説明

物体検出システム

【課題】複数のレーザセンサを備えた物体検出システムにおいて、あるレーザセンサから出力したレーザ光を他のレーザセンサが検出することによる誤検出を抑制する。
【解決手段】レーザセンサAは、自身の回転ミラー50の回転角度を算出し(ステップS2)、また、他方のレーザセンサBの回転ミラー50の回転角度を取得し(ステップS3)、これらステップS2、S3で算出、取得した回転角度と、記憶装置130に記憶されている誤検出角度関係とから、誤検出の危険性があるか否かを予測する(ステップS4)。そして、誤検出の危険性があると予測した場合、誤検出の危険性がなくなるように、モータ80の回転速度を調整する(ステップS5)。そのため、レーザセンサBから出力されるレーザ光L3を自身のフォトダイオード100が検出してしまうことが抑制され、その結果、実際には存在しない物体を検出したと判断してしまう誤検出を抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光を走査しつつ出力し、そのレーザ光がセンサ外部の物体に反射して生じた反射光を検出することで物体を検出するレーザセンサを複数備えた物体検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ光を走査しつつ出力し、そのレーザ光がセンサ外部の物体に反射して生じた反射光を検出することでレーザ走査範囲に存在する物体を検出するレーザセンサとして、たとえば、特許文献1に記載のものが知られている。
【0003】
特許文献1のものは、レーザダイオードから出力されたパルスレーザ光を反射して装置外部に出力する凹面鏡を、ステップモータによって回転駆動することでレーザ光を走査する。そして、装置外部に出力されたレーザ光がセンサ外部の物体に反射して生じた反射光をこの凹面鏡および光アイソレータを用いてフォトダイオードに導くことで、レーザ光がセンサ外部の物体に反射して生じた反射光を検出している。そして、この検出した反射光に基づいて、レーザ走査範囲に存在する物体を検出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2789741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、一台のレーザセンサによる検出可能範囲よりも広い範囲に渡り物体を検出しようとする場合、レーザセンサを複数台設置することになる。
【0006】
レーザセンサを複数台設置した場合、あるレーザセンサから出力したレーザ光を他のレーザセンサが検出してしまう恐れが生じる。たとえば、2つのレーザセンサがレーザ光を走査している過程において、互いに他方のレーザセンサに向けてレーザ光を出力してしまう状況が生じると、互いに他のレーザセンサからのレーザ光を検出してしまうことになる。また、レーザセンサは、レーザ光を出力した角度に存在する外部の物体に反射して生じた反射光のみしか検出しないのではなく、そのレーザ光を出力した角度に基づいて定まる所定の検出角度範囲を有している。そのため、他のレーザセンサが上記検出角度範囲内に位置しているときに、そのレーザセンサからレーザ光が出力された場合にも、他のレーザセンサが出力したレーザ光を検出してしまう恐れが生じる。
【0007】
そして、あるレーザセンサから出力されたレーザ光が他のレーザセンサによって検出されてしまうと、そのことによって、実際には存在しない物体を検出したと判断してしまう誤検出の可能性が生じる。
【0008】
本発明は、この事情に基づいて成されたものであり、その目的とするところは、複数のレーザセンサを備えた物体検出システムにおいて、あるレーザセンサから出力したレーザ光を他のレーザセンサが検出することによる誤検出を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
その目的を達成するための請求項1記載の発明は、レーザ光を発生するレーザ光発生手段と、前記レーザ光発生手段が発生したレーザ光の反射光を検出するレーザ光検出手段と、回転可能に構成され、回転することにより前記レーザ光発生手段が発生したレーザ光を走査しつつ外部に出力するとともに、回転角度に応じて定まる所定の検出角度範囲において外部から到来する前記反射光を前記レーザ光検出手段へ導く回転手段と、前記回転手段を回転駆動させる駆動手段とを備え、前記レーザ光検出手段が検出したレーザ光に基づいて物体を検出するレーザセンサを、複数備えた物体検出システムであって、
前記複数のレーザセンサのうち、少なくとも一対のレーザセンサは、一方のレーザセンサが他方のレーザセンサから出力されたレーザ光を検出する可能性のある範囲に設けられており、
その一対のレーザセンサの少なくとも一方は、自身が備えている回転手段の回転角度を逐次算出する自回転角度算出手段と、他方のレーザセンサの回転手段の回転角度を逐次取得する他回転角度取得手段と、他方のレーザセンサから出力されるレーザ光を自身のレーザ光検出手段が検出してしまう自身および他方のレーザセンサの回転手段の互いの角度関係を記憶している記憶手段と、前記自回転角度算出手段が算出した自身の回転手段の回転角度、前記他回転角度取得手段が取得した他方のレーザセンサの回転手段の回転角度、および前記記憶手段に記憶されている角度関係に基づいて、他方のレーザセンサから出力されるレーザ光を自身のレーザ光検出手段が検出してしまうことによる誤検出の危険性があるか否かを逐次予測する誤検出予測手段と、前記誤検出予測手段が誤検出の危険性があると予測したことに基づいて、誤検出の危険性がなくなるように、前記駆動手段による前記回転手段の回転速度を調整する回転速度調整手段とを備えていることを特徴とする物体検出システムである。
【0010】
この請求項1の物体検出システムは、複数のレーザセンサを備えており、複数のレーザセンサのうち、少なくとも一対のレーザセンサは、一方のレーザセンサが他方のレーザセンサから出力されたレーザ光を検出する可能性のある範囲に設けられている。そのため、上記一方のレーザセンサは、他方のレーザセンサからのレーザ光を検出したことをもって物体が存在するとの誤検出をしてしまう恐れがある。
【0011】
