説明

現像ロール及び現像装置

【課題】 現像ロールの表面のトナー担持層を形成している樹脂の架橋度合いを管理することにより、現像ロールの表面に働く圧縮応力と引張応力とによる繰り返し変形に対する耐久性を向上させた現像ロールを提供する。また、このような表面の耐久性を向上した現像ロールを使用した現像装置を提供する。
【解決手段】 導電性軸体2と、該導電性軸体2の外側に位置する弾性半導電体層3と、該弾性半導電体層3の外周部に設けたトナー担持層4上に薄膜状態で担持されたトナーを層形成部材によって所定のトナー層厚に層形成した後、潜像担持体上に形成された静電潜像を可視化する現像装置に用いられる現像ロール1の前記トナー担持層4を形成する樹脂のゲル分率を60%以上とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、導電性軸体とその外側に位置する弾性半導電体層を具備し、更に該弾性半導電体層の外周部に設けたトナー担持層上に薄膜層状態で担持された摩擦帯電トナーを層形成部材によって所定のトナー層厚に層形成した後、潜像保持体上に形成された静電潜像を可視化する現像装置に用いられる現像ロール及びそれを用いた現像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば複写機、プリンター等の電子写真装置や、静電記録装置等において、潜像を保持した感光ドラム等に非磁性一成分現像剤を供給し、感光ドラムの潜像に該現像剤を付着させて潜像を可視化する現像方法として、接触現像法が知られている。
【0003】
例えば、導電性軸体の周りにゴム弾性体からなる導電性弾性層及び樹脂層からなる表面層をこの順に同心円状に積層して構成される現像ロールが挙げられる(特許文献1を参照のこと)。
【0004】
また、このように導電体とその外側に位置する弾性半導電体層をトナー担持層として具備し、該担持層上に薄膜状態で担持された摩擦帯電トナーによって、潜像保持体上に形成された静電潜像を可視化する現像装置において、現像ロールに対しては、導電性、耐環境性、低硬度、摩擦帯電特性、トナー搬送性等の特性が要求される。このような要求に対して、ウレタンゴム、NBR、シリコーンゴム等を素材とし、導電性付与剤を添加することにより半導電性とした現像ロールが良く知られている(特許文献1、特許文献2を参照のこと)。
【0005】
これらの現像ロールには上述した特性のほかに、高温、高湿下での放置や長時間印字された後のプリンター内に放置された際の印字特性の安定性もまた要求される。
【0006】
以上のような、接触帯電方式にあっては、低硬度ゴム又はウレタン樹脂からなる帯電部材の現像ロールが常に非帯電部材の感光ドラムに接触しており、両者の安定した接触領域を確保するため、現像ロールの表面のトナー担持層には接触圧による応力が働いている。そのため、感光ドラムと接触する現像ロールの表面に変形を生じることとなり、現像工程の高速化と長期化が行われた場合には、現像ロールの表面の働く圧縮応力と引張応力とによる繰り返し変形の頻度が増大し、現像ロールの表面が破損するおそれがあった。現像ロールの表面が破損すると、摩擦帯電トナーの転写不良やクリーニングブレードによる現像ロールのクリーニング不良が生じ、正常な印刷が行えないことになる。
【0007】
なお、現像ロールの耐久性を向上させるために、現像ロールの表面にフッ素系樹脂をコーティングすることも行われているが、トナー帯電性、搬送性等他の特性を損なわずに十分な耐久性を得るまでには至らないのが現状である。
【特許文献1】特開2000−330372号公報
【特許文献2】特開2001−132730号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、この発明は、以上のような従来の問題点を解消すべく、現像ロールの表面のトナー担持層を形成している樹脂の架橋度合いを管理することにより、現像ロールの表面のトナー担持層に働く圧縮応力と引張応力とによる繰り返し変形に対する耐久性を向上させた現像ロールを提供することを課題とする。また、このような表面の耐久性を向上した現像ロールを使用した現像装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、上記課題を実現するために以下の手段を採った。
【0010】
