燐である。
以下、図4に示したブロックと同じ機能のものは同じ符号を付しているため、前出のものは重複説明を省略する。
【0009】
図2は図1に示した燐分離装置の内部構成を詳しく説明するブロック図である。図1において、15は滞留槽、16は循環ライン、17は汚泥破砕装置、18はオゾン酸化装置である。オゾン酸化装置18は、181のオゾン発生装置と182のオゾンエジェクターとから成る。20は消泡機器、21は排オゾン分解器である。
滞留槽15は上下で気相部15aと液相部15bとに分かれ、また槽内の天井部から液相部15bの内部まで延びる天井隔壁15kによって図で左右に発泡性汚泥分離部151と消泡汚泥返送部152に分かれる。さらに各発泡性汚泥分離部151と消泡汚泥返送部152はそれぞれ槽内の底部から液相部15bの途中まで上方に延びる底部隔壁15tによってラビリンス構造による迂回路が形成されている。
本発明が特許文献1記載の発明と異なる部分は、本発明では特許文献1記載の固液分離設備10(図4)を備えておらず、その代わりに本発明の燐分離装置14において、汚泥の可溶化により、燐酸イオンを汚泥から分離するとともに、活性汚泥等のSS成分を細かく分解して溶解性を高めることにより、流動性を高め直接、燐回収できるようにしたことである。そのための可溶化処理方法としては、特許文献1のような強アルカリ性条件下(pH10〜12)ではオゾン酸化を行わず、本発明では高々pH10未満の弱アルカリ〜中性条件下において、(イ)物理的作用による汚泥破砕と(ロ)オゾン酸化を併用して可溶化処理を行うものである。さらに、このとき排オゾンと同時に泡に付着して液中から分離されるSS成分は、回転羽の高速回転による機械的な消泡機器20により除泡し、再度液中に戻して可溶化処理を行うようにした点である。
【0010】
次に、本発明の実施の形態の動作について説明する。
処理系における有機性廃水の浄化の工程については特許文献1と同様なので、異なる点以外の説明を省略する。
余剰となる沈殿汚泥Dcの一部は、燐分離装置14に導入される。燐分離装置14は滞留槽15を中心として、循環ライン16が設けられており、その循環ライン16に(イ)物理的作用による汚泥破砕を行なう汚泥破砕装置17と(ロ)オゾン化ガスを沈殿汚泥中に注入するオゾン酸化装置18(オゾン発生器181とオゾンエジェクター182から成る。)を直列に配した構造となっている。
(イ)物理的作用による汚泥破砕:
汚泥破砕を行なう汚泥破砕装置14は、0.5〜2MPa程度に圧縮した沈殿汚泥Dcをキャビテーション発生ノズル(図示なし)に通過させることにより液中にキャビテーション気泡を生成させ、キャビテーション気泡の消滅時に発生する衝撃力を利用して汚泥を物理的に破砕する作用を有するものである。
(ロ)オゾン酸化:
オゾン酸化を行なうオゾン酸化装置18は沈殿汚泥中のSSの2.5〜5重量%を必要量とし、オゾン発生装置181で生成されたオゾン化ガスはオゾンエジェクター182を介して、沈殿汚泥中に注入されて、酸化により可溶化を促進させるものである。
本発明によって設けられた汚泥破砕装置17とオゾン酸化装置18とを通過することで可溶化が促進された汚泥は滞留槽15に戻り、再び滞留槽15を中心に循環する(循環量は沈殿汚泥の導入される量に対し、2〜8倍程度)。
滞留槽15は上下に気相部15aと液相部15bで構成されており、液相部15bは天井隔壁15kと底部隔壁15tとにより上下迂回流路を形成し、押出し流れにより効率良くオゾン反応が行われる。
一方、気相部15aは発泡性汚泥分離部151と消泡汚泥返送部152に図で左右に分割した構造としている。発泡性汚泥分離部151では、排オゾンとともに一部の汚泥が発泡性となり、液相15bから浮上分離する。この汚泥中にはSS成分が濃縮されており、消泡機器20に移送して機械的に除泡した後、消泡汚泥返送部21を介して液相15bに返流される。
これが繰り返されることにより、活性汚泥等のSS成分は効果的に可溶化が促進され、細かく分解されて液中に溶解し、流動性が高まる。
