説明

物品管理システム

【課題】 超低温冷蔵庫のような広大で過酷な管理条件下においても正確に物品及びその位置を管理および特定することを可能にする。
【解決手段】 超低温冷蔵庫10内の物品管理にICタグを利用する。ICタグは、パレット11自身及びパレット11が置かれる各ブロック(AXY)内の所定の位置に取り付けられる。ICタグの情報を読み取るリーダ装置は、超低温冷蔵庫内にて物品の昇降を行うフォークリフト20に設置され、複数のICタグを同時又は順番に読み出す。フォークリフト20の運転席ドームは外界から遮蔽され、常温が維持されているので、この環境下にリーダ装置を設けることで正常に動作させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品管理システムに関し、特に、冷凍マグロ等を保管する超低温冷蔵庫内の物品管理に好適な物品管理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
物品を管理するシステムとしては種々のものが存在しており、近年はIT(情報技術)の飛躍的進歩によりネットワークシステムを利用した高度な物品管理が行われている。物品管理システムとして最もよく利用されているものはバーコードを利用したシステムである。このシステムでは、物品にバーコードを表示しておき、リーダ装置で情報を読み出して物品を管理する。あるシステムではさらに、物品が所在する現実の場所に対応する位置にバーコードを配置し、このバーコードを読み取ることで物品の位置情報の入力を行うことで、物品の内容情報及び位置情報を管理している(特許文献1参照)。また最近は、ICタグを用いた管理システムが注目されている。あるシステムでは、ICタグを例えばスーパーマーケットに並べられている各商品に貼り付け、ICタグリーダでICタグの情報を読み取る際にICタグリーダが自分の位置を知ることによって、当該商品の位置管理と数量管理を可能にしている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2004−302781号公報
【特許文献2】特開2002−046821号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、特殊な物品管理の例として超低温冷蔵庫内の物品管理がある。そのような物品の一例は「冷凍マグロ」である。海上で捕獲されたマグロは船上にて直ちに冷凍され、陸揚げされると直ちに超低温冷蔵庫内に保管される。超低温冷蔵庫は一棟がとても巨大であり、広大な敷地面積を有するものもある。そのような超低温冷蔵庫内に運ばれた冷凍マグロは、パレットに詰め込まれた状態で保管される。パレットは冷凍マグロを収容するための大型容器であり、20〜30本の冷凍マグロを収容することが可能である。冷凍マグロはある程度まとめて1つのパレットに収容され、超低温冷蔵庫内の任意のブロック内に運ばれて保管される。
【0004】
このような超低温冷蔵庫内は−60℃程度の超低温の世界であり、通常の電子機器が正常に動作しないため、常温で使用される一般的な機器や設備を用いて倉庫内の物品管理システムを構築することは困難であり、かつ、人間が長時間倉庫内直接作業をすることは不可能である。また、電子機器ではない紙などに印刷したバーコードを用いたシステムを超低温冷蔵庫内で使用した場合であっても、バーコードの表面に霜や氷が付着することによって正確に読み取ることは困難であり、また、バーコードをひとつずつ読み取っていくことも現実的ではない。また、ICタグを用いたシステムでは、特にICタグの情報を読み取るリーダ装置が低温のため正常に動作しない。そのため、倉庫内のどこにどのような在庫が存在するかということを把握することができず、倉庫内作業員の記憶や勘に頼るところが大きかった。一方、超低温冷蔵庫内を熟知し、且つ−60℃という過酷な温度条件下で正しく作業できる作業員は一棟の超低温冷蔵庫にせいぜい一人か二人しかいないのが通例であり、倉庫管理上大きな問題となっている。
【0005】
したがって、本発明の目的は、超低温冷蔵庫のような広大で過酷な管理条件下においても正確に物品及びその位置を特定することが可能な物品管理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上記目的は、所定の管理エリア内に存在する多数の物品を管理する物品管理システムであって、前記物品に直接又は間接的に取り付けられた第1のICタグと、前記管理エリア内の所定の位置に直接又は間接的に設けられた第2のICタグと、前記第1及び第2のICタグの情報を読み取るリーダ装置とを少なくとも備え、前記第1のICタグの情報をもとに前記物品を特定すると共に、前記第2のICタグの情報をもとに前記管理エリア内における前記物品の位置又はグループを特定することを特徴とする物品管理システムによって達成される。