請求項1に記載の発明は、導電性軸体と、該導電性軸体の外側に位置する弾性半導電体層と、該弾性半導電体層の外表面に設けたトナー担持層上に薄膜状態で担持された摩擦帯電トナーを層形成部材によって所定のトナー層厚に層形成した後、潜像担持体上に形成された静電潜像を可視化する現像装置に用いられる現像ロールであって、前記トナー担持層を形成する樹脂のゲル分率が60%以上であり、かつ前記トナー担持層の表面輝度が30〜220であることを特徴としている。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加え、前記トナー担持層の表面粗さがJIS(B0601)十点平均粗さRzが2〜10μmであることを特徴としている。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の構成に加え、前記導電性軸体と前記トナー担持層の表面との間の電気抵抗値が、1×10〜10Ωであることを特徴としている。
【0013】
請求項4に記載の現像装置に係る発明は、請求項1乃至3のいずれかに一つに記載の現像ロールのトナー担持層の表面に摩擦帯電トナーを担持して該摩擦帯電トナーの薄膜を形成した後、前記トナー担持層が静電潜像を表面に保持した潜像保持体に接触して、前記摩擦帯電トナーの薄膜から前記摩擦帯電トナーを前記潜像保持体の表面に付着させ、該静電潜像を可視化することを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
この発明は、以上のような構成を採用しているため、請求項1に記載の発明によれば、現像ロールの表面のトナー担持層を形成する樹脂のゲル分率を60%以上に規定したことで、トナー担持層を形成する樹脂の架橋度が一定以上であることが保証できることとなり、現像ロールの表面のトナー担持層に働く圧縮応力と引張応力とによる繰り返し変形に対する耐久性を向上させた現像ロールが得られる。
【0015】
また、トナー担持層4の表面輝度を30〜220とすることにより、適度な濃度を有すると共に濃度ムラがなくドット再現性の高い良好な画像が得られる。
【0016】
請求項2記載の発明によれば、現像ロールの表面の表面粗さを所定の範囲に規定することにより、トナーを感光ドラムの帯電した箇所へ付着させる作用がより安定することとなり、請求項1の効果に加えて、より高精細で高画質の印刷画像が得られる。
【0017】
請求項3記載の発明によれば、導電性軸体とトナー担持層の表面との間の電気抵抗値を所定の範囲に規定することで、適度な現像バイアスが得られるため、トナーのかぶりやかすれを生じることなく、明瞭な印刷物が得られる。
【0018】
請求項4記載の発明によれば、現像ロールの表面のトナー担持層に働く圧縮応力と引張応力とによる繰り返し変形に対する耐久性を向上させた現像ロールによって、摩擦帯電トナーを担持して該トナーの薄膜を形成した後、トナー担持層が静電潜像を表面に保持した潜像保持体に接触して、トナーの薄膜からトナーを潜像保持体の表面に付着させ、該静電潜像を可視化することになるから、高精細で高画質の印刷画像が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、この発明の実施の形態に係る現像ロール及びそれを用いた現像装置について説明を示す。ただし、この発明は、この例に限定されるものではない。
【0020】
図1は、この発明を実施の形態に係る現像ロールの横断面図である。
【0021】
図1に示したように、現像ロール1は、円柱状の導電性軸体2と、この導電性軸体2の表面を被覆する円筒状の弾性半導電体層3とを有している。弾性半導電体層3の外周部には、トナーを薄膜状態で担持できるトナー担持層4を有している。
【0022】
導電性軸体2は、例えば、(1)鉄、アルミニウム、ステンレス鋼、真鍮等で形成された金属製の軸体の他、(2)熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂の芯体表面に金属皮膜をメッキ処理した軸体、(3)熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂の芯体表面に金属皮膜を蒸着処理した軸体、(4)熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂に導電性付与剤としてカーボンブラックや金属粉末等を配合した樹脂組成物により一体に形成した軸体等、であればよい。
