説明

物性値を判定する方法および装置

本発明は、物体の少なくとも1つの物性値を判定する方法に関し、物体の内部で時間的に変化する温度領域を生成するステップと、物体内で第1の複数の測定値を検出し、第1の測定値は第1の位置における少なくとも1つの第1の温度値と、前記第1の位置から離れた第2の位置における少なくとも1つの第2の温度値とを含むステップと、第1の測定値に基づいて物性値を判定するステップとを含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体における少なくとも1つの物性値を判定する方法に関し、ならびに、本発明の方法で使用可能な装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
加熱調理プロセスを制御する当分野に属する方法、およびそのために使用可能な加熱調理プロセスプローブが、特許文献1から公知である。この方法では、加熱調理品の内部のさまざまな差込深さにおける複数の温度値、特に4種類の温度値と、加熱調理品の外部、特に加熱調理品表面における少なくとも1つの別の温度値とが、加熱調理プロセスプローブを通じて記録され、加熱調理プロセス制御のために利用されることが意図される。この公知の方法の要諦は、たとえ加熱調理プロセスプローブの位置決めが正確でなくても、加熱調理品で加熱調理プロセスプローブによって検出された温度値の熱速度すなわち時間推移に基づいて、加熱調理品の中心温度を正確に判定できるということにある。さらに特許文献2では、水分値、水分差の値、および/または気体の運動についての値といった他の環境変数も検出可能であり、これらの環境変数を用いて、加熱調理品の種類および/または加熱調理品の熱伝導率といった加熱調理品の固有量が、特に加熱調理プロセスプローブで検出された値の外挿法または反復法により判定されることが意図されている。このような方法、およびこの方法を実施するために使用可能な加熱調理プロセスプローブは、基本的には成果が実証されている。しかし、熱伝導率や加熱調理品の種類の判定にはまだ改善の必要があることが判明している。その理由は特に、外部から管理不能な形で加熱調理品に達する温度変動が、このような加熱調理品の固有量の十分に正確な判定が損なわれるような形で、測定値に影響を及ぼす可能性があることにある。
【0003】
【特許文献1】ドイツ特許出願公開第19945021号明細書
【特許文献2】ドイツ特許出願公開第19995021号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって本発明の課題は、当分野に属する方法およびこの方法を実施するために使用可能な装置をさらに改善して、従来技術の欠点が克服されるようにし、特に、加熱調理品の外部からの影響を低減させ、もしくは実質的になくして、加熱調理品の固有量等の物性値の簡単かつ正確な判定が可能となるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
方法に関わるこの課題は、本発明によれば、次のステップによって解決される。物体の内部で時間的に変化する温度領域を生成し、物体内で第1の複数の測定値を検出し、第1の測定値は第1の位置における少なくとも1つの第1の温度値と、第1の位置から離れた第2の位置における少なくとも1つの第2の温度値とを含んでいて、第1の測定値に基づいて物性値を判定する。
【0006】
このとき特に、時間的に変化する温度領域を生成するために物体に第3の位置で事前設定された熱量が供給され、および/または奪われることが意図されていてよい。
【0007】
上に挙げた変形例のために本発明では、熱量の供給および/または奪取が周期的に行われ、特に物体に熱の供給と奪取が交互に行われることが提案される。
【0008】
本発明による方法の別の有利な実施形態は、時間的に変化する温度領域を生成するために第3の位置で事前設定された温度の上昇が生起されることを特徴としていてよい。
【0009】
上に挙げた3通りの変形例では、特に、第1または第2の位置が第3の位置と同一であることが意図されていてよい。
【0010】
本発明により、本方法は第1の測定値によって、時間的に変化する温度領域により引き起こされる第1および第2の位置での少なくとも1つの温度波の振幅特性および/または位相位置が判定されることを特徴とすることが提案される。
