説明

物体検出装置

【課題】追尾範囲を適切に設定して物体の検出精度の向上が図れる物体検出装置を提供すること。
【解決手段】物体検知を行うレーダ3〜5を備えて構成され、レーダ3〜5により検知された物体の追尾範囲を物体が検知される方向に応じて設定する。これにより、物体の移動状態に応じて追尾範囲の向きを設定することが可能となる。このため、物体の移動状態に適した追尾範囲を設定でき、物体のロストなどを低減でき、適切なトラッキングが行える。従って、物体の検出精度を高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に設置される物体検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に設置される物体検出装置として、特表2006−510097号公報に記載されるように、レーザスキャナにより対象物を認識し追跡するものが知られている。また、この種の物体検出装置として、レーダレーザを用いて検知した対象物をトラッキングして物体を検出するものもある。例えば、先行車を追従制御する場合に先行車の位置をトラッキングして追尾し、先行車の位置を検出する。
【特許文献1】特表2006−510097号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このようにトラッキングして対象物を検出する際、対象物の検出精度が低下する場合がある。例えば、図5に示すように、対象物をトラッキングする際、次に対象物が移動する位置Pの周りに追尾範囲Aを設定し、その追尾範囲A内の物体を対象物として認識する。このとき、追尾範囲Aが矩形状に設定され、その追尾範囲Aの二辺が検出中心軸Cと平行に設定される。しかしながら、検出中心軸Cに対し対象物が交差する方向に移動している場合、対象物の移動方向と追尾範囲Aの向きが合っていないため、適切なトラッキングが行えず、対象物の検出精度が低下してしまう。
【0004】
そこで本発明は、追尾範囲を適切に設定して物体の検出精度の向上が図れる物体検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、本発明に係る物体検出装置は、物体検知を行う物体検知器と、前記物体検知器により検知された物体の追尾範囲を設定する追尾範囲設定手段とを備え、前記追尾範囲設定手段は、前記物体が検知される方向に応じて追尾範囲を設定するように構成されている。
【0006】
この発明よれば、物体が検知される方向に応じて追尾範囲を設定することにより、物体の移動状態に応じて追尾範囲の向きを設定することができる。このため、物体の移動状態に適した追尾範囲を設定でき、物体のロストなどが低減して適切なトラッキングが行える。従って、物体の検出精度を高めることができる。
【0007】
また本発明に係る物体検出装置において、前記物体検知器は、車両に設置され、その車両の進行方向と異なる方向に検出中心軸を有しており、前記追尾範囲設定手段は、前記物体が検知される方向に沿って追尾範囲の方向を設定することが好ましい。
【0008】
この発明よれば、物体が検知される方向に沿って追尾範囲を設定することにより、物体が検出中心軸に対し斜めに移動する場合に、検出中心軸に沿って追尾範囲を設定する場合と比べて適切な方向に追尾範囲を設定することができる。このため、物体のロストなどが低減でき適切なトラッキングが行える。従って、物体の検出精度を高めることができる。
【0009】
また本発明に係る物体検出装置において、前記物体検知器は、車両に設置され、その車両の進行方向と異なる方向に検出中心軸を有しており、前記追尾範囲設定手段は、前記物体が移動する方向に沿って追尾範囲の方向を設定することが好ましい。
【0010】
この発明よれば、物体が移動する方向に沿って追尾範囲の方向を設定することにより、物体が検出中心軸に対し斜めに移動する場合に、検出中心軸に沿って追尾範囲を設定する場合と比べて適切な方向に追尾範囲を設定することができる。このため、物体のロストなどが低減でき適切なトラッキングが行える。従って、物体の検出精度を高めることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、追尾範囲を適切に設定することにより物体の検出精度の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0013】
図1は本発明の実施形態に係る物体検出装置の構成概要図である。
【0014】