【0007】
本発明によれば、ICタグを物品自身に取り付けるほか、物品が保管される所定の管理エリア内の所定の位置に取り付けて、管理エリア内の位置又はグループを特定する指標として利用することにより、どこにどのような物品が保管されているかということを容易に調べることができ、物品をグループ単位で管理することができる。特に、物品に取り付けられたICタグの情報を読み取るリーダ装置と共通のリーダ装置を用いて物品の位置を特定するので、位置特定のための専用機器を必要とせず、簡単なシステム構成にて物品の位置を特定することができる。
【0008】
本発明においては、前記第1のICタグの情報をもとに前記管理エリア内における前記物品の相対的な位置を特定することが好ましい。これによれば、第2のICタグから物品の正確な位置を特定することができない場合であっても、その物品の詳細位置を確実に特定することができる。
【0009】
本発明においては、前記第1及び第2のICタグを含めた複数のICタグの情報をほぼ同時に読み取ることが好ましい。ここにいう「ほぼ同時」とは、完全な同時のみならず、複数のICタグの情報を連続的に読み取る時間を含む趣旨である。これによれば、物品の内容に関する情報とその物品の位置情報とをほぼ同時に読み出すので、これらの情報を正確に関連づけることができる。
【0010】
本発明においては、前記第1のICタグに位置情報を書き込むことにより、前記管理エリア内における前記物品の位置を前記第1のICタグに保存することが好ましい。これによれば、前記第2のICタグから物品の正確な位置を特定することができない場合であっても、前記第1のICタグだけでその物品の詳細位置を確実に特定することができる。
【0011】
本発明においては、前記第1のICタグの情報と前記物品に関する情報とを関連付けるデータベースをさらに備え、前記第1のICタグの情報をもとに前記物品を特定する際、前記データベースを参照してもよい。また、前記第2のICタグの情報と前記物品の位置又はグループに関する情報とを関連付けるデータベースをさらに備え、前記第2のICタグの情報をもとに前記物品の位置を特定する際、前記データベースを参照することが好ましい。また、前記第1のICタグの情報と前記物品の相対的な位置に関する情報とを関連付けるデータベースをさらに備え、前記第1のICタグの情報をもとに前記物品の相対的な位置を特定する際、前記データベースを参照することが好ましい。以上のようにすれば、固有のコードを有する汎用のICタグを用いてシステムを構成することができる。
【0012】
本発明においては、前記第1のICタグの情報が、前記前記物品を直接的に示す情報であってもよく、また前記第2のICタグの情報が、前記管理エリア内の位置を直接的に示す情報であってもよい。このようにすれば、データベースを用いることなくシステムを構成することが可能となる。
【0013】
本発明において、前記リーダ装置は、前記管理エリア内を移動しながら前記第1及び第2のICタグの情報を読み取ることが好ましい。これによれば、管理エリア内において広範囲に保管されている多数の物品を効率的に管理できるほか、リーダ装置の位置並びに第1及び第2のICタグの読み取り時刻から管理エリア内における物品の相対的な位置を算出することが可能となる。
【0014】
本発明において、前記リーダ装置は、前記管理エリア内を移動するフォークリフトに設けられていることが好ましい。このようにすれば、特別な移動体を用意することなく、倉庫内の物品の搬送に通常用いる移動体を利用してシステムを構成することができる。
【0015】
本発明において、前記フォークリフトは、外界から遮蔽された運転席ドームを有し、前記リーダ装置は、前記運転席ドーム内に設けられていることが好ましい。このようにすれば、例えば管理エリアが超低温冷蔵庫内のような過酷な環境下においてもリーダ装置を正常に動作させることができる。
【0016】
