説明

物体検知装置

【課題】自車両の外界に検知された物体が虚像か実像かを容易かつ適切に判定する。
【解決手段】物体検知装置10は、自車両の進行方向に存在する物体を検知する外界センサ11および物体位置検出部31と、検知された物体の自車両に対する相対距離に係る相対関係を算出する相対関係算出部32と、検知された物体が虚像か実像かを判定する虚実判定部34とを備え、自車両に相対する向きに移動する第1物体および第2物体が検知された場合に、第1物体と第2物体との間の車両左右方向距離が所定左右方向距離以上であり、かつ、第1物体と第2物体との間の車両前後方向距離が所定前後方向距離以下である場合に、第1物体および第2物体を判定対象として選択する判定対象選択部33を備え、虚実判定部34は、判定対象選択部33により選択された判定対象が虚像か実像かを判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、物体検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばレーダ装置を用いて先行車両などの物体を検知する際に、発信されたレーザが壁などにより反射されることに起因してゴースト(虚像)が、実像として誤検知されることを防止するために、予め壁などの静止物の位置を検出しておくセンサが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−116839号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記従来技術に係るセンサによれば、予め、レーザが反射される壁などの静止物の位置を検出するために煩雑な処理を実行する必要があり、処理負荷が増大するという問題が生じると共に、装置構成が複雑化してしまう虞がある。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、自車両の外界に検知された物体が虚像か実像かを容易かつ適切に判定することが可能な物体検知装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決して係る目的を達成するために、本発明の第1態様に係る物体検知装置は、自車両の進行方向に存在する物体を検知する物体検知手段(例えば、実施の形態での外界センサ11および物体位置検出部31)と、前記物体検知手段により検知された物体の自車両に対する相対距離に係る相対関係を算出する相対関係算出手段(例えば、実施の形態での相対関係算出部32)と、前記物体が虚像か実像かを判定する虚実判定手段(例えば、実施の形態での虚実判定部34)とを備える物体検知装置であって、自車両に相対する向きに移動する第1物体および第2物体が前記物体検知手段により検知された場合に、前記相対関係算出手段により算出された前記相対関係に基づき、前記第1物体と前記第2物体との間の車両左右方向距離が所定左右方向距離以上であり、かつ、前記第1物体と前記第2物体との間の車両前後方向距離が所定前後方向距離以下である場合に、前記第1物体および前記第2物体を判定対象として選択する選択手段(例えば、実施の形態での判定対象選択部33)を備え、前記虚実判定手段は、前記選択手段により選択された前記判定対象が虚像か実像かを判定する。
【0005】
さらに、本発明の第2態様に係る物体検知装置では、前記虚実判定手段は、前記選択手段により選択された前記判定対象としての前記第1物体と自車両との間の相対距離と、前記選択手段により選択された前記判定対象としての前記第2物体と自車両との間の相対距離とを比較し、前記相対距離のうち何れか長い方の前記相対距離に対応する前記判定対象は、何れか短い方の前記相対距離に対応する前記判定対象に比べて、虚像である可能性がより高いと判定する。
【0006】
さらに、本発明の第3態様に係る物体検知装置は、前記物体検知手段は電磁波を発信すると共に前記電磁波の反射波を受信して前記物体を検知しており、前記虚実判定手段は、前記選択手段により選択された前記判定対象としての前記第1物体から反射された前記反射波の受信強度と、前記選択手段により選択された前記判定対象としての前記第1物体から反射された前記反射波の受信強度とを比較し、前記受信強度のうち何れか小さい方の前記受信強度に対応する前記判定対象は、何れか大きい方の前記受信強度に対応する前記判定対象に比べて、虚像である可能性がより高いと判定する。
【0007】
さらに、本発明の第4態様に係る物体検知装置は、自車両の走行軌跡を推定する軌跡推定手段(例えば、実施の形態での自車軌跡推定部36)と、前記軌跡推定手段により推定された自車両の前記走行軌跡と、前記物体検知手段により検知された前記物体とに基づき、前記物体と自車両とが接触する可能性を判定する接触可能性判定手段(例えば、実施の形態での接触可能性判定部37)と、自車両の運転者の接触回避操作を検出する回避操作検出手段(例えば、実施の形態での回避操作検出部38)とを備え、前記虚実判定手段は、前記選択手段により選択された前記判定対象としての前記第1物体および前記第2物体の何れか一方に対して、前記接触可能性判定手段により自車両と接触する可能性があると判定され、かつ、前記回避操作検出手段により前記接触回避操作が検出された場合には、前記何れか一方に対応する前記判定対象は、何れか他方に対応する前記判定対象に比べて、虚像である可能性がより低いと判定する。
