説明

物体認識システム及び物体認識装置

【課題】ラインセンサ等の撮像装置を用いて取得した物体の撮像データを用いてその物体を認識する物体認識システムにおいて、物体の通過速度によって撮像データに含まれる物体の画像が歪むため対象物のテンプレートデータとのマッチングの精度が低下し物体の認識精度が低下するという課題があった。
【解決手段】物体認識部34は、速度検出部32で検出された物体の速度に応じて、撮像装置1、2で取得された撮像データに含まれる物体の画像をサイズ変更し、その変更後の撮像データとテンプレートデータとをマッチングして物体を認識するので、精度高く物体認識ができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラインセンサ等の撮像装置で撮像される領域に存在する物体を、撮像装置により取得した撮像データを用いて認識する物体認識システム及び物体認識装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ラインセンサ等の撮像装置によって得られる強度画像等の撮像データを用い、撮像装置に撮像される領域を通過する車両等の物体を認識する物体認識システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。このような物体認識システムにおいては、様々な対象物についてのテンプレートデータを用意し、それら複数のテンプレートデータと取得された撮像データとをそれぞれパターンマッチングすることにより物体を認識する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−14706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の物体認識システムでは、撮像装置におけるデータ取得レートは一定であるため、領域を通過する物体の速度によって撮像データに含まれる物体の画像が歪み、例えば車軸であれば扁平率が変化する。そのため、基準の速度で通過する対象物についてのテンプレートデータとのマッチングの精度が低下するという課題があった。また、それぞれの対象物について様々な速度に対応したテンプレートデータを用意するとなると、テンプレートデータの数が膨大になり、パターンマッチング処理についての処理時間が増大するという課題があった。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであって、処理時間の増大がなく精度の高い物体認識が可能な物体認識システム及び物体認識装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る物体認識システムは、物体が通過する所定領域にレーザ光を照射して得た撮像データを出力する撮像手段と、前記物体が通過する速度を検出する物体速度検出手段と、前記撮像手段から出力された前記撮像データに含まれる前記物体の画像のサイズを前記検出速度に応じて変更し、変更後の撮像データと基準速度に対応するテンプレートデータとを比較することにより前記物体又は前記物体の一部を認識する物体認識手段とを備えることを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る物体認識装置は、物体が通過する所定領域にレーザ光を照射して得られた撮像データが入力され物体又は物体の一部を認識する物体認識装置であって、前記物体が通過する速度を検出する物体速度検出手段と、前記物体速度検出手段で検出された速度に応じて、入力された前記撮像データに含まれる前記物体の画像のサイズを変更し、変更後の撮像データと基準速度に対応するテンプレートデータとを比較することにより前記物体又は前記物体の一部を認識する物体認識手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の物体認識システム、物体認識装置によれば、検出した物体の速度に応じて撮像データに含まれる物体の画像をサイズ変更し、その変更後の撮像データとテンプレートデータとをパターンマッチング処理することにより物体を認識するので、処理時間の増大がなく精度高く物体認識ができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施の形態1に係る物体認識システムの構成図。
【図2】実施の形態1に係る第1の撮像装置と第2の撮像装置の配置を説明するための図。
【図3】実施の形態1に係る撮像データに含まれる物体である車両の画像を表す図。
【図4】実施の形態1に係る車両を正面から見た図。
【図5】実施の形態1に係る物体認識部の構成図。
【図6】実施の形態1に係る撮像データに含まれる車両の画像のサイズ変更を説明するための図。
【図7】実施の形態1の動作を説明するフローチャート。
【図8】実施の形態2に係る物体認識システムの構成図。
【図9】実施の形態2に係る第1の撮像装置と速度計の配置を説明するための図。
【図10】実施の形態2の動作を説明するフローチャート。
【図11】実施の形態3に係る物体認識部の構成図。
【図12】実施の形態3に係る高度ヒストグラム算出処理の一例を説明するための図。
【図13】実施の形態3における撮像データに対しての検知フラグ算出処理の一例を説明するための図。
【図14】実施の形態3の動作を説明するフローチャート。
【図15】実施の形態3に係る高度ヒストグラム算出処理の他の例を説明するための図。
【図16】実施の形態3における撮像データに対しての検知フラグ算出処理の他の例を説明するための図。
【図17】実施の形態4に係る物体認識部の構成図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
以下図面を用いて本発明の実施の形態1を説明する。図1は実施の形態1に係る物体認識システムの構成図である。図2は実施の形態1における第1の撮像装置と第2の撮像装置の配置を説明するための図である。図3は実施の形態1における撮像データに含まれる物体である車両の画像を表す図である。図4は実施の形態1における車両を正面から見た図である。図5は実施の形態1に係る物体認識部の構成図である。図6は実施の形態1における撮像データに含まれる車両の画像のサイズ変更を説明するための図である。図7は実施の形態1の動作を説明するフローチャートである。
【0011】
図1に示すように、物体認識システムは、第1の撮像装置(第1の撮像部)1と、第2の撮像装置(第2の撮像部)2と、物体認識装置3とから構成される。このような物体認識システムは、例えばゲートの侵入監視システムに適用される。ここでは、ゲートに侵入する物体を車両として説明を行うが、これに限定するものではなく、動物、人物等であってもよい。以下も同様である。
【0012】