【0023】
弾性半導電体層3は、シリコーンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、ポリウレタンゴム、クロロプレンゴム、天然ゴム、ブチルゴム、ポリイソプレンゴム、ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ニトリルゴム、エチレン−プロピレンゴム、アクリルゴム、及びこれらの混合物である、いわゆるゴム或いはエラストマーから選ばれるいずれか一種以上を主成分としている。
【0024】
これらのゴム或いはエラストマーには、煙霧質シリカ、沈降性シリカ、補強性カーボン等の充填材や、ニッケル、アルミニウム、銅等の金属粉末や、酸化亜鉛、酸化錫等の金属酸化物や、硫酸バリウム、酸化チタン、チタン酸カリウム等の芯材に酸化錫をコーティングした導電性充填材等を配合し、パーオキサイド、白金触媒存在下でのハイドロジェンシロキサン、イソシアネート等の加硫剤と一緒に混練したものが用いられる。
【0025】
トナー担持層4を形成する材料としては、特に制限されるものではないが、
例えば、アルキッド樹脂、フェノール変性やシリコーン変性等のアルキッド樹脂変性物、オイルフリーアルキッド樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、及びこれらの混合物が挙げられる。これらの単独・混合物の樹脂によりトナー担持層4を形成するには、これらの単独・混合物の樹脂を弾性半導電体層3の表面にコーティングする方法が採用される。つまり、この発明の実施の形態に係る現像ロール1は、導電性軸体2上に弾性半導電体層3を有し、この弾性半導電体層3の外周部に樹脂コーティングにより形成したトナー担持層4を有するものであることが好ましい。
【0026】
現像ロール1の表面は、現像装置の使用により感光ドラムと接触して相対運動を行うことにより、圧縮応力と引張応力が作用し繰り返し変形が生じるため、この繰り返し変形に対する耐久性が高いことが要求される。そのため、この発明では、現像ロール1の表面のトナー担持層4を形成する樹脂の架橋度合いを管理することとし、具体的には、トナー担持層4を形成する樹脂のゲル分率を60%以上に規定することで、現像ロール1の表面の繰り返し変形に対する十分な耐久性を確保するようにしている。
【0027】
ここで、後述する実施例から明らかなように、ゲル分率が60%未満では現像ロール1の表面のトナー担持層4の繰り返し変形に対する耐久性を維持するまでには至らず、転写不良やクリーニング不良を起こし、結果としてトナーのかぶりやかすれがある印刷物ができあがってしまうことが確認されている。そして、最終的な印刷物による評価では、現像ロール1の表面の繰り返し変形に対する十分な耐久性を求めた場合には、ゲル分率が70%以上であればさらに好ましいことがいえる。
【0028】
次に、この発明の実施の形態に係る現像ロール1において、後述する実験例により、トナー担持層4の表面輝度が印刷特性を左右することを突き止めた。
【0029】
つまり、トナー担持層4の表面輝度が30未満では、黒ベタ印字サンプルの画像濃度が必要以上に高くなり、中間トーンの印字サンプルでは濃度ムラが発生し、ドットの再現性が低下することがわかった。また、トナー担持層4の表面輝度が220を越えると、黒ベタ印字サンプルの画像濃度が低く、印字媒体である紙が透けて見えてしまい、良好な画像を得ることが困難となる。したがって、トナー担持層4の表面輝度を30〜220とすることにより、良好な画像が得られるといえる。また、その値が50〜200がより好ましく、60〜140がさらに好ましいといえる。
【0030】
ここで、表面輝度に単位がない理由は、後述する実施例及び比較例の試験方法において、分解能が256階調の濃淡画像を認識できるCCDカメラを採用した表面輝度値測定装置で測定した値(最小値:0〜最大値:255)を輝度値として採用したためである。
【0031】
また、この発明の実施の形態に係る現像ロール1において、後述する実験例により、トナー担持層4の表面粗さ(JIS(B0601)十点平均粗さRz)を所定の範囲に規定することで良好な画像が得られることが確認された。
【0032】