しかし、上記一対のレーザセンサの少なくとも一方は、誤検出予測手段、回転速度調整手段を有している。この誤検出予測手段は、自回転角度算出手段が算出した自身の回転手段の回転角度、他回転角度取得手段が取得した他方のレーザセンサの回転手段の回転角度、および記憶手段に記憶されている角度関係に基づいて、他方のレーザセンサから出力されるレーザ光を自身のレーザ光検出手段が検出してしまうことによる誤検出の危険性があるか否かを逐次予測する。そして、誤検出予測手段が誤検出の危険性があると予測した場合、回転速度調整手段は、誤検出の危険性がなくなるように、駆動手段による回転手段の回転速度を調整する。
【0012】
そのため、他方のレーザセンサから出力されるレーザ光を自身のレーザ光検出手段が検出してしまうことが抑制され、その結果、実際には存在しない物体を検出したと判断してしまう誤検出を抑制できる。
【0013】
なお、上記一対のレーザセンサは、いずれか一方のみが、他方のレーザセンサから出力されたレーザ光を検出してしまうようになっていてもよいし、また、両方のレーザセンサが他方のレーザセンサから出力されたレーザ光を検出してしまうようになっていてもよい。
【0014】
また、上記回転速度調整手段を備えている側のレーザセンサが誤検出を抑制できるのは当然であるが、誤検出は、一方のレーザセンサの回転手段の回転角度と、他方のレーザセンサの回転手段の回転角度との相対的な関係によって生じる。そのため、いずれか一方のレーザセンサのみが自身の回転手段の回転速度を調整できるようになっていれば、他方のレーザセンサが誤検出をしてしまう恐れがあるとしても、その他方のレーザセンサの誤検出も抑制可能である。
【0015】
ただし、請求項2のように、両方のレーザセンサがともに自身の回転手段の回転速度を調整できるようになっていてもよい。すなわち、請求項2は、一対のレーザセンサが、いずれも、前記自回転角度算出手段、他回転角度取得手段、記憶手段、誤検出予測手段、回転速度調整手段を備えていることを特徴とする。
【0016】
このようにすれば、一対のレーザセンサは、どちらも、誤検出を抑制するために、回転手段の回転速度を調整することが可能となる。また、一対のレーザセンサとして、同じ構成を有するレーザセンサを使用することができる利点もある。
【0017】
レーザセンサは、回転手段の回転角度を算出するために、請求項3の構成を有することが好ましい。その請求項3は、前記一対のレーザセンサは、それぞれ、前記回転手段の回転角度の基準を示す基準信号を検出する基準信号検出手段を有しており、前記自回転角度算出手段は、前記基準信号検出手段が検出した基準信号に基づいて、自身が備えている回転手段の回転角度を算出することを特徴とする。このように基準信号に基づいて回転手段の回転角度を算出することで、回転手段の回転角度を正確に算出することができ、その結果、他方のレーザセンサから出力されるレーザ光を自身のレーザ光検出手段が検出してしまうことによる誤検出の危険性があるか否かの予測精度が向上する。従って、誤検出をより抑制できる。
【0018】
さらに、基準信号としては、請求項4、6、8に記載のものを使用することができる。請求項4は、前記レーザセンサは、当該センサの内部であって、前記回転手段が出力するレーザ光を反射可能な位置に設置され、且つ、前記回転手段に対する設置角度が定まっている内部基準物体を有しており、前記基準信号検出手段は、前記回転手段が出力したレーザ光が前記内部基準物体で反射した反射光を前記レーザ光検出手段が検出したことを示す信号を前記基準信号として用いることを特徴とする。
【0019】
このようにすれば、基準信号を検出するために、センサ外部に基準物体を設置する必要がないことから、システムの設置が容易になる。
【0020】
また、請求項5は、前記レーザセンサは、周方向において、物体検出を行わない角度範囲である検出外角度範囲を有しており、前記内部基準物体は、前記検出外角度範囲に設置されていることを特徴とする。このようにすれば、内部基準物体によって、この内部基準物体を備えたレーザセンサによる物体の検出が阻害されることがない。
【0021】
また、請求項6は、前記物体検出システムは、前記レーザセンサの外部であって、前記レーザセンサからのレーザ光を反射可能な位置に設置され、前記レーザセンサに対する設置角度が定まっている外部基準物体を有しており、前記基準信号検出手段は、前記回転手段が出力したレーザ光が前記外部基準物体で反射した反射光を前記レーザ光検出手段が検出したことを示す信号を前記基準信号として用いることを特徴とする。このように外部基準物体を用いれば、内部基準物体を備えていないレーザセンサを本物体検出システムに用いることができる。
【0022】
また、請求項7は、前記外部基準物体は、前記一対のレーザセンサのいずれからのレーザ光も反射可能な位置に設置されており、前記一対のレーザセンサの前記基準信号検出手段が用いる基準信号は、同一の外部基準物体で反射した反射光に基づく信号であることを特徴とする。このようにすれば、配置しなければならない外部基準物体の数を少なくすることができる。
【0023】
また、請求項8は、前記駆動手段は、前記駆動手段の回転軸に連結されてその回転軸とともに回転する回転体を備えるとともに、その回転体が一周回転する毎に信号を発生する信号発生手段を備えており、前記基準信号検出手段は、前記信号発生手段が発生する信号を前記基準信号として用いることを特徴とする。このようにすれば、レーザセンサの内部および外部に基準物体を設ける必要がない。
【0024】
また、請求項9は、前記回転速度調整手段は、前記回転手段の回転速度の調整として回転速度の減速を行うことを特徴とする。
【0025】
前記回転手段の回転速度の調整として回転速度の増速を行うこととする場合には、回転速度の調整を行っていない通常の状態における回転速度を、回転速度調整の際に増速可能とするために、余裕を持った回転速度としなければならない。しかし、上記請求項のように回転手段の回転速度の調整として回転速度の減速を行うようにすれば、回転速度の調整を行っていない通常の状態で、駆動手段の能力限界に近い回転速度で回転手段を回転させることができる。
【0026】