まず、第1の撮像装置1と第2の撮像装置2について説明する。第1の撮像装置1と第2の撮像装置2は例えば受信スキャンレス型のレーザ画像計測装置が該当する。第1の撮像装置1は第1の領域に、第2の撮像装置2は第2の領域にそれぞれレーザ光を照射し、照射を行った領域内の各点における強度値を強度データとして取得する。また、領域の照射を行った各点における距離値を距離データとして取得する。第1の撮像装置1及び第2の撮像装置2は、所定の時間間隔毎に、取得した強度データと距離データとをそれぞれ第1の撮像データ、第2の撮像データとして物体認識装置3に出力する。
【0013】
なお、上記レーザ光が照射される領域については、観測領域、照射領域のように表現してもよい。以下では単に領域(第1の領域、第2の領域)として説明を行う。
【0014】
図2に示すよう、第1の撮像装置1と第2の撮像装置2は、所定の間隔w(m)をもって車両の通行経路の傍に設置されている。つまり、第2の撮像装置2は、第1の撮像装置1に対して、車両の進行方向(通過方向)に所定間隔をおいて配置されている。図2の例では第1の撮像装置1と第2の撮像装置2は通行経路の反対側にそれぞれ設置されているが、この配置に限るものではなく、同側であってもよい。また、間隔wについては、例えば0.8m程度であればよい。
【0015】
車両が進行方向に移動して第1の撮像装置1がレーザ光を照射する第1の領域を通過すると、第1の撮像装置1は車両についての強度データ及び距離データを取得し、物体認識装置3に出力する。このとき、第1の撮像装置1は強度データを画像データ(強度画像)として出力してもよい。強度画像は、図3に示すよう、横軸を車両進行方向に対応するライン方向、縦軸を撮像装置(センサ)の走査方向に対応するデータ方向と定義された平面において、各画素に強度値が与えられた画像であり、第1の撮像装置1から見た奥行方向の強度値を含めてもよい。
【0016】
また同様に、車両が進行方向に移動して第2の撮像装置2がレーザ光を照射する第2の領域を通過すると、第2の撮像装置2は車両についての強度データ及び距離データを取得し、物体認識装置3に出力する。
【0017】
なお、ここでは第1の撮像装置1と第2の撮像装置2を一例としてライン状にスキャン(走査)するラインセンサとしたが、これに限るものではなく、少なくとも強度データと距離データとを取得できるものであればよい。強度データの代わりに、領域の照射を行った各点における輝度値から構成される輝度データを取得できるCCD(Charge Coupled Device)カメラ等であってもよい。なお、強度データ(又は輝度データ)及び距離データをそれぞれ強度画像(又は輝度画像)、距離画像と画像形式にしたものも撮像データに含まれる。第1の撮像装置1は第1の領域にレーザ光を照射して取得する第1の撮像データを、第2の撮像装置2は第2の領域にレーザ光を照射して取得する第2の撮像データを、物体認識装置3に出力する。
【0018】
また、第1の撮像装置1及び第2の撮像装置2は、取得した距離データから、高度値(高さ値)及び奥行距離値を算出し、これらを撮像データとして物体認識装置3に出力してもよい。図4に示すように、撮像装置から見た奥行方向をx軸、撮像装置の高さ方向である高度方向をz軸と定義すると、x−z平面に垂直な方向が進行方向となり、第1の撮像装置1(第2の撮像装置2)は、z軸方向にセンサ高度H、ビーム走査角度の半角θ、センサオフナディア角φとなるように設置される。この場合、距離画像におけるデータ方向の画素番号をi、その最大画素数をN、領域における各点の距離値をRiとすると、高度値及び奥行距離値は式(1)のとおりに求められる。
【0019】
【数1】

【0020】
なお、第1の撮像装置1、第2の撮像装置2はそれぞれ撮像手段(第1の撮像手段、第2の撮像手段)を構成する。また、撮像手段は第1の撮像装置1と第2の撮像装置2とから構成されるものであってもよい。
【0021】
次に、物体認識装置3について説明する。物体認識装置3は、図1に示すように、撮像データ保存部31と、物体検知部32と、速度検出部33と、物体認識部34とを備え、第1の撮像装置1から第1の撮像データ、第2の撮像装置2から第2の撮像データが出力される。なお、撮像データ保存部31、物体検知部32、速度検出部33、物体認識部34、はそれぞれ、撮像データ保存手段31と、物体検知手段32と、速度検出手段33と、物体認識手段34を構成する。
【0022】
撮像データ保存部31には、第1の撮像装置1と第2の撮像装置2から出力された第1の撮像データ、第2の撮像データを保存される。また、複数のテンプレートデータが予め保存されている。このテンプレートデータは、予め設定された基準速度で通行経路を通過する対象物の特徴量(特徴パターン)を有するデータであり、対象物には、トラック、乗用車、軽自動車等の様々な種類の車両や、人物、動物等が該当する。ここで、基準速度をどのように決めるかについては、車両認識を行うにあたり想定される車両の最大通過速度としてもよいし、ユーザが任意に決めてもよい。以下では1例として、一般に車両がゲートを通過する速度Vbを基準速度として説明を行う。
【0023】
物体検知部32は、撮像データ保存部31から取得した撮像データに基づき、領域内に存在する車両を検知する。物体検知部32は、例えば、領域内に車両が存在しない状態の強度データ(背景データ)を予め取得しておき、この背景データと車両が存在する状態の第1の撮像データとの各点における強度差を読み出し、強度差が所定の閾値を超える点の数が設定数以上あれば物体である車両が存在しているものと検知する。物体検知部32は、第1の撮像装置1に出力された第1の撮像データから第1の領域内に存在する車両を検知すると、車両の検知を表す第1の検知信号を出力し、第2の撮像装置2に出力された第2の撮像データから第2の領域内に存在する車両を検知すると車両の検知を表す第2の検知信号を出力する。
【0024】
速度検出部33は、物体検知部32から入力される第1の検知信号と第2の検知信号との入力の時間差から、車両の通過する速度を算出する。つまり、速度検出部33は、第1の撮像装置1と第2の撮像装置2との距離wの情報は予め持っているので、第1の撮像装置1から出力される第1の撮像データと第2の装置2から出力される第2の撮像データの出力のタイミング差が把握できれば、車両の通過速度の算出ができる。より具体的には、第1の撮像装置1及び第2の撮像装置2のデータ取得レートをfs(Hz)、各撮像装置において車両を検知したライン方向のデータ取得数をSとすると、車両の速度Vは式(2)のとおり求められる。速度検出部33は、検出した速度を物体認識部34に出力する。
【0025】
【数2】

【0026】
なお、物体検知部32と速度検出部33とは、物体速度検出手段を構成する。
【0027】
物体認識部34は、撮像データに含まれる車両の画像サイズを検出速度Vに応じて変更し、変更後の撮像データと基準速度Vbに対応するテンプレートデータとを比較することにより、撮像データに含まれる車両又は車両の一部を認識する。そして、その認識結果を図4には図示しない例えばPC(Personal Computer)等の上位の装置に出力する。物体認識部34は、図5に示すように、画像サイズ変更部341と、判定部342と、認識処理部343とを備える。