【0011】
また、感度、特に弾性感度、温度伝導率、および/または固有の熱伝導率が第1の物性値として、特に熱伝導モデルおよび/またはフーリエ変換アルゴリズムを用いて判定されることが提案される。
【0012】
本方法の有利な実施形態は、水分値などの熱力学的な物性値、電気伝導率などの電気的な物性値、弾性定数などの弾性的な物性値、および/または光散乱能力値などの光学的な物性値から選択された少なくとも1つの第2の測定値が物体の内部および/または表面で記録されることを意図している。
【0013】
特に、本発明による方法では物体として加熱調理品が選択されるのが好ましい。
【0014】
また本発明により、第1の物性値および/または第2の測定値によって少なくとも1つの第2の物性値が判定され、特に加熱推移予測を作成するため、および/または加熱調理プロセスなどのプロセスの推移を制御するために、第2の物性値は特に加熱調理品の種類などの物質種別から選択され、および/または少なくとも1つの物質の固有量から選択され、例えば加熱調理品の中心温度、加熱調理品の幾何学形状、加熱調理品の密度、加熱調理品の熟成度、加熱調理品のpH値、加熱調理品のコンシステンシー、加熱調理品の保存状態、加熱調理品の焦げ色、加熱調理品の硬皮形成、加熱調理品のビタミン分解、加熱調理品内での発ガン性物質の発生、プロセスの終了時点、および/またはプロセス中のエネルギー消費量から選択されることが提案される。
【0015】
このとき第2の物性値は、第1の物性値および/または第2の測定値の時間的推移の外挿法または反復法によって判定され、および/または第1の物性値および/または第2の測定値を少なくとも一時的に記憶された参照値と比較することによって判定されるのが好ましい。
【0016】
この最後に挙げた変形例では、本発明により、少なくとも1つの参照値が、時間的に変化する温度領域の生成の前、途中、および/または後で少なくとも一時的に記憶されることが提案される。
【0017】
また、特に加熱調理室内の温度推移、含水量、および/または空気運動の調節によって特に加熱調理経過を制御するために、および/または事前設定された加熱調理結果を達成するために、第1および/または第2の測定値、および/または第1および/または第2の物性値が、少なくとも1つの熱流源、加熱調理室と相互作用のある少なくとも1つの加熱部材および/または冷却部材、少なくとも1つの送風機、加熱調理室に水分を導入する少なくとも1つの装置、および/または加熱調理室から水分を排出する少なくとも1つの装置に対する、少なくとも1つの制御装置に供給されることが意図されていてよい。
【0018】
さらに本発明により、第1および/または第2の測定値が、加熱調理品へ少なくとも部分的に差込可能な加熱調理プロセスプローブによって検出され、および/または時間的に変化する温度領域が、加熱調理プロセスプローブに含まれる少なくとも1つの熱流源によって生成される、本方法の特徴が提案される。
【0019】
最後に、本発明により、本発明の方法で使用可能であり、特に握りによって加熱調理品へ少なくとも部分的に挿入可能な軸部を有する、特に加熱調理プロセスプローブの形態の装置も提供され、軸部は第1の位置に対応する第1の部位に配置された少なくとも1つの第1の温度センサと、第2の位置に対応する第2の部位に配置された少なくとも1つの第2の温度センサと、第3の位置に対応する第3の部位に配置された少なくとも1つの熱流源とを含んでいる。
【0020】
これに加えて、特に、第1、第2、および/または第3の部位の間の間隔が、時間的に変化する温度領域によって加熱調理品の内部で引き起こされる温度波の幾何学的な長さよりも短いことが意図されていてよい。
【0021】
本発明の有利な実施形態は、第1、第2、および/または第3の部位の間の熱伝導性が軸部にわたって少なくとも部分的に低下していて、特に、第1、第2、および/または第3の部位の間の軸部の一領域が、加熱調理品よりも熱伝導性の低い材料を少なくとも部分的に含むことを意図している。
【0022】
また本発明により、軸部がフォーク状の自由端を有していて、第1の部位はフォークの第1の歯に配置されていて、第2の部位はフォークの第2の歯に配置されていることが提案される。