また、請求項10は、前記回転速度調整手段は、前記回転手段の回転速度の調整として回転速度の減速を行うものであり、且つ、前記一対のレーザセンサは、前記誤検出予測手段が誤検出の危険性がないと予測するようにするために自身の回転手段の回転角度を変更する場合の変更角度量を自変更角度量として算出するとともに、前記誤検出予測手段が誤検出の危険性がないと予測するようにするために他方のレーザセンサの回転手段の回転角度を変更する場合の変更角度量を他変更角度量として算出し、それら自変更角度量と他変更角度量とを比較して、自変更角度量のほうが小さい場合に、自身の回転手段の回転速度の調整を行うことを特徴とする。
【0027】
このようにすれば、より変更角度量が小さい側のレーザセンサが回転手段の回転速度の調整を行うことになるので、迅速に回転速度の調整を終了させることができる。
【0028】
また、請求項11は、前記回転速度調整手段は、前記回転手段の回転速度の調整として、前記回転手段の回転の一時的な停止を行うことを特徴とする。このように、回転手段の回転を一時的に停止する調整を行ってもよい。
【0029】
また、請求項12は、前記レーザセンサは、前記レーザ光検出手段が検出したレーザ光に基づいて物体までの距離およびその物体の方向を計測する物体位置計測手段と、前記物体計測手段が計測した物体の距離および方向が警報条件を満たす場合に、警報信号を出力する警報信号出力手段をさらに備えていることを特徴とする。
【0030】
このようにすれば、本物体検出システムを、警報を行うシステムに利用することができる。なお、警報信号は、音すなわち警報音であってもよいし、電気的信号であってもよい。後者の場合には、工場内の無人走行車両の周囲に人が接近したときに当該無人走行車両を停止させるシステムなど、移動体の動作を自動制御する自動制御システムに警報信号を利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】(a)は、第1実施形態の物体検出システムに用いるレーザセンサAの構造を概略的に示す断面図であり、(b)は、図1(a)のb−b線断面図である。
【図2】第1実施形態におけるレーザセンサA、Bの配置を示す図である。
【図3】レーザセンサAからのレーザ光L3が種々の出力角度をとったときのノイズ光検出角度範囲Nを示す図である。
【図4】レーザセンサAの制御装置120が誤検出防止のために実行する処理内容を示すフローチャートである。
【図5】第2実施形態におけるレーザセンサA、Bの配置を示す図である。
【図6】周方向全部にわたってシールド60を設けたレーザセンサの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
(第1実施形態)
以下、本発明の物体検出システムの第1実施形態を図面に基づいて説明する。図1(a)は、第1実施形態の物体検出システムに用いるレーザセンサAの構造を概略的に示す断面図である。第1実施形態では、このレーザセンサA、およびこのレーザセンサAと同一の構成のレーザセンサBの2台のレーザレーダセンサを備える(図2参照)。
【0033】
図1(a)に示すように、レーザセンサAは、種々の構成部材を収容するための筐体20を備えている。この筐体20は、略水平な所定の設置面(たとえば地面など)に設置される底板部22、その底板部22の縁からその底板部22に対して垂直に設けられた後壁部24などから構成されている。
【0034】
筐体20内には、特許請求の範囲のレーザ光発生手段に相当するレーザダイオード10が備えられている。このレーザダイオード10は図示しない駆動回路からパルス電流が供給されることにより、筐体20の平板状の後壁部24に対して垂直な方向に、パルスレーザ光L0を出力する。なお、このパルスレーザ光L0はたとえば赤外光である。
【0035】
このパルスレーザ光L0は、レーザダイオード10に対向して配置されたコリメートレンズ30を通過することによって平行光に変換される。平行光に変換されたレーザ光L1は、そのレーザ光L1の進行方向に配置され、反射面がレーザ光L1の進行方向に対して45度傾斜している固定ミラー40によって反射され、固定ミラー40によって反射される前の進行方向に対して垂直方向下向きのレーザ光L2となる。
【0036】
特許請求の範囲の回転手段に相当する回転ミラー50は、矩形平板状であって、固定ミラー40の反射面に対向する反射面51を有している。反射面51は、固定ミラー40から到来するレーザ光L2に対して所定角度傾斜した角度(たとえば、固定ミラー40から到来するレーザ光L1の入射角が45度となる角度)に設けられている。固定ミラー40から到来するレーザ光L2は、この反射面51によって反射されてセンサ外部に向かうレーザ光L3となる。そして、レーザ光L3は、シールド60を透過してセンサ外部に出力される。
【0037】
また、回転ミラー50には回転軸70が固定されている。この固定軸70の回転ミラー50における固定位置は、回転軸70の軸線上に前述の固定ミラー40が位置する位置となっている。回転軸70は、特許請求の範囲の駆動手段に相当するモータ80の図示しない回転軸に連結されており、これにより、回転ミラー50はモータ80によって回転駆動される。
【0038】
回転ミラー50によって反射されてセンサ外部に出力されたレーザ光L3がセンサ外部の物体に反射すると、それによって生じた反射光L4が、シールド60を透過して回転ミラー50に入射する。なお、シールド60は、フィルタとして機能するようになっていることが好ましい。すなわち、シールド60は、反射光L4や前述のレーザ光L3を透過し、且つ、これらの光L3、L4とは異なる波長帯域の光を透過しないようになっていることが好ましい。従って、たとえば、レーザ光が赤外光の場合にシールド60は透光性の黒色材料で構成されることが好ましい。
【0039】
回転ミラー50に入射した反射光L4が反射面51によって反射されると、固定ミラー40から回転ミラー50に向かうときのレーザ光L1と平行且つ進行方向が逆向きの反射光L5となる。
【0040】
上記反射光L5は、集光レンズ90を通過することでフォトダイオード100に向かう反射光L6となり、この反射光L6が、集光レンズ90の焦点位置に設けられたフォトダイオード100によって検出される。なお、フォトダイオード100が特許請求の範囲のレーザ光検出手段に相当する。
【0041】
レーザセンサAは、さらに、筐体20の底板部22において後壁部24に近接する予め定められた位置に、特許請求の範囲の内部基準物体に相当する基準板110が固定されている。この基準板110は、その周囲の物体(筐体20の後壁部24など)と区別が容易な色となっている。