図1に示すように、本実施形態に係る物体検出装置1は、車両2に設置されるレーダ3、4及び5により車両の周囲の物体(物標)を検出する装置であり、例えば渋滞時の先行車両追従のオートクルーズコントールシステム、プリクラッシュブレーキアシストシステム、プリクラッシュシートベルトシステムなどの物体検出手段として用いられる。
【0015】
本実施形態に係る物体検出装置1のレーダ3、4は、車両2の前側方を検知する物体検知器として機能するものであって、車両2の前後方向に対し交差する方向の検知中心軸を有し、その検知中心軸の方向を中心に所定の角度範囲で検知を行う。例えば、レーダ3は、車両2の左前部に取り付けられ、車両2の左斜め前方を検知中心軸の方向として設置され、車両2の左斜め前方の領域をセンシングしている。また、レーダ4は、車両2の右前部に取り付けられ、車両2の右斜め前方を検知中心軸の方向として設置され、車両2の右斜め前方の領域をセンシングしている。
【0016】
レーダ3、4としては、例えばミリ波レーダが用いられ、好ましくはFM−CW方式のミリ波レーダが用いられる。レーダ3、4は、検知領域に所定の周波数の電波を発信し、物体などにより反射する観測波を受信する。この受信信号を信号解析することにより、物体の車両2に対する相対速度、車両2からの距離を検出することができる。
【0017】
レーダ5は、車両2の前方を検知する物体検知器として機能するものであって、車両2の前方を検知中心方向とし、その検知中心軸の方向を中心に所定の角度範囲を検知している。例えば、レーダ5は、車両2の前部中央位置に取り付けられ、車両2の前方を検知方向として設置され、車両2の前方領域をセンシングしている。
【0018】
このレーダ5としては、例えばミリ波レーダが用いられ、好ましくはFM−CW方式のミリ波レーダが用いられる。レーダ5は、検知領域に所定の周波数の電波を発信し、物体などにより反射する観測波を受信する。この受信信号を信号解析することにより、物体の車両2に対する相対速度、車両2からの距離を検出することができる。
【0019】
レーダ3、4は、レーダ5と同様な範囲の検知領域を検知できるものを用いてもよいが、レーダ5より検知距離の短いものを用いてもよい。この場合であっても、他車の側方からの接近を十分に検知することができ、レーダ3、4の作動時の消費電力を低く抑えることができる。
【0020】
物体検出装置1は、ECU(Electronic ControlUnit)6を備えている。ECU6は、物体検出装置1の装置全体の制御を行うものであり、例えばCPU、ROM、RAMを含むコンピュータを主体として構成されている。
【0021】
ECU6は、レーダ3、4及び5と接続され、それぞれの検知信号を入力する。そして、ECU6は、これらの検知信号の信号処理を行い、検知領域にある物体等の相対速度、車両2までの距離を演算する。その際、ECU6は、検知した物体に対しトラッキングを行い、所定の回数、時間など継続して検知されるものについて実在する物体として認識する。
【0022】
このとき、ECU6は、トラッキングを行うに際し、物体が検知される方向に応じて追尾範囲を設定する追尾範囲設定手段として機能する。追尾範囲は、トラッキングにより物体を継続して検出するために設定される追尾位置範囲であり、例えば矩形状に設定される。
【0023】
図2に示すように、例えば、追尾位置範囲A1は、物体検知方向D1に沿って設定される。すなわち、今回の物体の予測位置P1の周りに追尾位置範囲A1が設定され、矩形状の二辺が物体検知方向D1と平行となるように設定される。今回の物体の予測位置P1は、前回検知された物体の位置に基づいて予測される。物体の予測位置P1がレーダ3の検出中心軸Oから外れている場合には、追尾位置範囲A1は検出中心軸Oと平行とならないように設定されることとなる。
【0024】
また、図3に示すように、追尾位置範囲A1は、物体の移動方向D2に沿って設定してもよい。例えば、今回の物体の予測位置P1の周りに追尾位置範囲A1が設定され、矩形状の二辺が物体の移動方向D2と平行となるように設定される。物体の移動方向D2は、例えば前回検知された物体の位置P0と次の予想位置P1の位置関係に基づいて決定すればよい。
【0025】
また、ECU6は、トラッキングを行うに際し、追尾すべき物体の相対速度範囲を設定する追尾相対速度範囲設定手段として機能する。追尾相対速度範囲は、検知した物体の相対速度に対し設定されるしきい値を境界として設定される相対速度範囲である。追尾相対速度範囲内の相対速度を持つ物体がトラッキング対象として追尾されることとなる。
【0026】