本発明において、前記リーダ装置のアンテナは、前記管理エリア内において多段に積み上げられた複数の物品に取り付けられた前記第1のICタグを同時に読み取ることが可能な指向性を有することが好ましい。このようにすれば、多段に積み上げられた複数の物品の情報を一括して読み取ることができ、広大な管理エリア内を移動しながら行う物品の探索が容易となる。また、前記リーダ装置のアンテナは、前記管理エリア内に配列された複数の物品に取り付けられた前記第1のICタグの中から特定のまとまりを読み取ることが可能な指向性を有することが好ましい。このようにすれば、管理エリア内の通路に沿って配列された複数の物品の一列分、一行分又は一個のみといった、特定のまとまりを探索範囲とすることができるので、物品の位置を正確に特定できると共に、物品間の相対的な位置を特定することが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ICタグを用いて物品自身及びその保管位置を特定するので、所定の管理エリア内に存在する多数の物品を容易に管理することができる。一般に、ICタグは個々の物品に取り付けられ、物品の内容を特定するものとして利用されているが、本発明においては、ICタグを物品自身に取り付けるほか、物品が保管される所定の管理エリア内の所定の位置に取り付けて、管理エリア内の位置を特定する指標として利用することにより、どこにどのような物品が保管されているかということを容易に調べることができ、管理エリア内における物品の管理に絶大な効果を発揮するものである。特に、物品に取り付けられるものと同じ種類のICタグを位置特定用のICタグとして用いることで、例えばGPS等の位置特定のための専用のシステムを用いることなく、簡単なシステム構成により実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明の好ましい実施形態に係る物品管理システムが適用される超低温冷蔵庫内の構成を示す模式図である。
【0020】
図1に示すように、超低温冷蔵庫10内はいくつかのブロックに区分けされている。本実施形態においては、A11〜A13,A21〜A23,A31〜A33の9ブロックが設けられている。また、各ブロックA11乃至A33の破線の位置には冷凍マグロが詰め込まれたパレット11が多数配置される。パレットは一箇所に多段積みされるため、パレットを運搬し昇降するためのフォークリフト20が使用される。ブロック間は通路として利用され、フォークリフト20は超低温冷蔵庫10内を自由に移動できるようになっている。
【0021】
図2は、任意のブロック内にパレットが置かれた状態を詳細に示す斜視図である。
【0022】
図2に示すように、本実施形態においては、1ブロック(AXY)内に例えばX方向に沿って最大で3個のパレット11を配列することが可能となっており、さらに最大で4段に積み重ねることが可能となっている。そして1ブロック内のパレット11は1つのグループを構成している。なお、積み重ね段数は主としてブロックやパレット11の耐久性とフォークリフト20の性能によって決まるため、条件によってはさらに多段に積み重ねることも可能である。そして本実施形態においては、超低温冷蔵庫10内の物品であるパレット11の管理にICタグ12が使用される。ICタグ12はRFID(Radio Frequency IDentification)とも呼ばれ、無線によってデータの読み出し(及び書き込み)を行うことが可能なICチップである。このICタグ12には超低温冷蔵庫10内の低温環境化においても正しく動作するものが使用される。ICタグ12は、冷凍マグロを収容するパレット11自身に取り付けられる第1のICタグ12Aと、そのようなパレット11が置かれる各ブロックAXYの所定の位置(例えば地面)に取り付けられる第2のICタグ12Bとに大別される。以降、冷凍マグロを収容するパレット自身に取り付けられる第1のICタグ12Aの情報を「物体ID」、また超低温冷蔵庫10内の所定の位置に取り付けられる第2のICタグ12Bの情報を「アンカーID」と呼ぶものとする。
【0023】
図3は、フォークリフト20に設置したICタグ12の読み取り側システムの構成を概略的に示す模式図である。
【0024】
