説明

現像ロールとその製造方法と印字装置

【課題】複写機やプリンター等に使われている現像ロールを用いて、高速印刷した場合、現像ロールの表面でトナーがスリップしてしまい、印字品質が低下する場合があった。
【解決手段】金属製の現像ロール11の表面に、トナー17を搬送するための略一定の深さを有する窪み部12を複数個設け、この窪み部12の内壁の略全面に、一部以上が略球状もしくは略円形の金属の結晶粒界を表出させることで、高速印刷時でのトナー17の窪み部12の表面でのスリップ防止を行い、単位時間当たりの搬送量を増加させ、搬送量のバラツキを低減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、レーザープリンター、ファクシミリなど、トナーを用いた印字装置に用いる現像ロールとその製造方法と印字装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レーザープリンター等のトナーを用いた印字装置は、更なる高速化、あるいはその印字品質の高品位化が要求される。こうした市場ニーズに対応するため、レーザープリンターを構成する感光ドラムに、各色のトナーを供給する現像ロールには、プリンターの小型化に対応する小径化と共に、単位時間当たりにおける搬送可能トナー量の増加、あるいはトナー供給の均一性等が求められている。
【0003】
そのため現像ロールは、より小径で、より高速回転でトナーを感光ドラムに供給することが求められる。そのためプリンターを高速印刷に対応させるには、現像ロール側には、単位時間当たりの搬送量の増加やその安定化が求められる。ここで現像ロールとは、金属の円柱状のものであり、その内部に棒状の磁石等を挿入することで、現像ロールを構成するものである。
【0004】
次に、図11、図12を用いて、従来の現像ロールについて説明する。
【0005】
図11(A)は特許文献1で提案された現像ロールの一例を示す斜視図、図11(B)は特許文献2で提案された現像ロールの一例を示す斜視図である。図11(A)において、現像ロール1aの表面には、長手方向に伸びる切削跡2が形成されている。このように図11(A)に示す現像ロール1aの場合、その表面に、長手方向に切削溝2を設けるように表面を切削加工することで、現像ロール1aの「フレ」を低減する。
【0006】
図11(B)において、現像ロール1bの表面には、現像ロール1bの円周方向に伸びる加工溝4が形成されている。図11(B)に示す現像ロール1bの場合、現像ロール1bの円周方向に凹凸を設けることで、帯電装置として磁気ブラシ帯電方法を使用する場合の、ブラシの「あたり」によって帯電ムラが生じることを防止する。
【0007】
なお図11(A)(B)における空洞部3には、円柱状の磁石部材等が挿入されるが、これらは図示していない。
【0008】
図12は、特許文献3で提案された現像ロール1の一部を示す断面図である。図12において、現像ロール1の表面には、頂上部5と窪み部6が形成されている。そして頂上部5の表面には二次的に微細な凹凸7aが、窪み部6の表面には二次的に微細な凹凸7bが、それぞれ形成されている。
【0009】
図12において、現像ロール1は、アルミニウム製の円柱の上に、レジストパターンを形成し、苛性ソーダでエッチングされてなるものである。なお現像ロール1における窪み部6とは、レジストパターンで保護されていなかった部分であり、苛性ソーダでアルミニウムが凹状に除去された部分に相当する。また頂上部5とは、レジストパターンによって保護され、エッチングされなかった部分に相当する。
【0010】
なお図12における現像ロール1の表面に、エッチングで頂上部5や窪み部6を形成した後、更にこの上にサンドブラスト処理を行い、更にこのサンドブラスト処理の後、バフで頂上部を研磨したものである。このように頂上部5や窪み部6を形成した現像ロール1の上にサンドブラスト加工を行うことで、現像ロール1の全面に均一な凹凸を形成することができる。またバフ研磨等によって(あるいは頂上部5を選択的に研磨することで)、窪み部6に設けた二次的に微細な凹凸7bより、頂上部5の二次的に微細な凹凸7aの方を小さくすることで、低融点トナーの融着やブロッチ、耐久前後の搬送力への影響を低減している。
【0011】
このように、従来の現像ロール1は、サンドブラストによって微細な凹凸(例えば、図12の二次的に微細な凹凸7a、7b)が形成されていた。
【0012】
次に図13を用いて、窪み部6にサンドブラストで設けた二次的に微細な凹凸7と、トナー粒径の関係について説明する。
【0013】
図13は、窪み部6に設けた二次的に微細な凹凸7の上を、トナーの粒子がスリップする様子を説明する断面図である。図13は、窪み部6の内壁部(例えば、底面や側面)の拡大断面図である。図13に示すように窪み部6の内壁部には、二次的に微細な凹凸7bが形成されている。
【0014】
しかし二次的に微細な凹凸7bも、トナー8の粒径と比較すれば、一桁以上大きい。このように二次的に微細な凹凸7bの平面での大きさは100ミクロン以上有り、トナー8の粒子径(例えば、一次粒子径は4ミクロン程度)より一桁以上大きい。そのためサンドブラストで形成した二次的に微細な凹凸7bではスリップ防止効果は得られない。すなわち二次的に微細な凹凸7bであっても、トナー8に対して非常に大きいため、アンカー効果(あるいは引っかかり効果)は得られにくく、矢印9に示すように、窪み部6の表面(あるいは内壁面)で、トナー8がスリップしやすい。