また、沈殿汚泥Dcの生物細胞に蓄積する燐酸基は、可溶化されることにより生物細胞から脱着し、燐酸イオンとして水中に溶解する。
【0011】
図3に沈殿汚泥の可溶化前後の顕微鏡画像を示す。
図3(a)は沈殿汚泥(初期)、(b)はオゾン酸化だけによる可溶化処理後、(c)はキャビテーションによる汚泥破砕とオゾン酸化の併用による可溶化処理後の画像をそれぞれ示している。
図3(a)において、中央部から下方にかけての大きな固まり(Ka)は沈殿汚泥である。この図3(a)の大きな固まりKaがオゾン酸化だけによる可溶化処理された後は図3(b)のように小さなバラバラの固まりKbに細分化される。
一方、図3(a)の大きな固まりKaがキャビテーションとオゾン酸化の併用処理をされた後は図3(c)のように微細片Kcまでに細分化されることが判る。
すなわち、画像からは(c)のキャビテーションによる汚泥破砕とオゾン酸化の併用により、沈殿汚泥が細かく分解し可溶化が促進されていることが確認できる。なお、オゾンは殆どが消費されるが、低濃度のオゾンが残留することがあるので、熱分解等の排オゾン分解器21(図1)により無害化される。
次に、可溶化汚泥は、滞留槽の(A)または(B)点から引き抜き、常温でアルカリ剤を添加してpHを9程度に調整した後、燐回収装置12に導入する。特に、可溶化汚泥中のSS濃度が高い場合には、SSが発泡により分離されて低濃度化した(A)点から引き抜くことにより、安定した処理が可能である。燐回収装置は、晶析材(例えば、粒径が1.0〜2.0mm程度のケイ酸カルシウム結晶)を充填した充填塔に上向流で導入し、充填塔を中心に、上向流方式で循環通水するような方式が有効である。ここで、ヒドロキシアパタイト結晶が生じ、装置に導入された溶存燐の80%以上が回収される。回収リン13はそのまま肥料として農地等に有効に還元することができる。
【0012】
本発明の実験例を以下に記す。
下水沈殿汚泥を前述の構成により、キャビテーション発生ノズル1次圧を0.95MPa、オゾン注入率を0.025g−O3/g−SSとして可溶化させた。可溶化汚泥(PO4−P 24.9[mg/L]、pH 5.87、水温24℃)に水酸化ナトリウムを添加してpHを調整(調整後のpH7、8、9、9.5)した後、ケイ酸カルシウム結晶(粒径:1.2〜1.4mm)を充填したカラムで構成した燐回収装置に注入して、通過後の液のリン酸イオン濃度を測定した。
その結果、表1が得られた。
【0013】
【表1】

【0014】
表1から判ることは、pHをpH7→pH8→pH9→pH9.5と高めていくだけで、可溶化汚泥中に流出する燐酸イオン(PO4−P)の24.9[mg/L]が、pH7の15.1から→11.5(pH8)→5.6(pH9)→3.8(pH9.5)と減ってくる。したがって、燐回収率はpH7の39%から→54%(pH8)→78%(pH9)→85%(pH9.5)と増え、カラムに確実に吸着されることが判る。
このように可溶化汚泥について従来のような固液分離をしなくても、pHを10近傍に調整したあと燐回収装置に直接導入するだけで、カラム内での可溶化汚泥の通水状態は良好となった。したがって可溶化汚泥による閉塞等の不具合が生じることなく長期間の稼動が可能であり、効率良く燐を回収することができた。ヒドロキシアパタイトとして昌析し、回収された燐は、そのまま農業用の肥料として再利用可能となる。
燐回収装置を経由した可溶化汚泥は、その後生物処理系に返送されてさらに生物酸化され、二酸化炭素や水にまで分解されることにより、余剰汚泥の発生量が大幅に削減される。
このように、余剰汚泥の発生量を著しく削減するとともに、汚泥の可溶化時処理時に水中に溶出する燐を効率的に資源として回収することが、小型、操作性が容易、かつ安価な設備で実現できるようになる。
【産業上の利用可能性】
【0015】