【0028】
画像サイズ変更部341は、速度検出部33により検出された速度Vに基づき、撮像データ保存部31から取得した撮像データに含まれる車両の画像のサイズを変更する。具体的には、画像サイズ変更部341は、撮像データに含まれる車両の画像について、車両のライン方向、すなわち通過方向(横方向)の長さが変更されるよう、バイリニア補間又はバイキュービック補間等を行いサイズを変更する。なお、画像のサイズを変更する処理を、画像を補正すると表現してもよい。
【0029】
画像のライン方向のサイズをどの程度変更するかについては、例えば基準速度Vbに対する検出速度Vの割合に比例するよう変更すればよい。図6に示すよう、検出速度Vで通過する車両のライン方向の長さがAだとした場合、サイズ変更後の車両のライン方向の長さはA×V/Vbとなる。検出速度Vが基準速度Vbよりも速い場合、撮像データに含まれる車両の画像は基準速度に対応する画像よりもライン方向に縮んだ画像となっており、サイズ変更されることによりライン方向に伸びるようになる。一方、検出速度Vが基準速度Vbよりも遅い場合、撮像データに含まれる車両の画像は基準速度に対応する画像よりもライン方向に伸びた画像となっており、サイズ変更されることによりライン方向に縮むようになる。画像が車軸の場合は、サイズ変換後の車軸の扁平率が0に近づくこととなる。
【0030】
サイズ変更後のライン方向の長さは、車両が基準速度Vbで通過する場合の車両のライン方向の長さに対応している。そのため、車両がいずれの速度で通過しようとも、その通過速度に起因した画像の歪みを補正し、基準速度Vbで通過した場合の画像サイズに合うようになる。
【0031】
なお、サイズ変更には、画像のライン方向の長さが大きくなるようサイズ変更した後、さらにアスペクト比を変更したものについても含まれる。また、ライン方向の長さを長く(短く)する代わりにデータ方向(縦方向)の長さが短く(長く)なるように変更してもよいし、ライン方向とデータ方向の両方の長さを変更することによりサイズ変更してもよい。
【0032】
判定部342は、画像サイズ変更部341で画像のサイズが変更された撮像データが入力され、この撮像データと、撮像データ保存部31に予め保存されたテンプレートデータとについて、パターンマッチング処理を行う。判定部342は、撮像データに含まれる車両の画像である被探索画像上を、テンプレートデータに含まれる対象物の特徴パターンをxy方向に移動して比較を行っていき、被探索画像上に対象物の特徴パターンの検出を行う。つまり、判定部342は、撮像データに含まれる物体である車両の画像が、テンプレートデータに含まれる対象物の特徴パターンを有するか否かを判定する。判定結果は、認識処理部343に出力される。
【0033】
ここで撮像データに含まれる画像とは、強度画像、輝度画像、又は距離画像が該当する。また、高度値及び奥行距離値のデータを有する画像とテンプレート画像とのマッチングであってもよいし、検出速度Vを用いて算出されるライン方向の距離値による3次元形状マッチングを用いてもよい。検知を行うスキャンの相対ライン数をjとすると、ライン方向の距離値Yjは式(3)のように求められる
【0034】
【数3】

【0035】
なお、パターンマッチングの方法としては、テンプレートマッチング処理やテクスチャーマッチング処理を用いればよい。また、テンプレートデータについては撮像データ保存部31に保存されているとしたが、別の保存装置(メモリ)に予め保存されていてもよいし、また判定部342が内部メモリを有し予め保存しておいてもよい。また、テンプレートデータは対象物の特徴量を有するものであるとして説明を行ったが、対象物の画像データそのものであってもよい。
【0036】
認識処理部343は、判定部342からの判定結果に基づいて、物体の認識結果を求め、その認識結果を例えばPC等の外部装置に出力する。つまり、認識処理部343は、判定部342により撮像データは対象物の特徴パターンを有するという判定結果が入力されると、撮像データに含まれる物体を対象物と認識し、その認識結果を出力する。例えば撮像データが軽自動車の特徴パターンを有するのであれば、認識処理部343は物体を軽自動車と認識し、トラックの特徴パターンを有する場合は、認識処理部343は物体をトラックと認識してその認識結果を出力する。
【0037】
次に、図7を用いて本発明の実施の形態1の動作について説明する。
【0038】
第1の撮像装置1及び第2の撮像装置2はそれぞれ所定時間間隔をもって取得した撮像データ(第1の撮像データ、第2の撮像データ)を物体認識装置3の撮像データ保存部31に出力している(ステップS1)。
【0039】
図2に示すように車両が車両進行方向に移動して第1の領域内に入り、第1の撮像装置1が出力する第1の撮像データ中に車両が存在すると(ステップS2−Yes)、物体検知部32は、撮像データ保存部31から取得したその第1の撮像データ中の物体である車両を検知する。そして、物体検知部32は、車両が存在することを示す第1の検知信号を速度検出部33に出力する(ステップS3)。なお、この時点では撮像データ中に何か物体が存在することは検知できるが、撮像データ中の物体が車両ということまでは認識できていない。
【0040】
次いで車両が第2の領域内に入り、第2の撮像装置2が出力する第2の撮像データ中に車両が存在すると(ステップS4−Yes)、物体検知部32は、撮像データ保存部31から取得したその第2の撮像データ中の物体である車両を検知する。そして、物体検知部32は、車両が存在することを示す第2の検知信号を速度検出部33に出力する(ステップS5)。
【0041】
速度検出部33は、第1の検知信号と第2の検知信号との両方が入力されると、各検知信号の入力の時間差から車両の通過速度Vを検出し、検出速度を物体認識部34に出力する(ステップS6)。
【0042】
物体認識部34の画像サイズ変更部341は、速度検出部33からの検出速度Vが入力されると、撮像データ保存部31から撮像データを取得し、検出速度Vに応じて、撮像データに含まれる車両の画像のサイズを変更する(ステップS7)。このようにサイズ変更することにより、車両のライン方向の長さは、車両が基準速度Vbで通過する場合におけるライン方向の長さに対応したものとなる。
【0043】
画像サイズ変更部341は、サイズ変更処理を行うと、その変更後の撮像データを判定部342に出力する。ここで、サイズ変更される画像を含む撮像データは、第1の撮像装置1で撮像された第1の撮像データでも、第2の撮像装置2で撮像された第2の撮像データのいずれであってもよい。
【0044】
判定部342は、画像サイズ変更部341から変更後の画像を含む撮像データが入力されると、変更された撮像データと、撮像データ保存部31に保存される複数のテンプレートデータとを比較し(ステップS8)、撮像データがテンプレートデータに含まれる対象物の特徴パターンを有するか否かを判定し、その判定結果を認識結果出力部343に出力する。