図3に示すように、ICタグ12の情報を読み取るリーダ装置31は、超低温冷蔵庫10内にてパレット11の昇降を行うフォークリフト20の運転席ドーム20D内にコンピュータ32とともに設置される。リーダ装置31は、リーダ本体31a及びアンテナ31bで構成されている。超低温冷蔵庫10内は例えば−60℃程度の超低温に維持されているので、たとえアンテナ31bだけであってもリーダ装置31を外気に曝した場合には正常に動作できないが、フォークリフト20の運転席ドーム20D内は外界から遮蔽され、常温に暖房されているので、この環境下にリーダ装置31を設けることで正常に動作させることができる。リーダ装置31はコンピュータ32からの指示に従って、或いは自立的に動作して、所定のタイミングでICタグ12の情報の読み出し動作を行う。読み取った情報はコンピュータ32内で処理される。なお、リーダ装置31は、読み取り機能のみを有する狭義のリーダ装置のみならず、読み取り機能及び書き込み機能の両方を有するいわゆるリーダライタでもよいことは言うまでもない。
【0025】
第1のICタグ12Aの情報である物体IDは、物品の内容に関する情報と関連付けされた固有のコードである。また、第2のICタグ12Bの情報であるアンカーIDは、超低温冷蔵庫10内の絶対的な位置に関する情報と関連付けされた固有のコードである。これらの情報は、フォークリフト20内に設置されたコンピュータ32が保有するデータベース40に登録され、管理されている。アンカーID及び物体IDをもとにパレット11の内容及び位置を特定する場合にはこのデータベース40が参照される。
【0026】
図4は、データベース40内のレコードの構成の一例を示す図である。
【0027】
図4(a)に示すように、物体IDのレコード41は、物体ID41aの他、例えば、マグロの産地41b、水揚げ時期41c、保管依頼者41d等に関する情報で構成されている。また、図4(b)に示すように、アンカーIDのレコード42は、アンカーID42aの他、例えば、これに対応する超低温冷蔵庫内の絶対位置42b等に関する情報で構成されている。なお、物体ID41a及びアンカーID42a以外はオプションであり、必要に応じて任意の情報を自由に設定できることは言うまでもない。このように、物品に第1のICタグ12Aを取り付け、第1のICタグの情報と物品の内容とを関連付けることで、どのような物品があるかということを特定することが可能となる。また、第1のICタグ12Aを用意するのとは別に第2のICタグ12Bを用意し、第2のICタグ12Bの情報と超低温冷蔵庫10内の絶対的な位置とを関連づけ、超低温冷蔵庫内の位置を特定するための指標とすることで、リーダ装置31で読み込んだ第2のICタグ12Bの情報から物品の位置を一意に特定することが可能となる。なお、本実施形態において管理される物品は冷凍マグロであり、第1のICタグ12Aはそれらが収容されたパレットに取り付けられていることから、第1のICタグ12Aは物品に間接的に取り付けられていることになる。
【0028】
超低温冷蔵庫10内のパレット11の位置を特定する場合には、フォークリフト20で所定の通路を順次移動しながら、リーダ装置31を用いて、各ブロックA11乃至A33内のアンカーID及び物体IDを同時又は順番に読み取る。例えば、図5に示すように、通路Wを矢印P方向に向かって進行しながら、ブロックA11、A12、A13の物体ID及びアンカーIDを順に読み取り、次に通路Wに移動して、通路Wを矢印P方向に向かって進行しながら、ブロックA23、A22、A21の物体ID及びアンカーIDを順に読み取り、次に通路Wに移動して、通路Wを矢印P方向に向かって進行しながら、ブロックA31、A32、A33の物体ID及びアンカーIDを順に読み取る。このようにして読み取った物体ID及びアンカーIDは、例えば図4(c)に示すような一対一で対応するレコード形式でデータベース40に登録される。
【0029】
図6は、アンテナ31bの指向性の一例を模式的に説明するための斜視図である。
【0030】
図6に示すように、リーダ装置31のアンテナ31bには指向性を持たせてICタグ12を探索する範囲を限定することが好ましい。例えば、アンテナ31bの指向性としては、図示のX方向に狭い指向性を持たせておくことが好ましい。このようにすれば、通路に沿って配列されたパレット11の限定した列数だけを探索範囲とすることができる。各列を探索する場合には矢印で示すようにアンテナ31bをリーダ装置と一緒に移動させる。また、Y方向についてもある程度狭い範囲に絞れば、奥行き方向に存在する他のブロックのパレット11に取り付けられたICタグを誤って読み取ってしまう事態を防止することができる。これに対し、Z方向についてはある程度広い指向性を持たせておくことが好ましい。このようにすれば、高さ方向に積み上げられた複数のパレット11すべての物体IDを一括で読み取ることが可能となる。
【0031】