【0008】
さらに、本発明の第5態様に係る物体検知装置は、前記物体検知手段により検知された前記物体と自車両との接触回避を支援する接触回避支援手段(例えば、実施の形態での車両制御部39)を備え、前記虚実判定手段により虚像である可能性がより高いと判定された前記判定対象に対して、前記接触回避支援手段による前記接触回避の支援を抑制する抑制手段(例えば、実施の形態での車両制御部39が兼ねる)を備える。
【0009】
さらに、本発明の第6態様に係る物体検知装置では、前記抑制手段は、前記接触回避支援手段による前記接触回避の支援の実行開始タイミングを遅延させる。
【0010】
さらに、本発明の第7態様に係る物体検知装置では、前記抑制手段は、前記接触回避支援手段による前記接触回避の支援の制御量を低下させる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の第1態様に係る物体検知装置によれば、選択手段により選択された判定対象に対して虚像か実像かを判定することにより、例えば物体検知手段により検知された物体全てに対して虚像か実像かを判定する場合に比べて、過剰な判定処理が実行されてしまうことを防止し、装置の処理負荷が増大することを防止し、容易かつ適切な判定をおこなうことができる。
さらに、本発明の第2態様に係る物体検知装置によれば、実像からの反射波に比べて虚像に対応する反射波は伝播経路長がより長くなることから、各第1物体および第2物体の反射波により算出される自車両に対する相対距離を比較することにより、虚像である可能性がより高い判定対象を適切に判別することができる。
【0012】
さらに、本発明の第3態様に係る物体検知装置によれば、実像からの反射波に比べて虚像に対応する反射波は強度がより小さくなることから、各第1物体および第2物体の反射波の受信強度を比較することにより、虚像である可能性がより高い判定対象を適切に判別することができる。
さらに、本発明の第4態様に係る物体検知装置によれば、第1物体および第2物体の何れか一方が虚像である可能性がより低いかを判定する際に、自車両の運転者の認識結果を適切に反映させることができる。
【0013】
さらに、本発明の第5態様から第7態様に係る物体検知装置によれば、第1物体および第2物体のうち虚像である可能性がより高い判定対象に対して、自車両との接触回避の支援が過剰に実行されてしまうことを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態に係る物体検知装置について添付図面を参照しながら説明する。
本実施の形態による物体検知装置10は、例えば図1に示すように、内燃機関(E)の駆動力をトランスミッション(T/M)を介して車両の駆動輪(図示略)に伝達する車両に搭載され、外界センサ11と、車両状態センサ12と、処理装置13と、スロットルアクチュエータ14と、ブレーキアクチュエータ15と、ステアリングアクチュエータ16と、警報装置17とを備えて構成されている。
【0015】
外界センサ11は、例えばレーザ光やミリ波などの電磁波によるビームスキャン型のレーダ21およびレーダ制御部22と、例えば可視光領域や赤外線領域にて撮像可能なステレオカメラなどのカメラ23および画像処理部24と、を備えて構成されている。
例えばレーダ制御部22は、例えば自車両の進行方向前方に設定された検出対象領域を角度方向に複数の領域に分割し、各領域を走査するようにして、電磁波の発信信号を発信すると共に、各発信信号が自車両の外部の物体によって反射されることで生じた反射信号を受信し、反射信号と発信信号とを混合してビート信号を生成し、処理装置13に出力する。
また、例えば画像処理部24は、カメラ23により撮影して得た自車両の進行方向の外界の画像に対して、例えばフィルタリングや二値化処理等の所定の画像処理を行い、二次元配列の画素からなる画像データを生成し、処理装置13に出力する。
【0016】
車両状態センサ12は、自車両の車両情報として、例えば自車両の速度(車速)を検出する車速センサや、車体に作用する加速度を検出する加速度センサや、車体の姿勢や進行方向を検出するジャイロセンサや、ヨーレート(車両重心の上下方向軸回りの回転角速度)を検出するヨーレートセンサや、例えば人工衛星を利用して自車両の位置を測定するためのGPS(Global Positioning System)信号などの測位信号を受信する受信機や、運転者による運転操作(例えば、アクセルペダルの踏み込み操作量、ブレーキペダルの踏み込み操作量、ステアリングホイールの舵角など)を検出する各センサなどを備えて構成されている。