【特許文献1】特開平5−158349号公報
【特許文献2】特開2006−317684号公報
【特許文献3】特開平11−133728号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、従来の現像ロール1では、単位時間当たりにおける搬送可能なトナー量の増加、更にはトナー供給の市場から求められる高速印字時での均一性に課題が残った。
【0016】
例えば、図11(A)(B)で示した場合、現像ロール1a、1bの表面に保持できるトナー量はその加工精度に起因するため、加工上のバラツキの影響を受けやすくなる場合がある。
【0017】
また図12で示した場合、トナーは窪み部6の中に保持されるが、印字品質の向上に伴い、トナー粒径が数ミクロンと小さくなった場合、窪み部6の中でトナーがスリップしてしまう場合があった。一方、サンドブラストによって形成した凹凸は、XY方向(例えば平面、あるいは円周方向)の大きさが100ミクロン以上、Z方向(例えば厚み方向)に深さも数十ミクロンある。これはサンドブラストによる加工は、サンドブラスト装置から高速で噴射される研磨材の衝突(例えば、衝突エネルギー等)によって行うためであり、サンドブラスト材を細かくした場合、研磨材の運動エネルギーが極端に低下し、その加工性が低下する。
【0018】
そのため、サンドブラストによって形成した凹凸は、前記トナー粒径より、一桁以上大きくなり、スリップ防止効果は得られない。すなわち図13に示したように、トナー粒子がサンドブラストで形成した凹凸面でスリップしてしまう。
【0019】
またサンドブラスト加工によって、現像ロール表面に微細な傷が発生し、トナー付着の原因となる。そしてこの傷に付着したトナーは、トナーボックス等に回収できず、汚れ発生の原因になる。
【0020】
このように、従来のサンドブラストを用いて作成した現像ロール1が高速回転した場合、トナー粒子等がその表面でスリップしてしまい、単位時間当たりのトナー搬送量の増加や、トナー搬送量の安定化、あるいは現像ロール1の面内(あるいは露光ドラムの面内)へのトナー供給量が、ばらついてしまう場合があった。
【0021】
さらに、従来のサンドブラストによって加工した現像ロール1は、サンドブラスト装置から高速で吹き付けた研磨材(例えば、SiC粉やガラスビーズ等)が、現像ロール1の表面に突き刺さりやすい。更に金属表面(特にアルミニウムのように柔らかい金属表面)に、高速で突き刺さった研磨材は、超音波洗浄等では除去しきれない。その結果、実際のプリンターに組み込まれた後に、現像ロール1から経時変化的に研磨材が脱離し、感光ドラム等を傷付ける可能性がある。
【0022】
また現像ロール1の表面に、二次元的に微細な凹凸7a、7bをサンドブラストのような物理的手段で形成した場合、現像ロール1自体が物理的に変形(真円度の変化や、歪み等)してしまう。またサンドブラストによる加工熱や、加工面の内部応力(残留応力も含む)等による経時的な変形が発生する可能性があるという課題を有していた。
【0023】
本発明は上記従来の課題を解決するもので、サンドブラストを使うことなく、現像ロールの表面に、トナーの粒径に応じた所定の凹凸を形成することで、サンドブラストに起因する課題発生の防止のみならず、現像ロールの高精度化、感光ドラム等へのトナー搬送量の増量を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
そしてこの目的を達成するために、本発明は、トナーを搬送するための略一定の深さの窪み部を、複数個表面に設けた金属製の現像ロールであって、前記窪み部の内壁の略全面に、前記トナーの平均粒径に対応する、一部以上が略球状もしくは略円形の前記金属の結晶粒界を表出させた現像ロールとする。
【発明の効果】
【0025】
本発明の現像ロールとその製造方法と印字装置によって、現像ロール表面におけるトナーのスリップが防止でき、高速印字時の印字品質の高品位化が可能となる。これはトナーを搬送するための窪み部の内壁の略全面に、前記トナーの粒径に対応する、一部が略球状もしくは円形の金属の結晶粒界を、一種のスリップ防止構造として表出させることによって、現像ロールの高速回転時におけるトナーのスリップ防止が可能となるためである。
【0026】
またこの金属の結晶粒界をスリップ防止構造として表出させることでトナーのスリップ防止を行うため、プリンターの高速印字時(あるいは現像ロールの高速回転時)における、単位時間当たりにおける搬送可能なトナー量の増加を増加できる。更にトナー供給の面内バラツキの低減や、トナー供給の露光ロール全面への均一化を高める。
【0027】
また現像ロールにはサンドブラスト加工を行っていないため、現像ロールの寸法精度を高めると共に、サンドブラストに起因する課題(加工面における残留研磨材や内部応力等)が発生しないため、長時間に亘って感光ドラム等への安定したトナー供給が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態1における現像ロール及びその製造方法について、図面を参照しながら説明する。
【0029】