【0023】
この場合、特に、第3の部位はフォークの第1、第2、および/または第3の歯に配置されていることが意図されていてよい。
【0024】
本発明による装置の有利な実施形態は、熱流源が、流体熱エネルギーを供給する少なくとも1つの装置を例えば電気加熱装置の形態で、および/または特に燃焼ガス、空気、水、および/またはその他の形態の加熱流体を誘導する装置の形態で含んでいて、および/または熱エネルギーを排出する装置を例えば少なくとも1つのペルティエ素子の形態で、および/または特に空気、水、窒素および/またはその他の形態の冷却流体を誘導する装置の形態で含むことを意図している。
【0025】
特に本発明の装置は、本装置と作用接続された、特に本装置に含まれた、第2の測定値を記録するための少なくとも1つのセンサユニットを備えていることを特徴としてもよい。
【0026】
また、本装置と接続可能な、特に食料品を製造、準備、および/または加熱調理するための加熱調理器に含まれた、少なくとも1つの評価・制御・および/または調節ユニットが設けられてあってもよく、この評価・制御・および/または調節ユニットは記憶ユニットと接続可能であるのが好ましい。
【0027】
最後に本発明により、本装置が加熱調理器の一体化された構成要素であり、もしくは携帯型のハンディな器具として製作されていることが提案される。
【0028】
このように本発明の根底には、特に加熱調理品の形態の物体の内部で温度振動を検出することにより、および、物体の内部のこのような温度振動に基づいて構成される波状の温度領域の伝搬を物体の内部の互いに離れた少なくとも2つの部位で検出することにより、特に加熱調理品の固有の熱伝導率や温度伝導率といった加熱調理品の固有量の形態の物性値の判定が可能になるという驚くべき知見がある。この判定は、例えば加熱調理品を加熱調理品種類へ振り分けるという形で、物体を物質種別へほぼ疑問の余地なく振り分けることを可能にする。
【0029】
原則として、物体または物質は複数の特性によって区別される。物体または物質の特性が多く既知であればあるほど、物資の種類すなわち物質種別をいっそう正確に推定可能となる。しかし加熱調理品の場合には、判定されるべき物質の種類を少数の種別に限定でき、例えば食料品に限定したり、さまざまな種類の肉に限定できるので、加熱調理品種類を既知の種別から選択するために、少数の物質特性値があれば足りる。
【0030】
場合により、行われた種別の振り分け、特に加熱調理品の種類特定を検証するために、特に説明した物体または物質の固有の熱伝導性や温度伝導率の判定に加えて、さらに別の光学的、化学的、弾性的、および/または電気的な物質特性を記録することもできる。しかし原則的には、加熱調理品の種類を判定するには、これら両方の加熱調理品の固有量の判定だけで十分である。
【0031】
本発明に基づいて判定された物性値を、特に記憶装置に保存された値と比較することで、加熱調理品の種類をほぼ疑問の余地なく判定可能となる。これに加えて本発明は、加熱調理プロセスの途中の物性値の変化を認識し、それによって物質内の変質度の認識を可能にする。さらに、幾何学形状と並んで物質の加熱経過を主に規定する、加熱調理プロセスの途中で判定された加熱調理品の熱的な固有量を利用すれば、加熱調理プロセス中における特定状態の予測性がはるかに向上する。
【0032】
最後に本発明では、使用する装置に学習能力があることが意図されていてよい。その意味するところは、本発明の方法によって例えば特定種類の加熱調理品に一義的に振り分けられない加熱調理品の固有量が判定されたときに、ユーザーによって加熱調理品の種類を入力可能で、それにより、以後の加熱調理プロセスについては、加熱調理品の種類の疑問の余地のない判定性と、これに伴う加熱調理プロセス結果の品質とを向上できるということである。
【0033】
本発明のその他の構成要件や利点は、模式的な図面を参照しながら、本発明の装置の有利な実施形態を使って本発明の方法を詳細に説明する以下の記述から明らかである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