【0045】
例えば撮像データ保存部31にテンプレートデータA、B、Cが保存されており、各テンプレートデータがそれぞれ、対象物である軽自動車、乗用車、トラックの特徴パターンを有する場合、判定部342は変更後の撮像データとテンプレートデータA、B、Cとをそれぞれパターンマッチング処理を行う。ここでは、撮像データにはテンプレートデータCの特徴パターンが含まれるものとして説明する。
【0046】
このとき、撮像データにふくまれる車両のライン方向の長さは、車両がいずれの速度で通過しようとも、基準速度Vbで通過する場合のライン方向の長さに対応するようサイズ変更されており、また、テンプレートデータA、B、Cに含まれる対象物の特徴パターンは基準速度Vbで通行する場合のサイズに対応させたものとなっている。そのため、車両の通過速度が異なることによるミスマッチを防止し、パターンマッチング処理のマッチング精度の低下を防止することができる。また、様々な通過速度に対応したテンプレートデータを用意する必要がないので、パターンマッチング処理における計算コストを下げることが可能となる。
【0047】
認識処理部343は、判定部342での判定結果にもとづいて物体を認識し、その結果を出力する(ステップS9)。つまり、認識処理部343は、判定部342から、撮像データにはテンプレートデータCの特徴パターンが含まれるという判定結果が入力されると、撮像データに含まれる物体である車両はトラックであると認識し、その結果を出力する。
【0048】
ここで、判定部342はサイズ変更された撮像データに含まれる物体の一部と対象物が同一か否か判定してもよい。すなわち、テンプレートデータを車軸の特徴量を有するデータとし、車両の画像を含む撮像データと車軸の特徴量を有するテンプレートデータとでパターンマッチング処理を行ってもよい。こうすることにより、物体である車両の一部に車軸が存在するか否かを判定、認識することが可能となる。またテンプレートデータについては、基準速度で通過する際の車軸の特徴量を有するテンプレートデータだけを保存していればよく、複数の速度に対応した車軸の特徴量を有する複数のテンプレートデータは不要となるので、保存しておくテンプレートデータのパターンの量を大幅に削減することができる。
【0049】
以上のように、本発明の実施の形態1によれば、検出した物体の速度に応じて撮像データに含まれる物体の画像をサイズ変更し、その変更後の撮像データとテンプレートデータとをパターンマッチング処理することにより物体を認識するので、マッチングの精度を向上させ精度高い物体認識が可能となる。
【0050】
また、複数の速度に対応した複数のテンプレートデータを予め用意する必要がなくなるので、撮像データとパターンマッチング処理するテンプレートデータ量が減少し、パターンマッチング処理における計算コストを削減して処理時間の増大を防止することが可能となる。
【0051】
また、検出した物体である車両の速度に応じて撮像データに含まれる物体の画像のサイズを変更し、その変更後の撮像データと車軸の特徴量を有するテンプレートデータとをパターンマッチング処理することにより、マッチングの精度を良くし、かつ、その計算コストを下げて、通行する車両の車軸を認識することが可能となる。
【0052】
なお、これまで第1の撮像装置1から出力される第1の撮像データ及び第2の撮像装置2から出力される第2の撮像データは、撮像データ保存部31に一旦保存されてから物体検知部32及び物体認識部34に入力されていたが、この構成に限らず、例えば第1の撮像装置1及び第2の撮像装置2から直接物体検知部32及び物体認識部34に出力されることとしてもよい。以下も同様である。
【0053】
なお、これまで撮像データ保存部31は物体認識装置3の内部に備えられた構成としたが、これに限らず、物体認識装置3の外部の記憶装置に備えられた構成としてもよい。以下も同様である。
【0054】
なお、これまで複数のテンプレートデータは撮像データ保存部31に保存されているとして説明を行ったが、これに限るものではなく、例えば物体認識装置3内の別メモリに保存してもよいし、物体認識部34の内部メモリに保存してもよい。以下も同様である。
【0055】
実施の形態2.
以下図面を用いて本発明の実施の形態2について説明する。図8は実施の形態2に係る物体認識システムの構成図である。図9は実施の形態2における第1の撮像装置と速度計の配置を説明するための図である。図10は実施の形態2の動作を説明するフローチャートである。実施の形態1の画像表示システムの構成に相当する部分には図1と同一符号を付してその説明を省略する。
【0056】
実施の形態2の物体認識システムは、図8に示すように、第1の撮像装置1と、物体認識装置3と、速度計4とを備え、物体認識装置3は撮像データ保存部31と物体認識部34を有する。また、物体認識部34は、実施の形態1と同様に、図5に示す画像変換部341、判定部342、認識結果出力部343とを有する。実施の形態2の物体認識システムは、撮像装置が1台である点と、物体認識装置3が物体検知部32と速度検出部33とを有していない点において実施の形態1と異なる。
【0057】
速度計4は、図9に示すように、通行経路の傍に、第1の撮像装置1と所定の間隔をおいて設置されている。この速度計4は、通過する車両等の物体が速度を検出する領域内に入ると、物体の速度を検知して物体認識部34の速度比較部340に出力する。なお、速度計4は物体速度検出手段を構成する。
【0058】
図10を用いて本発明の実施の形態2の動作について説明する。
【0059】
第1の撮像装置1は所定時間間隔で取得した第1の撮像データを物体認識装置3の撮像データ保存部31に出力している(ステップS01)。
【0060】
車両が車両進行方向に移動して速度計4による速度を検出する領域内に入り、速度計4が車両の速度を検出すると(ステップS02−Yes)、その検出した速度を物体認識部34の画像サイズ変更部341に出力する(ステップS03)。なお、この時点では撮像データ中の物体が車両ということは認識できていない。
【0061】
速度計4により検出された速度が画像サイズ変更部341に入力された後の処理(ステップS04〜S06)については、実施の形態1で説明した図7のステップS7〜S9と同一であるので、説明を省略する。
【0062】
以上のように、本発明の実施の形態2によれば、速度計4により物体の通行速度を検出し、その検出速度に応じて撮像データに含まれる物体の画像をサイズ変更し、その変更後の撮像データとテンプレートデータとをパターンマッチング処理することにより物体を認識するので、実施の形態1よりも撮像装置の設置台数が減り、物体認識装置3において物体検知処理、速度検出処理が不要となるので、実施の形態1と同一の効果を有することに加え、さらに計算コストを下げることが可能となり、また、装置規模を縮小することが可能となる。
【0063】
実施の形態3.