図1(A)は本発明の実施の形態1における現像ロールの外観図、図1(B)は現像ロールに形成した窪み部付近の拡大断面図である。
【0030】
図1(A)(B)において、11は現像ロール(なお現像ロール11は、マグネットロールあるいは現像スリーブ等と呼ばれることもある)、12は窪み部、13は空洞部、14a、14bは結晶粒界、15a、15bは矢印、16は点線、17はトナー、18はキャリアである。
【0031】
なお結晶粒界14aは窪み部12の内壁に表出した結晶粒界である。結晶粒界14bは表出していない結晶粒界(あるいは、現像ロール11を構成する金属内部の結晶粒界)である。
【0032】
図1(B)に示すように、金属内部の結晶粒界14bの一部を、略球状もしくは略円形状に窪み部12の内壁の略全面に表出させる。そしてこの表出した結晶粒界14aによって、トナー17やキャリア18に対するスリップ防止を行う。そのため窪み部12の内壁に表出させる結晶粒界14aをキャリア18の粒径に類似させたものである。
【0033】
図1(A)において、現像ロール11の表面には、複数の窪み部12が設けられている。そしてトナー17やキャリア18は、現像ロール11に設けた複数の窪み部12に充填され、現像ロール11の回転に伴い感光ドラム(図示していない)に供給される。なお一成分系の場合、窪み部12で搬送されるものはトナー17単体となる。またカラープリンター等で広く用いられる二成分系の場合、窪み部12で搬送されるものはキャリア18とトナー17の両方となる。
【0034】
なお図1(A)において、空洞部13の内部には、フェライト磁石等が挿入されるが、省略している。
【0035】
図1(B)は、図1(A)に示した窪み部12付近を拡大した断面図である。図1(B)において、矢印15aは窪み部12の大きさ(例えば、XY方向の寸法)、矢印15bは窪み部12の深さ(例えば、Z方向の深さ)を示す。
【0036】
図1(B)における、窪み部12に表出した結晶粒界14aとは、現像ロール11の内部の結晶粒界14bの一部以上を、略球状もしくは略円形等の形状で、表出させたものである。なお図1(B)のように凹状に表出させても良いが、凸状に表出させても良い。これは使用する用途やトナー17等に応じて選択する。
【0037】
図1(B)において、窪み部12の表出した結晶粒界14aは、XY平面において略球状もしくは略円形、あるいはこれらの組み合わせ形状とする。またスリップ防止のために設ける結晶粒界14のY方向の形状(深さ方向の形状)は、瘤状の凸状、あるいは凹状、あるいはこれら凸状と凹状の組み合わせ形状である。このように、窪み部12の表面に表出させる結晶粒界14aの形状(寸法、形状、密度等)を、トナー17の形状や大きさに対応させることで、トナー17に対するアンカー効果(あるいはスリップ防止)を発現させる。
【0038】
なお図1(B)において、現像ロール11を構成する金属内部の結晶粒界14bは、現像ロール11を形成するアルミニウム合金等の金属の結晶粒子の粒界とすることでバラツキを抑える。なお結晶粒子の粒界(あるいは粒界の大きさ)は、これらアルミニウム合金等の断面を、エッチング等すれば確認できる。このように結晶粒界14bの一部を、窪み部12の内壁の略全面に表出させることで、トナー17に対するスリップ防止が可能となる。
【0039】
なお窪み部12の深さは、略一定とすることが望ましい。これは現像ロール11におけるトナー17の搬送量を安定化させるためである。なお、略一定の深さとは、図1(B)に示す矢印15bの深さの±30%以下に、複数の窪み部12の内の半数以上が入っていれば良い。
【0040】
なお窪み部12の平均深さは、深さ10ミクロン以上300ミクロン以下の範囲が望ましい。窪み部12の深さが10ミクロン未満の場合、窪み部12に充填され、搬送されるトナー17やキャリア18の単位時間当たりの搬送量が低下する。また深さが300ミクロンを超えた場合、窪み部12に充填されたトナー17やキャリア18が、窪み部12から外部(例えば、感光ドラムの表面等)に排出されにくくなる場合があり、単位時間当たりのトナー17やキャリア18の搬送量が低下する場合がある。
【0041】
なお全ての窪み部12を略同一深さとする必要はない。例えば、平均深さが30ミクロンの複数の窪み部12a(図示していない)を第1群、平均深さが60ミクロンの複数の窪み部12b(図示していない)を第2群、平均深さが100ミクロンの複数の窪み部12c(図示していない)を第3群としても良い。このように、各々の群の中では、略一定の深さとしながらも、第1群〜第3群の中で、異なる平均深さとすることで、マグネットロールの低速域、中速域、高速域でのそれぞれのトナー17の搬送安定性を向上できる。
【0042】
こうして図1(B)に説明するように、トナー17やキャリア18の搬送を助ける(例えば、窪み部12の内壁表面におけるトナー17やキャリア18を引っ掛ける、あるいはスリップさせない)ためである。
【0043】
なおトナー17の平均粒径を5ミクロンとした場合、結晶粒界14aの平均直径は1ミクロン以上30ミクロン以下(望ましくは20ミクロン以下)とする。更にこの一部以上が略球形もしくは略円形、あるいはこれらの組み合わせ形状とすることで、トナー17への食い付き性を高める。
【0044】