【0017】
さらに、処理装置13は、例えば物体位置検出部31と、相対関係算出部32と、判定対象選択部33と、虚実判定部34と、物体軌跡推定部35と、自車軌跡推定部36と、接触可能性判定部37と、回避操作検出部38と、車両制御部39とを備えて構成されている。
【0018】
処理装置13の物体位置検出部31は、外界センサ11から出力されるビート信号または画像データに基づき、自車両の進行方向前方に設定された各検出対象領域内に存在する物体(例えば、他車両など)の位置に係る情報を検出する。
例えば物体位置検出部31は、外界センサ11のレーダ制御部22から出力されるビート信号に基づき、物体までの距離(例えば、自車両に対する相対距離)および方位(角度)を検出する。
また、物体位置検出部31は、例えば外界センサ11の画像処理部24から出力される1対の画像データに基づき、車室内に所定間隔を隔てて設置された1対のカメラ同士間の距離と、撮像により得られた1対の画像データ上の物体の視差と、に基づく三角測量法などにより、物体までの距離(例えば、自車両に対する相対距離)を検出する。
【0019】
相対関係算出部32は、物体位置検出部31により検出された物体の位置に係る情報に基づき、自車両に対する物体の相対距離に係る相対関係、例えば物体の位置の時間変化に基づく物体の速度(例えば、自車両に対する相対速度)などを算出する。
【0020】
判定対象選択部33は、物体位置検出部31により検出された複数の物体のうち、後述する虚実判定部34により虚実判定の判定対象となる物体を選択する。
例えば判定対象選択部33は、物体位置検出部31により検出された複数の物体に対して、2つの物体(第1物体および第2物体)により構成される組み合わせを設定し、各組み合わせ毎に、第1物体と第2物体との間の車両左右方向距離が所定値(所定左右方向距離、例えば3車線の走行路の両端の車線を走行する2車両間の距離など)以上、かつ、第1物体と第2物体との間の車両前後方向距離が所定値(所定前後方向距離)以下、かつ、第1物体と第2物体との速度差が所定値(所定速度差)以下であるか否かを判定し、この判定結果が「YES」の場合には、第1物体と第2物体とを判定対象として選択する。
なお、車両左右方向および車両前後方向は自車両の左右方向および前後方向とされる。
【0021】
なお、所定左右方向距離として、例えば3車線の走行路の両端の車線を走行する2車両間の距離を設定することにより、虚実判定の判定対象となる物体を適切に選択することができる。
例えば図2に示すように、実像とされる一方の物体が自車両の走行車線の一方側で隣接する対向車線を走行する対向車両である場合に、この対向車両からの反射信号が自車両の走行路に設けられた壁Wなどの物体で反射されると、虚像としての他方の物体が自車両の走行車線の他方側で隣接する対向車線を走行する対向車両として検出されることになる。つまり、3車線の走行路のうち自車両の走行車線(走行軌跡)を中心とした左右の走行車線を相対して走行する2台の対向車両が検出される。
ここで、自車両を左右方向の両側から挟み込むようにして2台の対向車両がすれ違う走行形態は一般道において通常起こりえないため、第1物体と第2物体との間の車両左右方向距離が、3車線の走行路の両端の車線を走行する2車両間の距離以上であれば、第1物体と第2物体とを虚実判定の判定対象として適切に選択することができる。
【0022】
虚実判定部34は、判定対象選択部33により選択された判定対象が虚像か実像かを判定する虚実判定を実行する。
例えば虚実判定部34は、判定対象として選択された2つの物体(第1物体および第2物体)のうち、自車両に対する相対距離が長い物体は、自車両に対する相対距離が短い物体に比べて、虚像である可能性がより高いと判定する。
また、虚実判定部34は、判定対象として選択された2つの物体(第1物体および第2物体)のうち、外界センサ11のレーダ制御部22により受信される反射信号の受信強度が小さい物体は、受信強度が大きい物体に比べて、虚像である可能性がより高いと判定する。
また、虚実判定部34は、後述する回避操作検出部38から出力される回避操作の有無を示す検出信号に基づき、判定対象として選択された2つの物体(第1物体および第2物体)のうち、自車両との接触を回避するようにして運転者による所定の回避操作が実行された物体は、所定の回避操作が実行されなかった物体に比べて、虚像である可能性がより低いと判定する。
【0023】
例えば図2または図3に示すように、自車両Pの外界センサ11のレーダ21から電磁波の発信信号が発信され、この発信信号が各対向車両Qr1,Qr2,Qr3により反射された際に、各対向車両Qr1,Qr2,Qr3から直接的に自車両Pに向かう各反射信号R1,R2,R3に加えて、例えば壁Wなどの他の物体での反射を介して各対向車両Qr1,Qr2,Qr3から間接的に自車両Pに向かう各反射信号V1,V2,V3が外界センサ11により受信されると、処理装置13の物体位置検出部31により、実像としての各対向車両Qr1,Qr2,Qr3に加えて、虚像としての各虚像対向車両Qv1,Qv2,Qv3が検出されることになる。