以下図面を用いて本発明の実施の形態3について説明する。図11は実施の形態3に係る物体認識部の構成図である。図12は実施の形態3に係る高度ヒストグラム算出処理の一例を説明するための図である。図13は実施の形態3における撮像データに対しての検知フラグ算出処理の一例を説明するための図である。図14は実施の形態3の動作を説明するフローチャートである。図15は実施の形態3に係る高度ヒストグラム算出処理の他の例を説明するための図である。図16は実施の形態3における撮像データに対しての検知フラグ算出処理の他の例を説明するための図である。実施の形態1の画像表示システムの構成に相当する部分には図1と同一符号を付してその説明を省略する。
【0064】
実施の形態3の物体認識システムは、物体認識装置3の構成が実施の形態1と異なり、図11に示すように、新たに速度比較部340と、平均化処理部344と、ヒストグラム算出領域設定部345と、高度ヒストグラム算出部346と、データ存在確率算出部347と、検知フラグ生成部348とを備える。なお、速度比較部340、平均化処理部344、ヒストグラム算出領域設定部345、高度ヒストグラム算出部346、データ存在確率算出部347、検知フラグ生成部348、はそれぞれ、速度比較手段340と、平均化処理手段344と、ヒストグラム算出領域設定手段345と、高度ヒストグラム算出手段346と、データ存在確率算出手段347と、検知フラグ生成手段348を構成する。
【0065】
速度比較部340は、速度検出部33から検出速度Vが入力されると、その検出速度Vと予め設定された速度閾値Vthとを比較し、検出速度Vが速度閾値Vthよりも速ければその検出速度Vを画像サイズ変更部341に出力する。一方、速度比較部340は、検出速度Vが速度閾値Vthよりも遅い場合、又は速度検出部33から車両の速度を検出できなかったことを表すエラー信号が入力された場合は、画像サイズ変更部341に検出速度Vを出力せず、平均化処理部344に対して処理を行うよう指示する指示信号を出力する。ここで、車両の速度を検出できない場合とは、例えば撮像装置の前で車両が停止した場合等が該当する。
【0066】
速度閾値Vthは、物体認識を行う制限時間内に車両を認識することができる最低の速度値である。すなわち、車両の形状全てを含む画像を保存するために必要な最低の速度であり、車両の通過速度がこのVthを下回ったとき、制限時間内に車両の全形状の画像が含まれる撮像データが得られないこととなる。速度閾値Vthの求め方についての詳細は後述する。
【0067】
平均化処理部344は、速度比較部340から指示信号が入力されると、撮像データ保存部31から撮像データを取得し、撮像データに含まれる車両画像のライン方向に対して移動平均処理を行う。この移動平均処理を行うことにより、移動平均点数をNAとして、このNAの平方根倍でSNR(Signal to Noise Ratio)が上昇し、画質を向上させることが可能となる。移動平均点数NAは任意に定めることができるが、1例としては、物体認識を行う必要がある制限時間をTLとすると、式(4)のように求められる。
【0068】
【数4】

【0069】
なお、平均化処理部344の代わりにFIR(Finite Impulse Response)フィルタ、Butterworthフィルタ等のIIRフィルタを用いその次数をNAとしてもよい。
【0070】
ここでの撮像データは、強度データと距離データとからなる三次元データに相当するが、これに限定するものではなく、例えば距離データの三次元データのみに相当するものであってもよい。また、ここでの撮像データは、第1の撮像データでも第2の撮像データのいずれでもよく、以下は単に撮像データとして説明する。
【0071】
ヒストグラム算出領域設定部345は、平均化処理部344により移動平均処理がなされた撮像データに対して、第1の領域(又は第2の領域)を所定領域に絞り込み、絞り込んだ所定領域についての撮像データを出力する。この所定領域をヒストグラム算出領域と定義して以下説明する。
【0072】
このヒストグラム算出領域は、図12に示すよう、高度方向の上限値H1a、下限値H2a、奥行距離方向の上限値S1a、下限値S2aとで囲まれた領域である。例えば、高度方向の上限値H1aは撮像装置で撮像可能な最大高さに設定され、高度方向の下限値H2aは国産車の最低地上高度に設定され、奥行距離方向の上限値S1aは車両が走行している車線幅に設定され、奥行距離方向の下限値S2aは撮像装置と車両との最小距離に設定されるが、これに限定されるものではない。
【0073】
高度ヒストグラム算出部346は、撮像データのうちのヒストグラム算出領域を高度(高さ)方向にN分割して総数N個の区間(高さビン)Bhaを作成し高度ヒストグラムCaを算出する。この高さビンBhaの幅は任意に設定できるが、例えば撮像データの有する高さ方向の空間分解能に相当する値とすればよい。
【0074】
図12では高さビンの分割数を2と設定し、車両のルーフ部分Baに該当する撮像データが上部のビンに複数個格納され、車両のドア部分Ba、車両床部分、及びタイヤ部分A’に該当する撮像データが下部のビンに複数個格納される。路面はヒストグラム算出領域外となっているので、路面に該当する撮像データは高さビンには格納されない。そして、高度ヒストグラム算出部346は、算出したヒストグラムをデータ存在確率算出部347に出力する。
【0075】
データ存在確率算出部347は、高度ヒストグラム算出部346で算出された高度ヒストグラムCaに基づき、強度データ又は距離データが所定数以上格納されたビン数nと、高さ方向に分割したビン総数Nとの比率n/Nをデータ存在確率Paとして算出する。そして、データ存在確率算出部347は、図13(a)に示す撮像データに含まれる車両の断面、つまりライン方向に沿ってデータ存在確率Paを取得する(図13(b)に対応)。そして、データ存在確率算出部347は、車両のライン方向に沿って得たデータ存在確率Paについてのデータを検知フラグ生成部に出力する。なお、撮像データに含まれる車両の画像は、車両の検出速度Vが速度閾値Vthを下回っているため、図13(a)に示すように、車両の全形状のうち一部領域が欠落した画像となる。
【0076】
検知フラグ生成部348は、データ存在確率算出部347で算出されたデータ存在確率Paと予め設定された閾値とを比較することにより検知フラグを生成する。
【0077】
検知フラグ生成部348は複数の閾値の組(上限閾値、下限閾値)を有し、データ存在確率Paが、上限閾値よりも高い場合には検知フラグをH、上限閾値よりも低く下限閾値よりも高い場合はM、下限閾値よりも低い場合はLとする。複数の閾値の組は対象物毎、すなわち車種毎、車両サイズ毎に異なるものとされており、例えばトラック用の閾値の組D、軽自動車用の閾値の組E、乗用車用の閾値の組Fはそれぞれ異なる値である。このように検知フラグ生成部348は、対象物に応じて値が異なる複数の閾値の組と、データ存在確率Paとをそれぞれ比較する。