表出させた結晶粒界14aの平均直径が1ミクロン未満の場合、トナー17やキャリア18のスリップ防止効果が低下する場合がある。また結晶粒界14aの平均直径が30ミクロンを超えると、トナー17やキャリア18のスリップ防止効果が低下する場合がある。
【0045】
なおトナー17の平均粒径を、仮にαミクロンとした場合、表出する結晶粒界14aの大きさ(例えば、XY平面における直径等)は、αミクロンの20%以上、400%以下が望ましい。これは前述したトナー17やキャリア18のスリップ防止効果を最大とするためであり、20%未満や400%を超えた場合、トナー17やキャリア18に対するスリップ防止効果に影響を与える場合がある。
【0046】
なお表出する結晶粒界14aの大きさと、キャリア18の大きさとを、直接的に関係付ける必要は無い。これはキャリア18(例えば、直径40〜100ミクロン)の表面に無数に付着したトナー17が、表出した結晶粒界14aに引っかかるためである。
【0047】
(実施の形態2)
実施の形態2では、実施の形態1で説明した現像ロール11の製造方法の一例について説明する。
【0048】
図2(A)〜(C)は、現像ロール11の製造方法の一例について説明する斜視図である。図2(A)〜(C)において、19は金属パイプ(例えば、直径10mm〜30mm程度、長さ20cm〜50cm程度のアルミニウムパイプ等)、20は加工跡である。
【0049】
図2(A)における点線16は、金属パイプ19の変形を示す。矢印15に示すように、金属パイプ19は、僅かではあるが、歪みや曲がり等が有る場合がある。こうした金属パイプ19の歪みや曲がりは、現像ロール11の品質に影響を与える場合があるので、切削(なお切削にはバイト等を使う)や研磨等で除去する。
【0050】
図2(B)は、金属パイプ19の外側表面を円周方向に研磨することで、あるいは金属パイプ19の外側表面をスパイラル状に切削することで、その歪みや曲がりを低減した後の様子を示す。なお図2(B)における加工跡20とは、円周方向に形成した研磨目(切削跡と呼ばれる場合もある)、あるいはスパイラル状に形成した切削目(切削跡と呼ばれる場合もある)を示す。 図2(C)は、表面に加工跡20を形成した金属パイプ19の表面に、トナー17やキャリア18(共に図示していない)を搬送するための窪み部12を形成した様子を示す。
【0051】
なお図2(C)の窪み部12の内壁の略全面に表出した結晶粒界14aは図示していない。
【0052】
なお窪み部12の形成は、図2(B)の状態の金属パイプ19の表面にエッチングレジストを所定パターン状に形成し、エッチング液で前記金属パイプ19をエッチングすることで形成する。なおエッチングレジストの形成方法としては、市販の感光性レジストを塗布し、これを露光する方法、あるいは市販のインキジェット用のプリンターヘッドから、樹脂溶液等をパターン状に噴き付け(あるいは印字し)、これらをレジストパターンとすることができる(なお詳細の説明は省略する)。また金属パイプ19を、アルミニウムとした場合、酸やアルカリのエッチング液を用いることができる。これはアルミニウムが両性金属のためである。そしてこのエッチング液やエッチング方法を最適化することで、窪み部12の内壁の略全面に結晶粒界14aを表出させる。
【0053】
またこうしたエッチングレジストの形成〜エッチングの工程を、複数回繰り返すことで、前述したように、例えば平均深さが30ミクロンの複数の窪み部12a(図示していない)を第1群、平均深さが60ミクロンの複数の窪み部12b(図示していない)を第2群、平均深さが100ミクロンの複数の窪み部12c(図示していない)を第3群として、作成することができる。このように、各々の群の中では、略一定の深さとしながらも、第1群〜第3群の中で、異なる平均深さとすることで、マグネットロールの低速域、中速域、高速域でのそれぞれのトナー17の搬送安定性を向上できる。
【0054】
なお金属パイプ19の表面に加工跡20を形成した後に、窪み部12を形成することが望ましい。これは加工跡20を形成することで、金属パイプ19の真円度(なお真円度は、JIS−B−0182等で定義されている。また英語ではcircularityと呼ばれることもある)が向上し、エッチングレジストの塗工性や膜厚の均一を高められる。
【0055】
なお前記現像ロール11はパイプ状であり、このパイプ内部に回転可能な状態で磁性体を設け、現像ロール11とすれば良い。
【0056】
なお磁性体としては、発明者らが、特開2002−343624号公報等で提案したものを用いることができる。
【0057】
以上のようにして、金属パイプ19の外側表面を、円周方向に研磨もしくは、スパイラル状に切削し、前記外側表面に加工跡20を形成する第1のステップと、前記第1のステップ後に、前記外側表面に、エッチングレジストを形成する第2のステップと、前記外側表面に、現像ロール11を構成する金属部材の結晶粒界14bを、窪み部12の内壁の略全面に結晶粒界14aとして表出させる。その後、第3のステップとして、結晶粒界14aを表出させた窪み部12を、略一定の深さで複数個を形成することで、高速印字時の印字品質の高い現像ロール11を製造する。
【0058】
またこうして作成した現像ロール11と、この現像ロール11を用いて搬送されるトナー17と、このトナー17が転写される露光ロール(図示していない)を組み合わせることで、高速印字時の印字品質の高い印字装置(例えばカラープリンター等)を提供できる。