つまり、トナー担持層4の表面粗さRzが2μm未満では、黒ベタ印字サンプルの画像濃度が低くなり、表面粗さRzが10μmを越えると、黒ベタ印字サンプルの画像濃度が高くなりすぎて、トナーのかぶりも生じ易くなり、解像度も低下する。したがって、トナー担持層4の表面粗さRzを2〜10μmとすることにより、良好な画像が得られるといえる。
【0033】
現像ロール1の表面のトナー担持層4の表面輝度及び表面粗さRzを、上述したような所定の範囲に調整するには、(1)表面に樹脂コート層を形成する方法の他、(2)弾性半導電体層3を構成するゴム材料や添加剤成分等の種類を選択する方法、(3)弾性半導電体層3の形成方法を制御する方法等が挙げられる。
【0034】
また、この発明の実施の形態に係る現像ロール1において、後述する実験例により、現像ロール1の導電性軸体2と現像ロール1の表面のトナー担持層4との間の電気抵抗値を所定の範囲に規定することで良好な画像が得られることが確認された。
【0035】
つまり、現像ロール1の導電性軸体2と現像ロール1の表面のトナー担持層4との間の電気抵抗値が1×10Ω未満では、現像バイアスがかかりすぎて、黒ベタ印字サンプルの画像濃度が高くなりすぎて、トナーのかぶりも生じ易くなり、解像度も低下する。また、この電気抵抗値が1×10Ωを越えると、現像バイアスがかからず現像性が低下して黒ベタ印字サンプルの画像濃度が低く、印字媒体である紙が透けて見えてしまい、良好な画像を得ることが困難となる。したがって、導電性軸体2とトナー担持層4の表面との間の電気抵抗値が、1×10〜10Ωの範囲であれば良好な画像が得られるといえる。
【実施例】
【0036】
以下、この発明に係る現像ロール1の実施例及び比較例の製造方法とその結果得られたものの試験結果について説明する。
【0037】
[実施例1]
【0038】
導電性軸体2として、SUS22に無電解ニッケルメッキを施した直径10mm、長さ275mmの金属製シャフトを使用し、この金属製シャフトに
シリコーン系プライマー(商品名:プライマーNo.16、信越化学工業(株)製)を塗布し、ギヤオーブン中で150℃、10分間焼き付け処理を施した。
【0039】
弾性半導電体層3の材料として、メチルビニルシリコーン生ゴム(商品名:KE−78VBS、信越化学工業(株)製)100質量部に、ジメチルシリコーン生ゴム(商品名:KE−76VBS、信越化学工業(株)製)20質量部にカーボンブラック(商品名:アサヒサーマル、旭カーボン(株)製)10質量部、煙霧質シリカ系充填材(商品名:AEROSIL 200、日本エアロジル(株)製)15質量部、白金触媒(商品名:C−19A、信越化学工業(株)製)0.5質量部、ハイドロジェンシロキサン(商品名:C−19B、信越化学工業(株)製)2質量部を添加し、加圧ニーダーで混練してシリコーンゴム組成物を調製した。
【0040】
次に、このシリコーンゴム組成物を、押出機でクロスヘッドを介して分出しし導電性軸体2と一体化し、ギヤオーブン中で250℃、30分間加熱加流して、導電性軸体2の表面に外径が18mmの円筒状に加硫接着成形した。さらに、ギヤオーブン中で200℃、4時間の二次加硫を行って、弾性半導電体層3を形成した。
【0041】
二次加硫後、GC#400の砥石を備えた円筒研削盤で弾性半導電体層3の外周表面を研磨し、直径16mm、ゴム部(弾性半導電体層3)の長さ230mmのロール基材を作製した。
【0042】
次に、弾性半導電体層3の表面に、ウレタン系塗料(商品名:ニッポラン5196、日本ポリウレタン(株)製)100質量部に、煙霧質シリカ系充填材(商品名:AEROSIL 200、日本エアロジル(株)製)10質量部、ブロックイソシアネート系架橋剤18質量部を添加した塗布液をスプレーコーティングで一回塗りして、150℃、90分加熱硬化した。このようにして完成した現像ロール1の弾性半導電体層3の表面のトナー担持層4のゲル分率は96%であり、表面輝度が120であり、表面粗さRzが4μmであった。また、導電性軸体2とトナー担持層4の表面との間の電気抵抗値は1×10Ωであった。
【0043】
[実施例2]
【0044】
実施例2は、実施例1のトナー担持層硬化条件の150℃、90分間を、150℃、45分間とした他は、すべて実施例1と同じ方法で製作した現像ロール1である。実施例2のゲル分率は80%であった。
【0045】
[実施例3]
【0046】