【0042】
また、レーザセンサAは、制御装置120、記憶装置130、通信装置140も備えている。これら制御装置120、記憶装置130、通信装置140は、後壁部24の付近に設けられた図示しない基板に固定される。
【0043】
制御装置120は、図示しない内部にCPU、ROM、RAM等を備えたコンピュータであり、レーザダイオード10を駆動する駆動回路を制御することによるレーザダイオードの発光制御、回転ミラー50の回転角度の逐次算出、モータ80の回転速度を調整することによる回転ミラー50の速度調整、フォトダイオード100からの検出信号に基づく物体検出処理などを行なう。この制御装置120の処理内容は後に詳述する。また、制御装置120は、記憶装置130からの情報の読み出し、記憶装置130に対する書き込み、通信装置140の制御も可能となっている。
【0044】
記憶装置130は、特許請求の範囲の記憶手段に相当するものであり、このレーザセンサAの設置位置、設置向き、基準板110の設置位置、他方のレーザセンサBの設置位置、設置向きを記憶している。さらに、記憶装置130は、他方のレーザセンサBから出力されるレーザ光を自身のフォトダイオード100が検出してしまう自身および他方のレーザセンサBの回転ミラー50の互いの角度関係(以下、誤検出角度関係という)を記憶している。なお、この誤検出角度関係の具体例は後述する。
【0045】
通信装置140は、他方のレーザセンサBの通信装置140と通信可能となっている。すなわち、レーザセンサA、Bは、それぞれが備える通信装置140により、互いに通信可能となっている。そして、通信装置140は、制御装置120が逐次算出した自身の回転ミラー50の回転角度を他方のレーザセンサBの通信装置140に送信する。なお、これら通信装置140は、無線方式でも有線方式でもよい。
【0046】
図1(b)は、図1(a)のb−b線断面図である。この図1(b)に示すように、シールド60は、回転ミラー50の周りにおいて略190度にわたり設けられている。また、回転ミラー50の周りの他の角度範囲には筐体20が設けられている。
【0047】
前述のように、シールド60は反射光L4(およびレーザ光L3)を透過する。一方、筐体20はそれらの光L4、L3を透過しない。そのため、レーザセンサAが物体を検出できる角度範囲は、シールド60が設けられている角度範囲となり、筐体20が設けられている角度範囲では物体検出を行わない。
【0048】
図1(b)に示されるように、基準板110は、回転ミラー50から見て筐体20が設けられている角度範囲、すなわち、物体検出を行わない検出外角度範囲に設けられている。そのため、基準板110の存在によって物体を検出することができる角度範囲が制限されることはない。
【0049】
レーザセンサAは、物体を検出する作動を実行中は、レーザダイオード10が所定のパルス間隔でパルスレーザ光L0を出力しつつ、回転ミラー50が所定の速度、たとえば、2000回転/分で回転する。そして、パルスレーザ光L0を出力してから、反射光L6を検出するまでの時間から物体までの距離を計測する。また、パルスレーザ光L0を出力したときの回転ミラー50の角度から、物体の存在する方向を決定する。そして、物体の距離、方向が警報条件を満たす場合、警報信号を出力する。この警報信号は、たとえば、音すなわち警報音である。この場合、レーザセンサAは警報音を出力するためのスピーカをさらに備えることになる。また、警報信号が電気信号であり、この警報信号(電気信号)がさらに他の機械に供給されるようになっていてもよい。
【0050】
ところで、前述のように、筐体20が設けられている角度範囲は物体を検出しない角度範囲となるが、この回転ミラー50の回転角度が物体を検出しない角度範囲内のときも、パルスレーザ光L0を出力している。そのため、基準板110に向かってレーザ光L3が出力され、基準板110に反射して生じた反射光L4に由来する反射光L6をフォトダイオード100が検出することがある。
【0051】
基準板110は、前述のように予め定められた位置に配置されていることから、計測される物体までの距離に基づいて、その物体が基準板110であるか否かを判断することができる。そして、基準板110を検出したことが判断できれば、そのときの回転ミラー50の回転角度も決定することができる。なお、基準板110は、このように、回転ミラー50の回転角度を決定するために用いるだけでなく、基準板110に反射して生じた反射光L4に由来する反射光L6を検出した場合には、行路長も既知であることから、物体までの距離を算出する演算式の補正にも利用する。
【0052】
制御装置120は、上記基準板110を検出したときの回転ミラー50の回転角度を基準として、モータ80に接続されたロータリエンコーダ(図示せず)が所定回転角度毎に発生するパルスに基づいて、モータ80およびこのモータ80の回転軸と一体回転する回転ミラー50の回転角度を逐次算出する。
【0053】
この逐次算出した回転ミラー50の回転角度は物体の方位の決定に利用する。また、逐次算出した回転ミラー50の回転角度は、通信装置140から他方のレーザセンサBへ送信する。
【0054】
ここで、本実施形態では、レーザ光L3の出力方向を回転ミラー50の回転角度とする。たとえば、図1(b)に示す向きにレーザ光L3が出力される場合、このレーザ光L3の出力方向を回転ミラー50の回転角度とする。また、以下の説明では、後壁部24に垂直な方向であって、回転ミラー50から後壁部24とは反対方向に向かう方向を0°とし、0°から、矢印Rで示す回転ミラー50の回転方向に角度が増加するものと定義して、すなわち、図1(b)の右下に示すように角度を定義して、以下の説明を行う。
【0055】
図1(b)に示す状態は、回転ミラー50の回転角度が0°の状態であり、このとき、当然、0°方向から到来する反射光L4は、回転ミラー50等に導かれて、フォトダイオード100によって検出することができる。
【0056】
しかし、回転ミラー50の回転角度が0°のとき、0°方向から到来する反射光L4しか検出しないわけではなく、その他の光(以下、ノイズ光という)を検出してしまう恐れがある。詳しくは、ノイズ光が、シールド60を透過し、回転ミラー50の反射面51に反射して上方向に導かれる場合、このノイズ光をフォトダイオード100が検出してしまう恐れがある。たとえば、図1(b)に示すように、90°方向から到来するノイズ光N1や、270°方向から到来するノイズ光N2なども検出してしまう恐れがある。