【0059】
なお略一定の深さは深さ10ミクロン以上300ミクロンの範囲が望ましい。窪み部12の平均深さが、この範囲から外れるとトナー17の単位時間当たりの搬送量が低下する場合がある。
【0060】
なおこうして作成した現像ロール11は従来のサンドブラスト等によって形成した現像ロール1に比べ、寸法精度(例えば、真円度が高い、あるいは歪や曲がりが小さい)が高い。また現像ロール11の表面に設けた窪み部12の形状(XYの平面方向でのパターン、あるいはZ方向の深さ等)を最適化することで、単位時間当たりのトナー17やキャリア18の搬送量を増加できるため、プリンター等の高速化、印字品質の高品位化が可能となる。
【0061】
なお図2(C)に示した現像ロール11の空洞部13に、磁性体等を挿入し、回転可能な現像ロール11とするが、こうしたプロセス工程の説明は省略する。
【0062】
更に詳しく説明する。例えば金属パイプ19にアルミニウムを使った場合、エッチング液として塩酸(濃度1wt%から10wt%)を使うことが費用的に望ましい。濃度が1wt%未満の場合、エッチングに時間がかかりすぎる。また濃度が10wt%を超えると取扱いに注意を要する。また電解エッチング(エッチング時に電圧を印加すること)を行っても良い。その場合、塩酸濃度は1wt%から10wt%が望ましい。濃度1wt%未満の場合、エッチングに時間がかかりすぎる場合がある。また濃度10wt%を超えると取扱いに注意を要する。また電解エッチングを行う場合は、陽極側をワーク側つまりロールとすることが望ましく、また陰極側をロールに形状を合わせた形状(例えば円筒状)にすることで、エッチングのバラツキを抑えられる。またここで用いる金属パイプに、その結晶粒径が、トナーの平均粒径20%以上400%以下のものを用いる。
【0063】
なお金属パイプ19の加工跡20(切削面あるいは研磨面)のRmaxは10μm以下と小さい方が望ましい。Rmaxが10μmより大きい場合、レジスト材料(感光性樹脂やUV硬化樹脂等)を塗布した場合、前記レジスト材料にピンホールが発生する場合がある。さらに望ましくはRmaxを5μm以下にすることが望ましい。例えばRmaxを10μm以下と小さくするためには、バフ研磨やサンドブラスト加工を行うことができる。こうした処理で、例えばRmaxを10μm以下(望ましくは5μm以下)と小さくすることで、レジスト材料の泡を減らせると共に、レジスト材料と下地との密着強度(あるいは剥離強度)を高められる。なおRmaxはJIS−B0601を使えるが、Rz(十点平均粗さ)に置き換えても良い。
【0064】
(実施の形態3)
次に、実施の形態3では、図3〜図6を用いて、現像ロール11の表面に設けた加工跡20の効果について説明する。
【0065】
図3(A)(B)は、共に表面に加工跡20を設けた現像ロール11の断面図である。図3(A)は、切削バイトを1本とした場合、図3(B)は、複数の切削バイトを用いた場合に相当する。
【0066】
図3(A)における矢印15aは、一本の切削バイトで形成した加工跡20(あるいは加工跡20の幅)を示す。一本の切削バイトを用いることで、現像ロール11の表面の円周方向に、矢印15aで示すような規則的な間隔A(あるいは略均等なピッチAで)で、突起状の加工跡20をスパイラル状に連続して形成する。なお矢印15bは、加工跡20の深さを示す。
【0067】
図3(B)は、複数の切削バイトを用いた場合の発生する加工跡20を示す。図3(B)の矢印15c、15dに示すように、複数の規則的な間隔B、Cで加工跡20を形成する。なお、点線16は加工跡20の深さの違いを示す。なお加工跡20のRmaxは10μm以下が望ましい。また図3(A)(B)において窪み部12等は図示していない。
【0068】
図4(A)〜(C)は、現像ロール11の表面に設けた加工跡20の効果を説明する断面図及び特性図である。なお図4(A)〜(C)において窪み部12等は図示していない。
【0069】
図4(A)は、表面に規則的な加工跡20を設けた現像ロール11の断面図である。21は平滑部であり、例えば、現像ロール11の加工跡20からなる凸部が、機器の中にセットされ、その表面が研磨され、平滑化された部分に相当する。なお図4(B)における矢印15aは、加工跡20による凹凸を示す。
【0070】
図4(B)は、表面に規則的な現像ロール11を設けた現像ロール11を、一定時間使用した後の表面状態の変化を示す断面図である。図4(B)の矢印15bに示した位置における加工跡20からなる凸部が、次第に磨り減り、平滑部21を構成する。この結果、現像ロール11における加工跡20の凹凸(例えば、矢印15a、15b)を、短時間に小さくできる。
【0071】
図4(C)は、現像ロール11の表面の凹凸の大きさが、現像ロール11の使用時間と共に低減する様子を示す。図4(C)において、X軸は、Running time(例えば、現像ロール11の使用時間)、Y軸は現像ロール11の凹凸を示す。図4(C)に示すように、実施の形態1の現像ロール11では、短時間に凹凸が低減し、一度凹凸が小さくなった後は、その凹凸が変化しにくいことが分かる。このように、実施の形態1では、短時間に、現像ロール11の表面が平滑化し、印字品質が安定することが分かる。