実施例3は、実施例1のトナー担持層硬化条件の150℃、90分間を、150℃、30分間とした他は、すべて実施例1と同じ方法で製作した現像ロール1である。実施例3のゲル分率は60%であった。
【0047】
[比較例1]
【0048】
比較例1は、実施例1のトナー担持層硬化条件の150℃、90分間を、150℃、20分間とした他は、すべて実施例1と同じ方法で製作した現像ロール1である。比較例1のゲル分率は50%であった。
【0049】
[比較例2]
【0050】
比較例2は、実施例1のトナー担持層硬化条件の150℃、90分間を、140℃、30分間とした他は、すべて実施例1と同じ方法で製作した現像ロール1である。比較例2のゲル分率は40%であった。
【0051】
[比較例3]
【0052】
比較例3は、実施例1のウレタン系塗料に添加する煙霧質シルカ充填材の充填量を40質量部とした以外は、同様な製作方法で現像ロール1を製作した。比較例3の表面輝度は17であった。
【0053】
[比較例4]
【0054】
比較例4は、実施例1のウレタン系塗料に煙霧質シルカ充填材を添加しなかった以外は、同様な製作方法で現像ロール1を製作した。比較例4の表面輝度は230であった。
【0055】
[試験方法]
【0056】
実施例及び比較例についてのゲル分率、表面輝度、表面粗さRz及び電気抵抗の値は以下の測定方法によって取得し、さらに、耐久性の評価のために以下の試験を行った。
【0057】
(1)ゲル分率
【0058】
まず、弾性半導電体層3の表面にプライマーを塗布せずに、実施例1と同様の方法によって導電性ウレタン樹脂層を塗布し、160℃、1時間架橋硬化し、十分冷却した後、導電性ウレタン樹脂層を弾性半導電体層3の表面から取り外す。この取り外された導電性ウレタン樹脂層(試料)の重量を測定する。次に、約100倍の重量のトルエン液に導電性ウレタン樹脂層(試料)を浸漬し(室温23℃、4時間)、その後トルエン液から導電性ウレタン樹脂層(試料)を取り出して150℃、1時間の条件で乾燥し、十分冷却した後、導電性ウレタン樹脂層(試料)の重量を測定する。
【0059】
トルエン液に浸漬する前の導電性ウレタン樹脂層(試料)の重量と、トルエン液に浸漬して乾燥した後の導電性ウレタン樹脂層(試料)の重量とから、次の計算式でゲル分率を算出される。
【0060】
(数1)
ゲル分率(%)=(試料の浸浸後の重量/試料の浸浸乾燥前の重量)×100
【0061】
(2)表面輝度
【0062】
現像ロール1の表面のトナー担持層4の表面輝度は、図2に示した表面輝度値測定装置により測定した。
【0063】
この表面輝度値測定装置は、対物レンズ5(商品名:CF IC BD Plan20X、(株)ニコン製)と、CCDカメラ6(商品名:XC−003、(株)ソニー製)と、照明ランプ7(フィリップス77241)とからなる顕微鏡本体8(商品名:EPI−U、(株)ニコン製)を備え、この顕微鏡本体8の下部に、現像ロール1がセットされており、照明ランプ7に供給される電圧を電圧調整器9でDC10Vに調整して現像ロール1を垂直照射方式で照明する。
【0064】
CCDカメラ6は、画像処理ソフトウエア(商品名:DA−6000、王子計測機器(株)製)のインストールされたコンピュータ10に接続されており、撮影した画像をコンピュータ10に取り込んで、その撮影画像を画像処理ソフトウエアで解析し、表面輝度値が測定される。測定に際しては、一本の現像ロール1につき三箇所の表面輝度値を測定し、その平均値を用いた。
【0065】
(3)表面粗さRz
【0066】
先端半径2μmの測定プローブを備えた表面粗さ計(商品名:590A、(株)東京精密)に現像ロール1をセットし、測定長2.4mm、カットオフ波長0.8mm、カットオフ種別ガウシアンにより、表面粗さRzを測定した。測定頻度は、一本の現像ロール1につき三箇所の表面粗さRzを測定し、その平均値を用いた。
【0067】
(4)電気抵抗
【0068】
アドバンス社製の電気抵抗計(商品名:ULTRA HIGH RESISTANCE METER R8340A)を用い、現像ロール1を水平に置き、厚さ5mm、幅30nm、長さはゴム部(弾性半導電体層3)全体を載せることのできるアルミニウム製板を電極とし、500gの荷重を現像ロール1の導電性軸体2の両端で支持させた状態にして、導電性軸体2と電極との間にDC100Vを供給し、1秒後の電気抵抗計の値を読んで電気抵抗値とした。
【0069】
(5)耐久性
【0070】