【0078】
例えば図13(b)に示すデータ存在確率Paが入力されると、検知フラグ生成部348は、このデータ存在確率Paと上限閾値、下限閾値との比較を行う。ここでは撮像データに含まれる物体である車両は乗用車とし、比較用の閾値の組も乗用車用の閾値の組Fとする。比較の結果、図13(a)に示す撮像データのうち、車両のタイヤ部分におけるデータ存在確率Paは上限閾値を超えているのでHとなる。車両のルーフ部分におけるデータ存在確率Paは下限閾値よりも大きくかつ上限閾値未満となるのでMとなる。その他の部分におけるデータ存在確率Paは下限閾値よりも小さくなるのでLとなる。その結果、図13(c)に示されるパターンの検知フラグが検知フラグ生成部348により生成される。
【0079】
検知フラグ生成部348は、乗用車用の閾値の組F以外の組の閾値に対してもデータ存在確率Paと比較するが、F以外の組の閾値においては図13(c)に示されるような検知フラグのパターンは生成されない。これは、乗用車とトラック、乗用車と軽自動車とでライン方向におけるデータ存在確率Paの値が異なるためである。そのため、閾値の組Fにおいて図13(c)のような検知フラグのパターンが生成されるのは、乗用車に対しては乗用車用の閾値の組Fだけとなる。
【0080】
検知フラグ生成部348は、データ存在確率Paと対象物に応じた閾値の組とをそれぞれ比較して複数の検知フラグを生成すると、生成した検知フラグパターンと対応する対象物の情報とを対応づけて認識処理部343に出力する。例えば上記の閾値の組D、E、Fと図13(b)に示すデータ存在確率Pとを比較した場合、Dと比較され生成された検知フラグパターンと「トラック」という情報、Eと比較され生成された検知フラグパターンと「軽自動車」、Fと比較され生成された検知フラグパターン(図13(c)に対応)と「乗用車」という情報をそれぞれ認識処理部343に出力する。
【0081】
認識処理部343は、検知フラグ生成部348から出力された検知フラグパターンと当該パターンに対応する対象物の情報とに基づいて、物体の認識を行う。つまり、認識処理部343は、入力された複数の検知フラグパターンを読み取り、所望の検知フラグパターンに対応する閾値の組についての情報から、物体の認識を行う。例えば閾値の組D、E、Fとの比較により生成された検知フラグパターンと対応する対象物の情報とが入力された場合、認識処理部343は、物体を、図13(c)に示す所望の検知フラグパターンに対応する乗用車であると認識する。
【0082】
図14を用いて本発明の実施の形態3の動作について説明する。
【0083】
ステップS001からS006までの処理については、実施の形態1で説明した図7のステップS1〜S6と同一であるので、説明を省略する。
【0084】
速度比較部340は、速度検出部33により検出された検出速度Vと速度閾値Vthとを比較し(ステップS007)、検出速度Vが設定速度Vbよりも速い場合(ステップS008−Yes)、画像サイズ変更部341に検出速度Vを出力し、その後ステップS009〜S011までの処理がなされることとなる。これらステップS009〜S011までの処理は、実施の形態1で説明した図7のステップS7〜S9と同一であるので、説明を省略する。
【0085】
速度比較部340は、速度検出部33により検出された検出速度Vが設定速度Vbよりも遅い場合、又は速度検出部33からエラー信号が入力された場合(ステップS008−No)、ステップS009〜S011までの処理はなされず、ステップS012〜S017までの処理がなされるよう、処理が切り替わる。つまり、速度比較部340は、画像サイズ変更部341に検出速度Vを出力せず、平均化処理部344に対して指示信号を出力することにより処理を切り替える。
【0086】
平均化処理部344は、速度比較部340より指示信号が出力されると、撮像データ保存部31から取得した撮像データに対し移動平均処理を行い、ノイズの除去をする(ステップS012)。
【0087】
ヒストグラム算出領域設定部345は、移動平均処理が行われた撮像データにおける第1の領域(又は第2の領域)を絞り込み、ヒストグラム算出領域を得る(ステップS013)。
【0088】
高度ヒストグラム算出部346は、ヒストグラム算出領域を高さ方向にN分割して総数N個の高さビンBhaを作成し高度ヒストグラムCaを算出する(ステップS014)。高度ヒストグラム算出部346は、この高度ヒストグラムを車両のライン方向に沿って算出する。
【0089】
データ存在確率算出部347は、車両のライン方向に沿って算出された高度ヒストグラムに基づき、強度データ又は距離データが所定数以上格納されたビン数nと、高さ方向に分割したビン総数Nとの比率n/Nから、車両のライン方向に沿ったデータ存在確率Paを算出する(ステップS015)。
【0090】
検知フラグ生成部348は、データ存在確率算出部347で算出されたデータ存在確率Paと、対象物に応じてそれぞれ値が異なる閾値の組とを比較することにより複数の検知フラグを生成し、生成した複数の検知フラグパターンと各パターンに対応する対象物の情報とを認識処理部343に出力する(ステップS016)。
【0091】
認識処理部343は、検知フラグ生成部348から出力された検知フラグのパターンとそのパターンに対応する対象物の情報とから、検知された物体を、所望の検知フラグパターンに対応する対象物であると認識する(ステップS017)。
【0092】
ここで、ヒストグラム算出領域設定部345は、上述したように、車両全体が含まれるような領域をヒストグラム算出領域として設定してもよいが、図15(a)(b)に示すように、車両のタイヤが含まれる程度の広さの領域に設定してもよい。この場合、ヒストグラム算出領域設定部345は、例えば高度方向の上限値H1を国産車の最低地上高度、下限値H2を路面に対する高度の標準偏差値、奥行距離方向の上限値S1を国内で販売されているタイヤ幅の最大値、下限値S2を撮像装置1と物体との最小距離、のように設定する。
【0093】
高度ヒストグラム算出部346は、ヒストグラム算出領域を高さ方向にN分割して総数N個の高さビンBhを作成し、高度ヒストグラムを算出する。図15(a)に示すように、ヒストグラム算出領域内にタイヤが存在する場合は、設定した高さビンBhのいずれの位置においても強度データ又は距離データが存在するヒストグラムCになるので、データ存在確率Paは100%となる。
【0094】
一方、図15(b)に示すように、ヒストグラム算出領域内にタイヤが存在しない場合、設定した高さビンBhの一部についてのみ強度データ又は距離データが存在するので、偏ったヒストグラムCとなり、データ存在確率Paは25%程度となる。高度ヒストグラム算出部346は、上述したように、車両のライン方向に沿って高度ヒストグラムを算出する。