【0072】
なお現像ロール11の初期の表面粗さRmaxを10μm以下(望ましくは5μm以下)とした場合であっても、時間と共に急激に表面粗さが小さくなり、安定した印字品質が長期間に渡って得られることは言うまでも無い。
【0073】
次に比較のために、図12〜図13等で説明した従来のサンドブラスト加工した現像ロール1(以下、従来現像ロール1と呼ぶ)の表面の凹凸の経時変化について図5(A)〜(C)を用いて説明する。
【0074】
図5(A)〜(C)は、従来現像ロール1の表面の凹凸の低減の効果を説明する断面図及び特性図である。図5(A)(B)における22はサンドブラスト加工部である。そしてサンドブラスト加工部22は、不規則な凹凸形状を示す。
【0075】
図5(A)は、表面に不規則な凹凸をサンドブラストで設けた従来現像ロール1の断面図である。図5(A)の矢印15aは、サンドブラストで形成された不規則な凹凸の段差(あるいは凹凸差)を示す。
【0076】
図5(B)は、表面に不規則な凹凸をサンドブラストで設けた従来現像ロール1を、一定時間使用した後の表面状態の変化を示す断面図である。図5(B)の矢印15bに示した凸部が、次第に磨り減り、平滑部21を構成する。
【0077】
図5(C)は、従来現像ロール1の表面の凹凸の大きさが、従来現像ロール1の使用時間と共に変化する様子を示す。図5(C)において、X軸は、Running time(例えば、現像ロール1の使用時間)、Y軸は従来現像ロール1の凹凸を示す。図5(C)に示すように、従来現像ロール1では、Running timeが増加しても、なかなか凹凸が低減しない。またいつまでも、凹凸の大きさが一定化(あるいは安定)しない。これは、図5(A)(B)で示すように、サンドブラスト加工部22は、不規則な凹凸を示すからである。更にサンドブラスト加工部22の不規則な凹凸は、その加工部分等に応力が残っているため、その磨耗程度も安定化しにくく、バラツキ発生の原因になりやすい。
【0078】
(実施の形態4)
次に実施の形態4では、図6〜図8を用いて、現像ロール11に設けた窪み部12や、窪み部12を構成する内壁の微細構造について、SEM写真(電子顕微鏡写真)を元に説明する。
【0079】
図6は、発明者らが作成したアルミニウム製の円柱状の現像ロール11の一例の表面のSEM写真を用いた、現像ロール11の表面の説明図である。
【0080】
図6に示す写真部分において、倍率は50倍(×50)、写真上での寸法(矢印15で示す長さ)は500ミクロンである。図6より、現像ロール11の表面には、円周方向にスパイラル状の加工跡20が、規則的なピッチで形成されている。また現像ロール11の表面には、例えば四角形状に、窪み部12が形成されている。また窪み部12(あるいは窪み部12の内壁)の内壁の略全面には、スリップ防止のための結晶粒界14を表出させている。
【0081】
図7は、発明者らが作成した現像ロール11の窪み部12の内壁に表出させたスリップ防止用の結晶粒界14の一例を示すSEM写真を用いた説明図である。図7において、倍率は500倍(×500)、写真上での寸法(矢印15で示す長さ)は50ミクロンである。図7より、窪み部12の内壁の略全面に渡って、大小さまざまな大きさの略瘤状の凸部、あるいは凹部、あるいはこれら凹凸の組み合わせによる結晶粒界14が無数に表出していることが分かる。
【0082】
なお表出した結晶粒界14の表出部における平均直径は1ミクロン以上30ミクロン(望ましくは20ミクロン)以下であって、かつ大小、複数の大きさを有するものとすることが望ましい。このような形状、あるいは分布にすることで、現像ロール11を高速で回転させた場合でも、窪み部12に入ったトナー17やキャリア18(共に図示していない)が、スリップしにくい(あるいは滑りにくい)。この結果、プリンターを高速印字した時でも、窪み部12に入ったトナー17がキャリア18の単位時間当たりの搬送量が低下しないため、その印字品質が安定化する。
【0083】
図8は、発明者らが作成した現像ロール11の窪み部12の内壁に形成した結晶粒界14の他の一例を示すSEM写真を用いた説明図である。図8において、倍率は500倍(×500)、写真上での寸法(矢印15で示す長さ)は50ミクロンである。図8より、窪み部12の内壁の略全面に渡って、大小さまざまな大きさの略瘤状の凸部、あるいは凹部、あるいはこれら凹凸の組み合わせによる結晶粒界14が表出していることが分かる。
【0084】
なお結晶粒界14の表出状態(あるいは表出密度)は、現像ロール11の使用用途に応じて、図7に示すように窪み部12に密に発生させても良く、また図8に示すように窪み部12に疎に発生させても良い。窪み部12の内壁に表出させる結晶粒界14の粗密度は、使用用途等に応じて変更すれば良い。しかし少なくとも100ミクロン角の面積中に、5個以上、望ましくは10個以上の略球状もしくは略円形状として、設けることが望ましい。5個未満の場合、スリップ防止の効果が低い場合がある。
【0085】