図1に示すように、物体検出装置1には、車速センサ7が備えられている。車速センサ7は、車両2の走行速度を検出する車速検出手段として機能するものであり、例えば車輪速センサが用いられる。車速センサ7は、ECU6に接続され、検出信号をECU6に入力する。
【0027】
また、物体検出装置1には、報知部8を設けることが好ましい。報知部8は、車両2に接近する物体を検知した場合に、そのことを車両2の運転者に報知する報知手段として機能するものである。この報知部8としては、運転者に物体接近を報知できるものであればいずれのものでもよく、例えばランプ点灯、LED点灯、液晶表示など視覚を通じて故障発生を報知するもの、ブザー、音声などにより聴覚を通じて故障発生を報知するものなどが用いられる。報知部8は、ECU6と接続され、ECU6から報知指示信号が出力された際に報知動作を行う。
【0028】
次に、本実施形態に係る物体検出装置1の動作について説明する。
【0029】
図4は本実施形態に係る物体検出装置1の動作概要を示すフローチャートである。この図4の制御処理は、例えばECU6によって繰り返し実行され、レーダ3〜5の検知信号により物体の位置、相対速度を演算するごとに行われる。
【0030】
まず、図1において、本実施形態に係る物体検出装置1は、レーダ5から車両の前方の方向に送信波を送信し、物体で反射してくる反射波を受信して物体までの距離、物体の相対速度を検出する。例えば、レーダ5の送信波の周波数を上昇、下降させ、送信波と反射波をミキシングしてビート信号を抽出し、このビート信号における上昇区間のビート周波数fbu、下降区間のビート周波数fbdを組み合わせて物体のまでの距離、物体の相対速度を算出する。
【0031】
また、レーダ3、4から車両の前側方の方向に送信波を送信し、物体での反射する反射波を受信して物体までの距離、物体の相対速度を検出する。この場合もレーダ5と同様にして、レーダ3、4の送信波の周波数を上昇、下降させ、送信波と反射波をミキシングしてビート信号を抽出し、このビート信号における上昇区間のビート周波数fbu、下降区間のビート周波数fbdを組み合わせて物体のまでの距離、物体の相対速度を算出する。
【0032】
そして、レーダ3〜5により検知された物体の距離、相対速度の情報及びこれらの過去の情報に基づいて物体の次回検知される位置が予測され、追尾位置範囲の設定が行われる(図4のS10)。
【0033】
例えば、次回の物体の予想位置は、今回の物体の位置情報及びそれ以前の物体の位置情報に基づいて算出される。追尾位置範囲A1は、例えば図2に示すようにレーダ3により物体を検知している場合、その物体の次の予測位置P1の周りに設定され、矩形の二辺が物体検知方向D1と平行となるように設定される。その際、他の二辺はレーダ半径方向に沿って配置される。このときレーダ3から物体の位置への方向、例えばレーダ3から今回の物体の予測位置P1への方向を物体検知方向D1として設定すればよい。
【0034】
また、図3に示すように、物体の移動方向D2に沿って追尾位置範囲A1を設定してもよい。例えば、物体の位置及び相対速度が所定回数以上継続して検出されている場合には、物体の相対速度、相対加速度が安定してくるため、物体の移動方向に沿って追尾位置範囲A1を設定することでより適切な領域に追尾位置範囲A1を設定することができる。
【0035】
この場合、追尾位置範囲A1は、矩形状の二辺が物体の移動方向D2と平行となるように設定される。物体の移動方向D2は、例えば前回検知された物体の位置P0と次の予想位置P1の位置関係に基づいて、または前回以前に検知された複数の物体の位置と次の予想位置P1の位置関係に基づいて、決定すればよい。
【0036】
そして、物体の追尾相対速度範囲が設定される(図4のS12)。例えば、前回検知された物体の相対速度に基づいて又は前回検知された物体の相対速度及び前回より前に検知された物体の相対速度に基づいて相対速度の上限しきい値及び下限しきい値が設定され、これらの上限しきい値及び下限しきい値の間の相対速度が追尾相対速度範囲として設定される。
【0037】
そして、追尾範囲内の物体が存在するか否かが判断される(S14)。すなわち、物体の位置、相対速度を検知した際に、その物体の位置が追尾位置範囲内であり、かつその物体の相対速度が追尾相対速度範囲内であるか否かが判断される。
【0038】
S14にて物体の位置が追尾位置範囲内でなく、又はその物体の相対速度が追尾相対速度範囲内でないと判断された場合には、外挿処理が行われる(S16)。外挿処理は、その回の物体データを記録せず、トラッキングを継続する処理である。なお、所定回数継続して物体を認識できない場合には、物体をロストしたとして処理される。