【0095】
データ存在確率算出部347は、ヒストグラム算出領域内にタイヤが存在する場合、図16(a)に示す車両のライン方向に沿ってデータ存在確率Pを取得する(図16(b)に対応)。ここで得られたデータ存在確率Pは、車両のタイヤが検知されるときに値が高くなる。
【0096】
検知フラグ生成部348は、データ存在確率Pと予め設定した閾値とを比較することにより検知フラグを生成し、生成した検知フラグパターンを認識処理部343に出力する。
【0097】
検知フラグは、図16(b)に示すデータ存在確率Pのうち、タイヤが存在しない部分においては閾値を超えず値が0となり、タイヤが存在する部分においては閾値を超え1となる。そのため、検知フラグ生成部348は、タイヤが存在する場合には図16(c)に示すようなタイヤの存在を表す1の検知フラグパターンを生成し、タイヤが存在しない場合においては0の検知フラグパターンを生成することとなる。
【0098】
認識処理部343は、検知フラグ生成部348から出力された検知フラグパターンから、物体にタイヤが存在するか否か、言い換えると、物体に車軸が存在するか否かを判定する。そして、認識処理部343は、物体に車軸が存在すると判定すると、物体は車両であると認識する。
【0099】
なお、取得された撮像データに含まれる車両の画像に後輪のタイヤも含まれた場合、検知フラグのパターンは1のピークが2つ生じるようなパターンとなり、前輪のタイヤのみが検出された場合と同様に物体中に車軸が存在すると判定され、認識処理部343により物体は車両であると認識される。
【0100】
以上のように、本発明の実施の形態3によれば、実施の形態1の効果に加え、物体の検出速度が速度閾値よりも遅い場合又は物体の通過する速度が検出できなかった場合には、撮像データ内の領域を絞り込んだヒストグラム算出領域に対して高度ヒストグラムを算出し、その高度ヒストグラムから算出したデータ存在確率と閾値とを比較することにより検知フラグを生成し、その検知フラグのパターンから物体を認識するようにしたので、物体の形状全てを含む画像を保存できない場合であっても、物体を認識することが可能となる。
【0101】
なお、物体認識部347は、図11に図示しないデータ削除部を備えていてもよい。データ削除部は、撮像データ保存部31において保存していたデータ量の検査を行う。データ量閾値をMとすると、その決定方法として、例えば、搭載されているメモリ量をMe(bit)とすると、1ラインの画素数N、1データのbit数Fを用いて、式(5)のように求められる。
【0102】
【数5】

【0103】
また、データ削除部は、物体認識を行う必要がある制限時間TLを用いて、式(6)のように求めてもよい。ただし、式(5)又は式(6)に制限されるものではない。保存されていたデータ量がM以上である場合、データ削除部347は、最古のデータを破棄し、その結果を電気信号として撮像データ保存部31に出力する。
【0104】
【数6】

【0105】
ここで、速度閾値Vthの求め方についてその詳細を説明する。速度閾値Vthは、式(5)又は式(6)におけるMを用いて、式(7)のように表される。また、ユーザが任意にMを定義してもよい。
【0106】
【数7】

【0107】
実施の形態4.
以下図面を用いて本発明の実施の形態4について説明する。図17は実施の形態4に係る物体認識部の構成図である。実施の形態1の画像表示システムの構成に相当する部分には図1と同一符号を付してその説明を省略する。
【0108】
実施の形態4の物体認識システムは、実施の形態3の物体認識システムと比較して、図18に示すように、新たに平均化処理部344aと、ヒストグラム算出領域設定部345aと、高度ヒストグラム算出部346aと、データ存在確率算出部347aと、検知フラグ生成部348aとを備えた構成であってもよい。これら各構成はそれぞれ図11の平均化処理部344、ヒストグラム算出領域設定部345、高度ヒストグラム算出部346、データ存在確率算出部347、検知フラグ生成部348と同一の機能を有するためその説明は省略する。また、速度比較部340に検出速度が入力されるまでの動作は実施の形態3と同一であるので、その説明は省略する。
【0109】
速度比較部340は、速度検出部33により検出された検出速度Vが速度閾値Vthよりも遅い場合、又は速度検出部33からエラー信号が入力された場合、平均化処理部344に指示信号を出力する。その後は図14のステップS012〜S017の処理がなされて物体が認識される。
【0110】
速度比較部340は、速度検出部33により検出された検出速度Vが速度閾値Vthよりも速い場合、画像サイズ変更部341及び平均化処理部344aに検出速度Vを出力する。その後は画像サイズ変更部341と、判定部342とにより図14のステップS009、S010の処理がなされ、また、平均化処理部344aと、ヒストグラム算出領域設定部345aと、高度ヒストグラム算出部346aと、データ存在確率算出部347aと、検知フラグ生成部348aとにより図14のステップS012〜S016に対応する処理もなされる。
【0111】
そして、認識処理部343は、判定部342から出力される判定結果と、検知フラグ生成部348aから出力される検知フラグパターン及び対象物の情報と、に基づいて、物体の認識結果を外部PC等へ出力する。つまり、認識処理部343は、画像のサイズが変更された撮像データと基準速度に対応するテンプレートデータとが比較された結果と、撮像データの高度方向について算出したヒストグラムから生成された検知フラグのパターン及び対象物の情報とから物体又は物体の一部を認識する。判定部342からの結果と検知フラグ生成部348aからの結果が異なる場合は、判定部342からの結果を優先させることが好ましい。
【0112】
こうすることにより、実施の形態1〜3と比較して、認識処理部343における物体認識の精度を向上させることが可能となる。
【0113】
なお、平均化処理部344aは、移動平均点数NAを、オフセットCを用いて式(8)のように求めてもよい。動的に移動平均点数を制御することによって、最適な平均化処理を行うことが可能となる。
【0114】
【数8】

【0115】
なお、速度閾値Vthを複数設定してもよく、例えばVth、Vth_s(Vth<Vth_s)とすると、速度比較部340において検出速度VがVth_sよりも大きければ図14のステップS009〜S011に対応する処理がなされ、検出速度VがVthよりも小さければ図14のステップS012〜017に対応する処理がなされる。検出速度VがVthよりも大きくVth_sよりも小さければ、本実施の形態で説明したように、画像サイズ変更部341と、判定部342とにより図14のステップS009、S010の処理がなされ、また、平均化処理部344aと、ヒストグラム算出領域設定部345aと、高度ヒストグラム算出部346aと、データ存在確率算出部347aと、検知フラグ生成部348aとにより図14のステップS012〜S016に対応する処理がなされ、認識処理部343は判定部342から出力される判定結果と、検知フラグ生成部348aから出力される検知フラグパターン及び対象物の情報と、に基づいて、物体を認識する、というようにしてもよい。また、Vth_sについては任意に設定してもよい。