図1は、本発明の方法で利用可能な加熱調理プロセスプローブ1を示す。この加熱調理プロセスプローブ1は、握り5によって図示しない加熱調理品へ少なくとも部分的に、すなわち少なくとも先端部7の領域で、差込可能な軸部3を含んでいる。フォーク状をした先端部7の構造については、図2を参照してさらに詳しく説明する。先端部7にある加熱調理プロセスプローブ1の取付部品を、図示しない評価・制御・および/または調節装置と接続するために、軸部3の内部には配線束9が伸びている。この配線束は握り5に挿通され、加熱調理プロセスプローブ1の接続配線11と接続されている。
【0035】
図2には、図1の加熱調理プロセスプローブ1の先端部7の詳細図が部分図Aとして示されている。図2に見られるように、加熱調理プロセスプローブ1のフォーク状の先端部7は2つの歯13および15を有している。歯13,15は間隔Xで互いに間隔をおいている。第1の歯13にある加熱調理プロセスプローブ1の第1の部位には第1の温度センサ17が配置されているのに対し、第2の歯15にある加熱調理プロセスプローブ11内の第2の部位には第2の温度センサ19が配置されている。温度センサ17,19は配線21を介して配線束9と接続されている。これに加えて、第1の歯13にある加熱調理プロセスプローブ1内の第3の部位には熱流源23がある。熱流源23は、加熱調理プロセスプローブ1の先端部7が中に入っている加熱調理品に熱エネルギーを供給する装置25と、加熱調理品から熱エネルギーを排出する装置27とを備える。装置25,27は配線29を介して配線束9と接続されている。装置25は電気加熱装置を備えることが好ましく、それに対して装置27はペルティエ素子を備えることが好ましい。
【0036】
次に、加熱調理プロセスプローブ1を参照しながら本発明の方法について説明する。
【0037】
加熱調理プロセスの開始時に、加熱調理プロセスプローブ1を加熱調理品へ少なくとも部分的に挿入する。加熱調理プロセスプローブ1の先端部7を加熱調理品へ挿入した後、第1の温度センサ17は加熱調理品の内部の第1の位置にあり、第2の温度センサ19は第2の位置にあり、熱流源23は第3の位置にある。図2に示す温度センサ17,19は加熱調理プロセスプローブ1のフォーク状の先端部7の内部に配置されているので、温度センサ17,19の温度測定部位は、加熱調理品の内部で所定の間隔Xに位置決めされる。
【0038】
次いで加熱調理品の種類を判定するために、熱流源23によって装置25を通じて熱エネルギーが加熱調理品に供給され、装置27を通じて熱エネルギーが排出される。これが一定の時間にわたって繰り返され、その結果、熱流源23を介して加熱調理品の内部で局所的に、時間的に変化する温度差すなわち温度振動が引き起こされ、この温度振動が温度波の形態で加熱調理品に伝搬される。熱流源23を通じて加熱調理品の中で生成された温度振動のこのような伝搬を、時間に対する温度変化という形で温度センサ17,19により検出可能である。温度センサ17,19は加熱調理品の内部の2つの異なる位置にあり、特に熱流源23に対して異なる間隔をおいているので、温度センサ17,19により検出される温度値の時間的推移を通じて、異なる種類の加熱調理品について互いに異なる温度波の位相ずれや振幅挙動を判定可能である。加熱調理品の種類判定のために十分正確な位相ずれや振幅挙動の判定を可能にするために、温度センサ17,19の間の間隔Xは、温度振動により引き起こされる加熱調理品内の温度波の幾何学的な長さよりも短いのが望ましい。加熱調理プロセスプローブ1の先端部7のそれぞれの歯に温度センサ17,19を配置した結果、加熱調理プロセスプローブ1による干渉作用が小さくなる。さらに、加熱調理プロセスプローブ1の先端部7の少なくとも表面素材は、先端部7の表面の熱伝導性が周囲の加熱調理品の熱伝導性よりも低くなるように選択されるのが好ましく、その結果、記録された測定値の評価に悪影響を与えかねない要因が、温度波領域への干渉につながることがなくなる。特に、図2に示す実施形態とは異なり、両方の温度センサのうちの一方が熱流源に配置されることが意図されていてよい。
【0039】
