説明

物品吊下げ支持装置

【課題】 使用しないときに壁に収納、隠蔽して室内意匠を損なうことない物品吊下げ支持装置を提供すること。
【解決手段】 壁50に物品を吊下げ支持するための物品吊下げ支持装置10が、壁50の開口部56を通過して第1と第2の空間12、14の間で移動できるように、所定の回転軸60を中心として回動自在に壁に取付けられた回転部材20、30と、回転部材20、30に設けられ、回転部材20、30が第1の空間12にあるとき、物品と係合させて該物品を壁50に吊下げ支持する係合部34と、回転部材20、30に設けられ、回転部材20、30が第2の空間14にあるとき、壁50と概ね面一となり開口部56を閉鎖する化粧面36とを有して成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁に物品を吊下げ支持するための物品吊下げ支持装置に関し、特に自動車の客室内壁に飲料容器を保持するペットボトルホルダに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車の車両には、コーヒー飲料その他のソフトドリンクを貯留した缶等の飲料容器の底部および側部を保持するようにした容器ホルダまたはドリンクホルダが設けられている。
【0003】
この種の飲料容器として従前は主に缶が用いられてきたが、近時は所謂ペットボトルが用いられるようになっている。ペットボトルは、様々な形態のペットボトルが用いられているが、内容量500ミリリットル等の比較的背の高い或いは細長い形状のペットボトルも使用されている。こうしたペットボトルは従来の容器ホルダでは、自動車の走行中に容器が倒れたり脱落したりする問題がある。
【0004】
この問題を解決するために、近時ではペットボトル専用の容器ホルダが提案されている。例えば、特許文献1には、自動車用座席シートのヘッドレスト、自動車用ドア、自動車用エアコンの吹出口、人体の首、又は自転車用ハンドル等、種々の支持体に対してペットボトルを着脱自在に保持させるペットボトルホルダが開示されている。
【0005】
更に、特許文献2には、ペットボトルを引っかけるための板状部材に形成した切欠にペットボトルの首部下部を通すことにより、ペットボトル上部の首部を保持可能にしたペットボトルホルダが開示されている。引用文献2の発明では、前記板状の部材は、非使用時にインストルメントパネルやドアアームレスト部の側部に形成した開口部内に収納可能になっている。
【特許文献1】実用新案登録第3066067号公報
【特許文献2】特開2003−320891号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
然しながら、特許文献1のペットボトルホルダは、ヘッドレスト、自動車用ドア、自動車用エアコンの吹出口、人体の首、又は自転車用ハンドル等に支持させるようにしているために、常時ペットボトルホルダが外部に露出されており、特に、ペットボトルホルダを使用していないときにペットボトルホルダの見栄えが悪く、自動車のインテリアまたは室内意匠を著しく損なう問題がある。
【0007】
この点、特許文献2のペットボトルホルダは、板状の部材を、インストルメントパネルやドアアームレスト部の側部に形成した開口部内に収納可能となっているが、板状部材の収納時にも板状部材の切欠や前記開口部が外部から見えるので、やはり自動車のインテリアまたは室内意匠を著しく損なう問題がある。
【0008】
本発明は、こうした従来技術の問題を解決することを技術課題としており、使用しないときに壁に収納、隠蔽して室内意匠を損なうことない物品吊下げ支持装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の本発明は、第1と第2の側面と、開口部とを有し、前記第1の側面に面した第1の空間と、前記第2の側面に面した第2の空間とを仕切る壁に物品を吊下げ支持するための物品吊下げ支持装置において、前記開口部を通過して前記第1と第2の空間の間で移動できるように、所定の回転軸を中心として回動自在に前記壁に取付けられた回転部材と、前記回転部材に設けられ、前記回転部材が前記第1の空間にあるとき、物品と係合させて該物品を前記壁に吊下げ支持する係合部と、前記回転部材に設けられ、前記回転部材が前記第2の空間にあるとき、前記壁の前記第1の側面と概ね面一となり前記開口部を閉鎖する化粧面とを有している物品吊下げ支持装置を要旨とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本発明の好ましい実施形態を説明する。