【0057】
なお、反射面51の形状、傾きによっては、ノイズ光が反射面51に当たったとしても、フォトダイオード100に全く導かれなかったり、部分的にしか導かれなかったりする。従って、ノイズ光を検出してしまう条件には、回転ミラー50の反射面51の形状、傾きが関係する。本実施形態では、説明の便宜上、外部に出力するレーザ光L3に対して、±90°の範囲のノイズ光を検出してしまうものとする。
【0058】
次に、図2を説明する。図2は第1実施形態におけるレーザセンサA、Bの配置を示す図である。図2に示すように、レーザセンサA、Bは、それらレーザセンサA、Bの後壁部24が互いに平行、且つ、シールド60が互いに対向するように配置されている。また、C(A)、C(B)は、レーザセンサA、Bが物体を検出することができる角度範囲(以下、物体検出角度範囲という)である。なお、この物体検出角度範囲は、シールド60が設けられている角度範囲と略対応する。
【0059】
レーザセンサA,Bは、この図2に示す配置において、それぞれの回転ミラー50を互いに同一の回転方向、回転速度で回転させつつ、レーザ光L3を周囲に出力し、自身が出力したそのレーザ光L3がセンサ外部の物体に反射して生じた反射光L4を検出することで、周囲の物体を検出する。
【0060】
しかし、図2に示すように配置されている場合、レーザセンサBは、レーザセンサAに向けてレーザ光L3を出力することがある。そのため、レーザセンサBが出力したレーザ光L3を検出してしまうことにより、レーザセンサAは、実際には存在しない物体を検出したと判断してしまう誤検出(以下、単に誤検出という)の危険性がある。そこで、レーザセンサAは、レーザセンサBがレーザセンサAに向けてレーザ光L3を出力するときに、レーザセンサBが出力したレーザ光L3を検出しないように、回転ミラー50の回転角度を調整する。
【0061】
ここで、レーザセンサBが出力したレーザ光L3を検出しないレーザセンサAの回転ミラー50の回転角度を図3を用いて説明する。図3は、レーザセンサAからのレーザ光L3が種々の出力角度をとったときに、ノイズ光を検出してしまう角度範囲(以下、ノイズ光検出角度範囲)Nを示している。また、レーザセンサBは、図3(a)〜(f)において、全てレーザセンサAに向けてレーザ光L3を出力する状態となっている。
【0062】
レーザセンサBがレーザセンサAに向けてレーザ光L3を出力するときには、図3においては図示しないレーザセンサBの回転ミラー50の回転角度は180°となっている。レーザセンサAがレーザセンサBからのレーザ光L3を検出しないようにするには、レーザセンサBがレーザセンサAに向けてレーザ光L3を出力するとき、すなわち、レーザセンサAにとって0°方向からレーザセンサBからのレーザ光L3が到来するときに、レーザセンサAのノイズ光検出角度範囲Nが0°を含んでいないようにすればよい。
【0063】
図3(a)はノイズ光検出角度範囲Nが0°を含んでいる。そのため、この図3(a)の状態、すなわち、レーザセンサAの回転ミラー50の回転角度がレーザセンサBのそれに対して180°進んでいる、或いは、180°遅れている場合、誤検出をしてしまう危険性があることになる。
【0064】
図3(b)もノイズ光検出角度範囲Nが0°を含んでいる。そのため、この図3(b)の状態、すなわち、レーザセンサAの回転ミラー50の回転角度がレーザセンサBのそれに対して225°進んでいる、或いは、135°遅れている場合も、誤検出をしてしまう危険性があることになる。
【0065】
図3(d)はノイズ検出角度範囲Nが0°を含んでいない。そのため、この図3(d)の状態、すなわち、レーザセンサAの回転ミラー50の回転角度がレーザセンサBのそれに対して315°進んでいる、或いは、45°遅れている場合、誤検出をしてしまう危険性はないことになる。
【0066】
図3(e)もノイズ検出角度範囲Nが0°を含んでいない。そのため、この図3(e)の状態、すなわち、レーザセンサAの回転ミラー50の回転角度がレーザセンサBのそれに対して45°進んでいる、或いは、315°遅れている場合も、誤検出をしてしまう危険性はないことになる。
【0067】
図3(c)、(f)は、ノイズ検出角度範囲Nの一方の端が0°となっている。この図3(c)、(f)の状態が誤検出してしまう状態と誤検出しない状態との境界となる。
【0068】
図3(c)は、レーザセンサAの回転ミラー50の回転角度がレーザセンサBのそれに対して270°進んでいる、或いは、90°遅れいている状態である。一方、図3(f)は、レーザセンサAの回転ミラー50の回転角度がレーザセンサBのそれに対して90°進んでいる、或いは、270°遅れいている状態である。
【0069】
以上のことから、誤検出しないようにするためには、レーザセンサAの回転ミラー50の回転角度がレーザセンサBのそれよりも、0〜90°或いは270〜360°進んでいるか、または、0〜90°或いは270〜360°遅れていればよいことになる。反対に、レーザセンサAの回転ミラー50の回転角度がレーザセンサBのそれよりも、90〜270°進んでいる、或いは、遅れているという互いの角度関係にある場合、誤検出の危険性があることになり、この角度関係、すなわち、レーザセンサAの回転ミラー50の回転角度がレーザセンサBのそれよりも、90〜270°進んでいる、或いは、遅れている関係が前述の誤検出角度関係の一例である。
【0070】
次に、レーザセンサAの制御装置120が誤検出防止のために実行する処理内容を説明する。図4は、その処理内容を示すフローチャートである。この図4に示す処理は、物体検出作動を実行中、所定周期で繰り返し実行する。
【0071】
まず、ステップS1では、前回、誤検出が予測されるか否かを判断してからの経過時間が10分経過したか否かを判断する。この判断が肯定判断の場合には、ステップS2以降を実行する。一方、否定判断の場合には、一旦、処理を終了する。
【0072】