【0039】
一方、S14にて物体の位置が追尾位置範囲内であり、かつその物体の相対速度が追尾相対速度範囲内であると判断された場合には、追尾している物体として認識され、その物体の位置情報、相対速度情報に基づいてトラッキングが継続される(S18)。
【0040】
物体の位置が追尾位置範囲内であり、かつその物体の相対速度が追尾相対速度範囲内であると判断された場合に、前回検知された物体の位置、相対速度に対する今回検知された物体の位置、相対速度の評価値を算出し、その評価値が所定のしきい値範囲内であるか否かを判定し、その評価値が所定のしきい値範囲内であるときに今回検知された物体を追尾している物体として認識することが好ましい。
【0041】
物体の位置の評価値は、前回検知された物体の位置と今回検知された物体の位置の差により算出される。また、物体の相対速度の評価値は、前回検知された物体の相対速度と今回検知された物体の相対速度の差により算出される。このように評価値を求めて物体の認識を行うことにより、追尾範囲内に複数の物体が検知された場合にそれぞれの物体を識別して適切なトラッキングを行うことができる。S18の処理を終えたら、一連の制御処理を終了する。
【0042】
以上のように、本実施形態に係る物体検出装置1によれば、物体が検知される方向に応じて追尾範囲を設定することにより、物体の移動状態に応じて追尾範囲の向きを設定することができる。このため、物体の移動状態に適した追尾範囲を設定でき、物体のロストなどが低減して適切なトラッキングが行える。従って、物体の検出精度を高めることができる。
【0043】
また、本実施形態に係る物体検出装置1によれば、物体が検知される方向に沿って追尾範囲を設定することにより、物体が検出中心軸に対し斜めに移動する場合に、検出中心軸に沿って追尾範囲を設定する場合と比べて適切な方向に追尾範囲を設定することができる。このため、物体のロストなどが低減でき適切なトラッキングが行える。従って、物体の検出精度を高めることができる。
【0044】
さらに本実施形態に係る物体検出装置1によれば、物体が移動する方向に沿って追尾範囲の方向を設定することにより、物体が検出中心軸に対し斜めに移動する場合に、検出中心軸に沿って追尾範囲を設定する場合と比べて適切な方向に追尾範囲を設定することができる。このため、物体のロストなどが低減でき適切なトラッキングが行える。従って、物体の検出精度を高めることができる。
【0045】
なお、上述した各実施形態は本発明に係る物体検出装置の一例を示すものである。本発明に係る物体検出装置は、このようなものに限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しないように実施形態に係る物体検出装置を変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施形態に係る物体検出装置の構成概要図である。
【図2】図1の物体検出装置における物体検出時の説明図である。
【図3】図1の物体検出装置における物体検出時の説明図である。
【図4】図1の物体検出装置における物体検出処理を示すフローチャートである。
【図5】従来技術の説明図である。
【符号の説明】
【0047】
1…物体検出装置、2…車両、3〜5…レーダ、6…ECU、7…車速センサ、8…報知部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体検知を行う物体検知器と、
前記物体検知器により検知された物体の追尾範囲を設定する追尾範囲設定手段と、
を備え、
前記追尾範囲設定手段は、前記物体が検知される方向に応じて追尾範囲を設定すること、
を特徴とする物体検出装置。
【請求項2】
前記物体検知器は、車両に設置され、その車両の進行方向と異なる方向に検出中心軸を有しており、
前記追尾範囲設定手段は、前記物体が検知される方向に沿って追尾範囲の方向を設定すること、
を特徴とする請求項1に記載の物体検出装置。
【請求項3】
前記物体検知器は、車両に設置され、その車両の進行方向と異なる方向に検出中心軸を有しており、
前記追尾範囲設定手段は、前記物体が移動する方向に沿って追尾範囲の方向を設定すること、
を特徴とする請求項1に記載の物体検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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