図1において、容器ホルダ10は、第1と第2の空間12、14を仕切る壁、本実施形態では概ね鉛直に配置された壁50に取付けられる。壁50は、例えば自動車の客室を包囲する内張の一部であり、この場合、第1の空間12は自動車の客室であり、第2の空間14は客室の外部、より詳細には内張と自動車車体との間の空間となる。つまり、物品を吊下げる方の空間が第1の空間であり、第2の空間は壁50の外面52の反対側の空間であって後述する回転部材としての第1と第2の回転部材20、30を収納、隠蔽する空間を意味している。壁50は、前記第1の空間としての客室12に面した第1の側面としての外面52と、外面52の反対側の側面である第2の側面としての内面54とを有し、外面52から内面54へ貫通する開口部56が形成されている。壁50は、開口部56に沿って縁取り56aを有していてもよい。
【0011】
容器ホルダ10は、開口部56を臨むように壁50の内面54に取付けられる支持部材40と、開口部56を通過して第1と第2の空間12、14の間で移動できるように、回転軸としてのピン60を中心として回動自在に壁50に支持部材40を介して取付けられる回転部材とを具備している。該回転部材は、副回転軸としてのピン62を介して互いに相対的に回動自在に連結される第1と第2の回転部材20、30を具備している。このように、回転部材を第1と第2の回転部材20、30から形成することにより、回転軸としてのピン60を容易に壁54の外面52から内面54の方へ所定距離を以て離間配置し、ピン60を外部から見えないように隠蔽することが可能となる。
【0012】
支持部材40は、壁50の開口部56に隣接して配置される矩形の開口部42と、矩形の開口部42の鉛直方向の二辺から壁50に関して垂直方向に延びる一対の側壁44と、一対の側壁44の間を連結する背壁46とを少なくとも有し、第1の回転部材20を収納するための収納空間49を画成している。側壁44の各々には、水平方向に側壁44を貫通してピン60が嵌合するピン孔44a、および、ピン孔44aを中心とした円弧状に形成された案内溝44bが形成されている。また、支持部材40は、開口部42を挟んで上下に設けられた取付部48a、48bを有しており、該取付部48a、48は、固定ピン58a、ピン孔を有したボス58bおよびボス58bのピン孔に嵌合する固定ピン58cにより、壁50の内面54に固定される。
【0013】
本実施形態において、第1の回転部材20をハウジング40に回動自在に連結するピン60は水平回転軸を形成しており、第1の回転部材20は、ピン60を中心として収納位置(図2参照)と突出位置(図1参照)との間で回動自在にハウジング40に取付けられる。第1の回転部材20を突出位置へ向けて付勢するための付勢手段としてのバネ(図示せず)、好ましくは弦巻バネがピン60と第1の回転部材20との間に配設されている。更に、ピン60は、第1の回転部材20の回転動作を緩衝するダンパ(図示せず)を備えていてもよい。
【0014】
第1の回転部材20は本体部材22、腕部材24、一対の脚部26および一対の案内突起部28を有している。本体部材22は概ね直方体形状を呈しており、第1の回転部材20が突出位置にあるとき、壁50と概ね面一となり開口部56を閉鎖する前面22aと、ハウジング40の側壁44の各々に対面する側面22bとを有している。前面22aは、第1の回転部材20が突出位置にあるとき、壁50の外面52と面一なることが好ましいが、必ずしも外面52と正確に面一となる必要はなく、外面52の意匠や縁取り56aとの関連で、壁50が画成する室内のインテリアまたは意匠を損なわない範囲で壁50と概ね面一となればよい。
【0015】
腕部材24は、該第1の回転部材20が突出位置にあるとき、前面22aから下方へ垂下するように湾曲、延設されており、先端にピン62が嵌合するピン孔24aが形成されている。一対の脚部26は、第1の回転部材20が突出位置にあるとき、本体部材22の下端から側面22bに平行に下方へ延びるように形成されており、先端部にピン62を受承するためのピン孔26aが形成されている。なお、図5の実施形態では、ピン孔26aは脚部26の側面から水平方向に突き出したボスに形成されている。一対の案内突起部28は側面22bから水平方向に突出しており、第1の回転部材20をハウジング40に取付けたときに、側壁44に形成された案内溝44bに摺動自在に嵌合する。案内突起部部28が案内溝44bの各端部に当接することにより、第1の回転部材20の収納位置と突出位置とに停止することは理解されよう。また、第1の回転部材20を収納位置に固定するための係止ピン64がハウジング40に取付けられている。
【0016】