ここで10分としているのは次の理由による。すなわち、本実施形態では、モータ80の回転速度の制御精度から、誤検出の危険性がないように回転ミラー50の回転角度の調整を行えば、レーザセンサAの回転ミラー50とレーザセンサBの回転ミラー50の回転角度との角度関係は、その後、10分は、誤検出の危険性が生じるほどには変化しないと判断できるからである。もちろん、10分よりも短い時間間隔でステップS2以下を実行しても構わない。
【0073】
ステップS2は特許請求の範囲の自回転角度算出手段に相当する処理であり、自身の回転ミラー50の回転角度の較正・算出を行う。較正は次のようにして行う。まず、フォトダイオード100が逐次検出する反射光L6から、レーザ光L3が基準板110に当たって反射して生じた反射光L6を検出する。この検出は、前述のように、レーザ光L0を出力してから反射光L6を検出するまでの時間から算出できる物体までの距離を用いて行う(この処理は、請求項の基準信号検出手段としての処理に相当する)。そして、レーザ光L3が基準板110に当たったときの回転ミラー50の回転角度を基準角度(ここでは180°)とする。その後は、ロータリエンコーダから出力されるパルス数をカウントすることで、上記基準角度に対してどれだけ回転ミラー50が回転したかを逐次算出する。なお、本実施形態では、上記基準角度を180°としているが、もちろん、この基準角度を0°と定義してもよい。
【0074】
続くステップS3は特許請求の範囲の他回転角度取得手段に相当する処理であり、他方のレーザセンサBの回転ミラー50の較正後の回転角度を、その回転角度となっている時刻とともに取得する。取得の方法としては、たとえば、他方のレーザセンサBに対して、回転ミラー50の回転角度の較正および較正後の回転角度の送信を指示する信号を、通信装置140から送信し、それに応答して、レーザセンサBから送信されてきた回転角度を受信する方法がある。また、レーザセンサBも、10分経過する毎に、図4のステップS2を実行し、その後、較正後の回転ミラー50の回転角度をレーザセンサAに送信するようにしておいてもよい。
【0075】
このようにして、レーザセンサBの回転ミラー50の回転角度を取得したらステップS4へ進む。なお、図2において説明したように、レーザセンサBは、レーザセンサAに対して、互いのシールド60が対向する向きに配置されている。すなわち、レーザセンサBはレーザセンサAとは異なる向きに配置されている。そのため、レーザセンサBは、レーザセンサAとは0°の方向が異なる。しかし、レーザセンサAの記憶装置130には、レーザセンサBの向きも記憶されている。この記憶装置130に記憶されているレーザセンサBの向きに基づいて、ステップS3で取得した回転角度を、自身の座標系における角度に変換して以降のステップの処理を行なう。
【0076】
ステップS4は特許請求の範囲の誤検出予測手段に相当する処理である。このステップS4では、ステップS2で較正した後の自身の回転ミラー50の回転角度、ステップS3で取得したレーザセンサBの回転ミラー50の回転角度およびそのときの時刻から、同時刻における互いの回転ミラー50の回転角度を算出する。そして、その算出した互いの回転ミラー50+の回転角度から、誤検出の危険性があるか否かを予測する。
【0077】
ここで、互いの回転ミラー50の角度関係が誤検出角度関係に該当する場合には、誤検出の危険性があると予測することになる。しかし、本実施形態では、この誤検出角度関係関係に該当する場合のみならず、誤検出角度関係に該当しそうな場合も、誤検出の危険性があると予測する。誤検出角度関係に該当しそうな場合とは、互いの回転ミラー50の角度関係が、誤検出角度関係に近い関係、たとえば、レーザセンサAの回転ミラー50の回転角度がレーザセンサBのそれよりも、80〜90°進んでいる場合や、270〜280°進んでいる場合などである。
【0078】
このステップS4が否定判断の場合にはステップS5、6を実行することなく、一旦処理を終了する。一方、ステップS4が肯定判断の場合にはステップS5へ進む。ステップS5では、レーザセンサA、Bの回転ミラー50の角度関係を変化させ、誤検出の危険性がないと判断できる角度関係になるまで、モータ80の回転速度を減速させる。どの程度の速度まで減速させるか、どの程度の時間減速させるかは、レーザセンサA、Bの回転ミラー50の回転角度に基づいて決定する。
【0079】
ステップS5で、モータ80を減速させて、誤検出の危険性がないと判断できる角度関係としたら、ステップS6にて、モータ80の回転速度を物体検出時の通常の回転速度まで復帰させ、処理を終了する。なお、ステップS5、S6が特許請求の範囲の回転速度調整手段に相当する処理である。
【0080】
以上、説明した本実施形態によれば、レーザセンサAは、自身の回転ミラー50の回転角度を算出し(ステップS2)、また、他方のレーザセンサBの回転ミラー50の回転角度を取得し(ステップS3)、これらステップS2、S3で算出、取得した回転角度と、記憶装置130に記憶されている誤検出角度関係とから、誤検出の危険性があるか否かを予測する(ステップS4)。そして、誤検出の危険性があると予測した場合、誤検出の危険性がなくなるように、モータ80の回転速度を調整する(ステップS5)。そのため、レーザセンサBから出力されるレーザ光L3を自身のフォトダイオード100が検出してしまうことが抑制され、その結果、実際には存在しない物体を検出したと判断してしまう誤検出を抑制できる。
【0081】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態を説明する。なお、以下の説明において、前述の実施形態と同一の構成・意味には、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。第2実施形態でも、2台のレーザセンサA,Bを備える。
【0082】
図5は、第2実施形態におけるレーザセンサA、Bの配置を示す図である。この図5に示すように、第2実施形態では、レーザセンサA、Bは、筐体20の後壁部24の幅方向に所定間隔離隔して、互いに同一向きに配置されている。
【0083】
このような配置であっても、物体検出角度範囲C(A)、C(B)が互いに重なっていることから分かるように、誤検出の恐れがある。そのため、第2実施形態でも、この配置に対応した検出角度範囲を誤検出角度関係を記憶装置130に記憶している。そして、前述の図4に示す処理を実行して、誤検出を抑制する。
【0084】