このため、先ず、判定対象選択部33によって、物体位置検出部31により検出された自車両に相対する向きに移動する複数の物体に対し、2つの物体(第1物体および第2物体)により構成される組み合わせ毎に、第1物体と第2物体との間の車両左右方向距離が所定値(所定左右方向距離、例えば3車線の走行路の両端の車線を走行する2車両間の距離など)以上、かつ、第1物体と第2物体との間の車両前後方向距離が所定値(所定前後方向距離)以下、かつ、第1物体と第2物体との速度差が所定値(所定速度差)以下であるか否かを判定することにより、対向車両Qr1および虚像対向車両Qv1と、対向車両Qr2および虚像対向車両Qv2と、対向車両Qr3および虚像対向車両Qv3とが、判定対象として選択されることになる。
そして、虚実判定部34によって、各判定対象毎に、虚像では他の物体での反射に起因して反射信号の伝播経路長がより長くなること、あるいは、虚像では他の物体での反射に起因して反射信号の受信強度がより小さくなることに基づき、自車両に対する相対距離が相対的に長い各虚像対向車両Qv1,Qv2,Qv3、あるいは、反射信号の受信強度が相対的に小さい各虚像対向車両Qv1,Qv2,Qv3が、虚像である可能性がより高いと判定されることになる。
【0024】
物体軌跡推定部35は、例えば物体位置検出部31により検出された物体の位置に係る情報に基づいて物体の移動軌跡を推定する。
自車軌跡推定部36は、車両状態センサ12により受信された測位信号と、車両状態センサ12により検出された車速およびヨーレートなどに基づく自律航法の算出処理との、少なくとも何れかによって、自車両の位置(現在位置)を算出する。そして、自車両の位置の時間変化と、車両状態センサ12により検出された車速およびヨーレートなどとに基づき、自車両の走行軌跡を推定する。
【0025】
接触可能性判定部37は、例えば物体軌跡推定部35から出力される物体の移動軌跡と、自車軌跡推定部36から出力される自車両の走行軌跡とに基づき、自車両と物体とが接触する可能性があるか否かを判定する。
例えば、接触可能性判定部37は、自車両の走行軌跡と物体の移動軌跡とが交差する領域を接触予測領域として、自車両が接触予測領域に到達するのに要する時間(接触時間)を推定する。そして、自車両が現在の走行状態(例えば、現在の車速、ヨーレートなど)を維持した状態で接触時間に亘って走行した時点での、物体の移動軌跡の幅方向に沿った方向での物体の移動軌跡と自車両との重なり量を算出する。そして、例えば、この重なり量が0よりも大きい場合には、自車両と物体とが接触する可能性があると判定する。
【0026】
回避操作検出部38は、例えば接触可能性判定部37にて自車両と接触する可能性があると判定された物体に対して、自車両の運転者により実行される所定の運転操作、つまり物体との接触を回避するための回避操作(例えば、アクセルペダルの踏み込み操作、ブレーキペダルの踏み込み操作、ステアリングホイールの操舵など)を検出する。
【0027】
車両制御部39は、虚実判定部34および接触可能性判定部37の判定結果に応じて、自車両と物体との接触発生を回避あるいは接触発生時の被害を軽減するようにして自車両の走行状態を制御する走行制御の実行開始タイミングおよび制御量(例えば、減速時の減速度など)の少なくとも何れかを設定する。そして、設定した実行開始タイミングおよび制御量に応じて、トランスミッション(T/M)の変速動作を制御する制御信号およびスロットルアクチュエータ14により内燃機関(E)の駆動力を制御する制御信号およびブレーキアクチュエータ15により減速を制御する制御信号およびステアリングアクチュエータ16により転舵を制御する制御信号のうちの少なくとも何れかの制御信号を出力し、接触回避の支援動作あるいは接触回避動作として、自車両の加速および減速と、転舵とを制御する。例えば、車両制御部39は、虚実判定部34により虚像である可能性がより高いと判定された物体に対し、接触回避の支援の実行開始タイミングを遅延させたり、接触回避の支援の制御量を低下させる。
さらに、車両制御部39は、警報装置17の報知動作を制御する制御信号などを出力する。
【0028】
なお、警報装置17は、例えば、触覚的伝達装置と、視覚的伝達装置と、聴覚的伝達装置とを備えて構成されている。
触覚的伝達装置は、例えばシートベルト装置や操舵制御装置等であって、車両制御部39から入力される制御信号に応じて、例えばシートベルトに所定の張力を発生させて自車両の乗員が触覚的に知覚可能な締め付け力を作用させたり、例えばステアリングホイールに自車の運転者が触覚的に知覚可能な振動(ステアリング振動)を発生させることによって、物体との接触発生の可能性があることを乗員に認識させる。