加熱調理品の内部で温度振動を生成するために、例えば、熱流源23が決まった時間的間隔で装置25を通じて加熱調理品に熱エネルギーを供給し、および/または装置27を通じて熱エネルギーを逃がすことが意図される。その結果として加熱調理品の内部で温度振動が生成されている間、温度センサ17,19を通じて記録される温度値が配線21,9,11を介して図示しない評価ユニットへ転送され、その評価ユニットで、検出された温度推移が中間保存されて分析される。この分析では、まず、加熱調理品の固有の熱伝導率λと温度伝導率aが判定される。これらの加熱調理品の固有量の判定にあたっては、ある媒体中での温度波の伝搬と、電波または磁気波の伝搬との間で類推が成り立つという仮定が前提となる。ある媒体の電気インピーダンスは次式によって定義される。
【0040】
【数1】

【0041】
R=抵抗、ω=角周波数、L=インダクタンスおよびC=キャパシタンス
【0042】
抵抗RおよびキャパシタンスCという電気量を熱的な対応物で置き換え、すなわち、D/(λ*A)(このときD=層の厚さ、A=層の面積)を熱抵抗として置き換え、M*ρ*cp(このときm=層の質量、ρ=層の密度、cp=層の比熱)を熱容量として置き換え、インダクタンスLをゼロに設定してみると、次のような思考モデルを完成できる。
【0043】
1つの物体は、全熱容量が束ねられた熱質量によって表現可能で、この熱質量は広さAの無限に薄い面であり、個々の熱質量の間の連結部は間隔長さdを有していて無質量であり、固有の熱伝導率λを有していて、その結果、熱インピーダンスについて次式が得られる。
【0044】
【数2】

【0045】
量ωは、電波の場合には電圧の角周波数を表すのに対して、ここでは温度振動の角周波数を表している。
【0046】
物性値λおよびaは互いに無関係に現われるので、この両方の量を1回の測定サイクルに基づいて計算することも可能である。
【0047】
有限数である面A の熱質量および間隔長さdを、無限に薄く相互に連結された平坦な無限数の層へ移し替えることで、固体中の熱流について次の標準式を使える。
【0048】
【数3】

【0049】
このときTは温度、tは時間、aは温度伝導率、ならびに「数式」は間隔dの無限小の値である。こうして量aについての算定式が得られるので、a=λ/(cp・ρ)を通じて量λも算定できる。
【0050】
したがって、記録された温度推移の分析により、熱伝導率λおよび温度伝導率aの形態の有意な加熱調理品の固有量を判定することが可能である。これらの物性量が判定された後、本発明による方法では、データバンクに保存されている前述の物性値の数値の組み合わせとの比較によって、加熱調理品が判定されることが意図されている。このとき本発明では、特に測定曲線に対応する数値の組み合わせがデータバンクにない場合、いわば自己学習式に、該当する加熱調理品の種類がユーザーによってデータバンクに追加されることが意図されてもよい。このようにして、以後の加熱調理プロセスではその「新たな」加熱調理品の自動的な判定も本方法によって可能となり、そのようにして加熱調理プロセスの実施が簡易化されるとともに、加熱調理プロセスの結果の品質を高められる。
【0051】
本発明の別の実施形態では、熱流源23を通じてもっぱら熱エネルギーが例えば周期的・能動的に加熱調理品に供給され、もしくは所定の温度の上昇が熱流源23で生成されることが意図されてもよい。このような温度振動に対する反応として記録された温度値を評価するために、上に説明した熱伝導モデルと並んで、数値プログラムを用いた別のモデルを基礎に据えることが意図されてもよい。温度推移についてのこの別案の分析モデルでは、特に、熱波の伝搬は球状にも円筒状にも平面状にも進行せず、加熱調理プロセスプローブ1自体によって著しい熱誘導と熱容量が加熱調理品へ運び込まれるという点を考慮できる。このような現象の補償をするために、波の変形と熱流源23における瞬時熱流(momentary heat stream)とを活用して、固有の物性値または加熱調理品の固有値を判定する手法を採用できる。特にこの種の分析方法はフーリエアルゴリズムを直接的または改変形で活用する。このようにして分析結果をいっそう改善でき、特に、熱流源23を設計的に簡素に製作し、特に加熱調理品から熱エネルギーを排出する装置27を省略可能である。
【0052】