ただし、第2実施形態では、レーザセンサA、Bの物体検出角度範囲C(A)、C(B)に含まれる位置に、外部基準物体150が配置されており、この外部基準物体150を用いて回転ミラー50の回転角度の較正・算出を行う。
【0085】
外部基準物体150は、レーザセンサA,Bに対して所定の角度、距離に設置されており、外部基準物体150の設置角度、位置は、各レーザセンサA、Bの記憶装置130に記憶されている。そして、レーザセンサA、Bは、外部基準物体150で反射した反射光に基づく信号を用いて回転ミラー50の回転角度の較正・算出を行う。なお、この外部基準物体150は、レーザ光L3が当たる部分が、その周囲に存在する物体との識別が容易な色・模様となっていることが好ましい。また、それ自体が周囲に存在する物体との識別が容易な色、模様とされる代わりに、バーコードのようなラベルが貼り付けられても良い。
【0086】
この第2実施形態では、外部基準物体150で反射した反射光に基づく信号を用いて回転ミラー50の回転角度の較正・算出を行うので、レーザセンサA、Bは、内部に基準板110が備えられていなくてもよい。従って、内部に基準板110を備えていないレーザセンサを第2実施形態の物体検出システムに利用することができる。
【0087】
また、レーザセンサA、Bは、同一の外部基準物体150で反射した反射光に基づく信号を用いて回転ミラー50の回転角度の較正・算出を行うことから、配置しなければならない外部基準物体150を1つのみとすることができる。
【0088】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、次の実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0089】
たとえば、前述の第1、第2実施形態では、基準板110あるいは外部基準物体150を用いて回転ミラー50の回転角度の較正・算出を行っていたが、これに限らず、たとえば、モータ80に接続されたロータリエンコーダがZ相信号を出力することができる形式である場合、このZ相信号を用いてもよい。すなわち、Z相信号はロータリエンコーダの回転板が一回転する毎に1回だけ発生する信号であることから、このZ相信号を基準信号として用いて、回転ミラー50の回転角度の較正・算出を行ってもよい。この場合、ロータリエンコーダ、および、そのロータリエンコーダが備える回転板が、それぞれ、特許請求の範囲の信号発生手段、回転体に相当する。
【0090】
また、前述の実施形態のレーザセンサA、Bは、シールド60は略190度にわたり設けられていたが、図6に断面図を示すレーザセンサのように、周方向全部にわたってシールド60を設けてもよい。この場合、物体検出角度範囲を360°とすることができる。
【0091】
また、前述の実施形態では、レーザセンサAが回転速度を減速していたが、レーザセンサBが回転速度を減速することによって、誤検出を抑制するようにしてもよい。また、レーザセンサA,Bがいずれも、回転速度を減速して誤検出を抑制できるようにしてもよい。
【0092】
さらに、レーザセンサA,Bがいずれも、回転速度を減速して誤検出を抑制できるようになっている場合、いずれの回転角度を変更したほうが、より回転角度の変更量が少ないかを判断し、回転角度の変更量が小さい側が回転速度を調整するようにしてもよい。
【0093】
より詳しくは、各レーザセンサA、Bは、誤検出の危険性がないようにするために自身の回転ミラー50の回転角度を変更する場合の変更角度量を自変更角度量として算出するとともに、誤検出の危険性がないようにするために他方のレーザセンサの回転ミラー50の回転角度を変更する場合の変更角度量を他変更角度量として算出する。そして、それら自変更角度量と他変更角度量とを比較して、自変更角度量のほうが小さい場合に、自身の回転ミラー50の回転速度の調整を行う。
【0094】
具体例を挙げると、図3(b)の状態の場合、レーザセンサAが減速する場合、相対的な角度関係は、ノイズ光検出角度範囲Nが反時計回りに回転する方向に変化する。そのため、レーザセンサAの変更角度量(自変更角度量)は135°となる。一方、レーザセンサBが減速する場合、相対的な角度関係は、ノイズ光検出角度範囲Nが時計回りに回転する方向に変化する。そのため、レーザセンサBの変更角度量(他変更角度量)は45°となる。従って、この場合、レーザセンサBが減速を行うことになる。
【0095】
また、前述の実施形態では、回転速度の調整として減速を行っていたが、回転速度の調整として増速を行ってもよい。また、一時的に回転ミラー50の回転を停止させる調整を行ってもよい。
【0096】
また、レーザセンサを3台以上備えた物体検出システムであってもよい。
【0097】
また、前述の実施形態では、回転ミラー50は平板状であったが、回転ミラー50として凹面鏡を用いることもできる。
【0098】
また、一対のレーザセンサの配置は、図2に示すように対向する配置や、図5に示す横方向の配置に限らず、一方のレーザセンサに対して、斜め方向(図1(b)に定義する角度において、45°、225°など)に他方のレーザセンサを配置してもよい。
【符号の説明】
【0099】
10:レーザダイオード、 20:筐体、 22:底板部、 24:後壁部、 30:コリメートレンズ、 40:固定ミラー、 50:回転ミラー(回転手段)、 51:反射面、 60:シールド、 70:回転軸、 80:モータ(駆動手段)、 90:集光レンズ、 100:フォトダイオード(レーザ光検出手段)、 110:基準板(内部基準物体)、 120:制御装置、 130:記憶装置(記憶装置)、 140:通信装置、 150:外部基準物体、 A:レーザセンサ、 B:レーザセンサ、 C:物体検出角度範囲、 N:ノイズ光検出角度範囲、 R:回転ミラーの回転方向、 S2:自回転角度算出手段、 S3:他回転角度取得手段、 S4:誤検出予測手段、 S5、S6:回転速度調整手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を発生するレーザ光発生手段と、
前記レーザ光発生手段が発生したレーザ光の反射光を検出するレーザ光検出手段と、
回転可能に構成され、回転することにより前記レーザ光発生手段が発生したレーザ光を走査しつつ外部に出力するとともに、回転角度に応じて定まる所定の検出角度範囲において外部から到来する前記反射光を前記レーザ光検出手段へ導く回転手段と、