図7は、アンテナ31bの指向性の他の例を模式的に説明するための斜視図である。
【0032】
図6に示した例では、アンテナ31bのX方向及びY方向の指向性を比較的狭く設定する一方で、Z方向の指向性を比較的広く設定し、複数段分のパレット11を同時に探索できるようにしているが、図7に示す例では、アンテナのZ方向の指向性をさらに狭くし、一段分(一個分)のパレット11のみを探索できるようにしている。そして破線で示すように、アンテナ31bの指向性を電気的又は機械的に変化させることで、Z方向にあるすべてのパレット11の物体IDを順に読み取るようにしている。
【0033】
図8は、図7に示したZ方向に指向性の狭いアンテナを用いたICタグの探索手順を詳細に説明するための模式図である。
【0034】
図8に示すように、リーダ装置のアンテナ31bはX方向に向かって(すなわち紙面の左から右に向かって)移動する。その際、矢印Pで示すように、一列目の最下段から上方に向けてICタグを走査し、次いで矢印Pで示すように、二列目の最下段から上方に向けてICタグを走査し、次いで矢印Pで示すように、三列目の最下段から上方に向けてICタグを走査する。以上の走査では、物体IDのみならずアンカーIDも検出できるよう走査範囲を少し広めに設定する。このような方法であっても、図6の場合と同様に、Z方向に積み上げられた複数のパレット11すべての物体IDを読み取ることが可能となる。
【0035】
こうして得られたアンカーIDの情報は、超低温冷蔵庫内の絶対的な位置情報として利用することができ、これにより超低温冷蔵庫内の位置を一意に特定することができる。また、物体IDの情報は、パレット内に収容された冷凍マグロに関する情報をデータベースから取り出す情報として用いるほか、超低温冷蔵庫10内の相対的な位置情報として利用することができる。すなわち、超低温冷蔵庫10内を移動しながら物体IDを順次読み取った場合、物体IDを検知したときの時刻から、進行方向の手前側か、或いは奥側かという相対的な位置関係が分かるため、これをデータベース化することにより、物体IDを超低温冷蔵庫内の相対的な位置情報として利用することが可能となる。
【0036】
図9は、ICタグ12のレイアウトの他の例を説明するための斜視図である。
【0037】
図2に示したICタグ12のレイアウトでは、1ブロック内の複数の列にひとつの第2のICタグ12Bが配列され、アンカーIDと列とが一対多で対応していたが、図9に示すように、第2のICタグ12Bが1ブロック内の個々の列に配列され、平面方向においてアンカーIDと列とを一対一で対応させてもよい。このようにすれば、アンカーIDと物体IDとの絶対的な位置関係をさらに詳細に特定することができるので、物体IDによる相対位置情報を利用する必要性が少なくなり、物品の正確な位置特定が可能となる。
【0038】
図10は、ICタグ12のレイアウトのさらに他の例を説明するための斜視図である。
【0039】
図10に示すICタグ12のレイアウトは、図2と図9の組み合わせであり、第2のICタグ12Bが個々に取り付けられた1ブロック内に一列分のパレットのみを配列し、列を特定するアンカーIDと物体IDとを対応させた上で、さらにこれらのブロックを1つのグループとし、このグループを特定するための新たなICタグ12Cを設けたものである。すなわち、狭い範囲を特定するアンカーIDと広い範囲(グループ)を特定するアンカーIDという2種類のアンカーIDが存在していることになる。このようにすれば、アンカーIDと物体IDとの絶対的な位置関係をさらに詳細に特定することができるとともに、物品のグループを特定することも可能となる。
【0040】
以上説明したように、本実施形態によれば、指向性が最適化されたアンテナを備えたリーダ装置をフォークリフトの運転席ドーム内に収容し、フォークリフトで超低温冷蔵庫内を移動しながらICタグの情報を探索し収集することにより、物品の位置及び内容を特定することができる。また、こうして読み取ったICタグの情報を元にして物品及びその位置を示すマップを作成することも可能となる。これにより、広大かつ過酷な管理エリア内に保管されている多数の物品の中から所望の物品を容易に探し出すことができる。
【0041】
本発明は、以上の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変更を加えることが可能であり、これらも本発明の範囲に包含されるものであることはいうまでもない。
【0042】