次に、図3を参照しながら、本発明の方法で利用可能な加熱調理プロセスプローブ1’の形態の装置のさらに別の実施形態について説明する。図3は加熱調理プロセスプローブ1’の部分断面図であり、この図によれば加熱調理プロセスプローブ1’は軸部3’を含んでいる。図1および図2に示す加熱調理プロセスプローブ1とは異なり、加熱調理プロセスプローブ1’は単独の先端部7’を有している。さらに図3からわかるように、加熱調理プロセスプローブ1’の軸部3’は、低い熱伝導率を有する3つの区域31a,31bおよび31cを有している。ここでの低い熱伝導率とは、加熱調理プロセスプローブ1’が中に挿入された図示しない加熱調理品の熱伝導率に対して熱伝導率が相対的に低くいか、または無視可能なことを意味している。軸部3’の内部には、加熱調理品へ熱エネルギーを供給する装置25’と、加熱調理品から熱エネルギーを排出する装置27’とを備える熱流源23’がある。これに加えて加熱調理プロセスプローブ1’は、軸部3’の長手方向で互いに間隔をおいた2つの温度プローブ17’および19’を有している。温度プローブ17’,19’は配線21’を介して、また熱流源23’の装置25’,27’は配線29’を介して、それぞれ図示しない評価ユニットと接続されている。図1と図2に示す加熱調理プロセスプローブ1とは異なり、装置25’,27’には配線29’を介して、周期的に流れる冷却剤、または周期的に加熱された流体が熱媒体として供給される。これは特に空気または液体である。
【0053】
すでに加熱調理プロセスプローブ1を使って説明したように、熱流源23’を通じて、加熱調理プロセスプローブ1’を取り囲む加熱調理品の内部で温度振動が生成される。その結果として生じる温度(熱量)の波が加熱調理品を伝搬していき、このことは、温度センサ17’,19’で異なる温度推移を記録できるという結果につながる。区域31a,31bおよび31cの範囲外では軸部3’の熱伝導率が高いので、温度センサ17’,19’は実効間隔Yすなわち間に配置された区域31bの幅を有している。このような間隔Yがあるためにセンサ17’,19’で記録される値の間で位相差または異なる振幅位置が生じ、これらの値を用いて、上に説明したように、物資の固有量または加熱調理品の固有量である熱伝導率と温度伝導率を判定し、それに基づいて物質または加熱調理品の種類を推定できる。
【0054】
本発明による装置の図示しない別の有利な実施形態では、評価ユニットまたはデータ記憶装置が携帯型装置の内部で具体化されていることが意図されてもよい。すなわちこのように構成された装置は、さまざまな種類の物質の測定値を集めたり、加熱調理プロセスに関わりなく加熱調理品の種類を判定可能とするのに利用可能な、携帯型測定器となる。
【0055】
以上の説明、図面、ならびに特許請求の範囲に開示されている本発明の構成要件は、単独でも任意の組み合せの形でも、さまざまな実施形態で本発明を具体化するための発明の要部となり得る。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の方法で利用可能な加熱調理プロセスプローブの第1実施形態を示す断面図である。
【図2】図1の加熱調理プロセスプローブを示す詳細図である。
【図3】図本発明の方法で利用可能な加熱調理プロセスプローブの第2実施形態を示す部分断面図である。
【符号の説明】
【0057】
1,1’ 加熱調理プロセスプローブ
3,3’ 軸部
5 握り
7,7’ 先端部
9 配線束
11 接続配線
13 歯
15 歯
17,17’ 温度センサ
19,19’ 温度センサ
21,21’ 配線
23,23’ 熱流源
25,25’ 熱エネルギー供給装置
27,27’ 熱エネルギー排出装置
29,29’ 配線
31a,31b,31c 区域
X,Y 間隔
A 部分図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体の内部で時間的に変化する温度領域を生成するステップと、
物体内で第1の複数の測定値を検出し、第1の測定値は第1の位置における少なくとも1つの第1の温度値と、前記第1の位置から離れた第2の位置における少なくとも1つの第2の温度値とを含むステップと、
第1の測定値に基づいて物性値を判定するステップと、
を含むことを特徴とする、物体における少なくとも1つの物性値を判定する方法。
【請求項2】
時間的に変化する温度領域を生成するために物体に第3の位置で事前設定された熱量が供給され、および/または奪われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