前記回転手段を回転駆動させる駆動手段とを備え、
前記レーザ光検出手段が検出したレーザ光に基づいて物体を検出するレーザセンサを、
複数備えた物体検出システムであって、
前記複数のレーザセンサのうち、少なくとも一対のレーザセンサは、一方のレーザセンサが他方のレーザセンサから出力されたレーザ光を検出する可能性のある範囲に設けられており、
その一対のレーザセンサの少なくとも一方は、
自身が備えている回転手段の回転角度を逐次算出する自回転角度算出手段と、
他方のレーザセンサの回転手段の回転角度を逐次取得する他回転角度取得手段と、
他方のレーザセンサから出力されるレーザ光を自身のレーザ光検出手段が検出してしまう自身および他方のレーザセンサの回転手段の互いの角度関係を記憶している記憶手段と、
前記自回転角度算出手段が算出した自身の回転手段の回転角度、前記他回転角度取得手段が取得した他方のレーザセンサの回転手段の回転角度、および前記記憶手段に記憶されている角度関係に基づいて、他方のレーザセンサから出力されるレーザ光を自身のレーザ光検出手段が検出してしまうことによる誤検出の危険性があるか否かを逐次予測する誤検出予測手段と、
前記誤検出予測手段が誤検出の危険性があると予測したことに基づいて、誤検出の危険性がなくなるように、前記駆動手段による前記回転手段の回転速度を調整する回転速度調整手段と
を備えていることを特徴とする物体検出システム。
【請求項2】
請求項1において、
前記一対のレーザセンサが、いずれも、前記自回転角度算出手段、他回転角度取得手段、記憶手段、誤検出予測手段、回転速度調整手段を備えていることを特徴とする物体検出システム。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記一対のレーザセンサは、それぞれ、前記回転手段の回転角度の基準を示す基準信号を検出する基準信号検出手段を有しており、
前記自回転角度算出手段は、前記基準信号検出手段が検出した基準信号に基づいて、自身が備えている回転手段の回転角度を算出することを特徴とする物体検出システム。
【請求項4】
請求項3において、
前記レーザセンサは、当該センサの内部であって、前記回転手段が出力するレーザ光を反射可能な位置に設置され、且つ、前記回転手段に対する設置角度が定まっている内部基準物体を有しており、
前記基準信号検出手段は、前記回転手段が出力したレーザ光が前記内部基準物体で反射した反射光を前記レーザ光検出手段が検出したことを示す信号を前記基準信号として用いることを特徴とする物体検出システム。
【請求項5】
請求項4において、
前記レーザセンサは、周方向において、物体検出を行わない角度範囲である検出外角度範囲を有しており、
前記内部基準物体は、前記検出外角度範囲に設置されていることを特徴とする物体検出システム。
【請求項6】
請求項3において、
前記物体検出システムは、前記レーザセンサの外部であって、前記レーザセンサからのレーザ光を反射可能な位置に設置され、前記レーザセンサに対する設置角度が定まっている外部基準物体を有しており、
前記基準信号検出手段は、前記回転手段が出力したレーザ光が前記外部基準物体で反射した反射光を前記レーザ光検出手段が検出したことを示す信号を前記基準信号として用いることを特徴とする物体検出システム。
【請求項7】
請求項6において、
前記外部基準物体は、前記一対のレーザセンサのいずれからのレーザ光も反射可能な位置に設置されており、
前記一対のレーザセンサの前記基準信号検出手段が用いる基準信号は、同一の外部基準物体で反射した反射光に基づく信号であることを特徴とする物体検出システム。
【請求項8】
請求項3において、
前記駆動手段は、前記駆動手段の回転軸に連結されてその回転軸とともに回転する回転体を備えるとともに、その回転体が一周回転する毎に信号を発生する信号発生手段を備えており、
前記基準信号検出手段は、前記信号発生手段が発生する信号を前記基準信号として用いることを特徴とする物体検出システム。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項において、
前記回転速度調整手段は、前記回転手段の回転速度の調整として回転速度の減速を行うことを特徴とする物体検出システム。
【請求項10】
請求項2におて、
前記回転速度調整手段は、前記回転手段の回転速度の調整として回転速度の減速を行うものであり、且つ、
前記一対のレーザセンサは、
前記誤検出予測手段が誤検出の危険性がないと予測するようにするために自身の回転手段の回転角度を変更する場合の変更角度量を自変更角度量として算出するとともに、前記誤検出予測手段が誤検出の危険性がないと予測するようにするために他方のレーザセンサの回転手段の回転角度を変更する場合の変更角度量を他変更角度量として算出し、それら自変更角度量と他変更角度量とを比較して、自変更角度量のほうが小さい場合に、自身の回転手段の回転速度の調整を行うことを特徴とする物体検出システム。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか1項において、
前記回転速度調整手段は、前記回転手段の回転速度の調整として前記回転手段の回転の一時的な停止を行うことを特徴とする物体検出システム。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項において、
前記レーザセンサは、
前記レーザ光検出手段が検出したレーザ光に基づいて物体までの距離およびその物体の方向を計測する物体位置計測手段と、
前記物体計測手段が計測した物体の距離および方向が警報条件を満たす場合に、警報信号を出力する警報信号出力手段をさらに備えていることを特徴とする物体検出システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−112503(P2011−112503A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−269062(P2009−269062)
【出願日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(501428545)株式会社デンソーウェーブ (1,155)
【Fターム(参考)】