なお表出させた結晶粒界14の大きさは、その粗密に関係なく平均直径が1ミクロン以上30ミクロン(望ましくは20ミクロン)以下の範囲が望ましい。そしてこの個々の結晶粒界14を、図7に示すように、複数個、大小重なるように無数に形成することで、更にスリップ防止が可能となる。このように複数個、あるいは大小、複数の大きさを有するものを組み合わせた形状、あるいは分布にすることで、現像ロール11を高速で回転させた場合でも、窪み部12に入ったトナー17やキャリア18が、窪み部12の中でスリップしにくい。この結果、プリンターを高速印字した時でも、窪み部12に入ったトナー17がキャリア18の単位時間当たりの搬送量が低下しないため、その印字品質が安定化するためである。
【0086】
以上のように、表出させた結晶粒界14の個々の平均直径は1ミクロン以上30ミクロン(望ましくは20ミクロン)以下であり、かつ、結晶粒界14の平均粒径はトナーの平均粒径の20%以上400%以下とすることで、更にスリップ防止を確実にする。
【0087】
特に近年では、窪み部12を用いて搬送するトナー17には、印字品質の高品位化のために、トナー17には微細なものが使われることが多い。このような微細なトナー17は、それ自体が小さなタップ密度であり、フワフワした取り扱いの難しい(更には現像ロール11の上でスリップしやすい)ものとなる。しかし図7〜8に示したような、トナー17の粒径に対応するような結晶粒界14を表出させることで、トナー17のスリップ防止が可能となる。なおトナー17の平均粒径とは、トナー17の一次粒子とする。これはトナー17の一次粒子が、表出した結晶粒界14の表面等に引っかかることで、その二次粒子も搬送できるからである。
【0088】
次に、図9〜図10を用いて、従来のサンドブラストによって作成した従来現像ロール1の表面について説明する。
【0089】
図9は、サンドブラスト処理された、アルミニウム製の円柱状の現像ロール表面のSEM写真を示す。図9において、倍率は50倍(×50)、写真上での寸法(矢印15で示す長さ)は500ミクロンである。
【0090】
図9に示すように、サンドブラストされた表面は、100ミクロン程度の無数の窪みが形成されていることが分かる。一方、トナー17(図示していない、例えば、直径4ミクロン)は、サンドブラストで形成された窪みより、桁違いに小さい。このため、図13に示したように、サンドブラストで形成した凹凸面に、トナー17のスリップ防止効果は得られにくい。
【0091】
次に、図10を用いて、サンドブラストで形成された無数の凹部の詳細について説明する。
【0092】
図10は、発明者らがサンドブラストを用いて作成した従来現像ロール1の表面のSEM写真を用いた従来ロールの表面の説明図である。
【0093】
図10に示す写真部分において、倍率は500倍(×500)、写真上での寸法(矢印15で示す長さ)は50ミクロンである。
【0094】
図10において、23は打痕部、24は傷部である。図10に示すように、サンドブラストで形成した凹凸面には、サンドブラスト材料の衝突によって発生した打痕部23や、サンドブラスト材料の衝突によって発生した傷部24が発生している。
【0095】
このような傷24に付着したトナー17は、トナーボックス等に回収できず、汚れ発生の原因になる可能性がある。
【0096】
また発明者らの元素解析(図示していない)より、傷部24の内部には、サンドブラスト材料(例えば、ガラスやアルミナ、炭化珪素等)が、食い込んでいることが確かめられた。またこうした傷部24に残る、サンドブラスト残渣は超音波洗浄程度では完全に除去することが難しく、経時変化の中で外部にトナー17やキャリア18と共に放出される可能性があり、感光ドラム等を傷つける可能性がある。
【0097】
図9〜図10に示すように、従来のサンドブラスト加工の場合、サンドブラストによって形成された凹凸の大きさ(XY方向)は、100〜200μm程度であり、更にそのバラツキも大きかった。また粒径5μm程度のトナー17のスリップ防止効果も得られにくい。またサンドブラストによって形成された凹凸の高さ(Z方向)も、発明者らの測定によると5〜30ミクロンであり、バラツキも大きかった。
【0098】
次にこれら現像ロールの特性について比較した結果を説明する。
【0099】
発明者らは、図1〜4や図6〜図8で示した現像ロール11(本発明品)と、図5や図9〜図10で示した現像ロール1(従来品)とを用いて評価を行った。
【0100】
本発明品である現像ロール11の方が、従来品である現像ロール1より、高速印刷時の印字品質が高く、品質バラツキも小さかった。一方、従来品である現像ロール1の場合、高速印字時における印字品質にバラツキが発生した。これは本発明品では、結晶粒界14のトナー17に対するスリップ低減効果が寄与したためと考えられる。
【0101】
(実施の形態5)
次に実施の形態5では、現像ロール11に使用する金属材料について説明する。
【0102】
現像ロール11は、SUS(ステンレススチール)よりAL(アルミニウム)を用いることが望ましい。SUSを用いた場合、窪み部12をエッチングで形成することが難しい。また窪み部12の内壁へのスリップ防止のため表出させる結晶粒界14の制御が難しくなる場合がある。
【0103】
一方、現像ロール11にアルミニウムを用いることで、窪み部12のエッチングによる形成が容易となる。またSUSに比べ、アルミニウムの方が、比重が低い分、少ないエネルギーでマグネットロールの高速回転が可能となる。
【0104】