熱量の供給および/または奪取が周期的に行われ、特に物体に熱の供給と奪取が交互に行われることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
時間的に変化する温度領域を生成するために第3の位置で事前設定された温度の上昇が生起されることを特徴とする、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
第1または第2の位置が第3の位置と同一であることを特徴とする、請求項2から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
第1の測定値によって、時間的に変化する温度領域により引き起こされる第1および第2の位置での少なくとも1つの温度波の振幅特性および/または位相位置が判定されることを特徴とする、前記請求項のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
感度、特に弾性感度、温度伝導率、および/または固有の熱伝導率が第1の物性値として、特に熱伝導モデルおよび/またはフーリエ変換アルゴリズムを用いて判定されることを特徴とする、前記請求項のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
水分値などの熱力学的な物性値、電気伝導率などの電気的な物性値、弾性定数などの弾性的な物性値、および/または光散乱能力値などの光学的な物性値から選択された少なくとも1つの第2の測定値が物体の内部および/または表面で記録されることを特徴とする、前記請求項のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
物体として加熱調理品が選択されることを特徴とする、前記請求項のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
第1の物性値および/または第2の測定値によって少なくとも1つの第2の物性値が判定され、特に加熱推移予測を作成するため、および/または加熱調理プロセスなどのプロセスの推移を制御するために、第2の物性値は特に加熱調理品の種類などの物質種別から選択され、および/または少なくとも1つの物質の固有量から選択され、例えば加熱調理品の中心温度、加熱調理品の幾何学形状、加熱調理品の密度、加熱調理品の熟成度、加熱調理品のpH値、加熱調理品のコンシステンシー、加熱調理品の保存状態、加熱調理品の焦げ色、加熱調理品の硬皮形成、加熱調理品のビタミン分解、加熱調理品内での発ガン性物質の発生、プロセスの終了時点、および/またはプロセス中のエネルギー消費量から選択されることを特徴とする、前記請求項のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
第2の物性値は、第1の物性値および/または第2の測定値の時間的推移の外挿法または反復法によって判定され、および/または第1の物性値および/または第2の測定値を少なくとも一時的に記憶された参照値と比較することによって判定されることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
少なくとも1つの参照値が、時間的に変化する温度領域の生成の前、途中、および/または後で少なくとも一時的に記憶されることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
特に加熱調理室内の温度推移、含水量、および/または空気運動の調節によって特に加熱調理経過を制御するために、および/または事前設定された加熱調理結果を達成するために、第1および/または第2の測定値、および/または第1および/または第2の物性値が、少なくとも1つの熱流源、加熱調理室と相互作用のある少なくとも1つの加熱部材および/または冷却部材、少なくとも1つの送風機、加熱調理室に水分を導入する少なくとも1つの装置、および/または加熱調理室から水分を排出する少なくとも1つの装置に対する、少なくとも1つの制御装置に供給されることを特徴とする、前記請求項のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