【符号の説明】
【0116】
1 第1の撮像装置
2 第2の撮像装置
3 物体認識装置
31 撮像データ保存部
32 物体検知部
33 速度検出部
34 物体認識部
340 速度比較部
341 画像サイズ変更部
342 判定部
343 認識処理部
344、344a 平均化処理部
345、345a ヒストグラム算出領域設定部
346、346a 高度ヒストグラム算出部
347、347a データ存在確率算出部
348、348a 検知フラグ生成部
4 速度計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体が通過する所定領域にレーザ光を照射して得た撮像データを出力する撮像手段と、
前記物体が通過する速度を検出する物体速度検出手段と、
前記撮像手段から出力された前記撮像データに含まれる前記物体の画像のサイズを前記検出速度に応じて変更し、変更後の撮像データと基準速度に対応するテンプレートデータとを比較することにより前記物体又は前記物体の一部を認識する物体認識手段とを備えることを特徴とする物体認識システム。
【請求項2】
前記物体認識手段は、
前記基準速度に対する前記検出速度の割合に基づいて前記物体又は前記物体の一部の画像の通過方向の長さを変更してサイズを変更するサイズ変更部と、
前記サイズ変更部で変更された画像を有する前記撮像データと対象物の特徴量を有する前記テンプレートデータとでパターンマッチング処理を行い、前記撮像データが前記対象物の特徴量を有するか否かを判定する判定部と、
前記判定部により前記撮像データが前記対象物の特徴量を有すると判定された場合に、前記物体又は前記物体の一部を前記対象物と認識する認識処理部とを有することを特徴とする請求項1に記載の物体認識システム。
【請求項3】
前記撮像手段は、
前記物体が通過する第1の領域にレーザ光を照射して取得した第1の撮像データを出力する第1の撮像部と、前記第1の撮像部に対して前記物体の通過方向に所定間隔をおいて配置され、前記物体が通過する第2の領域にレーザ光を照射して取得した第2の撮像データを出力する第2の撮像部とを有し、
前記物体速度検出手段は、
前記第1の撮像データから前記第1の領域内の前記物体を検知したことを示す第1の検知信号を出力し、前記第2の撮像データから前記第2の領域内の前記物体を検知したことを示す第2の検知信号を出力する物体検知部と、
前記第1の検知信号と前記第2の検知信号との入力の時間差から前記物体の通過する速度を検出する速度検出部とを有し、
前記物体認識手段は、前記第1の撮像データ又は前記第2の撮像データのいずれかに含まれる前記物体の画像のサイズを変更して前記物体又は前記物体の一部を認識することを特徴とする請求項1又は2に記載の物体認識システム。
【請求項4】
前記物体認識手段は、
前記検出速度と予め設定した速度閾値とを比較する速度比較部を有し、
前記検出速度が前記速度閾値よりも速い場合には前記撮像データに含まれる前記物体の画像のサイズを前記検出速度に応じて変更し、変更後の撮像データと基準速度に対応するテンプレートデータとを比較して前記物体又は前記物体の一部を認識し、
前記検出速度が前記速度閾値よりも遅い場合又は前記物体の速度が検出されない場合には、前記撮像データの高度方向について算出したヒストグラムから検知フラグを生成し、前記検知フラグのパターンから前記物体又は前記物体の一部を認識することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の物体認識システム。
【請求項5】
前記物体認識手段は、
前記検出速度が前記速度閾値よりも遅い場合又は前記物体の速度が検出されない場合に、前記撮像データの高度方向についてのヒストグラムを算出する高度ヒストグラム算出部と、
前記高度ヒストグラム算出部で算出された前記高度ヒストグラムのうち所定数以上の前記撮像データが存在する割合をデータ存在確率として算出するデータ存在確率算出部と、
前記データ存在確率算出部で算出された前記データ存在確率と予め設定された閾値とを比較して前記検知フラグを生成する検知フラグ生成部とを有し、
前記認識処理部は、前記検知フラグ生成部で生成された前記検知フラグのパターンから前記物体又は前記物体の一部を認識することを特徴とする請求項4に記載の物体認識システム。
【請求項6】
前記高度ヒストグラム算出部は、前記撮像データを高度方向に分割してN個のビンを作成し、
前記データ存在確率算出部は、前記ビンの個数Nに対する前記撮像データが所定数よりも多く格納されたビンの個数nの比率n/Nを前記データ存在確率として算出することを特徴とする請求項5に記載の物体認識システム。
【請求項7】
前記物体認識手段は、
前記検出速度が前記速度閾値よりも速い場合に、前記検出速度に応じて画像サイズが変更された撮像データと基準速度に対応するテンプレートデータとを比較した結果と、前記撮像データの高度方向について算出したヒストグラムから生成された前記検知フラグのパターンとに基づいて前記物体又は前記物体の一部を認識することを特徴とする請求項4乃至6のいずれかに記載の物体認識システム。
【請求項8】
前記物体は車両であるとともに、前記物体の一部は車軸であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の物体認識システム。
【請求項9】
物体が通過する所定領域にレーザ光を照射して得られた撮像データが入力され物体又は物体の一部を認識する物体認識装置であって、
前記物体が通過する速度を検出する物体速度検出手段と、
前記物体速度検出手段で検出された速度に応じて、入力された前記撮像データに含まれる前記物体の画像のサイズを変更し、変更後の撮像データと基準速度に対応するテンプレートデータとを比較することにより前記物体又は前記物体の一部を認識する物体認識手段とを備えることを特徴とする物体認識装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−105474(P2013−105474A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−251258(P2011−251258)
【出願日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】