視覚的伝達装置は、例えば表示装置等であって、車両制御部39から入力される制御信号に応じて、例えば表示装置に所定の警報情報を表示したり、所定の警報灯を点滅させることによって、物体との接触発生の可能性があることを乗員に認識させる。
聴覚的伝達装置は、例えばスピーカ等であって、車両制御部39から入力される制御信号に応じて所定の警報音や音声等を出力することによって、物体との接触発生の可能性があることを乗員に認識させる。
【0029】
本実施の形態による物体検知装置10は上記構成を備えており、次に、この物体検知装置10の動作、特に、外界センサ11により検出された複数の物体のうちから虚実判定の判定対象となる物体を選択する処理および虚実判定の処理について説明する。
なお、以下に示すステップS01からステップS10の一連の処理は所定時間毎に繰り返し実行される。
【0030】
先ず、例えば図4に示すステップS01においては、外界センサ11から出力されるビート信号または画像データに基づき、自車両に相対する向きに移動する複数の物体の位置に係る情報を検出する。
そして、ステップS02においては、検出した物体の位置に係る情報に基づき、自車両に対する物体の相対距離に係る相対関係、例えば物体の位置の時間変化に基づく物体の速度(例えば、自車両に対する相対速度)などを算出する。
そして、ステップS03においては、車両状態センサ12から出力される信号に基づき自車両の位置(現在位置)を算出し、自車両の位置の時間変化と、車両状態センサ12により検出された車速およびヨーレートなどとに基づき、自車両の走行軌跡を推定する。
【0031】
そして、ステップS04においては、検出された複数の物体のうち自車両と接触する可能性がある物体が存在するか否かを判定する接触判定の処理を実行する。
そして、ステップS05においては、ステップS04での接触判定の処理において、判定結果が「NO」の場合には、エンドに進み、処理を終了する。
一方、ステップS04での接触判定の処理において、判定結果が「YES」の場合には、ステップS06に進む。
そして、ステップS06においては、自車両と接触する可能性があると判定された物体(接触可能性物体)に対して、後述する虚実判定の処理を実行する。
そして、ステップS07においては、ステップS06の虚実判定の処理において、接触可能性物体の虚像可能性が相対的に高いと判定されたか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、後述するステップS10に進む。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS08に進む。
【0032】
そして、ステップS08においては、接触可能性物体に対し、接触回避の支援の制御量を低下させる。
そして、ステップS09においては、接触回避の支援の実行開始タイミングを遅延させる。
そして、ステップS10においては、この時点で設定されている制御量および実行開始タイミングに応じて、所定の接触回避の支援動作を実行し、一連の処理を終了する。
【0033】
以下に、上述したステップS06での虚実判定の処理について説明する。
先ず、例えば図5に示すステップS11においては、検出された複数の物体のから自車両と接触する可能性がある接触可能性物体と他の物体との組み合わせを設定する。
【0034】
そして、ステップS12においては、接触可能性物体と他の物体との組み合わせか適宜の組み合わせを選択し、接触可能性物体と他の物体との間の車両左右方向距離が所定値(所定左右方向距離、例えば3車線の走行路の両端の車線を走行する2車両間の距離など)以上であるか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、後述するステップS18に進む。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS13に進む。
【0035】
そして、ステップS13においては、接触可能性物体と他の物体との間の車両前後方向距離が所定値(所定前後方向距離)以下であるか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、後述するステップS18に進む。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS14に進む。
【0036】
そして、ステップS14においては、接触可能性物体と他の物体との速度差が所定値(所定速度差)以下であるか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、後述するステップS18に進む。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS15に進む。
【0037】
そして、ステップS15においては、接触可能性物体と自車両との相対距離は他の物体と自車両との相対距離よりも長いか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、後述するステップS17に進む。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS16に進む。