第2の回転部材30は、回動自在に第1の回転部材20の腕部材24の先端に連結される本体部材32と、本体部材32に取付けられるカバー36とを具備している。本体部材32は、壁50に対して概ね垂直に配置される一対の側壁32aと、該側壁32aを互いに連結する背壁32bとを有して概ねU字形状に形成されており、側壁32aの各々には、ピン62を受承するためのピン孔32cが形成されている。更に、ピン60は、第1の回転部材20の回転動作を緩衝するダンパ(図示せず)を備えていてもよい。
【0017】
本体部材32の下端に隣接する部分には、ペットボトル100の径部102と係合する概ねU字形状の係合部34が、本体部材32の内周面から突出すると共に同内周面に沿って延設されている。カバー36は、本体部材32の背壁32cの外表面に取付けられており、回転部材としての第1と第2の回転部材20、30が第2の空間14、より詳細にはハウジング40の収納空間49に配置されているとき、壁50と概ね面一となり開口部56を閉鎖する化粧面26aを有している。化粧面26aは、前面22aと同様に、前記回転部材がハウジング40の収納空間49に配置されているとき、壁50の外面52と面一なることが好ましいが、必ずしも外面52と正確に面一となる必要はなく、外面52の意匠や縁取り56aとの関連で、壁50が画成する室内のインテリアまたは意匠を損なわない範囲で壁50と概ね面一となればよい。また、化粧面26aは、カバー26に形成するのではなく、本体部材32、より詳細には背壁32cに直接形成してもよい。
【0018】
以下、本実施形態による容器ホルダ10の作用を説明する。
容器ホルダ10を使用しない間、つまり、容器ホルダ10が非作用位置にあるとき、回転部材としての第1と第2の回転部材20、30は、図2に示すように第2の空間14、より詳細には支持部材40の収納空間49に配置されている。このとき、第1の回転部材20は収納位置にあり、第2の回転部材30は第1の回転部材20に対して屈曲位置にある。このように、回転部材を第1と第2の回転部材20、30により形成し、相対的に回動自在に連結することにより、回転部材を第2の空間14に配置する際に回転部材を収容するための収納空間49の容積を小さくすることが可能となる。
【0019】
容器ホルダ10を使用する際には、先ず、使用者がその指を以て第2の回転部材30の化粧面36を第2の空間14へ向けて押圧することにより、第1の回転部材20と係止ピン64との間の係合が解除される。これにより第1の回転部材20は、前記バネの付勢力により収納位置から突出位置へ第2の回転部材30を伴って回転、移動する。この間、案内突起部28は、案内溝44bに沿って移動して第1の回転部材20の回転動作を案内する。また、ピン60がダンパを備えている場合には、前記付勢手段としてのバネにより付勢される回転部材20の回転動作が緩慢なものとなり、回転部材の動作に高級感を演出できる。こうして回転部材としての第1と第2の回転部材20、30は壁50の開口部56を通過して第2の空間14(収納空間49)から第1の空間12へ移動する。
【0020】
第1の回転部材20が突出位置へ移動すると、第2の回転部材30は重力によりピン62を中心として回転し図1の実線で示す展開位置へ移動する。第2の回転部材30が伸長位置へ移動すると、ペットボトル100の頸部102を係合部34に引っかけて吊下げることが可能となり、容器ホルダ10は作用位置を占めることとなる。こうして、ペットボトル100は、回転部材としての第1と第2の回転部材20、30およびハウジング40を介して壁50に吊下げ支持される。
【0021】
回転部材を収納する際は、先ず、使用者がその指を以て第2の回転部材30を操作して、突出位置にある第1の回転部材20に対して図1において二点鎖線で示すように屈曲位置へ回転させ、次いで、前記付勢手段としてのバネの付勢力に対抗して、屈曲位置にある第2の回転部材30を第1の回転部材20と共に開口部56へ向けて更に押圧する。これにより、回転部材としての第1と第2の回転部材20、30は開口部56を通過して第1の空間12から第2の空間14へ移動する。このとき、化粧面36は壁50の第1の側面と概ね面一となり開口部56を閉鎖する。
【0022】
ペットボトルを自動車の内張に吊下げ支持する容器ホルダを一例として本発明の実施形態を説明したが、本発明はこれに限定されず、例えば、ペットボトルに替えて傘を建物の玄関等の壁面に吊下げ支持するようにしてもよい。この場合、係合部34は、吊下げるべき傘の柄の形状に従い傘を吊下げるのに適した形状、例えばフック形とすることができる。
【0023】