例えば、上記実施形態においては、アンカーIDをもとに超低温冷蔵庫内の位置を特定する際、アンカーIDと絶対位置情報とが関連付けされたデータベースを用い、アンカーIDに記録されているコードをもとにデータベースから超低温冷蔵庫内の実際の位置情報を取り出しているが、例えばアンカーIDに最初から実際の絶対位置情報を記録しておき、アンカーIDから実際の絶対位置情報を直接読み出してもよい。さらには、データベースに記録された実際の位置情報と、アンカーIDに記録された実際の位置情報の両方を用いて、より確実な位置特定を行うことも可能である。
【0043】
また、上記実施形態においては、リーダ装置のアンテナ31bがアンカーID及び物体IDの読み取りに共通して用いられているが、アンテナ31bは1つ限られるものではなく、例えば、アンカーID読み取り専用のアンテナと、物体ID読み取り専用のアンテナとを別々に用意してもかまわない。このようにすれば、それぞれのICタグの設置位置に合わせて最適な指向性を設定することができる。また、複数種類のリーダ装置を用意してもかまわない。このようにすれば、アンカーIDや物体ID用のICタグとして複数種類が使用されていたとしても、違う種類のICタグを使ったアンカーIDと物体IDの同時読み取りを実現することができる。
【0044】
また、上記実施形態においては、リーダ装置のアンテナが指向性を有し、ICタグのアンテナは無指向性であるが、ICタグのアンテナに指向性を持たせてもよい。このようにした場合には、アンカーIDや物体IDを読み取る際の選択性がさらに向上し、より高精度な位置特定が可能となる。
【0045】
また、上記実施形態においては、超低温冷蔵庫内の位置に関する情報及び物品に関する情報が登録されたデータベースがフォークリフト20内に設置されたコンピュータ32内に構築されている場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、超低温冷蔵庫の管理事務局で使用されているコンピュータ内に構築されていてもよい。この場合、リーダ装置31で収集したデータをコンピュータに転送し、このコンピュータで物品の位置特定及び管理が行われる。
【0046】
また、上記実施形態においては、フォークリフトを走行させながらICタグを連続的に読み取る場合について説明したが、各ブロックにおいてICタグを読み取り可能な所定の位置にフォークリフトを適宜停止させ、その位置でアンテナの向きや角度を変化させて、各ブロックにおけるすべての、または、特定のICタグを読み取ることも可能である。
【0047】
また、上記実施形態においては、リーダ装置のアンテナが管理エリア内に配列された一列分のパレットの物体IDのみを読み取ることが可能な指向性を有する場合及び一個のパレットの物体IDのみを読み取ることが可能な指向性を有する場合について説明したが、二列、三列といった多数の列を一括して読み取ってもよい。また、行列関係は所定の方向(例えば超低音冷蔵庫内の所定の通路の方向)を基準にして縦方向及び横方向を規定したものに過ぎず、アンテナが行方向を読み取ることが可能な指向性を有していてもよいことは言うまでもない。さらには、列方向と行方向の両方を読み取り可能な指向性を有していてもよく、その場合に、列方向を読み取るためのアンテナと行方向を読み取るためのアンテナを別々に用意してもよい。つまり、リーダ装置のアンテナは、管理エリア内に配列された複数の物品に取り付けられた第1のICタグの中から、一列分、一行分、一個といった、特定のまとまりを読み取ることが可能な指向性を有するものであればよい。
【0048】
また、本実施形態において、各ブロックの面積は同一としているが、必ずしも同一である必要はなく、それぞれ異なっていてもかまわない。例えば、あるグループに属する物品の保管量は非常に多く、別のグループに属する物品の保管量は非常に少ないような場合には、保管量の多い物品が保管されるブロックの面積を標準よりも大きくし、保管量の少ない物品が保管されるブロックの面積を標準よりも小さくしてもよい。
【0049】
また、上記実施形態においては、アンカーIDと物体IDという2種類のICタグを用いて物品の位置を特定しているが、上述の通り、物体IDを相対的な位置情報として利用できることから、物体IDのみを用いて物品の位置を特定し、物品を管理することも可能である。
【0050】