第1および/または第2の測定値が、加熱調理品へ少なくとも部分的に差込可能な加熱調理プロセスプローブによって検出され、および/または時間的に変化する温度領域が、前記加熱調理プロセスプローブに含まれる少なくとも1つの熱流源によって生成されることを特徴とする、前記請求項のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
特に握り(5)によって加熱調理品へ少なくとも部分的に挿入可能な少なくとも1つの軸部(3,3’)を含む、前記請求項のうちいずれか1項に記載の方法で使用可能な特に加熱調理プロセスプローブ(1,1’)の形態の装置であって、前記軸部(3,3’)は前記第1の位置に対応する第1の部位に配置された少なくとも1つの第1の温度センサ(17,17’)と、前記第2の位置に対応する第2の部位に配置された少なくとも1つの第2の温度センサ(19,19’)と、前記第3の位置に対応する第3の部位に配置された少なくとも1つの熱流源(23,23’)とを含む装置。
【請求項16】
第1、第2、および/または第3の部位の間の間隔(X,Y)が、時間的に変化する温度領域によって加熱調理品の内部で引き起こされる温度波の幾何学的な長さよりも短いことを特徴とする、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
第1、第2、および/または第3の部位の間の熱伝導性を前記軸部(3,3’)にわたって少なくとも部分的に低下させてあり、特に、第1、第2、および/または第3の部位の間の前記軸部(3,3’)の一領域(31a,31b,31c)が、加熱調理品よりも熱伝導性の低い材料を少なくとも部分的に含むことを特徴とする、請求項15または16に記載の装置。
【請求項18】
前記軸部(3)がフォーク状の自由端(7)を有していて、前記第1の部位はフォークの第1の歯(13)に配置されていて、前記第2の部位はフォークの第2の歯(15)に配置されていることを特徴とする、請求項15から17までのいずれか1項に記載の装置。
【請求項19】
前記第3の部位が前記フォークの第1、第2、および/または第3の歯(13)に配置されていることを特徴とする、請求項18に記載の装置。
【請求項20】
前記熱流源(23,23’)が、流体熱エネルギーを供給する少なくとも1つの装置を例えば電気加熱装置の形態で、および/または特に燃焼ガス、空気、水、および/またはその他の形態の加熱流体を誘導する装置の形態で含んでいて、および/または熱エネルギーを排出する装置(27,27’)を例えば少なくとも1つのペルティエ素子の形態で、および/または特に空気、水、窒素および/またはその他の形態の冷却流体を誘導する装置の形態で含むことを特徴とする、請求項15から19までのいずれか1項に記載の装置。
【請求項21】
前記装置と作用接続された、特に前記装置に含まれた、第2の測定値を記録するための少なくとも1つのセンサユニットを備えていることを特徴とする、請求項15から20までのいずれか1項に記載の装置。
【請求項22】
前記装置と接続可能な、特に食料品を製造、準備、および/または加熱調理するための加熱調理器に含まれた、少なくとも1つの評価・制御・および/または調節ユニットが設けられていてよく、この評価・制御・および/または調節ユニットは記憶ユニットと接続可能であることを特徴とする、請求項15から21までのいずれか1項に記載の装置。
【請求項23】
前記装置が加熱調理器の一体化された構成要素として、または携帯型の器具として製作されていることを特徴とする、請求項15から22までのいずれか1項に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−529024(P2006−529024A)
【公表日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−529590(P2006−529590)
【出願日】平成16年5月6日(2004.5.6)
【国際出願番号】PCT/DE2004/000954
【国際公開番号】WO2004/109246
【国際公開日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【出願人】(500100855)ラツィオナル アクチエンゲゼルシャフト (13)
【Fターム(参考)】