なお、現像ロール11(あるいは現像ロール11の構成部材となる金属パイプ19)は、少なくとも珪素を0.20%以上0.60%以下、もしくはマグネシウムを0.45%以上0.90%以下、含むアルミニウム合金とすることが望ましい。少なくとも珪素を0.20%以上0.60%以下、あるいは(更には)マグネシウムを0.45%以上0.90%以下、含むアルミニウム合金とすることで、金属パイプ19の切削や研磨による加工性を高めると共に、エッチングによって、積極的に窪み部12に表出させる結晶粒界14の大きさを、5〜30ミクロン(望ましくは20ミクロン)の範囲に制御できる。また結晶粒界14の界面や境界部分等に、珪素やマグネシウム、鉄、クロム、チタン等のアルミ合金中に含まれているアルミニウム以外の金属成分を説教的に析出させることで、これら結晶粒界14に起因する微細構造が磨り減りにくくできる。その結果、長期に渡ってトナー17の滑り防止効果が低下しにくい。
【産業上の利用可能性】
【0105】
以上のように、本発明にかかる現像ロール及びその製造方法は、その表面に形成した窪み部やスリップ防止構造等によって、高速印刷時の単位時間当たりのトナーやキャリアの搬送量を増加できるため、ブリンターやコピー装置のより安定した印字特性が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】(A)は本発明の実施の形態1における現像ロールの外観図、(B)は現像ロールに形成した窪み部付近の拡大断面図
【図2】(A)〜(C)は、現像ロールの製造方法の一例について説明する斜視図
【図3】(A)(B)は、共に表面に加工跡を設けた現像ロールの断面図
【図4】(A)〜(C)は、現像ロールの表面に設けた加工跡の効果を説明する断面図及び特性図
【図5】(A)〜(C)は、従来現像ロールの表面の凹凸の低減の効果を説明する断面図及び特性図
【図6】発明者らが作成した円柱状の現像ロールの一例の表面のSEM写真を用いた、現像ロールの表面の説明図
【図7】発明者らが作成した現像ロールの窪み部の内壁に形成した結晶粒界形状の一例を示すSEM写真を用いた説明図
【図8】発明者らが作成した現像ロールの窪み部の内壁に形成した結晶粒界形状の他の一例を示すSEM写真を用いた説明図
【図9】発明者らがサンドブラストを用いて作成した従来現像ロールの表面のSEM写真を用いた従来ロールの表面の説明図
【図10】発明者らがサンドブラストを用いて作成した従来現像ロールの表面のSEM写真を用いた従来ロールの表面の説明図
【図11】(A)は特許文献1で提案された現像ロールの一例を示す斜視図、(B)は特許文献2で提案された現像ロールの一例を示す斜視図
【図12】特許文献3で提案された現像ロールの一部を示す断面図
【図13】窪み部に設けた二次的に微細な凹凸7の上を、トナーの粒子がスリップする様子を説明する断面図
【符号の説明】
【0107】
11 現像ロール
12 窪み部
13 空洞部
14a、14b 結晶粒界
15 矢印
16 点線
17 トナー
18 キャリア
19 金属パイプ
20 加工跡
21 平滑部
22 サンドブラスト加工部
23 打痕部
24 傷部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナーを搬送するための略一定の深さの窪み部を、複数個表面に設けた金属製の現像ロールであって、
前記窪み部の内壁の略全面に、一部以上が略球状もしくは略円形の前記金属の結晶粒界を表出させた現像ロール。
【請求項2】
前記現像ロールはパイプ状であり、このパイプ内部に回転可能な状態で磁性体を設けた請求項1記載の現像ロール。
【請求項3】
前記結晶粒界の平均直径は1ミクロン以上30ミクロン以下であり、かつ、前記結晶粒界の平均粒径は前記トナーの平均粒径の20%以上400%以下である請求項1に記載の現像ロール。
【請求項4】
前記ロールの表面の円周方向に研磨目、もしくはスパイラル状の切削目のどちらか一つ以上を設けた請求項1に記載の現像ロール。
【請求項5】
現像ロールは、少なくとも珪素を0.20%以上0.60%以下、もしくはマグネシウムを0.45%以上0.90%以下、含むアルミニウム合金である請求項1に記載の現像ロール。
【請求項6】
少なくとも、
トナーを搬送するための略一定の深さの窪み部を、複数個表面に設けた金属製のロールの前記窪み部の内壁の略全面に、一部以上が略球状もしくは略円形の前記金属の結晶粒界を表出させてなる現像ロールと、
この現像ロールを用いて搬送される前記トナーと、
前記トナーが転写される露光ロールと、
を有する印字装置。
【請求項7】
金属製のパイプの外側表面を、円周方向に研磨もしくは、スパイラル状に切削し、前記外側表面に加工跡を形成する第1のステップと、
前記第1のステップ後に、前記外側表面に、エッチングレジストを形成する第2のステップと、
前記外側表面に、前記金属の結晶粒界を内壁の略全面に表出させた窪み部を、複数個形成する第3のステップと、
を有する現像ロールの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−128269(P2010−128269A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−303972(P2008−303972)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】