本発明では効率的に有機汚泥を可溶化して易生物分解化するとともに、シンプルで安価な燐回収工程を有しているため、公共下水の他、化学工場や食品工場等の燐を含有する有機性廃水処理全般において、汚泥の嫌気性消化プロセスを経てメタンガスを生成し、これをバイオマス資源として有効に利用することやそれに伴う汚泥の減量化を目的とした設備への導入も適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の燐含有有機性廃水の処理方法を示す構成図である。
【図2】図1の燐分離装置の構成を詳しく示す構成図である。
【図3】沈殿汚泥の可溶化前後の顕微鏡画像である。
【図4】従来の燐含有有機性廃水の処理方法を示す構成図である。
【符号の説明】
【0017】
1 原水供給路
2 ブロワ
3 生物反応槽
4 沈殿槽
5 処理水排出路
7 汚泥返送路
8 汚泥減量化装置
9 可溶化汚泥搬送路
12 燐回収装置
14 燐分離装置
15 滞留槽
15a 気相部
15b 液相部
15k 天井隔壁
15t 底部隔壁
151 発泡性汚泥分離部
152 消泡汚泥返送部
16 循環ライン
17 汚泥破砕装置
18 オゾン酸化装置
181 オゾン発生装置
182 オゾンエジェクター
20 消泡機器
21 排オゾン分解器
Wg 原水
Wp 処理水
Dv 活性汚泥
Dc 沈殿汚泥
Dh 返送汚泥
Dk 可溶化汚泥
Pk 回収燐

【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚泥破砕装置とオゾン酸化装置と滞留槽との循環系で構成され、沈殿汚泥の一部を可溶化し燐を分離することを特徴とする燐分離装置。
【請求項2】
前記汚泥破砕装置はキャビテーション発生ノズルを備えた物理的作用による汚泥破砕装置であり、前記オゾン酸化装置はオゾン発生装置とオゾンエジェクターで構成したものであり、前記滞留槽は複数の隔壁により上下迂回流による押出し流れを形成するものであることを特徴とする請求項1記載の燐分離装置。
【請求項3】
前記滞留槽は消泡機器を接続されていることを特徴とする請求項2記載の燐分離装置。
【請求項4】
前記消泡機器は、回転羽の高速回転により、泡を機械的に破泡して液状とするものであることを特徴とする請求項3記載の燐分離装置。
【請求項5】
前記滞留槽は排出オゾンを分解する排オゾン分解器を接続されていることを特徴とする請求項2記載の燐分離装置。
【請求項6】
生物反応槽と沈殿槽と該沈殿槽に溜った沈殿汚泥を前記生物反応槽に返送する返送路を備えて成る有機性廃水浄化生物処理装置と、
前記返送路の一部に請求項1〜5のいずれか1項記載の燐分離装置を備えるとともに、前記可溶化された可溶化汚泥から燐を回収する燐回収装置を前記燐分離装置の後段に接続し、前記燐回収装置で燐回収後の可溶化汚泥を前記生物反応槽に返送する返送路を備えたことを特徴とする燐含有有機性廃水の処理装置。
【請求項7】
生物反応槽と沈殿槽と該沈殿槽に溜った沈殿汚泥を前記生物反応槽に返送する返送路を備えて成る有機性廃水浄化生物処理装置と、前記沈殿汚泥の一部を可溶化し燐を分離する燐分離装置と、前記燐分離装置で可溶化された可溶化汚泥から燐を回収する燐回収装置と、燐回収後の可溶化汚泥を前記生物反応槽に返送する工程を備えた燐含有有機性廃水の処理方法において、
物理的作用による汚泥破砕装置とオゾン酸化装置を配した汚泥可溶化手法と、滞留槽と、消泡機器とで構成した燐分離装置と、溶存性の燐をアルカリ条件下で晶析させてヒドロキシアパタイトとして回収させる燐回収装置を備えるとともに、前記滞留槽から可溶化汚泥を直接前記燐回収装置に導入する工程を備えることを特徴とする燐含有有機性廃水の処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−221114(P2008−221114A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−62246(P2007−62246)
【出願日】平成19年3月12日(2007.3.12)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【出願人】(802000031)財団法人北九州産業学術推進機構 (187)
【Fターム(参考)】