また、上記実施形態においては、物品の管理エリアが超低温冷蔵庫内であり、管理対象となる物品が冷凍マグロを収容したパレットである場合を例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば貨物船の貨物置場の管理等、種々の物品管理に適用することができる。
【0051】
また、上記実施形態においては、物品の搬送装置として運転席ドームを有するフォークリフト20を使用し、ICタグ12の情報を読み取るためのリーダ装置31をフォークリフト20の運転席ドーム20D内に設置しているが、運転席ドームを有するフォークリフト以外の搬送装置にリーダ装置31を設置してもよく、或いは物品の搬送機能を有しない単なる移動体に設置してもよく、さらには、人間が持って移動してもかまわない。
【0052】
また、上記実施形態においては、アンカーIDが管理ブロック内の所定の位置に直接取り付けられており、アンカーIDが絶対的な位置と関連付けられているが、データベースやICタグに記録している位置情報を変更できるのであれば、アンカーIDが物体IDのように移動してもかまわない。すなわち、アンカーIDを可動体に設置し、可動体を介して所定の位置に間接的に取り付けてもよい。このようなアンカーIDは、その位置に固定されている一定の期間は絶対的な位置を示す標識としての役割を果たすことができる。
【0053】
また、上記実施形態においては、アンカーIDを地面に設置しているが、アンカーIDの設置位置は3次元空間のどの位置であってもかまわない。したがって、例えば、各ブロックにポールを立てておき、ポールの先端部にアンカーIDを取り付けてもよい。
【0054】
また、上記実施形態においては、アンカーIDと物体IDを完全に区別して使用しているが、位置情報を持った物体IDをアンカーIDとして利用してもかまわない。
【0055】
また、上記実施形態においては、ひとつのアンカーIDで位置を決定しているが、複数のアンカーIDの関係で位置を決定してもかまわない。
【0056】
また、上記実施形態において、各ブロックはアンカーIDが設けられているだけの平坦な領域であり、何ら特別な設備を備えていないが、例えば、棚を各ブロックに設けておき、パレットの積み上げ位置や高さを正確に規定してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】図1は、本発明の好ましい実施形態に係る物品管理システムが適用される超低温冷蔵庫内の構成を示す模式図である。
【図2】図2は、任意のブロックにパレットが置かれた状態を詳細に示す斜視図である。
【図3】図3は、ICタグ12の読み取り側システムの構成を概略的に示す模式図である。
【図4】図4は、データベース40内のレコードの構成の一例を示す図である。
【図5】図5は、各ブロックA11乃至A33内のアンカーID及び物体ID読み取り手順を説明するための図である。
【図6】図6は、アンテナ31bの指向性の一例を模式的に説明するための斜視図である。
【図7】図7は、アンテナ31bの指向性の他の例を模式的に説明するための斜視図である。
【図8】図8は、図7に示したZ方向に指向性の狭いアンテナを用いたICタグの探索手順を詳細に説明するための模式図である。
【図9】図9は、ICタグ12のレイアウトの他の例を説明するための斜視図である。
【図10】図10は、ICタグ12のレイアウトのさらに他の例を説明するための斜視図である。
【符号の説明】
【0058】
10 超低温冷蔵庫
11 パレット
12 ICタグ
12A 第1のICタグ
12B 第2のICタグ
12C 第2のICタグ
20 フォークリフト
20D 運転席ドーム
31 リーダ装置
31a リーダ本体
31b アンテナ
32 コンピュータ
40 データベース
41 物体IDのレコード
41a 物体ID
41b 産地
41c 水揚げ時期
41d 保管依頼者
42 アンカーIDのレコード
42a アンカーID
42b 絶対位置
11、A12、A13 ブロック(一列目)
21,A22,A23 ブロック(二列目)
31,A32,A33 ブロック(三列目)
〜P 矢印
〜W 通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の管理エリア内に存在する多数の物品を管理する物品管理システムであって、
前記物品に直接又は間接的に取り付けられた第1のICタグと、
前記管理エリア内の所定の位置に直接又は間接的に設けられた第2のICタグと、
前記第1及び第2のICタグの情報を読み取るリーダ装置とを少なくとも備え、