そして、ステップS16においては、接触可能性物体の虚像可能性は相対的に高いとする。
また、ステップS17においては、接触可能性物体に対する反射信号の受信強度は他の物体に対する反射信号の受信強度よりも小さいか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、ステップS18に進む。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、上述したステップS16に進む。
【0038】
そして、ステップS18においては、接触可能性物体と他の物体との全ての組み合わせに対して、虚実判定の実行が終了したか否かを判定する。
この判定結果が「YES」の場合には、ステップS19に進む。
一方、この判定結果が「NO」の場合には、ステップS12に戻る。
【0039】
そして、ステップS19においては、接触可能性物体に対して運転者により所定の運転操作、つまり接触可能性物体との接触を回避するための回避操作(例えば、アクセルペダルの踏み込み操作、ブレーキペダルの踏み込み操作、ステアリングホイールの操舵など)が実行されたか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、エンドに進み、処理を終了する。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS20に進む。
そして、ステップS20においては、接触可能性物体の虚像可能性は相対的に低いとし、エンドに進み、処理を終了する。
【0040】
上述したように、本実施の形態による物体検知装置10によれば、判定対象選択部33により選択された判定対象に対して虚像か実像かを判定することにより、例えば物体位置検出部31により検出された複数の物体の全てに対して虚像か実像かを判定する場合に比べて、過剰な判定処理が実行されてしまうことを防止し、装置の処理負荷が増大することを防止し、容易かつ適切な判定をおこなうことができる。
さらに、判定対象選択部33により選択された判定対象を構成する2つの物体(第1物体および第2物体)に対して、自車両に対する相対距離を比較することにより、かつ、反射信号の受信強度を比較することにより、虚像である可能性がより高い判定対象を適切に判別することができる。
【0041】
さらに、判定対象選択部33により選択された判定対象を構成する2つの物体(第1物体および第2物体)に対して虚像か実像かを判定する際に、自車両との接触を回避するようにして運転者による所定の回避操作が実行されたか否かを判定することにより、自車両の運転者の認識結果を適切に反映させることができる。
さらに、判定対象選択部33により選択された判定対象を構成する2つの物体(第1物体および第2物体)のうち虚像である可能性がより高いと判定された物体に対し、接触回避の支援の実行開始タイミングを遅延させたり、接触回避の支援の制御量を低下させることにより、自車両との接触回避の支援が過剰に実行されてしまうことを防止することができる。
【0042】
なお、上述した実施の形態において、虚実判定の処理では、接触可能性物体と自車両との相対距離は他の物体と自車両との相対距離よりも長い場合、または、接触可能性物体に対する反射信号の受信強度は他の物体に対する反射信号の受信強度よりも小さい場合に、接触可能性物体の虚像可能性は相対的に高いとしたが、これに限定されず、接触可能性物体と自車両との相対距離は他の物体と自車両との相対距離よりも長く、かつ、接触可能性物体に対する反射信号の受信強度は他の物体に対する反射信号の受信強度よりも小さい場合に、接触可能性物体の虚像可能性は相対的に高いとしてもよい。
【0043】
なお、上述した実施の形態において、判定対象選択部33は、第1物体と第2物体との速度差に拘らずに、第1物体と第2物体との間の車両左右方向距離が所定値(所定左右方向距離)以上、かつ、第1物体と第2物体との間の車両前後方向距離が所定値(所定前後方向距離)以下であるか否かを判定し、この判定結果が「YES」の場合に、第1物体と第2物体とを判定対象として選択してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の実施の形態に係る物体検知装置の構成図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る自車両と対向車両および虚像対向車両との例を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る自車両と対向車両および虚像対向車両との例を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る物体検知装置の動作を示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施の形態に係る虚実判定の処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0045】