現像ロール1の表面のトナー担持層4の繰り返し変形に対する耐久性を確認する試験として、印字試験機を使用した連続印刷試験を行い、印刷画像に生じる筋の有無を目視で判定することとした。
【0071】
具体的には、市販のプリンターの黒トナーカートリッジの位置に、実施例及び比較例で製作した現像ロール1を試験用カートリッジに装着し、室温23℃、湿度50%の常温常湿(N/N)の環境下で一昼夜放置した後、黒ベタ印刷を行い、500枚毎にその画像を観察し、その耐久性の評価を行った。
【0072】
[試験結果]
【0073】
実施例及び比較例についてのゲル分率、表面輝度、表面粗さRz及び電気抵抗の値の測定結果と、耐久性の評価のための試験結果は表1のとおりである。
【0074】
【表1】

【0075】
実施例1〜3のように、現像ロール1の表面のトナー担持層4を形成する樹脂のゲル分率が60%以上である場合には、現像ロール1の表面に働く圧縮応力と引張応力とによる繰り返し変形に対する耐久性を向上させることができるから、このような現像ロール1を使用した現像装置にあっては、高精細で高画質の印刷画像を得ることができる。
【0076】
また、トナー担持層4の表面の表面輝度が30〜220cd/mであり、かつトナー担持層4の表面粗さがJIS十点平均粗さRzで1〜20μmである範囲に調整されている場合には、より現像ロール1の表面に働く圧縮応力と引張応力とによる繰り返し変形に対する耐久性を向上させることができるため、現像工程の高速化と長期化といった環境下であっても、クリーニングブレードを用いたクリーニング性が良好に維持されるから、このような現像ロール1を使用した現像装置にあっては、高精細で高画質の印刷画像を得ることができる。
【0077】
比較例1〜4では、現像ロール1の表面部に当たるトナー担持層4を形成する樹脂のゲル分率が40〜50%であって、その値が60%未満であるため、現像ロール1の表面に働く圧縮応力と引張応力とによる繰り返し変形に対する耐久性が劣り、そのためクリーニングブレードを用いたクリーニング性が不良となり、印刷試験機による印刷画像は0.5K枚目から傷が確認されてしまった。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】この発明の実施の形態である現像ロールの横断面図である。
【図2】表面輝度値測定装置の概念図である。
【符号の説明】
【0079】
1 現像ロール
2 導電性軸体
3 弾性半導電層
4 トナー担持層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性軸体と、該導電性軸体の外側に位置する弾性半導電体層と、該弾性半導電体層の外周部に設けたトナー担持層上に薄膜状態で担持された摩擦帯電トナーを層形成部材によって所定のトナー層厚に層形成した後、潜像担持体上に形成された静電潜像を可視化する現像装置に用いられる現像ロールであって、前記トナー担持層を形成する樹脂のゲル分率が60%以上であり、かつ前記トナー担持層の表面輝度が30〜220であることを特徴とする現像ロール。
【請求項2】
前記トナー担持層の表面粗さがJIS(B0601)十点平均粗さRzが2〜10μmであることを特徴とする請求項1に記載の現像ロール。
【請求項3】
前記導電性軸体と前記トナー担持層の表面との間の電気抵抗値が、1×10〜10Ωであることを特徴とする請求項2に記載の現像ロール。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに一つに記載の現像ロールのトナー担持層の表面に摩擦帯電トナーを担持して該摩擦帯電トナーの薄膜を形成した後、前記トナー担持層が静電潜像を表面に保持した潜像保持体に接触して、前記摩擦帯電トナーの薄膜から前記摩擦帯電トナーを前記潜像保持体の表面に付着させ、該静電潜像を可視化することを特徴とする現像装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−189563(P2006−189563A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−551(P2005−551)
【出願日】平成17年1月5日(2005.1.5)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】