前記第1のICタグの情報をもとに前記物品を特定すると共に、前記第2のICタグの情報をもとに前記管理エリア内における前記物品の位置又はグループを特定することを特徴とする物品管理システム。
【請求項2】
前記第1のICタグの情報をもとに前記管理エリア内における前記物品の相対的な位置を特定することを特徴とする請求項1に記載の物品管理システム。
【請求項3】
前記リーダ装置は、前記第1及び第2のICタグを含めた複数のICタグの情報をほぼ同時に読み取ることを特徴とする請求項1又は2に記載の物品管理システム。
【請求項4】
前記第1のICタグに情報を書き込むライタ装置を備え、
前記ライタ装置は、前記リーダ装置によって得られた位置情報を、前記第1のICタグに書き込むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の物品管理システム。
【請求項5】
前記第1のICタグの情報と前記物品に関する情報とを関連付けるデータベースをさらに備え、前記第1のICタグの情報をもとに前記物品を特定する際、前記データベースを参照することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の物品管理システム。
【請求項6】
前記第2のICタグの情報と前記物品の位置又はグループに関する情報とを関連付けるデータベースをさらに備え、前記第2のICタグの情報をもとに前記物品の位置を特定する際、前記データベースを参照することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の物品管理システム。
【請求項7】
前記第1のICタグの情報と前記物品の相対的な位置に関する情報とを関連付けるデータベースをさらに備え、前記第1のICタグの情報をもとに前記物品の相対的な位置を特定する際、前記データベースを参照することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の物品管理システム。
【請求項8】
前記第1のICタグの情報は、前記物品を直接的に示す情報であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の物品管理システム。
【請求項9】
前記第2のICタグの情報は、前記管理エリア内の位置を直接的に示す情報であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の物品管理システム。
【請求項10】
前記リーダ装置は、前記管理エリア内を移動しながら前記第1及び第2のICタグの情報を読み取ることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の物品管理システム。
【請求項11】
前記リーダ装置は、前記管理エリア内を移動する搬送装置に設けられていることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の物品管理システム。
【請求項12】
前記搬送装置は、外界から遮蔽された運転席ドームを有し、
前記リーダ装置は、前記運転席ドーム内に設けられていることを特徴とする請求項11に記載の物品管理システム。
【請求項13】
前記リーダ装置のアンテナは、前記管理エリア内において多段に積み上げられた複数の物品に取り付けられた前記第1のICタグを同時に読み取ることが可能な指向性を有することを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載の物品管理システム。
【請求項14】
前記リーダ装置のアンテナは、前記管理エリア内に配列された複数の物品に取り付けられた前記第1のICタグの中から特定のまとまりを読み取ることが可能な指向性を有することを特徴とする請求項1乃至13のいずれか1項に記載の物品管理システム。
【請求項15】
前記管理エリアは、超低温冷蔵庫内であることを特徴とする請求項1乃至14のいずれか1項に記載の物品管理システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−189391(P2008−189391A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−142681(P2005−142681)
【出願日】平成17年5月16日(2005.5.16)
【出願人】(505178273)有限会社ワイツープロジェクト (1)
【Fターム(参考)】