10 物体検知装置
11 外界センサ(物体検知手段)
31 物体位置検出部(物体検知手段)
32 相対関係算出部(相対関係算出手段)
33 判定対象選択部(選択手段)
34 虚実判定部(虚実判定手段)
36 自車軌跡推定部(軌跡推定手段)
37 接触可能性判定部(接触可能性判定手段)
38 回避操作検出部(回避操作検出手段)
39 車両制御部(接触回避支援手段、抑制手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の進行方向に存在する物体を検知する物体検知手段と、
前記物体検知手段により検知された物体の自車両に対する相対距離に係る相対関係を算出する相対関係算出手段と、
前記物体が虚像か実像かを判定する虚実判定手段とを備える物体検知装置であって、
自車両に相対する向きに移動する第1物体および第2物体が前記物体検知手段により検知された場合に、前記相対関係算出手段により算出された前記相対関係に基づき、前記第1物体と前記第2物体との間の車両左右方向距離が所定左右方向距離以上であり、かつ、前記第1物体と前記第2物体との間の車両前後方向距離が所定前後方向距離以下である場合に、前記第1物体および前記第2物体を判定対象として選択する選択手段を備え、
前記虚実判定手段は、前記選択手段により選択された前記判定対象が虚像か実像かを判定することを特徴とする物体検知装置。
【請求項2】
前記虚実判定手段は、
前記選択手段により選択された前記判定対象としての前記第1物体と自車両との間の相対距離と、前記選択手段により選択された前記判定対象としての前記第2物体と自車両との間の相対距離とを比較し、前記相対距離のうち何れか長い方の前記相対距離に対応する前記判定対象は、何れか短い方の前記相対距離に対応する前記判定対象に比べて、虚像である可能性がより高いと判定することを特徴とする請求項1に記載の物体検知装置。
【請求項3】
前記物体検知手段は電磁波を発信すると共に前記電磁波の反射波を受信して前記物体を検知しており、
前記虚実判定手段は、
前記選択手段により選択された前記判定対象としての前記第1物体から反射された前記反射波の受信強度と、前記選択手段により選択された前記判定対象としての前記第1物体から反射された前記反射波の受信強度とを比較し、前記受信強度のうち何れか小さい方の前記受信強度に対応する前記判定対象は、何れか大きい方の前記受信強度に対応する前記判定対象に比べて、虚像である可能性がより高いと判定することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の物体検知装置。
【請求項4】
自車両の走行軌跡を推定する軌跡推定手段と、
前記軌跡推定手段により推定された自車両の前記走行軌跡と、前記物体検知手段により検知された前記物体とに基づき、前記物体と自車両とが接触する可能性を判定する接触可能性判定手段と、
自車両の運転者の接触回避操作を検出する回避操作検出手段とを備え、
前記虚実判定手段は、前記選択手段により選択された前記判定対象としての前記第1物体および前記第2物体の何れか一方に対して、前記接触可能性判定手段により自車両と接触する可能性があると判定され、かつ、前記回避操作検出手段により前記接触回避操作が検出された場合には、前記何れか一方に対応する前記判定対象は、何れか他方に対応する前記判定対象に比べて、虚像である可能性がより低いと判定することを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1つに記載の物体検知装置。
【請求項5】
前記物体検知手段により検知された前記物体と自車両との接触回避を支援する接触回避支援手段を備え、
前記虚実判定手段により虚像である可能性がより高いと判定された前記判定対象に対して、前記接触回避支援手段による前記接触回避の支援を抑制する抑制手段を備えることを特徴とする請求項1から請求項4の何れか1つに記載の物体検知装置。
【請求項6】
前記抑制手段は、前記接触回避支援手段による前記接触回避の支援の実行開始タイミングを遅延させることを特徴とする請求項5に記載の物体検知装置。
【請求項7】
前記抑制手段は、前記接触回避支援手段による前記接触回避の支援の制御量を低下させることを特徴とする請求項5に記載の物体検知装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2009−186277(P2009−186277A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−25488(P2008−25488)
【出願日】平成20年2月5日(2008.2.5)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】