このように本発明を自動車ではなくて建物の壁に応用する場合には、建物の壁は自動車の内張に比べて格段に厚く形成されるために、ハウジング40の一部、より詳細には開口部42に隣接する部分を壁に埋設することが好ましい。この場合でも、回転軸としてのピン60の位置は、建物の壁において玄関等に面した外面から所定の距離を以て内面の方へ離間した位置に配置して、玄関等の室内から回転軸が見えないようにすることが好ましい。また、壁50は鉛直ではなく、天井等の水平に配置された壁であってもよい。また、第2の空間14は、要は回転部材20、30の収納空間が形成されればよいので、例えば柱に所要容積の穴または空間を穿ち形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】作用位置にある本発明による物品吊下げ支持装置の好ましい実施形態を示す略示断面図である。
【図2】非作用位置にある本発明による物品吊下げ支持装置の好ましい実施形態を示す略示断面図である。
【図3】本発明による物品吊下げ支持装置の好ましい実施形態を示す略示斜視図であり、(a)は非作用位置、(b)は作用位置を示している。
【図4】支持部材の略示斜視図である。
【図5】第1の回転部材の略示斜視図である。
【符号の説明】
【0025】
10 容器ホルダ
12 第1の空間
14 第2の空間
20 第1の回転部材
22a 前面
24 支持腕
30 第2の回転部材
34 係合部
36 化粧面
40 支持部材
60 ピン(回転軸)
62 ピン(副回転軸)
50 壁
56 開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1と第2の側面と、開口部とを有し、前記第1の側面に面した第1の空間と、前記第2の側面に面した第2の空間とを仕切る壁に物品を吊下げ支持するための物品吊下げ支持装置において、
前記開口部を通過して前記第1と第2の空間の間で移動できるように、所定の回転軸を中心として回動自在に前記壁に取付けられた回転部材と、
前記回転部材に設けられ、前記回転部材が前記第1の空間にあるとき、物品と係合させて該物品を前記壁に吊下げ支持する係合部と、
前記回転部材に設けられ、前記回転部材が前記第2の空間にあるとき、前記壁の前記第1の側面と概ね面一となり前記開口部を閉鎖する化粧面とを有している物品吊下げ支持装置。
【請求項2】
前記回転軸は前記第1の側面から第2の側面の方へ所定距離を以て離間配置されている請求項1に記載の物品吊下げ支持装置。
【請求項3】
前記回転軸は水平方向に延設されている請求項1または2に記載の物品吊下げ支持装置。
【請求項4】
前記回転部材は、前記開口部から前記第1の空間へ突出する突出位置と、前記第2の空間内に配置される収納位置との間で回動自在に前記壁に取付けられた第1の回転部材と、
副回転軸によって伸長位置と屈曲位置との間で前記第1の回転部材に相対的に回動自在に連結された第2の回転部材を具備しており、
前記第2の回転部材は、前記係合部と前記化粧面とを有し、
前記回転部材が前記第1の空間にあるとき、前記第1と第2の回転部材は突出位置と伸長位置とに各々移動し、前記係合部が前記第1の空間内に配置されて前記物品と係合可能となり、
前記回転部材が前記第2の空間にあるとき、前記第1と第2の回転部材は収納位置と屈曲位置に各々移動し、前記化粧面が前記壁の前記第1の側面と概ね面一となって前記壁の開口部を閉鎖する請求項1に記載の物品吊下げ支持装置。
【請求項5】
前記回転軸は前記第1の側面から第2の側面の方へ所定距離を以て離間配置されている請求項4に記載の物品吊下げ支持装置。
【請求項6】
前記回転軸および副回転軸は水平方向に延設されている請求項4または5に記載の物品吊下げ支持装置。
【請求項7】
前記第1の回転部材は、前記突出位置において、前記壁の前記第1の側面と概ね面一となり前記開口部を閉鎖する前面と、該前面から突出した支持腕部とを具備し、
前記第2の回転部材は前記支持腕部の先端部に連結されている請求項4に記載の物品吊下げ支持装置。
【請求項8】
前記壁は自動車の客室を画成する内壁であり、前記第1の空間が前記自動車の客室である請求項1から7の何れか1項に記載の物品吊下げ支持装置。
【請求項9】
前記物品が飲料を貯留するペットボトルであり、前記係合部は前記ペットボトルの頸部に係合可能となっている請求項8に記載の物品吊下げ支持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−290079(P2006−290079A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−111254(P2005−111254)
【出願日】平成17年4月7日(2005.4.7)
【出願人】(000185617)小島プレス工業株式会社 (515)
【Fターム(参考)】